(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】アウトリガ装置及び作業車
(51)【国際特許分類】
B66C 23/78 20060101AFI20231011BHJP
B66F 9/075 20060101ALI20231011BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20231011BHJP
E02D 7/14 20060101ALI20231011BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B66C23/78 H
B66F9/075 L
B66F11/04
E02D7/14
E02D13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019180108
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 勁太
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165585(JP,A)
【文献】特開2009-073248(JP,A)
【文献】特開2018-095372(JP,A)
【文献】特開平04-280797(JP,A)
【文献】特開2021-080041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
B66F 9/075
B66F 11/04
E02D 7/14
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に設けられて当該走行体の幅方向に延びるアウタービームと、
上記幅方向に沿ってスライド可能に当該アウタービームに保持されたインナービームと、
当該インナービームをスライドさせる駆動装置と、
上記インナービームの先端部に設けられたジャッキ及び当該ジャッキが当接する敷板と、
上記インナービームの周囲に存在する障害物の形状及び当該障害物までの距離に応じた検知情報を出力する検知装置と、
コントローラと、を備え、
上記コントローラは、
所定のトリガ信号の入力に基づいて、上記インナービームの可動領域を含む検知エリアを決定する検知エリア決定処理と、
上記検知情報に基づいて、上記障害物が上記検知エリア内にあるか否かを判断する障害物判断処理と、
上記検知エリア内に障害物がないと判断したことに基づいて、上記駆動装置を駆動させる駆動処理と、
上記障害物が上記検知エリア内にある場合に、当該障害物が上記敷板であるか否かを判断する敷板判断処理と、
上記障害物が上記敷板である場合に、当該敷板の位置を特定する位置特定処理、及び上記駆動処理と、
上記ジャッキが上記敷板の上方に到達したか否かを判断する位置確認処理と、
上記ジャッキが上記敷板の上方に到達した場合に、上記インナービームのスライドを停止させる停止処理と、
上記ジャッキを上記敷板に当接させる接地処理と、を実行するアウトリガ装置。
【請求項2】
上記コントローラは、
上記敷板の位置が上記インナービームの可動領域にあるか否かを判断する敷板位置判断処理と、
上記敷板が上記インナービームの可動領域にない場合に警報を行う位置ずれ警報処理と、をさらに実行する請求項
1に記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
上記インナービーム及びジャッキは、上記走行体の左右にそれぞれ設けられており、
上記コントローラは、
各ジャッキに対応する敷板が上記インナービームの可動領域にある場合に、上記左右のジャッキを上記敷板に当接させる請求項
2に記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
上記アウタービームは、上記走行体の前後に設けられており、
上記検知装置は、各アウタービームの間に配置されている請求項1から
3のいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
上記コントローラは、
上記検知エリアに障害物がある場合に警報を行う障害物警報処理をさらに実行する請求項1から
4のいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項6】
上記コントローラは、
検知された障害物が上記敷板であるか否かを示す学習情報を取得する学習情報取得処理と、
上記学習情報と、当該学習情報に対応する障害物を示す上記検知情報とを関連づけて出力する出力処理と、をさらに実行する請求項
1から
3のいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載のアウトリガ装置を備えた作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車に搭載されるアウトリガ装置に関し、より詳細には、駆動装置によって張り出されるアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車やトラッククレーンや高所作業車など、アウトリガ装置を有する作業車が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたアウトリガ装置は、車体に設けられたフレームと、当該フレームにスライドシリンダを介してスライド可能に保持されたビームと、当該ビームの先端に設けられたジャッキと、ジャッキに設けられた障害物センサと、ビームの駆動を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、障害物センサが障害物を検知すると、ビームの駆動を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアウトリガ装置では、ビームの先端が所定距離まで障害物に近づいた場合に、スライドシリンダの駆動が停止される。すなわち、このアウトリガ装置は、ビームをスライドさせつつ障害物を検知するが、ビームを張り出す作業に余計な手間がかかる場合がある。具体的に説明すると、例えば、障害物が移動困難なものである場合、オペレータは、ビームを一度格納してから作業車を移動させ、その後、ビームの張り出しを再度実行する。つまり、特許文献1に記載されたアウトリガ装置では、ビームの張出作業を繰り返さなければならない。
【0005】
