(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コントロールバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
F16K31/06 305H
(21)【出願番号】P 2019143742
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】金原 邦男
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122292(JP,A)
【文献】特開2009-008221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
F16K 3/00- 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って設けられた空間を有する収納部と、前記空間につながって設けられ、液体が通過する複数の流路とを有するバルブボディと、
前記空間内に軸方向に沿って移動可能に収納され、該移動により前記空間と前記各流路との間での前記液体の通過と遮断とを切り換えるスプール弁体と、
前記収納部の軸方向一方側に接続され、通電より磁力を生じさせて前記スプール弁体を移動させるソレノイドとを備え、
前記空間は、少なくとも一部が、前記液体が通過するときに生じる振動を減衰させるダンピング室として機能し、
前記バルブボディは、前記空間につながって設けられ、該空間から排出された前記液体を前記ダンピング室に戻す戻し流路を有
し、
前記戻し流路は、前記空間から前記バルブボディの上面まで貫通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔と異なる位置に設けられ、前記バルブボディの上面から前記ダンピング室まで貫通する第2貫通孔と、前記バルブボディの上面に突出して設けられ、前記第1貫通孔の前記バルブボディの上面に開口する第1開口部と、前記第2貫通孔の前記バルブボディの上面に開口する第2開口部とを一括して囲む壁部とを有することを特徴とするコントロールバルブ。
【請求項2】
前記第1開口部の中心と前記第2開口部の中心とを結ぶ線を想定したとき、該線は、平面視で軸方向と交差する請求項
1に記載のコントロールバルブ。
【請求項3】
前記第1貫通孔では、前記液体が前記空間から前記バルブボディの上面まで通過し、前記第2貫通孔では、前記液体が前記バルブボディの上面から前記ダンピング室まで通過する状態なり、
前記第2開口部は、前記第1開口部よりも高い位置に配置される請求項
1または
2に記載のコントロールバルブ。
【請求項4】
前記収納部は、軸方向と直交する方向に突出しており、
前記第2開口部は、前記収納部の最上部に配置される請求項
3に記載のコントロールバルブ。
【請求項5】
前記第2開口部の大きさは、前記第1開口部の大きさよりも小さい請求項
3または
4に記載のコントロールバルブ。
【請求項6】
前記壁部は、前記第2開口部側の高さよりも前記第1開口部側の高さの方が高い請求項
3~
5のいずれか1項に記載のコントロールバルブ。
【請求項7】
前記バルブボディは、前記ソレノイドを複数接続可能に構成される請求項1~
6のいずれか1項に記載のコントロールバルブ。
【請求項8】
前記コントロールバルブは、前記液体が貯留された貯留槽内に収納して使用され、
前記第1開口部および前記第2開口部は、それぞれ、前記貯留槽内の液面よりも上方に配置される請求項
1に記載のコントロールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車には、自動変速機が搭載された自動車がある。自動変速機は、変速機構を制御するためのコントロールバルブを備える。コントロールバルブは、例えば、駆動用のオイルが通過する油路(油圧回路)を有するバルブボディと、油圧回路にオイルを供給する供給源となるオイルポンプと、油圧回路を切り換える種々の切換弁とを備える。
【0003】
