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  • 特許-樹脂組成物、その製造方法及び成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20231011BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231011BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231011BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/013
C08K7/14
C08L23/08
C08J5/08 CFD
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019022342
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020128512
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 公亮
(72)【発明者】
【氏名】間簔 雅
(72)【発明者】
【氏名】中島 陽
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513194(JP,A)
【文献】特表2014-531507(JP,A)
【文献】特開2009-046678(JP,A)
【文献】特開昭59-089351(JP,A)
【文献】特開2007-114264(JP,A)
【文献】特開2017-052262(JP,A)
【文献】特開2017-052925(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物であって、
前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、
前記ポリカーボネートを、60~80質量部の範囲内で含有し、
前記ガラス繊維を、10~30質量部の範囲内で含有し、
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを、7.5~10質量部の範囲内で含有し、
前記ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)との質量比(GF/OA)の値が1.0~4.0の範囲内であり、かつ、
前記ガラス繊維の、繊維の長さ/平均直径で表されるアスペクト比が、30~36の範囲内である
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
温度250℃、せん断速度1×10/秒におけるせん断粘度が、170~415Pa・sの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーのオレフィンが、エチレンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーのエステル部分のアルコキシ基のアルキル基の炭素数が、1~4の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルキル基の炭素数が4であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、エステル系潤滑剤を、0.1~2質量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、難燃剤を、10~20質量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記難燃剤が、縮合リン酸エステルであることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、スチレン系樹脂を、1~30質量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを混練機で混練する工程において、
前記混錬機のバレルの投入口からポリカーボネート及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを投入し、次いでバレルの後半でガラス繊維を投入して混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、その製造方法及び成形品に関する。より詳しくは、溶融時の流動性と成形品の衝撃強度及び難燃性に優れる樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、自動車やOA機器などに使用されている成形品の軽量化や材料使用量削減による環境負荷低減を目的として、成形品の薄肉化が行われている。成形品を薄くすると、剛性が低くなることが課題であり、剛性を高くするために繊維状フィラーを添加することが有効である。一方、前記繊維状フィラーを添加すると、溶融時の流動性の低下と成形品の衝撃強度の低下が問題になる。また、成形品を薄くすると、難燃性が低下することも問題であり、前述した家電機器やOA機器などでは、強度に加え、難燃性が求められる。
【0003】
特許文献1には、ポリカーボネート、ケイ素含有無機充填剤及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー又はエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物が開示され、成形時の色調変化やポリカーボネートの分子量の低下及び衝撃強度の低下を抑制することが記載されているが、流動性の低下を抑制することについては言及されておらず、成形品を効率よく製造するには溶融時の流動性は重要な特性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-294741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、溶融時の流動性と成形品の衝撃強度及び難燃性に優れる樹脂組成物、その製造方法及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、前記ポリカーボネートを、60~80質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維を、10~30質量部の範囲内で含有し、前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを、7.5~10質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)との質量比(GF/OA)の値が1.0~4.0の範囲内であり、かつ、前記ガラス繊維の、繊維の長さ/平均直径で表されるアスペクト比が、30~36の範囲内であることによって、溶融時の流動性と成形品の衝撃強度及び難燃性に優れる樹脂組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物であって、