本発明の目的は、ビームの張り出しを開始する前に、ビームの張り出しに支障となる障害物が存在するか否かを判断可能なアウトリガ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るアウトリガ装置は、走行体に設けられて当該走行体の幅方向に延びるアウタービームと、上記幅方向に沿ってスライド可能に当該アウタービームに保持されたインナービームと、当該インナービームをスライドさせる駆動装置と、上記インナービームの先端部に設けられたジャッキ及び当該ジャッキが当接する敷板と、上記インナービームの周囲に存在する障害物の形状及び当該障害物までの距離に応じた検知情報を出力する検知装置と、コントローラと、を備える。上記コントローラは、所定のトリガ信号の入力に基づいて、上記インナービームの可動領域を含む検知エリアを決定する検知エリア決定処理と、上記検知情報に基づいて、上記障害物が上記検知エリア内にあるか否かを判断する障害物判断処理と、上記検知エリア内に障害物がないと判断したことに基づいて、上記駆動装置を駆動させる駆動処理と、上記障害物が上記検知エリア内にある場合に、当該障害物が上記敷板であるか否かを判断する敷板判断処理と、上記障害物が上記敷板である場合に、当該敷板の位置を特定する位置特定処理、及び上記駆動処理と、上記ジャッキが上記敷板の上方に到達したか否かを判断する位置確認処理と、上記ジャッキが上記敷板の上方に到達した場合に、上記インナービームのスライドを停止させる停止処理と、上記ジャッキを上記敷板に当接させる接地処理と、を実行する。
【0007】
コントローラは、トリガ信号が入力されると、インナービームの可動領域を含む検知エリアに障害物があるか否かを判断する。そして、コントローラは、検知エリアに障害物がないと判断すると、駆動装置を駆動させてインナービームをスライドさせる。すなわち、検知エリア外に障害物があっても、検知エリア内に障害物がなければ、インナービームのスライドが開始される。また、検知エリア内に障害物があれば、インナービームのスライドは開始されない。すなわち、本発明に係るアウトリガ装置は、インナービームの張り出しを開始する前に、インナービームの張り出しに支障となる障害物が存在するか否かを判断することができる。
【0008】
上記構成によれば、インナービームを張り出し、ジャッキを伸長させて敷板に接地させるまでをコントローラが自動で行うことができる。
【0009】
(2) 上記コントローラは、上記敷板の位置が上記インナービームの可動領域にあるか否かを判断する敷板位置判断処理と、上記敷板が上記インナービームの可動領域にない場合に警報を行う位置ずれ警報処理と、をさらに実行してもよい。
【0010】
上記構成によれば、オペレータは、ジャッキが当接しない位置に敷板があることを認識することができる。
【0011】
(3) 上記インナービーム及びジャッキは、上記走行体の左右にそれぞれ設けられていてもよい。上記コントローラは、各ジャッキに対応する敷板が上記インナービームの可動領域にある場合に、上記左右のジャッキを上記敷板に当接させる。
【0012】
上記構成によれば、左右のジャッキのうち一方のジャッキのみが接地されて走行体が傾くことが防止される。
【0013】
(4) 上記アウタービームは、上記走行体の前後に設けられていてもよい。上記検知装置は、各アウタービームの間に配置されている。
【0014】
検知装置は、前後のアウタービームの間に配置されているので、一の検知装置で、前のアウタービームに保持されたインナービームと、後ろのアウタービームに保持されたインナービームとの両方のインナービームの可動領域を含む領域を検知エリアとすることができる。その結果、検知装置の個数を低減することができる。
【0015】
(5) 上記コントローラは、上記検知エリアに障害物がある場合に警報を行う障害物警報処理をさらに実行してもよい。
【0016】
上記構成によれば、オペレータは、インナービームのスライドに支障となる障害物があることを認識することができる。
【0017】
(6) 上記コントローラは、検知された障害物が上記敷板であるか否かを示す学習情報を取得する学習情報取得処理と、上記学習情報と、当該学習情報に対応する障害物を示す上記検知情報とを関連づけて出力する出力処理と、をさらに実行してもよい。
【0018】
コントローラは、検知した障害物が適正物であるか否かを示す学習情報を取得し、取得した学習情報と、当該学習情報と対応する障害物を示す検知情報とを関連付けて出力する。出力した学習情報及び検知情報は、深層学習に用いられる。その結果、障害物が敷板か否かの判断の精度が向上する。
【0019】
(7) 本発明は、作業車として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インナービームの張り出しを開始する前に、インナービームの張り出しに支障となる障害物が存在するか否かを判断可能なアウトリガ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、クレーン車10の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、前アウトリガ31及び後アウトリガ32のインナービーム34、35を張り出した状態のクレーン車10の模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、インナービーム34、35がアウタービーム33に格納された状態のアウトリガ30の模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、インナービーム35がアウタービーム33から張り出した状態のアウトリガ30の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、インナービーム34の可動領域75及び検知エリア78を示す図である。
【
図6】
図6は、クレーン車10の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、張出処理のフローチャートの一部である。
【
図8】
図8は、張出処理のフローチャートの他の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。或いは、後述の処理の一部は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜省略することができる。
【0023】
本実施形態では、
図1に示されるクレーン車10を説明する。クレーン車10は、本発明の請求項の「作業車」に相当する。
【0024】