また、コントロールバルブは、バルブボディ全体が、オイルが満たされたオイルパン内に配置される場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、バルブボディ内に設けられたダンピング室は、常にオイルが充填された状態となる。ダンピング室内のオイルが不足すると、油振(オイルの脈動)発生の原因となるが、ダンピング室に常にオイルが充填された状態となることにより、油振を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コントロールバルブには、バルブボディの一部がオイルパンのオイル内に配置され、残りの部分がオイルの液面から露出して使用されるコントロールバルブもある。この場合、ダンピング室にオイルが常時充填された状態が維持されず、油振が発生するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、コントロールバルブの一つの態様によれば、例えばコントロールバルブが車両に搭載された場合、車両の姿勢に関わらず、液体通過時に生じるコントロールバルブでの振動を低減することができるコントロールバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコントロールバルブの一つの態様は、軸方向に沿って設けられた空間を有する収納部と、前記空間につながって設けられ、液体が通過する複数の流路とを有するバルブボディと、前記空間内に軸方向に沿って移動可能に収納され、該移動により前記空間と前記各流路との間での前記液体の通過と遮断とを切り換えるスプール弁体と、前記収納部の軸方向一方側に接続され、通電より磁力を生じさせて前記スプール弁体を移動させるソレノイドとを備え、前記空間は、少なくとも一部が、前記液体が通過するときに生じる振動を減衰させるダンピング室として機能し、前記バルブボディは、前記空間につながって設けられ、該空間から排出された前記液体を前記ダンピング室に戻す戻し流路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコントロールバルブの一つの態様によれば、例えばコントロールバルブが車両に搭載された場合、車両の姿勢に関わらず、液体通過時に生じるコントロールバルブでの振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のコントロールバルブの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1中の矢印A方向から見た図(側面図)である。
【
図3】
図3は、
図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2中の矢印C方向から見た図(上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図7を参照して本発明のコントロールバルブの実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。X軸と平行な方向を「軸方向(軸O2方向)」と言い、この軸を中心とする径方向を単に「径方向」と言い、前記軸を中心とする周方向を単に「周方向」と言うことがある。また、X軸方向正側を「軸方向一端側」または単に「一端側」と言い、X軸方向負側を「軸方向他端側」または単に「他端側」と言うことがある。本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示すコントロールバルブ1は、例えば自動車等の車両に搭載され、変速機構の作動を制御することができる。コントロールバルブ1は、バルブボディ2と、スプール弁体3と、ソレノイド4と、弾性部材5と、調整部材6と、固定部材7と、コネクタ8Aとを備える。以下、各部の構成について説明する。
【0012】
図1、
図2に示すように、バルブボディ2は、板状の第1ボディ21と、板状の第2ボディ22と、板状の第3ボディ23と、シート状の第1セパレータ24と、シート状の第2セパレータ25とを有する。そして、Z軸方向負側(下側)から、第3ボディ23、第2セパレータ25、第2ボディ22、第1セパレータ24、第1ボディ21が順に重ねて配置される。これにより、例えばバルブボディ2を製造する際に、第1ボディ21、第2ボディ22、第3ボディ23、第1セパレータ24および第2セパレータ25を前記の順に重ねるという簡単な作業で、バルブボディ2を迅速かつ容易に組み立てることができる。なお、本実施形態では、バルブボディ2は、コントロールバルブ1が車両に搭載された状態で、第1ボディ21が最も上側に位置する。
【0013】
