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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/36 20071001AFI20231011BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20231011BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20231011BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20231011BHJP
   F16H 3/091 20060101ALI20231011BHJP
   F16H 37/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60K6/36 ZHV
B60K6/40
B60K6/48
B60K6/547
F16H3/091
F16H37/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019181519
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021054352
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154192(JP,A)
【文献】特表2007-534553(JP,A)
【文献】特開2012-101606(JP,A)
【文献】特開2005-126021(JP,A)
【文献】特開2008-132812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
F16H 3/091
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに収容され、それぞれギヤ対を介して接続される第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸および第5の回転軸と、
前記変速機ケースの外部に設けられた電動機とを備え、
前記第1の回転軸が軸受を介して前記変速機ケースに回転自在に支持されており、
前記第1の回転軸の端部は、前記軸受よりも外方に突出しており、
前記第1の回転軸の軸方向の端部に無端可撓部材が巻き掛けられたスプロケットが取付けられており、
前記電動機の動力が前記無端可撓部材を介して前記第1の回転軸に伝達された後、前記第1の回転軸から前記第2の回転軸および前記第3の回転軸を介して前記第4の回転軸に伝達される車両用駆動装置であって、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸が前記ギヤ対を介して接続されており、
前記第2の回転軸は、前記第1の回転軸に対して前記無端可撓部材の張力が作用する方向に設置されており、
前記第1の回転軸と前記第5の回転軸が前記ギヤ対を介して接続されており、
軸方向から見て、前記第1の回転軸、前記第2の回転軸および前記第5の回転軸は、前記第1の回転軸の軸心と前記第2の回転軸の軸心を結んだ線分に対して、前記第1の回転軸の軸心と前記第5の回転軸の軸心を結んだ線分が略直角となるように設置されており、
前記電動機の出力軸の軸心と前記第1の回転軸の軸心を結んだ線分に対して、前記電動機の車両前進駆動時に張力が作用する前記無端可撓部材の張り側と反対側となる前記無端可撓部材の緩み側に前記第5の回転軸が設置されていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記電動機の出力軸の軸心と前記第1の回転軸の軸心を結んだ線分に対して、前記第5の回転軸と反対となる側に前記第2の回転軸が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の動力(回転速度)を変速して駆動輪に伝える変速機を備えた駆動装置として、モータの動力を入力するハイブリッド車両の駆動装置が知られている。このハイブリッド車両の駆動装置において、変速機ケースの内部にモータが組み込まれるタイプと変速機ケースの外部にモータが取付けられるタイプがある。
【0003】
変速機ケースの外部にモータが取付けられるタイプのハイブリッド車両の駆動装置として、モータの動力をギヤによって変速機に入力するタイプと、モータの動力をチェーンやベルト等の無端可撓部材によって変速機に入力するタイプがある。
【0004】
従来、モータの動力を無端可撓部材によって変速機に入力するハイブリッド車両の駆動装置として、特許文献1に記載されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-126021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータの動力を無端可撓部材によって変速機に入力する場合、無端可撓部材が巻き掛けられるスプロケット等は、整備性を考慮して変速機軸の端部に取付けられることが多い。さらに、変速機の組立性や軸支構造を優先し、軸を支持する軸受よりも軸の端部側にスプロケットが取付けられることが多い。すなわち、スプロケットは、変速機ケースに片持ち状態に支持された軸の端部に取付けられている。
しかしながら、このような従来のハイブリッド車両の駆動装置にあっては、スプロケットが変速機ケースに片持ち状態に支持された軸の端部に取付けられているので、片持ち状態で支持されたスプロケットにチェーンを介してモータの強力な動力が作用することになる。このため、スプロケットが取付けられた軸が変形するおそれがあり、改善の余地がある。
【0007】
従来のハイブリッド車両の駆動装置は、モータの動力が、ギヤでなくチェーンによって軸に伝達されるため、ギヤの噛み合いによる斥力が発生せずにチェーンの張力が作用するので、軸の変形が大きくなる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、軸受から突出する態様で軸受によって片持ちに支持された軸端部に、モータから無端可撓部材を介して動力が伝達される軸に関し、この軸が変形することを抑制できる車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、変速機ケースに収容され、それぞれギヤ対を介して接続される第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸および第5の回転軸と、前記変速機ケースの外部に設けられた電動機とを備え、前記第1の回転軸が軸受を介して前記変速機ケースに回転自在に支持されており、前記第1の回転軸の端部は、前記軸受よりも外方に突出しており、前記第1の回転軸の軸方向の端部に無端可撓部材が巻き掛けられたスプロケットが取付けられており、前記電動機の動力が前記無端可撓部材を介して前記第1の回転軸に伝達された後、前記第1の回転軸から前記第2の回転軸および前記第3の回転軸を介して前記第4の回転軸に伝達される車両用駆動装置であって、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸が前記ギヤ対を介して接続されており、前記第2の回転軸は、前記第1の回転軸に対して前記無端可撓部材の張力が作用する方向に設置されており、前記第1の回転軸と前記第5の回転軸が前記ギヤ対を介して接続されており、軸方向から見て、前記第1の回転軸、前記第2の回転軸および前記第5の回転軸は、前記第1の回転軸の軸心と前記第2の回転軸の軸心を結んだ線分に対して、前記第1の回転軸の軸心と前記第5の回転軸の軸心を結んだ線分が略直角となるように設置されており、前記電動機の出力軸の軸心と前記第1の回転軸の軸心を結んだ線分に対して、前記電動機の車両前進駆動時に張力が作用する前記無端可撓部材の張り側と反対側となる前記無端可撓部材の緩み側に前記第5の回転軸が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、軸受から突出する態様で軸受によって片持ちに支持された軸端部に、モータから無端可撓部材を介して動力が伝達される軸に関し、この軸が変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の左側面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の正面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の後面図である
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の上面図であり、シフトユニットが装着されていない状態を示す。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の軸配置を示す左側面図であり、レフトケースが装着されていない状態を示す。
