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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019157536
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035784
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】澤上 勲
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・クンケル
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225084(JP,A)
【文献】特開2015-171840(JP,A)
【文献】特開2017-024454(JP,A)
【文献】特開2012-116410(JP,A)
【文献】特開2010-215128(JP,A)
【文献】特開2015-140047(JP,A)
【文献】特開2014-101040(JP,A)
【文献】特開2004-284500(JP,A)
【文献】特開2000-142030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた外側ショルダー主溝と、前記外側トレッド端と前記外側ショルダー主溝との間に区分された外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー主溝のタイヤ赤道側に隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記タイヤが正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、
前記トレッド部は、タイヤ半径方向外側に凸に湾曲したプロファイルを有し、
前記外側ミドル陸部の踏面は、前記外側ショルダー主溝の溝縁から少なくとも前記外側ミドル陸部の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R1の円弧からなる第1プロファイルを含み、
前記外側ショルダー陸部の踏面は、
曲率半径R2の円弧からなる第2プロファイルと、
前記第2プロファイルのタイヤ軸方向の内端から前記外側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3の円弧からなる第3プロファイルとを含み、
前記第1プロファイルと前記第2プロファイルとは、単一円弧上を延びている、
タイヤ。
【請求項2】
前記単一円弧と前記第3プロファイルとの間のタイヤ半径方向の最大の距離は、0.5mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた外側ショルダー主溝と、前記外側トレッド端と前記外側ショルダー主溝との間に区分された外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー主溝のタイヤ赤道側に隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記タイヤが正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、
前記トレッド部は、タイヤ半径方向外側に凸に湾曲したプロファイルを有し、
前記外側ミドル陸部の踏面は、前記外側ショルダー主溝の溝縁から少なくとも前記外側ミドル陸部の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R1の円弧からなる第1プロファイルを含み、
前記外側ショルダー陸部の踏面は、
曲率半径R2の円弧からなる第2プロファイルと、
前記第2プロファイルのタイヤ軸方向の内端から前記外側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3の円弧からなる第3プロファイルとを含み、
前記外側ショルダー陸部には、前記外側トレッド端から延びかつ前記外側ショルダー陸部内で途切れる複数の外側ショルダー横溝が設けられ、
前記外側ショルダー横溝のタイヤ軸方向の内端は、前記第2プロファイルと前記第3プロファイルとの交点よりもタイヤ軸方向内側に位置している、
タイヤ。
【請求項4】
前記外側ショルダー横溝の前記内端から前記交点までのタイヤ軸方向の距離は、3.0mm以下である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外側ショルダー横溝は、その溝底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記溝壁本体に連なりかつタイヤ半径方向に対して前記溝壁本体よりも大きい角度で傾斜する面取り部とを含む、請求項3又は4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記内側トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた内側ショルダー主溝と、前記内側トレッド端と前記内側ショルダー主溝との間に区分された内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー主溝のタイヤ赤道側に隣接する内側ミドル陸部とを含み、
タイヤ回転軸を含む子午線断面において、
前記内側ミドル陸部の踏面は、前記内側ショルダー主溝の溝縁から少なくとも前記内側ミドル陸部の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R4の円弧からなる第4プロファイルを含み、
前記内側ショルダー陸部の踏面は、
曲率半径R5の円弧からなる第5プロファイルと、
前記第5プロファイルのタイヤ軸方向の内端から前記内側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R5よりも小さい曲率半径R6の円弧からなる第6プロファイルとを含む、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端から前記内側ショルダー主溝まで延びる複数の内側ショルダー横溝が設けられ、
