(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20231011BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/18 K
B60C9/18 G
(21)【出願番号】P 2019134342
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 哲哉
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-283108(JP,A)
【文献】特開平03-099903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面幅の呼びが355以上であり、偏平比の呼びが70以下である重荷重用空気入りタイヤであって、
路面と接触するトレッド面を有するトレッドと、
前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと
を備え、
前記ベルトが径方向に積層された複数のベルトプライからなり、それぞれのベルトプライが赤道面に対して傾斜した多数のベルトコードを含み、
前記複数のベルトプライのうち、最大の幅を有するベルトプライが幅広プライであり、
前記複数のベルトプライのうち、径方向において最も外側に位置するベルトプライが最小の幅を有する幅狭プライであり、
前記トレッド面に軸方向に並列した複数本の周方向溝が刻まれており、これら周方向溝のうち軸方向外側に位置する2本の周方向溝がショルダー周方向溝であり、
前記幅狭プライの端が、軸方向において、前記ショルダー周方向溝よりも外側に位置し、
前記トレッド面の幅の、前記トレッド面の端での前記トレッド面のキャンバー量に対する比が20以上35以下であり、
前記ベルトから前記トレッド面までの厚さに関し、赤道面での厚さの、前記ベルトの端での厚さに対する比が0.95以上1.05以下である、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
2本の前記ショルダー周方向溝間の幅の、前記ショルダー周方向溝での前記トレッド面のキャンバー量に対する比が、25以上40以下である、請求項
1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトの幅の、前記トレッド面の幅に対する比が、0.85以上0.94以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記幅広プライの前記ベルトコードが赤道面に対してなす角度が14°以上16°以下である、請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記幅広プライの端での前記幅広プライのキャンバー量が、前記幅広プライの端に対応する前記トレッド面の位置での前記トレッド面のキャンバー量よりも小さい、請求項4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド面のうち、2本の前記ショルダー周方向溝の間がセンター部分であり、それぞれの前記ショルダー周方向溝の外側部分がショルダー部分であり、
前記トレッド面の輪郭において、前記センター部分が外向きに凸な第一円弧で表され、前記ショルダー部分が内向きに凸な第二円弧で表され、
前記第二円弧の半径が、前記第一円弧の半径よりも大きい、
請求項1から5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー部分の輪郭を表す第二円弧の半径の、前記センター部分の輪郭を表す第一円弧の半径に対する比は、4.5以上6.5以下である、
請求項6に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記センター部分の輪郭を表す第一円弧の半径が600mm以上700mm以下である、
請求項7に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー部分の輪郭を表す第二円弧の中心が、前記センター部分の輪郭を表す第一円弧の中心と前記ショルダー周方向溝の中心とを結ぶ直線上に位置する、
請求項6から8のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行により、タイヤのトレッドに偏摩耗が発生することがある。偏摩耗は、タイヤの外観はもちろんのこと、タイヤの接地圧分布に変化を招来するため、走行性能や耐久性に影響する。
【0003】
トラック、バス等の車両に装着される重荷重用空気入りタイヤには、大きな荷重が作用する。このため、このタイヤでは、偏摩耗が生じやすい。そこで、偏摩耗の発生を抑えるために、様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断面幅の呼びが355以上で、偏平比の呼びが70以下のタイヤにおいては、センター部分よりもショルダー部分の方が膨らやすい。このため、このタイヤでは、接地面が、センター部分においてくびれるような形状を有する傾向にあり、センター部分において摩耗が生じやすい。
【0006】
トレッド面のプロファイルにおいて、センター部分を表す円弧の半径を小さくすると、ショルダー部分の膨らみが抑えられ、前述の、センター部分での接地面のくびれを解消できる見込みはある。その一方で、ショルダー部分において接地面を十分に確保できず、ショルダー部分が路面に対して滑りやすくなることが懸念される。この場合、ショルダー部分において摩耗が生じやすい。
