IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用空調装置 図1
  • 特許-車両用空調装置 図2
  • 特許-車両用空調装置 図3
  • 特許-車両用空調装置 図4
  • 特許-車両用空調装置 図5
  • 特許-車両用空調装置 図6
  • 特許-車両用空調装置 図7
  • 特許-車両用空調装置 図8
  • 特許-車両用空調装置 図9
  • 特許-車両用空調装置 図10
  • 特許-車両用空調装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20231011BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60H3/06 C
B60H1/22 651C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019209644
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079852
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押切 律之
(72)【発明者】
【氏名】平林 秀一
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-103452(JP,A)
【文献】特開2009-149305(JP,A)
【文献】特開2010-095191(JP,A)
【文献】特開2011-005983(JP,A)
【文献】特開2019-026040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房用にヒートポンプを備え、
吹出口から車室内に吹き出す風量について室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から前記車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じて更に風量を増加させてフィルタ通過風量を増やすことによって前記車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を行うことができる車両用空調装置であって、
室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低く、前記車室内に吹き出す空気を前記ヒートポンプが加熱している場合に、前記空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を外気温度によって変動させることによって、前記上限値を抑制し、
前記空気清浄制御による風量増加量に応じて前記ヒートポンプの室外機ファンの風速を増加させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置であって、
前記外気温度が所定の外気温度よりも低く、かつ、前記室温が所定の室温よりも低い場合に、前記空調条件を満たすと判定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置であって、
前記室温を設定温度に保持するために前記吹出口から前記車室内に吹き出される空気の目標温度である目標吹出温度が所定の温度よりも高い場合に、前記空調条件を満たすと判定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両用空調装置であって、
前記液体を加熱する加熱ヒータを備え、前記加熱ヒータが前記液体を加熱している場合に、前記上限値を抑制することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の車両用空調装置であって、
標準モードより燃費向上を狙ったエコノミーモードが車両の走行モードとして選択されている場合に、前記上限値を抑制することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の車両用空調装置であって、
ハイブリッド車両に搭載され、メインバッテリを走行用の動力源とするEVモードが前記ハイブリッド車両の走行モードとして選択されている場合に、前記上限値を抑制することを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹出口から車室内に吹き出す風量を車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じて更に風量を増加させてフィルタ通過風量を増やすことによって車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を行うことができる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外気の汚染度に応じて内外気モードを自動的に切り替える機能を備える車両用空調装置が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-025831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冬期など気温が低い時期の乗車直後など室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が低い場合に、風量を増加させてフィルタ通過風量を増やすことによって車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を実行すると、暖房の熱源となる液体がチューブ内を通るヒータコアを通過する風量が増加し、液体の温度上昇が妨げられる。このように暖房の熱源となる液体の温度上昇が妨げられると、液温上昇に時間がかかって燃費が悪化したり、液体を加熱する加熱ヒータの消費電力が増加したり、ヒートポンプの動作点が変わり効率の良い定常運転ができなくなって消費電力が増加したりすることがあるため、車両の燃費や電費が悪化することがある。
【0005】
