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特許7363203診断支援システム、診断支援装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】診断支援システム、診断支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20231011BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20231011BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H20/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019156658
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021033919
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-018462(JP,A)
【文献】特開2001-118014(JP,A)
【文献】特開2007-156529(JP,A)
【文献】特開2007-305107(JP,A)
【文献】特開2020-204799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの操作に基づいて、疾患を有する患者の症状に関する症例情報を登録する症例情報登録手段と、
ユーザーの操作に基づいて、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す経過情報を、前記症例情報登録手段が登録した前記症例情報と紐づけて登録する経過情報登録手段と、
複数の前記症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた複数の前記経過情報を格納するデータベースと、
前記データベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、前記症例情報登録手段が登録した前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出手段と、
前記症例情報抽出手段が抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出手段と、
前記経過情報抽出手段が抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を所定の態様で表示する表示手段と、を備え、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出手段は、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出手段は、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記表示手段は、前記経過情報抽出手段が抽出した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示する診断支援システム。
【請求項2】
前記症例情報抽出手段は、
複数の前記第一情報にそれぞれ重みづけを行い、
重み付けがなされた複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出する請求項1に記載の診断支援システム。
【請求項3】
前記症例情報抽出手段は、
少なくとも前記病変部位の画像を第一情報として含む複数の症例情報を学習用データとして機械学習させたニューラルネットワークを備え、
前記病変部位の画像が前記ニューラルネットワークに入力されると、前記データベースに格納されている前記複数の病変部位の画像の中から、入力された前記病変部位の画像との類似度が高い病変部位の画像を出力する請求項1または2に記載の診断支援システム。
【請求項4】
前記経過情報には、病変部位の大きさの変化率、投薬する薬剤を切り替えるまでの日数、投薬終了までの日数、転移発見までの日数、及び患者が生存できた日数のうちの少なくとも一つの第二情報が含まれており、
前記経過情報抽出手段は、前記第二情報に基づいて前記特定経過情報を抽出する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項5】
前記経過情報抽出手段は、複数の前記第二情報に基づいて前記特定経過情報を抽出する請求項4に記載の診断支援システム。
【請求項6】
前記経過情報抽出手段は、
複数の前記第二情報にそれぞれ重みづけを行い、
重みづけがなされた複数の前記第二情報に基づいて前記特定経過情報を抽出する請求項5に記載の診断支援システム。
【請求項7】
前記経過情報には、病変部位の大きさの変化率、投薬する薬剤を切り替えるまでの日数、投薬終了までの日数、転移発見までの日数、及び患者が生存できた日数のうちの少なくとも一つの第二情報が含まれており、
前記症例情報抽出手段は、
前記第一情報の類似度及び前記第二情報にそれぞれ重みづけを行い、
重みづけがなされた前記類似度及び前記第二情報に基づいて前記類似症例情報を抽出する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項8】
前記データベースは、前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた複数の病変部位の画像を格納しており、
前記表示手段は、前記特定症例情報及び当該特定症例情報と紐づけられた前記特定経過情報のうちの少なくとも一方と共に、当該特定症例情報と紐づけられた病変部位の画像を表示する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項9】
前記表示手段は、前記特定症例情報以外の他の前記症例情報を表示せずに前記特定症例情報を表示する、又は前記特定症例情報及び前記特定症例情報以外の他の前記症例情報を、前記特定症例情報から順に並べて表示する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項10】
