(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20231011BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231011BHJP
C08G 81/02 20060101ALI20231011BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20231011BHJP
C08G 18/69 20060101ALI20231011BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20231011BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20231011BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231011BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G03F7/027
G03F7/004 512
C08G81/02
C08G18/54
C08G18/69
C08G18/40 027
C08F299/02
H05K3/28 D
H05K3/28 F
H05K3/46 T
(21)【出願番号】P 2019148016
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-189631(JP,A)
【文献】特開2000-281738(JP,A)
【文献】特開2006-349814(JP,A)
【文献】特開2005-298728(JP,A)
【文献】国際公開第02/085962(WO,A1)
【文献】特開2017-149861(JP,A)
【文献】特開2013-214057(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002071(WO,A1)
【文献】特開2015-049517(JP,A)
【文献】特開2003-162057(JP,A)
【文献】特開2004-133060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤と
、(C)エポキシ樹脂とを含む感光性樹脂組成物であって、
(A)成分が、分子中に、
(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、
(a2)ブタジエン骨格
を有
し、フェノキシ構造含有骨格(a1)が、ポリ(フェニレンエーテル)骨格、フェノールノボラック骨格、及びクレゾールノボラック骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を含み、
感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、エポキシ樹脂の含有量が45質量%以下である、
感光性樹脂組成物
(但し、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に反応性エラストマ成分(b)、不飽和モノカルボン酸成分(c)を反応させて得られるエステル化物にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加した付加反応生成物である酸変性ビニルエポキシ樹脂と、エポキシ基含有ポリアミドイミド樹脂を含む樹脂組成物を除く。)。
【化1】
(上記式(A1)中、A
a1
~A
a6
のうち、2つは結合手であり、残りの4つはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は、置換若しくは非置換の炭素数1~5の直鎖状のアルキル基である。ただし、A
a1
は結合手でない場合、水素原子である。)
【化2】
(式(1)中、Rは、水素原子あるいはグリシジル基である。)
【請求項2】
(A)成分が、
分子中に、ブタジエン骨格(a2)を少なくとも2つ含み、2つのブタジエン骨格(a2)の間に、少なくとも1つのフェノキシ構造含有骨格(a1)が介在する光重合性ポリマーである、
請求項
1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、
フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に、エステル結合又はウレタン結合が介在する光重合性ポリマーである、
請求項1
又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分の数平均分子量が4000以上50000以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、アジ化物及びアシルフォスフィンオキシド系化合物からなる群から選択された1種以上の光ラジカル発生剤である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
絶縁層形成用である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
ソルダーレジスト層形成用である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
180℃で60分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電正接が0.030以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
180℃で60分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電率が3.0以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項13】
支持体と、該支持体上に設けられた
、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層とを含む、樹脂シート
であって、
感光性樹脂組成物が、(A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤とを含み、
(A)成分が、分子中に、
(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、
(a2)ブタジエン骨格
を有し、フェノキシ構造含有骨格(a1)が、ポリ(フェニレンエーテル)骨格、フェノールノボラック骨格、及びクレゾールノボラック骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を含む、樹脂シート。
【化3】
(上記式(A1)中、A
a1
~A
a6
のうち、2つは結合手であり、残りの4つはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は、置換若しくは非置換の炭素数1~5の直鎖状のアルキル基である。ただし、A
a1
は結合手でない場合、水素原子である。)
【請求項14】
感光性樹脂組成物が、請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である、請求項13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は請求項
12に記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層又はソルダーレジスト層を含む、プリント配線板。
【請求項16】
請求項15に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。さらには、当該感光性樹脂組成物の硬化物、並びに、当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、例えば、絶縁層を形成する目的、導体層を形成するための絶縁層を形成する目的、又はソルダーレジスト層を形成する目的で、感光性樹脂組成物が用いられる。
【0003】
感光性樹脂組成物には、ポジ型のフォトレジストとして機能する樹脂組成物、ネガ型のフォトレジストとして機能する樹脂組成物等がある(例えば特許文献1参照)。ポジ型のフォトレジストとは、現像液で現像したときに、露光部分が溶出し、非露光部分が残存する材料をいう。ネガ型のフォトレジストとは、現像液で現像したときに、非露光部分が溶出し、露光部分が残存する材料をいう。ネガ型のフォトレジストとして機能する樹脂組成物は、通常、露光により重合反応が進行して露光部分が不溶化し、その露光部分が露光パターンを反映することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、IoT化の流れを受けて半導体装置には高速伝送の要求が高まっている。そのため、半導体装置のプリント配線板の絶縁層又はソルダーレジスト層として用いられる感光性樹脂組成物の硬化物にも、優れた誘電特性(誘電正接及び誘電率が低いこと)がより一層求められる。誘電率とは、別に断らない限り、比誘電率を表す。
【0006】
しかしながら、発明者らの検討の結果、従来の感光性樹脂組成物では、誘電特性及び強度の両方に優れた硬化膜が得られないことが判明した。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物;並びに、当該感光性樹脂組成物の硬化物;当該感光性樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む樹脂シート;当該感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、感光性樹脂組成物が、(A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤とを含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、分子中に、(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、(a2)ブタジエン骨格を有することにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 (A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤とを含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、分子中に、(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、(a2)ブタジエン骨格を有する、感光性樹脂組成物。
【化1】
〔2〕 フェノキシ構造含有骨格(a1)が、ポリ(フェニレンエーテル)骨格、フェノールノボラック骨格、及びクレゾールノボラック骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を含む、〔1〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔3〕 (A)成分が、分子中に、ブタジエン骨格(a2)を少なくとも2つ含み、2つのブタジエン骨格(a2)の間に、少なくとも1つのフェノキシ構造含有骨格(a1)が介在する光重合性ポリマーである、〔1〕又は〔2〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔4〕 (A)成分が、フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に、エステル結合又はウレタン結合が介在する光重合性ポリマーである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔5〕 (A)成分の数平均分子量が4000以上50000以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔6〕 (B)成分が、アジ化物及びアシルフォスフィンオキシド系化合物からなる群から選択された1種以上の光ラジカル発生剤である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔7〕 (B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔8〕 絶縁層形成用である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔9〕 導体層を形成するための絶縁層形成用である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔10〕 ソルダーレジスト層形成用である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔11〕 180℃で60分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電正接が0.030以下である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔12〕 180℃で60分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電率が3.0以下である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔13〕 〔1〕~〔12〕に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
