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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
G03G15/08 390Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019178704
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056350
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】奥野 太一郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219411(JP,A)
【文献】特開2000-242080(JP,A)
【文献】特開2003-307924(JP,A)
【文献】特開2007-240956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0298848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーおよび磁性キャリアからなる現像剤を収容する収容室を有する現像ハウジングと、
第1回転軸のまわりに回転して前記現像剤を表面に載せて回転方向に運び少なくとも一部領域が該第1回転軸よりも下方にある現像領域において前記現像ハウジングから露出して像保持部に対面し該像保持部上の静電潜像を該現像剤中のトナーで現像する現像部と、
前記収容室内に配置され前記第1回転軸よりも上方にある第2回転軸のまわりに回転して前記現像剤を該第2回転軸方向に搬送する、前記現像部よりも小径の搬送部とを備え、
前記収容室の、前記現像部表面が前記搬送部に近づく向きに進む現像剤持ち上げ側の内壁面の一部が、該現像部の、該搬送部に近づく向きに進む現像剤持ち上げ領域に接するとともに該現像部と該搬送部との対面領域を通過することなく該搬送部に接する第1平面よりも、前記第1回転軸と前記第2回転軸とを含む第2平面側に食い込んでいることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤持ち上げ側において前記現像部に接して前記第2平面と平行に広がる第3平面と、前記現像剤持ち上げ側において前記搬送部に接して前記第2平面と平行に広がる第4平面とのうちの、前記第2平面に近い側にある第5平面よりも、前記収容室の前記現像剤持ち上げ側の内壁面の一部が前記第2平面側に食い込んでいることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第4平面が前記第5平面であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記収容室の前記現像剤持ち上げ側の壁面が、前記現像部に対面して広がる第1の弧形状壁面と、前記搬送部に対面して広がる第2の弧形状壁面と、前記第2平面側に食い込んでいる部分における、該第1の弧形状壁面と該第2の弧形状壁面とを接続する接続壁面とを有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
現像剤持ち上げ側が斜め下向きの前記第2平面となるように、前記第1回転軸が前記第2回転軸に対し斜め下に位置することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像部が、円筒形を有し前記現像剤を表面に載せて回転する筒部と、該筒部内に配置された、該筒部の表面に載って持ち上げられてきた前記現像剤を該筒部から引き離すピックオフ極を備えた固定磁石とを備え、
前記ピックオフ極が、水平よりも上側を向いていることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1からのうちのいずれか1項に記載の現像装置を備え、該現像装置により前記像保持部上の静電潜像の現像により形成されたトナー像を用紙に転写して定着することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーカートリッジ内のトナーを現像装置に供給する供給路を短縮して小型化を図るために、現像装置を像保持部の上方に配置することが考えられている。ここで、像保持部に対する現像装置の配置位置にかかわらず、像保持部に近接した現像領域には十分に撹拌された後の現像剤を供給する必要がある。ところが、現像装置を像保持部の上方に配置すると、現像領域が下方に位置するため、その現像領域に供給して現像に供した後の現像剤を上方に持ち上げる必要が生じる。