(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】弁体付ノズル部材、及び吐出キャップ、並びに射出成形型
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20231011BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20231011BHJP
B65D 47/24 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B29C33/42
B65D47/24 200
(21)【出願番号】P 2018202447
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝屋 夏生
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大介
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 宏明
(72)【発明者】
【氏名】本田 条
(72)【発明者】
【氏名】森 圭介
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088544(JP,A)
【文献】特開2015-214367(JP,A)
【文献】特開平09-240701(JP,A)
【文献】特開2004-067099(JP,A)
【文献】特開2012-092737(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158766(WO,A1)
【文献】特開2002-013569(JP,A)
【文献】実開昭48-110347(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B29C 33/42
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に、弾性連結片を介して弁体が連結された弁体付ノズル部材であって、
前記ノズル本体の内周面を成形するコア部を含む第一型と、挿入された前記コア部との間で、前記弁体と前記弾性連結片とが成形される凹部を含む第二型とを備え、前記第一型と前記第二型との間に、前記弁体付ノズル部材を成形するキャビティが形成され、前記第一型の前記コア部の外周面と、前記第二型の前記凹部の内周面とに、両者の間で、前記弾性連結片を成形する弾性連結片成形部が刻設された射出成形型を用いて射出成形され、
前記弾性連結片が、前記弁体に向かって、前記ノズル本体の内周面と面一に
、かつ、垂直に垂下する本体側接続部と、前記ノズル本体に向かって、前記弁体の外周面と面一に
、かつ、垂直に立ち上る弁体側接続部と、前記本体側接続部と前記弁体側接続部とに接続される連結部とを有し、
前記連結部の内径が、前記ノズル本体の内周面の内径と等しく、
前記連結部の外径が、前記
弁体の外径よりも大きく、
前記弁体の外径が、前記ノズル本体の内径以下であることを特徴とする弁体付ノズル部材。
【請求項2】
前記本体側接続部と前記弁体側接続部とが、捩れ角が40~80°となるように配置され、前記連結部が、中心軸に対する傾きが50~70°の螺旋状に形成されている請求項
1に記載の弁体付ノズル部材。
【請求項3】
前記ノズル本体の外周面から断面L字状に張り出して、前記ノズル本体の基端側に垂下する環状嵌合部を備える請求項
1又は2に記載の弁体付ノズル部材。
【請求項4】
前記弁体が、前記弁体の周縁に沿って、前記弾性連結片が接続する側とは反対側に環状に突出する周壁部を有し、かつ、前記周壁部の内周に沿って環状溝が形成されている請求項
1~3のいずれか一項に記載の弁体付ノズル部材。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか一項に記載の弁体付ノズル部材が取り付けられたキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱可能な上蓋とを備える吐出キャップであって、
前記キャップ本体には、前記弁体付ノズル部材が取り付けられるノズル取着部が設けられており、
前記ノズル取着部に形成された弁体収容部の底部に吐出孔が穿設され、当該吐出孔の周縁部が、前記弁体収容部に収容された前記弁体が接離する弁座として機能するように形成されていることを特徴とする吐出キャップ。
【請求項6】
請求項