クレーン車10は、走行体11と、走行体11に搭載された作業装置12と、キャビン13と、を主に備える。走行体11は、車体20と、車輪22を有する車軸(不図示)と、エンジン24と、バッテリ25(
図6)と、を備える。上記車軸は、車体20に懸架されている。
【0025】
エンジン24は、車輪22を回転駆動し、バッテリ25を充電し、後述の油圧供給装置18(
図6)が備える油圧ポンプ(不図示)を駆動させる。
【0026】
作業装置12は、クレーン装置16と、アウトリガ装置17と、油圧供給装置18(
図6)と、を備える。クレーン装置16の構成は既知である。なお、作業装置12は、クレーン装置16に代えて、作業台が設けられたブーム装置を備えていてもよい。すなわち、本発明に係る作業車は、クレーン車10ではなく、高所作業車として実現されてもよい。或いは、本発明に係る作業車は、いわゆるトラッククレーンとして実現されてもよい。つまり、本発明に係る作業車は、走行体11に搭載されたアウトリガ装置17を備える作業車であればよい。
【0027】
アウトリガ装置17は、前後一対の前アウトリガ31及び後アウトリガ32と、検知装置50、51(
図2)と、を備える。前アウトリガ31は、車体20の前部に配置されている。後アウトリガ32は、車体20の後部に配置されている。前アウトリガ31と後アウトリガ32とは、車体20における配置位置以外の構成はほぼ同一である。以下では、前アウトリガ31と後アウトリガ32とを区別しない場合は、「アウトリガ30」と記載して説明する。
【0028】
アウトリガ30は、
図3に示されるように、アウタービーム33と、左右一対のインナービーム34、35と、アウトリガシリンダ44、45と、左右一対のジャッキ36、37と、4つのアウトリガセンサ38、39、40、41と、左右一対の圧力センサ42、43と、を備える。
【0029】
アウタービーム33は、角筒状である。同図が示すように、アウタービーム33の長手方向は、車体20の幅方向(左右方向)7に一致している。インナービーム34、35は、アウタービーム33の内側に配置されており、車体20の幅方向7にスライド可能である。インナービーム34、35は、アウタービーム33に格納された格納位置(
図3)と、アウタービーム33から張り出した張出位置(
図4)との間でスライドする。
【0030】
アウトリガシリンダ44、45は、例えば油圧シリンダであり、後述の油圧供給装置18から作動油を供給されて伸縮する。ただし、アウトリガシリンダ44、45は、電動シリンダであってもよい。アウトリガシリンダ44は、インナービーム34をスライドさせる。アウトリガシリンダ45は、インナービーム35をスライドさせる。ただし、一のアウトリガシリンダで、インナービーム34、35がスライドされてもよい。アウトリガシリンダ44、45は、本発明の請求項の「駆動装置」に相当する。
【0031】
ジャッキ36、37は、例えば油圧シリンダであり、後述の油圧供給装置18から作動油を供給されて伸縮する。ただし、ジャッキ36、37は、電動シリンダであってもよい。ジャッキ36は、インナービーム34の先端部に固定されている。ジャッキ37は、インナービーム35の先端部に固定されている。ジャッキ36、37は、上下方向を伸縮方向としてインナービーム34、35に固定されている。縮小状態にあるジャッキ36、37の下端は、車輪22の最下点よりも上方に位置する。すなわち、縮小状態にあるジャッキ36、37の下端は、地面9に当接しない。ジャッキ36、37は、伸長されることにより、地面9に載置された敷板26に当接する(
図4)。ジャッキ36、37が敷板26に当接することにより、アウトリガ装置17は、クレーン車10を安定した姿勢に維持する。敷板26は、例えば鉄板などの金属板である。
【0032】
アウトリガセンサ38、39、40、41は、例えば押圧部を有するリミットスイッチである。アウトリガセンサ38、40は、アウタービーム33の中央部に配置されている。アウトリガセンサ39、41は、アウタービーム33の先端部に配置されている。アウトリガセンサ38、40の押圧部は、格納位置にあるインナービーム34、35に押圧される。すなわち、アウトリガセンサ38、40は、インナービーム34、35が格納位置にある場合にオンの検知信号を出力し、インナービーム34、35が格納位置以外にある場合にオフの検知信号を出力するセンサである。
【0033】
アウトリガセンサ39、41の押圧部は、張出位置にあるインナービーム34、35に押圧される。すなわち、アウトリガセンサ39、41は、インナービーム34、35が張出位置にある場合にオンの検知信号を出力し、インナービーム34、35が張出位置以外の位置にある場合にオフの検知信号を出力するセンサである。なお、本実施形態では、インナービーム34、35が格納位置にあることを検知するアウトリガセンサ38、40と、インナービーム34、35が張出位置にあることを検知するアウトリガセンサ39、41との4つのアウトリガセンサが設けられているが、インナービーム34、35が格納位置と張出位置との中間位置にあることを検知するアウトリガセンサがアウタービーム33にさらに設けられていてもよい。
【0034】
圧力センサ42は、ジャッキ36の接地圧に応じた圧力信号を出力するセンサである。ジャッキ36の接地圧とは、伸長されたジャッキ36の下端が敷板26を押圧する圧力である。同様に、圧力センサ43は、ジャッキ37の接地圧に応じた圧力信号を出力するセンサである。
【0035】
アウトリガセンサ38、39、40、41と、圧力センサ42、43とは、ケーブルなどの信号線により、後述の電源回路27及びコントローラ60(
図6)と接続されている。すなわち、アウトリガセンサ38、39、40、41及び圧力センサ42、43は、電源回路27から電力を供給されて駆動し、オンやオフの検知信号や圧力信号をコントローラ60に入力する。
【0036】
検知装置50は、
図2に示されるように、カメラ52及び測距センサ53を備える。検知装置51は、カメラ54及び測距センサ55を備える。検知装置50は、車体20の幅方向7の左側に設けられている。検知装置51は、車体20の幅方向7の右側に設けられている。さらに具体的には、検知装置50、51は、車体20の前後方向8において、前アウトリガ31と後アウトリガ32との間に配置され、車体20に固定されている。
【0037】
カメラ52が撮像する領域である撮像領域73は、前アウトリガ31及び後アウトリガ32のインナービーム34を含む領域である。カメラ54が撮像する領域である撮像領域74は、前アウトリガ31及び後アウトリガ32のインナービーム35を含む領域である。
図2において、カメラ52、54の撮像領域73、74は、ハッチングによって示されている。
