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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】モータ機械装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H02K5/173 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019169480
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021048689
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】坂田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 和博
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159480(WO,A1)
【文献】特開2017-28830(JP,A)
【文献】特開2012-80731(JP,A)
【文献】特許第3306870(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸を有するシャフトおよび前記シャフトに固定されるロータ本体を有するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を備えるモータと、
前記シャフトの下部に連結されるギヤ装置と、
を備えるモータ機械装置であって、
前記ロータ本体の上側において前記シャフトを支持する第1ベアリングと、
前記ロータ本体の下側において前記シャフトを支持する第2ベアリングと、
前記モータを収容し、前記ロータ本体の下側において前記第2ベアリングを保持するハウジングと、
前記ハウジングの上側の開口を塞ぐカバー部材と、
前記ロータ本体の上側且つ前記カバー部材の下側に位置し前記第1ベアリングを保持する金属製のベアリングホルダと、
を備え、
前記ベアリングホルダは、
前記第1ベアリングを保持し軸方向に延びる内側筒部と、
前記内側筒部の径方向外側に位置し軸方向に延びる外側筒部と、
前記内側筒部の上端部と前記外側筒部の上端部とを連結する連結部と、
前記外側筒部の下端部から径方向外側に広がるフランジ部と、
を有し、
前記ベアリングホルダは、前記フランジ部において前記ハウジングの上側の開口部内にネジ締結され、
前記ベアリングホルダと前記ハウジングとのネジ締結部は、軸方向において、前記第1ベアリングの上端と、前記第2ベアリングの下端との間に位置する、
モータ機械装置。
【請求項2】
前記ベアリングホルダは、前記内側筒部の外周面と前記連結部の下側を向く面とに接続されるリブを有する、
請求項1に記載のモータ機械装置。
【請求項3】
前記ベアリングホルダの連結部は、
前記内側筒部の上端部から径方向外側に広がる内周板部と、
前記内周板部の外周端から上側に延びる中間筒部と、
前記中間筒部の上端から径方向外側に広がる外周板部と、
を有する、
請求項1または2に記載のモータ機械装置。
【請求項4】
前記ベアリングホルダは、前記内筒部の外周面と前記内周板部の下側を向く面とに接続されるリブを有する、
請求項3に記載のモータ機械装置。
【請求項5】
前記ベアリングホルダは、前記連結部を軸方向に貫通する複数の貫通孔を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ機械装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記貫通孔は、前記外側筒部を径方向に貫通する貫通部を含
前記フランジ部は、前記外側筒部の前記貫通部の径方向外側に、前記フランジ部の他の部位よりも肉厚が大きい厚肉部を有する、
請求項5に記載のモータ機械装置。
【請求項7】
前記モータに電気的に接続されるインバータ基板を備え、
前記ベアリングホルダは、前記インバータ基板の下側に位置する、
請求項1または5に記載のモータ機械装置。
【請求項8】
前記ギヤ装置は、ポンプ機構である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ機械装置。
【請求項9】
