(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】底部反射防止膜の除去液、及び半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/42 20060101AFI20231011BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/306 D
G03F7/40 521
H01L21/30 570
(21)【出願番号】P 2019073963
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】南 雅人
(72)【発明者】
【氏名】田島 恒夫
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42
H01L 21/306
G03F 7/40
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第4級アンモニウム水酸化物(A)0.05~18.0質量%、
アルカリ金属塩(B)0.01~8.0質量%、及び
水(E)40~99.9質量%を含み、
過酸化水素、硝酸、硝酸塩、アンモニウムの過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、及び塩素酸塩からなる群より選ばれる酸化剤(X)を実質的に含有せず、
酸化剤(X)を含む酸化剤の含有量が0.1質量%未満である、底部反射防止膜の除去液。
【請求項2】
前記酸化剤(X)の含有量が、前記除去液の全量に対して、0.01質量%未満である、請求項1に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム水酸化物(A)が、下記式(a)で表される化合物(A1)である、請求項1又は2に記載の底部反射防止膜の除去液。
式(a): [N(R)
4]
+OH
-
〔上記式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~3のアルキル基である。〕
【請求項4】
前記第4級アンモニウム水酸化物(A)が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項5】
前記アルカリ金属塩(B)が、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物(B1)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項6】
さらに、水溶性有機溶媒(C)を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項7】
前記水溶性有機溶媒(C)の含有量が、前記除去液の全量に対して、0.10~70.0質量%である、請求項6に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項8】
さらに、腐食防止剤(D)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項9】
成分(A)及び(B)の合計に対する、成分(C)の含有量比〔(C)/((A)+(B))〕が、0.1~15.0である、請求項6又は7に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項10】
pHが12.0以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項11】
ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて、硬質化した部分を含む底部反射防止膜の除去に用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【請求項12】
シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される一種以上のシリコン系材料を含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子の製造に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部反射防止膜の除去液、及び当該除去液を用いた半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造においては、ドライエッチング工程があり、ドライエッチングで用いるマスクとして一般的にフォトレジスト膜が使用される。フォトレジスト膜の回路パターンの構造は、所望の回路パターンを有するフォトマスクを用い、不要部分に現像光を露光した後、アルカリ溶液で露光部を除去する事により形成される。
ところで、近年、半導体素子構造の微細化に伴い、フォトレジスト膜のみを用いた従来の手法では、現像光の乱反射が要因となり、所望の回路パターンを有するフォトレジスト膜を正確に形成できないという点が問題となっている。この問題を解決する手段として、フォトレジスト膜の下層に、現像光の乱反射を防止するための底部反射防止膜を設けることがある。
【0003】
また、ドライエッチング工程の終了後、不要となったフォトレジスト膜や底部反射防止膜、エッチングにより生じたエッチング残渣等は、例えば、除去液を用いた洗浄によって、半導体ウエハの表面から除去される。
しかしながら、洗浄によって、上層のフォトレジスト膜は比較的除去され易いが、下層の底部反射防止膜はドライエッチングにより変質した場合、半導体ウエハ上に残存してしまう場合がある。
さらに、半導体素子の構成材料(配線材料、絶縁材料、基板材料)として、タングステン、アルミニウム、銅、タンタル、ニッケル、コバルト等の金属、又はこれらの酸化物、窒化物、合金等が用いられることがある。
このような半導体素子においては、洗浄に用いる除去液によって上記の半導体素子の構成材料が腐食しないことも要求される。
【0004】
そのため、半導体素子の構成材料の腐食を抑制しつつ、ドライエッチング工程の終了後に、フォトレジストや底部反射防止膜を効率的に除去し得る除去液の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、第4級アンモニウム水酸化物、酸化剤、アルカノールアミン、及びアルカリ金属水酸化物を含む水溶液からなる剥離液が開示されている。