前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、
前記ポリカーボネートを、60~80質量部の範囲内で含有し、
前記ガラス繊維を、10~30質量部の範囲内で含有し、
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを、7.5~10質量部の範囲内で含有し、
前記ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)との質量比(GF/OA)の値が1.0~4.0の範囲内であり、かつ、
前記ガラス繊維の、繊維の長さ/平均直径で表されるアスペクト比が、30~36の範囲内である
ことを特徴とする樹脂組成物。
【0009】
2.温度250℃、せん断速度1×10/秒におけるせん断粘度が、170~415Pa・sの範囲内である
ことを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
【0010】
3.前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーのオレフィンが、エチレンであることを特徴とする第1項又は第2項に記載の樹脂組成物。
【0011】
4.前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーのエステル部分のアルコキシ基のアルキル基の炭素数が、1~4の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0012】
5.前記アルキル基の炭素数が4であることを特徴とする第4項に記載の樹脂組成物。
【0013】
6.前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、エステル系潤滑剤を、0.1~2質量部の範囲内で含有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0015】
7.前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、難燃剤を、10~20質量部の範囲内で含有することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0016】
.前記難燃剤が、縮合リン酸エステルであることを特徴とする第項に記載の樹脂組成物。
【0017】
9.前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、スチレン系樹脂を、1~30質量部の範囲内で含有することを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0018】
10.第1項から第項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを混練機で混練する工程において、
前記混錬機のバレルの投入口からポリカーボネート及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを投入し、次いでバレルの後半でガラス繊維を投入して混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【0019】
11.第1項から第項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記手段により、溶融時の流動性と成形品の衝撃強度及び難燃性に優れる樹脂組成物、その製造方法及び成形品を提供することができる。
【0021】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0022】
以下、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーを例にとって効果の発現機構を説明する。
【0023】
<オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーの効果>
オレフィン(例えば、エチレン)-アクリル酸エステルコポリマーのアクリル酸エステル部分の極性が高いことから、マトリックスポリマーのポリカーボネート(以下、PCともいう。)とガラス繊維(以下、GFともいう。)の両方に対して、親和性が高く、界面強度が強くなる。これにより、衝撃強度が高まる。
【0024】
一方、エチレン部分は極性が低いため、PCと非相溶になる。一般的には、非相溶なエチレンがあると、相分離し、強度が弱くなると考えられるが、本発明では、非相溶成分であるにもかかわらず、強度が発現することを新たに見出したものである。
【0025】
図1は、ポリカーボネート1、ガラス繊維2、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー3を含有する樹脂組成物の高温状態と低温状態での分子挙動を説明する模式図である。
【0026】
図1(a)は高温状態(流動時)での樹脂組成物の状態を示した模式図である。成形中には、高温であり、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー3の運動性が高まり、分子鎖が伸びた状態になり、PC1の分子鎖間に入り込み、当該分子の絡み合いを阻害することで、流動性が高くなるものと推察される。
【0027】
図1(b)は、低温状態(成型後)の樹脂組成物の状態を示す模式図である。一方、冷却すると、オレフィン部分が折りたたまれ、PC1分子間から、PC1とGF2の界面に上記コポリマーが存在することとなる。これにより、PC1の分子間の絡み合いが生まれ、強度が保持されるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】樹脂組成物の高温状態と低温状態での分子挙動を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の樹脂組成物は、少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、前記ポリカーボネートを、60~80質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維を、10~30質量部の範囲内で含有し、前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを、7.5~10質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)との質量比(GF/OA)の値が1.0~4.0の範囲内であり、かつ、前記ガラス繊維の、繊維の長さ/平均直径で表されるアスペクト比が、30~36の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記樹脂組成物において、
ポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、ポリカーボネートを60~80質量部の範囲内、ガラス繊維を10~30質量部の範囲内、かつ、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを7.5~10質量部の範囲内で含有する。
【0031】
所望の強度を得るために、ガラス繊維を10~30質量部加えることを特徴とする。また、アスペクト比が5以上のガラス繊維を使うことで粒子状のフィラーに比べ、強度改善効果が大きい。10質量部以上で改善効果が発現し、30部以下で繊維量が多すぎることによる、マトリックスポリマーとガラス繊維間、又はガラス繊維同士においてクラックが発生することを抑制し、衝撃強度が向上する。
【0033】
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーのオレフィンが、エチレンであることは、分岐構造がない方が、冷却時に折りたたまれ、オレフィン部分の体積が小さくなるため、強度が向上する。
【0034】
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーのエステル部分のアルコキシ基のアルキル基の炭素数が1~4であることは、炭素数がこの範囲内であれば、ガラスフィラー、ポリカーボネートとの相互作用のバランスがよい。中でも、前記アルキル基の炭素数が4(ブチル)であることが、好ましい。
【0035】
さらに、本発明の樹脂組成物には、エステル系潤滑剤を、前期樹脂組成物100質量部当たり0.1~2質量部の範囲内で含有することが好ましく、詳細なメカニズムは不明だが、他の潤滑剤を用いた場合よりも強度が高い。また、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーがあることにより、使用量が少なくても、離型性が良い。
【0036】
また、難燃剤を、前記樹脂組成物100質量部当たり10~20質量部の範囲内で含有することが、好ましく、10~20質量部を用いることで、十分な難燃性が得られる。ハロゲン系は環境面で悪く、リン系が好ましい。縮合リン酸エステルがさらに好ましい。縮合リン酸エステルを用いることで、他の成分と相溶しやすく、難燃性を高めることができ、さらに、溶融時の流動性を向上することができる。
【0037】
また、スチレン系樹脂を、前記樹脂組成物100質量部当たり1~30の範囲内で含有することで、流動性を付与しつつ、衝撃強度を維持することができ、好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記ポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを混練機で混練する工程において、前記混錬機のバレルの投入口からポリカーボネート及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィ-/アクリル酸コポリマーを投入し、次いでバレルの後半でガラス繊維を投入して混練することを特徴とする。
【0039】
ガラス繊維を二軸混錬機の後半から投入することで、ガラス繊維が折れにくくなり、ガラス繊維の使用量が少ない量で曲げ弾性率を高くできる。ガラス繊維量が少量のため、溶融時の流動性の低下と、成形品の衝撃強度の低下を防ぐことができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は成形品として加工、使用に供されることが好ましい。
【0041】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0042】
≪本発明の樹脂組成物の概要≫
本発明の樹脂組成物は、少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを含有する樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート、前記ガラス繊維、及び前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又は前記オレフィン-アクリル酸コポリマーの合計100質量部当たり、前記ポリカーボネートを、60~80質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維を、10~30質量部の範囲内で含有し、前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを、7.5~10質量部の範囲内で含有し、前記ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)との質量比(GF/OA)の値が1.0~4.0の範囲内であり、かつ、前記ガラス繊維の、繊維の長さ/平均直径で表されるアスペクト比が、30~36の範囲内であることを特徴とする。
【0043】
オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量が少ないと、十分にガラス繊維の界面に当該オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーが存在しなくなり、流動性と衝撃強度向上の効果が十分に発揮されない。一方で、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマー含有量が多いと、マトリックス樹脂中にガラス繊維と接していない量が増え、マトリックス樹脂の衝撃強度が低下する。
そのため、ガラス繊維の含有量(GF)とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量(OA)の質量比(GF/OA)の値は、1.0~4.0の範囲内であることが必要である。
【0044】
以下、本発明の樹脂組成物の構成要素について説明する。
【0045】
〔1〕ポリカーボネート
本発明でいうポリカーボネートは、式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは連結基を表し、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0046】
