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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231011BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20231011BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/045
B41J2/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019204188
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021074987
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171750(JP,A)
【文献】特開2019-151027(JP,A)
【文献】特表2011-520671(JP,A)
【文献】特開2017-065249(JP,A)
【文献】特開2017-074759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0275802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に吐出圧力が付与される圧力室と、
前記圧力室から第1方向に延びたディセンダと、
前記ディセンダから、前記第1方向に交差する第2方向に延びた連通路と、
前記連通路と帰還マニホールドとの間を結ぶ第1帰還路及び第2帰還路と、
前記連通路に接続されたノズルと、を備え、
前記第1帰還路及び前記第2帰還路は、前記連通路に対し、前記第2方向に直交する方向の対向位置に接続され、
前記ノズルは、前記連通路において、前記ディセンダの軸心からオフセットした位置であって、かつ、前記第1帰還路の前記連通路との接続箇所と前記第2帰還路の前記連通路との接続箇所との間に挟まれる位置に設けられている、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記連通路は、前記ディセンダに接続された一方端と、前記一方端と反対側の他方端を有し、
前記第1帰還路及び前記第2帰還路は、前記連通路の他方端に接続されている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記連通路は、前記第1帰還路に接続された第1接続口、前記第2帰還路に接続された第2接続口、及び、前記ノズルに接続された第3接続口を有し、
前記第3接続口は、前記第1接続口の中心と前記第2接続口の中心とを結ぶ線分上に配置されている、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第3接続口の中心は前記線分上に配置されている、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1帰還路の流路抵抗と、前記第2帰還路の流路抵抗とは互いに等しい、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1帰還路及び前記第2帰還路は、前記第2方向に延びた前記連通路の軸心に対して対称な形状を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1帰還路及び前記第2帰還路のそれぞれは、前記第1方向に直交する方向において曲がっている、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1帰還路及び前記第2帰還路のそれぞれは直線的に延びている、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ノズルは、前記連通路に接続された基端、及び、前記基端と反対側の先端を有し、前記ノズルの軸心方向に直交する断面積が前記基端から前記先端に向かって小さくなるテーパ形状を有している、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記ノズルの軸心方向において、前記連通路の寸法が前記第1帰還路の寸法と等しく、且つ、前記第2帰還路の寸法と等しい、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出ヘッドとして、特許文献1の液体吐出ヘッドは、ノズル、圧力室、これらに接続されたノズル連通路、及び、ノズル連通路と循環共通流路に接続された複数の循環個別流路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の液体吐出ヘッドでは、ノズル連通路から循環共通流路に液体が流れる際、液体は複数の循環個別流路を介して流れる。このため、ノズル連通路及びノズルにおいて液体の流れが均一化することにより、ノズルから吐出される液体の経路が所望の方向からずれることを低減している。
