(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/02 20060101AFI20231011BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02G11/02
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2019166079
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】古畑 名穂子
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095209(JP,A)
【文献】特開2018-129903(JP,A)
【文献】特開2012-257344(JP,A)
【文献】特開2011-136598(JP,A)
【文献】特開2017-034974(JP,A)
【文献】特開2001-069657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00-11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに対してスライド可能に配されたスライダに一端が固定されると共に、他端が前記レールから外部に引き出されたワイヤーハーネスと、
前記レールから引き出された前記ワイヤーハーネスの余長部が導入される出入口を有し、前記余長部を渦巻き状に巻回して内部に収容する余長収容部と、
前記余長収容部内に配されて、前記余長部と接触することにより前記余長部が前記余長収容部内に進入する向きを前記余長収容部の内方に変えるガイド部と、を有し、
前記余長収容部は、前記ワイヤーハーネスを導出する導出部をさらに有し、
前記余長収容部は、前記余長部を前記導出部の外周に巻回して内部に収容
し、
前記ガイド部は、前記余長部を前記余長収容部の内方に付勢する弾性部材を有し、前記余長収容部には、前記弾性部材の一端を固定する固定部と、前記弾性部材の他端を巻き取る巻き取り部と、が設けられているワイヤーハーネス配索装置。
【請求項2】
前記ガイド部は前記ワイヤーハーネスと接触する接触部を有し、前記接触部は前記余長収容部の径方向に移動可能に設けられている請求項1に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項3】
レールに対してスライド可能に配されたスライダに一端が固定されると共に、他端が前記レールから外部に引き出されたワイヤーハーネスと、
前記レールから引き出された前記ワイヤーハーネスの余長部が導入される出入口を有し、前記余長部を渦巻き状に巻回して内部に収容する余長収容部と、
前記余長収容部内に配されて、前記余長部と接触することにより前記余長部が前記余長収容部内に進入する向きを前記余長収容部の内方に変えるガイド部と、を有し、
前記ガイド部は前記ワイヤーハーネスと接触する接触部を有し、前記接触部は前記余長収容部の径方向に移動可能に設けられており、
前記ガイド部は、前記余長部を前記余長収容部の内方に付勢する弾性部材を有し、
前記弾性部材は板バネ状に形成されており、前記余長収容部には、前記弾性部材の一端を固定する固定部と、前記弾性部材の他端を巻き取る巻き取り部と、が設けられているワイヤーハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネス配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、スライド可能なシートが備えられており、このシートには電動リクライニング装置やシートヒータなどの電装品が装備されているものがある。これらの電装品と車体側の機器等との間を接続するワイヤーハーネスは、シートと車体との間でシートのスライドに追従するため、シートと車体との間にワイヤーハーネスの余長を吸収する構成が備えられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、シートレールの前方に、ワイヤーハーネスの余長を渦巻き状に巻回して収容する余長吸収ボックスが設けられている。余長吸収ボックスには、シートレール側の側面にワイヤーハーネスの余長部の出し入れが行われる出入口が設けられるとともに、ワイヤーハーネスが渦巻き状に巻回された中心部にワイヤーハーネスの引出口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成においては、ワイヤーハーネスの余長部が出入口から余長吸収ボックス内の奥方に押し込まれると、ワイヤーハーネスの余長部が余長吸収ボックス内で詰まってしまい、それ以上、余長吸収ボックスの内部に進入することができなくなってしまうという問題が生じるおそれがある。