〔14〕 支持体と、該支持体上に設けられた、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
〔15〕 〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は〔13〕に記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層又はソルダーレジスト層を含む、プリント配線板。
〔16〕 〔15〕に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物;並びに、当該感光性樹脂組成物の硬化物;当該感光性樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む樹脂シート;当該感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤とを含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分が、分子中に、(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、(a2)ブタジエン骨格を有する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含むことで、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物;並びに、当該感光性樹脂組成物の硬化物;当該感光性樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む樹脂シート;当該感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することができる。
【0013】
感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(C)エポキシ樹脂(ただし、(A)成分を除く。)、(D)無機充填材、(E)硬化促進剤(ただし、(B)成分を除く。)、(F)その他の添加剤(ただし、(A)成分~(E)成分を除く。)、及び(G)溶媒等が挙げられる。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、本発明において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0014】
<(A)光重合性ポリマー>
感光性樹脂組成物は、(A)成分として、光重合性ポリマーを含む。この光重合性ポリマーは、分子中に、(a1)下記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、(a2)ブタジエン骨格を有する光重合性ポリマー(以下、「ブタジエン骨格含有POポリマー」ともいう)である。(A)成分を(B)成分と組み合わせて感光性樹脂組成物に含有させることで、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
【0016】
(フェノキシ構造含有骨格(a1))
(A)成分は、分子中に、上記式(A1)で示される単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格(a1)を1つ以上含有する。フェノキシ構造含有骨格(a1)は、剛直な構造であるため、(A)成分がフェノキシ構造含有骨格(a1)を含有することにより、感光性樹脂組成物の硬化物の強度(例えば、膜強度)を優れたものとすることができる。
【0017】
フェノキシ構造含有骨格(a1)は、(a1-1)ポリ(フェニレンエーテル)骨格(以下、「PPE骨格」ともいう)、(a1-2)フェノールノボラック骨格、及び(a1-3)クレゾールノボラック骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を含むことが好ましい。PPE骨格を含む感光性樹脂組成物を硬化させることで得られる硬化物は、フェノールノボラック骨格又はクレゾールノボラック骨格を含む感光性樹脂組成物を硬化させることで得られる硬化物に比べて極性が低い傾向にあるため、硬化物の誘電特性を優れたものとする観点からは、フェノキシ構造含有骨格(a1)がPPE骨格を含むことが好ましい。
【0018】
上記式(A1)中、Aa1~Aa6の炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0019】
上記式(A1)におけるAa1~Aa6の直鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、置換又は非置換の炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素原子数6~15のアリール基、ハロゲン原子、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基が挙げられる。また、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素原子数6~15のアリール基に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-S-、-SO2-、-NH-、-CO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、及び-OCO-から選ばれるヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。置換基を構成し得る直鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基などが挙げられる。置換基を構成し得る分岐状のアルキル基の具体例としては、イソブチル基などが挙げられる。置換基を構成し得る環状のアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0020】
上記式(A1)中、結合手でないAa1~Aa6は、それぞれ独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の炭素数1~5の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は非置換の炭素数1~5の直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、特に好ましくは1である。
【0021】
PPE骨格(a1-1)は、下記式(A1-1)で表される繰り返し構造2以上を含む骨格である。光重合性ポリマーにおけるPPE骨格の分子当たりの平均数は、後述する重量平均分子量の範囲又は数平均分子量の範囲を満たすように調整されることが好ましい。
【0022】
【0023】
上記式(A1-1)においてAa4が第2の結合手であること、すなわち、PPE骨格がポリ(p-フェニレンエーテル)骨格(以下、「p-PPE骨格」ともいう)を含むことが好ましい。p-PPE骨格は、上記式(A1-1)で表される構造のうち、下記式(A1-1a)で表される2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド構造を含むp-PPE骨格であることが好ましい。
【0024】
【0025】
p-PPE骨格は、好ましくは、以下式(1)、式(2)、式(3)又は式(4)で表されるp-PPE骨格を含む。式(2)、式(3)及び式(4)に示されるように、複数のPPE骨格が互いに連結基を介して結合されていてもよい。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
フェノールノボラック骨格(a1-2)は、下記式(A1-2)で表される構造を含む。光重合性ポリマーにおけるフェノールノボラック骨格の分子当たりの平均数は、後述する重量平均分子量の範囲又は数平均分子量の範囲を満たすように調整されることが好ましい。
【0031】
【0032】
上記式(A1-2)におけるRa1及びRa2における直鎖状のアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基などが挙げられる。Ra1及びRa2におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。Ab2~Ab4、Ra1及びRa2における直鎖状のアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基は、前述の基Aa1~Aa6が有していてもよい置換基と同じである。
【0033】
上記式(A1-2)中、Ra1及びRa2は、樹脂ワニスを調製するときの溶解度を高める観点から、いずれも、水素原子であることが好ましい。Ra1及びRa2を構成し得る直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、特に好ましくは1である。
【0034】
クレゾールノボラック骨格(a1-3)は、下記式(A1-3)で表される構造を含む。光重合性ポリマーにおけるクレゾールノボラック骨格の分子当たりの平均数は、後述する重量平均分子量の範囲又は数平均分子量の範囲を満たすように調整されることが好ましい。
【0035】
【0036】
上記式(A1-3)におけるRb1及びRb2における直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基などが挙げられる。Rb1及びRb2におけるアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。Ac2、Ac3、Rb1及びRb2における直鎖状のアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基は、前述の基Aa1~Aa6が有していてもよい置換基と同じである。
【0037】
上記式(A1-3)中、Rb1及びRb2は、樹脂ワニスを調製するときの溶解度を高める観点から、いずれも、水素原子であることが好ましい。Rb1及びRb2を構成し得る直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、特に好ましくは1である。
【0038】
(ブタジエン骨格(a2))
(A)成分は、分子中に、ブタジエン骨格(a2)を1つ以上含有する。ブタジエン骨格(a2)とは、下記式(A2-1)、下記式(A2-2)又は下記式(A2-3)で表される骨格である。(A)成分が、ブタジエン骨格(a2)を有することにより、強度に優れた硬化物を得ることができる。強度が向上するメカニズムの一例としては、以下の点が考えられる。ブタジエン骨格が他の分子又は他の樹脂と反応可能な二重結合を含むので、感光性樹脂組成物が硬化する際に、当該二重結合が反応でき、この反応によって、大きな接着強度が得られる。更に、この反応により、他の分子との間又は他の樹脂との間で架橋点が形成されるので、機械的強度が向上し、大きな応力が加えられても破損を生じ難い十分な膜強度が得られる。よって、このように接着強度及び膜強度の両方がバランス良く向上し、優れた強度を達成できる。
【0039】
ブタジエン骨格(a2)は、下記式(A2-1)、下記式(A2-2)又は下記式(A2-3)で表されるブタジエン骨格のうち、二重結合が他の分子又は他の樹脂と反応しやすい観点から、下記式(A2-1)で表されるブタジエン骨格であることが好ましく、これにより、さらに強度に優れる硬化物を得ることができる。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
上記式(A2-1)、(A2-2)及び(A2-3)中、基X1、X2、X3を構成し得るハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。上記式(A2-1)、(A2-2)及び(A2-3)中、基X1、X2、X3は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、水素原子であることが好ましい。
【0044】
ブタジエン骨格(a2)は、上記式(A2-1)で表される構造のうち、下記式(A2-1a)で表される骨格であることが好ましい。
【0045】
【0046】