また、上記のように室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が低い場合に、風量を増加させると、吹出口から車室内に吹き出す冷風を車両の乗員が浴びることになり、乗員に不快感を与える。
【0006】
そこで、本発明は、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が低い場合に、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用空調装置は、暖房用にヒートポンプを備え、吹出口から車室内に吹き出す風量について室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から前記車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じて更に風量を増加させてフィルタ通過風量を増やすことによって前記車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を行うことができる車両用空調装置であって、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低く、前記車室内に吹き出す空気を前記ヒートポンプが加熱している場合に、前記空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を外気温度によって変動させることによって、前記上限値を抑制し、前記空気清浄制御による風量増加量に応じて前記ヒートポンプの室外機ファンの風速を増加させること、を特徴とする。
【0008】
このように、吹出口から車室内に吹き出す風量について室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じて更に風量を増加させてフィルタ通過風量を増やすことによって車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を行うことができる車両用空調装置において、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、ヒータコアで奪われる熱量を低減させて空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0009】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、外気温度が所定の外気温度よりも低く、かつ、前記室温が所定の室温よりも低い場合に、前記空調条件を満たすと判定してもよい。
【0010】
この態様によれば、外気温が所定の外気温よりも低く、かつ、室温が所定の室温よりも低い場合に、室温の上昇が大きく求められる空調条件であると判定し、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合は、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0011】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、前記室温を設定温度に保持するために前記吹出口から前記車室内に吹き出される空気の目標温度である目標吹出温度が所定の温度よりも高い場合に、前記空調条件を満たすと判定してもよい。
【0012】
この態様によれば、室温を設定温度に保持するために吹出口から車室内に吹き出される空気の目標温度である目標吹出温度が所定の温度よりも高い場合に、室温の上昇が大きく求められる空調条件であると判定し、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合は、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0013】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、前記液体を加熱する加熱ヒータを備え、前記加熱ヒータが前記液体を加熱している場合には、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、前記上限値を抑制してもよい。
【0014】
この態様によれば、暖房の熱源となる液体を加熱する加熱ヒータを備える車両用空調装置において、加熱ヒータが液体を加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、加熱ヒータの消費電力の増加を抑制できるため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、暖房用にヒートポンプを備え、前記車室内に吹き出す空気を前記ヒートポンプが加熱している場合には、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、前記上限値を抑制してもよい。
【0016】
この態様によれば、暖房用にヒートポンプを備える車両用空調装置において、車室内に吹き出す空気を前記ヒートポンプが加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、ヒートポンプの消費電力の増加を抑制できるため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、標準モードより燃費向上を狙ったエコノミーモードが車両の走行モードとして選択されている場合には、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、前記上限値を抑制してもよい。
【0018】
この態様によれば、標準モードより燃費向上を狙ったエコノミーモードが車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0019】
本発明に係る車両用空調装置の一態様において、ハイブリッド車両に搭載され、メインバッテリを走行用の動力源とするEVモードが前記ハイブリッド車両の走行モードとして選択されている場合には、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、前記上限値を抑制してもよい。
【0020】