【0038】
測距センサ53、55は、障害物までの距離に応じた距離データを出力するセンサである。測距センサ53、55は、例えば、音波や電波や光などの照射波を照射し、障害物で反射された反射波を受信する音波センサやレーダやレーザセンサなどである。
【0039】
なお、カメラ52及び測距センサ53と、カメラ54及び測距センサ55とに代えて、車体20の左右両側に、3次元レーザセンサが設けられていてもよい。3次元レーザセンサは、レーザ光を照射しつつ走査範囲を走査し、検知対象物の形状に応じた画像データ及び検知対象物までの距離に応じた距離データを生成して出力するセンサである。
【0040】
図6に示される油圧供給装置18は、エンジン24によって駆動されるポンプと、ポンプからアウトリガシリンダ44、45やジャッキ36、37などのアクチュエータに作動油を供給する配管と、配管に設けられた電磁弁などを備えている。電磁弁は、後述のコントローラ60(
図6)から入力される駆動信号によって開閉される。電磁弁が開閉されることにより、アウトリガシリンダ44、45やジャッキ36、37が伸長或いは縮小される。すなわち、コントローラ60は、電磁弁を開閉させる駆動信号を出力することにより、アウトリガシリンダ44、45やジャッキ36、37の駆動を制御する。
【0041】
図1に示されるキャビン13は、クレーン車10の運転を行う運転装置(不図示)と、クレーン装置16及びアウトリガ装置17の操作を行う操作装置15(
図6)と、タッチパネル70(
図6)とを有する。
【0042】
図6に示される操作装置15は、クレーン装置16を操作する操作レバーや操作ボタン等を有する。また、操作装置15は、アウトリガ装置17のインナービーム34、35を張り出させることを指示する張出ボタン46と、インナービーム34、35を格納することを指示する格納ボタン47とを有する。操作装置15は、ケーブルなどの信号線により、コントローラ60と接続されている。すなわち、張出ボタン46や格納ボタン47が操作されたことを示す操作信号が、コントローラ60に入力される。張出ボタン46や格納ボタン47が操作されたことを示す操作信号は、本発明の請求項の「トリガ信号」に相当する。
【0043】
タッチパネル70は、表示パネル71と、表示パネル71に重畳された透明な膜状のタッチセンサ72と、を備える。タッチセンサ72は、タッチされた表示パネル71上の位置に応じた位置情報を出力する。表示パネル71及びタッチセンサ72は、後述の電源回路27及びコントローラ60と、ケーブル線などの信号線によって接続されている。表示パネル71及びタッチセンサ72は、電源回路27から供給される電力によって駆動される。コントローラ60は、表示パネル71に画面データを入力し、画面データが示す画面を表示パネル71に表示させる。また、コントローラ60は、タッチセンサ72から入力する位置情報により、オペレータが選択したアイコンの種別を特定する。詳しくは後述される。
【0044】
キャビン13(
図1)は、制御ボックス(不図示)を有する。制御ボックスは、制御基板を備える。制御基板は、マイクロコンピュータや抵抗やコンデンサやダイオードや種々のICを実装されており、コントローラ60、電源回路27、及び通信インタフェース69を構成している。
【0045】
電源回路27は、バッテリ25と接続されており、バッテリ25から直流電圧を供給される。電源回路27は、例えばDC/DCコンバータであり、バッテリ25から供給された直流電圧を、安定した所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。電源回路27が供給する直流電圧は、コントローラ60や、アウトリガセンサ38、39、40、41や圧力センサ42、43や、検知装置50、51などに供給される。なお、
図6では、電源回路27からアウトリガセンサ38、39、40、41や圧力センサ42、43などへの給電線の図示が省略されている。
【0046】
通信インタフェース69は、移動体通信網を通じてインターネットに接続する通信モジュールである。例えば、周知の通信モジュールが通信インタフェース69として用いられる。
【0047】
コントローラ60は、中央演算処理装置であるCPU61と、ROM62と、RAM63と、メモリ64と、を有する。ROM62は、オペレーティングシステムであるOS65と、制御プログラム66と、を記憶する。OS65は、例えば、通信インタフェース69を通じた通信を制御する。制御プログラム66は、後述の張出処理や格納処理などの処理を実行する。OS65及び制御プログラム66は、例えばマルチタスク処理により、疑似的に並行してCPU61によって実行される。なお、OS65及び制御プログラム66は、メモリ64に記憶されていてもよい。メモリ64は、例えばEEPROMである。
【0048】
RAM63は、OS65及び制御プログラム66の実行領域であり、OS65及び制御プログラム66の実行に必要なデータや情報が記憶される。メモリ64は、
図10から
図14に示される報知画面を示す画面データなどを予め記憶する。
【0049】
以下、CPU61によって実行される制御プログラム66が行う張出処理及び格納処理について説明する。なお、以下では、制御プログラム66が実行する処理は、コントローラ60が実行する処理として記載する。
【0050】
オペレータは、クレーン車10を作業現場に停車させた後、敷板26を地面9に載置する。次に、オペレータは、キャビン13に搭乗し、操作装置15の電源ボタン(不図示)を操作して操作装置15に電源を投入した後、張出ボタン46を操作する。
【0051】
コントローラ60は、電源が投入されたことに基づいて、
図7に示される張出処理を実行する。例えば、コントローラ60は、張出処理を所定の時間間隔で定期的に実行する。まず、コントローラ60は、張出ボタン46からオンの操作信号が入力したか否かを判断する(S11)。すなわち、コントローラ60は、張出ボタン46が操作されたか否かを判断する。コントローラ60は、張出ボタン46からオンの操作信号が入力されていないと判断すると(S11:No)、張出処理を終了する(
図8)。
【0052】
コントローラ60は、張出ボタン46からオンの操作信号が入力したと判断すると(S11:Yes)、前アウトリガ31及び後アウトリガ32に設けられたアウトリガセンサ38、39、40、41が出力する検知信号であるアウトリガセンサ信号を取得し、取得したアウトリガセンサ信号に基づいて、インナービーム34、35の位置を検知する(S12)。例えば、コントローラ60は、アウトリガセンサ38からオンの検知信号が入力したことにより、インナービーム34の位置を「格納位置」として検知する。