一般に、ポリカーボネートは脂肪族ポリカーボネートと芳香族ポリカーボネートが知られている。脂肪族ポリカーボネートは熱分解温度が低く成形加工できる温度が低いため、通常耐熱性を向上させる方法が取られる。例えば、脂肪族ポリカーボネートの末端水酸基とイソシアネート化合物を反応させることで熱分解温度が向上する。また、二酸化炭素とエポキシドとを金属触媒存在下で共重合する脂肪族ポリカーボネートは、衝撃強度、軽量性、透明性、耐熱性等の優れた特性を有し、さらに生分解性であることから、環境負荷が低く、また、その特性からエンジニアプラスチック材料、医療用材料としても重要な樹脂である。
【0047】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、透明性、衛生性、並びに機械的強度(例えば、衝撃強度)等、優れた諸物性を有しており、種々の用途に広く使用されている。「芳香族ポリカーボネート」とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネートをいう。例えば、ポリカーボネートを構成するジオール成分として、ビスフェノールA等の芳香族基を含むジオール成分を使用したポリカーボネートが挙げられる。特に、芳香族基を含むジオール成分のみを使用したポリカーボネートが好ましい。またその製造方法は、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる方法(界面法)や、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物やその誘導体とジフェ二ルカーボネートなどの炭酸ジエステル化合物とを、溶融状態でエステル(交換)反応させる方法(溶融法、又はエステル交換法)等が、知られている。
【0048】
本発明では、なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0049】
前記芳香族ポリカーボネートは、直鎖型ポリカーボネートと分岐型ポリカーボネートが知られているが、目的に応じて使い分けたり、併用することが好ましい。例えば、分岐型ポリカーボネートは、分子量が同じ直鎖型ポリカーボネートに比べて流動性が低い傾向にあるため、直鎖型のポリカーボネートを選択したり、直鎖型のポリカーボネートと混合して流動性を高めたりすることができる。
【0050】
分岐型の芳香族ポリカーボネートを得るには、例えば、特開2006-89509号公報や国際公開第2012/005250号記載の炭酸ジエステルに対する反応性のある官能基を分子中に3つ以上有する多官能化合物由来の分岐を有する分岐型の芳香族ポリカーボネートや国際公開第2014/024904号に記載されている3官能以上の脂肪族ポリオール化合物を含む連結剤を、エステル交換触媒の存在下、減圧条件でエステル交換反応させて、分岐型の芳香族ポリカーボネートを製造する方法等を参照することができる。
【0051】
芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、及び環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0052】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも衝撃強度の点からビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が特に好ましく、汎用されている。
【0053】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の二価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-トを使用することが可能である。
【0054】
例えば、二価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。
【0055】
これらのポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0056】
これらのポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
【0057】
ポリカーボネートのガラス転移温度Tgは、160~250℃、好ましくは170~230℃である。
【0058】
Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0059】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステル又はハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0060】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族又は脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート、並びにかかる二官能性カルボン酸及び二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートを含む。また、得られた芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0061】
分岐ポリカーボネートは、本発明の樹脂組成物の溶融張力を増加させ、かかる特性に基づいて押出成形、発泡成形及びブロー成形における成形加工性を改善できる。結果として寸法精度により優れた、これらの成形法による成形品が得られる。
【0062】
分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、及び4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン及び1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0063】
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、二価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.03~1モル%、好ましくは0.07~0.7モル%、特に好ましくは0.1~0.4モル%である。
【0064】
また、分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。なお、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0065】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0066】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0067】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0068】