【0005】
しかしながら、上記液体吐出ヘッドでは、仮に気泡がノズル開口からノズルに侵入した状態で、圧力室に圧力が付与されると、圧力が圧力室からノズル連通路を介してノズルに与えられる。このため、このような圧力により気泡がノズルに押し留められてしまう。これにより、気泡がノズル開口を塞いだり、ノズルの壁面に付着して圧力を吸収したりし、液体がノズルから吐出されないという不具合を招きかねない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、吐出不良を抑制することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出ヘッドは、液体に吐出圧力が付与される圧力室と、前記圧力室から第1方向に延びたディセンダと、前記ディセンダから、前記第1方向に交差する第2方向に延びた連通路と、前記連通路と帰還マニホールドとの間を結ぶ第1帰還路及び第2帰還路と、前記連通路に接続されたノズルと、を備え、前記第1帰還路及び前記第2帰還路は、前記連通路に対し、前記第2方向に直交する方向の対向位置に接続され、前記ノズルは、前記連通路において、前記ディセンダの軸心からオフセットした位置であって、かつ、前記第1帰還路の前記連通路との接続箇所と前記第2帰還路の前記連通路との接続箇所との間に挟まれる位置に設けられている。
【0008】
これによれば、液体が第1帰還路及び第2帰還路を流れることにより、連通路から帰還マニホールドへの流れが分散する。このため、第1帰還路との接続箇所と第2帰還路との接続箇所との間に挟まれた位置に設けられたノズルでは、液体の流れが均一化し、所望の方向に対し液体の吐出方向がずれることを低減することができる。
【0009】
また、圧力室に付与された圧力は、ディセンダを介して連通路に伝播する際に、第1方向から第2方向側へ向きを変える。これにより、仮にノズルに気泡が侵入していても、気泡をノズルへ押し込む力が減少し、ノズルにおける気泡の滞留が低減され、気泡による不吐出等の吐出不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置を概略的に示す図である。
図2図1の液体吐出ヘッドを第3方向に直交する断面で切断した断面図である。
図3図2のA-A線に沿って切断した液体吐出ヘッドの一部の断面図である。
図4図4(a)は、変形例1に係る液体吐出ヘッドの一部の断面図である。図4(b)は、変形例2に係る液体吐出ヘッドの一部の断面図である。
図5】変形例3に係る液体吐出ヘッドの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0012】
(実施の形態)
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド」と称する。)10を備える液体吐出装置11は、図1に示すように、インク等の液体を吐出する装置である。以下では、液体吐出装置11を、液体を被記録媒体Pに吐出して画像を形成するインクジェットプリンタに適用した例について説明するが、液体吐出装置11はこれに限定されない。また、被記録媒体Pには、紙及び布等のシート材を用いることができる。
【0013】
液体吐出装置11は、ラインヘッド方式が採用され、プラテン12、搬送部13、ヘッドユニット14、貯留タンク15及び制御部16を備えている。但し、液体吐出装置11はラインヘッド方式に限定されず、例えば、シリアルヘッド方式等の他の方式も採用し得る。
【0014】
プラテン12は、平板部材であり、その上面に被記録媒体Pが配置され、その被記録媒体Pとヘッドユニット14との距離を決める。
【0015】
搬送部13は、例えば、2つの搬送ローラ13a、及び、搬送モータを有する。2つの搬送ローラ13aは、搬送方向においてプラテン12を互いの間に挟み、互いに平行に配置されており、搬送モータに連結されている。この搬送モータが駆動されると、搬送ローラ13aが回転し、プラテン12上の被記録媒体Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
ヘッドユニット14は、搬送方向に直交する方向(直交方向)に長く延び、直交方向における長さは被記録媒体Pの長さ以上である。ヘッドユニット14には、複数のヘッド10が設けられている。ヘッド10には、プラテン12の上面に対向する吐出面21a、及び、吐出面21aに開口する複数のノズル孔21bが設けられている。なお、ヘッド10の詳細に関しては後述する。
【0017】
