(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20231011BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G03G15/01 J
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2019167909
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜津 誠
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-209470(JP,A)
【文献】特開2006-098895(JP,A)
【文献】特開2001-100481(JP,A)
【文献】特開2016-062078(JP,A)
【文献】特開平11-231584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体及び前記像保持体上に形成された濃度測定用の基準トナー像から反射する主に鏡面反射光を受光して
前記基準トナー像の濃度を検出する第1の検出方式と、前記像保持体及び
前記基準トナー像からの主に拡散反射光を受光して
前記基準トナー像の濃度を検出する第2の検出方式と、のいずれかを選択して前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する
検出手段を備え、
作像エンジンが装着されたときに、前記作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して前記第1の検出方式及び前記第2の検出方式で複数階調の前記基準トナー像の濃度を光学的に検出して得られる検出値の変化率が大きい検出方式を選択して前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記セットアップ動作は、画像形成装置の使用者又は保守作業者が
、操作者の画像形成装置に対する操作を受け付ける操作情報手段を介して実施する調整作業時に実施される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記像保持体上に形成された濃度測定用の
前記基準トナー像に光を照射する1つの発光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像から反射する主に鏡面反射光を受光する
一方の受光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像からの主に拡散反射光を受光する他方の受光素子と、を備え、前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装
置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記像保持体上に形成された濃度測定用の
前記基準トナー像に主に鏡面反射光を照射する
一方の発光素子と、前記像保持体上に形成された濃度測定用の
前記基準トナー像に主に拡散反射光を照射する他方の発光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像から反射する光を受光する1つの受光素子と、を備え、前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤にて現像して、像担持体上にトナー像を形成する複数の現像手段と、像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、トナー像の画像濃度を検知する濃度検知手段と、を有し、濃度検知手段によるトナー像の画像濃度検知結果に基づいて画像形成条件を制御する画像形成装置において、複数の現像手段は、一つの現像手段に収容されたトナーとは同一色相で濃度の異なるトナーが収容された現像手段を含み、濃度検知手段は、トナー像への照射光に対する正反射光量を検知する正反射光検知手段と、乱反射光量を検知する乱反射光検知手段と、を備えている画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、トナー種類及び作像エンジンの配置位置によらず所定のトナー量に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の画像形成装置は、
像保持体及び前記像保持体上に形成された濃度測定用の基準トナー像から反射する主に鏡面反射光を受光して前記基準トナー像の濃度を検出する第1の検出方式と、前記像保持体及び前記基準トナー像からの主に拡散反射光を受光して前記基準トナー像の濃度を検出する第2の検出方式と、のいずれかを選択して前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する検出手段を備え、