(A)成分は、上述したブタジエン骨格(a2)を繰り返し単位として含むポリブタジエン骨格を有することが好ましい。ポリブタジエン骨格としては、下記式(5)に示すポリブタジエン骨格が好ましい。ただし、下記式(5)に示すポリブタジエン骨格中に、上記式(A2-2)又は上記式(A2-3)で表されるブタジエン骨格が介在していてもよい。
【0047】
【0048】
(A)成分は、分子中に、フェノキシ構造含有骨格(a1)と、上述した式(5)に示すポリブタジエン骨格の双方を有する光重合性ポリマー(以下、「ポリブタジエン骨格含有POポリマー」ともいう)であることが好ましい。
【0049】
また、(A)成分は、分子中にブタジエン骨格(a2)を少なくとも2つ含み、2つのブタジエン骨格(a2)の間に、少なくとも1つのフェノキシ構造含有骨格(a1)が介在する光重合性ポリマーであることが好ましい。これにより、強度がより優れた硬化物を得ることができる。強度がより向上するメカニズムの一例としては、他の分子又は他の樹脂と反応可能な複数のブタジエン骨格が、剛直なフェノキシ構造含有骨格(a1)を介して離れて存在することにより、架橋点が適度に形成されること、が挙げられる。したがって、ブタジエン骨格含有POポリマーは、フェノキシ構造含有骨格(a1)を含む第1のブロックと、上述した式(A2-1)~式(A2-3)のいずれかに示すブタジエン骨格(a2)を含む第2のブロックとのブロック共重合体であることが好ましい。より好ましくは、ブタジエン骨格含有POポリマーは、フェノキシ構造含有骨格(a1)を含む第1のブロックと、上述した式(5)に示すポリブタジエン骨格を含む第2のブロックとのブロック共重合体で構成されたポリブタジエン骨格含有POポリマーである。ブロック共重合を可能とするために、第1のブロックに相当する第1のモノマーと、第2のブロックに相当する第2のモノマー(例えば、日本曹達社製「G3000」、サビック社製「SA90」)とを用意することが好ましい。
【0050】
また、(A)成分は、フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に、エステル結合(ただし、ウレタン結合に含まれるエステル結合を除く。)又はウレタン結合が介在するブタジエン骨格含有POポリマーであることが好ましい。フェノキシ構造含有骨格(a1)がPPE骨格を含む場合、(A)成分は、硬化物の耐熱性を向上させる観点から、PPE骨格とブタジエン骨格(a2)との間に、エステル結合(ただし、ウレタン結合を除く。)が介在するブタジエン骨格含有PPE化合物であることが好ましい。
【0051】
ブタジエン骨格含有PPE化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、日本化薬社製「BX-660」、「BX-660M」、「BX-660T」を用いることができる。PPE骨格とブタジエン骨格(a2)の間に、ウレタン結合が介在するポリブタジエン骨格含有POポリマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、日本化薬社製「BX-360」を用いることができる。市販品の中でも、耐熱性を向上させる観点からは、日本化薬社製「BX-660」、「BX-660M」、「BX-660T」を用いることが好ましい。
【0052】
また、フェノキシ構造含有骨格(a1)がフェノールノボラック骨格又はクレゾールノボラック骨格を含む場合、硬化物の耐熱性を向上させる観点から、フェノールノボラック骨格又はクレゾールノボラック骨格とブタジエン骨格(a2)との間に、ウレタン結合が介在するブタジエン骨格含有ノボラック型化合物であることが好ましい。フェノールノボラック骨格又はクレゾールノボラック骨格とブタジエン骨格(a2)との間に、ウレタン結合が介在するブタジエン骨格含有ノボラック型化合物としては、後述する合成例1で合成可能な光重合性ポリマーA又はその誘導体を挙げることができる。
【0053】
(A)成分は、フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に、エステル結合(ただし、ウレタン結合を除く。)及びウレタン結合の双方が介在するブタジエン骨格含有POポリマーであってもよいし、第1のブタジエン骨格(a2)とフェノキシ構造含有骨格(a1)との間にエステル結合(ただし、ウレタン結合を除く。)が介在し、かつ、第2のブタジエン骨格(a2)とフェノキシ構造含有骨格(a1)との間にウレタン結合が介在するブタジエン骨格含有POポリマーであってもよい。
【0054】
フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に介在しうるエステル結合は、2価の連結基の一部であってもよい。そのような2価の連結基としては、耐熱性向上の観点から、芳香族ジカルボン酸由来の基(例えば、テレフタル酸由来の基、イソフタル酸由来の基(すなわち、-O(C=O)-ph-(C=O)O-で表される基))であることが好ましい。フェノキシ構造含有骨格(a1)とブタジエン骨格(a2)との間に介在しうるウレタン結合は、2価の連結基の一部であってもよい。そのような2価の連結基としては、耐熱性向上の観点から、芳香環又は脂環式炭化水素基を有するジイソシアネート由来の基(例えば、トルエンジイソシアネート由来の基(すなわち、-O(C=O)NH-ph(CH3)-NH(C=O)O-で表される基)、ジフェニルメタンジイソシアネート由来の基(すなわち、-O(C=O)NH-ph-CH2-ph-NH(C=O)O-で表される基)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)由来の基(すなわち、-O(C=O)NH-Ch(CH3)3-CH2-NH(C=O)O-で表される基))であることが好ましい。ただし、上記式中、「ph」はベンゼン環を、「Ch」はシクロヘキサン環を意味する。また、上記式中、窒素原子に結合する水素は任意の置換基で置換されていてもよい。
【0055】
(A)成分が、上記のエステル結合又はウレタン結合を含むことにより、フェノキシ構造含有骨格(a1)及びポリブタジエン骨格(a2)の少なくとも一方(例えばフェノキシ構造含有骨格(a1))の重合度(分子鎖長)を制御することができ、これにより、得られる硬化物の誘電特性、耐熱性等を制御することができる。
【0056】
また、(A)成分は、ビニル基を含む1価の基を1つ以上含むことが好ましい。上記ビニル基を含む1価の基の例は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基である。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基及びその組み合わせを包含する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びその組み合わせを包含する。
【0057】
ビニル基は、ブタジエン骨格に含まれる二重結合の他に架橋点を形成可能な基として存在することになるので、これにより、さらに架橋点を増大させることができる。上記ビニル基を含む1価の基は、好ましくは、(A)成分を構成する分子の末端基として存在し、より好ましくは、上記フェノキシ構造含有骨格(a1)の両末端のうち少なくとも一方の末端基として存在する。
【0058】
上述した(A)成分は、例えば、フェノキシ構造含有骨格(a1)を含む前駆体となる第1の樹脂(第1のブロックに相当する第1のモノマー)と、ブタジエン骨格(a2)を含む前駆体となる第2の樹脂(第2のブロックに相当する第2のモノマー、例えば、日本曹達社製「G3000」(数平均分子量:3000)又はサビック社製「SA90」)とをブロック重合させることによって合成することができる。
【0059】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所期の効果をより顕著に奏する硬化物を得る観点から、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、特に好ましくは40000以上であり、好ましくは120000以下、より好ましくは110000以下、特に好ましくは105000以下である。(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0060】
(A)成分の数平均分子量(Mn)は、本発明の所期の効果をより顕著に奏する硬化物を得る観点から、好ましくは4000以上、より好ましくは4500以上、特に好ましくは5000以上であり、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、特に好ましくは30000以下である。
【0061】
(A)成分の重量平均分子量の数平均分子量に対する比の値(Mw/Mn)は、本発明の所期の効果をより顕著に奏する硬化物を得る観点から、2~20の間にあることが好ましい。(A)成分の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0062】
(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、優れた誘電特性を有する硬化物を得る観点から、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、又は11質量%以上とし得る。(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、硬化物の強度及び誘電特性を優れたものとする観点から、99.9質量%以下、99.0質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、96質量%以下又は95質量%以下とし得る。また、感光性樹脂組成物が(A)成分及び(B)成分以外の任意の成分を含む場合、当該任意の成分の含有量に応じて(A)成分の含有量を少なくしてもよい。
【0063】
<(B)光ラジカル発生剤>
感光性樹脂組成物は、(B)成分として、光ラジカル発生剤を含む。光ラジカル発生剤とは、光(例えば、放射線(ガンマー線、X線等)、紫外線、可視光線)の照射により、活性種としてラジカルを生じる化合物をいう。光ラジカル発生剤としては、紫外線を含む光の照射によりラジカルを生じるものが好ましい。なお、光の照射により活性種としてラジカルを生じる化合物の一部が熱により活性種としてのラジカルを生じてもよい。活性種を生じさせることが可能な(B)成分を、(A)成分を含む感光性樹脂組成物に含有させることで、(A)成分同士の架橋反応又は(A)成分と他の成分との架橋反応を促進することができ、これにより、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
(B)成分としては、(B-1)アジ化物、(B-2)アシルフォスフィンオキシド系化合物、(B-3)アルキルフェノン系化合物、(B-4)オキシムエステル系化合物、及び、(B-5)分子内水素引き抜き型化合物(ただし、(B-1)成分、(B-2)成分、(B-3)成分、及び(B-4)成分を除く。)からなる群から選択される1種以上の光ラジカル発生剤を用いることができる。
【0065】
(B)成分は、(B-1)アジ化物及び(B-2)アシルフォスフィンオキシド系化合物からなる群から選択された1種以上の光ラジカル発生剤であることが好ましい。
【0066】
アジ化物(B-1)は、分子中に、アジ基(-N3)を1つ以上有する化合物の総称である。アジ基は、アジ化物イオン(N3
-)由来の基であってもよい。アジ化物(B-1)は、アジ基を含むことにより、光の照射の結果、活性種としてナイトレンを生じさせることができる。アジ化物(B-1)は、置換又は非置換の芳香族基を含むことが好ましく、当該芳香族基がアジ基に直接結合していることがより好ましく、これにより、光増感剤を含まなくてもナイトレンの生成を促進することができる。
【0067】
好ましくは、アジ化物(B-1)は、分子中に、アジ基を2つ以上有する化合物である。より好ましくは、アジ化物(B-1)は、少なくとも分子の両末端に、アジ基を有するビスアジド化合物である。アジ化物(B-1)がビスアジド化合物であることにより、(A)成分同士の架橋反応又は(A)成分と他の成分との架橋反応をより促進することができ、これにより、強度及び誘電特性により優れる硬化物を得ることができる。ビスアジド化合物としては、例えば、4,4′-ジアジドカルコン、2,6-ビス(4′-アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2,6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン、4,4′-ジアジドスチルベン-2,2′-ジスルホン酸ナトリウム、4,4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4,4′-ジアジドベンゾフェノン、4,4′-ジアジドジフェニル、2,7-ジアジドフルオレン、4,4′-ジアジドフェニルメタンが挙げられる。
【0068】