貯留タンク15は、液体の種類ごとに設けられている。例えば、4つの貯留タンク15には、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの液体がそれぞれ貯留されている。貯留タンク15は、対応するヘッド10のノズル孔21bに液体を供給する。後述の圧電素子により液体に圧力が付与されると、ノズル孔21bから液体が吐出される。
【0018】
制御部16は、CPU等の演算部、RAM及びROM等の記憶部、及び、ASIC等のドライバICを備えている。制御部16では、CPUが、各種要求及びセンサの検出信号を受けて、RAMに各種データを記憶させると共に、ROMに記憶されたプログラムに基づいて各種の実行指令をASICへ出力する。ASICは、この指令に基づいて、各ドライバICを制御し対応する動作を実行する。これにより、搬送部13の搬送モータ及びヘッド10の圧電素子が駆動される。
【0019】
例えば、制御部16は、ヘッド10の吐出動作、及び、搬送部13の搬送動作を実行する。これにより、ノズル孔21bから液体が吐出され、また、被記録媒体Pが搬送方向に所定量毎搬送されて、液体によって被記録媒体Pに画像を形成する印刷処理が進む。
【0020】
<ヘッドの構成>
ヘッド10は、図2及び図3に示すように、流路形成体20及び容積変更部30を備えている。流路形成体20は、内部に液体流路が設けられており、例えば、複数のプレートの積層体により構成されており、ノズルプレート21、第1流路プレート22、第2流路プレート23、第3流路プレート24及び第4流路プレート25を有している。これらのプレートは、この順で第1方向に積層されており、互いに接着剤等で接着されている。
【0021】
なお、プレートの数はこれに限定されず、これよりも多くてもよく、又は、少なくてもよい。また、第1方向において、第1流路プレート22に対してノズルプレート21側を下側と称し、その反対側を上側と称するが、ヘッド10の配置はこれに限定されない。
【0022】
各プレートは平板形状であって、各プレートには、大小様々な孔及び溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体20の内部では孔及び溝が組み合わされて、例えば、複数のノズル26、複数の個別流路40、供給マニホールド27及び帰還マニホールド28が液体流路として形成されている。
【0023】
複数のノズル26は、ノズルプレート21を第1方向に貫通し形成されている。ノズルプレート21の下面(吐出面21a)には、複数のノズル孔21bが第3方向に配列されてノズル孔列を形成し、複数のノズル孔列が第2方向に並べられている。
【0024】
なお、第2方向は、第1方向に交差(例えば、直交)する方向であり、第3方向は第1方向及び第2方向に交差(例えば、直交する)方向である。また、複数のノズル孔21bの配列方向は、図1の直交方向に沿っていてもよいし、直交方向に傾斜していてもよい。また、複数のノズル孔列が並ぶ方向は、搬送方向に沿っていてもよいし、搬送方向に傾斜していてもよい。
【0025】
ノズル26は、第1方向において基端26a及び、基端26aと反対側の先端26bを有し、この先端26bにより吐出面21aにノズル孔21bが開口する。ノズル26の軸心a1は、基端26aの中心及び先端26bの中心を通り、第1方向に延びている。ノズル26は、その軸心方向(第1方向)に直交する断面積が基端26aから先端26bに向かって連続的に小さくなるテーパ形状であって、例えば、切頭円錐形等の錐形状を有している。
【0026】
供給マニホールド27及び帰還マニホールド28のそれぞれは、第3方向に長く延び、複数の個別流路40に接続されている。第2方向において、個別流路40、帰還マニホールド28及び供給マニホールド27の順で配置されている。なお、第2方向において、帰還マニホールド28に対して供給マニホールド27側を第1側と称し、その反対側を第2側と称する。また、帰還マニホールド28及び供給マニホールド27の配置はこれに限定されない。例えば、第2方向において供給マニホールド27及び帰還マニホールド28の間に個別流路40が配置されていてもよい。また、第1方向において供給マニホールド27が帰還マニホールド28上に積層されていてもよい。
【0027】
供給マニホールド27には、その長手方向の一端に供給口が設けられ、帰還マニホールド28には、その長手方向の一端に帰還口が設けられている。供給口及び帰還口は、ヘッド10に設けられたサブタンクに接続されている。このサブタンクには、対応する貯留タンク15(図1)に接続されており、液体が貯留タンク15から供給されている。
【0028】