第1ボディ21は、Z軸方向正側(上方)に向かって突出して設けられた収納部26を有する。収納部26には、スプール弁体3が収納される。本実施形態では、収納部26は、Y軸方向(軸O2方向と直交する方向)に間隔を置いて3つ配置される。以下、これら3つの収納部26を、Y軸方向負側から順に「収納部26A」、「収納部26B」、「収納部26C」と言うことがある。なお、収納部26の配置数は、3つに限定されず、例えば、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0014】
収納部26A、収納部26Bおよび収納部26Cは、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、収納部26Aについて代表的に説明する。
図6に示すように、収納部26Aは、軸O2方向に沿って設けられた空間261を有する。空間261内には、後述するスプール弁体3が軸O2方向に沿って移動可能に収納された状態となる。
また、収納部26AのX軸方向負側(軸O2方向他方側)には、軸O2方向に沿って、空間261まで貫通する雌ねじ262が設けられる。雌ねじ262には、後述する調整部材6の雄ねじ61が螺合する(thread)ことにより連結される。
【0015】
第1ボディ21は、収納部26Aの空間261につながって設けられた複数の流路27を有する。各流路27は、液体Qが通過することができる。なお、流路27の配置数については、複数であれば、特に限定されない。また、各流路27の形状については、特に限定されず、例えば、直線形状、湾曲形状、屈曲形状、または、これらの形状を組み合わせた形状等が挙げられる。また、各流路27を通過する液体Qは、例えば本実施形態のようにコントロールバルブ1が車両の変速機構の作動を制御する場合、作動流体としてのオイルとすることができる。
【0016】
空間261内には、スプール弁体3が軸O2方向に沿って移動可能に収納される。
図6に示すように、スプール弁体3は、軸O2方向と平行な中心軸を有する円柱体で構成され、外径が異なる複数の大径部31と複数の小径部32とを有する。そして、スプール弁体3が空間261内を軸O2方向に沿って移動した際、空間261内での各大径部31および各小径部32の位置(X軸座標)が変化して、各流路27を開閉することができる。これにより、空間261と各流路27との間での液体Qの通過と遮断とを切り換えることができる。
【0017】
前述したように、第1ボディ21は、3つの収納部26を有する。そして、各収納部26のX軸方向正側には、ソレノイド4を接続することができる。以下、収納部26Aに接続されたソレノイド4を「ソレノイド4A」、収納部26Bに接続されたソレノイド4を「ソレノイド4B」、収納部26Cに接続されたソレノイド4を「ソレノイド4C」と言うことがある。
【0018】
ソレノイド4A、ソレノイド4Bおよびソレノイド4Cは、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、ソレノイド4Aについて代表的に説明する。
図6に示すように、ソレノイド4Aは、ボビン41と、プランジャ42と、コイル43と、ケース44と、コア45と、ヨーク46と、コネクタ47を有する。
ボビン41は、貫通孔411を有する筒状の部材である。貫通孔411は、X軸方向と平行な軸O2方向に沿って貫通する。ボビン41は、磁性を有する金属材料で構成される。
【0019】
ボビン41の外周部414には、導電性を有するコイル43が巻回される。そして、コイル43を通電状態とすることにより、ボビン41とコア45とヨーク46とで磁気回路が構成されて、磁力を生じさせることができる。これにより、プランジャ42をスプール弁体3ごとX軸方向負側に向かって移動させることができる。なお、スプール弁体3のX軸方向正側への移動は、後述する弾性部材5が担う。これにより、軸O2方向に沿ったスプール弁体3の往復動が可能となる。
【0020】
ボビン41の貫通孔411には、コア45とヨーク46とが挿入され、さらに内側にプランジャ42が挿入される。
コア45は、X軸方向負側に配置され、ヨーク46は、X軸方向正側に配置される。
コア45は、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。また、ヨーク46も、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。コア45およびヨーク46は、ボビン41と同様に、磁性を有する金属材料で構成される。これにより、プランジャ42を十分に移動させることができる程度の磁気回路を生じさせることができる。