前記内側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端部で溝底が隆起したタイバーを含む、請求項6記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイバーのタイヤ軸方向の外端は、前記第5プロファイルと前記第6プロファイルとの交点よりもタイヤ軸方向外側に位置している、請求項7記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤが提案されている。このタイヤは、ショルダー主溝の幅と、センター主溝の幅との総和が特定されることにより、ドライ路面及びウェット路面での操縦安定性能の向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-140047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤは、車両装着時に最も車両外側に位置する陸部の踏面付近での耐摩耗性が低いという問題があった。また、操縦安定性をさらに向上させたいという要請もあった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤにおいて、優れた耐摩耗性及び操縦安定性を発揮させることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、前記外側トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた外側ショルダー主溝と、前記外側トレッド端と前記外側ショルダー主溝との間に区分された外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー主溝のタイヤ赤道側に隣接する外側ミドル陸部とを含み、前記タイヤが正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記トレッド部は、タイヤ半径方向外側に凸に湾曲したプロファイルを有し、前記外側ミドル陸部の踏面は、前記外側ショルダー主溝の溝縁から少なくとも前記外側ミドル陸部の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R1の円弧からなる第1プロファイルを含み、前記外側ショルダー陸部の踏面は、曲率半径R2の円弧からなる第2プロファイルと、前記第2プロファイルのタイヤ軸方向の内端から前記外側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3の円弧からなる第3プロファイルとを含む。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1プロファイルと前記第2プロファイルとは、単一円弧上を延びているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記単一円弧と前記第3プロファイルとの間のタイヤ半径方向の最大の距離は、0.5mm以下であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー陸部には、前記外側トレッド端から延びかつ前記外側ショルダー陸部内で途切れる複数の外側ショルダー横溝が設けられ、前記外側ショルダー横溝のタイヤ軸方向の内端は、前記第2プロファイルと前記第3プロファイルとの交点よりもタイヤ軸方向内側に位置しているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝の前記内端から前記交点までのタイヤ軸方向の距離は、3.0mm以下であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝は、その溝底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記溝壁本体に連なりかつタイヤ半径方向に対して前記溝壁本体よりも大きい角度で傾斜する面取り部とを含むのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記内側トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた内側ショルダー主溝と、前記内側トレッド端と前記内側ショルダー主溝との間に区分された内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー主溝のタイヤ赤道側に隣接する内側ミドル陸部とを含み、タイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記内側ミドル陸部の踏面は、前記内側ショルダー主溝の溝縁から少なくとも前記内側ミドル陸部の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R4の円弧からなる第4プロファイルを含み、前記内側ショルダー陸部の踏面は、曲率半径R5の円弧からなる第5プロファイルと、前記第5プロファイルのタイヤ軸方向の内端から前記内側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R5よりも小さい曲率半径R6の円弧からなる第6プロファイルとを含むのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端から前記内側ショルダー主溝まで延びる複数の内側ショルダー横溝が設けられ、前記内側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端部で溝底が隆起したタイバーを含むのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記タイバーのタイヤ軸方向の外端は、前記第5プロファイルと前記第6プロファイルとの交点よりもタイヤ軸方向外側に位置しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
