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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】自然発火試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/50 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
G01N25/50 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019109850
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020201196
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】高島 徹
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-150357(JP,U)
【文献】実開平07-035936(JP,U)
【文献】実開平01-166290(JP,U)
【文献】実開昭58-004798(JP,U)
【文献】特開2018-128399(JP,A)
【文献】特開平08-277800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が自然発火に至る条件の評価に用いられる自然発火試験装置であって、
試料を収容する内部空間を有する本体部と、
前記本体部の前記内部空間に収容されたヒータと、
前記本体部の前記内部空間に収容され、前記内部空間の雰囲気を撹拌するファンと、
前記本体部の外部に設けられるモータ本体を含むモータと、
前記モータの回転駆動力を前記ファンに伝達する伝達軸と、
前記本体部と前記モータ本体との間において前記伝達軸に設けられるインペラとを備え、
前記インペラは、その全体が前記本体部の壁部に充填された断熱材の外部に露出する、自然発火試験装置。
【請求項2】
複数の軸受を保持するように収容し、前記インペラと前記モータ本体との間で前記複数の軸受により前記伝達軸を支持する軸受ボックスをさらに備える、請求項1記載の自然発火試験装置。
【請求項3】
前記軸受ボックスには、前記伝達軸が延びる方向に沿って貫通する通風孔が形成される、請求項2記載の自然発火試験装置。
【請求項4】
前記軸受ボックスはアルミニウムを含む金属により形成される、請求項2または3記載の自然発火試験装置。
【請求項5】
前記モータは回転軸をさらに含み、
前記自然発火試験装置は、前記伝達軸と前記モータの前記回転軸とを連結する連結部材をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の自然発火試験装置。
【請求項6】
前記モータは、前記伝達軸として回転軸をさらに含み、
前記インペラは、前記モータの前記回転軸に設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の自然発火試験装置。
【請求項7】
前記伝達軸はステンレスにより形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の自然発火試験装置。
【請求項8】
前記インペラはアルミニウムを含む金属により形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の自然発火試験装置。
【請求項9】
前記インペラは、前記伝達軸に嵌め込まれた圧入部材である、請求項1~8のいずれか一項に記載の自然発火試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然発火試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然発火試験装置は、試料が自然発火に至る温度または時間の条件を測定する装置である。例えば、特許文献1に記載された自然発火試験装置においては、測定対象の試料が装置本体の内部に収容され、装置本体の内部に不活性ガスが供給される。この状態で、試料温度が所定の設定温度に保持されるように装置本体の温度制御が開始される。これにより、試料温度が初期値から徐々に上昇し、設定温度に達すると安定する。
【0003】