また、反応促進のために、例えば、第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、メルトフローレートや耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0069】
反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0070】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120~350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。
【0071】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0072】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9~1×10-5当量、より好ましくは1×10-8~5×10-6当量の範囲で選ばれる。
【0073】
溶融エステル交換法による反応では、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期又は終了後に、例えば2-クロロフェニルフェニルカーボネート、2-メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート及び2-エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0074】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5~50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、0.01~500ppmの割合、より好ましくは0.01~300ppm、特に好ましくは0.01~100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0075】
前記以外の反応形式の詳細についても、各種文献及び特許公報などで良く知られている。
【0076】
ポリカーボネートの重量平均分子量は、特に限定されないが、下記測定法により、好ましくは20000~60000の範囲であり、より好ましくは30000~57000の範囲であり、さらに35000~55000の範囲である。
【0077】
〈重量平均分子量〉
測定対象となる樹脂を、濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、得られた溶液をGPC測定用のサンプルとして用いた。GPC測定条件は、下記に示すGPC分析条件を採用し、サンプル中に含まれる樹脂の重量平均分子量を測定する。
【0078】
(GPC測定条件)
GPC装置として「HLC-8320GPC/UV-8320(東ソー株式会社製)」を用い、カラムとして「TSKgel、SupermultiporeHZ-H(東ソー株式会社製4.6mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いる。分析は、流速0.35mL/min、サンプル注入量20μL、測定温度40℃、RI検出器を用いて行う。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとする。
【0079】
重量平均分子量が20000~60000の範囲のポリカーボネートであると、耐熱性などの機械的特性と流動性のバランスに優れる成形加工性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物となり、強度低下や成形加工時の金型取出し後の後収縮によるヒケの発生しにくい機械的特性と表面外観に特に優れるポリカーボネート樹脂組成物となる。
【0080】
〔2〕ガラス繊維
本発明に係るガラス繊維とは、平均直径が20μm以下であり、かつアスペクト比(繊維の長さ/平均直径)が5以上である繊維状のフィラーをいう。ガラス繊維は、本発明に係る樹脂であるポリカーボネートに分散されることによって、樹脂組成物の剛性を高める。
【0081】
ガラス繊維のアスペクト比(繊維の長さ/平均直径)は、樹脂組成物の剛性を高める観点から、5以上であることが好ましい。また、ガラス繊維のアスペクト比は、ガラス繊維の分散性の観点から、50未満であることが好ましい。
【0082】
ガラス繊維の長さは、樹脂組成物の強度を高める観点から、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。また、ガラス繊維の長さは、分散性の観点から、600μm未満であることが好ましい。
【0083】
ガラス繊維の平均直径は、成形体での外観悪化を防ぐため5~20μmの範囲内であることが好ましい。
【0084】
ガラス繊維の長さ、平均直径及びアスペクト比は、例えば、レーザー顕微鏡(VX-X250;株式会社キーエンス)でガラス繊維を観察して、測定することにより求められる。具体的には、例えば、樹脂組成物から樹脂を除去し、無作為に選び出した50本のガラス繊維の繊維長さ及び繊維径をそれぞれ測定する。そして、50本のガラス繊維の長さの平均値をガラス繊維の長さとする。また、50本のガラス繊維の直径の平均値をガラス繊維の直径とする。さらに、各ガラス繊維のアスペクト比を算出し、50本のガラス繊維のアスペクト比の平均値をガラス繊維のアスペクト比として算出できる。
【0085】
ガラス繊維を前述した所定の形状に成形する方法は、任意の方法で行うことができる。 ガラス繊維の長さは、例えば、ボールミルを用いて調製できる。ボールミルに使用されるメディアの材料の例には、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などが含まれる。メディアの材料は、ジルコンやジルコニアが好ましい。また、メディアの形状は、通常球形であり、その直径は4~8mmであることが好ましい。
【0086】
樹脂100質量部に対するガラス繊維の含有量は、樹脂組成物の強度を高くする観点から、10質量部以上である。また、溶融時の流動性と成形品の衝撃強度の劣化を防ぐ観点から、30質量部以下である。
【0087】
樹脂の硬化物に対するガラス繊維の含有量は、例えば、樹脂組成物の硬化物を溶融させて、樹脂組成物から熱可塑性樹脂を除去した後、ガラス繊維を測定することで求めることができる。
【0088】
ガラス繊維は市販品を用いることができ、例えば、ガラス繊維CS 3 PE-948、CSF 3 PE-455、CHG 3 PA-830(いずれも日東紡績株式会社製)を挙げることができる。
【0089】
