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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20231011BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231011BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G03G15/08 321B
G03G15/01 113
G03G15/01 J
G03G21/00 370
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019165785
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021043356
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】葛 文翔
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-106169(JP,A)
【文献】特開2004-326090(JP,A)
【文献】特開2005-250087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアとを含む現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、
前記トナーを収容する交換可能な容器に搭載された記憶手段に記憶されたトナーの色情報に応じて、前記トナー濃度検知手段の出力値の全平均値に基づいて現像剤収容室内のトナー濃度を検知する第1の検知方式と、前記トナー濃度検知手段の出力信号の波形のピーク値を用いて前記現像剤収容室内のトナー濃度を検知する第2の検知方式と、のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記容器を含みトナー像を形成する作像エンジンが複数配置され、
前記作像エンジンの配置位置が入れ替わっても、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トナーの色情報に応じて、前記第1の検知方式と前記第2の検知方式のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
予め記憶手段にトナーの色情報が記憶されていない場合、作像エンジンが装着されたときに、前記作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して得られる前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分値に基づいて、前記第1の検知方式と前記第2の検知方式のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分で表される振幅の周期ごとの最大値と最小値の差分値が予め定められた閾値よりも小さい場合、前記第1の検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分で表される振幅の周期ごとの最大値と最小値の差分値が予め定められた閾値よりも大きい場合、前記第2の検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
選択された前記第1の検知方式又は前記第2の検知方式により検知された前記トナー濃度と予め定められた前記トナー濃度の基準目標値との差分を算出し、トナー濃度目標値の補正量として記憶する、
ことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
選択された前記第1の検知方式又は前記第2の検知方式と、前記トナー濃度目標値の補正量とを、トナーの色情報と紐付けて記憶する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記トナーの色情報には扁平な金属顔料を含む扁平トナーの色情報を含み、前記トナーが扁平トナーである場合、前記第検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーリサイクル機構を有するとともに、現像装置に取付けられた透磁率センサの出力に応じてトナー補給をすることによってトナー濃度の制御を行い、透磁率センサの上部には現像剤を一方向に攪拌・混合・搬送するための搬送部材を有している画像形成装置において、透磁率センサの出力リップルのピーク値に基づいてトナー濃度の制御を行う画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-106169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特性の異なるトナーに対して予め定められた特定の検知方式のみでトナー濃度の制御を行う構成に比べて、特性の異なるトナーごとに精度の高いトナー濃度の制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の画像形成装置は、
トナーとキャリアとを含む現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、