【0021】
プランジャ42は、コア45とヨーク46とにまたがって配置され、軸O2方向に沿って往復動可能に支持される。プランジャ42は、円筒状のプランジャ本体422と、プランジャ本体422に挿入されたプランジャピン421を有する。プランジャピン421は、少なくともX軸方向正側に突出しており、スプール弁体3に接する。
【0022】
ケース44は、円筒状をなし、内側にボビン41、プランジャ42、コイル43、コア45およびヨーク46を収納する。また、ケース44は、X軸方向負側の部分がカシメにより収納部26Aに固定される。これにより、収納部26Aにソレノイド4Aが接続された状態となる。
【0023】
コネクタ47は、ケース44のZ軸方向負側に突出しており、コイル43への通電を行うカプラ(図示せず)が接続される。このカプラのコネクタ47への接続方向は、本実施形態ではX軸方向負側に向かう方向となるが、これに限定されない。
このように、第1ボディ21(バルブボディ2)は、収納部26の配置数分だけ、ソレノイド4を接続可能に構成される。これにより、各ソレノイド4に対応したスプール弁体3をそれぞれ独立して移動させることができる。
【0024】
また、複数のソレノイド4は、収納部26と同様に、Y軸方向(軸O2方向と直交する方向)に間隔を置いて配置される。これにより、第1ボディ21に各ソレノイド4を接続する際、その接続作業を容易に行うことができる。なお、ソレノイド4Aとソレノイド4Bとの間隔と、ソレノイド4Bとソレノイド4Cとの間隔とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
図6に示すように、収納部26内のX軸方向負側(軸O2方向他方側)、すなわち、スプール弁体3を介してソレノイド4Aと反対側に位置するダンピング室261a内には、弾性部材5が配置される。なお、ダンピング室261aについては、後述する。また、弾性部材5に対してX軸方向負側(軸O2方向他方側)には、調整部材6が配置される。
【0026】
弾性部材5は、コイルバネ51であり、X軸方向正側でスプール弁体3に接触し、X軸方向負側で調整部材6に接触する。また、弾性部材5は、スプール弁体3と調整部材6との間で、圧縮状態で維持される。これにより、弾性部材5は、簡単な構成で、スプール弁体3をソレノイド4側に押し込む弾性力F5を過不足なく付与することができる。そして、弾性力F5と、ソレノイド4Aによる磁力とが相まって、スプール弁体3を軸O2方向に沿って往復動させることができる。
【0027】
調整部材6は、スプール弁体3に対する弾性力F5を調整することができる。調整部材6は、円柱状をなしている。調整部材6は、外周部に、収納部26の雌ねじ262と螺合することにより連結される雄ねじ61を有する。そして、X軸方向負側から見て、軸O2を中心として調整部材6を時計回りに回転させることにより、調整部材6をX軸方向正側に向かって移動させることができる。これにより、弾性部材5は、スプール弁体3と調整部材6との間でさらに圧縮され、よって、スプール弁体3に対する弾性力F5が増大する。また、X軸方向負側から見て、軸O2を中心として調整部材6を反時計回りに回転させることにより、調整部材6をX軸方向負側に向かって移動させることができる。これにより、弾性部材5は、スプール弁体3と調整部材6との間での圧縮状態が緩和され、よって、スプール弁体3に対する弾性力F5が減少する。このように調整部材6を軸O2回りに回転させるという簡単な操作で、軸O2方向に沿った調整部材6の位置を変更することができる。そして、調整部材6の位置に応じて弾性部材5の圧縮の程度が変化することとなり、よって、スプール弁体3に対する弾性力F5を容易に調整することができる。
【0028】
また、調整部材6は、X軸方向負側(軸O2方向他方側)に設けられた凹部(第1凹部)62と、X軸方向正側(軸O2方向一方側)に設けられた凹部(第2凹部)63とを有する。
凹部62には、六角レンチ(図示せず)を挿入することができる形状をなす。そして、凹部62に挿入された状態の六角レンチを操作することにより、調整部材6を軸O2回りに容易に回転させることができる。
【0029】