供給マニホールド27の第3方向に直交する断面積(第3断面積)、及び、帰還マニホールド28の第3方向に直交する断面積(第3断面積)は、互いに等しい。例えば、各マニホールド27、28の第1方向に直交する断面積(第1断面積)は、0.001mm2以上であって、0.005mm2以下である。各マニホールド27、28の第2方向に直交する断面積(第2断面積)は、0.01mm2以上であって、0.05mm2である。各マニホールド27、28の第3断面積は、0.1mm2以上であって、0.5mm2である。各マニホールド27、28は、第1流路プレート22及び第2流路プレート23を第1方向に貫通した貫通孔により形成されている。このため、各マニホールド27、28の下端はノズルプレート21に覆われ、上端は第3流路プレート24に覆われている。
【0029】
複数の個別流路40は、供給マニホールド27から分岐し、帰還マニホールド28に統合されている。これにより、サブタンク、供給マニホールド27、個別流路40、帰還マニホールド28及びサブタンクは、この順で接続されており、循環経路を構成している。なお、供給マニホールド27と帰還マニホールド28とは互いに接続路により接続されていてもよい。この場合、サブタンク、供給マニホールド27、接続路、帰還マニホールド28及びサブタンクは、この順で接続され、循環経路を構成する。
【0030】
個別流路40は、その上流端が供給マニホールド27に接続され、下流端が帰還マニホールド28に接続されており、この間においてノズル26の基端26aに接続されている。個別流路40は、供給路41、供給絞り47、圧力室42、ディセンダ43、連通路44及び複数の帰還路(例えば、第1帰還路45及び第2帰還路46)を有し、これらはこの順に配置されている。
【0031】
供給路41は、第3流路プレート24を第1方向に貫通して形成され、その下端が供給マニホールド27の上端に接続し、供給マニホールド27から第1方向の上方に延びている。供給路41は、第2方向における供給マニホールド27の中央よりも第1側に配置されている。第1方向に直交する供給路41の断面積(第1断面積)は、供給マニホールド27の第3断面積よりも小さい。
【0032】
供給絞り47は、第4流路プレート25の下面から窪んだ溝により形成され、その下端が第3流路プレート24に覆われている。供給絞り47は、第2方向に延び、その第1側の端の下端が供給路41の上端に接続されている。第2方向に直交する供給絞り47の断面積(第2断面積)は、供給マニホールド27の第3断面積よりも小さく、供給路41の第1断面積以下であってもよい。
【0033】
圧力室42は、第4流路プレート25を第1方向に貫通して形成され、その下端が第3流路プレート24に覆われている。圧力室42は、第2方向に延び、その第1側の端が供給絞り47の第2側の端に接続されている。第2方向に直交する圧力室42の断面積(第2断面積)は、供給絞り47の第2断面積よりも大きい。
【0034】
ディセンダ43は、第1流路プレート22~第3流路プレート24を第1方向に貫通して形成されている。ディセンダ43は、その上端が圧力室42の第2側の下端に接続され、圧力室42から第1方向の下方へ延び、その下端がノズルプレート21に覆われている。ディセンダ43は、その上端の中心及び下端の中心を通る中心軸(軸心a2)が第1方向に延び、円柱形等の柱形状を有している。ディセンダ43は、第2方向において帰還マニホールド28を挟んで供給マニホールド27側の反対側に配置されている。
【0035】
連通路44は、第1流路プレート22を第1方向に貫通して形成され、その上端が第2流路プレート23に覆われ、下端がノズルプレート21に覆われている。連通路44は、第2方向において、その一方端(第2側端44a)、及び、第2側端44aと反対側の他方端(第1側端44b)を有している。連通路44は、その第2側端44aがディセンダ43の第1側に接続され、ディセンダ43から第1側へ延びている。第2方向に直交する連通路44の断面積(第2断面積)は、ディセンダ43の第1断面積以下である。
【0036】
連通路44は、第1方向において、その下端がディセンダ43の下端に接続され、また、この下端にノズル26の基端26aが接続されている。よって、第1方向に沿って視てディセンダ43の下端とノズル26の基端26aとは重ならず、ノズル26は連通路44においてディセンダ43の軸心a2からオフセットした位置に設けられている。
【0037】
連通路44は、第3方向において、その中心がノズル26の基端26aの中心に配置されている。連通路44の第2側端44aの中心及び第1側端44bの中心を通る中心軸(軸心a3)上にノズル26の中心が配置されており、連通路44の軸心a3とノズル26の軸心a1は交差している。ノズル26は連通路44から第1方向の下側へ延びており、第1方向に直交するノズル26の断面積(第1断面積)は、連通路44の第2断面積よりも小さい。
【0038】