〔3〕オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー及びオレフィン-アクリル酸コポリマー
本発明に係るオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー及びオレフィン-アクリル酸コポリマーは、オレフィン-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、オレフィン-(メタ)アクリル酸コポリマーを含むものである。
【0090】
前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー及びオレフィン-アクリル酸コポリマーのオレフィンは、エチレンであることが好ましい。分岐構造がない方が冷却時に折りたたまれオレフィン部分の体積が小さくなるため、衝撃強度向上の観点から、好ましい。
【0091】
また、前記オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーのエステル部分のアルコキシ基のアルキル基の炭素数が1~4であることが、ガラスフィラー及びポリカーボネートとの相互作用のバランス上好ましく、前記アルキル基の炭素数が4(ブチル)であることがより好ましい。
【0092】
本発明の樹脂組成物において、エチレン-アクリル酸エステルコポリマー及びエチレン-アクリル酸コポリマーは、公知のエチレン-アクリル酸エステルコポリマー、エチレン-メタクリル酸エステルコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマーの中から適宜選択することができる。
【0093】
モノマーの(メタ)アクリル酸エステルとしてメチルアクリレート,エチルアクリレート,プロピルアクリレート,ブチルアクリレート,アミノアクリレート,ヘキシルアクリレート,オクチルアクリレート,2-エチルヘキシルアクリレート,シクロヘキシルアクリレート,ドデシルアクリレート,オクタデシルアクリレート,フェニルアクリレート,ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート,エチルメタクリレート,プロピルメタクリレート,ブチルメタクリレート,アミノメタクリレート,ヘキシルメタクリレート,オクチルメタクリレート,2-エチルヘキシルメタクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,ドデシルメタクリレート,オクタデシルメタクリレート,フェニルメタクリレート,ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルを挙げることができる。中でも、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレートであることが好ましい。
【0094】
オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーの含有量は~10質量部の範囲内であると、衝撃強度向上の効果が十分に発揮できる
【0095】
〔4〕エステル系潤滑剤
本発明に用いられるエステル系潤滑剤に特に制限はなく、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸などの炭素数12~32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタンなどの多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールの複合エステル化合物などを用いることができる。このような脂肪酸エステル系滑剤としては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレートなどを挙げることができる。これらのエステル系滑剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、ペンタエリスリトールテトラステアレートを好適に用いることができる。
【0096】
エステル系潤滑剤は、樹脂組成物100質量部当たり0.1~2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0097】
〔5〕難燃剤
難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレン等のハロゲン系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ジフェニルスルホン-3,3´-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機金属塩系難燃剤、ポリオルガノシロキサン系難燃剤などが挙げられるが、縮合リン酸エステル系難燃剤が好ましい。難燃剤の含有量は、本発明に係る熱可塑性樹脂と化合物の合計100質量部に対し、通常1~30質量部、好ましくは5~25質量部、更に好ましくは10~20質量部である。
【0098】
〔6〕スチレン系樹脂
本発明において、スチレン系樹脂とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体を意味する。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体を意味する。本発明の樹脂組成物100質量部当たり10~20質量部の範囲内で含有することが、好ましい。
【0099】
前記スチレン系単量体としては、その構造中にスチレン骨格を有する単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物単量体が挙げられ、中でも、スチレンが好ましい。
【0100】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体の単独重合体でも、スチレン系単量体と他の単量体成分との共重合体であってもよい。スチレン系単量体と共重合可能な単量体成分としては、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキルメタクリレート単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート単量体等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン単量体などが挙げられ、これらの2種以上を共重合してもよい。このような他の単量体成分の共重合割合は、スチレン系単量体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0101】
スチレン系樹脂としては、特に、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体が、耐熱性、透明性等の光学材料に求められる特性に関して、特に優れているため好ましい。