【0007】
ショルダー部分のトレッドを厚くすれば、適正な接地面形状を確保しつつ、偏摩耗の発生を抑えることができる。しかしこの場合、厚いトレッドは転がり抵抗を増加させる。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生を抑制できる、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは、断面幅の呼びが355以上であり、偏平比の呼びが70以下であるタイヤであって、路面と接触するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッド面の幅の、前記トレッド面の端での前記トレッド面のキャンバー量に対する比は20以上35以下である。前記ベルトから前記トレッド面までの厚さに関し、赤道面での厚さの、前記ベルトの端での厚さに対する比は0.95以上1.05以下である。
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッド面に軸方向に並列した複数本の周方向溝が刻まれており、これら周方向溝のうち軸方向外側に位置する2本の周方向溝がショルダー周方向溝である。2本の前記ショルダー周方向溝間の幅の、前記ショルダー周方向溝での前記トレッド面のキャンバー量に対する比は25以上40以下である。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ベルトの幅の、前記トレッド面の幅に対する比は、0.85以上0.94以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ベルトが径方向に積層された複数のベルトプライからなり、それぞれのベルトプライが赤道面に対して傾斜した多数のベルトコードを含む。前記複数のベルトプライのうち、最大の幅を有するベルトプライが幅広プライであり、前記幅広プライの前記ベルトコードが赤道面に対してなす角度は14°以上16°以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記幅広プライの端での前記幅広プライのキャンバー量は、前記幅広プライの端に対応する前記トレッド面の位置での前記トレッド面のキャンバー量よりも小さい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図2は、ベルトに含まれるベルトコードの配列が示された概略図である。
【
図3】
図3は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【
図4】
図4は、トレッドの部分の輪郭が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
本発明においては、タイヤが正規リムに組み込まれ、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の断面幅の呼びは355以上である。このタイヤ2の偏平比の呼びは70以下である。
【0022】
断面幅の呼び及び偏平比の呼びは、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」における「断面幅の呼び」及び「偏平比の呼び」である。
【0023】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図1は、タイヤ2がリムR(正規リム)に組み込まれ、タイヤ2の内圧が正規内圧の5%に調整され、このタイヤ2に荷重がかけられていない、タイヤ2の状態を示す。このタイヤ2の状態は、基準状態と称される。特に言及がない限り、タイヤ2各部の寸法及び角度はこの基準状態で測定される。なお、トレッド面4の輪郭等、タイヤ2の外面6に係る寸法及び角度は、タイヤ2の外面6を形づくるモールド(図示されず)のキャビティ面において特定されてもよい。
【0024】
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0025】
このタイヤ2は、トレッド8、一対のサイドウォール10、一対のビード12、一対のチェーファー14、カーカス16、ベルト18、一対のクッション層20、インナーライナー22、一対のスチール補強層24及び一対の繊維補強層26を備える。
【0026】
トレッド8は架橋ゴムからなる。トレッド8は、そのトレッド面4において路面と接触する。トレッド8は、路面と接触するトレッド面4を有する。
図1において符号PCは、トレッド面4と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。トレッド面4は、径方向外向きに凸な形状を有する。
【0027】
図1において、符号PEはトレッド面4の端である。両矢印eは、トレッド面4の幅である。この幅eは、一方のトレッド面4の端PEから他方のトレッド面4の端PEまでの軸方向距離により表される。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面4の端が識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としタイヤ2を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面4の端PEとして定められる。