試料温度が安定した後、不活性ガスに代えて酸素ガスが装置本体の内部に供給される。この場合、試料が酸化することにより試料の温度が上昇し、試料の温度が未知の発火点に到達すると、試料が自然発火を始める。そこで、上記の試料温度が安定した時点から試料が自然発火を始める時点までの時間が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3632299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自然発火試験装置の装置本体の内部には、攪拌用のファンが設けられることがある。ファンが装置本体の外部に設けられたモータにより回転駆動されることにより、装置本体の内部の温度が均一に維持される。しかしながら、装置本体の内部の熱がモータの回転軸により装置本体の外部に伝達する。
【0006】
モータには、グリス等の潤滑材が供給された軸受が設けられている。そのため、上記の熱により軸受が高温になると、潤滑材が流出し、軸受が劣化するかまたは軸受の機能が消失する。この場合、モータの交換等のメンテナンスを頻繁に行う必要がある。装置本体の内部が高温であるほど、メンテナンスの頻度が増加する。
【0007】
本発明の目的は、メンテナンスの頻度が低減された自然発火試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従う態様は、試料が自然発火に至る条件の評価に用いられる自然発火試験装置であって、試料を収容する内部空間を有する本体部と、前記本体部の前記内部空間に収容されたヒータと、前記本体部の前記内部空間に収容され、前記内部空間の雰囲気を撹拌するファンと、前記本体部の外部に設けられるモータ本体を含むモータと、前記モータの回転駆動力を前記ファンに伝達する伝達軸と、前記本体部と前記モータ本体との間において前記伝達軸に設けられるインペラとを備え、前記インペラは、その全体が前記本体部の壁部に充填された断熱材の外部に露出する、自然発火試験装置に関する。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自然発火試験装置のメンテナンスの頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る自然発火試験装置の模式的断面図である。
図2図1のエアバス温調部の構成を示す部分拡大断面図である。
図3図2のエアバス温調部のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)自然発火試験装置の構成
以下、本発明の一実施の形態に係る自然発火試験装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る自然発火試験装置の模式的断面図である。図1に示すように、自然発火試験装置100は、本体部10、試料保持具20、ガス供給部30、エアバス温調部40、整流部材50、試料室温調部60および制御部70を備える。以下の説明では、重力が向う方向を下方とし、その反対方向を上方とする。
【0012】
本体部10は、例えば直方体形状を有する筐体であり、本実施の形態においてはステンレスにより形成される。本体部10の側壁内には、断熱材11が充填されている。本体部10の内部には、外部から熱的に隔離された所定の温度範囲の環境を有するエアバス(恒温槽)12が実現される。本例では、上記の温度範囲の上限は300℃である。また、後述するように、本体部10の内部における略中央部に測定対象の試料Sが配置される。以下、本体部10の内部における試料Sの周囲の一定範囲の空間を試料室13と呼ぶ。
【0013】
試料保持具20は、上下方向に延び、下端部において試料Sが収容された試料容器21を保持する。試料容器21は、例えばガラスにより形成され、ガス供給部30により供給される種々のガスを取り入れるための開口を有する。試料保持具20は、本体部10の上面に形成された開口14に挿通された状態で本体部10の上面に固定される。これにより、試料保持具20の下端部に保持された試料容器21が本体部10の内部における略中央部(試料室13)に位置する。
【0014】
ガス供給部30は、試料容器21に収納された試料Sに反応抑制ガス、反応ガスおよび反応停止ガスを選択的に供給する。反応抑制ガスは、不活性ガス(本例では窒素ガス)であり、試料Sの酸化反応を抑制する。反応ガスは、酸素濃度調整ガスまたは空気であり、試料Sの酸化反応を促進する。反応停止ガスは、不活性ガス(本例では窒素ガス)であり、試料Sの酸化反応を停止させる。試料Sに供給されたガスは、試料保持具20に沿って上方に導かれ、本体部10の開口14を通過した後、試料保持具20に形成されたガス排出口22から排出される。
【0015】
エアバス温調部40は、ヒータ41、温度センサ42、ファン43およびモータ44を含む。ヒータ41、温度センサ42およびファン43は、本体部10内に配置される。モータ44は、本体部10の下方に配置される。ヒータ41は、例えば電熱線であり、エアバス12の温度を調整する。温度センサ42は、例えば白金測温抵抗体であり、エアバス12の温度を検出する。ファン43は、回転することによりエアバス12の雰囲気を撹拌する。モータ44は、ファン43を回転駆動する。エアバス温調部40の詳細な構成については後述する。