この持ち上げが必要なため、現像装置の構造によっては、現像剤がうまく循環せずに現像剤溜りが形成され、これが画像欠陥につながるおそれがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、像保持部の上方に配置した現像装置が開示されている。この特許文献1の現像装置の場合、複数のロールを使って現像剤を上方に持ち上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-242080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、像保持部の回転軸よりも上方に配置しても、複数のロールを使って現像剤を上方に持ち上げてる特許文献1の構造と比べ簡易な構造で画像欠陥のおそれを抑えた現像装置、およびその現像装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
トナーおよび磁性キャリアからなる現像剤を収容する収容室を有する現像ハウジングと、
第1回転軸のまわりに回転して前記現像剤を表面に載せて回転方向に運び少なくとも一部領域が該第1回転軸よりも下方にある現像領域において前記現像ハウジングから露出して像保持部に対面し該像保持部上の静電潜像を該現像剤中のトナーで現像する現像部と、
前記収容室内に配置され前記第1回転軸よりも上方にある第2回転軸のまわりに回転して前記現像剤を該第2回転軸方向に搬送する、前記現像部よりも小径の搬送部とを備え、
前記収容室の、前記現像部表面が前記搬送部に近づく向きに進む現像剤持ち上げ側の内壁面の一部が、該現像部の、該搬送部に近づく向きに進む現像剤持ち上げ領域に接するとともに該現像部と該搬送部との対面領域を通過することなく該搬送部に接する第1平面よりも、前記第1回転軸と前記第2回転軸とを含む第2平面側に食い込んでいることを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記現像剤持ち上げ側において前記現像部に接して前記第2平面と平行に広がる第3平面と、前記現像剤持ち上げ側において前記搬送部に接して前記第2平面と平行に広がる第4平面とのうちの、前記第2平面に近い側にある第5平面よりも、前記収容室の前記現像剤持ち上げ側の内壁面の一部が前記第2平面側に食い込んでいることを特徴とする請求項1に記載の現像装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記第4平面が前記第5平面であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記収容室の前記現像剤持ち上げ側の壁面が、前記現像部に対面して広がる第1の弧形状壁面と、前記搬送部に対面して広がる第2の弧形状壁面と、前記第2平面側に食い込んでいる部分における、該第1の弧形状壁面と該第2の弧形状壁面とを接続する接続壁面とを有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の現像装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、現像剤持ち上げ側が斜め下向きの前記第2平面となるように、前記第1回転軸が前記第2回転軸に対し斜め下に位置することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の現像装置である。
【0012】
請求項に係る発明は、
前記現像部が、円筒形を有し前記現像剤を表面に載せて回転する筒部と、該筒部内に配置された、該筒部の表面に載って持ち上げられてきた前記現像剤を該筒部から引き離すピックオフ極を備えた固定磁石とを備え、
前記ピックオフ極が、水平よりも上側を向いていることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか1項に記載の現像装置である。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1からのうちのいずれか1項に記載の現像装置を備え、該現像装置により前記像保持部上の静電潜像の現像により形成されたトナー像を用紙に転写して定着することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の現像装置および請求項の画像形成装置によれば、像保持部の回転軸よりも上方に配置しても、特許文献1の構造と比べ簡易な構造で画像欠陥のおそれが抑えられる。
また、請求項1の現像装置および請求項7の画像形成装置によれば、搬送部が現像部よりも大径あるいは現像部と同径である場合と比べ、現像部により持ち上げられた現像剤が搬送部に受け渡されやすい。