【0028】
このタイヤ2では、赤道面の部分がセンター部分28であり、トレッド面4の端PEの部分がショルダー部分30である。
【0029】
このトレッド8は、一対のベース部32と、キャップ部34とを備える。一方のベース部32と他方のベース部32とは、軸方向において間隔をあけて配置される。それぞれのベース部32はベルト18の端36の部分を覆う。ベース部32はキャップ部34の径方向内側に位置する。ベース部32は、接着性が考慮された低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部34は、両側のベース部32を覆う。キャップ部34はトレッド面4を含む。このキャップ部34は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0030】
このタイヤ2では、軸方向に並列した複数の周方向溝38がトレッド面4に刻まれる。これら周方向溝38は、周方向に連続して延びる。トレッド面4には通常、少なくとも4本の周方向溝38が刻まれる。
図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝38がトレッド面4に刻まれる。
【0031】
4本の周方向溝38のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝38、すなわち赤道PCに近い周方向溝38がセンター周方向溝38cである。軸方向において最も外側に位置する周方向溝38、すなわち、トレッド面4の端PEに近い周方向溝38がショルダー周方向溝38sである。このタイヤ2では、4本の周方向溝38は、2本のセンター周方向溝38cと、2本のショルダー周方向溝38sとで構成される。なお、トレッド面4に刻まれた周方向溝38に、赤道PC上に位置する周方向溝38が含まれる場合には、この赤道PC上に位置する周方向溝38がセンター周方向溝とされる。さらにセンター周方向溝38cとショルダー周方向溝38sとの間に周方向溝38が存在する場合には、この周方向溝38がミドル周方向溝とされる。
【0032】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝38cの軸方向幅はトレッド面4の幅eの2~10%程度が好ましい。センター周方向溝38cの深さは、13~25mmが好ましい。ショルダー周方向溝38sの軸方向幅はトレッド面4の幅eの1~7%程度が好ましい。ショルダー周方向溝38sの深さは、13~25mmが好ましい。
【0033】
このタイヤ2では、軸方向に並列した複数の周方向溝38がトレッド面4に刻まれることにより、トレッド面4には軸方向に並列した複数の陸部40が構成される。
図1に示されるように、このタイヤ2では、4本の周方向溝38がトレッド面4に刻まれることにより、5本の陸部40が構成されている。
【0034】
5本の陸部40のうち、軸方向において内側に位置する陸部40、すなわち赤道PC上に位置する陸部40がセンター陸部40cである。軸方向において最も外側に位置する陸部40、すなわち、トレッド面4の端PEを含む陸部40がショルダー陸部40sである。センター陸部40cとショルダー陸部40sとの間に位置する陸部40が、ミドル陸部40mである。なお、トレッド8に構成された陸部40のうち、軸方向において内側に位置する陸部40が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部40、すなわち赤道PC側に位置する陸部40がセンター陸部とされる。
【0035】
このタイヤ2では、センター陸部40cの軸方向幅は、トレッド面4の幅eの10%以上18%以下である。ミドル陸部40mの軸方向幅は、センター陸部40cの0.9倍以上1.1倍以下である。ショルダー陸部40sの軸方向幅は、センター陸部40cの1.3倍以上1.6倍以下である。
【0036】
それぞれのサイドウォール10は、トレッド8の端に連なる。サイドウォール10は、トレッド8の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール10は、架橋ゴムからなる。
【0037】
それぞれのビード12は、サイドウォール10よりも径方向内側に位置する。ビード12は、コア42と、エイペックス44とを備える。
【0038】
コア42は、周方向に延びる。コア42は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア42は略六角形の断面形状を有する。
【0039】
エイペックス44は、コア42の径方向外側に位置する。エイペックス44は、内側エイペックス44uと外側エイペックス44sとを備える。内側エイペックス44uはコア42から径方向外向きに延びる。外側エイペックス44sは内側エイペックス44uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス44u及び外側エイペックス44sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス44sは内側エイペックス44uに比して軟質である。
【0040】