【0016】
整流部材50は、ステンレス等の熱容量が小さい材料により形成された有底円筒形状を有する部材である。整流部材50は、試料室13を取り囲む状態で本体部10の下面に点接触により固定され、エアバス温調部40により撹拌された雰囲気を上部から内部に取り入れる(図1の太い矢印を参照)。整流部材50の底壁におけるファン43の上方には、例えば直径45mmの開口が形成される。当該開口を通して、ファン43の中央部分に空気が供給される。
【0017】
試料室温調部60は、ヒータ61および温度センサ62,63を含む。ヒータ61は、例えば電熱線であり、試料容器21の周囲を取り囲むように巻回した状態で取り付けられる。本例では、ヒータ61により取り囲まれた空間が試料室13として区画される。温度センサ62,63は、例えばシース熱電対である。温度センサ62は、試料容器21の内部に設けられ、試料容器21に収容された試料Sの温度を検出する。温度センサ63は、試料室13に設けられ、試料室13の温度を検出する。
【0018】
制御部70は、ガス制御部71、エアバス制御部72、試料室制御部73および測定部74を含む。ガス制御部71は、ガス供給部30に設けられた図示しない弁を切り替えることにより、反応抑制ガス、反応ガスおよび反応停止ガスを選択的に供給するようにガス供給部30を制御する。
【0019】
エアバス制御部72は、使用者から設定温度の入力を受け付ける。また、エアバス制御部72は、温度センサ42により検出されたエアバス12の温度が上記の設定温度に一致するようにヒータ41を制御する。試料室制御部73は、温度センサ63により検出された試料室13の温度が温度センサ62により検出された試料Sの温度に一致するようにヒータ61を制御する。測定部74は、試料Sが自然発火を始めるまでの時間を測定する。測定部74の詳細については後述する。
【0020】
(2)エアバス温調部
図2は、図1のエアバス温調部40の構成を示す部分拡大断面図である。図3は、図2のエアバス温調部40のA-A線断面図である。図2に示すように、エアバス温調部40は、ヒータ41(図1)、温度センサ42(図1)、ファン43、モータ44、軸受ユニット45、インペラ46および連結部材47を含む。
【0021】
軸受ユニット45は、伝達軸451、複数(本例では2個)の軸受452および軸受ボックス453を含み、本体部10の下方に配置される。伝達軸451は上下方向に延び、伝達軸451の上端は本体部10の下面に形成された開口15を通してファン43に接続される。伝達軸451は、例えば熱伝導率が低い材料(本例ではステンレス)により形成されることが好ましい。この場合、本体部10の内部の熱が伝達軸451を通して外部に伝達することが軽減される。
【0022】
複数の軸受452は、上下方向に離間した状態で伝達軸451に嵌め込まれ、伝達軸451を支持する。各軸受452は転がり軸受であり、本実施の形態においては玉軸受(ボールベアリング)である。実施の形態はこれに限定されず、各軸受452は、ころ軸受等の他の転がり軸受であってもよい。なお、ころ軸受は、円筒ころ軸受、棒状ころ軸受、針状ころ軸受または円錐ころ軸受を含む。また、複数の軸受452は、互いに異なる種類の転がり軸受であってもよい。
【0023】
軸受ボックス453は、伝達軸451を上下方向に突出させかつ複数の軸受452の外輪(アウタレース)に接触する状態で複数の軸受452を収容する。軸受ボックス453は、熱伝導率が高い材料(例えばアルミニウムを含む金属)により形成されることが好ましい。この場合、伝達軸451または各軸受452に発生する熱を効率よく放散し、軸受ボックス453の温度の上昇を抑制することができる。本例では、軸受ボックス453は5000系アルミニウム合金により形成されるが、1000系の純アルミニウムまたは他のアルミニウム合金により形成されてもよい。
【0024】
軸受ボックス453の上面および下面には、上フランジ部45Aおよび下フランジ部45Bがそれぞれ設けられる。上フランジ部45Aには、複数(本例では4個)の貫通孔45aが形成される(図3参照)。下フランジ部45Bには、複数(本例では4個)のねじ孔45bが形成される。また、軸受ボックス453には、各軸受452の外輪を取り囲みかつ上下方向に貫通する複数(本例では12個)の通風孔45cが形成される(図3参照)。
【0025】
本体部10の下面には、上フランジ部45Aの複数の貫通孔45aにそれぞれ対応する複数のねじ孔10aが形成される。複数のねじ部材40Aが下方から上フランジ部45Aの複数の貫通孔45aにそれぞれ挿通される。この状態で、複数のねじ部材40Aの先端が本体部10の複数のねじ孔10aにそれぞれ螺合される。これにより、軸受ユニット45が本体部10に固定される。