【0102】
スチレン-アクリロニトリル共重合体の場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合は、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは1~30質量%であり、さらに好ましくは1~25質量%である。共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合が1~40質量%の範囲内である場合、透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0103】
スチレン-メタクリル酸共重合体の場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合割合は、好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは0.1~40質量%であり、さらに好ましくは0.1~30質量%である。共重合体中のメタクリル酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れた共重合体が得られる傾向にあり、50質量%以下で
あれば透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0104】
スチレン-無水マレイン酸共重合体の場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合は、好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは0.1~40質量%であり、さらに好ましくは0.1~30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れた共重合体が得られる傾向にあり、50質量%以下であれば透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0105】
〔7〕他の樹脂成分
本発明の樹脂組成物には、他の樹脂成分を用いることもできる。
【0106】
本発明の樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル樹脂を配合することもできる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレ-ト)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)がメルトフローレート、耐衝撃性の点から好ましい。
【0107】
本発明の樹脂組成物には、さらに、エラストマーを配合することも好ましい。エラストマーを配合することで、得られる樹脂組成物の衝撃強度をより改良することができる。
【0108】
本発明に用いるエラストマーは、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴムが好ましい。
【0109】
また、本発明の樹脂組成物には、他の樹脂添加剤を適宜用いることも好ましく、例えば、熱安定剤(例えば、リン系化合物等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、離型剤(例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等)、充填材、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、酸化チタン、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、メルトフローレート改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
【0110】
〔8〕樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくともポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマー等を準備した後、前記ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーと、ホスト材であるポリカーボネートとを混合しながら溶融混練装置で剪断力を与えて樹脂組成物を製造する方法が好ましく用いられる。
【0111】
具体的な混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ポリラボシステム(HAAKE社製);ラボプラストミル(東洋精機製作所社製);ナウターミキサーブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
【0112】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記ポリカーボネート、ガラス繊維、及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを混練機で混練する工程において、前記混錬機のバレルの投入口からポリカーボネート及びオレフィン-アクリル酸エステルコポリマー又はオレフィン-アクリル酸コポリマーを投入し、次いでバレルの後半でガラス繊維を投入して混練する工程を設けることが好ましい製造方法である。
【0113】
ガラス繊維を二軸混錬機の後半から投入することで、ガラス繊維が折れにくくなり、ガラス繊維の使用量が少ない量で曲げ弾性率を高くできる。ガラス繊維量が少量のため、溶融時の流動性の低下と、成形品の衝撃強度の低下を防ぐことができる。
【0114】
2回目の投入位置である「バレルの後半」とは、バレル位置の60~90%の位置が好ましい。60%未満であると、混錬によるシェアでガラス繊維が折れやすくなり、強度が十分に高くなりにくい。
【0115】
前記バレル位置の60%から90%の位置であると、ガラス繊維とオレフィン-アクリル酸エステルコポリマーの相互作用により、ガラス繊維近傍にオレフィン-アクリル酸エステルコポリマーが存在しやすくなり衝撃強度を高めることができる。90%を超えてからガラス繊維を投入した場合、オレフィン-アクリル酸エステルコポリマーがガラス繊維近傍に十分に集まらないため、衝撃強度が低下しやすいため、好ましくは前記バレル位置の60%から90%の位置である。
【0116】
〔9〕成形品
次いで、本発明の樹脂組成物を、成形機により加熱溶融させて射出成形し再生樹脂成形品を得る。本発明の樹脂組成物は、溶融時の流動性に優れることにより、成形機内で均一に加熱や圧力を受けるため、成形性に優れる。
【0117】