図6図6は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の動力伝達系の展開図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の左側面図であり、モータ、減速機ケース、減速機カバーおよびシフトユニットが装着されていない状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置は、変速機ケースに収容され、それぞれギヤ対を介して接続される第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸および第5の回転軸と、変速機ケースの外部に設けられた電動機とを備え、第1の回転軸が軸受を介して変速機ケースに回転自在に支持されており、第1の回転軸の端部は軸受よりも外方に突出しており、この第1の回転軸の端部に無端可撓部材が巻き掛けられたスプロケットが取付けられており、電動機の動力が無端可撓部材およびスプロケットを介して第1の回転軸に伝達された後、第1の回転軸から第2の回転軸および第3の回転軸を介して第4の回転軸に伝達される車両用駆動装置であって、第1の回転軸と第2の回転軸がギヤ対を介して接続されており、第2の回転軸は、第1の回転軸に対して無端可撓部材の張力が作用する方向に設置されている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置は、軸受から突出する態様で軸受によって片持ちに支持された軸端部に、モータから無端可撓部材を介して動力が伝達される軸に関し、この軸が変形することを抑制できる。
【実施例
【0014】
以下、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置について、図面を用いて説明する。
図1から図7は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置を示す図である。図1から図7において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用駆動装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、車体2を備えており、車体2は、ダッシュパネル3によって前側のエンジンルーム2Aと後側の車室2Bとに仕切られている。
【0016】
エンジンルーム2Aには駆動装置4が設置されており、駆動装置4は、前進6速、後進1速の変速段を有する。駆動装置4は、本発明における車両用駆動装置を構成する。
【0017】
図2において、駆動装置4にはエンジン20が連結されている。駆動装置4は変速機ケース5を備えており、変速機ケース5は、エンジン20の側から順に、ライトケース6、レフトケース7、減速機ケース8、減速機カバー9、および、パーキングカバー42(図7参照)を有する。各ケースやカバーは、左右方向に垂直な面にて結合されている。つまり、各ケースやカバーの合わせ面は、左右方向に垂直な面に形成されている。
【0018】
エンジン20は、ライトケース6に連結されている。エンジン20は、図示しないクランク軸を有し、クランク軸は、車両1の幅方向(左右方向、以下、単に車幅方向という)に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン20は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両1は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。
【0019】
ライトケース6は、右側端部がエンジン20に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された仕切壁6Wを有し、右側が開口した形状のケースである。仕切壁6Wは、駆動装置4の後部にディファレンシャル装置17を設置するために、前部に比べて後部は右側に膨らんでディファレンシャル装置17の収容空間を形成している。レフトケース7は、エンジン20と反対側、すなわち、ライトケース6の左側に連結されている。図5に示すように、ライトケース6の仕切壁6Wの外周縁にはフランジ部6Aが形成されている。
【0020】
レフトケース7は、右側端部がライトケース6に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された左側壁7Kを有し、右側が開口した形状のケースである。図2図3に示すように、レフトケース7の周壁の右端部にはフランジ部7Aが形成されている。つまり、レフトケース7の右端部はその全体がフランジ部7Aとなっており、ライトケース6の左側に連結される合わせ面となっているので、車幅方向でレフトケース7の右端部は同じ位置となっている。
【0021】
これに対して、レフトケース7の左端部は、車幅方向で、後部が前部に比較してライトケース6側に位置している。このため、図4に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、前側の第1の左壁部7Cと、後側の第2の左壁部7Dとを有する。
【0022】
ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7Kは、左右方向に略垂直な面となっており、レフトケース7の左側壁7Kは、ライトケース6の仕切壁6Wと車幅方向で対向している。そして、レフトケース7の左側壁7Kとライトケース6の仕切壁6Wの間には、左側壁7K、仕切壁6W、レフトケース7の周壁に囲まれたギヤ室21が形成されている(図6参照)。
【0023】
図3図4に示すように、フランジ部7Aにはボルト10Aが挿入されるボス部7aが設けられており、ボス部7aは、フランジ部7Aに沿って複数設けられている。
【0024】
フランジ部6Aにはボス部7aに車幅方向で合致する複数のボス部6aが形成されており、ボルト10Aによってフランジ部6Aのボス部6aとフランジ部7Aのボス部7aを締結することで、ライトケース6とレフトケース7が締結されて一体化されている。
【0025】
仕切壁6Wの右側に位置するライトケース6の内部空間には、図示しないクラッチが収容されている。ライトケース6とレフトケース7にて形成されるギヤ室21には、図6に示す主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17が収容されている。
【0026】
図6に示すように、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17は、車幅方向(左右方向)に沿って平行に設置されている。また、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、およびカウンタ軸14は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に架設されている。後進軸15とディファレンシャル装置17は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)に架設されている。
【0027】
主入力軸11は、エンジン20からの動力を断接するクラッチを介してエンジン20に連結されており、クラッチを介してエンジン20の動力が伝達される。
【0028】
主入力軸11の右側部分は、仕切壁6Wを貫通して仕切壁6Wの右側に突出し、クラッチに接続されている。主入力軸11は、仕切壁6Wを貫通する部分で玉軸受22Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、主入力軸11の左端部11fは、玉軸受22Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0029】
アイドル軸12の右端部12rは、玉軸受23Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、アイドル軸12の左端部12fは、レフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)を貫通して左側壁7K(第1の左壁部7C)の左側に突出している。アイドル軸12は、左側壁7Kを貫通する部分で玉軸受23Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。アイドル軸12の左端部12fは、後述するスプロケット37が取付けられるスプロケット取付部12Mとなっている。
【0030】
副入力軸13の右端部13rは、玉軸受24Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、副入力軸13の左端部13fは、玉軸受24Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0031】
カウンタ軸14の右端部14rは、円錐ころ軸受25Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。そして、カウンタ軸14の左端部14fは、円錐ころ軸受25Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0032】
後進軸15の右端部15rは、玉軸受26Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されており、後進軸15の左端部15fは、玉軸受26Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0033】
ディファレンシャル装置17は、後述するデフケース17Bの右端部に形成された筒状部17bが、円錐ころ軸受を介してライトケース6の仕切壁6Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0034】