【0026】
インペラ46は、複数(本例では12個)の羽根46aを有し(図3参照)、本体部10と軸受ボックス453との間において伝達軸451に嵌め込まれる。インペラ46が伝達軸451とともに回転すると、周囲の空気によりインペラ46が冷却される。この場合、熱交換により伝達軸451が冷却される。これにより、伝達軸451と接触する各軸受452の内輪(インナレース)の温度の上昇を抑制することができる。
【0027】
インペラ46は、熱伝導率が高い材料(例えばアルミニウムを含む金属)により形成されることが好ましい。この場合、伝達軸451を効率よく冷却することができる。本例では、インペラ46は5000系アルミニウム合金により形成されるが、1000系の純アルミニウムまたは他のアルミニウム合金により形成されてもよい。また、インペラ46は、圧入により伝達軸451に取り付けられた圧入部材であることが好ましい。この場合、インペラ46の内周面と伝達軸451の外周面との接触面積が大きく維持されることにより、インペラ46と伝達軸451との間の熱伝達率が大きくなる。これにより、伝達軸451をさらに効率よく冷却することができる。
【0028】
また、インペラ46が回転することにより、軸受ボックス453の下方の空気が軸受ボックス453に形成された複数の通風孔45cに流入し、複数の通風孔45cを通過して上方に排出される。この場合、軸受ボックス453が冷却される。これにより、軸受ボックス453と接触する各軸受452の外輪の温度の上昇を抑制することができる。
【0029】
モータ44は、回転軸441、軸受442およびモータ本体443を含み、軸受ユニット45の下方に配置される。回転軸441は、上下方向に延びる。回転軸441の上端と伝達軸451の下端とは、連結部材47により連結される。本例では、連結部材47はアルミニウム合金により形成されるが、ステンレス等の他の材料により形成されてもよい。軸受442は、軸受452と同様の構成を有し、回転軸441に嵌め込まれた状態で回転軸441を支持する。
【0030】
モータ本体443は、回転軸441を上方に突出させた状態で軸受442を収容する。モータ本体443の上面には、上フランジ部44Aが設けられる。上フランジ部45Aには、軸受ボックス453の複数のねじ孔45bにそれぞれ対応する複数の貫通孔44aが形成される。複数のねじ部材40Bが下方から上フランジ部44Aの複数の貫通孔44aにそれぞれ挿通される。この状態で、複数のねじ部材40Bの先端が軸受ボックス453の複数のねじ孔45bにそれぞれ螺合される。これにより、モータ44が軸受ユニット45に固定される。
【0031】
上記のように、回転軸441と伝達軸451とは、連結部材47により連結される。この構成によれば、回転軸441と伝達軸451とが一体的に形成される場合に比べて、伝達軸451から回転軸441への熱の伝達量が低下する。そのため、回転軸441と接触する軸受442の温度の上昇が軽減される。これにより、自然発火試験装置100が連続的に長期間使用される場合でも、軸受442が劣化することが防止される。また、モータ44として、長い回転軸を有する特殊なモータを用いる必要がなく、比較的短い回転軸を有する汎用のモータを用いることが可能になる。
【0032】
(3)自然発火試験装置の動作
図1を用いて自然発火試験装置100の動作を説明する。まず、使用者は、測定対象の試料Sを試料容器21に収納し、試料容器21を試料保持具20の下部に取り付ける。次に、使用者は、試料保持具20を本体部10の開口14に挿通させた状態で、本体部10の上面に固定する。これにより、試料容器21が試料室13に配置される。
【0033】
続いて、使用者は、エアバス制御部72を操作することにより設定温度を入力する。設定温度が入力されると、エアバス制御部72は、エアバス12の温度が設定温度に一致するようにヒータ41を制御する。また、ファン43は、回転することによりエアバス12の雰囲気を撹拌する。さらに、ガス制御部71は、反応抑制ガスを使用者により調整された流量で供給するようにガス供給部30を制御する。この場合、試料Sの温度が初期値から徐々に上昇する。試料室制御部73は、試料室13の温度が試料Sの温度に追従するように試料室温調部60を制御する。
【0034】
試料Sの温度は、設定温度に達すると安定する。この時点で、測定部74は時間の計測を開始する。また、ガス制御部71は、反応抑制ガスに代えて反応ガスを使用者により調整された流量で供給するようにガス供給部30を制御する。これにより、試料Sの酸化反応が促進され、試料Sの温度が上昇する。反応ガスの流量は、比較的小さく、例えば2mL/min~5mL/minである。試料室制御部73は、試料室13の温度が試料Sの温度に追従するように試料室温調部60を制御する。