この態様によれば、ハイブリッド車両において、メインバッテリを走行用の動力源とするEVモードが前記ハイブリッド車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、ヒータコアで奪われる熱量を低減させて空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、車両の乗員に冷風を浴びせて不快感を与えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の形態の車両用空調装置の制御装置の制御系統を示す図である。
図2】第1の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
図3】車室内の浮遊粒子状物質の濃度のレベルと空気清浄制御による風量増加量のレベルとの関係を示した図である。
図4】風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御における風量増加量の上限値と外気温度との関係を示した図である。
図5】風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御における風量増加量の上限値と外気温度との関係を示した図である。
図6】第2の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
図7】第3の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
図8】第4の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
図9】風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御における風量増加量とヒートポンプの室外機ファンのduty比の補正量との関係を示す図である。
図10】第5の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
図11】第6の形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の形態>
以下、図1図5を参照しながら、第1の形態の車両用空調装置10について説明する。車両用空調装置10は、車室内の空調を行う装置であり、エンジンを走行用動力源とした車両の他、ハイブリッド車両や電気自動車にも搭載することができる。エンジンを走行用動力源とした車両では、車両用空調装置10は、エンジン冷却液がチューブ内を通るヒータコアを暖房用熱交換器として備える。ハイブリッド車両では、更にエンジン冷却液を加熱する加熱ヒータ1やヒートポンプ2を車両用空調装置10が備えていてもよい。また、電気自動車では、車両用空調装置10は、暖房用のヒータコアと共にヒータコアのチューブ内を通る液体を加熱する加熱ヒータ1を備えていてもよいし、暖房用にヒートポンプ2を備えていてもよい。
【0024】
図1に示すように、車両用空調装置10は、内外気切替ドア3、送風機4、エアミックスドア5、インジケータ6、空気清浄制御スイッチ7、室温センサ11、外気温度センサ12、液温センサ13、日射量センサ14、内気汚染度センサ15、操作部20及び制御装置30を備える。制御装置30は、内外気切替ドア3、送風機4、エアミックスドア5及びインジケータ6を制御する。更に、車両用空調装置10が加熱ヒータ1やヒートポンプ2を備える場合は、加熱ヒータ1やヒートポンプ2も制御装置30によって制御される。
【0025】
車両用空調装置10は、車室内に向かって空気が送風される空気通路を備えており、この空気通路の最上流部に内気導入口、外気導入口及び内外気切替ドア3が配置されている。そして、車両用空調装置10では、内外気切替ドア3を動作させることによって、内気導入口から内気を導入して内気循環させる内気モードと、外気導入口から外気を導入する外気モードとに切り替えることができる。
【0026】
上記の空気通路には、車室内に向かう空気流を発生させる送風機4が内外気切替ドア3より下流側に配置されている。送風機4の下流側には、空気通路を流れる空気を加熱するヒータコアが配置され、また、ヒータコアをバイパスして空気が流れるバイパス通路が形成されている。そして、送風機4とヒータコアとの間にはエアミックスドア5が回動自在に配置されている。そのため、車両用空調装置10では、エアミックスドア5の開度によりヒータコアを通る空気量(温風量)とバイパス通路を通ってヒータコアをバイパスする空気量(冷風量)との比率を調節し、これにより、吹出口から車室内に吹き出す空気の温度を調節することができる。
【0027】
室温センサ11は車室内の空気の温度を検出し、外気温度センサ12は車外の空気の温度を検出し、液温センサ13はヒータコアのチューブ内を循環する液体の温度を検出し、日射量センサ14は日射量を検出し、内気汚染度センサ15は車室内の空気に含まれるPM2.5等の浮遊粒子状物質の濃度を検出する。そして、図1に示すように、これらのセンサの出力信号は制御装置30に入力される。
【0028】
車両の乗員は、車室内の設定温度や送風機4の設定風量を、操作部20を操作することによって入力することができる。例えば、乗員が操作部20に設定風量を入力した場合、制御装置30は乗員が設定した風量を流すように送風機4を制御する。
【0029】
また、乗員が操作部20に設定温度を入力した場合、制御装置30は設定温度、内気温度、外気温度及び日射量から、車室内に吹出口から吹き出す空気の目標吹出温度TAO(Temperature Air Outlet)を算出し、TAO及び液温から送風機4の風量及びエアミックスドア5の開度を決定して、送風機4及びエアミックスドア5を制御する。
【0030】
内気汚染度センサ15が検出した浮遊粒子状物質の濃度は、車室内に配置されたインジケータ6に表示される。車両の乗員は、インジケータ6の表示を見て、車室内の空気清浄が必要と判断した時に空気清浄制御スイッチ7をONにすることによって、車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる空気清浄制御を開始することができる。
【0031】