それぞれのチェーファー14は、ビード12の軸方向外側に位置する。このチェーファー14は、サイドウォール10よりも径方向内側に位置する。チェーファー14は、リムRと接触する。チェーファー14は、架橋ゴムからなる。
【0041】
カーカス16は、トレッド8、サイドウォール10及びチェーファー14の内側に位置する。カーカス16は、少なくとも1枚のカーカスプライ46を備える。このタイヤ2のカーカス16は、1枚のカーカスプライ46からなる。このタイヤ2では、カーカスプライ46はそれぞれのコア42の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0042】
図示されないが、カーカスプライ46は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このカーカス16はラジアル構造を有する。カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられてもよい。
【0043】
ベルト18は、トレッド8の径方向内側に位置する。このベルト18は、カーカス16の径方向外側に位置する。
【0044】
ベルト18は、径方向に積層された複数のベルトプライ48からなる。このタイヤ2のベルト18は、4枚のベルトプライ48で構成される。このタイヤ2では、ベルト18を構成するベルトプライ48の数に特に制限はない。ベルト18の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0045】
このタイヤ2では、4枚のベルトプライ48のうち、第一ベルトプライ48Aと第三ベルトプライ48Cとの間に位置する第二ベルトプライ48Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四ベルトプライ48Dが、最小の軸方向幅を有する。このタイヤ2では、この第二ベルトプライ48Bが、ベルト18を構成する複数のベルトプライ48のうち、最大の幅を有する幅広プライ50である。第四ベルトプライ48Dが、ベルト18を構成する複数のベルトプライ48のうち、最小の幅を有する幅狭プライ52である。
【0046】
図2には、このタイヤ2のベルト18の構成が示される。この
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
【0047】
ベルト18を構成する、それぞれのベルトプライ48は、並列した多数のベルトコード54を含む。ベルトコード54の材質はスチールである。ベルトコード54はトッピングゴム56で覆われる。
図2においては、説明の便宜のために、トッピングゴム56で覆われたベルトコード54が実線で表されている。
【0048】
ベルトコード54は、赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2では、一のベルトプライ48のベルトコード54は、この一のベルトプライ48に積層される他のベルトプライ48のベルトコード54と交差するように、ベルト18は構成される。
【0049】
図2に示されるように、第一ベルトプライ48Aのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きは、第二ベルトプライ48Bのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きと同じである。第二ベルトプライ48Bのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きは、第三ベルトプライ48Cのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きと逆である。第三ベルトプライ48Cのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きは、第四ベルトプライ48Dのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きと同じである。なお、第一ベルトプライ48Aのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きが第二ベルトプライ48Bのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きと逆であってもよく、第三ベルトプライ48Cのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きが第四ベルトプライ48Dのベルトコード54の赤道面に対する傾斜の向きと逆であってもよい。
【0050】
図1に示されるように、第二ベルトプライ48Bの端58B及び第三ベルトプライ48Cの端58Cはそれぞれゴム層60で覆われる。ゴム層60で覆われた端58B及び端58Cの間には、さらに2枚のゴム層60が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ48Bの端58Bと第三ベルトプライ48Cの端58Cとの間には、計4枚のゴム層60からなるエッジ部材62が挟み込まれる。これにより、第三ベルトプライ48Cの端58Cは、径方向外向きに迫り上げられ、第二ベルトプライ48Bの端58Bから引き離して配置される。このエッジ部材62は架橋ゴムからなる。
【0051】
それぞれのクッション層20は、ベルト18の端36の部分において、このベルト18とカーカス16との間に位置する。クッション層20は、架橋ゴムからなる。