【0053】
コントローラ60は、取得したアウトリガセンサ信号に基づいて、障害物を検知する検知エリア78(
図5)を決定する(S13)。検知エリア78について、
図5を参照して詳しく説明する。なお、以下では、インナービーム34に対して決定される検知エリア78について説明するが、インナービーム35についても同様にして検知エリア78が決定される。
【0054】
検知エリア78は、インナービーム34の可動領域75を含む領域である。
図5(A)は、インナービーム34が格納位置にある場合の可動領域75である第1可動領域76を示している。第1可動領域76は、格納位置にあるインナービーム34が張出位置までスライドする場合に通過する空間である。
図5(C)は、インナービーム34が中間位置にある場合の可動領域75である第2可動領域77を示している。中間位置は、格納位置と張出位置との間となる位置である。第2可動領域77は、中間位置にあるインナービーム34が張出位置までスライドする場合に通過する空間である。
【0055】
図5(B)、(D)に示す例では、検知エリア78は、可動領域75を囲む直方体状の領域である。
図5(E)に示す例では、検知エリア78は、可動領域75を囲む楕円球状の領域である。検知エリア78である第1検知エリア79(
図5(B)、(E))が、第1可動領域76(
図5(A))を含む領域として決定される。検知エリア78である第2検知エリア80(
図5(D))が、第2可動領域77(
図5(C))を含む領域として決定される。
【0056】
検知エリア78の決定について、さらに詳しく説明する。メモリ64は、第1テーブルを記憶している。第1テーブルでは、「格納位置」と、第1検知エリア79を示す「第1検知エリア情報」とが対応付けられ、「中間位置」と、第2検知エリア80を示す「第2検知エリア情報」とが対応付けられている。コントローラ60は、検知したインナービーム34、35の位置と対応付けられた「第1検知エリア情報」或いは「第2検知エリア情報」を、第1テーブルから取得する。第1検知エリア情報及び第2検知エリア情報は、例えば、クレーン車10の中心部を原点とする3次元座標空間において、第1検知エリア79或いは第2検知エリア80を区画する境界を示す関数や、第1検知エリア79或いは第2検知エリア80の各頂点を示す座標などである。同様に、メモリ64は、インナービーム34、35を格納する場合に使用される第2テーブルを記憶する。
【0057】
なお、メモリ64は、第1検知エリア情報のみを記憶していてもよい。その場合、コントローラ60は、インナービーム34、35の位置に拘わりなく、検知エリア78を第1検知エリア79として決定する。すなわち、インナービーム34、35の位置に拘わりなく、インナービーム34、35の最大可動領域である第1可動領域76を含む領域が検知エリア78とされてもよい。コントローラ60が検知エリア78を決定するステップS13の処理は、本発明の請求項の「検知エリア決定処理」に相当する。
【0058】
次に、コントローラ60は、
図7が示すように、検知装置50、51を駆動させる(S14)。具体的には、コントローラ60は、カメラ52、54に電力を供給してカメラ52、54に撮像を実行させ、測距センサ53、55に電力を供給して距離の測定を実行させる。そして、コントローラ60は、カメラ52、54が撮像によって生成する画像データと、測距センサ53、55が出力する距離データとを含む検知情報が入力するまで待機する(S15:No)。コントローラ60は、検知情報が入力したと判断すると(S15:Yes)、検知情報に含まれる画像データに基づいて、障害物の検知を行う(S16)。例えば、コントローラ60のROM62は、既存の画像認識プログラムを記憶している。制御プログラム66は、取得した画像データを画像認識プログラムに受け渡し、画像データが示す画像に障害物が撮像されているか否かを判断させる。なお、制御プログラム66は、アウトリガ30を検知すべき障害物として識別しないことを画像認識プログラムに指示する。
【0059】
例えば、オペレータが敷板26を地面9に載置するのを忘れて張出ボタン46を操作してしまい、かつ、撮像領域73、74にアウトリガ30以外の障害物がない場合、ステップS16において、コントローラ60は、障害物を検知していないと判断する(S16:No)。コントローラ60は、障害物を検知していないと判断すると(S16:No)、第1報知画面を示す画面データを表示パネル71に入力し、第1報知画面を表示パネル71に表示させる(S17)。
【0060】
図10は、第1報知画面を示す。第1報知画面は、「敷板を確認できませんでした。敷板を設置して「OK」を選択してください。」の文字と、「OK」アイコン81と、を有する。オペレータは、敷板26を地面9に載置した後、「OK」アイコン81を選択する。
【0061】
コントローラ60は、
図7が示すように、第1報知画面において「OK」アイコン81が選択されたか否かを判断する(S18)。コントローラ60は、「OK」アイコン81が選択されるまで(S18:No)、第1報知画面を表示パネル71に表示させる。コントローラ60は、第1報知画面において「OK」アイコン81が選択されたと判断すると(S18:Yes)、ステップS14以降の処理を再度実行する。オペレータが敷板26を地面9に載置した後に「OK」アイコン81を選択した場合、コントローラ60は、ステップS16において、障害物(敷板26)を検知したと判断する(S16:Yes)。
【0062】
コントローラ60は、障害物を検知したと判断すると(S16:Yes)、検知した障害物が敷板26であるか否かを判断する(S19)。ステップS19の処理は、本発明の請求項の「敷板判断処理」に相当する。コントローラ60は、例えば、検知した障害物を示す画像データを、通信インタフェース69、移動体通信網、及びインターネットを通じて、クラウドサーバなどに実装された学習プログラムに受け渡す。学習プログラムは、画像データが示す障害物が敷板26であるか否かを判断し、判断結果を、インターネット及び移動体通信網を通じてクレーン車10に送信する。
【0063】
コントローラ60は、学習プログラムが送信した判断結果に基づいて、検知した障害物が敷板26でないと判断すると(S19:No)、第2報知画面を表示パネル71に表示させる(S20)。第2報知画面は、
図11に示されるように、「敷板を確認できませんでした。」の文字と、「・敷板は設置済み」の文字と、「設置済」アイコン82と、「・敷板を設置していない。敷板を設置して「OK」を選択してください。」の文字と、「OK」アイコン83とを有する。