空気清浄制御を実行する際は、制御装置30は内外気切替ドア3を内気モードとした上で、室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じて更に増加した風量を吹出口から車室内に流し、空気通路に設けられたフィルタを通過する風量を増やすことによって、車室内の浮遊粒子状物質の濃度を低下させる。そして、車両の乗員がインジケータ6の表示を見て、車室内の浮遊粒子状物質の濃度が低下したために空気清浄制御を終了させるべきであると判断した場合は、空気清浄制御スイッチ7をOFFにすることによって空気清浄制御を終了させることができる。
【0032】
しかし、空気清浄制御のために送風機4の風量を増加すると、ヒータコアの通過風量が増えてしまう。そのため、冬期など気温が低い時期の乗車直後など室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、液体の温度上昇が妨げられる。このように暖房の熱源となる液体の温度上昇が妨げられると、液温上昇に時間がかかって燃費が悪化したり、液体を加熱する加熱ヒータ1の消費電力が増加したり、ヒートポンプ2の動作点が変わり効率の良い定常運転ができなくなって消費電力が増加したりすることがあるため、車両の燃費や電費が悪化することがある。また、室温の上昇が大きく求められる空調条件で、暖房の熱源となる液体の液温が低い場合に、風量を増加させると、吹出口から車室内に吹き出す冷風を車両の乗員が浴びることになり、乗員に不快感を与える。
【0033】
そこで、制御装置30は、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するように送風機4を制御する。以下、空気清浄制御に関する制御装置30の制御について詳細を説明する。
【0034】
制御装置30は、演算処理部であるCPUと、RAM、ROM等の記憶部を有し、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両用空調装置10を制御する。図2は、制御装置30の制御ルーチンを示すフローチャートである。図2の制御ルーチンのプログラムは制御装置30のROMに保持されており、例えば数msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0035】
図2に示す制御ルーチンにおいて、車両のイグニッションスイッチがONとなり制御装置30がスタートすると、まずステップS11において、空気清浄制御スイッチ7がONの状態であるか判定する。そして、空気清浄制御スイッチ7がONの場合は、ステップS11からステップS12に進む。また、空気清浄制御スイッチ7がOFFの場合は、ステップS11からステップS17に進み、空気清浄制御を実行せず、通常の空調制御を行う。通常の空調制御とは、例えば、車両の乗員が操作部20で設定温度を入力している場合であれば、室温が設定温度となるように制御装置30が送風機4及びエアミックスドア5を制御することを意味する。
【0036】
ステップS11からステップS12に進んだ場合、ステップS12において、外気温度が所定の外気温度よりも低いか判定する。そして、外気温度が所定の外気温度よりも低い場合は、ステップS12からステップS13に進み、外気温度が所定の外気温度以上の場合は、ステップS12からステップS16に進む。所定の外気温度は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された所定の外気温度に基づき、制御装置30はステップS12で判定する。
【0037】
ステップS12からステップS13に進んだ場合、ステップS13において、車室内の空気の温度(以下、室温と呼ぶ)が所定の室温よりも低いか判定する。そして、室温が所定の室温よりも低い場合は、ステップS13からステップS14に進み、室温が所定の室温以上の場合は、ステップS13からステップS16に進む。所定の室温は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された所定の室温に基づき、制御装置30はステップS13で判定する。
【0038】
ステップS13からステップS14に進んだ場合、ステップS14において、液温が所定の液温よりも低いか判定する。そして、液温が所定の液温よりも低い場合は、ステップS14からステップS15に進み、液温が所定の液温以上の場合は、ステップS14からステップS16に進む。所定の液温は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された所定の液温に基づき、制御装置30はステップS14で判定する。
【0039】
ステップS12、ステップS13又はステップS14からステップS16に進んだ場合、ステップS16において、制御装置30は、「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」を行う。「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」では、まず、制御装置30は内外気切替ドア3を内気モードとする。
【0040】
そして、内外気切替ドア3を内気モードとした後、制御装置30はアンサーバック風量UPを行う。アンサーバック風量UPとは、一時的に送風機4の風量を一気に増加することを指す。アンサーバック風量UPを行う理由は、車両の乗員が操作部20を操作して空気清浄制御を開始させた直後に、車室内の浮遊粒子状物質の濃度によらず風量を一律に増加することにより、空気清浄制御を開始したことを乗員に認識させるためである。
【0041】
このようにアンサーバック風量UPを実行した後、制御装置30は、車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出する。図3は、車室内の浮遊粒子状物質の濃度のレベルと風量増加量のレベルとの関係を示した図である。この関係は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された図3に示す関係に基づき、制御装置30は車室内の浮遊粒子状物質の濃度のレベルから風量増加量のレベルを算出する。
【0042】