前記トナーを収容する交換可能な容器に搭載された記憶手段に記憶されたトナーの色情報に応じて、前記トナー濃度検知手段の出力値の全平均値に基づいて現像剤収容室内のトナー濃度を検知する第1の検知方式と、前記トナー濃度検知手段の出力信号の波形のピーク値を用いて前記現像剤収容室内のトナー濃度を検知する第2の検知方式と、のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記容器を含みトナー像を形成する作像エンジンが複数配置され、
前記作像エンジンの配置位置が入れ替わっても、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トナーの色情報に応じて、前記第1の検知方式と前記第2の検知方式のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
予め記憶手段にトナーの色情報が記憶されていない場合、作像エンジンが装着されたときに、前記作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して得られる前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分値に基づいて、前記第1の検知方式と前記第2の検知方式のいずれかを選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置において、
前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分で表される振幅の周期ごとの最大値と最小値の差分値が予め定められた閾値よりも小さい場合、前記第1の検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置において、
前記トナー濃度検知手段の出力信号の複数周期の波形の最大値と最小値の差分で表される振幅の周期ごとの最大値と最小値の差分値が予め定められた閾値よりも大きい場合、前記第2の検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
選択された前記第1の検知方式又は前記第2の検知方式により検知された前記トナー濃度と予め定められた前記トナー濃度の基準目標値との差分を算出し、トナー濃度目標値の補正量として記憶する、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の画像形成装置において、
選択された前記第1の検知方式又は前記第2の検知方式と、前記トナー濃度目標値の補正量とを、トナーの色情報と紐付けて記憶する、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記トナーの色情報には扁平な金属顔料を含む扁平トナーの色情報を含み、前記トナーが扁平トナーである場合、前記第検知方式を選択して前記トナー濃度の制御を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、特性の異なるトナーごとに精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、作像エンジンの配置位置によらず、特性の異なるトナーごとに精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、トナーの色情報がなく、トナー濃度検知方式が規定されていない新規のトナー種である場合であっても、精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、トナー濃度検知を少ない周期の波形に基づいて行い画像形成の生産性の低下を抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、特性の異なるトナーに対して精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、特性の異なるトナーが装着された場合に、画像形成装置においてトナー濃度検知方式とトナー濃度目標値の設定が行われ、精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、次回以降同じトナー種が装着された場合に、画像形成装置に記憶されたトナー濃度検知方式でトナー濃度の制御を行うことができる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、扁平な金属顔料を含む扁平トナーに対して精度の高いトナー濃度の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】画像形成装置の概略構成を示す断面模式図である。
図2】感光体ユニット及び現像装置を示す縦断面模式図である。
図3】現像装置内における現像剤の搬送を説明する図2のA-B-C線に沿って水平方向に展開した断面模式図である。
図4】ATCセンサによるトナー濃度検知を説明する図である。
図5】ATCセンサの出力波形の時間推移と検知方式の概念を説明する図である。
図6】(a)は光輝性トナー粒子を概略的に示す厚さ方向への断面模式図、(b)は定着された後の光輝性トナーの光の反射を説明する断面模式図である。
図7】各種トナーのATCセンサ出力の波形の一例を示す図である。
図8】トナー濃度の検知方式を説明する図であり、(a)はATCセンサ出力値の全平均値で検知する第1の検知方式を説明する図、(b)はATCセンサ出力値のピーク値で検知する第2の検知方式を説明する図である。