【0064】
オペレータは、敷板26を設置済みである場合、「設置済」アイコン82を選択する。例えば、上述の学習プログラムが、障害物が敷板26でないと誤判断した場合、オペレータは、敷板26を目視等により確認した後、「設置済」アイコン82を選択する。オペレータは、敷板26の設置を忘れていた場合、敷板26を地面9に載置した後、「OK」アイコン83を選択する。
【0065】
コントローラ60は、
図7に示されるように、第2報知画面において選択されたアイコンが「設置済」アイコン82であるか、「OK」アイコン83であるかを判断する(S21)。なお、コントローラ60は、「設置済」アイコン82或いは「OK」アイコン83が選択されるまで、第2報知画面を表示パネル71に表示させる。
【0066】
コントローラ60は、第2報知画面において選択されたアイコンが「OK」アイコン83であると判断すると(S21:OK)、ステップS14以降の処理を再度実行する。コントローラ60は、第2報知画面において選択されたアイコンが「設置済」アイコン82であると判断すると(S21:設置済)、障害物が敷板26であることを示す学習情報をメモリ64に記憶させる(S22)。学習情報は、例えば、障害物を示す画像データと、当該画像データが示す障害物が敷板26であることを示す情報とである。学習情報は、画像データが示す障害物が敷板26であるか否かの判断の精度を高めるため、学習プログラムの深層学習に用いられる。ステップS22は、本発明の請求項の「学習情報取得処理」に相当する。
【0067】
コントローラ60は、検知した障害物が敷板26であると判断すると(S19:Yes)、或いはステップS22の処理の実行後、敷板26であると判断した障害物以外の障害物を検知したか否かを判断する(S23)。
【0068】
コントローラ60は、敷板26以外の障害物を検知したと判断すると(S23:Yes)、障害物が検知エリア78内にあるか否かを判断する(S24)。例えば、コントローラ60は、検知情報に基づいて障害物の座標を特定し、特定した座標が検知エリア78内にあるか否かを判断する。ステップS24の処理は、本発明の請求項の「障害物判断処理」の一例である。
【0069】
コントローラ60は、障害物が検知エリア78内にあると判断すると(S24:Yes)、第3報知画面を表示パネル71に表示させる(S25)。第3報知画面を表示パネル71に表示させるステップS25の処理は、本発明の請求項の「障害物警報処理」に相当する。
【0070】
第3報知画面は、
図12に示されるように、「障害物があります。車体を移動させるか障害物を除去して「OK」を選択してください。」の文字と、「OK」アイコン84と、を有する。オペレータは、クレーン車10を移動させた後、或いは障害物を除去した後、「OK」アイコン84を選択する。
【0071】
コントローラ60は、
図7に示されるように、第3報知画面において「OK」アイコン84が選択されるまで(S26:No)、第3報知画面を表示パネル71に表示させる。コントローラ60は、第3報知画面において「OK」アイコン84が選択されたと判断すると(S26:Yes)、ステップS12以降の処理を再度実行する。
【0072】
コントローラ60は、ステップS23において、敷板26以外の障害物を検知していないと判断し(S23:No)、或いは、ステップS24において、検知した障害物が検知エリア78にないと判断すると(S24:No)、
図8に示されるように、敷板26であると判断した障害物の位置を特定する(S27)。例えば、コントローラ60は、ステップS15で取得した検知情報に基づいて、クレーン車10の中心部を原点とする3次元座標空間における敷板26の座標を特定する。ステップS27の処理は、本発明の請求項の「位置特定処理」に相当する。
【0073】
次に、コントローラ60は、特定した敷板26の位置が、インナービーム34、35に設けられたジャッキ36、37の直下となることができる適正位置にあるか否かを判断する(S28)。ジャッキ36、37の直下となることができる適正位置は、インナービーム34、35の可動領域75の直下となる位置である。例えば、メモリ64は、上記3次元座標空間において適正位置を示す適正座標を予め記憶する。コントローラ60は、敷板26の位置を示す座標が、メモリ64に記憶された適正位置を示す座標の範囲内にある場合に、特定した敷板26の位置が適正位置にあると判断する(S28:Yes)。なお、コントローラ60は、4つの敷板26のうち、1つの敷板26でも適正位置にない場合、敷板26が適正位置にないと判断する(S28:No)。ステップS28の処理は、本発明の請求項の「敷板位置判断処理」に相当する。
【0074】
コントローラ60は、敷板26の位置が適正位置でないと判断すると(S28:No)、第4報知画面を表示パネル71に表示させる(S29)。第4報知画面を表示パネル71に表示させるステップS29の処理は、本発明の請求項の「位置ずれ警報処理」に相当する。
【0075】
第4報知画面は、
図13に示されるように、「敷板の位置がずれています。敷板の位置をなおして「OK」を選択してください。」の文字と、「OK」アイコン85と、を有する。オペレータは、敷板26を移動させた後、「OK」アイコン85を選択する。
【0076】
コントローラ60は、
図8に示されるように、「OK」アイコン85が選択されるまで(S30:No)、第4報知画面を表示パネル71に表示させる。コントローラ60は、「OK」アイコン85が選択されたと判断すると(S30:Yes)、ステップS14以降の処理を再度実行する。
【0077】
コントローラ60は、ステップS28において、4つの敷板26の位置が全て適正位置であると判断すると(S30:Yes)、アウトリガシリンダ44、45を伸長させる(S31)。ステップS31の処理は、本発明の請求項の「駆動処理」に相当する。
【0078】
次に、コントローラ60は、インナービーム34、35の張り出し中に人などが検知エリア78に進入したか否かの確認のため、検知装置50、51が出力する検知情報を再度取得する(S32)。そして、コントローラ60は、検知エリア78に障害物を検知したか否かを判断する(S33)。コントローラ60は、検知エリア78に障害物を検知したと判断すると(S33:Yes)、アウトリガシリンダ44、45の伸長を停止する(S34)。そして、コントローラ60は、第5報知画面(
図14)を表示パネル71に表示させる(S35)。
【0079】
第5報知画面は、