疾患を有する患者の症状に関する複数の症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す複数の経過情報を格納するデータベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、ユーザーの操作に基づいて登録された前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出手段と、
前記症例情報抽出手段が抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出手段と、
前記経過情報抽出手段が抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を出力する出力手段と、を備え、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出手段は、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出手段は、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記出力手段が出力した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示部に表示させる診断支援装置。
【請求項11】
コンピューターに、
疾患を有する患者の症状に関する複数の症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す複数の経過情報を格納するデータベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、ユーザーの操作に基づいて登録された前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出処理と、
前記症例情報抽出処理において抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出処理と、
前記経過情報抽出処理において抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を出力する出力処理と、を実行させ、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出処理において、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出処理において、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記出力処理において出力した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示部に表示させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援システム、診断支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
診断結果に基づいて患者の治療方針を決定する際、診断結果と類似する過去の類似症例を参考にすることは、医師が最適な治療方針を決定する上で効果的な手段となっている。
そこで、従来、類似症例を抽出するための各種技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、患者の脳疾患に関する疾患情報及び疾患部位情報を含む所見データを取得し、対象患者以外の複数の患者の脳疾患に関する所見データと治療期間におけるバイタルサインデータを含む症例データの中から、対象患者の所見データに類似する所見データを有する症例データを検索して類似症例データとし、類似症例データからバイタルサインデータの適正範囲を取得し、適正範囲に基づいて対象患者のバイタルサインデータの目標に関する情報を出力する医療情報提供装置について記載されている。
また、特許文献2には、がん患者のがん組織から取得されるがん患者ゲノムDNA異常情報とそのがん患者のカルテ情報とを含むがん患者情報を記憶し、受診者のがん組織のゲノムDNA異常情報を含む受診者情報を入力されると、受診者のがん組織のゲノムDNA異常情報とがん患者ゲノムDNA異常情報とを、所定の類似度の指標に基づいて類似検索し、得られた類似患者情報をがん診断支援情報として出力するがん診断支援システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-021136号公報
【文献】特開2005-309836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された医療情報提供装置は、所見データ(既往歴、過去の投薬歴、家族歴、遺伝子情報)が類似する症例データを全て出力することになる。
また、特許文献2に記載されたがん診断支援システムも、ゲノムDNA異常情報(及び病態情報)が類似する類似患者情報を全て出力することになる。
このため、これらを用いて効果的な治療方針(反応性の高い薬剤)を決定する際には、一覧表示された多数の類似症例データ又は類似患者情報に紐づけられた経過情報を一つ一つ確認し、投薬後の経過が良好であった場合の類似症例データ又は類似患者情報を探し出さなければならなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、過去の患者の症状に関する症例情報を参考にする診断において、効果的な治療方針を容易に決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る診断支援システムは、
ユーザーの操作に基づいて、疾患を有する患者の症状に関する症例情報を登録する症例情報登録手段と、
ユーザーの操作に基づいて、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す経過情報を、前記症例情報登録手段が登録した前記症例情報と紐づけて登録する経過情報登録手段と、
複数の前記症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた複数の前記経過情報を格納するデータベースと、
前記データベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、前記症例情報登録手段が登録した前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出手段と、
前記症例情報抽出手段が抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出手段と、