作像エンジンが装着されたときに、前記作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して前記第1の検出方式及び前記第2の検出方式で複数階調の前記基準トナー像の濃度を光学的に検出して得られる検出値の変化率が大きい検出方式を選択して前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記セットアップ動作は、画像形成装置の使用者又は保守作業者が、操作者の画像形成装置に対する操作を受け付ける操作情報手段を介して実施する調整作業時に実施される、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記検出手段は、前記像保持体上に形成された濃度測定用の前記基準トナー像に光を照射する1つの発光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像から反射する主に鏡面反射光を受光する一方の受光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像からの主に拡散反射光を受光する他方の受光素子と、を備え、前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記検出手段は、前記像保持体上に形成された濃度測定用の前記基準トナー像に主に鏡面反射光を照射する一方の発光素子と、前記像保持体上に形成された濃度測定用の前記基準トナー像に主に拡散反射光を照射する他方の発光素子と、前記像保持体及び前記基準トナー像から反射する光を受光する1つの受光素子と、を備え、前記基準トナー像の濃度を光学的に検出する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、トナーの色情報に対する検出方式が規定されていない場合や、トナーの色情報がない新規のトナー種である場合であっても、トナー種類に対して適切な検出方式を選択することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、セットアップ動作時に、画像形成装置の使用者又は保守作業者が装着された作像エンジンのトナー種類に対して適切な検出方式を選択することができる。
【0022】
請求項3、4に記載の発明によれば、鏡面反射光及び拡散反射光を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】画像形成装置の内部構成を示す断面模式図である。
【
図2】感光体ユニット、現像装置及びトナー供給装置を示す断面模式図である。
【
図4】(a)は光輝性トナー粒子Sを概略的に示す厚さ方向への断面模式図、(b)は定着された後の光輝性トナーの光の反射を説明する断面模式図である。
【
図5】(a)は中間転写ベルト上に形成されたトナーパッチを説明する図、(b)はトナーパッチの読み取りを説明する図である。
【
図6】ADCセンサの検出感度の一例を示す図である。
【
図7】画像形成装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】トナーカートリッジまたは作像エンジンが装着された場合にシステム制御装置で行われる検出方式を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】トナーカートリッジまたは作像エンジンが装着された場合にシステム制御装置で行われる検出方式を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】ADCセンサ出力値の変化率を模式的に示す図である。
【
図12】ADCセンサ出力値の変化率をハイライト領域、中間調領域、高濃度領域のそれぞれの諧調領域ごとに分割して、それぞれの検出方式の変化率を算出する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0026】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
(1.1)画像形成装置の全体構成
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面模式図、
図2は感光体ユニット13、現像装置14及びトナー供給装置18を示す断面模式図である。
画像形成装置1は、画像形成部10と、画像形成部10の下方に装着された給紙装置20と、画像形成部10の一端に設けられ、印刷された用紙が排紙される排紙部30と、操作情報部40と、上位機器から送信された印刷情報から画像情報を生成する画像処理部50と、を備えて構成されている。
【0027】
画像形成部10は、システム制御装置11、露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、定着装置17、トナー供給装置18(
図2参照)、を備えて構成され、給紙装置20から送り込まれた記録媒体上にトナー画像を形成する。
【0028】
給紙装置20は、画像形成部10に対する記録媒体の供給を行う。すなわち、種類(例えば、材質や厚さ、用紙サイズ、紙目)の異なる記録媒体を収容する複数の用紙積載部21、22を備えており、これら複数の用紙積載部21、22のいずれか一つから繰り出した記録媒体を画像形成部10に対して供給するように構成されている。