また、特許文献2には、多価アルコールのエーテル誘導体、エステル誘導体、エーテルエステル誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、アルカリ金属水酸化物と、キレート化合物とを含有する水溶液からなるフォトレジスト用剥離剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-075285号公報
【文献】特開2001-142231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されたような剥離液は、例えば、底部反射防止膜の除去性や、半導体素子の各種構成材料に対する腐食の抑制(以下、「防食性」ともいう)等の各種性能が未だ十分とはいえない。
そのため、各種性能を向上させた底部反射防止膜の除去液が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第4級アンモニウム水酸化物(A)及びアルカリ金属塩(B)を所定量含み、特定の酸化剤(X)を実質的に含有しない、底部反射防止膜の除去液を提供する。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]の態様が含まれる。
[1]
第4級アンモニウム水酸化物(A)0.05~18.0質量%、及び
アルカリ金属塩(B)0.01~8.0質量%を含み、
過酸化水素、硝酸、硝酸塩、アンモニウムの過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、及び塩素酸塩からなる群より選ばれる酸化剤(X)を実質的に含有しない、底部反射防止膜の除去液。
[2]
前記酸化剤(X)の含有量が、前記除去液の全量に対して、0.01質量%未満である、上記[1]に記載の底部反射防止膜の除去液。
[3]
前記第4級アンモニウム水酸化物(A)が、下記式(a)で表される化合物(A1)である、上記[1]又は[2]に記載の底部反射防止膜の除去液。
式(a): [N(R)4]+OH-
〔上記式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、又はヒドロキシ基で置換された炭素数1~3のアルキル基である。〕
[4]
前記第4級アンモニウム水酸化物(A)が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)から選ばれる1種以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[5]
前記アルカリ金属塩(B)が、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物(B1)を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[6]
さらに、水溶性有機溶媒(C)を含有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[7]
前記水溶性有機溶媒(C)の含有量が、前記除去液の全量に対して、0.10~70.0質量%である、上記[6]に記載の底部反射防止膜の除去液。
[8]
さらに、腐食防止剤(D)を含有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[9]
さらに、水(E)を含有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[10]
pHが12.0以上である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[11]
ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて、硬質化した部分を含む底部反射防止膜の除去に用いられる、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[12]
シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される一種以上のシリコン系材料を含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子の製造に用いられる、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液。
[13]
第4級アンモニウム水酸化物(A)0.05~18.0質量%、及び
アルカリ金属塩(B)0.01~8.0質量%を含み、
下記要件(I)及び(II)を満たす、底部反射防止膜の除去液。
・要件(I):60℃の前記除去液を用いて、シリコン基板上の、ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて硬質化した部分を含む底部反射防止膜を除去する処理時間が30分以下である。
・要件(II):60℃の前記除去液を用いて、シリコン基板上のシリコンゲルマニウム膜をエッチング処理した際のエッチング速度が3.0Å/分以下である。
[14]
シリコンゲルマニウムを含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子を製造する方法であって、
上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の底部反射防止膜の除去液を用いて、底部反射防止膜を除去する洗浄工程を有する、半導体素子の製造方法。
[15]
前記半導体素子が、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される1種以上の絶縁膜をさらに有するものであり、且つ
ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて硬質化した部分を含む底部反射防止膜を、前記除去液を用いて除去する工程を有する、上記[14]に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の好適な一態様の除去液によれば、例えば、液安定性、底部反射防止膜の除去性、及び半導体素子の各種構成材料に対する防食性等の各種性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔除去液〕