【0015】
請求項2の現像装置によれば、収容室の現像剤持ち上げ側の壁面が、上記の第5平面よりも第2平面側に食い込んでいない場合と比べ、画像欠陥のおそれがさらに抑えられる。
【0016】
請求項3の現像装置によれば、第3平面が第5平面である場合と比べ、現像部により持ち上げられた現像剤が搬送部に受け渡されやすい。
【0017】
請求項4の現像装置によれば、弧形状以外の形状の壁面である場合と比べ、現像剤の滞留が抑えられる。
【0018】
請求項5の現像装置によれば、第2平面が真横を向いている場合あるいは現像剤持ち上げ側が斜め上向きの場合と比べ、現像に使われた後の現像剤がそのまま再度現像領域に供給されるおそれが抑えられる。
【0020】
請求項の現像装置によれば、ピックオフ極が、水平あるいは下側を向いている場合と比べ、画像欠陥のおそれが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としての画像形成装置の概要を示した模式図である。
図2図1の画像形成装置を構成する現像器の拡大模式図である。
図3】従来の現像器の配置例(A)と、その従来の現像器を図1の画像形成装置に適用するために上下逆向きとした配置例(B)を示した図である。
図4図2にも示した本実施形態の第1例としての現像器の模式図である。
図5】本実施形態の第2例としての現像器の模式図である。
図6図2にも示した本実施形態の第1例としての現像器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置の概要を示した模式図である。この画像形成装置には、本発明の一実施形態としての現像装置が含まれている。
【0024】
この画像形成装置10は、4つの画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kを備えている。ここで、Y,M,C,Kは、トナーの色を表している。Y,M,C,Kは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、サイアン、黒である。以下の説明では、トナーの色には関係しない共通の説明については、Y,M,C,Kの符号を省略して、画像形成エンジン20と表現する。画像形成エンジン20以外の要素についても同様である。
【0025】
各画像形成エンジン20は、矢印Aの向きに回転する像保持体30を備えている。また、各画像形成エンジン20は、像保持体30の周りに、帯電器40、露光器50、現像器60、クリーナ70を備えている。また、以下に説明する中間転写ベルト80を挟んで像保持体30と対向する位置には、1次転写器81が備えられている。ここで、現像器60は、本発明の現像装置の一例に相当する。
【0026】
中間転写ベルト80は、複数のローラ82,83,84に巻き掛けられた無端のベルトであって、4つの像保持体30に沿って進む循環移動経路上を矢印B方向に循環移動する。また、ここには、中間転写ベルト80をクリーニングするクリーナ85も備えられている。
【0027】
さらに、この画像形成装置10には、2次転写器86、定着器87、および排紙トレイ88が備えられている。さらに、各画像形成エンジン20の直ぐ上には、トナーカートリッジ90が備えられている。
【0028】
ここで、各像保持体30は、帯電器40により帯電され、露光器50による露光により静電潜像が形成される。その静電潜像は現像器60内の、トナーと磁性キャリアとを有する現像剤中のトナーで現像される。そして、その現像により像保持体30上に形成されたトナー像は、1次転写器81の作用により中間転写ベルト80上に転写される。ここには、4つの画像形成エンジン30が備えられており、各画像形成エンジン30に備えられている各像保持体30上に形成された各色トナーによるトナー像は、中間転写ベルト80の移動にしたがって順次に重なるように転写される。像保持体80上の転写後の残存トナーはクリーナ70により取り除かれる。現像により現像器60内のトナーが減ると、トナーカートリッジ90からトナーが補給される。トナーカートリッジ90は着脱式となっており、トナーカートリッジ90が空になると新たなトナーカートリッジ90に交換される。
【0029】
不図示の用紙トレイから用紙Pが取り出され、中間転写ベルト80上に転写されたトナー像が2次転写器86に対面する位置に到達するのとタイミングを合わせて、その同じ位置に用紙Pが搬送される。そして、2次転写器86の作用により、中間転写ベルト80上に転写されたトナー像が用紙P上に転写される。
【0030】