そして、後述するデフケース17Bの左端部に形成された筒状部17aが円錐ころ軸受を介してレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
以上説明した通り図4に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、フランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置する第1の左壁部7Cと、その後側に設置されフランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置し、かつ、第1の左壁部7Cのよりもライトケース6側に位置する第2の左壁部7Dとを有している。
【0035】
主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の左端部11f、12f、13f、14fは、第1の左壁部7Cの軸受支持部に支持されており、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも軸長の短い後進軸15の左端部15fとディファレンシャル装置17は、第2の左壁部7Dの軸受支持部に支持されている。つまり、第2の左壁部7Dは、少なくとも後進軸15およびディファレンシャル装置17の左側に位置するレフトケース7の左側壁7Kである。
【0036】
図6に示すように、主入力軸11は、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dを有する。
【0037】
1速段用の入力ギヤ11Aと2速段用の入力ギヤ11Bは、主入力軸11に一体に形成されており、主入力軸11と一体で回転する。3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dは、主入力軸11にスプライン嵌合されており、主入力軸11と一体で回転する。
【0038】
入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに向かうに従って径が大きくなっている。また、入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、エンジン20側から順に設置されている。
【0039】
軸方向の位置で、入力ギヤ11Aと11Bは、カウンタ軸14に後述する同期装置31が設置できるように離れて設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Bと11Cは、その間にカウンタ軸14に後述するリダクションドリブンギヤ14Eが設置できるように離れて設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Cと11Dは、カウンタ軸14に後述する同期装置32や後述するアイドル軸に同期装置33が設置できるように離れて設置されている。
【0040】
カウンタ軸14は、1速段用のカウンタギヤ14A、2速段用のカウンタギヤ14B、5速段用のカウンタギヤ14C、6速段用のカウンタギヤ14D、リダクションドリブンギヤ14Eおよび前進用のファイナルドライブギヤ14Fを有する。
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、ニードル軸受14a、14b、14c、14dを介してカウンタ軸14に支持されている遊転ギヤであり、カウンタ軸14と相対回転自在となっている。
【0041】
リダクションドリブンギヤ14Eは、カウンタ軸14にスプライン嵌合されており、カウンタ軸14と一体で回転する。前進用のファイナルドライブギヤ14Fは、カウンタ軸14に一体に形成されており、カウンタ軸14と一体で回転する。
【0042】
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dに向かうに従って径が小さくなっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0043】
また、カウンタギヤ14A、14B、14C、14D、リダクションドリブンギヤ14E、ファイナルドライブギヤ14Fは、エンジン20側から順に、ファイナルドライブギヤ14F、カウンタギヤ14A、14B、リダクションドリブンギヤ14E、カウンタギヤ14C、14Dの順に設置されている。
【0044】
アイドル軸12は、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cを有する。
【0045】
3速段用のアイドルギヤ12Aおよび4速段用のアイドルギヤ12Bは、ニードル軸受12a、12bを介してアイドル軸12に支持されている遊転ギヤであり、アイドル軸12と相対回転自在となっている。
【0046】
リダクションドライブギヤ12Cは、アイドル軸12の右端部12rを支持する玉軸受23Aとアイドル軸12の左端部12fを支持する玉軸受23Bの間の略中央部の位置となるように、アイドル軸12にスプライン嵌合されており、アイドル軸12と一体で回転する。3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cは、エンジン20側から順に、リダクションドライブギヤ12C、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bの順に設置されている。
【0047】
軸方向の位置で、リダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aは、その間に副入力軸13に設置される後述するリダクションドライブギヤ13Bの外周縁が入り込むことができるように離れて設置されている。
【0048】
3速段用のアイドルギヤ12Aは、3速/5速段用の入力ギヤ11Cに噛み合っている。4速段用のアイドルギヤ12Bは、3速段用のアイドルギヤ12Aよりも小径に形成されており、4速/6速段用の入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0049】
本実施例の駆動装置4は、3速段と5速段とが1つの3速/5速段用の入力ギヤ11Cを共用し、部品点数の削減と駆動装置4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。また、4速段と6速段とが1つの4速/6速段用の入力ギヤ11Dを共用し、部品点数の削減と駆動装置4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。
【0050】
さらに、3速段用のアイドルギヤ12Aと5速段用のカウンタギヤ14Cとが同一のギヤから構成されており、4速段用のアイドルギヤ12Bと6速段用のカウンタギヤ14Dが同一のギヤから構成されている。同じギヤを用いることで、生産性の向上が図られている。
【0051】
すなわち、3速段用のアイドルギヤ12Aを5速段用のカウンタギヤ14Cとして用いることが可能であり、その逆に、5速段用のカウンタギヤ14Cを3速段用のアイドルギヤ12Aとして用いることが可能である。また、4速段用のアイドルギヤ12Bを6速段用のカウンタギヤ14Dとして用いることが可能であり、その逆に、6速段用のカウンタギヤ14Dを4速段用のアイドルギヤ12Bとして用いることが可能である。
【0052】
副入力軸13は、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16を有する。リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16は、エンジン20側から順に、ダンパ機構16、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bの順に設置されている。
【0053】
リダクションドリブンギヤ13Aは、リダクションドライブギヤ12Cよりも大径に形成されており、リダクションドライブギヤ12Cに噛み合っている。リダクションドリブンギヤ13Aは、ダンパ機構16で許容される範囲内で副入力軸13と相対回転自在に、副入力軸13に支持されている。
【0054】
リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ13Aよりも大径で、かつ、リダクションドリブンギヤ14Eよりも小径に形成されており、リダクションドリブンギヤ14Eに噛み合っている。リダクションドライブギヤ13Bは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0055】
すなわち、リダクションドリブンギヤ14Eは、リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13Aおよびリダクションドライブギヤ13Bよりも大径に形成されている。このため、3速段と4速段とにおいて、アイドル軸12から副入力軸13を介してカウンタ軸14に伝達される動力は、5速段と6速段に比べて減速される。
【0056】
なお、減速比に関し、アイドル軸12に設置されたアイドルギヤ12Aとアイドルギヤ12Bを用いる変速段の間に、カウンタ軸14に設置されたカウンタギヤ14Cを用いる変速段を設定することも可能であるが、後述する同期装置32、33を動作させる変速機構が複雑となるため、本実施例では同期装置32、33が連続する変速段を切り替えるようにしている。