アジ化物(B-1)としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、東洋合成工業社製ビスアジド化合物「BAC-H」、「BAC-M」、「BAC-E」、「DAC」、「DAz」、「ST(Na)」、「DazST(51)」、「DazBA(Na)」を挙げることができる。このうち、誘電特性に優れる硬化物を得る観点からは、金属又は金属イオンを含まないビスアジド化合物を用いることがより好ましく、例えば、東洋合成工業社製「BAC-M」(2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン)を用いることがより好ましい。
【0069】
(B-2)アシルフォスフィンオキシド系化合物は、一般式O=PRc
3(一般式中、Rcは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は、置換若しくは非置換のアシル基である。)で表される有機リン化合物のうち、基Rcの少なくとも1つが置換又は非置換のアシル基(アルカノイル基)である有機リン化合物をいう。
【0070】
基Rcを構成し得るアルキル基としては、例えば、直鎖状の炭素原子数1~20のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルキル基を挙げることができる。このようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
【0071】
基Rcを構成し得るアリール基としては、例えば、炭素原子数6~15のアリール基又は炭素原子数6~12のアリール基を挙げることができる。このようなアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0072】
基Rcを構成し得るアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基を挙げることができる。
【0073】
基Rcを構成し得る直鎖状のアルキル基、アリール基及びアシル基が有していてもよい置換基としては、置換若しくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素原子数6~15のアリール基、ハロゲン原子、-OH、-NH2、-CN、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。また、直鎖状のアルキル基、アリール基及びアシル基を構成する炭素原子及びそれらの置換基を構成する炭素原子の少なくとも1つが、例えば-O-、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-及び-NH-から選択される2価の置換基で置換されていてもよい。
【0074】
アシルフォスフィンオキシド系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドを挙げることができる。
【0075】
(B-2)成分としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、IGM Resin社製「Omnirad 819」、「Omnirad TPO H」を挙げることができる。
【0076】
(B-3)成分、(B-4)成分及び(B-5)成分としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、IGM Resin社製「Omnirad 651」、「Omnirad 184」、「Omnirad 1173」、「Omnirad 2959」、「Omnirad 127」、「Omnirad 907」、「Omnirad 369」、「Omnirad 369E」、「Omnirad 379EG」、「Omnirad MBF」、「Omnirad 754」、BASFジャパン社製「Irgacure OXE01」、「Irgacure OXE02」を挙げることができる。
【0077】
(B)成分は、(A)成分同士の架橋反応又は(A)成分と他の成分との架橋反応を促進させる限り、その含有量は制限されるものではないが、本発明の所期の効果を得る観点から、不揮発成分換算で、感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量(質量%)よりも少ないことが好ましい。例えば、感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量aに対する(B)成分の含有量bの質量割合[質量%]は、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上又は5質量%以上とし得る。また、感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量aに対する(B)成分の含有量bの質量割合[質量%]は、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下とし得る。(B)成分が分子中の複数の部位に活性種(ラジカル)を発生可能である場合、分子当たりの活性種の数が多いほど、(A)成分の使用量に対する(B)成分の使用量を減らすことができる。
【0078】
(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、優れた強度を有する硬化物を得る観点から、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、又は11質量%以上とし得る。(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、硬化物の強度及び誘電特性を優れたものとする観点から、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、又は20質量%以下とし得る。
【0079】
<(C)エポキシ樹脂>
感光性樹脂組成物は、(C)エポキシ樹脂(ただし、(A)成分を除く。)を含有しうる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、50質量%以上は分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。
【0081】
エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)であってもよいし、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)であってもよい。感光性樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含んでいてもよい。液状エポキシ樹脂としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0082】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「157S70」(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(C)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:20の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:10の範囲がより好ましく、1:0.2~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0085】
感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、55質量%以下、45質量%以下、35質量%以下又は25質量%以下とし得る。
【0086】
(C)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり強度に優れる硬化物をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0087】
(C)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0088】
感光性樹脂組成物が(C)成分を含む場合、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、硬化剤として、後述する(E)成分を併用することが好ましい。
【0089】
(C)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下としうる。
【0090】
感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量aに対する(C)成分の含有量cの質量割合[質量%]は、0.1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上とし得る。また、感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量aに対する(C)成分の含有量cの質量割合[質量%]は、100質量%以下、75質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下とし得る。
【0091】
<(D)無機充填材>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(D)成分として無機充填材を含有していてもよい。
【0092】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(D)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(D)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0094】
(D)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、アミン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、ビニル系カップリング剤が挙げられ、このうち、アミン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤を用いることが耐環境試験性(耐HAST性)に優れる硬化物が得られる点で好ましい。ここで、アミン系カップリング剤とは、アミノ基を有するカップリング剤をいう。(メタ)アクリル系カップリング剤とは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を有するカップリング剤をいう。ビニル系カップリング剤とは、ビニル基を有するカップリング剤であって(メタ)アクリル系カップリング剤に属さないカップリング剤をいう。上述したカップリング剤の各々は、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等に分類することも可能であり、シラン系カップリング剤に属していることが好ましい。シラン系カップリング剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤を挙げることができる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、シランカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤に属するアミン系カップリング剤及びシランカップリング剤に属する(メタ)アクリル系カップリング剤がより好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0095】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロキシ系カップリング剤に属する「KBM503」並びにアミン系カップリング剤に属する「KBM573」及び「KBE903」から選択される1種以上を用いることが好ましく、「KBM503」及び「KBM573」の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0096】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0097】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0098】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを、表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0099】
(D)成分の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0100】
(D)成分の平均粒径は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.08μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0101】