【0052】
インナーライナー22は、カーカス16の内側に位置する。インナーライナー22は、タイヤ2の内面64を構成する。このインナーライナー22は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0053】
それぞれのスチール補強層24は、ビード12の部分に位置する。スチール補強層24は、カーカスプライ46に沿って、コア42の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、スチール補強層24はカーカスプライ46と接する。
【0054】
図示されないが、スチール補強層24は並列した多数のフィラーコードを含む。スチール補強層24においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。フィラーコードの材質はスチールである。
【0055】
それぞれの繊維補強層26は、ビード12の軸方向外側に位置し、スチール補強層24の軸方向外側部分の端部を覆う。この繊維補強層26は、2枚のプライ66からなる。図示されないが、それぞれのプライ66は並列した多数の繊維コードを含む。繊維補強層26において繊維コードはトッピングゴムで覆われる。繊維コードは有機繊維からなる。この有機繊維としてはナイロン繊維が好ましい。
【0056】
図1において、実線ALは赤道PCを通り軸方向に延びる第一キャンバー基準線である。両矢印fは、トレッド面4の端PEでのトレッド面4のキャンバー量である。このキャンバー量fは、トレッド面4の端PEから第一キャンバー基準線ALまでの径方向距離により表される。
【0057】
図1において、両矢印aは赤道面におけるトレッド8の厚さである。この厚さaは、ベルト18からトレッド面4(詳細には、赤道PC)までの距離により表される。厚さaは、赤道PCを通るトレッド面4の法線、すなわち赤道面に沿って計測される。両矢印bは、ベルト18の端36(このタイヤ2では、第二ベルトプライ48Bの端58B)におけるトレッド8の厚さである。この厚さbは、ベルト18の端36からトレッド面4までの距離により表される。この厚さbは、ベルト18の端36を通るトレッド面4の法線に沿って計測される。
【0058】
このタイヤ2では、トレッド面4の幅eの、トレッド面4の端PEでのトレッド面4のキャンバー量fに対する比が20以上35以下である。そして、ベルト18からトレッド8のトレッド面4までの厚さに関し、赤道面での厚さaの、ベルト18の端36での厚さbに対する比は0.95以上1.05以下である。
【0059】
このタイヤ2では、トレッド面4が適度に湾曲した形状を有するので、ショルダー部分30が路面と適正に接触できるとともに、ショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングが抑えられる。このタイヤ2では、ショルダー部分30での摩耗の発生が抑えられる。さらに、従来のタイヤで確認されたような、センター部分28での接地面(図示されず)のくびれの発生が抑えられるので、このタイヤ2は、ベルト18からトレッド面4までの厚さを、センター部分28がショルダー部分30の厚さと同等の厚さを有するように構成できる。このタイヤ2では、センター部分28による転がり抵抗への影響が抑えられるとともに、このセンター部分28での摩耗の発生も抑えられる。このタイヤ2では、転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生が抑制される。
【0060】
図3には、
図1に示されたタイヤ2のトレッド8の部分が示される。この
図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0061】
この
図3には、トレッド面4の輪郭、そしてベルト18を構成する各ベルトプライ48の径方向外側面(以下、ベルトプライ48の外面とも称される。)の輪郭が示される。このトレッド面4の輪郭、そしてベルト18の輪郭は、例えば、X線を用いたコンピュータ断層撮影法(以下、X線CT法)により撮影された、タイヤ2の断面画像を用いて特定することができる。この場合、X線CT法により撮影された、タイヤ2の断面画像をCAD(Computer-aided design)に取り込み、このCAD上でトレッド面4の輪郭、そしてベルト18を構成するベルトプライ48の輪郭が特定される。なお、この断面画像において、ベルトプライ48の外面の輪郭が特定できない場合には、ベルト18を構成する各ベルトプライ48に含まれるベルトコード54のトレッド8側の部分において、このベルトコード54に沿って線を描くことで、このベルトプライ48の輪郭が特定される。
【0062】
図3において、符号CGはショルダー周方向溝38sの中心である。この中心CGは、溝の口幅の中心により特定される。この中心CGは、このショルダー周方向溝38sの一方の縁(内縁68u)と他方の縁(外縁68s)とを結ぶ直線上に位置する。両矢印gは、一方のショルダー周方向溝38sの中心CGから他方のショルダー周方向溝38sの中心CGまでの軸方向距離を表す。この軸方向距離gが、トレッド面4に刻まれた2本のショルダー周方向溝38sの幅である。両矢印hは、ショルダー周方向溝38sでのトレッド面4のキャンバー量である。このキャンバー量hは、ショルダー周方向溝38sの中心CGから第一キャンバー基準線ALまでの径方向距離により表される。