図9】画像形成装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図10】ICタグの記憶領域のブロック図である。
図11】予めトナーの色情報が記憶されていない場合の検知方式を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
図12】取得したATCセンサの出力波形から振幅変動量を算出する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0023】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
(1.1)画像形成装置の全体構成
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面模式図である。
画像形成装置1は、画像形成部10と、画像形成部10の下方に装着された給紙装置20と、画像形成部10の一端に設けられ、印刷された用紙が排紙される排紙部30と、操作表示部40と、上位機器から送信された印刷情報から画像情報を生成する画像処理部50と、を備えて構成されている。
【0024】
画像形成部10は、システム制御装置11、露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、定着装置17、トナー供給装置18(不図示 図9参照)を備えて構成され、給紙装置20から送り込まれた記録媒体上にトナー画像を形成する。
【0025】
給紙装置20は、画像形成部10に対する記録媒体の供給を行う。すなわち、種類(例えば、材質や厚さ、用紙サイズ、紙目)の異なる記録媒体を収容する複数の用紙積載部21、22を備えており、これら複数の用紙積載部21、22のいずれか一つから繰り出した記録媒体を画像形成部10に対して供給するように構成されている。
【0026】
排紙部30は、画像形成部10にて画像出力が行われ定着装置17で画像が定着された用紙Pの排出を行う。そのために、排紙部30は、定着後の用紙Pを搬送する搬送路30aと排出される排紙収容部T1を備えている。また、用紙Pの両面に画像出力を行う場合に、用紙Pの表裏を反転して、用紙搬送装置16bへ送り出す用紙反転部16cを備えている。尚、排紙部30は、画像形成部10から出力される用紙束に対して、裁断やステープル(針綴じ)等の後処理を行う機能を有したものであってもよい。
【0027】
操作表示部40は、各種の設定や指示の入力及び情報表示に用いられるものである。すなわち、いわゆるユーザインタフェースに相当するもので、具体的には液晶表示パネル、各種操作ボタン、タッチパネル等を組み合わせて構成されている。
【0028】
(1.2)画像形成部の構成及び動作
このような構成の画像形成装置1では、画像形成のタイミングに合わせて用紙積載部21、22のうち、印刷ジョブで印刷の1枚毎に指定された用紙積載部21、22から繰り出された記録媒体が画像形成部10へ送り込まれる。
【0029】
感光体ユニット13は、露光装置12の下方に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する潜像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向に沿って、帯電器32、露光装置12、現像装置14、一次転写ローラ52、クリーニング装置33が配置されている。
感光体ユニット13の感光体ドラム31、帯電器32およびクリーニング装置33を一体化し、カートリッジ化することで、画像形成装置1の本体からこのカートリッジだけを取り外し、また、カートリッジだけを画像形成装置1の本体に対して取り付け可能に構成されている。
【0030】
現像装置14は、感光体ドラム31に対向して配置された現像剤保持体としての現像ローラ42が配設され、それぞれの現像装置14は、現像剤を除いて略同様に構成され、それぞれの現像ローラ42で感光体ドラム31上に一般色としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の他に、光輝性顔料を含む金、銀、金属顔料を含む白、クリア等の特色のトナー像を形成する。
【0031】
現像装置14の上方には、トナーを収容する交換可能なトナーカートリッジTCと、それぞれのトナーカートリッジTCから現像装置14にトナー及びキャリアを供給するトナー供給装置18(不図示 図9参照)が配置されている。トナーカートリッジTCには、記憶手段の一例としてのICタグ140(図1において不図示 図9図10参照)が搭載され、例えば、トナー色情報を含む識別情報及び使用履歴情報が格納されている。
【0032】
現像装置14、トナーカートリッジTC及びトナー供給装置18は、それぞれの色ごとに作像エンジンとして、感光体ユニット13に対して差し替えて用いることもできる。また、感光体ユニット13も感光体ユニット13の間で差し替えて用いることができる。
【0033】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電器32により帯電され、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ローラ42によりトナー像として現像される。
【0034】