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、余長部をスムーズに収容可能なワイハーハーネス配索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ワイヤーハーネス配索装置であって、レールに対してスライド可能に配されたスライダに一端が固定されると共に、他端が前記レールから外部に引き出されたワイヤーハーネスと、前記レールから引き出された前記ワイヤーハーネスの余長部が導入される出入口を有し、前記余長部を渦巻き状に巻回して内部に収容する余長収容部と、前記余長収容部内に配されて、前記余長部と接触することにより前記余長部が前記余長収容部内に進入する向きを前記余長収容部の内方に変えるガイド部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイハーハーネス配索装置内に余長部をスムーズに収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる
ワイヤーハーネス配索装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、スライダがレールの後方側に配された状態を示すワイヤーハーネス配索装置を示す平面図
【
図4】
図4は、ワイヤーハーネスが引き出される途中の余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【
図5】
図5は、余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【
図6】
図6は、スライダがレールの後方側に配された状態における余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【
図7】
図7は、スライダが前方に移動する途中の状態における余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【
図8】
図8は、スライダが前方側に配された状態における余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【
図9】
図9は、比較例1にかかる余長収容部を示す一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0011】
(1)本開示は、ワイヤーハーネス配索装置であって、レールに対してスライド可能に配されたスライダに一端が固定されると共に、他端が前記レールから外部に引き出されたワイヤーハーネスと、前記レールから引き出された前記ワイヤーハーネスの余長部が導入される出入口を有し、前記余長部を渦巻き状に巻回して内部に収容する余長収容部と、前記余長収容部内に配されて、前記余長部と接触することにより前記余長部が前記余長収容部内に進入する向きを前記余長収容部の内方に変えるガイド部と、を有する。
【0012】
ガイド部によって、余長部が余長収容部内に進入する向きが、余長収容部の内方に変わるので、出入口から余長収容部内に進入した余長部は、余長収容部の側壁に対して外側に向かって押し付けられないようになっている。これにより、余長収容部内に進入して余長収容部内を1周した余長部は、出入口からまさに余長収容部内に進入しようとする余長部に、押し付けられにくくなっている。これにより、出入口からまさに余長収容部内に進入しようとする余長部が余長収容部の側壁に押し付けられることが抑制されるので、余長部が余長収容部内にスムーズに進入することができる。
【0013】
(2)前記ガイド部は前記ワイヤーハーネスと接触する接触部を有し、前記接触部は前記余長収容部の径方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0014】
余長部の、余長収容部内への収容状態に応じて接触部が移動することにより、余長部が、余長収容部内へ進入する向きを適切に変えることができる。
【0015】
(3)前記ガイド部は、前記余長部を前記余長収容部の内方に付勢する弾性部材を有する。
【0016】
弾性部材によって余長部が余長収容部の内方に付勢されることにより、余長部が余長収容部の側壁に押し付けられることが抑制される。この結果、余長部が余長収容部内にスムーズに進入することができる。
【0017】
(4)前記弾性部材は板バネ状に形成されており、前記余長収容部には、前記弾性部材の一端を固定する固定部と、前記弾性部材の他端を巻き取る巻き取り部と、が設けられている。
【0018】