【0057】
本実施例のリダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aは、第1のリダクションギヤ対を構成しており、リダクションドライブギヤ13Bとリダクションドリブンギヤ14Eは、第2のリダクションギヤ対を構成している。すなわち、駆動装置4は、2組のリダクションギヤ対を有する。
【0058】
リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eは、それぞれが設置される各軸の軸方向の中央部に設置されている。軸方向で、第1のリダクションギヤ対は、第2のリダクションギヤ対のエンジン20側に設置され、入力ギヤ11B、カウンタギヤ14Bと同じ位置に設置されている。
【0059】
リダクションドリブンギヤ14Eの外周部の一部は、主入力軸11の軸方向で2速段用の入力ギヤ11Bと3速/5速段用の入力ギヤ11Cの間に入り込んでいる。リダクションドライブギヤ13Bの外周部の一部は、アイドル軸12の軸方向でリダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aの間に入り込んでいる。
【0060】
このため、大径のリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを用いても主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の軸間距離を短縮でき、変速機ケース5の小型化を図ることができる。この結果、駆動装置4の小型化を図ることができる。
【0061】
本実施例のアイドル軸12は本発明の第1の回転軸を構成し、副入力軸13は本発明の第2の回転軸を構成する。カウンタ軸14は本発明の第3の回転軸を構成し、デフケース17Bは本発明の第4の回転軸を構成する。主入力軸11は本発明の第5の回転軸を構成する。
【0062】
本実施例の入力ギヤ11Aおよびカウンタギヤ14Aと、入力ギヤ11Bおよびカウンタギヤ14Bと、入力ギヤ11Cおよびカウンタギヤ14Cと、入力ギヤ11Dおよびカウンタギヤ14Dと、入力ギヤ11Cおよびアイドルギヤ12Aと、入力ギヤ11Dおよびアイドルギヤ12Bと、リダクションドライブギヤ12Cおよびリダクションドリブンギヤ13Aと、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eと、前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよびファイナルドリブンギヤ17Aは、本発明のギヤ対を構成する。
【0063】
ダンパ機構16は、外筒部材16Aと、ゴム等の弾性体16Bと、内筒部材16Cとを有する。
【0064】
内筒部材16Cは、外筒部材16Aよりも小径に形成されており、外筒部材16Aの内径側に設置されている。つまり、軸方向で、内筒部材16Cは、外筒部材16Aと同じ位置に設置されている。内筒部材16Cは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0065】
弾性体16Bは、外筒部材16Aの内径と内筒部材16Cの外径の間に設置されており、外周面と内周面がそれぞれ外筒部材16Aと内筒部材16Cに固定されている。つまり、弾性体16Bは、径方向で外筒部材16Aと内筒部材16Cの間に設置されている。
【0066】
外筒部材16Aは、弾性体16Bを収容する部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びる延出部を有し、延出部の内周部には内周スプライン16aが形成されている。内筒部材16Cは、弾性体16Bを取付ける部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びて外筒部材16Aの延出部の内径側に入り込む延出部を有し、延出部には外周スプライン16cが形成されている。
【0067】
リダクションドリブンギヤ13Aは、外筒部材16Aの延出部の内径側に入り込むとともに、内筒部材16C側に延びる延出部を有し、延出部には外周スプライン13eが形成されている。そして、外周スプライン16c、13eは、外筒部材16Aの内周スプライン16aに嵌合されている。
【0068】
外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、周方向の隙間が小さく形成されており、タイト(回転方向のガタが比較的少ない状態)にスプライン嵌合している。つまり、外筒部材16Aとリダクションドリブンギヤ13Aは、一体で回転するようにスプライン嵌合している。
【0069】
これに対して、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、周方向の隙間が大きく形成されており、ルーズ(回転方向のガタが比較的多い状態)にスプライン嵌合している。つまり、外筒部材16Aと内筒部材16Cとは、多少の相対回転が可能な状態にスプライン嵌合している。
【0070】
ダンパ機構16は、副入力軸13とリダクションドリブンギヤ13Aとの間の動力伝達を行うが、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cの上記したスプライン嵌合により、異なる動力伝達経路を達成可能となっている。回転方向で、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接しない状態では弾性体16Bを介する動力伝達となり、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接する状態では内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達が可能となっている。
【0071】
つまり、ダンパ機構16は、伝達する動力が比較的小さい場合、弾性体16Bを介する動力伝達を行い、伝達する動力が比較的大きい場合、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接して内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達を行う。弾性体16Bは、微小なトルク変動(回転変動)を吸収して、歯打ち音等を抑制することができる。
【0072】
後進軸15は、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する。後進ギヤ15Aは、ニードル軸受15aを介して後進軸15に支持されており、後進軸15と相対回転自在となっている。後進ギヤ15Aは、1速段用のカウンタギヤ14Aに噛み合っている。
【0073】
後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、後進軸15に一体に形成されており、後進軸15と一体で回転する。後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0074】
カウンタ軸14には同期装置31が設けられており、同期装置31は、カウンタ軸14の軸方向で1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bの間に設置されている。同期装置31は、ハブ31A、スリーブ31Bおよびシンクロナイザリング31C、31Dを備えている。
【0075】
ハブ31Aの内周面は、カウンタ軸14にスプライン嵌合しており、ハブ31Aは、カウンタ軸14と一体で回転する。スリーブ31Bは、ハブ31Aにスプライン嵌合されており、カウンタ軸14の軸方向に移動自在となっている。
【0076】
スリーブ31Bは、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、中立位置から図示しないシフトフォークによって1速段用のカウンタギヤ14A側または2速段用のカウンタギヤ14B側に移動される。なお、図示したスリーブ31Bの位置は、中立位置である。
【0077】
例えば、自動によるシフト操作が行われる場合には、スリーブ31Bは、後述するシフトユニット50によって駆動される。シフトユニット50は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて同期装置31および後述する同期装置32、33、34を操作して変速段の制御を行う。
【0078】
スリーブ31Bの内周面にはスプライン31a、31bが形成されている。1速段用のカウンタギヤ14Aにはスプライン31aに嵌合するスプライン14gが形成されており、2速段用のカウンタギヤ14Bにはスプライン31bに嵌合するスプライン14hが形成されている。
【0079】
スリーブ31Bが中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31aが1速段用のカウンタギヤ14Aのスプライン14gに嵌合することにより、スリーブ31Bを介して1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結され、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0080】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0081】