前記経過情報抽出手段が抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を所定の態様で表示する表示手段と、を備え、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出手段は、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出手段は、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記表示手段は、前記経過情報抽出手段が抽出した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示する。
【0008】
また、本発明に係る診断支援装置は、
疾患を有する患者の症状に関する複数の症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す複数の経過情報を格納するデータベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、ユーザーの操作に基づいて登録された前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出手段と、
前記症例情報抽出手段が抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出手段と、
前記経過情報抽出手段が抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を出力する出力手段と、を備え、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出手段は、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出手段は、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記出力手段が出力した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示部に表示させる。
【0009】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターに、
疾患を有する患者の症状に関する複数の症例情報、及び前記複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた、投薬開始後の前記患者の症状の推移を示す複数の経過情報を格納するデータベースに格納されている前記複数の症例情報の中から、ユーザーの操作に基づいて登録された前記症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する症例情報抽出処理と、
前記症例情報抽出処理において抽出した前記複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた前記複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する経過情報抽出処理と、
前記経過情報抽出処理において抽出した前記特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を出力する出力処理と、を実行させ、
前記症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、病変部位の形状、及び病変部位の画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれており、
前記症例情報抽出処理において、複数の前記第一情報の各類似度に基づいて前記類似症例情報を抽出し、
前記経過情報抽出処理において、一または複数の患者の少なくとも一つの特定経過情報を抽出し、
前記出力処理において出力した前記少なくとも一つの特定経過情報を、症状の改善効果の高いものから順に表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過去の患者の症状に関する症例情報を参考にする診断において、効果的な治療方針を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る診断支援システムを表すブロック図である。
図2図1の診断支援システムが備える診断支援装置を表すブロック図である。
図3図2の診断支援装置が実行する診断支援処理の流れを示すフローチャートである。
図4図1の診断支援システムが備える表示手段の一例を表すブロック図である。
図5図4の表示手段が表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0013】
〔1.画像表示制御システム〕
まず、本実施形態に係る診断支援システム100の概略構成について説明する。図1は診断支援システム100を表すブロック図である。
【0014】
本実施形態の診断支援システム100は、図1に示すように、診断支援装置1と、サーバー2と、クライアント3と、を備えている。
これらは、通信ネットワークNを介して互いに通信可能となっている。
【0015】
なお、診断支援システム100は、病院情報システム(Hospital Information System:以下、HIS1)、放射線科情報システム(Radiology Information System:以下、RIS2)と接続可能となっていてもよい。
【0016】
また、診断支援システム100は、通信ネットワークNを介して図示しないモダリティーと接続可能となっていてもよい。
モダリティーは、患者の病変画像を生成することが可能なものであればよく、例えば、放射線を発生させる放射線発生装置と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線画像撮影装置と、これらを制御するコンソールと、を備える放射線撮影システム等を用いることができる。
また、モダリティーから診断支援システム100への画像の転送を、通信ネットワークを介して行うのではなく、記憶媒体やケーブルを用いて行うようにしてもよい。
【0017】
診断支援装置1は、PCや専用の装置で構成されている。
この診断支援装置1の詳細については後述する。
【0018】
サーバー2は、PCや専用の装置によって構成されている。
また、サーバー2は、データベース21を備えている。