第1帰還路45及び第2帰還路46は、第1流路プレート22を第1方向に貫通して形成され、上端が第2流路プレート23に覆われ、下端がノズルプレート21に覆われている。第1帰還路45及び第2帰還路46は、連通路44と帰還マニホールド28との間を結んでいる。なお、第1帰還路45及び第2帰還路46の詳細については後述する。
【0039】
容積変更部30は、振動板31及び圧電素子32を有しており、流路形成体20の液体流路の容積を変更する。なお、容積変更部30は、圧電素子32を用いた方式(ピエゾ方式)に限定されず、例えば、発熱体を用いたサーマル方式、又は、導電性振動板及び電極を用いた静電方式を採用し得る。
【0040】
振動板31は、第4流路プレート25の上に積層されており、圧力室42の上端を覆っている。なお、振動板31は、第4流路プレート25と一体的に形成されていてもよい。この場合、圧力室42は第1方向に第4流路プレート25の下面から窪んで形成される。この第4流路プレート25において圧力室42よりも上側部分が振動板31として機能する。
【0041】
圧電素子32は共通電極32a、圧電層32b及び個別電極32cを含み、これらはこの順で配置されている。共通電極32aは、絶縁膜を介して振動板31の全面を覆っている。圧電層32bは、圧力室42毎に設けられ、共通電極32a上に配置されている。個別電極32cは、圧力室42毎に設けられ、圧力室42に重なるように圧電層32b上に配置されている。このとき、1つの個別電極32c、共通電極32a及び両電極で挟まれた部分の圧電層32b(活性部)により、1つの圧電素子32が構成される。
【0042】
個別電極32cは、ドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御部16(図1)から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極32cに印加する。これに対し、共通電極32aは、常にグランド電位に保持されている。
【0043】
駆動信号に応じて、圧電層32bの活性部が、2つの電極32a、32cと共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板31が協働して変形し、圧力室42の容積を増減する方向に変化する。これにより、圧力室42に、液体をノズル26から吐出させる吐出圧力が付与される。
【0044】
<液体の流れ>
例えば、供給マニホールド27の供給口とサブタンクとが供給配管により接続され、帰還マニホールド28の帰還口とサブタンクとが帰還配管により接続される。この供給配管の加圧ポンプ及び帰還配管の負圧ポンプが駆動すると、液体は、サブタンクから供給配管を通り供給マニホールド27に流入し、第3方向に供給マニホールド27を流れる。
【0045】
この間に液体の一部は個別流路40に流入する。ここで、液体は、供給マニホールド27から個別流路40の供給路41に流入し、供給路41を第1方向に流れ、供給絞り47を第2方向に流れ、さらに圧力室42を第2方向に流れる。そして、液体は、圧力室42からディセンダ43を第1方向に流れ、ディセンダ43から連通路44を第2方向に流れる。そして、連通路44における液体の一部はノズル26に流入し、基端26aから先端26bへ第1方向に流れる。ここで、圧電素子32によって圧力室42に吐出圧力が付与されると、圧力が圧力室42からディセンダ43及び連通路44を介してノズル26に伝播されて、液体がノズル孔21bから吐出される。
【0046】
また、連通路44における残る液体は、連通路44から第1帰還路45及び第2帰還路46へ流入し、各帰還路45、46を第2方向に流れ、帰還マニホールド28に流入する。そして、液体は帰還マニホールド28を第3方向に流れて、帰還配管を通りサブタンクへ戻る。これにより、ノズル26から吐出されなかった液体は、サブタンクと個別流路40との間を循環する。
【0047】
<第1帰還路及び第2帰還路の構成>
第1帰還路45及び第2帰還路46は、第1方向において、その下端が連通路44の下端に接続され、その上端が連通路44の上端に接続されている。このため、各帰還路45、46の寸法(高さh2)は、連通路44の寸法(高さh1)と等しく、例えば、高さh1、h2は、0.01μm以上且つ0.05μm以下である。このように、ノズル26の軸心方向(第1方向)において、ノズル26よりも圧力室42側の流路(連通路44)の高さh1を大きく採ることができる。これにより、圧力室42からディセンダ43を介して連通路44に伝播した圧力は、第1方向の成分の減少を低減できる。このため、この圧力は、連通路44から第1方向に延びるノズル26に付与され、液体がノズル26から吐出される。よって、圧力不足による液体の不吐出、及び、吐出量の減少を防止し、吐出不良を抑制することができる。
【0048】