1~4のいずれか一項に記載の弁体付ノズル部材を成形するための射出成形型であって、
円柱状のコア部を含む第一型と、前記コア部が挿入される凹部を含む第二型とを備え、
型締めした前記第一型と前記第二型との間に、前記弁体付ノズル部材を成形するキャビティが形成され、
前記コア部は、前記ノズル本体の内周面側を成形するとともに、前記凹部との間で、前記弁体と前記弾性連結片とが成形されるように、
前記凹部の底側に、前記コア部の頂面との間で、前記弁体を成形する弁体成形部が刻設され、
前記コア部の頂面側の外周面に、前記凹部の内周面との間で、前記弁体側接続部を成形する弁体側接続部成形部が刻設され、
前記凹部の内周面に、前記コア部の外周面との間で、前記本体側接続部を成形する本体側接続部成形部と、前記弾性連結片の前記連結部を成形する連結部成形部が刻設されていることを特徴とする射出成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ本体に取り付けられるノズル状の部材であって、キャップ本体に設けられた吐出孔を開閉可能な弁体を有する弁体付ノズル部材、及び当該弁体付ノズル部材を備えた吐出キャップ、並びに当該弁体付ノズル部材を成形するための射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性変形可能な外容器と、内容物の減少に伴って収縮変形する内容器とからなる二重構造の吐出容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そして、このような吐出容器にあっては、内容器内への空気の侵入を抑制して、内容物の品質を保持するために、容器本体を圧搾して内容物を吐出させる際に吐出孔を開放し、内容物を吐出させた後は吐出孔を閉塞する逆止弁機能を備えた吐出キャップが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1が開示する吐出容器に用いられる吐出キャップは、吐出孔が穿設された中栓を容器本体の口部に嵌合し、かかる中栓を覆って容器本体の口部に装着されるキャップ本体との間に、中栓に穿設された吐出孔を開閉する弁体が形成された部材を介在させることによって構成されている。
【0005】
このような吐出キャップは、通常、射出成形によって製造されるため、その形状などを設計するに際しては、型開きを考慮して設計することが求められる。上述した吐出キャップは、三つの部材からなっており、それぞれの部材が型開きを考慮して設計されているが、部材数が少なくなれば、その組立や部材の管理などに要する手間を軽減することができる。
【0006】
そこで、本発明者らは、内容物を吐出させる吐出孔を開閉する逆止弁機能を備えた吐出キャップを、より少ない部材数で構成するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弁体付ノズル部材は、ノズル本体に、弾性連結片を介して弁体が連結された弁体付ノズル部材であって、前記ノズル本体の内周面を成形するコア部を含む第一型と、挿入された前記コア部との間で、前記弁体と前記弾性連結片とが成形される凹部を含む第二型とを備え、前記第一型と前記第二型との間に、前記弁体付ノズル部材を成形するキャビティが形成され、前記第一型の前記コア部の外周面と、前記第二型の前記凹部の内周面とに、両者の間で、前記弾性連結片を成形する弾性連結片成形部が刻設された射出成形型を用いて射出成形され、前記弾性連結片が、前記弁体に向かって、前記ノズル本体の内周面と面一に、かつ、垂直に垂下する本体側接続部と、前記ノズル本体に向かって、前記弁体の外周面と面一に、かつ、垂直に立ち上る弁体側接続部と、前記本体側接続部と前記弁体側接続部とに接続される連結部とを有し、前記連結部の内径が、前記ノズル本体の内周面の内径と等しく、前記連結部の外径が、前記弁体の外径よりも大きく、前記弁体の外径が、前記ノズル本体の内径以下である構成としてある。
【0008】
また、本発明に係る吐出キャップは、上記弁体付ノズル部材が取り付けられたキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱可能な上蓋とを備える吐出キャップであって、前記キャップ本体には、前記弁体付ノズル部材が取り付けられるノズル取着部が設けられており、前記ノズル取着部に形成された弁体収容部の底部に吐出孔が穿設され、当該吐出孔の周縁部が、前記弁体収容部に収容された前記弁体が接離する弁座として機能するように形成されている構成としてある。