【0029】
排紙部30は、画像形成部10にて画像出力が行われ定着装置17で画像が定着された用紙の排出を行う。そのために、排紙部30は、定着後の用紙を搬送する搬送路30aと排出される排紙収容部T1を備えている。また、用紙の両面に画像出力を行う場合に、用紙の表裏を反転して、用紙搬送装置16bへ送り出す用紙反転部16cを備えている。尚、排紙部30は、画像形成部10から出力される用紙束に対して、裁断やステープル(針綴じ)等の後処理を行う機能を有したものであってもよい。
【0030】
操作情報部40は、各種の設定や指示の入力及び情報表示に用いられるものである。すなわち、いわゆるユーザインタフェースに相当するもので、具体的には液晶表示パネル、各種操作ボタン、タッチパネル等を組み合わせて構成されている。
【0031】
(1.2)画像形成部の構成及び動作
このような構成の画像形成装置1では、画像形成のタイミングに合わせて用紙積載部21、22のうち、印刷ジョブで印刷の1枚毎に指定された用紙積載部21、22から繰り出された記録媒体が画像形成部10へ送り込まれる。
【0032】
感光体ユニット13は、露光装置12の下方に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する潜像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向に沿って、帯電器32、露光装置12、現像装置14、一次転写ローラ52、クリーニング装置33が配置されている。
感光体ユニット13の感光体ドラム31、帯電器32およびクリーニング装置33を一体化し、カートリッジ化することで、画像形成装置1の本体からこのカートリッジだけを取り外し、また、カートリッジだけを画像形成装置1の本体に対して取り付け可能に構成されている。
【0033】
現像装置14は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像ハウジング41、感光体ドラム31と対向して配置されている現像ローラ42、現像剤を撹拌しながら搬送する撹拌オーガ43、現像ローラ42に現像剤を供給する供給オーガ44を備えている。それぞれの現像装置14は、現像剤を除いて略同様に構成され、それぞれの現像ローラ42で感光体ドラム31上に一般色としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の他に、光輝性顔料を含む金、銀、金属顔料を含む白、クリア等の特色のトナー像を形成する
【0034】
現像装置14には、現像ハウジング41内を循環する現像剤のキャリアに対するトナーの比率(以降トナー濃度(TC)と記すことがある)を測定するATC(Auto Toner Control)センサSR1が配置されている。
【0035】
現像装置14の上方には、トナーを収容する交換可能なトナーカートリッジTCと、それぞれのトナーカートリッジTCから現像装置14にトナー及びキャリアを供給するトナー供給装置18(
図2参照)が配置されている。トナーカートリッジTCには、記憶手段の一例としてのICタグ140(
図1において不図示
図9、
図10参照)が搭載され、例えば、トナー色情報を含む識別情報及び使用履歴情報が格納されている。
【0036】
現像装置14、トナーカートリッジTC及びトナー供給装置18は、それぞれの色ごとに作像エンジンとして、感光体ユニット13に対して差し替えて用いることもできる。また、感光体ユニット13も感光体ユニット13の間で差し替えて用いることができる。
【0037】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電器32により帯電され、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ローラ42によりトナー像として現像される。
【0038】
転写装置15は、各感光体ユニット13の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される像保持体の一例としての中間転写ベルト51、各感光体ユニット13にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ローラ52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体である用紙に一括転写(二次転写)する二次転写ローラ53を備えて構成されている。
【0039】
黒(K)の作像エンジンの下流側で、二次転写部TRの上流に、中間転写ベルト51上に転写された濃度測定用の基準トナー像の濃度を検出する検出手段の一例としてのADCセンサ(Auto Density Control)SR2が中間転写ベルト51と対向するように配置されている。
【0040】