発明者らは、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤについて、外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の踏面のプロファイルに着目した。その結果、タイヤがリムに装着されて内圧が充填されたときに、前記外側ショルダー陸部のプロファイルの一部が、前記外側ミドル陸部のプロファイルの延長線よりもタイヤ半径方向外側に僅かに突出する傾向があることが判明した。また、前記傾向が原因となって、前記外側ショルダー陸部の踏面の突出した部分付近に大きな接地圧が作用し、耐摩耗性や操縦安定性が損なわれていることが判明した。発明者らは、このような知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明のタイヤの外側ショルダー陸部の踏面は、曲率半径R2の円弧からなる第2プロファイルと、前記第2プロファイルのタイヤ軸方向の内端から外側ショルダー主溝の溝縁に延び、かつ、前記曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3の円弧からなる第3プロファイルとを含む。このような前記外側ショルダー陸部は、前記第3プロファイルに大きな接地圧が作用せず、優れた耐摩耗性を発揮する。また、本発明のタイヤは、上述の構成により、前記外側ショルダー陸部及び前記外側ミドル陸部の踏面の全体に均一に接地圧が作用するため、優れた操縦安定性も発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5図3のC-C線断面図である。
図6図1の内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の拡大図である。
図7図6のD-D線断面図である。
図8】比較例の外側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0020】
外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0024】
図2には、前記正規状態におけるトレッド部2の横断面図が示されている。図2は、タイヤ回転軸を含むタイヤ1の子午線断面であり、図1のA-A線断面図に相当する。図2に示されるように、トレッド部2は、タイヤ半径方向外側に凸に湾曲したプロファイルを有している。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3が設けられている。なお、理解し易いように、本明細書の各図において、主溝3は、着色されている。本実施形態の主溝3は、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。主溝3は、少なくとも3mm以上の溝幅を有する。このため、本実施形態において、主溝3は、3mm未満の溝幅で延びる縦細溝とは区別される。主溝3の溝幅W1は、例えば、8~12mmであるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における、外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。主溝3の深さは、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0026】
本実施形態では、トレッド部2に3本の主溝3が設けられている。これにより、トレッド部2は、4つの陸部4に区分されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、トレッド部2は、例えば、4本の主溝3に区分された5つの陸部4で構成されても良い。
【0027】
主溝3は、外側ショルダー主溝5、内側ショルダー主溝6及びクラウン主溝7を含む。外側ショルダー主溝5は、外側トレッド端Toとタイヤ赤道Cとの間に設けられている。外側ショルダー主溝5は、3本の主溝3の内、最も外側トレッド端To側に設けられている。
【0028】
内側ショルダー主溝6は、内側トレッド端Tiとタイヤ赤道Cとの間に設けられている。内側ショルダー主溝6は、3本の主溝3の内、最も内側トレッド端Ti側に設けられている。クラウン主溝7は、外側ショルダー主溝5と内側ショルダー主溝6との間に設けられている。本実施形態のクラウン主溝7は、例えば、タイヤ赤道C上に設けられている。
【0029】
タイヤ赤道Cから外側ショルダー主溝5又は内側ショルダー主溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.30倍であるのが望ましい。
【0030】
トレッド部2は、外側ショルダー陸部8と外側ミドル陸部9とを含んでいる。外側ショルダー陸部8は、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝5との間に区分されている。外側ミドル陸部9は、外側ショルダー主溝5のタイヤ赤道C側に隣接しており、本実施形態では外側ショルダー主溝5とクラウン主溝7との間に区分されている。
【0031】
本実施形態のトレッド部2は、内側ショルダー陸部10と内側ミドル陸部11とを含んでいる。内側ショルダー陸部10は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝6との間に区分されている。内側ミドル陸部11は、内側ショルダー主溝6とクラウン主溝7との間に区分されている。
【0032】
図3には、外側ショルダー陸部8及び外側ミドル陸部9の拡大図が示されている。図4には、図3のB-B線断面図が示されている。図4は、タイヤ回転軸を含む子午線断面に相当する。図4に示されるように、外側ミドル陸部9の踏面は、外側ショルダー主溝5の溝縁から少なくとも外側ミドル陸部9の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R1の円弧からなる第1プロファイル16を含む。
【0033】