【0035】
試料Sの温度が発火点に到達すると、試料Sの温度が急激に上昇する。この時点で、測定部74は時間の測定を終了する。また、ガス制御部71は、反応ガスに代えて反応停止ガスを使用者により調整された流量で供給するようにガス供給部30を制御する。これにより、試料Sの酸化反応が停止し、自然発火が防止される。なお、反応停止ガスの流量は、反応抑制ガスの流量よりも大きい。測定部74により測定された時間が、試料Sが自然発火に至る条件として評価される。
【0036】
(4)効果
本実施の形態に係る自然発火試験装置100においては、本体部10の内部空間に試料Sとともにファン43が収容される。また、本体部10の外部にモータ本体443を含むモータ44が設けられる。モータ44の回転駆動力が伝達軸451を通してファン43に伝達されることにより、ファン43が回転し、内部空間の雰囲気が撹拌される。本体部10とモータ本体443との間においてインペラ46が伝達軸451に設けられる。
【0037】
この構成によれば、伝達軸451が回転することによりインペラ46が回転し、周囲の空気によりインペラ46が冷却される。そのため、本体部10の内部空間が高温である場合でも、熱交換により伝達軸451が冷却される。したがって、モータ44に設けられた軸受442の温度の上昇が抑制される。この場合、軸受442に供給された潤滑材が流出することが抑制されるので、モータ44の交換等のメンテナンスを頻繁に行う必要がない。これにより、自然発火試験装置100のメンテナンスの頻度を低減することができる。
【0038】
また、インペラ46との熱交換により伝達軸451が冷却されるので、軸受ボックス453の各軸受452の内輪の温度の上昇が抑制される。したがって、軸受ボックス453の各軸受452に供給された潤滑材が流出することが抑制される。そのため、軸受ボックス453の交換等のメンテナンスの頻度を低減しつつ、伝達軸451に軸受ボックス453を設けることが可能となる。また、伝達軸451が軸受ボックス453の複数の軸受452により伝達軸451が確実に支持される。これにより、伝達軸451が長い場合でも、伝達軸451の回転駆動力を安定的にファン43に伝達することができる。
【0039】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、測定部74は、試料Sが自然発火に至る条件として、試料Sが自然発火を始めるまでの時間を測定するが、実施の形態はこれに限定されない。測定部74は、試料Sが自然発火に至る条件として、試料Sが自然発火に至る温度を測定してもよい。
【0040】
(b)上記実施の形態において、モータ44の回転軸441は連結部材47および伝達軸451を介してファン43に接続されるが、実施の形態はこれに限定されない。回転軸441が長い場合には、回転軸441はファン43に直接的に接続されてもよい。この場合、モータ44の回転軸441が伝達軸451として動作する。
【0041】
(c)上記実施の形態において、伝達軸451に軸受ボックス453が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。伝達軸451の回転駆動力を安定的にファン43に伝達することが可能な場合には、伝達軸451に軸受ボックス453が設けられなくてもよい。
【0042】
(d)上記実施の形態において、軸受ボックス453に複数の通風孔45cが形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。軸受ボックス453各軸受452が十分に冷却される場合には、軸受ボックス453に通風孔45cが1個のみ形成されてもよいし、軸受ボックス453に通風孔45cが形成されなくてもよい。
【0043】
(6)態様
(第1項)一態様に係る自然発火試験装置は、
試料が自然発火に至る条件の評価に用いられる自然発火試験装置であって、
試料を収容する内部空間を有する本体部と、
前記本体部の前記内部空間に収容され、前記内部空間の雰囲気を撹拌するファンと、
前記本体部の外部に設けられるモータ本体を含むモータと、
前記モータの回転駆動力を前記ファンに伝達する伝達軸と、
前記本体部と前記モータ本体との間において前記伝達軸に設けられるインペラとを備えてもよい。
【0044】
この自然発火試験装置においては、本体部の内部空間に試料とともにファンが収容される。また、本体部の外部にモータ本体を含むモータが設けられる。モータの回転駆動力が伝達軸を通してファンに伝達されることにより、ファンが回転し、内部空間の雰囲気が撹拌される。本体部とモータ本体との間においてインペラが伝達軸に設けられる。
【0045】