凹部63は、弾性部材5のX軸方向負側が接触するバネ座として機能する。一方、スプール弁体3にも、弾性部材5のX軸方向正側が接触するバネ座として機能する凹部33が設けられる。凹部63および凹部33により、弾性部材5は、安定して伸縮することができる。なお、凹部63および凹部33は、いずれも、テーパ状をなすのが好ましい。これにより、コントロールバルブ1を組み立てる際、弾性部材5のX軸方向負側を凹部63に挿入し、弾性部材5のX軸方向正側を凹部33に挿入する作業を容易に行うことができる。また、組立後のコントロールバルブ1では、弾性部材5が伸縮した際、弾性部材5の外周部と凹部63の内周部との間に摩擦が生じるのを防止することができる。これにより、弾性部材5の外周部と凹部63の内周部とが摩耗するのを防止することができる。同様に、弾性部材5が伸縮した際、弾性部材5の外周部と凹部33の内周部との間に摩擦が生じるのを防止することができる。これにより、弾性部材5の外周部と凹部33の内周部とが摩耗するのを防止することができる。
【0030】
固定部材7は、バルブボディ2の第1ボディ21に対して調整部材6を着脱自在に固定する、すなわち、第1ボディ21に対して調整部材6を固定する固定状態と、固定状態を解除する解除状態とを取り得る。ここで、「固定状態」とは、調整部材6に軸O2回りのトルクが付与されても、軸O2に沿った調整部材6の位置が規制される、すなわち、位置が不変の状態をいう。また、「解除状態」とは、調整部材6に軸O2回りのトルクが付与された場合、軸O2に沿って調整部材6が移動可能な状態をいう。
【0031】
固定部材7は、収納部26の外側に配置されたナット71である。ナット71は、調整部材6の雄ねじ61と螺合により連結される雌ねじ72を有する。
そして、X軸方向負側から見て、軸O2を中心として固定部材7を時計回転させることにより、固定部材7をX軸方向正側に向かって移動させることができる。これにより、固定部材7のX軸方向正側(軸O2方向一方側)の端面73と、収納部26のX軸方向負側(軸O2方向他方側)の端面263とが接近していき、遂には、
図6に示すように、固定部材7の端面73と、収納部26の端面263とが接触する。このとき、固定状態となり、バルブボディ2に対して調整部材6を十分に固定することができ、よって、スプール弁体3に対する弾性部材5の弾性力F5を一定に維持することができる。
【0032】
また、固定状態から解除状態にする場合は、X軸方向負側から見て、軸O2を中心として固定状態にある固定部材7を反時計回りに回転させることにより、固定部材7をX軸方向正側に向かって移動させることができる。これにより、固定部材7の端面73と、収納部26の端面263とが離間して、解除状態となる。解除状態では、固定状態を十分に解除することができる。これにより、調整部材6の位置を変更して、弾性力F5の再調整が可能となる。また、解除状態では、調整部材6を第1ボディ21から離脱させることができる。
【0033】
例えば、第1ボディ21に調整部材6を連結する際に、調整部材6の姿勢が軸O2に対して傾斜してしまい、その結果、第1ボディ21の雌ねじ262が変形等により破損した場合、第1ボディ21は破棄されるが、コントロールバルブ1を構成する部品の一つである調整部材6については、そのまま再利用したいという要望がある。前述したように、解除状態では、調整部材6を第1ボディ21から離脱させることができる。これにより、前記の要望を満たすべく、第1ボディ21から離脱させた調整部材6を新たな第1ボディ21に連結して、当該調整部材6を再利用することができる。また、調整部材6と同様に、例えば、弾性部材5等のコントロールバルブ1を構成する他の部品も再利用可能となる。
【0034】
コネクタ8Aは、バルブボディ2の第1ボディ21上に配置、固定される。コネクタ8Aは、複数本のケーブル82を介して、各ソレノイド4と電気的に接続される。また、コネクタ8Aは、ケーブル82と反対側で、カプラ(図示せず)が電気的に接続される。このカプラのコネクタ8Aへの接続方向は、本実施形態ではX軸方向負側に向かう方向となるが、これに限定されない。
【0035】
図2に示すように、コントロールバルブ1は、オイルパン10内に収納して使用される。オイルパン10は、オイルである液体Qが貯留された貯留槽である。また、コントロールバルブ1は、全体がオイルパン10内に収納されるのが好ましいが、例えば、車両内の変速機構との配置関係等の諸条件により、一部がオイルパンの液面LSよりも高い位置となる場合がある。本実施形態では、