外側ショルダー陸部8の踏面は、曲率半径R2の円弧からなる第2プロファイル17と、第2プロファイル17のタイヤ軸方向の内端から外側ショルダー主溝5の溝縁に延び、かつ、曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3の円弧からなる第3プロファイル18とを含む。
【0034】
上述のプロファイルを有する本発明のタイヤは、走行時において外側ショルダー陸部8の第3プロファイル18に局部的な接地圧が作用せず、第2プロファイル17及び第1プロファイル16の全体に均一に接地圧が作用する。これにより、耐摩耗性及び操縦安定性が向上する。
【0035】
第1プロファイル16は、例えば、外側ショルダー主溝5の溝縁からクラウン主溝7の溝縁まで延びているのが望ましい。前記曲率半径R1は、例えば、90~350mmであるのが望ましい。
【0036】
第2プロファイル17は、例えば、外側トレッド端Toから第3プロファイル18との交点19まで延びているのが望ましい。曲率半径R2は、例えば、90~350mmであるのが望ましい。
【0037】
本実施形態では、第1プロファイル16の曲率半径R1と第2プロファイル17の曲率半径R2とが同一である。さらに望ましい態様では、第2プロファイル17と第1プロファイル16とは、単一円弧20上を延びている。これにより、外側ショルダー陸部8と外側ミドル陸部9とに均一に接地圧が作用し、耐摩耗性及び操縦安定性が向上する。
【0038】
第3プロファイル18の曲率半径R3は、例えば、50~160mmであるのが望ましい。また、前記曲率半径R3は、前記曲率半径R2の0.2~0.5倍であるのが望ましい。このような第3プロファイル18により、外側ショルダー陸部8の全体に接地圧が均一に作用する。
【0039】
図3に示されるように、第3プロファイル18で構成された踏面のタイヤ軸方向の幅W3は、外側ショルダー陸部8のタイヤ軸方向の幅W2の0.10~0.25倍であるのが望ましい。なお、前記幅W3は、第2プロファイル17と第3プロファイル18との交点19(図3では2点鎖線で示されている。)から外側ショルダー主溝5までのタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0040】
図4に示されるように、同様の観点から、単一円弧20と前記第3プロファイル18との間のタイヤ半径方向の最大の距離d1は、0.5mm以下である。このような第3プロファイル18は、外側ショルダー陸部8に作用する接地圧をさらに均一にし、耐摩耗性及び操縦安定性をさらに向上させる。
【0041】
図3に示されるように、本実施形態の外側ショルダー陸部8には、外側トレッド端Toから延びかつ外側ショルダー陸部8内で途切れる複数の外側ショルダー横溝25が設けられている。このような外側ショルダー横溝25は、外側ショルダー陸部8の剛性を維持しつつ、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【0042】
外側ショルダー横溝25は、例えば、タイヤ軸方向に対して一方向(図3では右下がりである。)に傾斜しているのが望ましい。外側ショルダー横溝25は、例えば、外側ショルダー主溝5と外側トレッド端Toとの間において、100~150mmの曲率半径で湾曲した湾曲部25aを含んでいる。湾曲部25aは、例えば、タイヤ軸方向に対して10~15°の角度で傾斜している。本実施形態の外側ショルダー横溝25は、外側トレッド端Toよりもタイヤ軸方向外側において、タイヤ軸方向に対して0~10°の角度で直線状に延びている(図1に示す)。但し、外側ショルダー横溝25は、このような態様に限定されるものではない。
【0043】
外側ショルダー横溝25の最大の深さは、外側ショルダー主溝5の深さの0.80~1.00倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、外側ショルダー横溝25の深さは、外側トレッド端Toから外側ショルダー主溝5側に向かって漸減しているのが望ましい。
【0044】
ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるために、外側ショルダー横溝25の内端25iから外側ショルダー主溝5までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TW(図1に示す)の2.5%~5.0%であるのが望ましい。
【0045】
外側ショルダー横溝25のタイヤ軸方向の内端25iは、第2プロファイル17と第3プロファイル18との交点19よりもタイヤ軸方向内側に位置している。外側ショルダー横溝25の内端25iから交点19までのタイヤ軸方向の距離L3は、7.5mm以下であるのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部8の耐摩耗性がさらに向上する。
【0046】
図5には、図3の外側ショルダー横溝25のC-C線断面図が示されている。図5に示されるように、外側ショルダー横溝25は、その溝底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体26と、溝壁本体26に連なりかつタイヤ半径方向に対して溝壁本体26よりも大きい角度で傾斜する面取り部27とを含むのが望ましい。面取り部27の幅及び深さは、例えば、1.0~2.0mmであるのが望ましい。このような面取り部27は、外側ショルダー陸部8に作用する接地圧が大きい場合に接地し、外側ショルダー陸部8の耐摩耗性及び操縦安定性を向上させるのに役立つ。
【0047】
図3に示されるように、上述の効果を十分に発揮させるために、上述の面取り部27は、例えば、外側ショルダー横溝25の全周に配されているのが望ましい。理解し易いように、本明細書の各図において、外側ショルダー横溝25は、面取り部27を除く領域が着色されている。
【0048】
図6には、内側ショルダー陸部10及び内側ミドル陸部11の拡大図が示されている。図7には、図6のD-D線断面図が示されている。図7は、タイヤ回転軸を含む子午線断面に相当する。図7に示されるように、内側ミドル陸部11の踏面は、内側ショルダー主溝6の溝縁から少なくとも内側ミドル陸部11の踏面のタイヤ軸方向の中心まで延びる曲率半径R4の円弧からなる第4プロファイル31を含む。本実施形態では、曲率半径R4は、曲率半径R1と同一とされる。