各感光体ユニット13の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、システム制御装置11により制御される電源装置等(不図示)から所定の転写電圧が印加された一次転写ローラ52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0041】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って、バックアップローラ65に中間転写ベルト51を介して二次転写ローラ53が圧接配置された二次転写部TRに搬送される。重畳トナー像が二次転写部TRに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙が二次転写部TRに供給される。そして、中間転写ベルト51を介して二次転写ローラ53と対向するバックアップローラ65には、システム制御装置11により制御される電源装置(不図示)から予め定められた二次転写電圧が印加され、用紙に中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0042】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニング装置33により除去され、廃トナー収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電器32により再帯電される。
【0043】
定着装置17は一方向へ回転する無端状の定着ベルト17aと、定着ベルト17aの周面に接し、一方向へ回転する加圧ローラ17bとを有し、定着ベルト17aと加圧ローラ17bの圧接領域によってニップ部(定着領域)が形成される。
転写装置15においてトナー像が転写された用紙は、トナー像が未定着の状態で用紙搬送装置16aを経由して定着装置17に搬送される。定着装置17に搬送された用紙は、一対の定着ベルト17aと加圧ローラ17bにより、加熱と圧着の作用でトナー像が定着される。
【0044】
定着の終了した用紙は、排紙収容部T1上に積載される。尚、用紙の両面に画像出力を行う場合には、用紙反転部16cで用紙の表裏が反転され、用紙搬送装置16bを介して再び画像形成部10における二次転写部TRへ送り込まれる。そして、トナー像の転写および転写像の定着が行われた後に、排紙部30に送り込まれることになる。排紙部30へ送り込まれた用紙は、必要に応じて裁断やステープル(針綴じ)等の後処理が施される。
【0045】
(2)基準トナー像の濃度検知
図3はADCセンサSR2の一例を示す図、
図4(a)は光輝性トナー粒子Sを概略的に示す厚さ方向への断面模式図、(b)は定着された後の光輝性トナーの光の反射を説明する断面模式図、
図5(a)は中間転写ベルト51上に形成されたトナーパッチを説明する図、(b)はトナーパッチの読み取りを説明する図、
図6はADCセンサの検出感度の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、基準トナー像の濃度検出について説明する。
【0046】
ADCセンサSR2は、中間転写ベルト51と共に、
図3において矢印Rで示される中間転写ベルト51の搬送方向に搬送されるトナーパッチPの濃度を光学的に読み取るセンサである。
図3に示すように、ADCセンサSR2は、光を照射する発光部SR2-1と、発光部SR2-1から照射された光のうち、トナーパッチPで反射した鏡面反射光を受光する第1の受光部SR2-2と、トナーパッチPで反射した主に拡散反射光を受光する第2の受光部SR2-3と、光学系SR2-4とを備える。
【0047】
発光部SR2-1は、中間転写ベルト51に向けて照射光を照射する。このとき照射光が中間転写ベルト51に入射する入射角はθである。発光部SR2-1は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。
光学系SR2-4は、発光部SR2-1から中間転写ベルト51までの間に設けられ、照射光を受光して照射光に含まれる光の進行方向を調整する。
【0048】
第1の受光部SR2-2は、光学系SR2-4を経て中間転写ベルト51を正反射した鏡面反射光を受光して中間転写ベルト51に形成されたトナーパッチPのうち、黒トナー及び光揮性顔料を含む金、銀等の特色トナーで形成される画像の濃度を検出する。この鏡面反射光は正反射光であるので、
図3に示すように中間転写ベルト51における鏡面反射角は入射角と同じθである。
【0049】
第2の受光部SR2-3は、光学系SR2-4を経て中間転写ベルト51で拡散反射する拡散反射光を受光して中間転写ベルト51に形成されたトナーパッチPのうち、黒色以外の一般色(Y、M、C)のトナー及び白トナーで形成される画像の濃度を検出する。この拡散反射光の中間転写ベルト51における反射角は上述した入射角θと異なり、例えば、
図3に示すようにΦである。
【0050】
第1の受光部SR2-2および第2の受光部SR2-3は、いずれも受光した光に応じた信号を生成する光学素子であり、例えばフォトダイオード(PD;Photodiode)である。
そして、ADCセンサSR2は、第1の受光部SR2-2および第2の受光部SR2-3で受光した反射光の波長からトナーパッチPの色を特定すると共に、受光した反射光の強さからトナーパッチPの濃度に応じた値(センサ値)をシステム制御装置11に出力する。
【0051】