【0009】
また、本発明に係る射出成形型は、上記弁体付ノズル部材を成形するための射出成形型である。
【0010】
かかる射出成形型は、円柱状のコア部を含む第一型と、前記コア部が挿入される凹部を含む第二型とを備え、型締めした前記第一型と前記第二型との間に、前記弁体付ノズル部材を成形するキャビティが形成され、前記コア部は、前記ノズル本体の内周面側を成形するとともに、前記凹部との間で、前記弁体と前記弾性連結片とが成形されるように、前記凹部の底側に、前記コア部の頂面との間で、前記弁体を成形する弁体成形部が刻設され、前記コア部の頂面側の外周面に、前記凹部の内周面との間で、前記弁体側接続部を成形する弁体側接続部成形部が刻設され、前記凹部の内周面に、前記コア部の外周面との間で、前記本体側接続部を成形する本体側接続部成形部と、前記弾性連結片の前記連結部を成形する連結部成形部が刻設されている構成としてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内容物を吐出させる吐出孔を開閉する逆止弁機能を備えた吐出キャップを、より少ない部材数で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る吐出キャップの概略を示す正面図である。
【
図3】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の概略を示す平面図である。
【
図4】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の概略を示す正面図である。
【
図5】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の概略を示す底面図である。
【
図6】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の概略を示す斜視図である。
【
図8】本発明の本実施形態に係る射出成形型の概略を示す断面図である。
【
図9】本発明の本実施形態に係る射出成形型に用いる凹部型の一例を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示す凹部型と対比される凹部型の例を示す斜視図である。
【
図11】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の変形例を備える吐出キャプの概略を示す断面図である。
【
図12】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の変形例の概略を示す平面図である。
【
図13】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の変形例の概略を示す正面図である。
【
図14】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の変形例の概略を示す底面図である。
【
図15】本発明の本実施形態に係る弁体付ノズル部材の変形例の概略を示す斜視図である。
【
図17】本発明の本実施形態に係る射出成形型の変形例の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
[吐出キャップ]
本実施形態における吐出キャップ1は合成樹脂からなり、キャップ本体2と、キャップ本体2に着脱可能な上蓋3とが、ヒンジ4で連結された、いわゆるヒンジキャップに本発明を適用した例であって、容器本体100の口部101に装着して用いられる。
【0015】
ここで、
図1は、キャップ本体2に上蓋3を嵌着した状態を示す正面図、
図2は、
図1のA-A断面図であり、吐出キャップ1を構成する各部材についての上下左右及び縦横の方向は、
図2に示す状態で規定される方向とする。
なお、
図2において、部材どうしが重なって図示されている部分は、実際には、弾性変形して互いに密着した状態で嵌合されている。容器本体100の口部101の断面については、一部を省略するとともに、断面を示すハッチングを省略してある。
【0016】
本実施形態において、
図2に示すように、キャップ本体2は、本体天面部20の外周縁に沿って垂下する外側筒部21と、その内側に同心状に垂下する内側筒部22とを有している。そして、吐出キャップ1を容器本体100の口部101に装着した際に、内側筒部22が、容器本体100の口部101の内周面に液密に嵌合するようになっている。
【0017】