この構成によれば、伝達軸が回転することによりインペラが回転し、周囲の空気によりインペラが冷却される。そのため、本体部の内部空間が高温である場合でも、熱交換により伝達軸が冷却される。したがって、モータに設けられた軸受の温度の上昇が抑制される。この場合、軸受に供給された潤滑材が流出することが抑制されるので、モータの交換等のメンテナンスを頻繁に行う必要がない。これにより、自然発火試験装置のメンテナンスの頻度を低減することができる。
【0046】
(第2項)第1項に記載の自然発火試験装置において、
複数の軸受を保持するように収容し、前記インペラと前記モータ本体との間で前記複数の軸受により前記伝達軸を支持する軸受ボックスをさらに備えてもよい。
【0047】
この場合、インペラとの熱交換により伝達軸が冷却されるので、軸受ボックスの各軸受の内輪の温度の上昇が抑制される。したがって、軸受ボックスの各軸受に供給された潤滑材が流出することが抑制される。そのため、軸受ボックスの交換等のメンテナンスの頻度を低減しつつ、伝達軸に軸受ボックスを設けることが可能となる。また、伝達軸が軸受ボックスの複数の軸受により伝達軸が確実に支持される。これにより、伝達軸が長い場合でも、伝達軸の回転駆動力を安定的にファンに伝達することができる。
【0048】
(第3項)第2項に記載の自然発火試験装置において、
前記軸受ボックスには、前記伝達軸が延びる方向に沿って貫通する通風孔が形成されてもよい。
【0049】
この場合、通風孔を通した空気の流れにより軸受ボックスが冷却されるので、軸受ボックスにより保持される各軸受の外輪の温度の上昇を抑制することができる。そのため、軸受ボックスの各軸受に供給された潤滑材が流出することがより抑制される。これにより、自然発火試験装置のメンテナンスの頻度をより低減することができる。
【0050】
(第4項)第2または3項に記載の自然発火試験装置において、
前記軸受ボックスはアルミニウムを含む金属により形成されてもよい。
【0051】
この場合、伝達軸または軸受ボックスの各軸受に発生する熱を効率よく放散し、軸受ボックスの温度の上昇を抑制することができる。
【0052】
(第5項)第1~4のいずれか一項に記載の自然発火試験装置において、
前記モータは回転軸をさらに含み、
前記自然発火試験装置は、前記伝達軸と前記モータの前記回転軸とを連結する連結部材をさらに備えてもよい。
【0053】
この場合、回転軸と伝達軸とが一体的に形成される場合に比べて、伝達軸から回転軸への熱の伝達量が低下する。そのため、回転軸と接触するモータの軸受の温度の上昇が軽減される。これにより、自然発火試験装置が連続的に長期間使用される場合でも、モータの軸受が劣化することが防止される。
【0054】
(第6項)第1~4のいずれか一項に記載の自然発火試験装置において、
前記モータは、前記伝達軸として回転軸をさらに含み、
前記インペラは、前記モータの前記回転軸に設けられてもよい。
【0055】
この場合、簡単な構成でモータによりファンを回転駆動することができる。
【0056】
(第7項)第1~6のいずれか一項に記載の自然発火試験装置において、
前記伝達軸はステンレスにより形成されてもよい。
【0057】
この場合、伝達軸の熱伝導率が比較的低いので、本体部の内部空間の熱が伝達軸を通して外部に伝達することが軽減される。
【0058】
(第8項)第1~7のいずれか一項に記載の自然発火試験装置において、
前記インペラはアルミニウムを含む金属により形成されてもよい。
【0059】
この場合、インペラの熱伝導率が比較的高いので、伝達軸を効率よく冷却することができる。
【0060】
(第9項)第1~8のいずれか一項に記載の自然発火試験装置において、
前記インペラは、前記伝達軸に嵌め込まれた圧入部材であってもよい。
【0061】
この場合、インペラの内周面と伝達軸の外周面との接触面積が大きく維持されることにより、インペラと伝達軸との間の熱伝達率が大きくなる。これにより、伝達軸を効率よく冷却することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…本体部,10a,45b…ねじ孔,11…断熱材,12…エアバス,13…試料室,14,15…開口,20…試料保持具,21…試料容器,22…ガス排出口,30…ガス供給部,40…エアバス温調部,40A,40B…ねじ部材,41,61…ヒータ,42,62,63…温度センサ,43…ファン,44…モータ,44A,45A…上フランジ部,44a,45a…貫通孔,45…軸受ユニット,45B…下フランジ部,45c…通風孔,46…インペラ,46a…羽根,47…連結部材,50…整流部材,60…試料室温調部,70…制御部,71…ガス制御部,72…エアバス制御部,73…試料室制御部,74…測定部,100…自然発火試験装置,441…回転軸,442,452…軸受,443…モータ本体,451…伝達軸,453…軸受ボックス,S…試料
図1
図2
図3