印刷市場においては、金属顔料を内部に有する光輝性トナーを用いて光輝性を有するメタリック印刷が行われている。メタリック印刷は、印象的かつ多彩な表現力を持つことからグリーティングカードや本の表紙、ラベル、パッケージ等様々なアプリケーションに活用されている。
【0052】
光輝性トナーは、
図4(a)に模式的に示すように、厚さLよりも円相当径が長い扁平状の光輝性トナー粒子Sであり、光輝性顔料の一種である鱗片状の金属顔料Gを含有している。金、銀等の光輝性トナーは、形状を扁平とすることで、トナー内部の光輝性顔料をトナーの長軸方向に対して平行に配向させている。その結果、紙、フィルム等のメディアMD上に転写されたトナーの光輝性顔料がメディアと平行になり、
図4(b)に示すように、定着後の画像の中で顔料からの光の反射が高まる。これによって高い光輝性が発現し、メタリック感を作り出している。
【0053】
このようなトナー種の基準トナー像は、
図5(a)に一例として示すように、中間転写ベルト51上に、面積階調率が異なる複数Cinのトナーパッチ(パッチパターンP[i]:i=1~9)を形成して、
図5(b)に示すように、中間転写ベルト51と対向して配置されたADCセンサSR2で中間転写ベルト51とともに移動するトナーパッチの濃度を読み取る。尚、トナーパッチは、トナーの色ごとに連続して形成してもよく、トナーの色ごとに単独で形成してもよい。
【0054】
図6は各種トナーのトナーパッチPの入力面積階調率Cin(%)に対する正規化されたADCセンサ出力値の一例を示している。
図6に示すように、一般色のトナー(Y、M、C)は、ADCセンサSR2の第2の受光部SR2-3により拡散反射光を検出すると、トナーパッチPの入力面積階調率Cin(%)に対するADCセンサ出力値は広い感度R1が得られる。
【0055】
これに対して、光輝性トナーの一例である特色A(銀トナー)の場合、拡散反射光で検出すると、トナーパッチPの入力面積階調率Cin(%)に対するADCセンサ出力値は狭い感度R2しか得られない。これは、光輝性トナーは、
図4(a)に示すように、鱗片状の金属顔料Gを含有しているために鏡面反射成分が多く、トナー量を増やしても一般色のトナーほど拡散出力値が変化しないことによると推察される。
【0056】
このような光輝性トナーの一例である特色A(銀トナー)に対して、鏡面反射光で検出すると、
図6に感度R3で示すように、トナーパッチPの入力面積階調率Cin(%)に対するADCセンサ出力値の感度R3が拡大する。
また、黒トナーに対しては、トナー量が増加するに従い、鏡面反射光が減少するために、鏡面反射光で検出することで、高い検出感度を得ることができる。
【0057】
このように、トナー種に応じて、黒トナーや光輝性トナーは鏡面反射光で検出し、一般色のトナー(Y、M、C)及び白トナーは拡散反射光で検出することで、トナー種に応じてADCセンサSR2の検出感度を広く保てることになる。
本実施形態における画像形成装置1においては、中間転写ベルト51上に形成された濃度測定用の基準トナー像から反射する主に鏡面反射光を受光して基準トナー像の濃度を検出する第1の検出方式(以下、「鏡面反射方式」と記す)、中間転写ベルト51及び基準トナー像からの主に拡散反射光を受光して基準トナー像の濃度を検出する第2の検出方式(以下、「拡散反射方式」と記す)と、のいずれかを選択して基準トナー像の濃度を光学的に検出している。
【0058】
(3)セットアップ動作における基準トナー像の濃度検知
図7は本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、システム制御装置11は、印刷制御部110、トナー濃度検知部111、画像濃度検出部112、検出方式選択部113、トナー補給制御部114、を備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行して、画像形成部10の動作制御を行う。
【0059】
また、システム制御装置11は、トナーカートリッジTCが画像形成装置1の本体に装着されると、トナーカートリッジTCのインターフェイス160とインターフェイス115とが接続され通信可能な状態になる。
図7においてはシステム制御装置11とICタグ140との通信は有線通信として表しているが、無線通信であっても良い。
【0060】
トナーカートリッジTCには、記憶手段の一例としてのICタグ140が取り付けられている。ICタグ140は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリ150及びインターフェイス160を含んで構成されている。
トナーカートリッジTCが画像形成装置1の本体に装着されると、トナーカートリッジTCのインターフェイス160とシステム制御装置11のインターフェイス115とが接続され通信可能な状態になる。
図7においてはシステム制御装置11とICタグ140との通信は有線通信として表しているが、無線通信であっても良い。
【0061】