トナー像の転写を受けた用紙Pは、さらに搬送され、定着器87により加熱および加圧されて、用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。これにより、用紙P上には、定着されたトナー像からなる画像が形成される。この画像が形成されたトナー像は、さらに搬送されて、排紙トレイ88上に排出される。
【0031】
ここで、本実施形態の画像形成装置10の場合、現像器60は、像保持体30よりも上方に配置されている。このため、さらにその上にあるトナーカートリッジ90から現像器60までの距離が短い。これは、トナーカートリッジ90から現像器60までのトナーの補給路(不図示)が短くて済むことを意味し、小型化に有利である。ただし、この場合、後述する問題点を解決する必要がある。
【0032】
図2は、図1の画像形成装置を構成する現像器の拡大模式図である。この図2以降、色を表すY,M,C,Kの符号は、図面上でも省略している。
【0033】
この現像器60には、筐体61の中に、2本のオーガ62,63と、現像ロール64と、トリマー65とが備えられている。2本のオーガ62,63は、筐体61内に存在するトナーと磁性キャリアとからなる現像剤を、撹拌しながら、紙面に垂直な方向であって互いに逆の向きに搬送することにより、筐体61内で現像剤を循環移動させる。また、現像ロール64は、下側のオーガ63の直ぐ下方に配置されている。この現像ロール64とその直ぐ上にあるオーガ63との間には仕切り壁はなく、オーガ63と現像ロール64は、筐体61内の1つの収容室619内に配置されている。
【0034】
筐体61の斜め下向きの位置に、現像開口611が開いている。そして、この現像器60は、その現像開口611が開いた現像領域612の部分で現像ロール64と像保持体30とが近接配置される姿勢に設置されている。
【0035】
像保持体30は、図1にも示した通り、矢印Aの向きに回転する。これに対し、現像ロール64は、回転軸641の周りを矢印Cの向きに回転し、下側のオーガ63は回転軸631の周りを矢印Dの向きに回転する。
【0036】
2本のオーガ62,63により撹拌されながら筐体61内を循環移動している現像剤は、下側のオーガ63から矢印Yの向きに現像ロール64に受け渡される。そして、その現像剤は、現像ロール64の矢印Cの向きの回転によりその同じ矢印Cの向きに搬送される。そして、トリマー65で現像剤の層厚が規制されて像保持体30と対面する現像ロウ域612に到達し、その像保持体30上の静電潜像が現像剤中のトナーで現像される。
【0037】
現像後の現像剤は、矢印Cに沿ってさらに搬送され、矢印Xで示す向きにオーガ63に受け渡され、再び、そこにある現像剤とともに撹拌および循環移動される。
【0038】
ここで、現像ロール64は、本発明にいう現像部の一例に相当し、その回転軸641が本発明にいう第1回転軸の一例に相当する。また、その直ぐ上にあるオーガ63が、本発明にいう搬送部の一例に相当し、その回転軸631が、本発明にいう第2回転軸の一例に相当する。
【0039】
次に、従来の現像器を図1に示すタイプの画像形成装置10に適用した場合の問題点について説明する。
【0040】
図3は、従来の現像器の配置例(A)と、その従来の現像器を図1の画像形成装置に適用するために上下逆向きとした配置例(B)を示した図である。図3に示す現像器は、本発明に対する比較例に相当する。この図3およびそれ以降の各図の説明にあたっては、図2に示した現像器およびその各要素に付した符号と同一の符号を付して示し、相違点についてのみ、説明する。
【0041】
図3(A)は、従来の一般的な配置例であり、現像器60は、像保持体30の下側に配置されている。そして、この現像器60には、収容室619内の、現像に使われた後の現像剤が現像ロール64からオーガ63に受け渡される箇所に、図2と比べて大きな空間613が形成されている。現像に使われた後の現像剤は、この空間613を通って、現像ロール64からオーガ63に受け渡される。このため、この空間613は大きめの方が、現像剤が円滑に受け渡される。
【0042】
ここで、この図3(A)の配置の場合、現像器60の上方に像保持体30が配置され、中間転写ベルト80(図1参照)がさらにその上に配置される。また、トナーカートリッジ90(図1参照)も、現像器60へのトナーの補給路を重力を利用した簡易な構成とするために現像器60よりも上方に配置する必要がある。したがって、図3(A)の構成の場合、トナーカートリッジ90を中間転写ベルト80よりもさらに上方に配置する必要がある。このため、この構成の場合、トナーの補給路が長くなり、装置の小型化に不利である。
【0043】