(D)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(D)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0102】
(D)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、50質量%以上、55質量%以上又は60質量%以上としてもよい。(D)成分の含有量上限は分散性を確保できる限り制限されないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下とし得る。
【0103】
<(E)硬化促進剤>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として硬化促進剤(ただし、(B)成分を除く。)を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤(ただし、アシルフォスフィンオキシド系化合物を除く。)、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0105】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0106】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0107】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200H50」等が挙げられる。
【0108】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0109】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0110】
(E)成分の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0111】
感光性樹脂組成物が(C)成分を含む場合、当該感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量cに対する(E)成分の含有量eの質量割合[質量%]は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上又は3質量%以上とし得る。また、感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量cに対する(E)成分の含有量eの質量割合[質量%]は、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下とし得る。
【0112】
<(F)その他の添加剤>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(F)その他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、(F-1)光増感剤;(F-2)(C)成分以外の樹脂;(F-3)(B)成分以外の重合開始剤;並びに(F-4)その他の添加剤(ただし、(F-1)成分、(F-2)成分及び(F-3)成分を除く。)などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。(F)成分は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0113】
(F-1)光増感剤としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、トリアルキルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン類;N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸アミル等のジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル;4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;N,N-ジメチルトルイジン等のトルイジン類;9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン等のアントラセン類等が挙げられる。光増感剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0114】
(F-1)成分の使用量は、(B)成分の作用を高める観点から、(B)成分100質量部に対して、通常、0.1~150質量部であり、好ましくは5~75質量部である。
【0115】
(F-2)(C)成分以外の樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂等が挙げられる。(F-2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0116】
(F-2)成分は、感光性樹脂組成物の配合に応じて任意の量で用いられ、その使用量は、例えば、(A)成分100質量部に対して、通常、0.1~100質量部であり、好ましくは5~75質量部である。
【0117】
(F-3)(B)成分以外の重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤、カチオン系化合物等が挙げられる。
【0118】
(F-4)成分としては、難燃剤、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等が挙げられる。(F-4)成分は、感光性樹脂組成物又はその硬化物に求められる仕様に応じて用いられる。
【0119】
難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられ、ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。
【0120】
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0121】
(F-4)成分の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0122】
<(G)溶媒>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、(G)溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、樹脂ワニスを調製するための溶媒であってもよいし、ラジカル反応を行うための反応液を構成するものであってもよく、好ましくは、樹脂ワニスを調製するための溶媒と反応液を兼ねるものが好ましい。溶媒は、感光性樹脂組成物の全ての成分を溶解させる必要はなく、一部の成分(例えば(D)成分)を分散させる分散媒として機能するものであってもよい。
【0123】
溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)等のグリコールエーテルエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等の有機溶媒が挙げられる。溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0124】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明の感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。感光性樹脂組成物は、例えば溶媒を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。
【0125】
<感光性樹脂組成物の構成例>
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分を少なくとも含み、さらに、上述した(C)成分~(G)成分を含み得る。そのため、感光性樹脂組成物の構成(配合)を変更することが可能である。
【0126】
第1の構成例に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分から実質的に構成され、必要に応じて(G)成分を含む。この場合、第1の構成例に係る感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0127】
第2の構成例に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含み、さらに、(C)成分及び(E)成分を含み、必要に応じて(G)成分を含む。この場合、第2の構成例に係る感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分の含有量は、(C)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下としうる。感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)成分の含有量は、(E)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.5質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下としうる。
【0128】
第3の構成例に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含み、さらに、(D)成分を含み、必要に応じて(G)成分を含む。この場合、第3の構成例に係る感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(D)成分の含有量は、(D)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下としうる。
【0129】
第4の構成例に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含み、さらに、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含み、必要に応じて(G)成分を含む。この場合、第4の構成例に係る感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する質量割合(質量%)が、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分の含有量は、(C)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下としうる。感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(D)成分の含有量は、(D)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下としうる。感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)成分の含有量は、(E)成分を添加することによる所期の効果を得る観点から、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.5質量%以上が好ましく、上限は本発明の所期の効果を過度に阻害しない限り特に制限されるものではないが、例えば、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下としうる。ただし、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)成分~(E)成分の含有量の合計は100質量%である。
【0130】
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
感光性樹脂組成物は、(A)光重合性ポリマーと、(B)光ラジカル発生剤とを含み、(A)成分が、分子中に、(a1)先述の単位構造を繰り返し単位として含むフェノキシ構造含有骨格、及び、(a2)ブタジエン骨格を有する。これらの成分を組み合わせて用いることで、実施例において例証されたように、強度及び誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。このような効果を奏する理由としては、(A)成分が剛直な構造である骨格(a1)と、柔軟な構造である骨格(a2)の双方を分子中に併せ持っており、(B)成分から生じるラジカル種によって架橋反応が進行することにより、適度な架橋密度が実現されて極性の低い硬化物が形成された結果であると考えられる。