本発明の底部反射防止膜の除去液(以下、単に「除去液」ともいう)は、第4級アンモニウム水酸化物(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう)及びアルカリ金属塩(B)(以下、単に「成分(B)」ともいう)を含む。
成分(A)は、除去液を強アルカリ性とし、底部反射防止膜を溶解させて除去する働きを有する。また、除去液が成分(A)と共に成分(B)を含有することにより、成分(A)の底部反射防止膜の除去性が促進される。
【0011】
また、本発明の除去液は、過酸化水素、硝酸、硝酸塩、アンモニウムの過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、及び塩素酸塩からなる群より選ばれる酸化剤(X)を実質的に含有しない。
特許文献1に記載されたように、一般的にこのような酸化剤(X)は、フォトレジスト膜や底部反射防止膜の除去を促進させるために使用される。しかしながら、これらの酸化剤(X)の中には、酸化剤としての機能が強すぎるため、半導体素子の各種構成材料を用いて構成された基板や膜の腐食を引き起こす要因となる。特に、シリコンゲルマニウム(SiGe)等のシリコン系材料を含む構成材料を用いて構成された基板や膜は、酸化剤(X)によって、腐食され易い。
【0012】
また、これらの酸化剤(X)を含有しても、硬質化した底部反射防止膜を十分に除去できない場合がある。
例えば、ドライエッチングにより露出した表面に、ホウ素ドーピング処理を行った場合、底部反射防止膜にもホウ素がドーピングされることがあり、そのような場合、少なくとも底部反射防止膜の表面が硬質化する。特許文献1等に記載されたような従来の剥離液では、上記の硬質化した底部反射防止膜の除去が非常に難しい。
それに対して、成分(A)及び(B)を含有すると共に、酸化剤(X)を実質的に含有しない除去液とすることで、このような硬質化した底部反射防止膜を容易に除去し得ることが分かった。さらに、本発明の除去液は、このような酸化剤(X)を実質的に含有しないため、シリコン系材料に対する防食性に優れる。
【0013】
なお、本明細書において、「酸化剤(X)を実質的に含有しない」とは、除去液の調製の際に、酸化剤(X)を積極的に添加しないこと意味する。そのため、不可避的に混入する態様までを除外するわけではないが、酸化剤(X)の含有量は極力少ないほど好ましい。
【0014】
本発明の一態様の除去液において、酸化剤(X)の含有量は、シリコン系材料に対する防食性に優れた除去液とする観点から、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%未満、更に好ましくは0.0001質量%未満である。
【0015】
本発明の除去液は、硬質化した底部反射防止膜の除去性を向上させると共に、シリコン系材料に対する防食性に優れた除去液とする観点から、「酸化剤(X)を実質的に含有しない」と制限しているが、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化剤(X)以外の他の酸化剤を含有していてもよい。
ただし、上記と同様の観点から、他の酸化剤の含有量も、極力少ないほど好ましい。
本発明の一態様の除去液において、酸化剤(X)を含む酸化剤の含有量としては、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0.001質量%未満、より更に好ましくは0.0001質量%未満である。
【0016】
本発明の一態様の除去液は、さらに、水溶性有機溶媒(C)(以下、単に「成分(C)」ともいう)及び腐食防止剤(D)(以下、単に「成分(D)」ともいう)から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、本発明の一態様の除去液は、希釈溶媒として、水(E)(以下、単に「成分(E)」ともいう)を含有することが好ましい。
さらに、本発明の一態様の除去液は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに上述の成分(A)~(E)以外の他の添加剤を含有してもよい。
【0017】
本発明の一態様の除去液において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.06~26.0質量%、より好ましくは0.10~22.5質量%、更に好ましくは0.20~21.0質量%、より更に好ましくは0.30~18.5質量%、特に好ましくは0.40~16.0質量%である。
【0018】
以下、本発明の一態様の除去液に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0019】
<第4級アンモニウム水酸化物(A)>
第4級アンモニウム水酸化物(A)は、強アルカリ性を有し、除去液の底部反射防止膜の除去性の向上に寄与する成分である。
なお、成分(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の除去液において、成分(A)の含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、0.05~18.0質量%であり、好ましくは0.10~15.0質量%、より好ましくは0.30~14.0質量%、更に好ましくは0.70~13.5質量%、より更に好ましくは0.90~13.0質量%、特に好ましくは1.20~12.5質量%である。
成分(A)の含有量が0.05質量%以上である除去液は、底部反射防止膜の除去性が良好となる。また、成分(A)の含有量が18.0質量%以下である除去液は、調製の際に二層に分離してしまうようなことを抑制し得、除去液の液安定性が良好となる。
【0021】
本発明の一態様において用いられる第4級アンモニウム水酸化物(A)としては、除去液の底部反射防止膜除去性を向上させる観点から、下記式(a)で表される化合物(A1)を含むことが好ましい。
式(a): [N(R)4]+OH-