図14に示されるように、「人或いは障害物があります。人或いは障害物を除去して「OK」を選択してください」の文字と、「OK」アイコン86と、を有する。オペレータは、人や障害物の有無を確認し、人を立ち去らせ、或いは障害物を除去した後、「OK」アイコン86を選択する。
【0080】
コントローラ60は、
図8に示されるように、第5報知画面において「OK」アイコン86が選択されるまで(S36:No)、第5報知画面を表示パネル71に表示させる。コントローラ60は、第5報知画面において「OK」アイコン86が選択されたと判断すると(S36:Yes)、或いはステップS33において、検知エリア78内に障害物を検知していないと判断すると(S33:No)、アウトリガシリンダ44、45が停止位置まで伸長したか否かを判断する(S37)。停止位置は、ジャッキ36、37が敷板26の直上となる位置である。コントローラ60は、例えば、敷板26の位置と、ステップS12で検知したインナービーム34、35の位置と、に基づいてアウトリガシリンダ44、45の駆動時間やスライド量などを決定し、決定した駆動時間或いはスライド量だけアウトリガシリンダ44、45を駆動させたか否かを、ステップS37で判断する。ステップS37の処理は、本発明の請求項の「位置確認処理」に相当する。
【0081】
コントローラ60は、アウトリガシリンダ44、45が停止位置まで伸長していないと判断すると(S37:No)、ステップS32、S33の処理を再度実行する。すなわち、コントローラ60は、人や障害物の有無を判断する。ステップS32の処理は、例えば、メモリ64に予め記憶された所定の時間間隔で、アウトリガシリンダ44、45が停止されるまで繰り返し実行される。
【0082】
コントローラ60は、アウトリガシリンダ44、45が停止位置まで伸長したと判断すると(S37:Yes)、アウトリガシリンダ44、45の駆動を停止させる(S38)。ステップS38の処理は、本発明の請求項の「停止処理」に相当する。
【0083】
次に、コントローラ60は、ジャッキ36、37を伸長させる(S39)。そして、コントローラ60は、圧力センサ42、43から入力した圧力信号が示す検知圧力が、メモリ64に予め記憶された閾値圧力以上になったか否かを判断する(S40)。コントローラ60は、検知圧力が閾値圧力に達するまで(S40:No)、ジャッキ36、37を伸長させる。コントローラ60は、検知圧力が閾値圧力以上になったと判断すると(S40:Yes)、ジャッキ36、37の駆動を停止させる(S41)。ステップS39の処理は、本発明の請求項の「接地処理」に相当する。
【0084】
コントローラ60は、メモリ64に記憶させた学習情報を、通信インタフェース69を通じて送信し(S42)、張出処理を終了する。学習プログラムは、移動体通信網及びインターネットを通じて学習情報を受信し、受信した学習情報を用いて深層学習を実行し、障害物が敷板26であるか否かの判断の精度を高める。ステップS42の処理は、本発明の請求項の「出力処理」に相当する。
【0085】
次に、コントローラ60が実行する格納処理について、
図9を参照して説明する。なお、張出処理において説明した処理と同様の処理については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0086】
オペレータは、作業現場において、クレーン作業が終了した後、操作装置15の格納ボタン47を操作する。コントローラ60は、格納ボタン47からオンの操作信号が入力したか否かを判断する(S51)。コントローラ60は、格納ボタン47からオンの操作信号が入力していないと判断すると(S51:No)、格納処理を終了する。なお、コントローラ60は、例えば所定の時間間隔で格納処理を繰り返し実行する。
【0087】
コントローラ60は、格納ボタン47からオンの操作信号が入力したと判断すると(S51:Yes)、ジャッキ36、37を縮小させる(S52)。例えば、コントローラ60は、メモリ64に予め記憶された駆動時間の間だけジャッキ36、37を縮小させる。
【0088】
次に、コントローラ60は、上述のステップS12、S13、S14、S15、S23の処理を実行する。コントローラ60は、ステップS23の処理において、敷板26以外の障害物を検知したと判断すると(S23:Yes)、上述のステップS24の処理を実行する。コントローラ60は、ステップS24の処理において、障害物が検知エリア78内にあると判断すると(S24:Yes)、上述の第5報知画面(
図14)を表示パネル71に表示させる(S53)。オペレータは、障害物を除去或いは障害物である人を立ち去らせた後、「OK」アイコン86を選択する。
【0089】
コントローラ60は、第5報知画面において「OK」アイコン86が選択されるまで、第5報知画面を表示パネル71に表示させる(S54:No)。コントローラ60は、「OK」アイコン86が選択されたと判断すると(S54:Yes)、ステップS14以降の処理を再度実行する。
【0090】
コントローラ60は、ステップS23において敷板26以外の障害物を検知していないと判断すると(S23:No)、或いは検知エリア78内に障害物を検知していないと判断すると(S24:No)、アウトリガシリンダ44、45を縮小させる(S55)。ステップS55の処理は、本発明の請求項の「駆動処理」に相当する。
【0091】
次に、コントローラ60は、インナービーム34、35の格納中に人などが検知エリア78に進入したか否かの確認のため、検知装置50、51が出力する検知情報を再度取得する(S32)。そして、コントローラ60は、検知エリア78に障害物を検知したか否かを判断する(S33)。コントローラ60は、検知エリア78に障害物を検知したと判断すると(S33:Yes)、張出処理と同様に、ステップS34、S35、S36の処理を実行する。
【0092】
次に、コントローラ60は、インナービーム34、35が格納位置まで到達したか否かを判断する(S56)。具体的には、コントローラ60は、アウトリガセンサ38、40から入力するアウトリガセンサ信号がオフからオンに変化したか否かを判断する。コントローラ60は、アウトリガセンサ信号がオフからオンに変化したことにより、インナービーム34、35が格納位置に到達したと判断する(S56:Yes)。
【0093】
コントローラ60は、インナービーム34、35が格納位置に到達したと判断するまで(S56:No)、ステップS32、S33の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0094】