そこで、図3(B)のように、上下を逆転させ、現像器60を像保持体30よりも上方に配置する。この配置の場合、中間転写ベルト80は、図1に示すように像保持体30よりもさらに下方に配置されるため、トナーカートリッジ90を現像器60に直ぐ上に配置することができ、補給路が短縮化され、装置の小型化を実現することができる。
【0044】
ただし、現像器60を像保持体30の上方に配置すると、現像剤を上方に持ち上げながら現像ロール64からオーガ63に受け渡す必要がある。ここで、図3(B)に示すように、図3(A)に示した従来型の現像器60をそのまま上下反転させて配置すると、現像ロール64からオーガ63への現像剤の受け渡し場所に大きな空間613が形成されることになる。すると、現像ロール64からオーガ63への現像剤の受け渡しが円滑にはいかなくなり、現像剤の一部が現像剤溜Mとなってその空間613内に留まるおそれがある。そして、そこに現像剤溜Mが発生すると、その現像剤溜Mのうちの一部の現像剤が、あるいは現像ロール64からオーガ63に新たに受け渡されようとしている現像剤の一部が矢印Z方向に進み、オーガ63から矢印Yの向きに現像ロール64に新たに受け渡されてきた現像剤と一緒になって現像領域612にまで進んで、像保持体30上の静電潜像の現像に使われるおそれがある。現像に使われた現像剤は磁性キャリアに対するトナーの比率が下がっており、2本のオーガ62,63で循環移動しながら十分に撹拌されて初めて再使用が可能となる。このため、上記のように、現像剤がオーガ63に受け渡されずに矢印Zの向きに進んで現像に使われると、画像欠陥が発生するおそれがある。本実施形態の現像器60は、この画像欠陥の発生を抑えた構造を有する。
【0045】
図4は、図2にも示した本実施形態の第1例としての現像器の模式図である。ここでは、この図4を使って、第1例の現像器の構成を説明する。
【0046】
ここでは、現像ロール64の、オーガ63に近づく向きに進む現像剤持ち上げ領域(現像ロール64の、図4の左側の領域)に接するとともにオーガ63にも接する平面L1を考える。ここで、この条件を満たす平面としては、平面L1のほかにも平面L1'が存在する。ここでは、それら2つの平面L1,L1'のうち、現像ロール64とオーガ63とが対面した対面領域617を通過することなくオーガ63に接する平面L1を考える。
【0047】
また、ここでは、現像ロール64の回転軸641とオーガ63の回転軸631との双方を含む平面L2を考える。
【0048】
収容室619の、現像ロール64の表面がオーガ63に近づく向きに進む現像剤持ち上げ側(図4の左側)の内壁面618の一部が、平面L1よりも平面L2側に食い込んでいる。これらの平面L1,L2は、本発明にいう第1平面および第2平面の各一例に相当する。
【0049】
このように、収容室619内の、現像剤持ち上げ側の空間613(図3参照)を、この図4に示す、収容室619の内壁面618の一部が、平面L1よりも平面L2側に食い込むレベルにまで狭める。そうすると、前掲の特許文献1のように複数のロールを使って現像剤を上方に持ち上げる構成と比べ簡易な構成で画像欠陥のおそれが抑えられる。
【0050】
図5は、本実施形態の第2例としての現像器の模式図である。
【0051】
ここでは、上記と同じく、現像ロール64の回転軸641とオーガ63の回転軸631との双方を含む平面L2を考える。
【0052】
また、ここでは、現像剤持ち上げ側において現像ロール64に接して平面L2と平行に広がる平面L3と、同じく、現像剤持ち上げ側においてオーガ63に接して平面L2と平行に広がる平面L4を考える。そして、ここでは、それら2つの平面L3,L4のうちの平面L2に近い側にある平面(ここに示す例では平面L4)を、平面L5と称する。
【0053】
この図5に示す現像器60の収容室619の現像剤持ち上げ側の内壁面618は、その一部が平面L5よりも平面L2側に食い込んでいる。この図5の現像器60によれば、収容室619の現像剤持ち上げ側の壁面618の一部が、図4のように平面L1よりも平面L2側に食い込んでいても平面L5よりは平面L2側に食い込んでいない場合と比べ、画像欠陥のおそれがさらに抑えられる。ここで、平面L3,L4,L5は、本発明にいう、それぞれ第3平面、第4平面、および第5平面の各一例に相当する。
【0054】
また、この図5の現像器60の場合、2つの平面L3,L4のうちの平面L4の方が平面L2に近い側にある平面L5となっている。これは、すなわち、オーガ63が現像ロール64よりも小径であることを意味している。小径のオーガ63の場合、現像ロール64から受け渡された現像剤が短い距離で現像ロール64から引き離される。このため、平面L3が平面L5である場合、すなわちオーガ64の方が現像ロール65よりも太径である場合と比べ、現像ロール64により持ち上げられた現像剤がオーガ63に受け渡されやすい。