〔上記式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、又はヒドロキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基である。〕
【0022】
化合物(A1)としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、及びテトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
これらの中でも、化合物(A1)としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)から選ばれる1種以上が好ましく、安全性の観点から、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)がより好ましい。
【0023】
なお、本発明の一態様の除去液において、成分(A)中の化合物(A1)の含有割合としては、当該除去液に含まれる成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは、50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0024】
<アルカリ金属塩(B)>
アルカリ金属塩(B)は、成分(A)が有する底部反射防止膜の除去性をより促進させる役割を担う成分である。成分(A)と共に成分(B)を含有し、酸化剤(X)を実質的に含有しない除去液とすることで、優れた底部反射防止膜の除去性を発現することができ、特に、ホウ素がドーピングされて硬質化した底部反射防止膜に対する除去性に優れる。
なお、成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の除去液において、成分(B)の含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、0.01~8.0質量%であり、好ましくは0.03~7.5質量%、より好ましくは0.05~7.0質量%、更に好ましくは0.07~5.0質量%、より更に好ましくは0.08~3.0質量%、特に好ましくは0.10~2.0質量%である。
成分(B)の含有量が0.01質量%以上である除去液は、成分(A)が有する底部反射防止膜の除去性を促進させることができ、特にホウ素がドーピングされて硬質化した底部反射防止膜の除去性に対する除去性に優れる。
また、成分(B)の含有量が8.0質量%以下である除去液は、成分(B)の一部が溶解せずに沈殿が生じるといった現象を抑制し、液安定性を良好とすることができる。
【0026】
また、上記観点から、本発明の一態様の除去液において、成分(A)100質量部に対する、成分(B)の含有量比は、好ましくは0.05~150質量部、より好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは0.3~80質量部である。
【0027】
本発明の一態様において用いられるアルカリ金属塩(B)としては、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、又はフランシウム塩が挙げられる。
また、アルカリ金属塩(B)の形態としては、特に限定されず、例えば、水酸化物、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、珪酸塩等が挙げられる。
【0028】
なお、本発明の一態様の除去液において用いられるアルカリ金属塩(B)としては、底部反射防止膜の除去性をより促進させる観点から、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物(B1)を含むことがより好ましい。
【0029】
本発明の一態様の除去液において、成分(B)中の化合物(B1)の含有割合としては、当該除去液に含まれる成分(B)の全量(100質量%)に対して、好ましくは、50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0030】
また、本発明の一態様の除去液において、成分(B)がカリウム塩を含む場合、カリウム塩の含有量は、カリウム塩の溶解性を良好にし、液安定性に優れた除去液とする観点から、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
【0031】
本発明の一態様の除去液において、成分(B)がルビジウム塩を含む場合、ルビジウム塩の含有量は、ルビジウム塩の溶解性を良好にし、液安定性に優れた除去液とする観点から、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下である。
【0032】
本発明の一態様の除去液において、成分(B)がセシウム塩を含む場合、セシウム塩の含有量は、セシウム塩の溶解性を良好にし、液安定性に優れた除去液とする観点から、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以下、特に好ましくは6.0質量%以下である。
【0033】
<水溶性有機溶剤(C)>
本発明の一態様の除去液は、さらに、水溶性有機溶媒(C)を含有することが好ましい。
本発明の一態様の除去液が、水溶性有機溶媒(C)を含有することにより、底部反射防止膜の除去性をさらに向上させることができ、特に、ホウ素がドーピングされて硬質化した底部反射防止膜に対しても優れた除去性を発現し得る。
なお、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の一態様の除去液において、成分(C)の含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.10~70.0質量%、より好ましくは0.50~60.0質量%、更に好ましくは1.0~50.0質量%、より更に好ましくは10.0~45.0質量%、特に好ましくは15.0~40.0質量%である。
成分(C)の含有量が0.10質量%以上であれば、底部反射防止膜の除去性をより向上させることができ、特に、ホウ素がドーピングされて硬質化した底部反射防止膜に対しても優れた除去性を有する除去液とすることができる。