スリーブ31Bが中立位置から2速段用のカウンタギヤ14B側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31bが2速段用のカウンタギヤ14Bのスプライン14hに嵌合することにより、スリーブ31Bとハブ31Aを介して2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14とに連結され、2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0082】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から2速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0083】
ここで、同期装置によって1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結されることは、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転するようにカウンタ軸14に直結されることである。以後、ギヤが回転軸に連結されるという表現は、ギヤが回転軸と一体で回転するように回転軸に直結されることを意味する。
【0084】
シンクロナイザリング31Cは、ハブ31Aと1速段用のカウンタギヤ14Aとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31aに嵌合するスプラインが形成されている。
【0085】
シンクロナイザリング31Dは、ハブ31Aと2速段用のカウンタギヤ14Bとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31bに嵌合するスプラインが形成されている。
【0086】
シンクロナイザリング31Cは、スリーブ31Bが中立位置から1速段のカウンタギヤ14A側に移動したときに、シンクロナイザリング31Cに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31aに係合し、1速段のカウンタギヤ14Aに摩擦接触することにより、1速段用のカウンタギヤ14Aの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0087】
シンクロナイザリング31Dは、スリーブ31Bが中立位置から2速段のカウンタギヤ14B側に移動したときに、シンクロナイザリング31Dに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31bに係合し、2速段のカウンタギヤ14Bに摩擦接触することにより、2速段用のカウンタギヤ14Bの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0088】
このように本実施例の同期装置31は、1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bを選択的にカウンタ軸14に連結し、連結時に同期動作を行うことで変速ショックや異音が発生することを抑制する。
【0089】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。また、エンジン20の動力が主入力軸11から2速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0090】
カウンタ軸14には更に、上記した同期装置31と同様の働きをする同期装置32が設けられており、同期装置32は、カウンタ軸14の軸方向で5速段用のカウンタギヤ14Cと6速段用のカウンタギヤ14Dの間に設置されている。
【0091】
アイドル軸12には上記した同期装置31、32と同様の働きをする同期装置33が設置されており、同期装置33は、アイドル軸12の軸方向で3速段用のアイドルギヤ12Aと4速段用のアイドルギヤ12Bの間に設置されている。
【0092】
シフト操作によって3速段にシフトされると、同期装置33は、3速段のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0093】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび3速段用のアイドルギヤ12Aを介してアイドル軸12に伝達される。
【0094】
シフト操作によって4速段にシフトされると、同期装置33は、4速段用のアイドルギヤ12Bをアイドル軸12に連結する。
【0095】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび4速段用のアイドルギヤ12Bを介してアイドル軸12に伝達される。
【0096】
アイドル軸12にエンジン20の動力が伝達されると、エンジン20の動力は、アイドル軸12からリダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、ダンパ機構16、副入力軸13、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0097】
これにより、3速段および4速段において、アイドル軸12からダンパ機構16、副入力軸13を介してカウンタ軸14に動力が伝達されるとともに、伝達される動力(回転速度)が減速される。
【0098】
シフト操作によって5速段にシフトされると、同期装置32は、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0099】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび5速段用のカウンタギヤ14Cを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0100】
シフト操作によって6速段にシフトされると、同期装置32は、6速段用のカウンタギヤ14Dをカウンタ軸14に連結する。
【0101】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび6速段用のカウンタギヤ14Dを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0102】
後進軸15には同期装置34が設置されている。シフト操作によって後進段にシフトされると、同期装置34は、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結し、後進ギヤ15Aを後進軸15と一体で回転させる。なお、後進軸15には、エンジン20側から順に、後進用のファイナルドライブギヤ15B、後進ギヤ15A、同期装置34の順に設置されている。
【0103】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび後進ギヤ15Aを介して後進軸15に伝達される。
【0104】
同期装置32、33、34は、所謂、シングルコーン式であり、同期装置31は、所謂、トリプルコーン式であるが、同期装置32、33、34は、同期装置31と同様の同期動作を行うので、具体的な説明は省略する。
【0105】
前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。これにより、カウンタ軸14の動力は、前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経て、後進軸15の動力は、後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経て、ディファレンシャル装置17に伝達される。
【0106】
ディファレンシャル装置17は、ファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aが外周部に取付けられたデフケース17Bと、デフケース17Bに内蔵された差動機構17Cとを有する。
【0107】
デフケース17Bの左端部には筒状部17aが設けられており、デフケース17Bの右端部には筒状部17bが設けられている。筒状部17a、17bには左右のドライブシャフト18L、18Rのそれぞれの一端部が挿通されている。
【0108】
左右のドライブシャフト18L、18Rの一端部は、差動機構17Cに連結されており、左右のドライブシャフト18L、18Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0109】
ディファレンシャル装置17は、エンジン20の動力を差動機構17Cによって左右のドライブシャフト18L、18Rに分配して駆動輪に伝達する。
【0110】
図2図4図5に示すように、レフトケース7の前方の上側にはモータ35が設置されている。つまり、図2に示すように、前面視でモータ35はレフトケース7と重なるように配置されている。
【0111】
また、図4に示すように、上面視でモータ35はレフトケース7と重なるように配置されている。モータ35は、モータケース35Aと、モータケース35Aに回転自在に支持されたモータ出力軸35B(図5図6参照)と、モータケース35Aに取付けられたモータコネクタ35Cとを有する。本実施例のモータ35は、本発明の電動機を構成する。
【0112】