なお、図3に示すように風量増加量のレベルは0、+5、及び+11の3段階で変化し、図3の実線の矢印で示すように、車室内の浮遊粒子状物質の濃度が上昇している場合と下降している場合では、図3のグラフ上の経路が異なる。例えば、浮遊粒子状物質の濃度のレベルが2から4まで上昇する間は風量増加量のレベルは+5で、浮遊粒子状物質の濃度のレベルが4まで到達すると風量増加量のレベルは+11となり、その後、浮遊粒子状物質の濃度のレベルが4から1まで下降する間は風量増加量のレベルは+11に維持されることになる。
【0043】
そして、上記のように車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出した後、制御装置30は、室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から浮遊粒子状物質の濃度に応じて算出した風量増加量を更に増加した風量を流すように制御装置30が送風機4を制御する。図4に示すように、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値は、外気温度によらず+11のレベルで一定となる。
【0044】
これに対して、ステップS14からステップS15に進んだ場合は、制御装置30は、「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」を行う。
【0045】
「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」は、内外気切替ドア3を内気モードとした後にアンサーバック風量UPを行い、図3に示す関係に基づき車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出する点は、上記の「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」と共通する。
【0046】
しかし、「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」は、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられ、この上限値を超えない範囲内で室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から浮遊粒子状物質の濃度に応じて算出した風量増加量を更に増加した風量を流すように制御装置30が送風機4を制御する点が「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」とは異なる。図5に示す風量増加量の上限値と外気温度との関係は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された図5に示す関係に基づき、制御装置30は外気温度から風量増加量の上限値を算出する。
【0047】
このように車両用空調装置10では、外気温度が所定の外気温度よりも低く、かつ、室温が所定の室温よりも低く、かつ、液温が所定の液温よりも低い場合に、図2に示すステップS15に至り、図5に示すように空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値が抑制される。所定の外気温度とは、図5に示すように+5℃である。車両用空調装置10では、外気温度が+5℃よりも低く、かつ、室温が所定の室温よりも低ければ、暖房のために熱源が必要であり、室温の上昇が大きく求められる空調条件であると判断される。そして、このように室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、熱源が不足しているものとして、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0048】
そのため、車両用空調装置10では、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0049】
<第2の形態>
次に、図3図6を参照しながら、第2の形態の車両用空調装置について説明する。第2の形態の車両用空調装置は、第1の形態の車両用空調装置10と同じ構成を有し、第1の形態の車両用空調装置10とは、制御装置30が実行する制御ルーチンのみが異なる。そのため、第2の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンのみを以下に記載し、その他の説明を省略する。
【0050】
図6は、制御装置30の制御ルーチンを示すフローチャートである。図6の制御ルーチンのプログラムは制御装置30のROMに保持されており、例えば数msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0051】
図6に示す制御ルーチンにおいて、車両のイグニッションスイッチがONとなり制御装置30がスタートすると、まずステップS21において、空気清浄制御スイッチ7がONの状態であるか判定する。そして、空気清浄制御スイッチ7がONの場合は、ステップS21からステップS22に進む。また、空気清浄制御スイッチ7がOFFの場合は、ステップS21からステップS26に進み、空気清浄制御を実行せず、通常の空調制御を行う。通常の空調制御とは、例えば、車両の乗員が操作部20で設定温度を入力している場合であれば、室温が設定温度となるように制御装置30が送風機4及びエアミックスドア5を制御することを意味する。
【0052】
ステップS21からステップS22に進んだ場合、ステップS22において、TAOが所定の温度よりも高いか判定する。そして、TAOが所定の温度よりも高い場合は、ステップS22からステップS23に進み、TAOが所定の温度以下の場合は、ステップS22からステップS25に進む。所定の温度は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された所定の温度に基づき、制御装置30はステップS22で判定する。
【0053】