前記ギヤ装置は、減速機構である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される電動オイルポンプ、電動アクチュエータなどのモータ機械装置には、大きな振動が加わった場合でも破損しないように、剛性の高い部品が使用される。特許文献1には、各部に金属製の部品が使用された電動オイルポンプが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5915082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ハウジング、軸受保持部材などの筐体部分を単に金属製としただけでは、モータ機械装置に大きな振動が加わったときに、内部部品の破損を十分に抑制できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、上下方向に延びる中心軸を有するシャフトおよび前記シャフトに固定されるロータ本体を有するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を備えるモータと、前記シャフトの下部に連結されるギヤ装置と、を備えるモータ機械装置が提供される。前記ロータ本体の上側において前記シャフトを支持する第1ベアリングと、前記ロータ本体の下側において前記シャフトを支持する第2ベアリングと、前記モータを収容し、前記ロータ本体の下側において前記第2ベアリングを保持するハウジングと、前記ロータ本体の上側に位置し前記第1ベアリングを保持する金属製のベアリングホルダと、を備える。前記ベアリングホルダは、前記第1ベアリングを保持し軸方向に延びる内側筒部と、前記内側筒部の径方向外側に位置し軸方向に延びる外側筒部と、前記内側筒部の上端部と前記外側筒部の上端部とを連結する連結部と、前記外側筒部の下端部から径方向外側に広がるフランジ部と、を有する。前記ベアリングホルダは、前記フランジ部において前記ハウジングにネジ締結される。前記ベアリングホルダと前記ハウジングとのネジ締結部は、軸方向において、前記第1ベアリングの上端と、前記第2ベアリングの下端との間に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、大きな振動が加わったときにも内部部品の破損を抑制できるモータ機械装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の電動ポンプの断面図である。
図2図2は、実施形態の電動ポンプの分解斜視図である。
図3図3は、ベアリングホルダを上側から見た斜視図である。
図4図4は、ベアリングホルダを下側から見た斜視図である。
図5図5は、ベアリングホルダの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のモータ機械装置の一実施形態であるモータ20を備える電動ポンプ1について、図面を参照して説明する。
図面には、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸Jの軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図においてX軸方向およびY軸方向は、Z軸方向と直交する水平方向である。X軸方向とY軸方向とは、互いに直交する方向である。
【0009】
なお、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0010】
本実施形態の電動ポンプ1は、水、オイルなどの流体を吸入して、吐出する。電動ポンプ1は、例えば、流体を流路に循環させる機能を有する。流体がオイルの場合、電動ポンプ1は、電動オイルポンプと言い換えてもよい。特に図示しないが、電動ポンプ1は、例えば車両の駆動装置に搭載される。つまり電動ポンプ1は、車両に搭載される。
【0011】
図1に示すように、電動ポンプ1は、モータユニット10と、ポンプ機構90と、を備える。モータユニット10は、ハウジング11と、モータ20と、インバータ基板40と、バスバーユニット80と、を備える。ポンプ機構90は、ポンプ部90aと、ポンプカバー95と、を備える。すなわち、電動ポンプ1は、モータ20と、ポンプ機構90とを備える。ポンプ機構90は、圧送される流体がオイルである場合には、オイルポンプ機構である。
【0012】
ハウジング11は、モータ20と、バスバーユニット80と、インバータ基板40とを収容する。ハウジング11は、ハウジング本体12と、カバー13と、を有する。ハウジング本体12は、モータ20を収容する。カバー13は、ハウジング本体12の上側の端部に締結される。カバー13は、ハウジング本体12の上側の開口を塞ぐ。
【0013】
本実施形態では、ハウジング本体12は、モータ20とともに、ポンプ部90aを収容する。つまりハウジング11は、モータハウジングとポンプハウジングとを兼ねる。本実施形態によれば、モータ20およびポンプ部90aがハウジング本体12に収容されるので、電動ポンプ1の構造を簡素化できる。したがって本実施形態の電動ポンプ1は、組み立てが容易となる。