データベース21は、複数の症例情報及び複数の経過情報を格納している。
また、本実施形態に係るデータベース21は、複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた複数の病変部位の画像(以下病変画像)の画像データを格納している。
【0019】
症例情報は、疾患を有する患者の症状に関する情報である。
症例情報には、疾患を有する部位、疾患名、患者の年齢、患者の性別、患者の遺伝子情報、患者の家族の病歴、浸潤、転移、及び病変部位の形状、病変画像のうちの少なくとも一つの第一情報が含まれている。
【0020】
また、経過情報は、複数の症例情報のそれぞれと紐づけられた、投薬開始後の患者の症状の推移を示す情報である。
経過情報には、病変部位の大きさの変化率、投薬する薬剤を切り替えるまでの日数、投薬終了までの日数、転移発見までの日数、及び患者が生存できた日数のうちの少なくとも一つの第二情報が含まれている。
【0021】
また、サーバー2は、他の装置(診断支援装置1、クライアント3)から症例情報及び経過情報のうちの少なくとも一方を受信すると、それをデータベース21に格納するようになっている。
また、サーバー2は、例えばモダリティーから病変画像の画像データを受信すると、サーバー2に画像を保存し、その保存先情報をデータベース21に格納するようになっている。
【0022】
また、サーバー2は、他の装置からの要求に基づき、データベース21に格納されている複数の病変画像の画像データ、複数の症例情報及び複数の経過情報の中から、要求に応じた画像やデータを他の装置等へ送信するようになっている。
なお、サーバー2は、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)を構成するものであってもよいし、診断支援システム100専用のものであってもよい。
サーバー2がPACSを構成するものでない(診断支援システム100から独立してPACSが存在する)場合には、PACSに保存された画像を開くためのリンク情報をサーバー2に保存しておくようにしてもよい。
また、データベース21は、サーバー2から独立した装置として設けられていてもよい。
【0023】
本実施形態におけるクライアント3は、本発明における表示手段をなすもので、タブレット端末等で操作者が携帯することが可能に構成されている。
このクライアント3の詳細についても後述する。
【0024】
〔2.診断支援装置〕
次に、上記診断支援システム100が備える診断支援装置1の詳細について説明する。図2は、診断支援装置1を表すブロック図である。
【0025】
(2-1.構成)
本実施形態に係る診断支援装置1は、図2に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部11のCPUは、記憶部13に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、診断支援装置1各部の動作を集中制御する。
【0027】
通信部12は、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して接続された他の装置との間で各種信号や各種データを送受信することが可能となっている。
【0028】
記憶部13は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成され、制御部11が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部13が、サーバー2のデータベース21の代わりとして機能するように構成されていてもよい。その場合、サーバー2は不要となる。
【0029】
(2-2.動作)
このように構成された診断支援装置1の制御部11は、図3に示すような診断支援処理を実行する機能を有している。
この診断支援処理で、制御部11は、まず、クライアント3に登録された症例情報及び経過情報を取得する(ステップS1)
なお、症例情報及び経過情報を診断支援装置1で取得するのではなく、サーバー2に送信し、データベース21に過去の症例情報及び経過情報と分けて格納するようにしてもよい。
【0030】
経過情報を登録した後、制御部11は、症例情報抽出処理を実行する(ステップS2)。
この症例情報抽出処理で、制御部11は、データベースに格納されている複数の症例情報の中から、登録した症例情報と類似する複数の類似症例情報を抽出する。
本実施形態に係る制御部11は、症例情報に含まれる第一情報の類似度に基づいて類似症例情報を抽出する。
【0031】
類似症例情報の具体的な抽出方法は、特に限定されるものではなく、例えば上記特許文献1,2に記載されたような手法を用いることが可能である。
例えば、第一情報が疾患を有する部位の場合には、疾患の位置が近い症例情報ほど類似度が高い(類似症例情報の候補)ということになる。
また、第一情報が疾患名の場合には、一致する字句が多い症例情報ほど類似度が高いということになる。
また、第一情報が患者の年齢の場合には、年齢差が小さい症例情報ほど類似度が高いということになる。
また、第一情報が患者の性別の場合には、性別が一致する症例情報の方が一致しないものに比べて類似度が高いということになる。
また、第一情報が患者の遺伝子情報の場合には、例えば遺伝子変異の種類(癌の発生原因となる、正常な細胞の増殖を加速させる遺伝子又は増殖を抑止する遺伝子に生じた傷の数及び傷の位置のうちの少なくともいずれか)が近い症例情報ほど類似度が高いということになる。
また、第一情報が患者の家族の病歴の場合には、疾患を有する家族の続柄、親等、人数等が近い症例情報ほど類似度が高いということになる。
また、第一情報が浸潤、転移の場合には、その有無が一致する方が一致しないものに比べて類似度が高いということになる。また、浸潤、転移がある場合には、その程度が近い症例情報ほど類似度が高いということになる。
また、第一情報が病変部位の形状の場合には、輪郭線の重複が多い症例情報ほど類似度が高いということになる。
【0032】
なお、症例情報に第一情報が複数含まれる場合、制御部11は、複数の第一情報の各類似度に基づいて類似症例情報を抽出することになる。
この場合、制御部11は、複数の第一情報にそれぞれ重みづけ(第一情報毎のパラメーターの変更)を行い、重み付けがなされた複数の第一情報の各類似度に基づいて類似症例情報を抽出するようになっていてもよい。
【0033】