余長収容部内に進入する余長部の進入量に応じて、巻き取り部に巻き取られる弾性部材の量が変化するので、余長部に対して適切な付勢力を加えることができる。これにより、余長部が余長収容部内に一層スムーズに進入することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、
図1から
図9を参照しつつ説明する。本実施形態のワイヤーハーネス配索装置10は、自動車等の車両(図示せず)におけるシート60の下の床上に固定され、シート60の電装品に接続されるワイヤーハーネス11が配索される。以下の説明では、矢線Zで示される方向を上方とし、矢線Yで示される方向を前方とし、矢線Xで示される方向を左方として説明する。
【0021】
シート60は、
図1に示されるように、車体(図示せず)の乗員室の床上に公知のボルト締結等によって固定された2つのレール20に対して前後方向にスライド可能とされている。シート60には、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサなどの各種電装品が配設されている。シート60の下部は、レール20内のスライダ26に固定されている。なお、
図1では一方のレール20のスライダ26のみ図示し、他方のレール20のスライダは省略されている。
【0022】
[レール20]
レール20は、金属製であって、
図1に示されるように、各シート60に対して一対設けられ、前後方向に直線状に延びている。各レール20は、
図2に示されるように、スライダ26が挿通される挿通孔21が前後方向に貫通形成されている。挿通孔21は、左右方向に長い長方形状とされ、下方側に幅寸法が小さくされた底溝22が前後方向に延びている。挿通孔21の上方には、外部と連通する通し溝24が前後方向に溝状に延びている。なお、
図2においては、説明の便宜のために蓋部55とワイヤーハーネス11は省略されている。
【0023】
[スライダ26]
スライダ26は、例えば、合成樹脂製又は金属製であって、レール20に対して前後方向にスライド移動可能とされている。スライダ26は、挿通孔21内に配されるスライダ本体27と、スライダ本体27の上面から上方に板状に突出する取付部28とを有する。スライダ本体27の幅寸法は、通し溝24の間隔よりも大きくされている。取付部28は、床上のマット等に形成された切り込みの間をスライドし、ボルト等の締結部材(図示せず)によりシート60の被取付部(図示せず)に締結される。また、スライダ26の前方には、
図2に示されるように、複数の電線12が挿通される筒状のガイド部材17が設けられている。ガイド部材17の内部において、複数の電線12の延びる方向が、前後方向から上下方向へと案内されるようになっている。
【0024】
[ワイヤーハーネス11]
ワイヤーハーネス11は、車体の床上や床下に配索されており、車体側ではECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続されている。車体の床上にマットやパネル等が配置されている場合には、ワイヤーハーネス11はマットやパネル等の下に配索されていてもよい。ワイヤーハーネス11を介して車体側の機器とシート60の電装品との間の給電や信号の送受が行われる。
【0025】
シート60と車体との間に配索されたワイヤーハーネス11は、シート60の下のレール20に挿通されている。ワイヤーハーネス11は、
図3に示されるように、複数本(本実施形態では9本)の電線12と、複数の電線12を一括して収容する外装体14とを備えている。各電線12は、金属製の導体部が絶縁層で被覆された被覆電線であり、シート60の各種電装品に接続されている。
【0026】
外装体14は、例えば絶縁性の合成樹脂製であって、上下に並んだ複数の電線12を包囲した状態で前後方向に帯状に延びている。外装体14は、複数の電線12に沿って延びる帯状の外装本体15と帯状の外装カバー16とを備える。なお、レール20及び余長収容部40の外部に配索されるワイヤーハーネス11は、外装体14で覆われていない複数の電線12の状態で配索されている。
【0027】
[ワイヤーハーネス配索装置10]
ワイヤーハーネス配索装置10は、
図2に示されるように、ワイヤーハーネス11と、ワイヤーハーネス11の余長部11Aが収容される余長収容部40と、を備える。
【0028】
[余長収容部40]
余長収容部40は、ワイヤーハーネス11のうち、レール20内に収容されない余長部11Aを収容する。余長収容部40は、図1に示されるように、収容部本体41と、蓋部55とを備える。余長収容部40は、2本のレール20のうち右側に位置するレール20の前端部に配されている。収容部本体41は、平板状の底壁42と、ワイヤーハーネス11が渦巻き状に内側に収容される収容壁46と、を備える。余長収容部40は絶縁性の合成樹脂を射出成型してなる。
【0029】