【0014】
ハウジング本体12は、金属製である。ハウジング本体12は、単一の部材により構成される。ハウジング本体12は、収容筒部12aと、鍔部12bと、ポンプ収容部12cと、ベアリング保持筒部12dと、底壁部12eと、を有する。
【0015】
収容筒部12aは、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、収容筒部12aが円筒状である。収容筒部12aには、モータ20が収容される。鍔部12bは、収容筒部12aの上側の端部における外周面から径方向外側に突出する。鍔部12bは、上側を向く面に、上側に開口して軸方向に延びるネジ穴を有する。鍔部12bのネジ穴には、カバー13をハウジング11に固定する締結ネジ18が締め込まれる。
【0016】
ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの下側の端部に配置される。ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの径方向内側に配置される。ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの下側の開口を塞ぐ底壁部12eに支持される。底壁部12eは、板面が軸方向を向く板状である。本実施形態では、底壁部12eは、円環板状である。ポンプ収容部12cは、上部に頂壁を有する筒状である。ポンプ収容部12cは、底壁部12eの内周端から上側へ凹むポンプ収容穴12fを有する。ポンプ収容穴12fに、ポンプ部90aが収容される。ポンプ収容穴12fは、軸方向から見て丸穴状である。ポンプ収容穴12fは、軸方向から見て、底壁部12e中心部に配置される。
【0017】
ベアリング保持筒部12dは、ポンプ収容部12cの頂壁から上側に延びる筒状である。ベアリング保持筒部12dは、モータ20の後述する第2ベアリング37を保持する。第2ベアリング37は、モータ20において軸方向に互いに間隔をあけて配置される複数のベアリングのうち、後述するロータコア23の下側に位置するベアリングである。第2ベアリング37は、ベアリング保持筒部12dの内周面に嵌合する。
【0018】
ベアリング保持筒部12dは、第2ベアリング37とともにオイルシール32を保持する。オイルシール32は、中心軸Jを中心とする環状である。オイルシール32は、ベアリング保持筒部12d内において、第2ベアリング37の下側に位置する。オイルシール32は、シャフト22の外周面に接触し、ポンプ部90aからモータ20へのオイルの侵入を抑制する。オイルシール32は、必要に応じて配置される。
【0019】
ベアリング保持筒部12dの上側に、モータ20が固定される。
モータ20は、ロータ21と、ステータ26と、第1ベアリング36と、第2ベアリング37と、を有する。ロータ21は、シャフト22と、シャフト22に固定されるロータ本体21aとを有する。ロータ本体21aは、ロータコア23と、マグネット24と、マグネットホルダ25と、を有する。
【0020】
シャフト22は、中心軸Jに沿って延びる。シャフト22は、中心軸Jを中心として上下方向に延びる。シャフト22は、中心軸Jを中心として回転する。シャフト22は、第1ベアリング36および第2ベアリング37により中心軸J回りに回転自在に支持される。つまり第1ベアリング36および第2ベアリング37は、シャフト22を回転自在に支持する。第1ベアリング36および第2ベアリング37は、例えばボールベアリングである。第1ベアリング36は、シャフト22のロータコア23よりも上側に位置する部分を支持する。第2ベアリング37は、シャフト22のロータコア23よりも下側に位置する部分を支持する。
【0021】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、中心軸Jを中心として周方向に延びる環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。
【0022】
マグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に配置される。マグネット24は、複数設けられる。複数のマグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に、互いに周方向に間隔をあけて配置される。なお、マグネット24は、例えば1つの円筒状のリングマグネットでもよい。
【0023】