【0131】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を180℃で60分間熱処理して得られる硬化物は、23℃における誘電率(Dk)の値が小さいという特性を示す。具体的には、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電率(Dk)の値は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下である。誘電率(Dk)の値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0132】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を180℃で60分間熱処理して得られる硬化物は、誘電正接(Df)の値が小さいという特性を示す。具体的には、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電正接(Df)の値は、好ましくは0.030以下、より好ましくは0.025以下、さらに好ましくは0.010以下である。誘電正接(Df)の値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0133】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を180℃で60分間熱処理して得られる硬化物は、通常、ガラス転移温度Tg(℃)が高いという特性を示す。具体的には、ガラス転移温度Tgは、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度Tgは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0134】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を180℃で60分間熱処理して得られる硬化物は、通常、優れた現像性を示し、良好なパターン形成能を有する。現像性は、後述する実施例に記載の方法で評価できる。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物は、強度及び誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる。したがって、本発明の感光性樹脂組成物は、絶縁層形成用の感光性樹脂組成物及びソルダーレジスト層形成用の感光性樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための感光性樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することもできる。本発明の感光性樹脂組成物は、強度に優れる硬化物、すなわち変形しにくい硬化物をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途以外の樹脂組成物としても好適に使用することができる。
【0136】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための感光性樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用感光性樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための感光性樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用感光性樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0137】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の感光性樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の感光性樹脂組成物(再配線形成層形成用の感光性樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための感光性樹脂組成物(半導体チップ封止用の感光性樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0138】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含む。
【0139】
感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物以外に、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、任意の材料を含んでいてもよく、例えば、ガラスクロス等のシート状の補強部材を含んでいてもよい。ただし、感光性樹脂組成物層がシート状の補強部材を含むと感光性樹脂組成物層の厚みが増大する傾向にあることから、厚みを小さくする観点からは、感光性樹脂組成物層は、シート状の補強部材を含まないことが好ましく、例えば、感光性樹脂組成物層は、感光性樹脂組成物のみから構成される。なお、先述の硬化物の特性は、シート状の補強部材を含まない感光性樹脂組成物の感光性樹脂組成物層を硬化することで得られる硬化物の特性である。
【0140】
感光性樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該感光性樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは70μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm、さらに好ましくは40μm以下である。感光性樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、又は5μm以上等とし得る。
【0141】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0142】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0143】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。ポリエチレンテレフタレートフィルムの具体例としては、東レ社製「ルミラーR80」を挙げることができる。
【0144】
支持体は、感光性樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0145】
また、支持体としては、感光性樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。アルキド樹脂系離型剤としては、リンテック社製「AL-5」を挙げることができる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0146】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0147】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、感光性樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、感光性樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0148】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に感光性樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0149】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0150】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、感光性樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、感光性樹脂組成物層を形成することができる。
【0151】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0152】
[プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0153】
一実施形態に係るプリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの感光性樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)感光性樹脂組成物層に光照射して絶縁層を形成する工程(露光工程)
【0154】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0155】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0156】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0157】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0158】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0159】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0160】
工程(II)において、感光性樹脂組成物層に光照射して絶縁層を形成する。この工程(II)では、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射することにより、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させてもよい。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~10000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。マスクを用いたパターン形成を行った場合、現像を行ってもよい。
【0161】
感光性樹脂組成物層に光照射する前又は光照射している間に、感光性樹脂組成物層を予備加熱してもよい。例えば、感光性樹脂組成物層を予備加熱するときの温度は、例えば50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)であり、予備加熱する時間は、例えば5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)である。
【0162】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0163】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した感光性樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0164】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去(デスミア工程)も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程(IV)においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0165】
工程(IV)では、例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施する(湿式デスミア処理)。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0166】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0167】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0168】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0169】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0170】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0171】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0172】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0173】
本発明の別の実施形態に係るプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成されたソルダーレジスト層を含む。
【0174】