ステップS22からステップS23に進んだ場合、ステップS23において、液温が所定の液温よりも低いか判定する。そして、液温が所定の液温よりも低い場合は、ステップS23からステップS24に進み、液温が所定の液温以上の場合は、ステップS23からステップS25に進む。所定の液温は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された所定の液温に基づき、制御装置30はステップS23で判定する。
【0054】
ステップS22又はステップS23からステップS25に進んだ場合、ステップS25において、制御装置30は、図2に示すステップS16と同様に「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」を行う。「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」では、まず、制御装置30は内外気切替ドア3を内気モードとする。そして、内外気切替ドア3を内気モードとした後、制御装置30はアンサーバック風量UPを行う。
【0055】
このようにアンサーバック風量UPを実行した後、制御装置30は、第1の形態の車両用空調装置10と同様に、車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出する。図3は、車室内の浮遊粒子状物質の濃度のレベルと風量増加量のレベルとの関係を示した図である。この関係は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された図3に示す関係に基づき、制御装置30は車室内の浮遊粒子状物質の濃度のレベルから風量増加量のレベルを算出する。
【0056】
そして、車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出した後、制御装置30は、室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から浮遊粒子状物質の濃度に応じて算出した風量増加量を更に増加した風量を流すように制御装置30が送風機4を制御する。図4に示すように、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値は、外気温度によらず+11のレベルで一定となる。
【0057】
これに対して、ステップS23からステップS24に進んだ場合は、制御装置30は、図2に示すステップS15と同様に「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」を行う。
【0058】
「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」は、内外気切替ドア3を内気モードとした後にアンサーバック風量UPを行い、図3に示す関係に基づき車室内の浮遊粒子状物質の濃度に応じた風量増加量を算出する点は、上記の「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」と共通する。
【0059】
しかし、「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」は、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられ、この上限値を超えない範囲内で室温制御のために必要な風量又は車両の乗員が設定した風量から浮遊粒子状物質の濃度に応じて算出した風量増加量を更に増加した風量を流すように制御装置30が送風機4を制御する点が「風量増加量の上限値を抑制しない空気清浄制御」とは異なる。図5に示す風量増加量の上限値と外気温度との関係は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された図5に示す関係に基づき、制御装置30は液温から風量増加量の上限値を算出する。
【0060】
このように第2の形態の車両用空調装置では、TAOが所定の温度よりも高く、かつ、液温が所定の液温よりも低い場合に、図6に示すステップS24に至り、図5に示すように空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値が抑制される。第2の形態の車両用空調装置では、TAOが所定の温度よりも高ければ、室温の上昇が大きく求められる空調条件であると判断される。そして、このように室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、熱源が不足しているものとして、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0061】
そのため、第2の形態の車両用空調装置では、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0062】
<第3の形態>
次に、図5及び図7を参照しながら、第3の形態の車両用空調装置について説明する。第3の形態の車両用空調装置は、必ず加熱ヒータ1を備える点を除いて第1の形態の車両用空調装置10と同じ構成を有し、第1の形態の車両用空調装置10とは、制御装置30が実行する制御ルーチンが異なる。そのため、第3の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを以下に記載し、その他の説明を省略する。
【0063】
第3の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを図7に示す。この制御ルーチンは、第1の形態の車両用空調装置10の制御装置30が実行する図2に示す制御ルーチンと比較すると、ステップS11とステップS12との間にステップS30が入る点のみが異なる。そのため、第3の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する図7に示す制御ルーチンについて、ステップS30に関わる点のみを以下に記載し、図2に示す制御ルーチンと共通する部分の説明を省略する。
【0064】
第3の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンでは、図7に示すように、ステップS11からステップS30に進んだ場合、ステップS30において、加熱ヒータ1が加熱しているか判定する。そして、加熱ヒータ1が加熱している場合は、ステップS30からステップS12に進む。また、加熱ヒータ1が加熱していない場合は、ステップS30からステップS16に進む。