モータケース35Aの右側端部は、ブラケット36A、36Bによってライトケース6の上壁6Bと前壁6Cに取付けられている。モータケース35Aの左側端部は、減速機ケース8に取付けられている。すなわち、モータ35は、モータ出力軸35Bを左右方向に沿った状態で変速機ケース5の前方の上側に設置されている。そして、モータ35および出力軸35Bは、変速機内部に配置された軸と図5に示すような位置関係に配置されている。
【0113】
モータケース35Aの内部にはいずれも図示しないロータと、コイルが巻き付けられたステータとが収容されている。
【0114】
モータ35において、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ出力軸35Bと一体のロータを回転駆動させる。
【0115】
モータコネクタ35Cは、モータケース35Aの右側端部から上方に突出している。モータコネクタ35Cには、モータ35を駆動するための電力を供給する図示しないパワーケーブルが接続される。パワーケーブルは、モータコネクタ35Cに対して左側から挿入することで接続される。つまり、パワーケーブルは、モータケース35Aの上方を通過するように配索されている。
【0116】
図6に示すように、アイドル軸12の左端部にはスプロケット取付部12Mが設けられており、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bおよび左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも外方、すなわち、レフトケース7の外方に突出している。
【0117】
このため、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bに片持ちで支持されている。本実施例のスプロケット取付部12Mは、本発明の第1の回転軸の軸方向の端部を構成し、玉軸受23Bは、本発明の軸受を構成する。
【0118】
スプロケット取付部12Mはスプラインが形成されてスプライン軸となっている。スプロケット取付部12Mのスプラインにスプライン嵌合して、スプロケット取付部12Mにスプロケット37が取付けられている。
【0119】
そして、スプロケット37にはチェーン38が巻き掛けられている。チェーン38は、モータ出力軸35Bに取付けられた図示しないスプロケットに巻き掛けられている。本実施例のチェーン38は、本発明の無端可撓部材を構成する。
【0120】
このため、モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38およびスプロケット37を介してアイドル軸12に伝達される。すなわち、アイドル軸12は、モータ35の動力が伝達される入力軸として機能する。
【0121】
図5に示すように、モータ出力軸35Bは、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15よりも前方に設置され、更に軸心の位置で比較すると各軸よりも上方に設置されている。
【0122】
アイドル軸12は、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15の中で最も前側に設置された軸であり、モータ出力軸35Bの後側斜め下方に設置されている。主入力軸11は、アイドル軸12の後側斜め上方に設置されており、副入力軸13は、アイドル軸12の後側斜め下方に設置されている。
【0123】
カウンタ軸14は、アイドル軸12の後方で、かつ、上下方向で主入力軸11と副入力軸13の間に設置されている。
【0124】
すなわち、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14は、主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3とカウンタ軸14の軸心O4とを結んだ仮想線L1が四角形となるようにギヤ室21に設置されている。そして、図5において、四角形の主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2を結んだ仮想直線L4に対向するように、モータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。詳細には、軸心O1と軸心O2を結んだ仮想直線L4に対向しつつ、やや軸心O2よりにモータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。
【0125】
更に、レフトケース7は、モータ35に対向する面が仮想直線L4と同様に前下がりの斜めの面であって、モータ35に対向する面が仮想直線L4よりも急角度の前下がりの斜面に形成されており、モータ35に対向する面の前方にモータ35の設置空間を形成し、モータ35をより後方に配置できるようにしている。つまり、レフトケース7は、前側の上部が前側の下部に比較して後方に位置し、前側の上部の前方にモータ35の設置空間を形成している。
【0126】
このため、アイドル軸12は、主入力軸11、アイドル軸12およびカウンタ軸14よりもモータ35に接近した位置に設置している。このため、チェーン38を短くすることができ、減速機ケース8の小型化を図ることができ、駆動装置4の小型化を図ることができる。
【0127】
副入力軸13は、アイドル軸12に対してチェーン38の張力が作用する方向T、すなわち、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2の略線上に設置されている。
【0128】
具体的には、副入力軸13の軸心O3は、仮想直線L2に対してやや前方に位置している。つまり、副入力軸13は、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2に対して主入力軸11が設置される側の反対側に設置されている。
【0129】
主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、アイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3を結んだ仮想直線L3に対して、アイドル軸12の軸心O2と主入力軸11の軸心O1を結んだ仮想直線L4が略直角となるように設置されている。
【0130】
また、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2に対して、アイドル軸12の軸心O2と主入力軸11の軸心O1を結んだ仮想直線L4が略直角となるように設置されている。
【0131】
具体的には、主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、仮想直線L4が仮想直線L3に対して鈍角になるように設置されている。また、主入力軸11は、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2に対して副入力軸13が設置される側の反対側に設置されている。
【0132】
図5に示すように、後進軸15は、ファイナルドリブンギヤ17Aの上方で、かつ、カウンタ軸14の後側斜め上方に設置されており、軸心の位置で比較すると主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも上方に設置されている。
【0133】
図7に示すように、レフトケース7の左側壁7Kには開口部7hが形成されている。開口部7hにはアイドル軸12のスプロケット取付部12Mが挿通されており、スプロケット取付部12Mは、開口部7hを通してギヤ室21から外方(左方)に突出している。図7では図示省略しているが、スプロケット37は、レフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも左側であって、レフトケース7の外に設置されている。
【0134】
図1図2に示すように、減速機ケース8は、モータケース35Aを左方から覆うようにして図示しないボルトによってモータケース35Aとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に取付けられている。
【0135】
減速機ケース8は、チェーン38を収容しており、モータ出力軸35Bのスプロケットとスプロケット37とに巻き掛けられるチェーン38に沿った形状に形成されている。左方向から見て、レフトケース7の前部の左側方から前方斜め上方にかけて、後部が下方となるように後側斜め下方に傾斜するように設置されている。
【0136】
減速機ケース8は、右側面のモータ出力軸35Bの挿入部とスプロケット取付部12Mの挿入部と左側は、開口しており、減速機カバー9が減速機ケース8の左側開口を閉止するようにボルト10Bによって減速機ケース8に取付けられている。
【0137】
レフトケース7の左側壁7Kには図示しない開口部が形成されている。レフトケース7にはボルト10Cによってパーキングカバー42が取付けられており、パーキングカバー42によって開口部が覆われている。駆動装置4には図示しないパーキング装置が設置されている。
【0138】
レフトケース7の左側壁7Kからパーキングカバー42が取り外されると、作業者は、パーキング装置の交換作業やメンテナンス作業を行うことができる。
【0139】
図1に示すように、レフトケース7の上壁7Eにはシフトユニット50が設置されており、シフトユニット50は、モータ35の後方に位置している。
【0140】