また、各帰還路45、46は、その軸心及び長手方向に直交する断面積が、連通路44の第2断面積及び帰還マニホールド28の第3断面積よりも小さい。これによれば、圧力室42に付与された圧力は、連通路44から各帰還路45、46を介して帰還マニホールド28へ抜けてしまうことを低減され、ノズル26に付与される。よって、吐出不良を抑制することができる。
【0049】
第1帰還路45は、その長手方向において第1上流端45a及びその反対側の第1下流端45bをそれぞれ有し、第1上流端45aが連通路44の第1側に接続され、第1下流端45bが帰還マニホールド28の第2側に接続されている。第2帰還路46は、その長手方向において第2上流端46a及びその反対側の第2下流端46bをそれぞれ有し、第2上流端46aが連通路44の第1側に接続され、第2下流端46bが帰還マニホールド28の第2側に接続されている。
【0050】
第3方向において、第1帰還路45の第1上流端45aが連通路44の一方側に接続され、第2帰還路46の第2上流端46aが連通路44の他方側に接続されている。第2方向において、ディセンダ43から第1上流端45aまでの長さとディセンダ43から第2上流端46aまでの長さとは等しい。このため、第3方向において、第1上流端45aと第2上流端46aとは連通路44を挟んで互いに対向し、第1帰還路45及び第2帰還路46は連通路44に対し第3方向の対向位置に接続されている。
【0051】
ノズル26は、第1帰還路45の連通路44との接続箇所と第2帰還路46の連通路44との接続箇所との間に挟まれる位置に設けられている。この接続箇所において各帰還路45、46の上流端45a、46aが連通路44に接続しているため、ノズル26は第1帰還路45の第1上流端45aと第2帰還路46の第2上流端46aとの間に配置されている。これにより、第2方向において、ノズル26の第1側の端は各上流端45a、46aの第1側の端、第2側の端、又はこれらの間にある、あるいは、ノズル26の第2側の端は各上流端45a、46aの第1側の端、第2側の端、又はこれらの間にある。また、ノズル26は、連通路44において、ディセンダ43の軸心a2からオフセットした位置に設けられる。
【0052】
これによれば、液体が連通路44から第1帰還路45及び第2帰還路46を流れることにより、連通路44から帰還マニホールド28への流れが分散する。このため、ノズル26における液体の流れが均一化し、所望の方向に対し液体の吐出方向がずれることを低減することができる。さらに、圧力室42に付与された圧力は、圧力室42からディセンダ43を介して連通路44に伝播する際に、第1方向から第2方向側へ向きを変える。これにより、仮にノズル26に気泡が侵入していても、気泡をノズル26へ押し込む力が減少し、ノズル26における気泡の滞留が低減され、気泡による吐出不良を抑制することができる。
【0053】
ここで、ノズル26は、そのノズル26の軸心方向に直交する断面積が基端26aから先端26bに向かって小さくなるテーパ形状を有している。このような縮径するテーパ形状のノズル26では気泡が滞留し易いが、このような場合であってもノズル26を連通路44に接続したことにより、ノズル26における気泡の滞留を低減することができる。
【0054】
第1帰還路45及び第2帰還路46は、第2方向において、その上流端45a、46aが連通路44の第1側端44bに接続され、連通路44から第2方向の第1側へ延び、その第2側端44aが帰還マニホールド28の第2側に接続されている。ここで、各上流端45a、46aの第1側の端と、連通路44の第1側端44bとが接合されており、連通路44の第1側端44bから各帰還路45、46へ段差なく連続的に延びている。
【0055】
これによれば、液体は連通路44の第2側端44aから第1側端44bへ第2方向に流れ、液体の流れは第1側端44bに当たり第2方向の成分が減少する。しかも、この第1側端44bにおいて液体の流れが第1帰還路45及び第2帰還路46に分岐するため、液体の流れは、第1帰還路45側(第3方向の一方側)への成分と第2帰還路46側(第3方向の他方側)への成分とが相殺される。これにより、第1帰還路45及び第2帰還路46に挟まれたノズル26において液体の流れの均一性が向上し、所望方向に対する吐出方向のずれを低減することができる。
【0056】
連通路44は、第1帰還路45との接続箇所(第1接続口44c)、第2帰還路46との接続箇所(第2接続口44d)、及び、ノズル26との接続箇所(第3接続口44e)を有している。この第1接続口44cに上流端45aが接続され、連通路44は第1帰還路45と連通している。第2接続口44dに上流端46aが接続され、連通路44は第2帰還路46と連通している。第3接続口44eに基端26aが接続され、連通路44はノズル26と連通している。この第3接続口44eの中心44ecは、ノズル26の軸心a1上であって、第1接続口44cの中心44ccと第2接続口44dの中心44dcとを結ぶ線分L上に配置されている。