転写装置15は、各感光体ユニット13の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト51、各感光体ユニット13にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ローラ52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ローラ53を備えて構成されている。
【0035】
各感光体ユニット13の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、システム制御装置11により制御される電源装置等(不図示)から所定の転写電圧が印加された一次転写ローラ52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0036】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って、バックアップローラ65に中間転写ベルト51を介して二次転写ローラ53が圧接配置された二次転写部TRに搬送される。
重畳トナー像が二次転写部TRに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙Pが二次転写部TRに供給される。そして、中間転写ベルト51を介して二次転写ローラ53と対向するバックアップローラ65には、システム制御装置11により制御される電源装置(不図示)から予め定められた二次転写電圧が印加され、用紙Pに中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0037】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニング装置33により除去され、廃トナー収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電器32により再帯電される。
【0038】
定着装置17は一方向へ回転する無端状の定着ベルト17aと、定着ベルト17aの周面に接し、一方向へ回転する加圧ローラ17bとを有し、定着ベルト17aと加圧ローラ17bの圧接領域によってニップ部(定着領域)が形成される。
転写装置15においてトナー像が転写された用紙Pは、トナー像が未定着の状態で用紙搬送装置16aを経由して定着装置17に搬送される。定着装置17に搬送された用紙Pは、一対の定着ベルト17aと加圧ローラ17bにより、加熱と圧着の作用でトナー像が定着される。
【0039】
定着の終了した用紙Pは、排紙収容部T1上に積載される。尚、用紙Pの両面に画像出力を行う場合には、用紙反転部16cで用紙Pの表裏が反転され、用紙搬送装置16bを介して再び画像形成部10における二次転写部TRへ送り込まれる。そして、トナー像の転写および転写像の定着が行われた後に、排紙部30に送り込まれることになる。排紙部30へ送り込まれた用紙Pは、必要に応じて裁断やステープル(針綴じ)等の後処理が施される。
【0040】
(2)要部構成
図2は感光体ユニット13及び現像装置14を示す断面模式図、図3は現像装置14内における現像剤の搬送を説明する図2のA-B-C線に沿って水平方向に展開した断面模式図、図4はATCセンサによるトナー濃度検知を説明する図である。
以下、図面を参照しながら現像装置14の構成と動作について説明する。
【0041】
(2.1)現像装置の全体構成
現像装置14は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像ハウジング41、感光体ドラム31と対向して配置されている現像ローラ42、現像剤を撹拌しながら搬送する撹拌オーガ43、現像ローラ42に現像剤を供給する供給オーガ44を備えている。
【0042】
現像ローラ42は内部に磁石を有しており、表面に現像剤を磁力で吸着して回転することで、現像ハウジング41から感光体ドラム31に対向する現像位置まで現像剤を送り出す。現像位置では感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像の現像が行われ、現像後の現像剤は現像ローラ42の回転によって現像ハウジング41に戻る。
【0043】
(2.2)現像剤の循環
図3は、現像装置14内における現像剤の搬送(移動)を説明するために、図2におけるA-B-C線に沿って水平方向に展開した断面模式図としている。
現像ハウジング41内には、撹拌オーガ43及び供給オーガ44の間に仕切壁41aが立設されて、現像ハウジング41は2つの現像剤収容部41A、41Bに仕切られ、仕切壁41aの長手方向両端部には、それぞれ開口45、46が形成されている。
【0044】
撹拌オーガ43及び供給オーガ44は、回転軸43a、44aの周りに螺旋羽根43b、
44bが形成され、駆動源(不図示)から回転力を受けて現像剤収容部41A、41B内の内壁に沿って回転することで、現像剤を現像剤収容部41A、41B内で所定方向に搬送する。
具体的には、撹拌オーガ43は現像剤収容部41A内の現像剤を攪拌しながら矢印(Y)方向に搬送し、供給オーガ44は現像剤収容部41B内の現像剤を攪拌しながら矢印(-Y)方向に搬送する。矢印(Y)方向に搬送された現像剤は、開口45から現像剤収容部41Bに移動し、矢印(-Y)方向に搬送された現像剤は、開口46から現像剤収容部41Aに移動する。
これにより現像ハウジング41内の現像剤は、2本の撹拌オーガ43及び供給オーガ44によって撹拌されながら循環移動する。このような現像剤の撹拌によって現像剤中のトナーが帯電する。
【0045】