【0063】
このタイヤ2では、2本のショルダー周方向溝38sの幅gの、ショルダー周方向溝38sでのトレッド面4のキャンバー量hに対する比は、25以上が好ましく、40以下が好ましい。
【0064】
この比が25以上に設定されることにより、トレッド面4の湾曲形状がより効果的に整えられる。ショルダー部分30は路面とより適正に接触できるので、このタイヤ2では、ショルダー部分30での摩耗の発生が効果的に抑えられる。この比が40以下に設定されることにより、トレッド面4の湾曲形状がショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングの抑制に効果的に貢献する。この場合においても、このタイヤ2では、ショルダー部分30での摩耗の発生が効果的に抑えられる。
【0065】
このタイヤ2では、ショルダー部分30が路面と適正に接触できるとともに、ショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングが抑えられる観点から、ショルダー周方向溝38sでのトレッド面4のキャンバー量hの、トレッド面4の端PEでのトレッド面4のキャンバー量fに対する比は、0.35以上が好ましく、0.45以下が好ましい。このタイヤ2では、ショルダー部分30での摩耗の発生が効果的に抑えられる。
【0066】
図3において、符号VEは第二ベルトプライ48B、すなわち幅広プライ50の端である。この幅広プライ50の端VEは、ベルト18の端36でもある。符号VCは、幅広プライ50と赤道面の交点である。実線VLは、第二キャンバー基準線である。この第二キャンバー基準線VLは、幅広プライ50と赤道面の交点VCを通り軸方向に延びる。両矢印V1は、幅広プライ50の端VEでの幅広プライ50のキャンバー量である。このキャンバー量V1は、幅広プライ50の端VEから第二キャンバー基準線VLまでの径方向距離により表される。符号VTは、幅広プライ50の端VEを通り径方向に延びる直線とトレッド面4との交点である。この交点VTは、幅広プライ50の端VEに対応するトレッド面4の位置である。両矢印V2は、幅広プライ50の端VEに対応するトレッド面4の位置VTでのトレッド面4のキャンバー量である。このキャンバー量V2は、幅広プライ50の端VEに対応するトレッド面4の位置VTから第一キャンバー基準線ALまでの径方向距離により表される。
【0067】
このタイヤ2では、トレッド面4と同じく、ベルト18も径方向外向きに凸な形状を有する。このタイヤ2では、好ましくは、幅広プライ50の端VEでの幅広プライ50のキャンバー量V1は、幅広プライ50の端VEに対応するトレッド面4の位置VTでのトレッド面4のキャンバー量V2よりも小さい。このタイヤ2では、トレッド面4の輪郭によってもたらされる効果への、ベルト18の影響が効果的に抑えられる。このベルト18は、転がり抵抗の低減と、偏摩耗の発生抑制とに効果的に貢献する。この観点から、幅広プライ50の端VEでの幅広プライ50のキャンバー量V1の、幅広プライ50の端VEに対応するトレッド面4の位置VTでのトレッド面4のキャンバー量V2に対する比は、0.7以上がより好ましく、0.9以下がより好ましい。
【0068】
図3において、両矢印dは、一方の幅広プライ50の端VEから他方の幅広プライ50の端VEまでの軸方向距離を表す。この軸方向距離dは、幅広プライ50、すなわちベルト18の幅である。
【0069】
このタイヤ2では、ベルト18の幅dの、トレッド面4の幅eに対する比は、0.85以上が好ましく、0.94以下が好ましい。
【0070】
この比が0.85以上に設定されることにより、ベルト18がショルダー部分30の剛性確保に貢献する。ショルダー部分30の変形が抑えられるので、このショルダー部分30での摩耗の発生が抑えられる。この比が0.94以下に設定されることにより、ベルト18の幅が適切に維持され、ベルト18の湾曲による、トレッド面4の輪郭への影響が抑えられる。ショルダー部分30が路面と適正に接触できるので、この場合においても、ショルダー部分30での摩耗の発生が効果的に抑えられる。
【0071】
図2において、角度θ1は第一ベルトプライ48Aに含まれるベルトコード54が赤道面に対してなす角度である。角度θ2は、第二ベルトプライ48Bに含まれるベルトコード54が赤道面に対してなす角度である。角度θ3は、第三ベルトプライ48Cに含まれるベルトコード54が赤道面に対してなす角度である。角度θ4は、第四ベルトプライ48Dに含まれるベルトコード54が赤道面に対してなす角度である。
【0072】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ48B、すなわち幅広プライ50に含まれるベルトコード54が赤道面に対してなす角度θ2(以下、傾斜角度θ2)は16°以下が好ましい。これにより、この幅広プライ50による、トレッド面4の輪郭によってもたらされる効果への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、ショルダー部分30が路面と適正に接触できるとともに、ショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングが抑えられる。この幅広プライ50は、ショルダー部分30での摩耗の発生を抑制することに効果的に貢献する。このタイヤ2では、ベルトプライ48の形成が困難となるため、ベルトプライ48におけるベルトコード54の傾斜角度を14°よりも小さな角度で設定することはできない。製造容易の観点から、この傾斜角度θ2は14°以上が好ましい。