【0057】
これによれば、この線分L上において、液体の流れは連通路44から第3方向の一方側への成分と他方側への成分とが相殺される。このような位置に、ノズル26の中心が配置されていることにより、ノズル26の流れが更に均一化され、ノズル26からの液体の吐出方向のずれを一層、低減することができる。
【0058】
第1帰還路45及び第2帰還路46のそれぞれは、第1方向に直交する方向に曲がっている。例えば、第1帰還路45は、その第1上流端45aから第3方向の一方側へ直線状に延びる第1上流部45c、第1上流部45cから第2方向に曲がる第1曲がり部45d、及び、第1曲がり部45dから第2方向の第1側へ直線状に延びる第1下流部45eを有し、第3方向から第2方向へ曲がっている。第2帰還路46は、その第2上流端46aから第3方向の他方側へ直線状に延びる第2上流部46c、第2上流部46cから第2方向に曲がる第2曲がり部46d、及び、第2曲がり部46dから第2方向の第1側へ直線状に延びる第2下流部46eを有し、第3方向から第2方向へ曲がっている。
【0059】
これによれば、第1帰還路45及び第2帰還路46の長さを短くすることなく、第2方向及び第3方向における各帰還路45、46の広がりを抑えることができる。これにより、圧力室42に付与された圧力が各帰還路45、46を介して抜けることを低減し、吐出不良を抑制しつつ、ヘッド10の大型化を抑制することができる。また、各曲がり部45d、46dの角度が90度であるため、各帰還路45、46を形成し易い。
【0060】
第1帰還路45及び第2帰還路46は、第2方向に延びた連通路44の軸心a3に対して対称な形状を有している。例えば、第1上流部45c及び第2上流部46cは、第3方向において連通路44から互いに反対側に延び、第3方向に延びる長さ及び第3方向に直交する断面積が互いに等しい。第1下流部45e及び第2下流部46eは、連通路44を互いの間に挟み、互いに平行に第2方向に延び、第2方向に延びる長さ及び第2方向に直交する断面積が互いに等しい。これによれば、連通路44から第1帰還路45への流量と第2帰還路46への流量が均等化する。これにより、ノズル26における流れが均一化し、吐出方向のずれを低減することができる。
【0061】
第1帰還路45の流路抵抗と第2帰還路46の流路抵抗とは等しい。例えば、第1帰還路45の断面積及び長さと、第2帰還路46の断面積及び長さとはそれぞれ等しい。この場合、第1帰還路45及び第2帰還路46は、連通路44に対する上流部45c、46cの角度が互いに等しく、帰還マニホールド28に対する下流部45e、46eが90度である。これによれば、連通路44から第1帰還路45への流量と第2帰還路46への流量が均等化することにより、ノズル26における流れが均一化し、吐出方向のずれを低減することができる。なお、第1帰還路45の流路抵抗と第2帰還路46の流路抵抗とが等しければ、第1帰還路45の断面積、長さ及び角度と第2帰還路46の断面積、長さ及び角度とがそれぞれ互いに異なっていてもよい。
【0062】
<変形例1>
変形例1に係るヘッド10では、図4(a)に示すように、第3接続口144eは、第1接続口44cの中心44ccと第2接続口44dの中心44dcとを結ぶ線分L上に配置されている。これにより、第2方向において、第3接続口144eの中心144ecと線分Lとがずれており、中心144ecと線分Lとの間に間隔が空けられている。なお、これ以外については、第3接続口144eは第3接続口44eと同様である。
【0063】
第2方向において第3接続口144eの中心144ecと第2側端との間、又は、中心144ecと第1側端との間に線分Lが配置される。また、第2方向において、第3接続口144eの中心144ecは、線分Lよりも第1側であってもよく、又は、線分Lよりも第2側であってもよい。この場合であっても、第3方向において液体の流れは連通路44から第1帰還路45側への成分と第2帰還路46側への成分とが相殺される。これにより、ノズル26における流れが均一化し、吐出方向のずれを低減することができる。
【0064】
<変形例2>
変形例2に係るヘッド10では、図4(b)に示すように、第1帰還路145及び第2帰還路146は、第2方向において第1側端44bよりも第2側の連通路44に接続されている。なお、これ以外については、第1帰還路145及び第2帰還路146は、第1帰還路45及び第2帰還路46とそれぞれ同様である。
【0065】