現像ハウジング41の一端側(-Y方向:装置の前面側)の上面部分には、トナーカートリッジTCから供給されてきたトナー及びキャリアを受け入れる受入口47(図3においては機能を説明するために模式的に示している)が設けられている。受入口47で現像装置14に受け入れられたトナーは、撹拌オーガ43によって搬送されることで現像ハウジング41の現像剤収容部41Aに移動して現像剤と混合される。
【0046】
トナーカートリッジTCから受入口47を介して補給されたトナーは、撹拌オーガ43によってキャリアとともに撹拌されながら、前面側(OUT側:-Y方向 )から奥側(IN側:Y方向)へ搬送され、奥側(IN側:Y方向)で供給オーガ44へ移動される。そして、供給オーガ44から供給されたトナーが現像ローラ42に供給される。
【0047】
(2.3)トナー濃度検知
現像装置14には、現像ハウジング41内を循環する現像剤のキャリアに対するトナーの比率(以降トナー濃度(TC)と記すことがある)を測定するトナー濃度検出手段の一例としてのATC(Auto Toner Control)センサSRが配置されている。本実施の形態では、IN側からOUT側に向かって現像剤が現像ローラ42に供給され、OUT側に現像剤が到達するころにはトナー供給量が減少してしまうため、トナー供給量を適正に制御するために、ATCセンサSRは撹拌オーガ43のIN側に設けている。
【0048】
図4に示すように、ATCセンサSRは、現像剤と接触する検知面SRaを通じて現像剤中のトナー濃度(TC)に応じた透磁率の変化を計測するものであり、例えば、変化するアナログ出力電圧を検出することによって、トナー濃度(TC)を検知するものである。
【0049】
現像装置14においては、撹拌オーガ43が回転すると螺旋羽根43bが周期的にATCセンサSRの検知面SRaに近づくため、図5に模式的に示すように、ATCセンサSRの出力は周期的に変化する。また、螺旋羽根43bに加えて軸から外周に向かってパドル43cを設け、検知面SRaに現像剤を押し付けるようにして現像装置14内の現像剤量の変化に対して影響を少なくしている。
【0050】
図5には、ATCセンサSRの出力波形の時間推移と検知方式の概念示している。
ATCセンサ出力の周期的変化は、図5に示すように、パドル43cによりATCセンサSRの検知面SRa前に現像剤が一定の圧力で押し付けられている状態では出力が大きく、パドルが通過してATCセンサSR前の現像剤が一時的に減った状態では出力が小さくなる。十分な検知点数を確保するため、所定の測定周期内のATCセンサ出力を全平均してトナー濃度の検出値としている。
【0051】
図6(a)は光輝性トナー粒子Sを概略的に示す厚さ方向への断面模式図、(b)は定着された後の光輝性トナーの光の反射を説明する断面模式図である。
印刷市場においては、金属顔料を内部に有する光輝性トナーを用いて光輝性を有するメタリック印刷が行われている。メタリック印刷は、印象的かつ多彩な表現力を持つことからグリーティングカードや本の表紙、ラベル、パッケージ等様々なアプリケーションに活用されている。
【0052】
光輝性トナーは、図6(a)に模式的に示すように、厚さLよりも円相当径が長い扁平状の光輝性トナー粒子Sであり、光輝性顔料の一種である鱗片状の金属顔料Gを含有している。金、銀等の光輝性トナーは、形状を扁平とすることで、トナー内部の光輝性顔料をトナーの長軸方向に対して平行に配向させている。その結果、紙、フィルム等のメディアMD上に転写されたトナーの光輝性顔料がメディアと平行になり、図6(b)に示すように、定着後の画像の中で顔料からの光の反射が高まる。これによって高い光輝性が発現し、メタリック感を作り出している。
【0053】
図7は各種トナーのATCセンサ出力の波形を示し、(a)は扁平な金属顔料を有する光輝性トナーのATCセンサ出力の波形、(b)は円形に近い形状を有するクリアトナーのATCセンサ出力の波形、(c)は一般色トナーのATCセンサ出力の波形を示している。
図7(a)に示すように、光輝性トナーは、ATCセンサ出力波形のピーク値は、略一定となり安定しているが、ボトム値は変動が大きくなっている。光輝性トナーは、パドル43cが通過してATCセンサSRの検知面SRa前の現像剤が一時的に減った状態で、扁平形状のトナーと円形のキャリアの間に空気が入りやすくなり、ボトム値出力のバラツキは大きくなるものと推察される。
【0054】
このような光輝性トナーのトナー濃度を精度よく検知するためには、現像剤量の影響が少ない、すなわちパドル43cによりATCセンサSRの検知面SRa前に現像剤が一定の圧力で押し付けられている状態での出力であるピーク値を検出することが望ましい。
一方で、図7(b)に示すように、クリアトナーの形状と粒径は、一般色トナーと同様に円形状で光輝性トナーに比べて小粒径であり、出力波形のピーク値及びボトム値のバラツキは少なく、ATCセンサ出力を全平均してトナー濃度の検出値としてよいことがわかる。
【0055】
図8はトナー濃度の検知方式を説明する図であり、(a)はATCセンサ出力値の全平均値で検知する第1の検知方式を説明する図、(b)はATCセンサ出力値のピーク値で検知する第2の検知方式を説明する図である。
本実施形態に係る画像形成装置1は、ATCセンサSRによるトナー濃度の検知方式として、ATCセンサSRの出力値の全平均値に基づいてトナー濃度を検知する第1の検知方式と、ATCセンサSRの出力信号の波形のピーク値を用いてトナー濃度を検知する第2の検知方式と、のいずれかを選択可能に備えている。
【0056】