一方、成分(C)の含有量が70.0質量%以下であれば、シリコン系材料等の半導体素子の各種構成材料に対する防食性が良好な除去液とすることができる。
【0035】
上記観点から、本発明の一態様の除去液において、成分(A)及び(B)の合計に対する、成分(C)の含有量比〔(C)/((A)+(B))〕は、好ましくは0.1~15.0、より好ましくは0.2~10.0、更に好ましくは0.5~8.0、特に好ましくは2.5~7.0である。
【0036】
本発明の一態様の除去液において用いられる水溶性有機溶媒(C)としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等);多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン等);多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等);アミン類(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン等);アミド類(ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等);複素環類(2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等);スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等);スルホン類(スルホラン等);低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等);テトラヒドロフラン;尿素;アセトニトリル;等が挙げられる。
【0037】
なお、本発明の一態様の除去液において用いられる水溶性有機溶媒(C)としては、底部反射防止膜の除去性をより向上させ、且つ、シリコン系材料等の半導体素子の各種構成材料に対する防食性が良好な除去液とする観点から、スルホキシド類及びアセトニトリルから選ばれる1種以上の有機溶媒(C1)を含むことが好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はアセトニトリルを含むことがより好ましく、アセトニトリルを含むことが特に好ましい。
【0038】
本発明の一態様の除去液において、成分(C)中の有機溶媒(C1)の含有割合としては、当該除去液に含まれる成分(C)の全量(100質量%)に対して、好ましくは、50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0039】
<腐食防止剤(D)>
本発明の一態様の除去液は、さらに、腐食防止剤(D)を含有することが好ましい。
本発明の一態様の除去液が腐食防止剤(D)を含有することにより、シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、低誘電率絶縁膜(TEOS)、窒化シリコン等のシリコン系材料に対する防食性により優れた除去液とすることができる。
なお、成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の一態様の除去液において、成分(D)の含有量は、シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、低誘電率絶縁膜(TEOS)、窒化シリコン等のシリコン系材料に対する防食性により優れた除去液とする観点から、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.03~0.70質量%、更に好ましくは0.05~0.50質量%、特に好ましくは0.07~0.30質量%である。
【0041】
本発明の一態様において用いられる腐食防止剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、トリアゾール類(ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール等);イミダゾール類(イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールカルボン酸、イミダゾール-2-カルボン酸、イミダゾール-4-カルボン酸、イミダゾール-2-カルボキシアルデヒド、イミダゾール-4-カルボキシアルデヒド、4-イミダゾールジチオカルボン酸等);チオール化合物(チオ尿素、メルカプトチアゾール、メルカプトエタノール、チオグリセロール等);糖アルコール(エリスリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトイノシトール等);等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様において用いられる腐食防止剤(D)としては、チオール化合物が好ましく、チオ尿素が特に好ましい。
【0042】
<水(E)>
本発明の一態様の除去液は、希釈溶媒として、水(E)を含有することが好ましい。
本発明の一態様の除去液において、水(E)の含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~99.98質量%、より好ましくは40~99.9質量%、更に好ましくは45~99.8質量%、特に好ましくは50~99.5質量%である。
なお、本発明の一態様において用いられる水(E)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、RO(Reverse Osmosis)水、超純水等が挙げられる。
【0043】
<他の添加剤>
本発明の一態様の除去液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分(A)~(E)以外の他の添加剤を含有していてもよい。
そのような他の添加剤としては、例えば、フッ素化合物、界面活性剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0044】
なお、本発明の一態様の除去液において、ナトリウムイオンの存在は、半導体素子に対して絶縁破壊等の不具合を引き起こす要因となるため、ナトリウム系化合物は実質的に含有しないことが好ましい。また、不純物として含まれるナトリウム系化合物の含有量についても極力少ないほど好ましい。