詳細には、本実施形態に係るプリント配線板は、上述の樹脂シートを用いて製造することができる。
【0175】
<塗布及び乾燥工程>
感光性樹脂組成物を樹脂ワニス状態で直接的に回路基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより、回路基板上に感光性樹脂組成物層を形成する。
【0176】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0177】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性樹脂組成物層が形成される。
【0178】
<ラミネート工程>
また、樹脂シートを用いる場合には、感光性樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、樹脂シートが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて樹脂シート及び回路基板をプレヒートし、感光性樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。樹脂シートにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0179】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。このようにして、回路基板上に感光性樹脂組成物層が形成される。
【0180】
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~10000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0181】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
【0182】
<現像工程>
露光工程後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0183】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、例えば有機溶剤が用いられる。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0184】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンである。
【0185】
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0186】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm2~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0187】
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0188】
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0189】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。乾式デスミア処理としては、先述したのと同様に、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。湿式デスミア処理としては、先述したのと同様に、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0190】
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
【0191】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0192】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0193】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0194】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0195】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0196】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0197】
(合成例1:光重合性ポリマーA(ブタジエン骨格含有POポリマー)の合成及びその溶液Aの調製)
反応容器に、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量:3000、ヒドロキシ基当量:1800g/eq.)69.0gと、出光石油化学社製「イプゾール150」(芳香族炭化水素系混合溶媒)40.0g、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、イソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製、IPDI、イソシアネート基当量:113g/eq.)8.0gを添加し、約3時間反応を行った。
【0198】
次いで、得られた反応物を室温まで冷却した。冷却した反応物に、DIC社製クレゾールノボラック樹脂「KA-1160」(水酸基当量:117g/eq.)23.0gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製、以下、「EDGAC」ともいう)60gを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT-IRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、フェノキシ構造含有骨格、及び、ブタジエン骨格を有する光重合性ポリマーA(ブタジエン骨格含有POポリマーとしてのフェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂)の溶液A(不揮発成分:50質量%)を得た。
【0199】
光重合性ポリマーAの数平均分子量Mnは5500であり、ガラス転移温度Tgは-5℃であった。
【0200】
(合成例2:フェノキシ構造含有骨格を有し、かつブタジエン骨格を有しない光重合性ポリマーA’の合成及びその溶液A’の調製)
ステンレススチール製の碇型攪拌器を取り付けた500mlのセパラブル3つ口フラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。当該3つ口フラスコに、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下、「BTDA」ともいう)19.33部、2,4-ジアミノトルエン3.66部、γ-バレロラクトン1.2部、ピリジン1.9部、N-メチルピロリドン(以下、「NMP」ともいう)150部、及びトルエン50部を仕込んだ。室温で窒素雰囲気下、180rpmで1時間攪拌し、180℃まで昇温してさらに1時間撹拌した。反応後、トルエン-水の共沸分を除いた。
【0201】
ついで、上記の反応溶液に、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物(以下、「BPDA」ともいう)17.65部、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン12.98部、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル6.01部、ビス(3-アミノフェノキシ)-1,4-ベンゼン8.77部、NMP97部、及びトルエン30部を加えた。室温で窒素雰囲気下、180rpmで30分間攪拌後、180℃に昇温し、反応中に発生したトルエン-水の共沸分を除去しながら、2時間攪拌した。この反応溶液中にNMP103部を加えた。これにより、フェノキシ構造含有骨格を有し、かつブタジエン骨格を有しない光重合性ポリマーA’としてのポリイミドを含む溶液A’(不揮発成分:15質量部%)を得た。
【0202】
光重合性ポリマーA’の数平均分子量Mnは25800であり、重量平均分子量Mwは84900であった。
【0203】
[実施例1]
(感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスAの調製)
容器内に、(A)成分としての日本化薬社製ポリブタジエン骨格含有PPE化合物「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0g、(B)成分としての東洋合成工業社製「BAC-M」(2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、アジ基当量:170g/eq.)7.0g、及び、溶剤としてのシクロペンタノン133.0gを入れ、高速回転ミキサーを用いて均一に混合した。これにより、樹脂ワニスAを調製した。樹脂ワニスAは、以下に説明する支持体付き評価用硬化膜Bの作製、並びに、後述する現像性の評価に供した。
【0204】
(支持体付き評価用硬化膜Bの作製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、軟化点130℃)の一方の主面が、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製、「AL-5」、剥離力:1850mN/20mm(剥離力出典:製品構成“非シリコーン系剥離剤”,[online],リンテック株式会社,[令和元年6月21日検索],インターネット<URL:http://www.lintec.co.jp/products/process/structure/detachment.html>)で離型処理した支持体を用意した。この支持体の離型処理がなされた面上に、前記の樹脂ワニスAを、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚さが20μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布した。その後、樹脂ワニスAを90℃で10分間乾燥させた。これにより、支持体と、該支持体上に設けられた感光性樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む樹脂シートAを得た。
【0205】
上述のようにして得られた樹脂シートAの感光性樹脂組成物層に向けて1J/cm2の紫外線を照射し、その後、180℃、60分間の加熱処理を行い、樹脂シートAの支持体上に膜状の硬化物を形成した。これにより、支持体付き評価用硬化膜Bを得た。支持体付き評価用硬化膜Bは、後述する硬化膜の強度の評価、誘電特性の評価及びガラス転移温度の測定に供した。
【0206】
[実施例2]
(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「BAC-M」3.5gを用いた。また、溶媒として、シクロペンタノン133.0gの代わりに、シクロペンタノン66.5gを用いた。
上記の点以外は、実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0207】
[実施例3]
(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、IGM Resin社製「Omnirad TPO H」(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド)3.0gを用いた。また、溶媒として、シクロペンタノン133.0gの代わりに、シクロペンタノン66.5gを用いた。
上記の点以外は、実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0208】
[実施例4]
(A)成分として、「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0gの代わりに、前記の光重合性ポリマーAの溶液A(不揮発成分:50質量%)40.0gを用いた。(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「Omnirad TPO H」2.5gを用いた。溶剤として、シクロペンタノン133.0gの代わりに、トルエン10.0g及びEDGAC10.0gを用いた。さらに、(C)成分(エポキシ樹脂)として、三菱ケミカル社製エポキシ樹脂「157S70」(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:210g/eq.)5gを用いた。さらに、(D)成分(無機充填材)として、デンカ社製「UFP-30」(平均粒径:0.1μm、比表面積:30m2/g)6.0gを用いた。さらに、(E)成分(硬化剤)として、ジャパンエポキシレジン社製イミダゾール誘導体「P200H50」)(不揮発成分:50質量%)0.5gを用いた。