図4に示されるように、底壁42は上方から見て、ほぼ円形状に形成されている。底壁42の中央付近には、ワイヤーハーネス11を車両の床上や床下等に導出するための導出部43が形成されている。導出部43は底壁42中央付近から起立する筒状であって、ワイヤーハーネス11が挟持される挟持部44が設けられている。導出部43の内側には、底壁42を上下に貫通する貫通孔
42Aが形成されている。この貫通孔
42Aからワイヤーハーネス11が車両の床上や床下等に導出されている。
【0030】
図4に示されるように、収容壁46は、底壁42の側縁から上方に起立している。底壁42と収容壁46との間には、ワイヤーハーネス11が収容される収容スペースが形成されている。収容壁46の右後端部には、後述する弾性部材31を固定する固定部32が配されている。固定部32は上方から見て略三角形状をなしている。固定部32の右側縁は収容壁46の右側壁と略平行な直線状に延びて形成されている。固定部32の右側縁と、収容壁46の右側壁との間の空間は、レール20の通し溝24と連通している。固定部32の右側縁と、収容壁46の右側壁との間の左右方向の間隔は、通し溝24の左右方向の間隔と同じか、やや小さく設定されている。固定部32の前端縁は曲面形状に形成されている。
【0031】
固定部32の後縁は、左右方向に直線状に延びて形成されている。固定部32の左斜め前側の側縁は、弧状に形成されている。固定部32には、蓋部55をネジでネジ止め可能な複数(本実施では2つ)の留め部50が形成されている。留め部50には上下方向に延びるネジ孔が形成されている。
【0032】
収容壁46の左前部には、上方から見て略三角形状をなす突出部48が、左斜め前方に突出して形成されている。突出部48の右後側の側面は弧状に形成されている。突出部48には、蓋部55をネジでネジ止め可能な複数(本実施では2つ)の留め部50が形成されている。留め部50には上下方向に延びるネジ孔が形成されている。
【0033】
収容壁46の内面と、固定部32の左前側の側面と、突出部48の右後側の側面とにより、ワイヤーハーネス11が収容される収容スペース47が、上方から見て、略円形状に形成されている。
【0034】
図1に示されるように、蓋部55は、収容部本体41の形状に応じた平板状とされている。蓋部55は、収容部本体41の留め部50にネジ止めされるようになっている。蓋部55が収容部本体41にネジ止めされた状態で、収容スペース47は蓋部55によって塞がれている。
【0035】
[ガイド部30]
図5に示されるように、ガイド部30は、金属製の板バネ状をなす弾性部材31と、弾性部材31の後端(一端の一例)を固定する固定部32と、弾性部材31の前端(他端の一例)を巻き取る巻き取り部33と、を有する。なお、
図5においては、説明の便宜のためにワイヤーハーネス11は省略されている。
【0036】
[弾性部材31]
弾性部材31は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の帯状の金属からなる、薄肉で弾性変形可能な板バネ状をなしている。弾性部材31の後端部は、溶接、ネジ止め等の公知の手法により固定部32に固定されている。突出部48には、弾性部材31の前端部を巻き取る巻き取り部33が配設されている。突出部48の左後部には、弾性部材31が、巻き取り部33から引き出され、または巻き取り部33に引き戻されるための開口部49が設けられている。開口部49の後縁は丸められている。
【0037】
弾性部材31は、外力が加えられない自然状態では一定の曲率で曲げられており、直線に引き延ばすときに生じる戻り力(荷重)は一定となっている。
図5に示されるように、固定部32の左端部と、突出部48の開口部49との間に架け渡された弾性部材31は、自然状態では、導出部43と接触しないようになっている。
【0038】
図4に示されるように、弾性部材31のうち、収容部本体41の径方向の内側の側面は、ワイヤーハーネス11と接触する接触部34とされる。弾性部材31がワイヤーハーネス11と弾性的に接触することにより、ワイヤーハーネス11は、収容部本体41の径方向内方(矢線Pで示される方向)に向けて付勢されるようになっている。
【0039】
巻き取り部33は、図示しない軸部に対して回動可能とされている。弾性部材31は、巻き取り部33から自在に引き出され、または自在に巻き取られるようになっている。
【0040】
[ガイド部30の動作説明]
次に、シート60がスライドする際の、ガイド部30の動作について説明する。シート60がレール20の後方側にあるときには(
図6の状態)、ワイヤーハーネス11が余長収容部40から引き出された状態になっている。このため、余長収容部40内においては、余長部11Aが導出部43の外周に、ほぼ隙間なく巻き付けられた状態になっている。導出部43に巻き付けられた余長部11Aの左斜め後部には、弾性部材31の接触部34が、収容部本体41の径方向の外方から接触している。弾性部材31によって、導出部43に巻き付けられた余長部11Aは、矢線Pで示されるように、収容部本体41の径方向の中心に向かって付勢されている。