第1帰還路145及び第2帰還路146は、第2方向において連通路44の第1側端44bと第2側端44aとの間に接続されている。各帰還路145、146の各上流端145a、146aにおいて、第2方向の第2側の端が連通路44の第2側端44aよりも第1側にあり、第1側の端が連通路44の第1側端44bよりも第2側にある。このため、連通路44は、各上流端145a、146aから第2方向の第2側及び第1側のそれぞれに延びている。この場合であっても、ノズル26は連通路44において第1上流端145aと第2上流端146aとの間に挟まれる位置に設けられていることにより、気泡の滞留を防止しながら、ノズル26における流れの均一化が図られるため、吐出不良を低減することができる。
【0066】
<変形例3>
変形例3に係るヘッド10では、図5に示すように、第1帰還路245及び第2帰還路246のそれぞれは直線的に延びている。なお、これ以外については、第1帰還路245及び第2帰還路246は、第1帰還路45及び第2帰還路46とそれぞれ同様である。
【0067】
例えば、各帰還路245、246は、第1方向に直交する方向において、連通路44及び帰還マニホールド28に対して傾斜するように配置されている。各帰還路245、246は、各上流端245a、246aから各下流端245b、246bへ、第3方向における互いの間隔が広がるように、第2方向及び第3方向に斜めに直線状に延びる。
【0068】
これによれば、仮に屈曲する各帰還路245、246であれば、窪む角部等において気泡が引っかかる可能性がある。これに対して、直線的に延びる各帰還路245、246では、気泡が連通路44から各帰還路245、246を通ってスムーズに流れて排出されるため、連通路44からノズル26への気泡の侵入を低減することができる。よって、気泡による吐出不良を低減することができる。
【0069】
なお、第1帰還路245及び第2帰還路246は、連通路44に対する角度が互いに等しいが、帰還マニホールド28に対する角度が互いに異なる。このため、第1帰還路245における液体の流れ方向と帰還マニホールド28における液体の流れ方向とのなす角と、第2帰還路246における液体の流れ方向と帰還マニホールド28における液体の流れ方向とのなす角とは、互いに異なる。よって、第1帰還路245の流路抵抗と第2帰還路246の流路抵抗とが互いに等しくなるように、第1帰還路245の形状と第2帰還路246の形状とが互いに異なっていてもよい。
【0070】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び変形例1、2において、各帰還路は、各上流端から各下流端に向かって第3方向から第2方向に90度に屈曲していたが、この角度はこれに限定されない。例えば、各帰還路の曲がり角度は90度より大きくてもよい。この場合、各帰還路において窪む角が広くなるため、気泡が滞留し難い。よって、ヘッド10の大型化を抑制しつつ、気泡による吐出不良を低減することができる。
【0071】
上記実施の形態及び変形例1、2において、各帰還路は、第2方向及び第3方向において屈曲していたが、各帰還路の曲がる形状はこれに限定されない。例えば、各帰還路は湾曲していてもよい。この場合、帰還路は、その一部又は全部が曲がっていてもよい。これにより、各帰還路において窪む角が形成されないため、気泡が円滑に流れて排出される。よって、ヘッド10の大型化を抑制しつつ、気泡による吐出不良を低減することができる。
【0072】
上記実施の形態及び各変形例において、ノズル26はテーパ形状を有していたが、ノズル26の形状はこれに限定されない。例えば、ノズル26は、その基端26aの面積と先端26bの面積とが等しい円柱等の柱形状であってもよい。
【0073】
上記実施の形態及び各変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。例えば、変形例2、3及びその他の変形例において、変形例1のように第3接続口が線分L上に配置されていてもよい。変形例3及びその他の変形例において、変形例2のように各帰還路は第2方向において連通路の第1端よりも第2側に接続されていてもよい。
【0074】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の液体吐出ヘッドは、気泡による吐出不良を抑制することができる液体吐出ヘッド等として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 :液体吐出ヘッド
26 :ノズル
26a :基端
26b :先端
28 :帰還マニホールド
42 :圧力室
43 :ディセンダ
44 :連通路
44c :第1接続口
44d :第2接続口
44e :第3接続口
45 :第1帰還路
46 :第2帰還路
144e :第3接続口
145 :第1帰還路
146 :第2帰還路
245 :第1帰還路
246 :第2帰還路
L :線分
図1
図2
図3
図4
図5