第1の検知方式は、図8(a)に示すように、所定の検知期間におけるATCセンサ出力値を一定のサンプリング間隔Δtごとに取り込み、サンプリング数で平均する。例えば、ATCセンサ出力波形の1周期に20ポイントのサンプリングを2周期分実施してその期間の平均値を算出する。第1の検知方式は、ATCセンサSRの検知面SRaにおける現像剤量が変動しても、出力波形のピーク値/ボトム値のバラツキが少ない一般色のトナーやクリアトナーのトナー濃度を精度よく検知することができる。以下、第1の検知方式を「全平均方式」と記す。
【0057】
第2の検知方式は、図8(b)に示すように、所定の検知期間におけるATCセンサ出力波形の1周期ごとにピーク値Aiのみを取り込み、サンプリング数で平均する。例えば、ATCセンサ出力波形の各周期のピーク値がA、Ai+1、・・・、Ai+kであった場合、サンプリングを5周期分実施して、最高値及び最低値を除いて2位~4位のピーク値を平均してその期間の平均値を算出する。第2の検知方式は、ATCセンサSRの検知面SRaにおける現像剤量が変動した場合、出力波形のボトム値のバラツキが大きくなる光輝性トナーのトナー濃度を精度よく検知することができる。以下、第2の検知方式を「ピークのみ方式」と記す。
【0058】
(3)トナー濃度検知方式の選択
図9は本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、システム制御装置11は、印刷制御部110、トナー補給制御部111、トナー濃度検出部112、検知方式選択部113、を備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行して、画像形成部10の動作制御を行う。
【0059】
また、システム制御装置11は、トナーカートリッジTCが画像形成装置1の本体に装着されると、トナーカートリッジTCのインターフェイス160とインターフェイス115とが接続され通信可能な状態になる。図9においてはシステム制御装置11とICタグ140との通信は有線通信として表しているが、無線通信であっても良い。
【0060】
トナーカートリッジTCには、記憶手段の一例としてのICタグ140が取り付けられている。ICタグ140は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリ150及びインターフェイス160を含んで構成されている。
トナーカートリッジTCが画像形成装置1の本体に装着されると、トナーカートリッジTCのインターフェイス160とシステム制御装置11のインターフェイス115とが接続され通信可能な状態になる。図7においてはシステム制御装置11とICタグ140との通信は有線通信として表しているが、無線通信であっても良い。
【0061】
そして、システム制御装置11のCPUによって、ICタグ140内の情報の読み出しと書き換えとが可能となる。また、CPUは、RAM、ROM、不揮発性メモリ(NVM)、インターフェイス115と接続され、ROMから画像形成装置1の動作制御プログラムの読み出し、RAM、不揮発性メモリ(NVM)の情報の読み出しと書き換えを行う。
【0062】
システム制御装置11の不揮発性メモリ(NVM)は、画像形成を行うための各種設定情報を保持した領域114a、画像形成装置1の本体シリアルIDを保持する領域114bの他、ICタグ140の固有情報に対応した情報を保持する第1の領域114cを有している。
【0063】
ICタグ140内の不揮発性メモリ150は、システム制御装置11から読み出される固有情報を格納した読み出し領域、及びシステム制御装置11との間で読み出し・書き込みが行われる管理情報を記憶するための読み出し・書き込み領域を有している。
【0064】
読み出し領域としては、図10に機能的に示すように、一例として、トナーカートリッジTCに固有なトナーカートリッジTCのシリアルIDを保持する領域151、トナーの色情報を保持する領域152、画像形成装置1のモード情報を保持した領域153などが挙げられる。
【0065】
印刷制御部110は、給紙装置20との間の情報授受についての制御の他に、画像形成部10が備える露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、16c、定着装置17等に対して、動作制御指示を与える。
【0066】
トナー補給制御部111は、現像装置14にトナーを供給するトナー供給装置18のディスペンスモータMの回転時間および速度を制御することによりトナー濃度を調整する。
【0067】
トナー濃度検出部112は、ATCセンサSRの検知結果に基づいて現像装置14内のトナー濃度情報を取得する。
【0068】
検知方式選択部113は、トナーカートリッジTCが装着されたときに、現像装置14を駆動してトナー濃度検知方式確認のセットアップ動作を実施して、トナーカートリッジTCに搭載されたICタグ140に予め記憶されたトナーの色情報に応じてトナー濃度検知として「全平均方式」又は「ピークのみ方式」のいずれかを選択する。具体的には、トナーの色情報として、Y、M、C、Kの一般色トナー及びクリアトナーである場合、「全平均方式」を選択し、金、銀等の光輝色トナー(以降、特色トナーと記すことがある)である場合、「ピークのみ方式」を選択する。
【0069】