具体的には、本発明の一態様の除去液において、ナトリウム系化合物の含有量は、当該除去液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満、更に好ましくは0.00001質量%未満である。
【0045】
〔除去液の性状・用途〕
本発明の一態様の除去液は、上述の成分(A)及び(B)、並びに、必要に応じて、上述の成分(C)、(D)、(E)及び他の添加剤を配合し、一般的な攪拌方法で、攪拌して調製することができる。
【0046】
本発明の一態様の除去液のpHとしては、フォトレジスト膜や底部反射防止膜の除去性を良好とする観点から、好ましくは12.0以上、より好ましくは13.0以上、更に好ましくは13.5以上、特に好ましくは14.0以上である。
なお、本明細書において、除去液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所製、製品名「F-52」)を用いて、25℃にて測定した値を意味する。
【0047】
本発明の一態様の除去液は、例えば、液安定性、底部反射防止膜の除去性、及び半導体素子の各種構成材料に対する防食性等の各種性能に優れる。
本発明の一態様の除去液を用いて除去される対象となる底部反射防止膜としては、例えば、一般的な反射防止膜形成組成物で形成された有機膜が挙げられる。
さらに、本発明の一態様の除去液は、ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて、硬質化した部分を含む底部反射防止膜の除去においても好適に用いることができる。
すなわち、このような硬質化した部分を含む底部反射防止膜も、本発明の一態様の除去液を用いることで、容易に除去することができる。
【0048】
また、本発明の一態様の除去液が用いられる洗浄対象としては、半導体素子の各種構成材料で構成された基板上に、底部反射防止膜を有する半導体素子が挙げられる。
なお、当該半導体素子は、底部反射防止膜上にさらにフォトレジスト膜を有していてもよい。
当該半導体素子の基板を構成する材料としては、例えば、シリコン、非晶性シリコン、ポリシリコン、シリコンゲルマニウム、銅、アルミニウム銅合金、アルミニウム、チタン、チタン-タングステン、タングステン、タンタル、クロム、ニッケル、コバルト、モリブデン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、白金、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、並びにこれらの酸化物(例えば、酸化シリコン等)、窒化物(例えば、窒化シリコン等)、及び有機金属化合物(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの材料は、基板全体を構成する材料であってもよく、基板の表面上に形成された配線となる膜又は層を構成する材料であってもよく、基板の表面上に形成された絶縁膜又は絶縁層を構成する材料であってもよい。
【0049】
ここで、本発明の一態様の除去液は、半導体素子の各種構成材料に対する防食性が良好であり、特に、シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される一種以上のシリコン系材料に対する防食性に優れている。
そのため、本発明の一態様の除去液は、シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される一種以上のシリコン系材料を含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子の製造に好適に使用し得、特に、シリコンゲルマニウムを含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子の製造により好適に使用し得る。
【0050】
上記観点から、本発明は、下記〔1〕の除去液の態様も包含する。
〔1〕第4級アンモニウム水酸化物(A)0.05~18.0質量%、及びアルカリ金属塩(B)0.01~8.0質量%を含み、
下記要件(I)及び(II)を満たす、底部反射防止膜の除去液。
・要件(I):60℃の前記除去液を用いて、シリコン基板上の、ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて硬質化した部分を含む底部反射防止膜を除去する処理時間が30分以下である。
・要件(II):60℃の前記除去液を用いて、シリコン基板上のシリコンゲルマニウム膜をエッチング処理した際のエッチング速度が3.0Å/分以下である。
【0051】
上記〔1〕の除去液の態様において、成分(A)及び(B)の具体的な態様は、上述のとおりである。当該除去液は、所定の種類及び含有量の成分(A)及び(B)を含有し、要件(I)及び(II)を満たすように調製されたものである。
また、当該除去液は、上述した成分(C)、(D)、(E)、及び他の添加剤成分を含有していてもよい。
【0052】
要件(I)は、当該除去液の底部反射防止膜の除去性を規定したものである。つまり、底部反射防止膜の除去性が良好であるほど、要件(I)で規定の処理時間は短くなる。
要件(I)で規定する底部反射防止膜を除去する処理時間としては、好ましくは30分以下であり、より好ましくは10分以下、特に好ましくは3分以下である。
なお、要件(I)で規定の処理時間の具体的な測定方法については、後述の実施例の記載のとおりである。
【0053】
また、要件(II)は、当該除去液のシリコンゲルマニウム膜に対する防食性を規定したものである。つまり、シリコンゲルマニウム膜に対する防食性が良好であるほど、要件(II)で規定のエッチング速度は小さくなる。
要件(II)で規定するエッチング速度としては、好ましくは3.0Å/分以下であり、より好ましくは2.0Å/分以下、特に好ましくは1.0Å/分以下である。
なお、要件(II)で規定のエッチング速度は、下記式から算出された値であって、具体的な処理方法や膜厚の測定方法については、後述の実施例に記載のとおりである。
・エッチング速度(Å/分)=[除去液で処理前の膜厚(Å)-除去液で処理後の膜厚(Å)]/処理時間(分)