コントローラ60は、インナービーム34、35が格納位置に到達したと判断すると(S56:Yes)、アウトリガシリンダ44、45の縮小を停止し(S57)、格納処理を終了する。
【0095】
[実施形態の作用効果]
【0096】
コントローラ60は、操作装置15から操作信号が入力されると、インナービーム34、35の可動領域75を含む検知エリア78を決定し、検知情報に基づいて、検知エリア78内に障害物があるか否かを判断する(S24)。そして、コントローラ60は、検知エリア78に障害物がないと判断すると(S24:No)、アウトリガシリンダ44、45を伸長させてインナービーム34、35をスライドさせる。すなわち、検知エリア78外に障害物があっても、検知エリア78内に障害物がなければ、インナービーム34、35のスライドが開始される。また、検知エリア78内に障害物があれば、インナービーム34、35のスライドは開始されない。すなわち、インナービーム34、35の張り出しが開始される前に、インナービーム34、35の張り出しに支障となる障害物の存在が確認される。
【0097】
コントローラ60は、敷板26の位置を特定し(S27)、ジャッキ36、37が敷板26の上方に位置したときにインナービーム34、35の駆動を停止させ(S38)、その後、ジャッキ36、37を伸長させて敷板26に当接させる(S39)。したがって、コントローラ60は、インナービーム34、35を張り出し、ジャッキ36、37を伸長させて敷板26に当接させるまでの作業を自動で行うことができる。その結果、アウトリガ30の張出作業に関するオペレータの手間が省略される。
【0098】
また、コントローラ60は、ジャッキ36、37が当接可能な適正位置に敷板26があるか否かを判断し(S28)、敷板26が適正位置にない場合(S28:No)、第4報知画面を表示パネル71に表示させて(S29)、敷板26の位置がずれていることをオペレータに通知する。したがって、オペレータは、敷板26が適切な位置にないことを認識することができる。
【0099】
また、コントローラ60は、4つの敷板26の全てが適正位置にあると判断したことに応じて(S28:Yes)、ジャッキ36、37を伸長させる(S39)。したがって、左右のジャッキ36、37のうち片方のジャッキ36だけが伸長されてクレーン車10が傾くことが防止される。
【0100】
また、検知装置50、51は、車体20の前後方向8において、前アウトリガ31と後アウトリガ32との間に配置されているので、検知装置50で、前アウトリガ31のインナービーム34と、後アウトリガ32のインナービーム34との両方のインナービーム34の可動領域75を含む検知エリア78を撮像領域73とすることができる。その結果、必要な検知装置の個数が低減する。すなわち、クレーン車10は、2つのインナービーム34及び2つのインナービーム35の4つのインナービームを備えているが、4つのインナービームに対してそれぞれ検知装置を設ける場合、4つの検知装置が必要となる。本実施形態では、2つの検知装置50、51によって、アウトリガ装置17の自動張出及び自動格納を行うことができる。
【0101】
また、コントローラ60は、インナービーム34、35の張り出し或いは格納に支障となる障害物を検知すると(S24:Yes)、第3報知画面を表示パネル71に表示させる(S25)。したがって、オペレータは、インナービーム34、35の張り出し或いは格納に支障となる障害物があることを認識することができる。
【0102】
また、コントローラ60は、画像データと、当該画像データが示す障害物が敷板26であることを示す学習情報とを学習プログラム宛てに送信する。したがって、コントローラ60は、学習プログラムに深層学習を行わせることができ、その結果、学習プログラムの判断精度を高めることができる。
【0103】
[変形例]
【0104】
上述の実施形態では、コントローラ60が、障害物が敷板26であるか否かの判断を学習プログラムに行わせる例を説明した。ただし、上述の判断は、コントローラ60が行ってもよい。その場合、学習情報をメモリ64に記憶させて出力するステップS22、S42の処理は省略されてもよい。
【0105】
上述の実施形態では、コントローラ60が、アウトリガセンサ38、39、40、41を用いてインナービーム34、35の位置を検知する例が説明された。ただし、コントローラ60は、上記検知情報(すなわち画像データ)を用いてインナービーム34、35の位置を検知してもよい。その場合、アウトリガセンサ38、39、40、41はクレーン車10に設けられない。すなわち、アウトリガセンサ38、39、40、41はなくてもよい。また、アウトリガセンサ38、39、40、41がクレーン車10に設けられない場合、インナービーム34、35の最大可動領域である第1可動領域76を含む領域が検知エリア78とされてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、コントローラ60が表示パネル71によって報知を行う例が説明された。ただし、この報知は、スピーカが行ってもよい。
【0107】
上述の実施形態では、人などの移動障害物及び固定障害物が同じ障害物として取り扱われ、検知エリア78が決定される。ただし、コントローラ60は、固定障害物を検知する固定障害物検知エリアと、人などの移動障害物を検知する移動障害物検知エリアとを決定してもよい。固定障害物検知エリアは、検知エリア78であり、移動障害物検知エリアは、検知エリア78を含み、検知エリア78よりも広いエリアである。2種類の検知エリアが決定されることにより、インナービーム34、35の張り出し及び格納における安全性がさらに向上する。
【0108】
上述の実施形態では、コントローラ60は、敷板26の位置がインナービーム34、35の可動領域75の直下にある場合に、敷板26が適正位置にあると判断する。しかしながら、コントローラ60は、4つの敷板26が全て適正位置にあり、かつ、4つの敷板26が、4つのインナービーム34、35の張出量が同一となる位置にある場合に、敷板26が適正位置にあると判断してもよい。その場合、4つのインナービーム34、35の張出量が同一となり、アウトリガ装置17によって、クレーン車10が、より安定して支持される。
【符号の説明】
【0109】
10・・・クレーン車
11・・・走行体
15・・・操作装置
17・・・アウトリガ装置
26・・・敷板
33・・・アウタービーム
34、35・・・インナービーム
44、45・・・アウトリガシリンダ
50、51・・・検知装置
60・・・コントローラ
75・・・可動領域
78・・・検知エリア