また、外側筒部21の内周面にはネジ部が形成されており、吐出キャップ1を螺着によって、容器本体100の口部101に装着するようにしているが、これに限定されない。吐出キャップ1の装着手段は、吐出キャップ1を容器本体100の口部101に液密に装着できれば、例えば、打栓によって装着されるように構成してもよい。
【0018】
また、キャップ本体2には、内側筒部22よりも内側に位置する部位に、ノズル取着部23が設けられている。このノズル取着部23には、内容物を吐出する際の流路を形成するノズル本体51に、弾性連結片53を介して弁体52を連結してなる弁体付ノズル部材5が取り付けられるが、弁体付ノズル部材5の詳細については後述する。
【0019】
キャップ本体2に設けられたノズル取着部23には、弁体付ノズル部材5の弁体52が収容される弁体収容部24が、本体天面部20から逆円錐台状に陥没するようにして形成されているとともに、弁体付ノズル部材5のノズル本体51が液密に嵌合する嵌合部25が、弁体収容部24の開口縁に沿って筒状に立ち上るようにして形成されている。
【0020】
また、ノズル取着部23に形成された弁体収容部24の底部には、内容物を吐出させる吐出孔26が穿設されており、この吐出孔26の周縁部が、弁体収容部24に収容された弁体52が離接する弁座として機能するように形成されている。
これにより、容器本体100を圧搾すると、内容物が弁体52を押し上げることによって吐出孔26が開放され、吐出孔26を通ってノズル本体51の先端開口部から内容物を吐出させることができる。そして、容器本体100を圧搾する力を弱めると、弁体52が元の状態に戻り、弾性連結片53の弾性力によって吐出孔26の周縁部に圧接されて、吐出孔26を再び閉塞する逆止弁として機能する。
【0021】
なお、本実施形態では、ノズル本体51の先端開口部から内容物を吐出させる際の操作性を考慮して、キャップ本体2の中心から、キャップ本体2に上蓋3を連結するヒンジ4から離れる方向に外れた位置に、ノズル取着部23を設けている。
また、キャップ本体2の本体天面部20の外周縁には、上蓋3の下端縁部が着脱可能に嵌合する嵌合段部27が形成されている。さらに、キャップ本体2の本体天面部20には、ノズル取着部23よりも外側となる位置に、周方向に沿って段部28が形成されているとともに、上蓋3には、キャップ本体2に嵌着した際に、本体天面部20に形成された段部28に嵌合するように筒状に垂下する支持部30と、ノズル本体51の先端開口部を封止する封止部31が形成されている。
【0022】
[弁体付ノズル部材]
図3~
図7に示す弁体付ノズル部材5は、内容物を吐出する際の流路を形成するノズル本体51に、弾性連結片53を介して弁体52が連結されたノズル状の部材であるのは、前述した通りである。ノズル本体51は、例えば、内径が3~8mmの筒状に形成されるが、内容物を吐出する際の流路を形成する上で支障がなければ、ノズル本体51の内径は、特に限定されない。
【0023】
本実施形態において、ノズル本体51には、その外周面から断面L字状に張り出して、ノズル本体51の基端側に垂下する環状嵌合部51aが設けられている。
このような環状嵌合部51aを設けることによって、ノズル取着部23に形成された嵌合部25にノズル本体51を嵌合した際に、当該嵌合部25がノズル本体51の外周面と環状嵌合部51aの間に挟持されるようにしている。そして、かかる環状嵌合部51aの下端側に形成された嵌合突部と、ノズル取着部23に形成された嵌合部25の先端側に形成された嵌合突部とが、互いに噛み合うことによって、ノズル取着部23に取り付けられた弁体付ノズル部材5が、より脱離し難くなるようにしているが、環状嵌合部51aは必要に応じて省略してもよい。
【0024】
このようなノズル本体51に、弾性連結片53を介して連結される弁体52は、その周縁に沿って、弾性連結片53が接続する側とは反対側に環状に突出する周壁部52aを有しており、この周壁部52aが吐出孔26の周縁部と接触することによって吐出孔26を閉塞する。この際、周壁部52aが弾性変形し易くなるように、周壁部52aの内周側には、周壁部52aの内周に沿って環状溝52bが形成されている。
なお、周壁部52a、環状溝52bは適宜省略してもよい。
【0025】
これによって、弾性連結片53の限られた弾性力によって弁体52が吐出孔26の周縁部に圧接されたときに、周壁部52aが吐出孔26の周縁部により液密に密着した状態で、吐出孔26を閉塞することができる。このとき、周壁部52aを吐出孔26の周縁部により良好に密着させることができるように、弁体収容部24の内周面の傾斜に合わせて、周壁部52aの先端側の外周面をテーパー状に切り欠くのが好ましい。