【0054】
また、上記〔1〕の除去液の態様において、さらに下記要件(III)を満たすことが好ましい。
・要件(III):60℃の前記除去液を用いて、シリコン基板上の酸化シリコン膜、オルトケイ酸テトラエチル膜、又は窒化シリコン膜をエッチング処理した際のエッチング速度が5.0Å/分以下である。
なお、要件(III)で規定するエッチング速度の算出方法は、要件(II)で規定するエッチング速度の算出方法と同じである。
酸化シリコン膜、オルトケイ酸テトラエチル膜、又は窒化シリコン膜に対するエッチング速度としては、好ましくは5.0Å/分以下であり、より好ましくは3.0Å/分以下、特に好ましくは1.0Å/分以下である。
なお、上記〔1〕の除去液の態様において、酸化シリコン膜、オルトケイ酸テトラエチル膜、及び窒化シリコン膜の群のうち、少なくとも1種の膜に対するエッチング速度が上記範囲であることが好ましく、少なくとも2種の膜に対するエッチング速度が上記範囲であることがより好ましく、3種すべての膜に対するエッチング速度が上記範囲であることが更に好ましい。
【0055】
〔半導体素子の製造方法〕
本発明の製造方法は、シリコンゲルマニウムを含む構成材料を用いて形成された基板を有する半導体素子を製造する方法であって、上述した本発明の底部反射防止膜の除去液を用いて、底部反射防止膜を除去する洗浄工程を有する。
なお、本発明の一態様の製造方法は、前記洗浄工程の前に、下記工程(1)を有することが好ましく、下記工程(1)~(2)を有することがより好ましい。
・工程(1):前記基板の表面上に、底部反射防止膜及びフォトレジスト膜をこの順で形成し、フォトマスクを介して露光し、現像処理及びドライエッチング処理をする工程。
・工程(2):ドライエッチング処理により露出した前記基板の表面に、ホウ素ドーピング処理を行う工程。
【0056】
上記工程(1)及び(2)は、一般的な半導体素子の製造方法に基づいて行うことができる。なお、フォトレジスト膜を除去する工程を、工程(1)の後を行ってもよいが、工程(1)のドライエッチング処理によってフォトレジスト膜を除去してもよい。
そして、工程(1)の後、もしくは、工程(1)及び(2)の後、前記洗浄工程が行われる。
【0057】
前記洗浄工程は、上述の本発明の底部反射防止膜の除去液を用いて、底部反射防止膜を除去する工程である。
工程(1)及び(2)のドライエッチング処理及びホウ素ドーピング処理を経た底部反射防止膜の少なくとも一部(特に、少なくとも底部反射防止膜の表面)は、硬質化しており、その硬質化した底部反射防止膜は、従来の剥離液では除去することが難しい。
しかしながら、本発明の一態様の除去液を用いることで、このような硬質化した底部反射防止膜も容易に除去することができる。
【0058】
また、本発明の製造方法で用いられる基板は、シリコンゲルマニウムを含む構成材料を用いて形成された基板であるが、シリコンゲルマニウムを含む構成材料は、従来の除去液では腐食し易い材料である。
しかしながら、本発明の一態様の除去液は、シリコンゲルマニウムを含む構成材料に対する防食性に優れているため、シリコンゲルマニウムを含む構成材料の腐食を効果的に抑制することができる。
また、本発明の一態様の除去液は、シリコンゲルマニウムだけでなく、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコン等のシリコン系材料を含む構成材料に対しても、優れた防食性を有する。
そのため、本発明の製造方法において、製造される前記半導体素子は、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、及び窒化シリコンからなる群より選択される1種以上の絶縁膜を有するものであっても、当該絶縁膜の腐食を効果的に抑制することができる。
また、前記絶縁膜を有する半導体素子の製造方法において、ドライエッチング処理及びホウ素のドーピング処理が施されて硬質化した部分を含む底部反射防止膜を、前記除去液を用いて除去する工程を有していてもよい。
【0059】
本洗浄工程における底部反射防止膜の除去方法としては、一般に半導体素子の洗浄工程において使用される方法が適用でき、例えば、浸漬法、噴霧法、及び枚葉法等を適用することができる。
洗浄工程における処理温度としては、通常30℃~80℃、好ましくは40℃~70℃、より好ましくは50~60℃、更に好ましくは55℃~60℃である。
また、処理時間としては、通常1分~30分であり、好ましくは1分~10分、より好ましくは1分~3分である。
【実施例】
【0060】
以下の実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
なお、調整した除去液の物性・評価方法は、以下のとおりである。
【0061】
<除去液のpH>
pHメータ(株式会社堀場製作所製、製品名「F-52」)を用いて、25℃にて測定した。
【0062】
<液安定性の評価>
調製した除去液を目視で観察し、下記の基準により、除去液の液安定性を評価した。
A:除去液中において、沈殿及び分離のいずれも生じていない。
F:除去液中において、沈殿及び分離の少なくとも一方の発生が確認された。
【0063】
<底部反射防止膜の除去性の評価>
(1)評価用ウエハ
溝状パターンを形成した直径300mmのシリコン基板上に、底部反射防止膜とフォトレジストを順に製膜した。次に、フォトマスクを用いた露光と現像により回路パターンを形成した後、ドライエッチング処理により不要なフォトレジストを除去し、さらに回路パターンに対して、ホウ素ドーピング処理を行い、表面が硬質化した底部反射防止膜を含むパターンウエハを作製した。このパターンウエハを、一辺1cmの正方形に切断したものを評価用ウエハとした。
【0064】
(2)底部反射防止膜の除去性の評価
60℃に調整した評価対象となる除去液中に、上記の評価用ウエハを、所定の時間、浸漬させ、電界放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、製品名「SU9000」)を用いて、評価用ウエハ上の底部反射防止膜の残存状況を観察し、評価用ウエハから、ホウ素ドーピングによって硬質化した部分を含めて底部反射防止膜が完全に除去されるまでの処理時間を測定した。そして、当該処理時間の値から、下記の基準により、除去液の底部反射防止膜の除去性を評価した。