図2、
図6に示すように、第1ボディ21の各収納部26がオイルパンの液面LSよりも高い位置にある状態を一例として説明する。
【0036】
また、各収納部26内、すなわち、空間261のX軸方向正側の部分は、液体Qが流路27を通過するときに生じる振動(油振)、すなわち、脈動を減衰させるダンピング効果を発揮するダンピング室261aとして機能する。各ダンピング室261a内は、ダンピング効果発揮のために常時液体Qで満たされるのが好ましいが、車両の姿勢によっては、収納部26が液面LSよりも高い位置となるため、スプール弁体3の移動により、液体Qがダンピング室261aから排出されて、空となる不具合が生じるおそれがある。
そこで、コントロールバルブ1では、前記不具合を防止するよう構成される。以下、前記不具合を防止する構成および作用について説明する。
【0037】
図1に示すように、第1ボディ21は、各収納部26の空間261につながって設けられた戻し流路(return channel)29を有する。各戻し流路29は、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、収納部26Aに配置された戻し流路29について代表的に説明する。
戻し流路29は、空間261から排出された液体Qをダンピング室261aに戻して、ダンピング室261a内を常時液体Qで満たすことができる。
図3、
図4に示すように、戻し流路29は、第1貫通孔291と、第2貫通孔292と、壁部293とを有する。
【0038】
図5~
図7に示すように、第1貫通孔291は、空間261の軸O2方向の途中からバルブボディ2の上面(上側に臨む面)211まで貫通して設けられる。これにより、第1貫通孔291では、液体Qが空間261からバルブボディ2の上面211まで通過する状態となる。また、
図7に示すように、第1貫通孔291は、バルブボディ2の上面211に開口する第1開口部294を有する。これにより、第1貫通孔291を通過した液体Qは、第1開口部294から外側に流出することができる。なお、第1開口部294は、オイルパン10内の液面LSよりも上方に配置される。また、第1貫通孔291の形状については、特に限定されず、例えば、直線形状、湾曲形状、屈曲形状、または、これらの形状を組み合わせた形状等が挙げられる。
【0039】
第2貫通孔292は、第1貫通孔291と異なる位置に設けられる。第2貫通孔292の配置位置としては、本実施形態では第1貫通孔291に対してX軸方向負側であるが、これに限定されない。
図6に示すように、第2貫通孔292は、バルブボディ2の上面211からダンピング室261aまで貫通して設けられる。また、第2貫通孔292は、バルブボディ2の上面211に開口する第2開口部295を有する。これにより、第2貫通孔292では、液体Qが第2開口部295から流入して、その後、ダンピング室261aまで通過する状態なる。なお、第2開口部295は、オイルパン10内の液面LSよりも上方に配置される。また、第2貫通孔292の形状については、第1貫通孔291と同様に、特に限定されず、例えば、直線形状、湾曲形状、屈曲形状、または、これらの形状を組み合わせた形状等が挙げられる。
【0040】
図3、
図4に示すように、壁部293は、バルブボディ2の上面211に突出して設けられる。壁部293は、第1貫通孔291の第1開口部294と、第2貫通孔292の第2開口部295とを一括して囲む。これにより、第1開口部294から流出した液体Qは、壁部293に案内されて、第2開口部295に向かうことができる。そして、第2開口部295に到達した液体Qは、第2開口部295から流入することができる。これにより、戻し流路29は、スプール弁体3の移動によってダンピング室261aから排出された液体Qをダンピング室261aに戻ることができる。すなわち、戻し流路29は、ダンピング室261a内とダンピング室261a外との間で、液体Qを循環させることができる。そして、液体Qの循環により、ダンピング室261a内を常時液体Qで満たすことができる。これにより、コントロールバルブ1が搭載された車両は、姿勢に関わらずダンピング室261aによるダンピング効果が発揮されて、コントロールバルブ1での振動(油振)が低減される。
なお、第1開口部294から流出した液体Qのうち、第2開口部295に到達するまでの間に壁部293から溢れた液体Q、すなわち、過剰分の液体Qは、そのままオイルパン10内に溜まる。