【0026】
また、弁体52の外径は、成形後の型開きを考慮して、ノズル本体51の内径以下となるように設計するが、これについては後述する。
【0027】
このような弁体52をノズル本体51に連結する弾性連結片53は、ノズル本体51側に設けられた本体側接続部53aと、弁体52側に設けられた弁体側接続部53bと、本体側接続部53aと弁体側接続部53bとに接続される連結部53cとを有している。そして、本体側接続部53aは、弁体52に向かって、ノズル本体51の内周面と面一に垂下するように形成されており、弁体側接続部53bは、ノズル本体51に向かって、周壁部52aの外周面と面一に立ち上るように形成されている。
このようにすることで、連結部53cが弾性連結片53の可動部として機能し、弾性連結片53を変形し易く、かつ、復元し易くなるように構成することができる。その結果、吐出孔26を開閉する際の弁体52の動きがスムーズになり、内容物を良好に吐出させることができ、吐出後は良好に吐出孔26を閉塞することができる。
【0028】
成形後の型開きを考慮すると、本体側接続部53aは、弁体52に向かって垂直に垂下するように形成するのが好ましく、弁体側接続部53bは、ノズル本体51に向かって垂直に立ち上るように形成するのが好ましいが、これについては後述する。
【0029】
このような態様で弾性連結片53を形成する場合、吐出孔26の周縁部に弁体52を圧接する弾性力を確保する上で、本体側接続部53aと弁体側接続部53bとは、捩れ角(中心軸Cを含み本体側接続部53aの周方向中央を通る平面と、中心軸Cを含み弁体側接続部53bの周方向中央を通る平面との二面角)αが40~80°となるように配置され、これらに接続される連結部53cが、中心軸Cに対する傾きβが50~70°の螺旋状に形成されるようにするのが好ましい。
【0030】
捩れ角αと傾きβが上記範囲に満たない場合、連結部53cが垂直に近づいてしまうことから、内容物が弁体52を押し上げる際に、弾性連結片53が弾性変形し難くなり、吐出孔26の開放が妨げられて、内容物を吐出させるのに十分な流路が確保できなくなってしまう傾向がある。一方、上記範囲を超える場合、連結部53cが水平に近づいてしまうことから、弾性連結片53が弾性変形し易くなり、弁体52が吐出孔26を閉塞するのに十分な弾性力が得られずに、シール性が低下してしまう傾向にある。また、後述するように、連結部53cはアンダーカットとなるが、連結部53cが水平に近づいてしまうと、その型開き方向に直交する面への投影面積が増えてしまうため、無理抜きに際して連結部53cへの負荷が増加してしまう傾向にあり、著しい場合には、変形や破断が生じかねない。
【0031】
なお、図示する例では、ノズル本体51に、三つの弾性連結片53を介して弁体52を連結しているが、吐出孔26の周縁部に弁体52を圧接する弾性力が十分に得られ、かつ、吐出孔26の周縁部に弁体52をバランスよく圧接することができれば、これに限定されない。
【0032】
このように、弁体付ノズル部材5は、内容物を吐出する際の流路を形成するノズル本体51に、キャップ本体2に設けられた吐出孔26を開閉可能な弁体52が一体に形成されているため、本実施形態によれば、内容物を吐出させる吐出孔26を開閉する逆止弁機能を備えた吐出キャップ1を、より少ない部材数で構成することができる。
【0033】
このような弁体付ノズル部材5は、例えば、
図8に示すような射出成形型6を用いて成形することができる。
【0034】
図8に示す射出成形型は、円柱状のコア部62を含む第一型61と、コア部62が挿入される凹部66を含む第二型65とを備えている。そして、型締めした第一型61と第二型65との間に、弁体付ノズル部材5を成形するキャビティが形成されるようにしている。
さらに、図示する例では、成形後の型開きを考慮して、第一型61が、コア部62が形成されたコア型64と第一ベース型63とからなり、第二型65が、凹部66が形成された凹部型68と第二ベース型67とからなる型構造としている。
なお、図示する射出成形型6は一例であり、必要に応じて、さらに分割された型構造としてもよい。
【0035】