A+:処理時間が、3分以内である。
A:処理時間が、3分を超え10分以内である。
B:処理時間が、10分を超え30分以内である。
C:処理時間が30分超であっても、完全に硬質化された底部反射防止膜を除去することができなかった。
底部反射防止膜の除去性については、評価「B」以上を合格とした。
【0065】
<各種材料に対する防食性の評価>
(1)評価用基板
直径300mmのシリコン基板上に、厚さ310Åのシリコンゲルマニウム(SiGe)、厚さ5000Åの酸化シリコン(SiOx)、厚さ1000Åのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及び厚さ3000Åの窒化シリコン(SiN)のいずれかからなる膜を形成し、一辺2cmの正方形に切断したものを評価用基板とした。
【0066】
なお、除去液で処理前の評価用基板に形成された膜の膜厚を、事前に測定した。
膜厚の測定については、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、又は窒化シリコンからなる膜の膜厚は、光学式膜厚測定装置(n&k Technology Inc.製、製品名「n&k1280」)を用い測定し、シリコンゲルマニウムからなる膜の膜厚は、蛍光X線分析装置(SIIナノテクノロジー製、製品名「SEA1200VX」)を用いて測定した。
【0067】
(2)防食性の評価
60℃に調整した評価対象となる除去液中に、上記の評価用基板を10分間浸漬させた。その後、評価用基板を除去液から取り出し、超純水で洗浄し、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
そして、上記と同様にして、除去液で処理後の評価用基板上の膜の膜厚を測定し、下記式からエッチング速度を算出した。
・エッチング速度(Å/分)=[除去液で処理前の膜厚(Å)-除去液で処理後の膜厚(Å)]/処理時間(分)
算出されたエッチング速度から、下記の基準により、各種膜に対する除去液の防食性を評価した。
A:エッチング速度が1.0Å/分以下であった。
B:エッチング速度が1.0Å/分超3.0Å/分以下であった。
C:エッチング速度が3.0Å/分超5.0Å/分以下であった。
D:エッチング速度が5.0Å/分超であった。
SiGe膜に対する防食性については、評価「B」以上を合格とし、SiOx膜、TEOS膜、及びSiN膜に対する防食性については、評価「C」以上を合格とした。
【0068】
実施例1~22、比較例1~8
表1及び表2に示された種類及び含有量(質量比)の各成分を配合し、超純水(UPW)で希釈し、除去液をそれぞれ調製した。
そして、除去液のpHを測定すると共に、上述の評価方法に基づき、除去液の「液安定性」、「底部反射防止膜の除去性」及び「シリコンゲルマニウム(SiGe)に対する防食性」をそれぞれ評価した。それらの結果を表1及び表2に示す。
【0069】
なお、各除去液の調製に用いた表1及び表2中の各成分の略称は、以下のとおりである。
(第4級アンモニウム水酸化物)
・「TEAH」:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
・「TMAH」:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
(アルカリ金属塩)
・「Rb2SO4」:硫酸ルビジウム
・「KOH」:水酸化カリウム
・「CsCl」:塩化セシウム
(水溶性有機溶媒)
・「MeCN」:アセトニトリル
・「DMSO」:ジメチルスルホキシド
(酸化剤)
・「H2O2」:過酸化水素
・「HNO3」:硝酸
・「KMnO4」:過マンガン酸カリウム
・「APS」:ペルオキソ二硫酸アンモニウム
・「PIA」:オルト化ヨウ素酸
(水)
・「UPW」:超純水
【0070】
【0071】
【0072】
表1により、実施例1~22で調製した除去液は、安定性、底部反射防止膜の除去性、及びSiGe膜の防食性のいずれの評価も良好であった。
一方で、表2により、比較例1及び3で調製した除去液は、酸化剤として過酸化水素もしくは過マンガン酸カリウムを含有するが、これらは酸化剤としての機能が強すぎるため、SiGe膜がエッチングされてしまい、防食性が劣る結果となった。
また、比較例2、4及び5で調製した除去液では、酸化剤として硝酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウムもしくはオルト化ヨウ素酸を含有し、SiGe膜のエッチングは抑制され、防食性は良好であるが、ホウ素がドーピングされて硬質化した底部反射防止膜の除去性は不十分であった。
さらに、比較例6~7で調製した除去液は、成分(A)及び(B)の一方を含有していないため、硬質化した底部反射防止膜の除去性が不十分であった。
なお、比較例8で調製した除去液は、少なくとも沈殿もしくは分離が確認されたため、当該除去液は使用には適さないと判断し、他の測定及び評価を行わずに終了した。
【0073】
実施例23~26
表3に示された種類及び含有量(質量比)の各成分を配合し、超純水(UPW)で希釈し、除去液をそれぞれ調製した。
そして、除去液のpHを測定すると共に、上述の評価方法に基づき、除去液の「液安定性」、「底部反射防止膜の除去性」及び「各膜(シリコンゲルマニウム(SiGe)、酸化シリコン(SiOx)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及び窒化シリコン(SiN))に対する防食性」をそれぞれ評価した。それらの結果を表3に示す。
【0074】
なお、各除去液の調製に用いた表3中の各成分の略称は、以下のとおりである。
(第4級アンモニウム塩)
・「TEAH」:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
(アルカリ金属塩)
・「Rb2SO4」:硫酸ルビジウム
(水溶性有機溶媒)
・「MeCN」:アセトニトリル
(腐食防止剤)
・「TU」:チオ尿素
(水)
・「UPW」:超純水
【0075】
【0076】
表3により、実施例23~26で調製した除去液は、安定性及び底部反射防止膜の除去性が良好であると共に、各種膜に対する防食性も優れる結果となった。