特に、病変画像を第一情報として用いる場合には、少なくとも病変画像を第一情報として含む複数の症例情報を学習用データとして機械学習させたニューラルネットワークを備え、病変画像がニューラルネットワークに入力されると、データベースに格納されている複数の病変画像の中から、入力された病変画像との類似度が高い病変画像を出力するようにすることで、登録した病変画像とデータベースに格納されている病変画像との類似性の判断を行うことも可能である。
制御部11は、この症例情報抽出処理を実行することにより、症例情報抽出手段をなす。
【0034】
なお、制御部11は、この症例情報抽出処理において、第一情報の類似度及び後述する第二情報にそれぞれ重みづけを行い、重みづけがなされた類似度及び第二情報に基づいて類似症例情報を抽出するようになっていてもよい。
【0035】
類似症例情報を抽出した後、制御部11は、経過情報抽出処理を実行する(ステップS3)。
この経過情報抽出処理で、制御部11は、抽出した複数の類似症例情報のそれぞれと紐づけられた複数の経過情報の中から、症状の改善が見られた旨の特定経過情報を少なくとも一つ抽出する。
本実施形態に係る制御部11は、経過情報に含まれる第二情報に基づいて特定経過情報を抽出する。
【0036】
特定経過情報の具体的な抽出方法は、特に限定されるものではなく、従来知られた各種手法を用いることが可能である。
例えば、第二情報が病変部位の大きさの変化率である場合、数値が小さい経過情報(病変部位が縮小している、拡大も縮小もしていない、病変の拡大が緩やかである)ほど、症状の改善が見られる(特定経過情報の候補)ということになる。
また、第二情報が投薬する薬剤を切り替えるまでの日数、投薬終了までの日数、転移発見までの日数、又は患者が生存できた日数である場合には、数値が大きい経過情報ほど(日数が多い)ほど、症状の改善が見られるということになる。
【0037】
特に、患者の疾患が癌である場合には、例えば特開2010-35634号に記載されたような、抗癌剤の臨床試験における客観的な腫瘍縮小効果の定義をRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)に準拠させたシステムを用いることができる。
RECISTは、主に創薬の分野で新薬の効果判定に用いられるものであるが、RECIST又はRECISTを参考にして定められた測定手順によって得られた経過情報の中から特定経過情報を抽出するようにしてもよい。
【0038】
なお、経過情報に第二情報が複数含まれる場合、制御部11は、複数の第二情報に基づいて特定経過情報を抽出することになる。
この場合、制御部11は、複数の第二情報にそれぞれ重みづけを行い、重みづけがなされた複数の第二情報に基づいて特定経過情報を抽出するようになっていてもよい。
制御部11は、この経過情報抽出処理を実行することにより、経過情報抽出手段をなす。
【0039】
特定経過情報を抽出した後、制御部11は、出力処理を実行する(ステップS4)。
この出力処理では、抽出した特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を出力する。
本実施形態に係る制御部11は、この出力処理で、特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方を、通信部12を介して他の装置(例えばクライアント3)へ送信するようになっている。
なお、診断制御装置1自身が図示しない表示部を備え、この出力処理で、制御部11が、特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方を表示部に表示させるようになっていてもよい。
制御部11は、この出力処理を実行することにより、出力手段をなす。
【0040】
以上、本実施形態に係る診断支援装置1の具体的構成について説明してきたが、診断支援装置1が有する上記各種機能の少なくとも一部は、サーバー2及びクライアント3のうちの少なくとも一方に持たせるようにしてもよい。
【0041】
〔3.クライアント〕
次に、上記画像表示制御システムが備えるクライアント3の詳細について説明する。図4はクライアント3を表すブロック図、図5はクライアント3が表示する画面の一例を示す図である。
【0042】
(3-1.構成)
本実施形態に係るクライアント3は、図4に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35と、を備えている。
【0043】
制御部31や通信部32は、診断支援装置1における制御部11や通信部12と同様に構成されている。
【0044】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成され、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
【0045】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種画像や各種情報等を表示するようになっている。
【0046】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されたタッチパネル等によって操作者が操作可能に構成されている。
なお、クライアント3に操作部35を備えるのではなく、診断支援装置1又はサーバー2のうちの少なくとも一方に操作部を設けるようにしてもよい。
【0047】
(3-2.動作)
このように構成されたクライアント3の制御部31は、以下のような機能を有している。
例えば、制御部31は、ユーザーの入力操作に基づいて、症例情報を登録するようになっている。
症例情報が登録されると、制御部31は、登録された症例情報を診断支援装置1へ送信する。
制御部31は、このような機能を有することにより、症例情報登録手段をなす。
【0048】
また、制御部31は、ユーザーの操作に基づいて、経過情報を、登録した症例情報と紐づけて登録するようになっている。
経過情報が登録されると、制御部31は、登録された経過情報を診断支援装置1へ送信する。
制御部31は、このような機能を有することにより、経過情報登録手段をなす。
【0049】
また、制御部31は、診断支援装置1が送信した(症例情報抽出手段、経過情報抽出手段)が抽出した類似症例情報及び特定経過情報のうちの少なくとも一方を、通信部32を介して受信するようになっている。
また、本実施形態に係る制御部31は、サーバー2が送信した(データベース21が格納している)病変画像の画像データを、通信部32を介して受信するようになっている。