第一型61のコア部62は、ノズル本体51の内周面側を成形するとともに、第二型65の凹部66との間で、弁体52と弾性連結片53とが成形されるように構成されており、第二型65の凹部66の底側には、第一型61のコア部62の頂面との間で、弁体52を成形する弁体成形部M52が刻設されている。そして、第一型61のコア部62の頂面側の外周面には、第二型65の凹部66の内周面との間で、弾性連結片53の弁体側接続部53bを成形する弁体側接続部成形部M53bが刻設されているとともに、第二型65の凹部66の内周面には、第一型61のコア部62の外周面との間で、弾性連結片53の本体側接続部53aを成形する本体側接続部成形部M53aと、弾性連結片53の連結部53cを成形する連結部成形部M53cが刻設されている。
【0036】
このような射出成形型6を用いて弁体付ノズル部材5を射出成形するには、第二型65の凹部66の底側中央に配設された、図示しないゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出充填する。
そして、型開きに際しては、まず、第一型61を型開き方向にスライドさせるが、このとき、弁体52に形成された周壁部52aの外径をノズル本体51の内径以下とすることで、成形されたノズル本体51と干渉することなく、コア部62を引き抜くことが可能になる。さらに、弁体側接続部53bをノズル本体51に向かって垂直に立ち上るように形成するのが好ましいのは前述した通りであり、このようにすることで、コア部62を引き抜く際の弁体側接続部53bへの負荷をより低減することができる。
また、第一型61をコア型64と第一ベース型63とからなる型構造として、コア型64、第一ベース型63の順に型開き方向にスライドさせることで、成形された弁体付ノズル部材5への負荷がより低減されるようにすることができる。
【0037】
また、図示する例では、凹部型68とともに第二型65を構成する第二ベース型67のパーティング面が、ノズル本体51に設けた環状嵌合部51aの下端面に位置するようにしている。このような型構造とすることで、凹部型68に対して第二ベース型67を型開き方向にスライドさせることで、成形された弁体付ノズル部材5をイジェクトできるようにしている。これにより、イジェクトピン等のイジェクト機構を設ける必要がなくなるため、射出成形型6の型構造をより簡略化することが可能になる。
【0038】
また、前述したように、本体側接続部53aを弁体52に向かって垂直に垂下するように形成するのが好ましく、このようにすることで、成形された弁体付ノズル部材5をイジェクトする際の本体側接続部53aへの負荷を低減するとともに、アンダーカットとなる連結部53cの無理抜きも良好に行うことができる。
【0039】
さらに、本体側接続部53aを弁体52に向かって垂直に垂下するように形成することで、第二型65の凹部66の内周面に刻設する本体側接続部成形部M53aに、損傷し易い鋭角な部分がなくなり、その耐久性を高めることも可能になる。
なお、
図9は、本実施形態で用いる凹部型68の一例を示す斜視図であり、これとの対比のために、本体側接続部53aを省略して連結部53cをノズル本体51に接続した場合の凹部型の例を
図10に示す。
【0040】
[変形例]
また、本実施形態では、前述したような態様で弾性連結片53を形成するのに代えて、
図11~
図16に示すような態様とすることができる。
なお、これらの図では、前述した態様に対応する構成に同一の符号を付してある。
【0041】
これらの図に示す変形例において、弾性連結片53は、ノズル本体51から弁体52に向かって矩形状に延在し、かつ、薄肉屈曲部を介してノズル本体51と前記弁体52とに接続されるように形成されている。
なお、
図11は、
図1のA-A断面に相当する断面を
図2と同様にして示している。
【0042】
このような態様で弾性連結片53を形成する場合、弾性連結片53は、薄肉屈曲部53dを起点に弾性的に屈曲し、これによって、弁体52が吐出孔26の周縁部に離接して吐出孔26を開閉する逆止弁として機能することを可能にしている。
【0043】
このような弁体付ノズル部材5は、例えば、
図17に示すような射出成形型6を用いて成形することができる。
【0044】
図17に示す射出成形型6は、円柱状のコア部62を含む第一型61と、コア部62が挿入される凹部66を含む第二型65とを備えている。そして、型締めした第一型61と第二型65との間に、弁体付ノズル部材5を成形するキャビティが形成されるようにしている。
【0045】