マグネットホルダ25は、ロータコア23およびマグネット24を内側に収容するカバー部材である。マグネットホルダ25は、ロータコア23に対してマグネット24を固定する。マグネットホルダ25は、ロータコア23の径方向外側を向く面および上側を向く面に配置される。マグネットホルダ25は、マグネット24を径方向外側および上側から押さえる。マグネットホルダ25は、マグネット24を径方向外側から押さえる円筒状の胴部分と、中心軸Jを中心とする環状でありマグネット24の上側に位置する蓋部分と、を有する。
【0024】
ステータ26は、ロータ21の径方向外側に配置される。ステータ26は、ロータ21と径方向に隙間を空けて対向する。ステータ26は、周方向の全周にわたって、ロータ21を径方向外側から囲う。ステータ26は、ステータコア27と、インシュレータ28と、複数のコイル29と、を有する。
【0025】
ステータコア27は、中心軸Jを中心とする円環状のコアバック27aと、コアバック27aの内周端から径方向内側へ延びる複数のティース27bとを有する。ステータコア27は、本実施形態では、平面視で概ねT形の複数の電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板である。ステータコア27は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア27は、ロータ21の径方向外側においてロータ21を囲む。ステータコア27は、ロータ21の径方向外側に配置されて、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向する。
【0026】
コアバック27aの径方向外側面は、収容筒部12aの内周面に固定される。複数のティース27bは、コアバック27aの径方向内側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。ティース27bの径方向内側面は、マグネット24の径方向外側面に、径方向外側から隙間をあけて対向する。
【0027】
インシュレータ28は、ステータコア27のティース27bに装着される。インシュレータ28は、ティース27bを覆う部分を有する。インシュレータ28の材料は、絶縁性樹脂である。コイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に装着される。複数のコイル29は、各々のティース27bにインシュレータ28を介して巻線が巻き回されることにより、それぞれ構成される。
【0028】
コイル29のワイヤ端は、ステータ26の上側に引き出される。コイル29のワイヤ端は、バスバーユニット80またはインバータ基板40に接続される。バスバーユニット80は、図1および図2に示すように、複数のバスバー81と、バスバー81を保持する樹脂製のバスバーホルダ82と、バスバーホルダ82の上面から上側に突出する樹脂製のコイルサポート83と、を有する。本実施形態の場合、バスバーホルダ82とコイルサポート83は、単一の樹脂成形品の一部である。
【0029】
本実施形態の場合、一部のコイル29のワイヤ端は、図1に示すように、バスバー81に接続される。他の一部のコイル29のワイヤ端は、図2に示すように、コイルサポート83に支持される。コイルサポート83は、軸方向に沿って延びる筒状である。コイルサポート83の貫通孔にワイヤ端が挿入される。ワイヤ端の先端部29aは、コイルサポート83から上側に突出し、インバータ基板40に接続される。本実施形態の場合、ワイヤ端の先端部29aとコイルサポート83の貫通孔との隙間に接着剤が塗布される。先端部29aは、接着剤によりコイルサポート83に固定される。この構成によれば、コイルサポート83の上側に突出する先端部29aが軸方向に正確に位置決めされるため、先端部29aとインバータ基板40との接続を容易かつ確実に行える。
【0030】
バスバーユニット80の上側に、ベアリングホルダ100が配置される。ベアリングホルダ100の上側に、インバータ基板40が配置される。ハウジング本体12の上側の開口に、インバータ基板40を上側から覆うカバー13が装着される。
【0031】
ベアリングホルダ100は、図1から図5に示すように、第1ベアリング36を保持し軸方向に延びる内側筒部102と、内側筒部102の径方向外側に位置し軸方向に延びる外側筒部103と、内側筒部102の上端部と外側筒部の上端部とを連結する連結部120と、外側筒部103の下端部から径方向外側に広がるフランジ部104と、を有する。
ベアリングホルダ100は、軸方向から見た中央部に、第1ベアリング36を保持する。ベアリングホルダ100の外周部は、ハウジング本体12の上側の開口部内にネジ締結される。