【0041】
次に、
図7に、シート60がやや前方に移動した状態が示される。余長収容部40の出入口45から、余長収容部40の内部に進入した余長部11Aは、出入口45から前方(矢線Qで示される方向)に押し込まれる。これにより、余長収容部40内の余長部11Aは、前方(矢線Rで示される方向)へ押されることにより、収容壁の内側に後方から押し付けられる。
【0042】
余長部11Aが余長収容部40内に押し込まれることにより、弾性部材31の接触部34が余長部11Aによって収容部本体41の径方向の外方に押される。これにより、弾性部材31は巻き取り部33から引き出される。これにより、弾性部材31の接触部34の位置は、収容部本体41の径方向の外方に移動する。
【0043】
上記したように、導出部43に巻き付けられた余長部11Aは、矢線Pで示されるように収容部本体41の径方向の中心に向かって付勢されるので、余長収容部40に押し込まれた余長部11Aの進入方向は、弾性部材31によって収容部本体41の径方向の内方(矢線Pで示される方向))に変化させられる。これにより、余長収容部40内に進入した余長部11Aの巻回中心は、導出部43からやや前方にずれた位置になっている。この結果、余長収容部40の出入口45から内部に進入したばかりの余長部11Aと、導出部43の周囲を1周回ってきた余長部11Aとの間には隙間が形成されている。
【0044】
さらに、シート60が前方に移動すると、
図8に示されるように、導出部43に巻回されていた余長部11Aが導出部43から離間する。そして、収容壁46の内壁に押し付けられるようになる。弾性部材31は余長部11Aによって押されることにより巻き取り部33からさらに引き出される。
図8に示されるように、余長収容部40の出入口45から内部に進入したばかりの余長部11Aと、導出部43の周囲を1周回ってきた余長部11Aとは密着している。このため、余長収容部40内には、余長部11Aがこれ以上進入できないようになっている。この状態では、余長収容部40内に進入した余長部11Aは、互いに密着している。
【0045】
次に、シート60を後方に移動させると、
図4に示されるように、余長部11Aな出入口45から余長収容部40から後方(矢線Sで示される方向)に引き出される。すると、余長部11Aは、互いの隙間が徐々に狭まりながら、導出部43の外周に巻き付けられる。弾性部材31は巻き取り部33に巻き取られる。このとき、余長部11Aは、弾性部材31によって収容部本体41の径方向の内方(矢線Pで示される方向)に付勢されているため、まとまりやすくなっている。これにより、余長部11Aはスムーズに余長収容部40から引き出される。
【0046】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施系形態の作用効果について説明する。本実施形態の作用効果を説明する前に、
図9を参照しつつ比較例1について説明する。なお、比較例1については、実施形態1と同一の構造については同一の符号を用いた。
【0047】
図9に示される比較例1にかかる余長収容部70は、ガイド部30を有しない点で実施形態1に記載された余長収容部40と異なる。この余長収容部70においては、ワイヤーハーネス11の余長部11Aが出入口45から前方(矢線Aで示される方向)に押し込まれると、収容部本体41内に進入した余長部11Aは、収容壁46の内面に、収容部本体41の径方向の外方(矢線Bで示される方向)へと押し付けられる。さらに続けて余長部11Aが収容部本体41の内部に押し込まれると、収容部本体41内に進入した余長部11Aは、常に収容壁46の内面に対して、外方(矢線Cおよび矢線Dで示される方向)へ向けて押し付けられた状態で、導出部43の周囲を1周する。
【0048】
収容部本体41の内部を1周してきた余長部11Aは、さらに収容部本体41内に押し込まれた余長部11Aに押されることにより、出入口45から収容部本体41内に進入してきたばかりの余長部11Aに、収容部本体41の径方向について外方(矢線Eで示される方向)に押し付けられる。すると、収容部本体41内に押し込まれたばかりの余長部11Aは、収容壁46と、収容部本体41を1周してきた余長部11Aとの間に挟まれてしまう。これにより、余長収容部40内に進入した余長部11Aは互いに隙間を有しているにもかかわらず、収容部本体41の内部に余長部11Aが進入できなくなる。
【0049】