シフトユニット50は、ベースプレート51、リザーバタンク52、アキュムレータ53、オイルポンプ54、モータ55および筐体56を備えている。
【0141】
ベースプレート51は、平板状のプレート部51Aと、プレート部51Aの後部から下方に突出するアキュムレータ取付部51Bとを備えており、プレート部51Aは、ボルト10Dによってレフトケース7の上壁7Eに取付けられている。
【0142】
リザーバタンク52は、プレート部51Aの上側に取付けられており、リザーバタンク52にはシフトアンドセレクト軸57(図4図7参照)を動作させる操作用のオイルが貯留されている。
【0143】
オイルポンプ54は、プレート部51Aの後端部の下側に取付けられている。モータ55は、オイルポンプ54と上下方向でプレート部51Aを挟んで対向するようにプレート部51Aの後端部の上側に設置されている。
【0144】
オイルポンプ54は、モータ55によって駆動されることにより、リザーバタンク52に貯留されている作動油を加圧してプレート部51Aとアキュムレータ取付部51Bとに形成された図示しない油路を介してアキュムレータ53に供給する。すなわち、ベースプレート51の内部には油路が形成されており、オイルポンプ54はアキュムレータ53に加圧された作動油を供給および蓄圧する。
【0145】
アキュムレータ53は、アキュムレータ取付部51Bに取付けられており、アキュムレータ取付部51Bからレフトケース7の後方を横切るように左方に延びている。図3に示すように、アキュムレータ53は、左右方向でレフトケース7の第2の左壁部7Dよりも左側に設置されている。
【0146】
アキュムレータ53は、オイルポンプ54から供給された作動油の圧力を蓄え、ベースプレート51に形成された図示しない油路を通して高圧の油圧を筐体56に供給する。
【0147】
筐体56は、リザーバタンク52の後方に位置するようにプレート部51Aの上側に設置されており、筐体56には、いずれも図示しない制御装置、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイド、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータが設けられている。
【0148】
シフト操作ソレノイドおよびセレクト操作ソレノイドは、アキュムレータ53から供給される高圧の作動油をシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータに作用させることによってシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動し、シフトアンドセレクト軸57をシフト方向とセレクト方向に操作するとともに、クラッチの断接を操作する。
【0149】
制御装置は、モータ55に駆動信号を出力してモータ55を駆動する。また、制御装置は、例えば、運転席に設けられる図示しないシフトレバーのシフト操作を検出する図示しないシフトポジョンセンサの検出情報、車速を検出する図示しない車速センサの検出情報、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ等からの検出情報に基づいて変速点を判断する。
【0150】
制御装置は、変速点を判断したときに、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイドを制御して、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動することにより、シフトアンドセレクト軸57を操作する。
【0151】
次に、主な変速段における動力伝達経路を説明する。
(変速段が1速段の場合の動力伝達経路)
1速段においては、同期装置31が中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動し、1速段用のカウンタギヤ14Aをカウンタ軸14に連結する。
【0152】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0153】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0154】
なお、2速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、1速段と同様に2速段用の入力ギヤ11B、2速段用のカウンタギヤ14Bおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0155】
(変速段が3速段の場合の動力伝達経路)
3速段においては、同期装置33が中立位置から3速段用のアイドルギヤ12A側に移動し、3速段用のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0156】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、3速段用のアイドルギヤ12Aおよび同期装置33を介してアイドル軸12に伝達される。
【0157】
次いで、アイドル軸12に伝達されたエンジン20の動力は、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aに伝達され、ダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0158】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0159】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、ダンパ機構16の外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、タイト(ガタがほとんどない)にスプライン嵌合し、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、ルーズ(ガタを有する)にスプライン嵌合している。内筒部材16Cと副入力軸13はタイトにスプライン嵌合している。
【0160】
このため、エンジン20の微小な回転変動やトルク変動を含む動力がリダクションドリブンギヤ13Aからダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、動力が副入力軸13に伝達される。
【0161】
また、逆に、微小な回転変動やトルク変動を含む動力が副入力軸13からダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、リダクションドリブンギヤ13Aに動力が伝達される。
【0162】
一方、伝達するトルクが比較的大きくて弾性体16Bが周方向に過度に弾性変形する場合には、ルーズに設定されている外筒部材16Aの内周スプライン16aの歯と内筒部材16Cの外周スプライン16cの歯が接触することにより、内周スプライン16aと外周スプライン16cによって動力伝達が行われ、弾性体16Bが弾性変形することが抑制される。このため、弾性体16Bの耐久性が悪化することを防止できる。
【0163】
なお、4速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、3速段と同様にアイドル軸12、ダンパ機構16および副入力軸13を経てカウンタ軸14に伝達される。
【0164】
3速段および4速段においては、エンジン20の微小なトルク変動や回転変動がダンパ機構16によって吸収できるので、各ギヤの歯打ち音等を抑制できる。
【0165】
(変速段が5速段の場合の動力伝達経路)
5速段においては、同期装置32が中立位置から5速段用のカウンタギヤ14C側に移動し、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0166】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、5速段用のカウンタギヤ14Cおよび同期装置32を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0167】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0168】
なお、6速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、5速段と同様にカウンタ軸14に伝達される。
【0169】
(後進段の場合の動力伝達経路)
後進段においては、同期装置34が中立位置から後進ギヤ15A側に移動し、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結する。
【0170】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14A、後進ギヤ15Aおよび同期装置34を介して後進軸15に伝達される。
【0171】
後進軸15に伝達されたエンジン20の動力は、後進軸15に形成された後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0172】
(モータの動力伝達経路)
モータ35は、車両1のモータ走行時の動力を得る場合と、車両1の発進および加速時にエンジン20の動力をアシストする動力を得る場合と、変速中に同期装置31、32、33、34がそれまでの変速段を達成する位置から新たな変速段を達成する位置に移動するまでの間にエンジン20の動力を補完するギャップフィリング用の動力を得る場合とに使用される。