【0055】
また、この図5に示す現像器60の場合、収容室619の現像剤持ち上げ側の壁面618が、現像ロール64に対面して広がる弧形状壁面618aと、オーガ63に対面して広がる弧形状壁面618bと、平面L2側に食い込んでいる部分における、それら2つの弧形状壁面618a,618bを接続する接続壁面618cとを有する。弧形状壁面618a,618bは、それぞれ、本発明にいう第1の弧形状壁面および第2の弧形状壁面の各一例に相当する。
【0056】
この図5に示す現像器60の収容室619の現像剤持ち上げ側の壁面618は、平面L2側に食い込んでいる部分の接続壁面618cを除き、弧形状壁面となっている。このため、弧形状以外の形状の壁面である場合と比べ、現像剤の滞留がさらに抑えられる。
【0057】
また、図4の現像器60および図5の現像器60のいずれにおいても、現像剤持ち上げ側(図4図5の左側)が斜め下向きの平面L2となるように、現像ロール64の回転軸641がオーガ63の回転軸631に対し斜め下に位置している。
【0058】
この平面L2が斜め下向きとなっていると、平面L2が真横を向いている場合あるいは現像剤持ち上げ側が斜め上向きの場合よりも、現像剤を現像ロール64からオーガ63に受け渡すにあたって現像剤を持ち上げる必要のある高さが短くて済む。このため、現像剤がオーガ63に受け渡されやすく、したがって、現像に使われた後の現像剤がそのまま再度現像領域に供給されるおそれが抑えられる。
【0059】
さらに、図4および図5のいずれの実施形態においても、平面L2が斜め下向きとなっていることのほか、さらにオーガ63が現像ロール64よりも小径であることから、現像剤がオーガ63にさらに受け渡されやすくなっている。
【0060】
図6は、図2にも示した本実施形態の第1例としての現像器の模式図である。ここでは、この図6を使って、第1例の現像器についてさらに説明を加える。
【0061】
この図6には、現像ロール64を構成している現像スリーブ642と固定磁石643が示されている。現像スリーブ642は、円筒形を有し現像剤を表面に載せて矢印Cの向きに回転する。この現像スリーブ642は本発明にいう筒部の一例に相当する。また、固定磁石643は、現像スリーブ642が回転しても回転しないように固定されている、複数の磁極を有する磁石である。ここには、磁極として、ピックアップ極S1、トリミング極N1、主極S2、搬送極N2、およびピックオフ極S3が示されている。ここでは、ピックオフ極S3に着目している。このピックオフ極S3は、現像スリーブ642の表面に載って持ち上げられてきた現像剤を、その現像スリーブ642から引き離す役割の磁極である。
【0062】
この図6に示した例では、ピックオフ極S3は、水平よりも上側を向いている。これにより、現像スリーブ642の表面に載って持ち上げられてきた現像剤はそのピックオフ極S3によってさらに持ち上げられる。このように、ピックオフ極S3が水平よりも上側を向いていることが、オーガ63への円滑な受け渡しに寄与している。すなわち、ピックオフ極S3が 水平あるいは下側を向いている場合と比べ、画像欠陥のおそれがさらに抑えられる。
【0063】
なお、ここでは、図6を使って第1例の現像器について説明したが、この図6を使って説明した内容は、図5に示す第2例についてもそのまま当てはまる内容である。
【0064】
また、ここでは、中間転写ベルト80を備えた、いわゆるタンデム型の画像形成装置について説明したが、本発明の現像装置は、いわゆるモノクロ画像形成用の画像形成装置など、タンデム型以外の画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 画像形成装置
20Y,20M,20C,20K 画像形成エンジン
30,30Y,30M,30C,30K 像保持体
40Y,40M,40C,40K 帯電器
50Y,50M,50C,50K 露光器
60,60Y,60M,60C,60K 現像器
61 筐体
611 収容室
612 現像領域
613 収容室内の空間
617 対面領域
618 収容室の現像剤持ち上げ側の壁面
618a,618b 弧形状壁面
618c 接続壁面
619 収容室
62,63 オーガ
631 回転軸
64 現像ロール
641 回転軸
642 現像スリーブ
643 固定磁石
70Y,70M,70C,70K クリーナ
80 中間転写ベルト
81 一次転写器
86 二次転写器
87 定着器
88 排紙トレイ
90Y,90M,90C,90K トナーカートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6