【0073】
このタイヤ2では、トレッド8の部分の剛性確保に効果的に貢献できるベルト18が構成されるとの観点から、幅広プライ50の径方向外側に位置する第三ベルトプライ48Cに含まれるベルトコード54の傾斜角度θ3は、この幅広プライ50に含まれるベルトコード54の傾斜角度θ2と同等であるのが好ましい。
同様の観点から、幅広プライ50の径方向内側に位置する第一ベルトプライ48Aに含まれるベルトコード54の傾斜角度θ1は、この幅広プライ50に含まれるベルトコード54の傾斜角度θ2よりも大きいのが好ましい。具体的には、この傾斜角度θ1は、45°以上が好ましく、70°以下が好ましい。
さらに同様の観点から、第四ベルトプライ48D、すなわち幅狭プライ52に含まれるベルトコード54の傾斜角度θ4は、幅広プライ50に含まれるベルトコード54の傾斜角度θ2と同等であるか、この傾斜角度θ2よりも大きいのが好ましい。傾斜角度θ4が傾斜角度θ2よりも大きい場合、傾斜角度θ4と傾斜角度θ2との差は1°以上がより好ましく、5°以下がより好ましい。
【0074】
図1に示されるように、このタイヤ2では、第四ベルトプライ48Dの端58Dは、軸方向において、ショルダー周方向溝38sよりも外側に位置する。前述したように、この第四ベルトプライ48Dは幅狭プライ52である。したがって、このタイヤ2では、ベルト18を構成するベルトプライ48の端58は全て、軸方向において、ショルダー周方向溝38sよりも外側に位置する。このベルト18は、トレッド8の部分の剛性確保に効果的に貢献できる。特に、このベルト18は、ショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングの抑制に貢献する。この観点から、ベルト18を構成する複数のベルトプライ48のうち、最小の幅を有するベルトプライ48、すなわち幅狭プライ52の端70は、軸方向において、ショルダー周方向溝38sよりも外側に位置するのが好ましい。
【0075】
図4に示された断面は、
図1に示されたタイヤ2のトレッド8の部分、詳細には、トレッド面4の輪郭を示す。この
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0076】
このタイヤ2において、センター部分28は、一方のショルダー周方向溝38sの内縁68uから他方のショルダー周方向溝38sの内縁68uまでの部分である。ショルダー部分30は、ショルダー周方向溝38sの外縁68sからトレッド面4の端PEまでの部分である。ショルダー周方向溝38sの内縁68uから外縁68sまでの部分は、センター部分28とショルダー部分30との境界部分である。
【0077】
このタイヤ2では、トレッド面4の輪郭として、センター部分28は、外向きに凸な円弧(以下、第一円弧とも称される。)で表される。ショルダー部分30は、内向きに凸な円弧(以下、第二円弧とも称される。)で表される。
図4において、矢印Rcは第一円弧の半径を表し、矢印Rsは第二円弧の半径を表す。
【0078】
図示されないが、第一円弧の中心はトレッド面4よりも径方向内側に位置する。具体的には、この第一円弧の中心は赤道面上に位置する。これに対して第二円弧の中心は、トレッド面4よりも径方向外側に中心を有する。具体的には、この第二円弧の中心は、第一円弧の中心とショルダー周方向溝38sの中心CGとを結ぶ直線上に位置する。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝38sの内縁68uから外縁68sまでの径方向距離が少なくとも1mm以上3mm以下の範囲にあればよく、この第一円弧と第二円弧とがこの中心CGにおいて接していてもよく、接していなくてもよい。
【0079】
このタイヤ2では、トレッド面4のセンター部分28は一つの円弧で表されるが、複数の円弧で表されてもよい。この場合、一方のショルダー周方向溝38sの内縁68uと、赤道PCと、他方のショルダー周方向溝38sの内縁68uとを通る、仮想円弧を描き、この仮想円弧で表される軌跡と第一円弧で表される軌跡とのずれが、2mm以内であれば、この複数の円弧で表されたセンター部分28の輪郭は第一円弧で表されたセンター部分28の輪郭と同等と判断される。なお、軌跡のずれは、第一円弧の法線に沿って計測される。
【0080】
このタイヤ2では、トレッド面4のサイド部分は一つの円弧で表されるが、複数の円弧で表されてもよい。この場合、ショルダー周方向溝38sの外縁68sと、ショルダー陸部40sの外面72の中心PMと、トレッド面4の端PEとを通る、仮想円弧を描き、この仮想円弧で表される軌跡と第二円弧で表される軌跡とのずれが、2mm以内であれば、この複数の円弧で表されたショルダー部分30の輪郭は第二円弧で表されたショルダー部分30の輪郭と同等と判断される。なお、軌跡のずれは、第二円弧の法線に沿って計測される。
【0081】