【0041】
図3に示すように、第2開口部295は、第1開口部294よりも高い位置に配置される。これにより、液体Qが壁部293の内側を第1開口部294から第2開口部295に向かって通過する際に、当該液体Qは、第1開口部294と第2開口部295との間の湾曲傾斜面296を遡らなければならず、その分、第2開口部295への過剰な流入を防止することができる。これにより、コントロールバルブ1における油圧の安定化を図ることができる。また、
図6に示すように、第2開口部295は、収納部26の最上部に配置されるのが好ましい。これにより、液体Qの第2開口部295への過剰な流入をより確実に防止することができる。
【0042】
図4に示すように、第2開口部295の大きさは、第1開口部294の大きさよりも小さい。各開口部の大きさの大小関係を規定することによっても、液体Qの第2開口部295への過剰な流入をより確実に防止することができる。なお、平面視での第1開口部294および第2開口部295の形状は、それぞれ、本実施形態では円形であるが、これに限定されない。また、平面視での第1開口部294および第2開口部295の形状がそれぞれ円形である場合、第2開口部295の直径は、第1開口部294の直径の10%以上50%以下であるのが好ましく、10%以上20%以下であるのがより好ましい。
【0043】
また、第1開口部294の中心と第2開口部295の中心とを結ぶ線LN29を想定したとき、線LN29は、平面視で軸O2方向と交差する。これにより、壁部293で囲まれた空間の容積をできる限り大きく確保することができ、よって、液体Qが壁部293の内側を容易に通過することができる。なお、線LN29と軸O2とがなす角度については、特に限定されない。本実施形態によれば、第1開口部294をソレノイドバルブ(ソレノイド4)と同軸上に配置していないため、例えばコンタミネーションが第1開口部294に落下したとしても、スプール弁体3(スプールバルブ)に噛み込んで固着(スティックとも呼ぶことがある)するというリスクが低減される。
【0044】
図3に示すように、壁部293は、第2開口部295側の高さH295よりも第1開口部294側の高さH294の方が高い。これにより、液体Qが第1開口部294から第2開口部295に向かって通過する際、液体Qの過剰分を壁部293の外方へ容易に排出することができる。前述したように、過剰分の液体Qは、オイルパン10内に溜まる。
【0045】
以上、本発明のコントロールバルブを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、コントロールバルブを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0046】
また、固定部材7は、ナット71に限定されず、例えば、調整部材6の構成によっては、スペーサ形状のナット(長ナット)等のピン状の部材とすることもできる。
また、ダンピング室261aとして機能する部分は、空間261のX軸方向正側の部分であるが、これに限定されず、空間261の少なくとも一部であればよい。
【符号の説明】
【0047】
1…コントロールバルブ、2…バルブボディ、21…第1ボディ、211…上面(上側に臨む面)、22…第2ボディ、23…第3ボディ、24…第1セパレータ、25…第2セパレータ、26…収納部、26A…収納部、26B…収納部、26C…収納部、261…空間、261a…ダンピング室、262…雌ねじ、263…面、27…流路、29…戻し流路、291…第1貫通孔、292…第2貫通孔、293…壁部、294…第1開口部、295…第2開口部、296…湾曲傾斜面、3…スプール弁体、31…大径部、32…小径部、33…凹部、4…ソレノイド、4A…ソレノイド、4B…ソレノイド、4C…ソレノイド、41…ボビン、411…貫通孔、414…外周部、42…プランジャ、421…プランジャピン、422…プランジャ本体、43…コイル、44…ケース、45…コア、46…ヨーク、47…コネクタ、5…弾性部材、51…コイルバネ、6…調整部材、61…雄ねじ、62…凹部(第1凹部)、63…凹部(第2凹部)、7…固定部材、71…ナット、72…雌ねじ、73…面、8A…コネクタ、82…ケーブル、10…オイルパン、F5…弾性力、H294…高さ、H295…高さ、LS…液面、LN…線、O2…軸、Q…液体