また、検知方式選択部113は、ICタグ140に予めトナーの色情報が記憶されていない場合には、作像エンジンが装着されたときに、作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して得られるATCセンサSRの出力信号の複数周期の波形の最大値Maxと最小値Minの差分値に基づいて、「全平均方式」または「ピークのみ方式」のいずれかを選択する。
【0070】
図11は、予めトナーの色情報が記憶されていない場合にシステム制御装置11で行われる検知方式を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS101において、ICタグ140にトナーの色情報として特色トナーである旨の情報及びそれに対応する検知方式が規定されているか否か判断する(S101)。トナーの色情報がない場合(S101:No)、現像装置14の回転駆動を開始し(S102)、トナー濃度検出部112を介してATCセンサSRから10周期分の出力波形を取得する(S103)。
【0071】
そして、各周期中の最大値Max(n)と最小値Min(n)の差分を周期nごとの振幅Nとして、以下に示す数式(1)により算出する(S104)。
N=Max(n)-Min(n)・・・(1)
ここにMax(n)は周期nにおける出力波形の最大値、Min(n)は周期nにおける出力波形の最小値、nは出力波形のn番目を示している。
【0072】
次に、周期ごとの振幅Nの最大値と最小値の差分を振幅変動量ΔNとして、以下に示す数式(2)により算出する(S105)。
ΔN=Max(N)-Min(N)・・・(2)
ここにMax(N)は上記(1)式で算出した振幅Nの最大値、Min(N)は上記(1)式で算出した振幅Nの最小値を示している。
【0073】
図12には、取得したATCセンサの出力波形から振幅変動量を算出する例を示している。例えば、図12においては、10周期目における最大値Max(10)と最小値Min(10)の差分N(10)が振幅Nとして最大値であり、3周期目における最大値Max(3)と最小値Min(3)の差分N(3)が振幅Nとして最小値である。この場合、振幅変動量ΔNは、差分N(10)と差分N(3)の差分ΔNとなる。
【0074】
そして、振幅変動量ΔNが予め定められた閾値Thよりも小さいか否か判定する(S106)。ステップS106にて、振幅変動量ΔNが予め定められた閾値Thよりも小さい場合(S106:Yes)、ATCセンサSRの出力波形のピーク値及びボトム値のバラツキが少なく、検知方式選択部113は「全平均方式」を選択する(S107)。
ステップS106にて、振幅変動量ΔNが予め定められた閾値Thよりも大きい場合(S106:No)、ATCセンサSRの出力波形のボトム値のバラツキが大きく、検知方式選択部113は「ピークのみ方式」を選択する(S108)。
【0075】
ステップS107,S108で選択されたそれぞれの検知方式は、トナーの色情報と紐付けてシステム制御装置11の不揮発性メモリ(NVM)に記憶する(S109)。これにより、次回以降同じトナー種のトナーカートリッジTCが装着された場合に、画像形成装置1に記憶された検知方式でトナー濃度制御を行うことができる。
【0076】
そして、このセットアップ動作で検知されたトナー濃度測定値と予め設けられた基準目標値との差分を算出し、算出された差分を濃度目標値の補正量としてトナーの色情報と紐付けてシステム制御装置11の不揮発性メモリ(NVM)に記憶する(S111)。ステップS101において特色トナーの色情報及びそれに対応する検知方式が規定されている場合(S101:Yes)、規定の検知方式を選択し(S110)、ステップS111の処理を行う。
これにより、新たにトナーカートリッジTCが装着されたときに、トナー濃度検知方式と濃度目標値の設定が行われ、所定のトナー濃度制御を行うことができる。
【0077】
本実施形態に係る画像形成装置1は、特性の異なるトナー毎に「全平均方式」及び「ピークのみ検知方式」のトナー濃度検知方式を備え、装着されたトナーカートリッジに予め記憶されたトナーの色情報に対応して、「全平均方式」又は「ピークのみ検知方式」のいずれかのトナー濃度検出方式を選択する。このトナー濃度検知方式は、作像エンジンの位置を入れ替えても、トナーの色情報に応じて検出方式が選択される。
トナーの情報に対応した検知方式が規定されていない場合であっても、トナーカートリッジTCの装着時にセットアップ動作を実行し、ATCセンサ出力波形の検知結果から、トナー種に適合した検知方式を選択する。このように、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、トナー種と作像エンジンの装着位置に拘わらず、精度の高いトナー濃度の制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・画像形成装置
10・・・画像形成部
11・・・システム制御装置
110・・・印刷制御部
111・・・トナー補給制御部
112・・・トナー濃度検出部
113・・・検知方式選択部
12・・・露光装置
13・・・感光体ユニット
14・・・現像装置
15・・・転写装置
17・・・定着装置
18・・・トナー供給装置
20・・・給紙装置
30・・・排紙部
40・・・操作表示部
50・・・画像処理部
TC・・・トナーカートリッジ
140・・・ICタグ
SR・・・ATCセンサ
図1
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図10
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