成形品として成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0118】
中でも、射出成形法を用いて成形品を作製することが好ましい。
【0119】
本発明の樹脂組成物は、曲げ弾性率に優れているため、OA機器の外装材や内装材として有用である。また、従来の樹脂製品に比べて薄肉化できるため、軽量化が期待される。
【0120】
樹脂組成物を成形した成形品は、例えば、電気電子部品、家電部品、自動車用部品、各種建材、容器、雑貨等の各種用途に好適に使用できる。
【実施例
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0122】
〔実施例1〕
以下の材料を用いて樹脂組成物を作製した。
【0123】
ポリカーボネート(PC):SD POLYCA 301-10(住化ポリカーボネート株式会社)
ガラス繊維(GF):CSF 3 PE-455(日東紡績株式会社)
タルク:ミクロエースP-3(日本タルク工業株式会社)
オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー:LOTRYL EBA 35BA40(エチレン-ブチルアクリレートコポリマー アルケマ株式会社)
オレフィン-アクリル酸コポリマー:LOTRYL EMA 29BA03(エチレン-メチルアクリレートコポリマー アルケマ株式会社)
オレフィン-アクリル酸コポリマー:A-C540(エチレン-アクリル酸コポリマーハネウエル社製)
難燃剤:縮合リン酸系化合物であるPX-200(大八化学株式会社)
潤滑剤:ルナックS-90V(ステアリン酸 花王株式会社)
ユニスターH476(ペンタエリスリトールテトラステアレート、日油株式会社)
スチレン系樹脂:PSJ-ポリスチレン H9152(PSジャパン株式会社)
<樹脂組成物1の調製と成形品の作製>
ポリカーボネート(PC)87.5質量部、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー(EBA 35BA40)2.5質量部を二軸混練機KTX-30のバレルの投入口に添加し(1回目)、温度250℃、回転数250rpmで混練した。二軸混練機の後半部(バレル長の70%に相当する位置、以後「2回目の投入位置」ともいう)からガラス繊維(GF)10質量部をさらに混合し、樹脂組成物1を得た。樹脂組成物1を80℃、4時間以上乾燥させた後、JSW-110射出成形機を用いて、JIS 7171に準じた曲げ試験片とJIS K7110に準じた衝撃試験片、100mm×10mm×1.6mに成形したUL試験用の射出成形品を作製した。成形条件は、シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出速度30mm/sec、保圧50MPaとした。
【0124】
<本発明の樹脂組成物2~20及び比較例の樹脂組成物21~26の調製と成形品の作製>
樹脂組成物1の調製と成形品の作製と同様の方法で、表I及び表IIに記載の材料を、表I及び表IIに記載の割合で混錬し、本発明の樹脂組成物2~20及び比較例の樹脂組成物21~26の調製と成形品の作製をした。なお、表中の材料に係る数字はそれぞれ質量部を表す。
【0125】
≪評価≫
(1)ガラス繊維のアスペクト比の測定
ガラス繊維(GF)のアスペクト比(繊維の長さ/平均直径)については、各樹脂組成物を用いてそれぞれ、以下の方法で測定した。
<ガラス繊維のアスペクト比の測定>
ガラス繊維の長さ、平均直径及びアスペクト比は、レーザー顕微鏡(VX-X250;株式会社キーエンス)でガラス繊維を観察して、測定することにより求めた。具体的には、樹脂組成物から樹脂を除去し、無作為に選び出した50本のガラス繊維の繊維長さ及び繊維径をそれぞれ測定した。そして、50本のガラス繊維の長さの平均値をガラス繊維の長さとし、50本のガラス繊維の直径の平均値をガラス繊維の直径とした。さらに、各ガラス繊維のアスペクト比を算出し、50本のガラス繊維のアスペクト比の平均値をガラス繊維のアスペクト比として算出した。
(2)曲げ弾性率
曲げ弾性率の評価は、JIS K7171(2008)に準拠して曲げ弾性率を測定し、以下の基準で評価した。上記試験片を、JIS K7171に準拠し、曲げ速度100mm/分、治具先端R5mm、スパン間隔100mm、試験片(幅50mm×長さ150mm×厚さ4mm)の条件にて測定して求めた。測定装置は、オリエンテック社製テンシロンRTC-1225Aを用い、温度23℃、湿度55%RH下で行った。
【0126】
◎:4000MPa以上
○:3500MPa以上4000MPa未満
×:3500MPa未満
曲げ弾性率は、〇~◎であることが好ましい。
【0127】
(3)衝撃強度
衝撃強度の評価は、JIS K7110(1999)に準拠したIzod衝撃試験により衝撃強度を算出し、以下の基準で評価した。
【0128】
衝撃試験は、温度23℃、湿度50%RHに16時間試験片を放置した後測定した。
衝撃試験機は、デジタル衝撃試験機DG-UB型((株)東洋精機製作所製)を用い、温度23℃、湿度55%RHの条件下で行った。
【0129】
◎:7kJ/m以上
○:4kJ/m以上7kJ/m未満
×:4kJ/m未満
衝撃強度は、〇~◎であることが好ましい。
【0130】
(4)流動性
株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを用いて、温度250℃、せん断速度1×10/秒の時のせん断粘度で評価した。
【0131】
◎:350Pa・s未満
○:350Pa・s以上500Pa・s未満
×:500Pa・s以上
流動性は、〇~◎であることが好ましい。
【0132】
(4)難燃性
難燃性の評価は、100mm×10mm×1.6mに成形したUL試験用の射出成形品を23℃、湿度50%RHの恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行った。ここで「UL94試験」とは、鉛直に保持した所定の大きさの樹脂成形体にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法である。そして、難燃性は、以下の基準により評価した。
【0133】
◎:V-0
○:V-1又はV-2
×:規格外
難燃性は、〇~◎であることが好ましい。
【0134】
以上の樹脂組成物の構成及び評価結果を下記表I及び表IIに示した。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表I及び表IIから、本発明の構成の樹脂組成物及びそれを用いた成形品は、比較例の構成に対し、曲げ弾性率、衝撃強度、溶融時の流動性及び難燃性のそれぞれにおいて優れる特性を有することが分かる。
【符号の説明】
【0138】
1 ポリカーボネート
2 ガラス繊維
3 オレフィン-アクリル酸エステルコポリマー
図1