そして、システム制御装置11のCPUによって、ICタグ140内の情報の読み出しと書き換えとが可能となる。また、CPUは、RAM、ROM、不揮発性メモリ(NVM)、インターフェイス115と接続され、ROMから画像形成装置1の動作制御プログラムの読み出し、RAM、不揮発性メモリ(NVM)の情報の読み出しと書き換えを行う。
【0062】
システム制御装置11の不揮発性メモリ(NVM)は、画像形成を行うための各種設定情報を保持した領域114a、画像形成装置1の本体シリアルIDを保持する領域114bの他、ICタグ140の固有情報に対応した情報を保持する第1の領域114cを有している。
【0063】
ICタグ140内の不揮発性メモリ150は、システム制御装置11から読み出される固有情報を格納した読み出し領域、及びシステム制御装置11との間で読み出し・書き込みが行われる管理情報を記憶するための読み出し・書き込み領域を有している。
【0064】
読み出し領域としては、
図8に機能的に示すように、一例として、トナーカートリッジTCに固有なトナーカートリッジTCのシリアルIDを保持する領域151、トナーの色情報を保持する領域152、画像形成装置1のモード情報を保持した領域153などが挙げられる。
【0065】
印刷制御部110は、給紙装置20、排紙部30、操作情報部40、画像処理部50との間の情報授受についての制御の他に、画像形成部10が備える露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、16c(
図7において不図示
図1参照)、定着装置17、トナー供給装置18等に対して、動作制御指示を与える。
【0066】
トナー濃度検知部111は、ATCセンサSR1の検知結果に基づいて現像装置14内のトナー濃度情報を取得する。
【0067】
画像濃度検出部112は、 画像濃度や諧調性の安定化のために、例えば電源ON時やジョブスタート時、ジョブ中、ジョブエンド時などに行われるセットアップ動作において中間転写ベルト51上に形成された濃度測定用の基準トナー像(パッチパターン:P[i])をADCセンサSR2を介して読み取って基準トナー像の濃度情報を取得する。
【0068】
検出方式選択部113は、トナーカートリッジTC又は作像エンジンが装着されたときに、現像装置14を駆動して画像濃度検出方式確認のセットアップ動作を実施して、トナーカートリッジTCに搭載されたICタグ140に予め記憶されたトナーの色情報に応じて画像濃度検出方式として「鏡面検出方式」又は「拡散検出方式」のいずれかを選択する。具体的には、トナーの色情報として、Y、M、Cの一般色トナー及び白トナーである場合、「拡散検出方式」を選択し、黒トナー及び金、銀等の光輝色トナー(以降、特色トナーと記すことがある)である場合、「鏡面検出方式」を選択する。
【0069】
また、検出方式選択部113は、ICタグ140に予めトナーの色情報が記憶されていない場合には、トナーカートリッジTCあるいは作像エンジンが装着されたときに、作像エンジンを駆動するセットアップ動作を実施して得られるADCセンサSR2の出力信号の変化率に基づいて、「鏡面検出方式」または「拡散検出方式」のいずれかを選択する。
【0070】
トナー補給制御部114は、ATCセンサSR1のトナー濃度検知値に基づいて、トナー供給装置18のディスペンスモータMの回転時間および速度を制御することにより現像装置14の現像剤のトナー濃度を調整する。
【0071】
図9は、トナーカートリッジTCまたは作像エンジンが装着された場合にシステム制御装置11で行われる検出方式を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
画像形成装置1の電源がOFF/ONされる(S101)と、トナーカートリッジTCのICタグ140に記憶されたトナーの識別情報及び使用履歴情報を読み取り(S102)、ステップS103において、トナーの色情報に対応したADCセンサSR2の検出方式が規定されているか否か判断する(S103)。
【0073】
システム制御装置11にトナーの色情報に対応した検出方式が規定されている場合(S103:Yes)、トナーの色情報に対応した検出方式(「鏡面検出方式」または「拡散検出方式」)を選択して(S104)、トナーの色情報に対応したADCセンサSR2の諧調パッチ目標値を設定する(S105)。尚、ステップ103において、ICタグ140に記憶されたトナーの識別情報に検出方式(「鏡面検出方式」または「拡散検出方式」)が規定されている場合には、その読み取った検出方式を選択してもよい。
【0074】
そして、面積階調率が異なる複数Cinに対して形成されたトナーパッチの濃度を選択された検出方式で読み取って画像濃度調整を行う(S106)。
【0075】
ステップS103においてトナーの色情報に対応したADCセンサSR2の検出方式が規定されていない場合(S103:No)、操作情報部40から検出方式が入力されているか否か判断する(S107)。
【0076】
本実施形態においては、画像形成装置1の使用者又は保守作業者が操作者の画像形成装置に対する操作を受け付ける操作情報手段の一例としての操作情報部40を介してトナー種に応じた検出方式を選択してセットアップ動作を開始することができるようになっている。
【0077】