【0032】
内側筒部102は、軸方向に延びる円筒状である。ベアリングホルダ100は、内側筒部102の上端から径方向内側に広がる頂壁部120dを有する。頂壁部120dは軸方向から見て円環状である。内側筒部102の内周面に、第1ベアリング36の外輪が挿入される。
【0033】
図1に示すように、頂壁部120dと第1ベアリング36の間に、ウェーブワッシャ57が配置される。ウェーブワッシャ57は、中心軸Jを中心とする環状である。ウェーブワッシャ57は、第1ベアリング36の外輪の上面を下側に押す。ウェーブワッシャ57は、第1ベアリング36および第2ベアリング37に対して与圧を付与する。
【0034】
連結部120は、頂壁部120dに連続して径方向外側に広がり、外側筒部103の上端部に接続する板状部である。連結部120は、図4および図5に示すように、内側筒部102の上端部から径方向外側に広がる内周板部120aと、内周板部120aの外周端から上側に延びる中間筒部120bと、中間筒部120bの上端から径方向外側に広がる外周板部120cと、を有する。この構成によれば、連結部120が径方向に対して屈曲する形状を有するため、ベアリングホルダ100の強度が向上し、第1ベアリング36を安定に支持できる。
【0035】
ベアリングホルダ100は、図4に示すように、内側筒部102の外周面102aと、内周板部120aの下側を向く面121aとに接続される複数のリブ105を有する。すなわち、ベアリングホルダ100は、内側筒部102の外周面102aと連結部120の下側を向く面121とに接続される複数のリブ105を有する。複数のリブ105は、中間筒部120bの外周面を通って外周板部120cの下側を向く面まで延びていてもよい。
【0036】
本実施形態のベアリングホルダ100は、周方向に等間隔に並ぶ8枚の三角形状のリブ105を有する。複数のリブ105により、内側筒部102および内周板部120aの強度を高めることができる。この構成によれば、振動時にも内側筒部102が変形したり、軸方向に対して傾いたりしにくくなる。これにより、内側筒部102から第1ベアリング36に対して力が作用しにくくなる。したがって、ベアリングホルダ100によって第1ベアリング36をより安定に保持できる。
【0037】
フランジ部104は、外側筒部103の外周側に位置する第1フランジ104a、第2フランジ104bおよび第3フランジ104cからなる。第1フランジ104a、第2フランジ104bおよび第3フランジ104cは、それぞれ、フランジ部104を軸方向に貫通する複数のネジ挿入孔4を有する。
【0038】
ベアリングホルダ100は、図1および図2に示すように、ネジ挿入孔4に挿入されるネジ19により、ハウジング本体12Aにネジ締結される。すなわち、ベアリングホルダ100は、ハウジング11にネジ締結される。ネジ19が締め込まれる位置において、フランジ部104の下面と、ハウジング本体12Aの上側を向く面とが接触する。このフランジ部104とハウジング本体12Aとの接触部が、ベアリングホルダ100とハウジング11とのネジ締結部19Aである。なお、図1に示すネジ19は、説明のために表示した。
【0039】
ネジ締結部19Aは、図1に示すように、軸方向において、第1ベアリング36の上端と、第2ベアリング37の下端との間に位置する。本実施形態では、ベアリングホルダ100において、内側筒部102の径方向外側に外側筒部103が配置されており、外側筒部103の下端部にフランジ部104が位置する構成により、内側筒部102に保持される第1ベアリング36の上面よりも下側にネジ締結部19Aが配置される。
【0040】
本実施形態では、内側筒部102と外側筒部103とを接続する連結部120は、ベアリングホルダ100の上部側に位置する。この構成により、ベアリングホルダ100は、その下面側に、内側筒部102と外側筒部103と連結部120とに囲まれる円環状の溝を有する。本実施形態の電動ポンプ1では、上記円環状の溝にバスバーユニット80が収容され、バスバー81とコイル29のワイヤ端とが接続される。本実施形態によれば、ハウジング11の軸方向への大型化を抑制しつつ、バスバーユニット80とベアリングホルダ100との干渉を回避し、ネジ締結部19Aを第1ベアリング36の側方に配置できる。
【0041】
ネジ締結部19Aは、ベアリングホルダ100を介して第1ベアリング36およびシャフト22を支持する部位である。電動ポンプ1に振動が加わった場合、第1ベアリング36は、ネジ締結部19Aを支点とするベアリングホルダ100の振動によって振動させられる。本実施形態では、第1ベアリング36の上面よりも下側にネジ締結部19Aが位置するため、ネジ締結部19Aの軸方向位置が、第1ベアリング36に近くなる。これにより、ネジ締結部19Aを支点とする第1ベアリング36の振動の振幅を小さくでき、第1ベアリング36に作用する力を低減できる。