上記の点以外は、実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0209】
[比較例1]
(A)成分としての「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0gの代わりに、(A’-1)成分としての、前記の光重合性ポリマーA’の溶液A’(不揮発成分:15質量部%)100.0gを用いた。(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「BAC-M」3.0gを用いた。
上記の点以外は実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0210】
[比較例2]
(A)成分としての「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0gの代わりに、(A’-2)成分(フェノキシ構造含有骨格を有し、かつブタジエン骨格を有しない光重合性ポリマー)としての三菱ガス化学社製「OPE-2St」(数平均分子量:1200、ビニル基当量:590g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)100.0gを用いた。(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「BAC-M」2.5gを用いた。
上記の点以外は実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0211】
[比較例3]
(A)成分としての「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0gの代わりに、(A’-3)成分(フェノキシ構造含有骨格を有さず、かつブタジエン骨格を有する光重合性ポリマー)としてのダイセル社製「PB-3600」(数平均分子量:5900、ビニル基当量:193g/eq.)100.0gを用いた。(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「BAC-M」2.5gを用いた。
上記の点以外は実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0212】
[比較例4]
(A)成分としての「BX-660T」(不揮発成分:35質量%)100.0gの代わりに、(A’-4)成分(フェノキシ構造含有骨格及びブタジエン骨格の双方を有しない光重合性ポリマー)としてのダイセル・オルネクス社製不飽和変性(メタ)アクリル樹脂「サイクロマーP(ACA)Z-251」(数平均分子量Mw:14000、不揮発成分:45.5質量%、ビニル基当量:380g/eq.)100.0gを用いた。(B)成分として、「BAC-M」7.0gの代わりに、「Omnirad TPO H」3.0gを用いた。溶媒として、シクロペンタノン133.0gに代えて、メチルエチルケトン(MEK)9.0gを用いた。
上記の点以外は実施例1と同様の操作を実施し、樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、支持体付き評価用硬化膜Bを得て、樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを後述する評価に供した。
【0213】
[評価方法]
上述した実施例及び比較例で得た樹脂ワニスA及び支持体付き評価用硬化膜Bを用いて、感光性樹脂組成物の硬化物を、強度(硬化膜の強度)の観点及び誘電特性(誘電利率及び誘電正接)の観点から、下記の方法によって評価した。
【0214】
<硬化膜の強度の評価>
【0215】
硬化膜の強度の評価を以下のようにして行った。具体的には、支持体付き評価用硬化膜Bにおいて、支持体から硬化膜を問題なく剥離できるかどうかを試験し、試験結果を以下の評価基準に則り評価した。結果を表1に示した。
破損なしに硬化膜を剥離することができた場合には、「○」と評価した。評価結果「○」は、硬化膜が優れた強度(具体的には、優れた膜強度及び支持体への適度な接着強度)を有していたことを意味する。
硬化膜が脆く破損なしに剥離することができなかった場合には、「×」と評価した。また、硬化膜の支持体への粘着が強すぎて形状を損なうことなく剥離することができなかった場合には、「×」と評価した。評価結果「×」は、硬化膜が優れた強度(具体的には、優れた膜強度及び支持体への適度な接着強度)を有していなかったことを意味する。
【0216】
<硬化物の誘電特性の評価>
上記硬化膜の強度の試験に際し、支持体から剥離した硬化膜につき、誘電特性を以下の手順にて評価した。剥離の際に破損した硬化膜及び支持体から剥離することができなかった硬化膜については評価を行わず、評価結果として「-」を示した。
【0217】
支持体から剥離することにより得られた硬化膜を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、評価用硬化物Cを得た。各評価用硬化物Cについて、アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電率の値(Dk値)及び誘電正接の値(Df値)を測定した。3本の試験片(N=3)にて測定を実施し、その平均を算出した。結果を表1に示した。
【0218】
<ガラス転移温度Tgの測定>
上記硬化膜の強度の試験に際し、支持体から剥離することにより得られた硬化膜につき、ガラス転移温度を以下の手順にて測定した。結果を表1に示した。剥離の際に破損した硬化膜及び支持体から剥離することができなかった硬化膜については測定を行わず、評価結果として「-」を示した。
【0219】
支持体から剥離することにより得られた硬化膜を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、評価用硬化物Dを得た。各評価用硬化物Dについて、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「EXSTAR6000」)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。各評価用硬化物Dを前記装置に装着後、荷重200mN、測定周波数1Hz、室温から昇温速度2℃/分の測定条件にて測定した。得られたtanδのピークトップをガラス転移温度Tg[℃]として算出した。
【0220】
<現像性の評価>
現像性を、コントラスト、微細加工性及び未露光部分の残渣の観点から以下のようにして評価した。結果を表1に示した。
【0221】
(評価用積層体Eの形成)
スピンコーターに、リコンウェハ(厚み625μm)を固定した。当該シリコンウェハ上に、実施例、比較例で得られた樹脂ワニスAを滴下し、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚さが5μmとなるよう塗布した。90℃から110℃で10分間乾燥することにより、シリコンウェハ上に感光性樹脂組成物層が形成された露光用積層体を得た。
【0222】
各露光用積層体を、室温で30分以上静置した。その後、露光用積層体の感光性樹脂組成物層の上方から、パターン形成装置を用いて、非露光パターンが形成された石英ガラスマスクを介して、1000mJ/cm2の紫外線で露光を行った。石英ガラスマスクとして、被対象物に、開口断面形状が直径100μmの円形、及び、1cm×2cmの矩形の開口を描画させるための非露光パターン(マスク)が形成された石英ガラスを使用した。その後、室温にて30分間静置した後、各露光用積層体に含まれる感光性樹脂組成物層の全面に、現像液としての25℃のシクロペンタノンをスプレー圧0.2MPaにて10秒間のスプレー現像を実施した。これにより、実施例1~4及び比較例1~4の露光用積層体の感光性樹脂組成物層の一部が現像液に溶出した。
【0223】
現像後、各露光用積層体に対し、イソプロピルアルコールでリンスを行い、100℃で10分間乾燥を実施した。その後、マスクを介することなく、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに180℃、60分間の加熱処理を行った。これにより、各シリコンウェハ上にある感光性樹脂組成物層が硬化した。すなわち、硬化物が形成された。このようにして、感光性樹脂組成物の硬化物を含む評価用積層体Eを得た。
【0224】
(コントラストの評価)
評価用積層体Eの非露光部分の1つに該当する上面視1cm×2cmの矩形の各辺に沿う周辺領域を顕微鏡で観察し、以下の基準に則り評価した。
観察の結果、各辺に沿う周辺領域、具体的には各辺から50μm程度までの領域に硬化物が残っていない場合には、「×」と評価し、各辺に沿う周辺領域に硬化物が存在するものの、4辺のうちの少なくとも1辺に「歪み」が確認された場合には、「△」と評価し、各辺に沿う周辺領域に硬化物が存在し、かつ、4辺のすべてに「歪み」が存在しないことが確認された場合には、「○」と評価した。「歪み」は、各辺の直線性(パターン)を損なう状態(具体的には、硬化膜の乱れ(より具体的には、硬化膜が折れ曲がった状態又は硬化膜がランダムに配置された状態))として観察される。
【0225】
ここで、評価結果「○」は、露光及び現像の双方の再現性(コントラスト)、すなわち現像性が良好であったことを意味し、評価結果「△」は、露光及び現像の再現性の一方又は双方が良好でなかったことを意味し、評価結果「×」は、露光及び現像の再現性の一方又は双方が不良であったことを意味する。
【0226】
(微細ビア開口性の評価)
評価用積層体Eの非露光部分のもう1つに該当する上面視直径100μmの円形の領域を顕微鏡で観察し、以下の基準に則り評価した。
観察の結果、観察領域に開口が確認できない場合及び観察領域に開口としてのシリコンウェハまでの貫通孔が確認できなかった場合には、「×」と評価し、観察領域に貫通孔が確認できたものの、貫通孔の底面周縁部において硬化物がシリコンウェハから剥離している箇所が1か所でも存在することが確認された場合には、「×」と評価し、観察領域に貫通孔が確認でき、かつ貫通孔の底部周縁部において硬化物がシリコンウェハから剥離している箇所が1か所も存在しないことが確認された場合には、「○」と評価した。
【0227】
ここで、評価結果「○」は、微細な形状でも穴あけ加工が可能であること、すなわち微細ビア開口性、すなわち現像性が良好であったことを意味し、評価結果「×」は、微細ビア開口性が良好ではなかったことを意味する。
【0228】
(未露光部分の残渣除去性の評価)
評価用積層体Eの非露光部分のもう1つに該当する上面視直径100μmの円形の領域を顕微鏡で観察し、以下の基準に則り評価した。
観察の結果、観察領域に開口が確認できない場合及び観察領域に開口としてのシリコンウェハまでの貫通孔が確認できなかった場合には、「-」と評価した。
他方、観察領域に貫通孔が確認できたものの、同観察領域(貫通孔の底面(すなわちシリコンウェハ表面上)及び貫通孔の側壁面上)において倍率1000倍で観察可能な残渣(スミア)が1つでも存在することが確認された場合には、「×」と評価した。観察領域に貫通孔が確認でき、かつ同観察領域において倍率1000倍で観察可能な残渣(スミア)が1つも存在しないことが確認された場合には、「○」と評価した。
【0229】
ここで、評価結果「○」は、シクロペンタノンを用いた現像処理及びその後のリンスによって残渣が生じず、残渣除去性に優れること、すなわち現像性が良好であったことを意味し、評価結果「×」は、現像性が良好ではなかったことを意味する。
【0230】
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分及びその配合量、並びに評価結果を下記表1に示す。
【0231】
【0232】
[検討]
表1から分かるように、実施例と比較例の対比から、実施例においては、強度及び誘電特性(誘電率及び誘電正接)に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供できることが分かった。また、実施例に係る樹脂組成物は、その硬化物が良好なガラス転移温度を示したことから、優れた耐熱性を有する硬化物を得ることができることが分かった。さらに、実施例に係る樹脂組成物は、その硬化物が優れた現像性を示したことから良好なパターン形成能を有することが分かった。加えて、当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することも可能となることが分かった。
【0233】
なお、実施例1~4において、(C)成分~(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。また、実施例1~4において、(A’-1)成分、(A’-2)成分、(A’-3)成分及び(A’-4)成分を本発明の所期の効果を阻害しない量で含有しても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。