上記の点を考慮して、本実施形態にかかるワイヤーハーネス配索装置10は、レール20に対してスライド可能に配されたスライダ26に後端が固定されると共に、前端がレール20から外部に引き出されたワイヤーハーネス11と、レール20から引き出されたワイヤーハーネス11の余長部11Aが導入される出入口45を有し、余長部11Aを渦巻き状に巻回して内部に収容する余長収容部40と、余長収容部40に配されて、余長部11Aと接触することにより余長部11Aが余長収容部40内に進入する向きを余長収容部40の内方に変えるガイド部30と、を有する。
【0050】
ガイド部30によって、余長部11Aが余長収容部40内に進入する向きが、余長収容部40の内方に変わるので、出入口45から余長収容部40内に進入した余長部11Aは、余長収容部40の収容壁46に対して外側に向かって押し付けられないようになっている。これにより、余長収容部40内に進入して余長収容部40内を1周した余長部11Aは、出入口45からまさに余長収容部40内に進入しようとする余長部11Aに、押し付けられにくくなっている。これにより、余長部11Aが余長収容部40内にスムーズに進入することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ガイド部30はワイヤーハーネス11と接触する接触部34を有し、接触部34は余長収容部40の径方向に移動可能に設けられている。
【0052】
余長部11Aの、余長収容部40内への収容状態に応じて接触部34が移動することにより、余長部11Aが、余長収容部40内へ進入する向きを適切に変えることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、ガイド部30は、余長部11Aを余長収容部40の内方に付勢する弾性部材31を有する。
【0054】
弾性部材31によって余長部11Aが余長収容部40の内方に付勢されることにより、余長部11Aが余長収容部40の側壁に押し付けられることが抑制される。この結果、余長部11Aが余長収容部40内にスムーズに進入することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、弾性部材31は板バネ状に形成されており、余長収容部40には、弾性部材31の後端を固定する固定部32と、弾性部材31の前端を巻き取る巻き取り部33と、が設けられている。
【0056】
余長収容部40内に進入する余長部11Aの進入量に応じて、巻き取り部33に巻き取られる弾性部材31の量が変化するので、余長部11Aに対して適切な付勢力を加えることができる。これにより、余長部11Aが余長収容部40内に一層スムーズに進入することができる。
【0057】
<他の実施形態>
(1)余長収容部40内において、導出部43に巻回されたワイヤーハーネス11の巻き数は、上記実施形態の巻き数に限られず、異なる巻き数とすることができる。
【0058】
(2)巻き取り部33は、異なる位置に配置してもよい。
【0059】
(3)ワイヤーハーネス11を構成する電線12の本数は、上記実施形態の本数に限られず、種々の本数に変更することができる。例えば、一本の電線12でワイヤーハーネス11を構成してもよい。また、電線12を保護する外装体14についても上記実施形態の形状に限られず、種々に変更することができる。また、例えば、外装体14を用いず、電線12のみでワイヤーハーネス11を構成してもよい。
【0060】
(4)スライダ26は、スライド対象物としてのシート60に固定されることとしたが、これに限られない。例えば、スライドドアをスライド対象物としてスライドドアにスライダ26が固定されるようにしてもよい。
【0061】
(5)ガイド部30は、シート60の動きと連動して収容部本体41の径方向に沿って移動することにより、ワイヤーハーネス11の進行方向を変えることが可能なアクチュエータでもよい。
【0062】
(6)弾性部材31は、渦巻きバネ、たけのこバネ等、任意の形状のバネを採用できる。
【0063】
(7)1つの余長収容部40内に、複数の弾性部材31が配される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10: ワイヤーハーネス配索装置
11: ワイヤーハーネス
11A: 余長部
12: 電線
14: 外装体
15: 外装本体
16: 外装カバー
17: ガイド部材
20: レール
21: 挿通孔
22: 底溝
24: 通し溝
26: スライダ
27: スライダ本体
28: 取付部
30: ガイド部
31: 弾性部材
32: 固定部
33: 巻き取り部
34: 接触部
40: 余長収容部
41: 収容部本体
42: 底壁
43: 導出部
42A: 貫通孔
44: 挟持部
45: 出入口
46: 収容壁
47: 収容スペース
48: 突出部
49: 開口部
50: 留め部
55: 蓋部
60: シート
70: 余長収容部