【0042】
また、振動時には、重量物であるロータ21およびステータ26の振動が全体に大きく作用する。本実施形態では、ネジ締結部19Aの軸方向位置が、ロータ21およびステータ26にも近いため、ネジ締結部19A自体の振動の振幅も小さくなる。
以上から、本実施形態の電動ポンプ1によれば、振動が加わったときに第1ベアリング36にかかる力が低減される。したがって、大きな振動が加わったときにも、内部部品である第1ベアリング36の破損を抑制することができる。
【0043】
本実施形態では、ベアリングホルダ100は、ダイカスト部品である。ダイカスト部品のベアリングホルダ100は、板金部品と比較して厚肉であり、板金製のベアリングホルダと比較して高い剛性が得られる。これにより、第1ベアリング36が支持するシャフト22と、ハウジング本体12内に嵌合するステータ26との同軸度が確保されて、モータ20の性能が安定する。また、ベアリングホルダ100の構造が簡素化される。
【0044】
インバータ基板40は、モータ20と電気的に接続される。インバータ基板40は、外部電源から供給される電力を、モータ20のステータ26に供給する。インバータ基板40は、モータ20に供給する電流を制御する。
【0045】
インバータ基板40は、平面視で多角形状のプリント基板と、プリント基板の上面側に実装される複数の電子素子と、プリント基板の下面側に実装される複数のコンデンサ47と、を有する。複数の電子素子は、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)、プリドライバおよび低損失型リニアレギュレータ(Low Drop-Out regulator,LDO)などである。
【0046】
カバー13は、金属製である。カバー13は、インバータ基板40を上側から覆う。カバー13の下面は、軸方向において、インバータ基板40の上面と隙間を空けて対向する。カバー13は、頂壁を有する筒状である。本実施形態の場合、カバー13の内側の凹部に、インバータ基板40のうちのプリント基板部分が収容される。インバータ基板40に実装される一部の電子部品は、カバー13の凹部から下側へ突出する。本実施形態では、2つのコンデンサ47A、47Bが、カバー13の凹部から下側へ突出する。
【0047】
ベアリングホルダ100は、連結部120を軸方向に貫通する複数の貫通孔100a、100b、100cを有する。貫通孔100a~100cは、いずれも、外周板部120cを軸方向に貫通する。
ベアリングホルダ100の連結部120は、図1および図2に示すように、インバータ基板40の板面と軸方向に対向する。連結部120が貫通孔100a~100cを有することで、インバータ基板40の下面に位置する実装部品、およびコイル29のワイヤ端を、貫通孔100a~100cに挿入できる。本実施形態の場合、インバータ基板40から下側に突出するコンデンサ47A、47Bが、貫通孔100a、100bに挿入される。貫通孔100cには、バスバーユニット80のコイルサポート83が挿入され、コイル29のワイヤ端が上側へ引き出される。
【0048】
コンデンサ47Aは、図1に示すように、ベアリングホルダ100の貫通孔100aと、バスバーホルダ82の貫通孔82aに挿入される。コンデンサ47Bは、ベアリングホルダ100の貫通孔100bに挿入される。この構成によれば、高さのあるコンデンサ47A、47Bを、インバータ基板40とステータ26のとの間の空間に配置できる。コンデンサ47A、47Bと、ベアリングホルダ100およびバスバーユニット80とが径方向から見て重なるので、電動ポンプ1の外形を軸方向において小型化できる。
【0049】
さらに、貫通孔100a、100bは、外側筒部103の上部側を径方向に貫通する貫通部103a、103bをそれぞれ含む。すなわち、貫通孔100aおよび貫通孔100bは、ベアリングホルダ100の上面および側面に開口する。この構成によれば、貫通孔100a、100bよりも大きい平面領域に、大型の実装部品等を配置可能となる。これにより、ハウジング11内のスペースを有効に利用でき、電動ポンプ1を軸方向に小型化できる。
【0050】
また、本実施形態のベアリングホルダ100では、フランジ部104は、外側筒部103の貫通部103aの径方向外側に、フランジ部104の他の部位よりも肉厚が大きい厚肉部104Aを有する。またフランジ部104は、外側筒部103の貫通部103bの径方向外側に、フランジ部104の他の部位よりも肉厚が大きい厚肉部104Bを有する。