【0173】
ギャップフィリングとは、有段変速機において変速する場合に必要となるクラッチの切断によるエンジン20からの駆動力の途切れである。モータ35は変速時に途切れるエンジン20の動力を補完するように駆動力を出力し、車両のスムーズな走行を可能とする。
【0174】
モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38を介してアイドル軸12に伝達された後、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aおよびダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0175】
カウンタ軸14に伝達されたモータ35の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0176】
なお、モータ35は正転と逆転が可能で、モータ35を前進時の正転に対して逆回転させることでモータ35の動力は後進時にも使用可能となっている。後進時におけるモータの動力伝達経路は上記した前進時におけるモータの動力伝達経路と同じである。
【0177】
つまり、モータ35のモータ出力軸35Bと駆動輪は、常に動力が伝達可能に連結されている。モータ35は発電も可能であって、例えば車両の減速時に、モータ35は回生発電を行う。
【0178】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、モータ35の微小な回転変動やトルク変動を含む駆動力がリダクションドリブンギヤ13Aに入力されると、3速段および4速段と同様にダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、副入力軸13に駆動力が伝達される。
【0179】
したがって、モータ35の微小な回転変動やトルク変動が副入力軸13に伝わることが抑制されて、各ギヤの歯打ち音等の異音の発生を防止でき、車両1の商品性を向上させることができる。
【0180】
次に、本実施例の駆動装置4の効果を説明する。
図5に示すように、駆動装置4を車幅方向の左側から見て、車両1の前進時では、主入力軸11、副入力軸13およびデフケース17B(ファイナルドリブンギヤ17A)は反時計回りR1に回転し、アイドル軸12およびカウンタ軸14は時計回りR2に回転する。
【0181】
このとき、モータ出力軸35Bは時計回りR2に回転する。モータ35の動力は、チェーン38を介してアイドル軸12に伝達された後、アイドル軸12から副入力軸13およびカウンタ軸14を介してデフケース17Bに伝達される。
【0182】
本実施例の駆動装置4は、アイドル軸12の左端部に形成されたスプロケット取付部12Mが玉軸受23Bよりも外方に設けられており、スプロケット取付部12Mが玉軸受23Bに片持ちで支持されている。
【0183】
これにより、モータ35のモータ出力軸35Bからチェーン38を介してスプロケット37に動力が伝達されるときに、チェーン38の張力(すなわち、モータ35の動力)によってスプロケット取付部12Mがモータ出力軸35B側に引っ張られる。
【0184】
アイドル軸12は、玉軸受23Bから外方に突出して片持ち状態で支持されているスプロケット取付部12Mが引っ張られることで弾性変形し、アイドル軸12の左側が玉軸受23Bを支点として変位し、アイドル軸12の中央部がモータ35から離れる方向に屈曲しようとする。
【0185】
本実施例の駆動装置4によれば、アイドル軸12と副入力軸13がリダクションドライブギヤ12Cおよびリダクションドリブンギヤ13A(第1のリダクションギヤ対)を介して接続されており、副入力軸13は、アイドル軸12に対してチェーン38の張力が作用する方向Tに設置されている。
【0186】
しかも、リダクションドライブギヤ12Cは、アイドル軸12の右端部12rを支持する玉軸受23Aとアイドル軸12の左端部12fを支持する玉軸受23Bの間の略中央部の位置となるように配置され、リダクションドリブンギヤ13Aと噛み合っている。
【0187】
これにより、アイドル軸12の中央部が玉軸受23Bを支点としてモータ35から離れる方向に屈曲しようとした場合に、リダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aの噛み合いによる斥力によってスプロケット取付部12Mを支持できる。
【0188】
図5において、リダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aの噛み合いによる斥力は、仮想直線L3に沿ってリダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aが離れる方向に発生する。
【0189】
このため、アイドル軸12の中央部の変位を抑制することができ、スプロケット取付部12Mの支持剛性を向上でき、モータ35から動力が伝達されるスプロケット取付部12M(すなわち、アイドル軸12)が変形することを抑制できる。
【0190】
また、図5のように車幅方向の左側から見た場合に、車両1の前進加速時には、モータ35から強力な駆動力がアイドル軸12に入力されるとともに、駆動輪の反力がデフケース17Bからカウンタ軸14を介して副入力軸13に伝達される。
【0191】
このとき、アイドル軸12はモータ35の駆動力によって時計回りR2に回転を増速させようとし、副入力軸13は反時計回りR1の回転速度を維持しようとする。
【0192】
このため、副入力軸13のリダクションドリブンギヤ13Aからアイドル軸12のリダクションドライブギヤ12Cに伝達される噛み合い反力によってアイドル軸12の中央部が主入力軸11側に変位(屈曲)しようとする。
【0193】
本実施例の駆動装置4によれば、アイドル軸12と主入力軸11が入力ギヤ11Cとアイドルギヤ12A、および入力ギヤ11Dとアイドルギヤ12Bを介して接続されている。
【0194】
これに加えて、主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、アイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3を結んだ仮想直線L3に対して、アイドル軸12の軸心O2と主入力軸11の軸心O1を結んだ線分L4が略直角となるように設置されている。
【0195】
これにより、アイドル軸12の中央部が主入力軸11側(接線方向)に変位(屈曲)しようとする場合に、入力ギヤ11Cとアイドルギヤ12Aの噛み合いによる斥力と、入力ギヤ11Dとアイドルギヤ12Bの噛み合いによる斥力とによってアイドル軸12を支持できる。
【0196】
入力ギヤ11Cとアイドルギヤ12Aの噛み合いによる斥力と、入力ギヤ11Dとアイドルギヤ12Bの噛み合いによる斥力とは、線分L4に沿って発生する。また、略直角とは、90°±20°の範囲を指す。
【0197】
なお、車両1の前進時において、チェーン38の張力が作用する方向Tと、アイドル軸12と副入力軸13の噛み合い接線方向とは、それぞれ副入力軸13と主入力軸11に向かう。
【0198】
このため、片持ち状態のスプロケット取付部12Mにチェーン38の張力が作用してアイドル軸12が主入力軸11側や副入力軸13側に変形しようとした場合に、リダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aの噛み合いによる斥力と、入力ギヤ11Cとアイドルギヤ12Aの噛み合いによる斥力と、入力ギヤ11Dとアイドルギヤ12Bの噛み合いによる斥力とによってアイドル軸12の中央部が主入力軸11側や副入力軸13側に屈曲(変位)しようとする荷重を確実に受け止めることができる。
【0199】
このため、スプロケット取付部12Mの支持剛性をより一層向上でき、スプロケット取付部12Mが変形することをより効果的に抑制できる。
【0200】
なお、本実施例の駆動装置4は、モータ35の動力をチェーン38によってアイドル軸12に伝達しているが、これに限定されるものではない。例えば、モータ35の動力をベルトによってアイドル軸12に伝達してもよい。
【0201】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0202】
1...車両、4...駆動装置(車両用駆動装置)、5...変速機ケース、11...主入力軸(第5の回転軸)、12...アイドル軸(第1の回転軸)、11A,11B,11C,11D...入力ギヤ(ギヤ対)、12C...リダクションドライブギヤ(ギヤ対)、12M...スプロケット取付部(第1の回転軸の軸方向の端部)、13...副入力軸(第2の回転軸)、13A...リダクションドリブンギヤ(ギヤ対)、13B...リダクションドライブギヤ(ギヤ対)、14...カウンタ軸(第3の回転軸)、14A,14B,14C,14D...カウンタギヤ(ギヤ対)、14E...リダクションドリブンギヤ(ギヤ対)、14F...前進用のファイナルドライブギヤ(ギヤ対)、17A...ファイナルドリブンギヤ(ギヤ対)、17B...デフケース(第4の回転軸)、35...モータ(電動機)、37...スプロケット、38...チェーン(無端可撓部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7