【0050】
また、制御部31は、診断支援装置1から受信した(診断支援装置1が抽出した)特定経過情報及び当該特定経過情報と紐づけられた特定症例情報のうちの少なくとも一方を所定の態様で表示部34に表示させるようになっている。
また、本実施形態に係る制御部31は、特定症例情報及び当該特定症例情報と紐づけられた特定経過情報のうちの少なくとも一方と共に、当該特定症例情報と紐づけられた病変画像を表示部34に表示させるようになっている。
【0051】
本実施形態に係る制御部31は、例えば図5(a)に示すような選択画面S1において各種情報や各種画像を表示部34に表示させる。
本実施形態に係る選択画面S1は、例えば、患者情報表示欄C1、症例情報表示欄C2、画像表示欄C3、リスト表示欄C4、サマリー表示欄C5、類似画像表示欄C6を含むものとなっている。
患者情報表示欄C1は、診断対象の患者の患者情報を表示する欄である。
症例情報表示欄C2は、当該患者の症例情報を表示する欄である。
画像表示欄C3は、当該患者の病変画像を表示する欄である。
サマリー表示欄C5は、例えばリスト表示欄C4においてカーソルが重なっている類似症例に対応する患者の症例情報や経過情報の概要(サマリー)を表示する欄である。
また、類似画像表示欄C6は、例えばリスト表示欄C4においてカーソルが重なっている類似症例に対応する患者の病変画像を表示する欄である。
【0052】
リスト表示欄C4は、少なくとも特定経過情報と紐づけられた複数の特定症例情報を一覧(リスト)表示する欄である。
具体的には、他の症例情報を表示せずに特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方を表示する、又は特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方並びに他の症例情報を、特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方から順に並べて表示するようになっている。
【0053】
なお、リスト表示欄C4には、例えば経過情報の改善効果の高いものから順に表示するようになっていてもよい。
また、マウスやキーボードになされた操作に基づいて、選択患者が順に切り替わっても良い。
また、リスト表示欄C4に表示される複数の類似症例は、使用した薬剤毎にグループ化されていても良い。
また、特定経過情報及び特定症例情報のうちの少なくとも一方の表示態様を、他の症例情報と異ならせる(他の症例情報よりも目立たせる)ようになっていてもよい。
【0054】
ここで、リスト表示欄C4に表示された複数の類似症例の中から、いずれかの類似症例が選択される(例えば、リスト表示欄C4に表示している複数の類似症例のいずれかがタッチされる、所望の類似症例にカーソルが重なっている状態でクリック等が行われる)と、制御部31は、例えば図5(b)に示すような確認画面S2を表示部34に表示させる。
本実施形態に係る確認画面S2は、例えば、上記選択画面S1に表示されたものと同様の患者情報表示欄C1、症例情報表示欄C2、画像表示欄C3、類似画像表示欄C6の他、選択患者情報表示欄C7、選択症例情報表示欄C8、選択経過情報表示欄C9を含むものとなっている。
選択患者情報表示欄C7は、選択画面S1において選択された特定経過情報又は特定症例情報に対応する患者の患者情報を表示する欄である。
選択症例情報表示欄C8は、当該患者の症例情報の詳細を表示する欄である。
選択経過情報表示欄C9は、当該患者の経過情報の詳細を表示する欄である。
制御部31は、以上のような機能を有することにより、表示手段をなす。
【0055】
以上、本実施形態に係るクライアント3の具体的構成について説明してきたが、クライアント3が有する上記各種機能の少なくとも一部は、他の表示部を有する他の装置に持たせるようにしてもよい。
また、診断支援装置1がクライアント3と一体になっていてもよい。具体的には、診断支援装置1に表示部を備え、診断支援装置の制御部11に上述した表示手段としての機能を持たせるようにする(記憶部13に表示のためのプログラムを追加する)ようにしてもよい。その場合、クライアント3は不要となる。
【0056】
以上説明してきた本実施形態に係る診断支援システム100によれば、患者の症例情報及び経過情報が登録されると、その患者の症例情報と類似した類似症例情報の中から、更に症状に改善の見られた特定経過情報が紐づけられたものだけを抽出し、診断者(医師等)にとってわかりやすい態様で表示する。
その結果、一覧表示された多数の類似症例情報に紐づけられた経過情報を一つ一つ確認し、投薬後の経過が良好であった場合の類似症例情報を探し出す、といった手間のかかる作業が不要になる。
よって、過去の患者の症状に関する症例情報を参考にする診断において、効果的な治療方針を容易に決定することができる。
【0057】
また、同一の薬剤(特に抗がん剤)であっても患者によって効果や副作用が異なることが知られている。これは、患者の遺伝子変異の種類によって患者の薬剤反応性が異なるためであることが分かってきた。
このため、診断支援装置1が患者の遺伝子情報の類似度に基づいて類似症例情報を抽出するようにすれば、遺伝子変異の種類が類似する類似症例情報の中から、症状に改善の見られた特定経過情報が紐づけられたものだけが表示されるようになる。
すなわち、本実施形態に係る診断支援システム100を用いれば、予め患者のがん細胞から遺伝子変異の種類を抽出し、反応性の高い薬剤を投与することで効果の高い治療を行う個別化医療をより効果的なものとすることができる。
【0058】
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0059】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0060】
100 診断支援システム
1 診断支援装置
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
2 サーバー
21 データベース
3 クライアント
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
N 通信ネットワーク
1 選択画面
1 患者情報表示欄
2 症例情報表示欄
3 画像表示欄
4 リスト表示欄
5 サマリー表示欄
6 類似画像表示欄
2 確認画面
7 選択患者情報表示欄
8 選択症例情報表示欄
9 選択経過情報表示欄
図1
図2
図3
図4
図5