この構成によれば、外側筒部103の一部が切り欠かれる貫通部103a、103bに厚肉部104A、104Bが配置されるので、貫通部103a、103bが設けられることによるベアリングホルダ100の強度低下を抑制できる。
【0051】
ポンプ部90aは、モータ20の動力により駆動される。ポンプ部90aは、オイル等の流体を吸入し、吐出する。ポンプ部90aは、モータ20の軸方向他方側に配置される。ポンプ部90aは、電動ポンプ1の下側の部分に位置する。特に図示しないが、ポンプ部90aは、車両の駆動装置等に設けられるオイル等の流体の流路と繋がる。このため、電動ポンプ1においてポンプ部90aが位置する軸方向他方側の部分は、車両の部材に固定される。
【0052】
本実施形態では、ポンプ部90aが、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ部90aは、インナーロータ91と、アウターロータ92と、を有する。インナーロータ91およびアウターロータ92は、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ91は、シャフト22の下側の端部に固定される。なお、インナーロータ91とシャフト22とは、中心軸J回りの相対的な回動が、所定範囲において許容されてもよい。アウターロータ92は、インナーロータ91の径方向外側に配置される。アウターロータ92は、インナーロータ91を径方向外側から、周方向の全周にわたって囲う。
【0053】
ポンプカバー95は、ハウジング本体12の下側の端部に固定されて、ポンプ部90aを下側から覆う。つまりポンプカバー95は、ハウジング11に固定されてポンプ部90aを覆う。ポンプカバー95は、図示しない車両の部材と固定される。
ポンプカバー95の軸方向他方側を向く面が、車両の部材と接触する。ポンプカバー95は、カバー部96と、脚部97と、を有する。
【0054】
カバー部96は、軸方向から見てポンプ部90aと重なって配置される。カバー部96は、ポンプ部90aを軸方向他方側から覆う。カバー部96は、吸入口96aと、吐出口96bと、を有する。吸入口96aおよび吐出口96bは、それぞれポンプ部90aと繋がる。吸入口96aは、カバー部96を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。吸入口96aは、ポンプ部90aに流体を吸入させる。すなわち、ポンプ部90aは、吸入口96aを通して装置外部から流体を吸入する。吐出口96bは、カバー部96を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。吐出口96bは、ポンプ部90aから流体を吐出させる。すなわち、ポンプ部90aは、吐出口96bを通して装置外部に流体を吐出する。本実施形態では、軸方向から見て、吸入口96aと吐出口96bとが、突出方向に並ぶ。
【0055】
以上に説明した本実施形態の電動ポンプ1は、オイルポンプまたはウォーターポンプとして用いることができる。本実施形態によれば、ベアリングホルダ100によって第1ベアリング36が安定保持されるので、振動よる破損が抑制された信頼性に優れる電動ポンプ1が提供される。
【0056】
本実施形態では、ギヤ装置としてポンプ機構90を備えるモータ機械装置について説明したが、ギヤ装置はポンプ機構90に限定されない。例えば、本発明のモータ機械装置は、ギヤ装置として減速機構を備える電動アクチュエータとして構成することもできる。減速機構の種類は特に限定されず、遊星歯車減速機、ハイポサイクロイド減速機、波動歯車減速機、ピン歯車減速機、ローラカム減速機などを、単独または組み合わせて用いることができる。
【0057】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0058】
11…ハウジング、19…ネジ、19A…ネジ締結部、20…モータ、21…ロータ、21a…ロータ本体、22…シャフト、26…ステータ、36…第1ベアリング、37…第2ベアリング、82a,100a,100b,100c…貫通孔、90…ポンプ機構、100…ベアリングホルダ、102…内側筒部、102a…外周面、103…外側筒部、103a,103b…貫通部、104…フランジ部、104A,104B…厚肉部、105…リブ、120…連結部、120a…内周板部、120b…中間筒部、120c…外周板部、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5