【0049】
内側ショルダー陸部10の踏面は、曲率半径R5の円弧からなる第5プロファイル32と、第5プロファイル32のタイヤ軸方向の内端から内側ショルダー主溝6の溝縁に延び、かつ、曲率半径R5よりも小さい曲率半径R6の円弧からなる第6プロファイル33とを含む。本実施形態では、曲率半径R5は、曲率半径R2と同一とされ、曲率半径R6は、曲率半径R3と同一とされる。
【0050】
このような内側ショルダー陸部10及び内側ミドル陸部11は、外側ショルダー陸部8及び外側ミドル陸部9と同様、耐摩耗性及び操縦安定性を向上させることができる。
【0051】
外側ショルダー陸部8及び外側ミドル陸部9のプロファイルの構成は、内側ショルダー陸部10及び内側ミドル陸部11に適用することができる。このため、単一円弧35と前記第6プロファイル33との間のタイヤ半径方向の最大の距離d2は、0.5mm以下であるのが望ましい。このような第6プロファイル33は、内側ショルダー陸部10に作用する接地圧をさらに均一にし、耐摩耗性及び操縦安定性をさらに向上させる。
【0052】
図6に示されるように、ウェット性能を高めるために、本実施形態の内側ショルダー陸部10には、内側トレッド端Tiから内側ショルダー主溝6まで延びる複数の内側ショルダー横溝40が設けられている。
【0053】
内側ショルダー横溝40は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側ショルダー横溝25と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。内側ショルダー横溝40は、例えば、内側ショルダー主溝6と内側トレッド端Tiとの間において、100~150mmの曲率半径で湾曲した湾曲部40aを含んでいる。湾曲部40aは、例えば、タイヤ軸方向に対して10~15°の角度で傾斜している。本実施形態の内側ショルダー横溝40は、内側トレッド端Tiよりもタイヤ軸方向外側において、タイヤ軸方向に対して0~10°の角度で直線状に延びている(図1に示す)。但し、内側ショルダー横溝40は、このような態様に限定されるものではない。
【0054】
内側ショルダー横溝40は、外側ショルダー横溝25と同様、その溝底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、溝壁本体に連なりかつタイヤ半径方向に対して溝壁本体よりも大きい角度で傾斜する面取り部42とを含むのが望ましい。内側ショルダー横溝40の面取り部42の各寸法は、上述の外側ショルダー横溝25の面取り部27の寸法を適用することができる。また、本明細書の各図において、内側ショルダー横溝40は、面取り部42を除く領域が着色されている。
【0055】
図1に示されるように、本実施形態では、各内側ショルダー横溝40をタイヤ軸方向に平行に投影した領域が、外側ショルダー横溝25と重複しないのが望ましい。このような内側ショルダー横溝40の配置は、トレッド部2全体の耐摩耗性を高めるのに役立つ。
【0056】
図7に示されるように、内側ショルダー横溝40は、タイヤ軸方向の内端部で溝底が隆起したタイバー41を含むのが望ましい。タイバーの深さは、例えば、内側ショルダー主溝6の深さの0.50~0.60倍である。このような内側ショルダー横溝40は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0057】
タイバー41のタイヤ軸方向の外端41oは、第5プロファイル32と第6プロファイル33との交点34よりもタイヤ軸方向外側に位置しているのが望ましい。このようなタイバー41は、内側ショルダー陸部10の耐摩耗性をさらに高めることができる。
【0058】
図1に示されるように、本実施形態の外側ミドル陸部9及び内側ミドル陸部11は、溝及びサイプ(幅が1.5mm以下の切れ込みを意味する。)が配されていない平坦陸部であるのが望ましい。このような外側ミドル陸部9及び内側ミドル陸部11は、高い剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮できる。なお、本発明の他の実施形態では、外側ミドル陸部9及び内側ミドル陸部11に複数のサイプが設けられても良い。このような態様は、優れた操縦安定性を発揮しつつ、ウェット性能も確保することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0060】
図1の基本パターンを有するサイズ195/65R15のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図8に示されるように、外側ショルダー陸部a及び内側ミドル陸部bの踏面のプロファイルが単一円弧cで構成されているタイヤが試作された。各テストタイヤの耐摩耗性及び操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:前輪駆動車、排気量1600cc
タイヤ装着位置:全輪
テスト方法は、以下の通りである。
【0061】
<耐摩耗性>
上記テスト車両で市街地を10000km走行したときの外側ショルダー陸部の残存量が測定された。結果は、比較例の前記残存量を100とする指数であり、数値が大きい程、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0062】
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0063】
【表1】
【0064】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた耐摩耗性及び操縦安定性を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0065】
2 トレッド部
5 外側ショルダー主溝
8 外側ショルダー陸部
9 外側ミドル陸部
16 第1プロファイル
17 第2プロファイル
18 第3プロファイル
To 外側トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8