このタイヤ2では、トレッド面4の輪郭は複数の円弧で表され、これら円弧は、センター部分28の輪郭を表し、外向きに凸な第一円弧と、この第一円弧の軸方向外側に位置し、ショルダー部分30の輪郭を表し、内向きに凸な一対の第二円弧とを含む。このトレッド面4の輪郭は、ショルダー部分30の路面との適正な接触と、ショルダー周方向溝38sにおけるゲーピングの抑制に貢献できる。このタイヤ2では、ショルダー部分30での摩耗の発生が抑えられる。このトレッド面4の輪郭はさらに、接地面における、センター部分28のくびれの解消にも貢献するので、センター部分28による転がり抵抗への影響が抑えられるとともに、このセンター部分28での摩耗の発生も抑えられる。このトレッド面4の輪郭は、転がり抵抗の低減と、偏摩耗の発生抑制とに効果的に貢献する。この観点から、トレッド面4の輪郭は複数の円弧で表され、これら円弧は、センター部分28の輪郭を表し、外向きに凸な第一円弧と、この第一円弧の軸方向外側に位置し、ショルダー部分30の輪郭を表し、内向きに凸な一対の第二円弧とを含むのが好ましい。
【0082】
このタイヤ2では、ショルダー部分30の輪郭を表す第二円弧の半径Rsはセンター部分28の輪郭を表す第一円弧の半径Rcよりも大きいのが好ましい。これにより、トレッド面4の輪郭が、転がり抵抗の低減と、偏摩耗の発生抑制とに効果的に貢献する。この観点から、ショルダー部分30の輪郭を表す第二円弧の半径Rsの、センター部分28の輪郭を表す第一円弧の半径Rcに対する比は、4.5以上が好ましく、6.5以下が好ましい。この場合、センター部分28の輪郭を表す第一円弧の半径Rcは、600mm以上が好ましく、700mm以下が好ましい。
【0083】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生を抑制できる、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。
【0084】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=385/65R22.5)を得た。
【0087】
この実施例1では、赤道面での厚さaの、ベルトの端での厚さbに対する比(a/b)は1.05であった。ベルトの幅dの、トレッド面の幅eに対する比(d/e)は0.85であった。トレッド面の幅eの、トレッド面の端でのトレッド面のキャンバー量fに対する比(e/f)は20であった。2本のショルダー周方向溝間の幅gの、ショルダー周方向溝でのトレッド面のキャンバー量hに対する比(g/h)は25であった。なお、ベルトの端での厚さbは、25.1mmに設定された。トレッド面の幅eは、305.0mmであった。2本のショルダー周方向溝間の幅gは、171.0mmであった。
【0088】
この実施例1では、第二ベルトプライ(幅広プライ)に含まれるベルトコードの傾斜角度θ2は、14°に設定された。なお、第一ベルトプライに含まれるベルトコードの傾斜角度θ1は、50°に設定された。第三ベルトプライに含まれるベルトコードの傾斜角度θ3は、傾斜角度θ2と同等の角度に設定された。第四ベルトプライに含まれるベルトコードの傾斜角度θ4は、18°に設定された。
【0089】
[実施例2-7及び比較例1-4]
実施例2-7及び比較例1-4では、比(a/b)、傾斜角度θ2、比(d/e)、比(e/f)及び比(g/h)は下記の表1の通りに設定された。
【0090】
[偏摩耗]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×11.75)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を900kPaに調整した。このタイヤを、トレーラーヘッドの駆動軸に装着した。一般道路を50,000km実車走行し、走行後、摩耗によって生じた段差量を摩耗量として測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、偏摩耗が生じにくく耐摩耗性に優れる。
【0091】
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、各試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく優れる。
リム:22.5×11.75
内圧:900kPa
縦荷重:44.13kN
【0092】
[合計値]
各評価で得た指数の合計を求めた。この結果が下記の表1及び2の合計の欄に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0093】
【0094】
【0095】
表1及び2に示されるように、実施例では、転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生が抑えられている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明された転がり抵抗を増加させることなく偏摩耗の発生を抑制するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0097】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド面
8・・・トレッド
10・・・サイドウォール
12・・・ビード
14・・・チェーファー
16・・・カーカス
18・・・ベルト
28・・・センター部分
30・・・ショルダー部分
36・・・ベルト18の端
38、38c、38s・・・周方向溝
40、40c、40s、40m・・・陸部
48、48A、48B、48C、48D・・・ベルトプライ
50・・・幅広プライ
52・・・幅狭プライ
54・・・ベルトコード