操作情報部40から検出方式が入力されて選択される場合(S107:Yes)、トナーの色情報に対応したADCセンサSR2の諧調パッチ目標値を設定(S105)して、面積階調率が異なる複数Cinに対して形成されたトナーパッチの濃度を選択された検出方式で読み取って画像濃度調整を行う(S106)。
【0078】
ステップS107において、操作情報部40から検出方式が入力されていないと判断された場合(S107:No)、トナーカートリッジTCは装着されたことがあるか否か判断される(S108)。
【0079】
トナーカートリッジTCが初めて装着されるトナー色である場合(S108:No)、作像エンジンを駆動して複数諧調(例えばCin0%~Cin100%の諧調)のトナーパッチ(パッチパターン:P[i])を中間転写ベルト51上に形成する(S109)。
【0080】
そして、複数諧調のトナーパッチを「鏡面検出方式」及び「拡散検出方式」の両方の検出方式で画像濃度測定を行い(S110)、それぞれの検出方式におけるADCセンサ出力値の変化率(感度)を算出する(S111)。
図11には、このときのADCセンサ出力値の変化率を模式的に示している。
図11の例によれば、「拡散検出方式」で検出した場合のADCセンサ出力値の変化率はΔB、「鏡面検出方式」で検出した場合のADCセンサ出力値の変化率はΔAであり、変化率ΔAが変化率ΔBに比べて大きくなっている。
【0081】
そして、「鏡面検出方式」で検出した場合のADCセンサ出力値の変化率と「拡散検出方式」で検出した場合のADCセンサ出力値の変化率を比較し(S112)、「鏡面検出方式」で検出した場合のADCセンサ出力値の変化率ΔAが大きい場合(S112:Yes)、検出方式として「鏡面検出方式」を選択(S113)し、ADCセンサ出力値の変化率ΔBが大きい場合(S112:No)、検出方式として「拡散検出方式」を選択する(S114)。
これにより、トナーの色情報に対する検出方式が規定されていない場合や、トナーの色情報がない新規のトナー種である場合であっても、トナー種類に対して適切な検出方式を選択することができる。
【0082】
図12には、ADCセンサ出力値の変化率を、Cinとして、ハイライト領域、中間調領域、高濃度領域のそれぞれの諧調領域ごとに分割して、それぞれの検出方式の変化率を算出する例を示している。
図12によれば、ハイライト領域における変化率は、それぞれΔA1、ΔB1、中間調領域における変化率は、それぞれΔA2、ΔB2、高濃度領域における変化率はそれぞれΔA3、ΔB3となっている。
【0083】
このような変化率の差は、
図11に示すように、Cin0%~Cin100%の入力面積諧調率全域での変化率から求めてもよく、
図12に示すように、例えば、そのトナー色で最も重視する諧調領域での変化率を選択して求めてもよい。
【0084】
このようにして選択した検出方式は、トナーの色情報と紐付けてシステム制御装置11の不揮発性メモリ(NVM)に記憶する(S115)。これにより、新たにトナーカートリッジTCが装着されたときに、画像濃度検出方式と諧調目標値の設定が行われ、所定の画像濃度調整を行うことができる。
【0085】
このような画像濃度検出方式として、トナーの色情報に応じて「鏡面検出方式」又は「拡散検出方式」のいずれかを選択する処理は、金、銀等の特色トナーに限らず、一般色であるY、M、C、Kトナーを含めて作像エンジンとして、装着エンジン位置が変更される場合にも適用することができる。
【0086】
本実施形態に係る画像形成装置1は、特性の異なるトナー毎に「鏡面検出方式」及び「拡散検出方式」の画像濃度検出方式を備え、装着されたトナーカートリッジに予め記憶されたトナーの色情報に対応して、「鏡面検出方式」又は「拡散検出方式」のいずれかの画像濃度検出方式を選択する。この画像濃度検知方式は、作像エンジンの位置を入れ替えても、トナーの色情報に応じて検出方式が選択される。
【0087】
トナーの情報に対応した検知方式が規定されていない場合であっても、トナーカートリッジTCの装着時にセットアップ動作を実行し、ADCセンサ出力値の変化率の差から、トナー種に適合した検知方式を選択する。このように、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、トナー種と作像エンジンの装着位置に拘わらず、精度の高い画像濃度調整を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・画像形成装置
10・・・画像形成部
11・・・システム制御装置
110・・・印刷制御部
111・・・トナー濃度検出部
112・・・画像濃度検出部
113・・・検出方式選択部
114・・・トナー補給制御部
12・・・露光装置
13・・・感光体ユニット
14・・・現像装置
15・・・転写装置
17・・・定着装置
18・・・トナー供給装置
20・・・給紙装置
30・・・排紙部
40・・・操作情報部
50・・・画像処理部
TC・・・トナーカートリッジ
140・・・ICタグ
SR1・・・ATCセンサ
SR2・・・ADCセンサ
SR2-1・・・発光部
SR2-2・・・第1の受光部
SR2-3・・・第2の受光部
SR2-4・・・光学系