第一型61のコア部62は、ノズル本体51の内周面側を成形するとともに、第二型65の凹部66との間で、弁体52と弾性連結片53とが成形されるように構成されており、第二型65の凹部66の底側には、第一型61のコア部62の頂面との間で、弁体52を成形する弁体成形部M52が刻設されている。そして、第一型61のコア部62の外周面と、第二型65の凹部66の内周面とに、両者の間で、弾性連結片53を成形する弾性連結片成形部M53が刻設されている。
これ以外の構成は、
図8に示す射出成形型と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0046】
以上のような本実施形態によれば、キャップ本体2に弁体付ノズル部材5を取りけるだけで、逆止弁機能を備えた吐出キャップ1を構成することができ、キャップ本体2と弁体付ノズル部材5とは、それぞれに要求される機能が良好に発揮されるように、適切な材料を用いて形成することができる。
また、弁体付きノズル部材5の剛性よりも、キャップ本体2や上蓋3の剛性の方が高くなり、剛性の高いキャップ本体2と上蓋3とで、剛性の低い弁体付きノズル部材5が挟み込まれるようにすることで(
図2、
図11参照)、不使用時の内容物に対するシール性をより向上させることができるように、これらを形成する材料を適宜選択するのが好ましい。
【0047】
キャップ本体2は、弁体付ノズル部材5とのシール性、容器本体100との嵌合性、上蓋3との嵌合性などを考慮して、比較的剛性が高い、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレンなどを用いて形成することができ、その好ましい曲げ弾性率は500~2000MPaであり、より好ましくは900~1400MPaである。
キャップ本体2を形成する材料の曲げ弾性率が上記範囲を超えると、上蓋3との嵌合力が必要以上に強くなり、開閉し難くなってしまう傾向がある。特に、ヒンジキャップの場合には、ヒンジ切れが生じるなどの不具合が生じかねない。一方、上記範囲に満たないと、上蓋3や容器本体100との嵌合力が不足してしまい、特に、ヒンジキャップの場合には、ヒンジスナップ性を出し難くなってしまう傾向にある。
【0048】
また、弁体付ノズル部材5は、弾性連結片53が良好に弾性変形するように、比較的剛性が低い、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどを用いて形成することができ、その好ましい曲げ弾性率は10~200MPaであり、より好ましくは10~100MPaである。
弁体付ノズル部材5を形成する材料の曲げ弾性率が上記範囲を超えると、内容物が弁体52を押し上げる際に、弾性連結片53が弾性変形し難くなり、吐出孔26の開放が妨げられて、内容物を吐出させるのに十分な流路が確保できなくなってしまう傾向がある。一方、上記範囲に満たないと、弾性連結片53が弾性変形し易くなり、弁体52が吐出孔26を閉塞するのに十分な弾性力が得られずに、シール性が低下してしまう傾向にある。
【0049】
また、ノズル本体51の先端開口部から内容物を吐出させる際に、当該先端開口部付近の汚れを防止するために、弁体付ノズル部材5には撥水剤などを添加することもできる。この場合、キャップ本体2は弁体付ノズル部材5とは別体に構成されているため、容器本体100との嵌合性に影響はない。
【0050】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0051】
例えば、前述した実施形態では、キャップ本体2と上蓋3とがヒンジ4で連結された例を挙げているが、キャップ本体2と上蓋3とは別々に分離して形成されたものであってもよく、上蓋3は、螺合によってキャップ本体2に着脱可能とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば、油類、醤油、ソース、ドレッシング等の調味料類、洗剤、化粧品等の薬液類などを内容物とする容器の口部に装着して用いられる逆弁機能を備えた吐出キャップに関連する技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 吐出キャップ
2 キャップ本体
23 ノズル取着部
24 弁体収容部
26 吐出孔
5 弁体付ノズル部材
51 ノズル本体
51a 環状嵌合部
52 弁体
52a 周壁部
52b 環状溝
53 弾性連結片
53a 本体側接続部
53b 弁体側接続部
53c 連結部
53d 薄肉屈曲部
6 射出成形型
61 第一型
62 コア部
65 第二型
66 凹部
M52 弁体成形部
M53 弾性連結片成形部
M53a 本体側接続部成形部
M53b 弁体側接続部成形部
M53c 連結部成形部