【0065】
このように第3の形態の車両用空調装置では、加熱ヒータ1が加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0066】
そのため、第3の形態の車両用空調装置では、加熱ヒータ1が液体を加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、加熱ヒータ1の消費電力の増加を抑制できるため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制することができる。
【0067】
<第4の形態>
次に、図5図8及び図9を参照しながら、第4の形態の車両用空調装置について説明する。第4の形態の車両用空調装置は、必ずヒートポンプ2を備える点を除いて第1の形態の車両用空調装置10と同じ構成を有し、第1の形態の車両用空調装置10とは、制御装置30が実行する制御ルーチンが異なる。そのため、第4の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを以下に記載し、その他の説明を省略する。
【0068】
第4の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを図8に示す。この制御ルーチンは、第1の形態の車両用空調装置10の制御装置30が実行する図2に示す制御ルーチンと比較すると、ステップS11とステップS12との間にステップS40が入る点と、ステップS15でヒートポンプ2も制御する点のみが異なる。そのため、第4の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する図7に示す制御ルーチンについて、ステップS40に関わる点と、ステップS15におけるヒートポンプ2の制御を以下に記載し、図2に示す制御ルーチンと共通する部分の説明を省略する。
【0069】
第4の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンでは、図8に示すように、ステップS11からステップS40に進んだ場合、ステップS40において、吹出口から車室内に吹き出す空気をヒートポンプ2が加熱しているか判定する。そして、ヒートポンプ2が加熱している場合は、ステップS40からステップS12に進む。また、ヒートポンプ2が加熱していない場合は、ステップS40からステップS16に進む。
【0070】
また、ステップS14からステップS15に進んだ場合、第1の形態の車両用空調装置10と同様に、制御装置30は「風量増加量の上限値を抑制する空気清浄制御」を行う。更に、第4の形態の車両用空調装置では、ステップS15において、空気清浄制御による風量増加量に応じてヒートポンプ2の室外機ファンの風速を増加させて暖房能力と暖房効率を上昇させる。図9は、空気清浄制御による送風機4の風量増加量のレベルとヒートポンプ2の室外機ファンのduty比の補正量のレベルとの関係を示した図である。この関係は制御装置30のROMに記憶されており、ROMに記憶された図9に示す関係に基づき、制御装置30は空気清浄制御による送風機4の風量増加量のレベルから室外機ファンのduty比の補正量のレベルを算出し、送風機4及びヒートポンプ2を制御する。
【0071】
このように第4の形態の車両用空調装置では、車室内に吹き出す空気をヒートポンプ2が加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0072】
そのため、第4の形態の車両用空調装置では、車室内に吹き出す空気をヒートポンプ2が加熱しており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制することにより、ヒートポンプ2の消費電力の増加を抑制できるため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制することができる。
【0073】
更に、外気温度と室外機ファンの風量とコンプレッサ仕事によりヒートポンプ2のヒートポンプ能力が決定されるため、第4の形態の車両用空調装置では、上記のようにヒータコア通過風量が増えた時にヒートポンプ2の室外機ファンの風速を増加させて暖房能力と暖房効率を上昇させることによって、車両の燃費や電費を向上させることができる。
【0074】
<第5の形態>
次に、図5及び図10を参照しながら、第5の形態の車両用空調装置について説明する。第5の形態の車両用空調装置は、第1の形態の車両用空調装置10と同じ構成を有し、第1の形態の車両用空調装置10とは、制御装置30が実行する制御ルーチンのみが異なる。そのため、第5の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを以下に記載し、その他の説明を省略する。
【0075】
第5の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを図10に示す。この制御ルーチンは、第1の形態の車両用空調装置10の制御装置30が実行する図2に示す制御ルーチンと比較すると、ステップS11とステップS12との間にステップS50が入る点のみが異なる。そのため、第5の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する図10に示す制御ルーチンについて、ステップS50に関わる点のみを以下に記載し、図2に示す制御ルーチンと共通する部分の説明を省略する。
【0076】
第5の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンでは、図10に示すように、ステップS11からステップS50に進んだ場合、ステップS50において、標準モードより燃費向上を狙ったエコノミーモードが車両の走行モードとして選択されているか判定する。そして、エコノミーモードが選択されている場合は、ステップS50からステップS12に進む。また、エコノミーモードが選択されていない場合は、ステップS50からステップS16に進む。
【0077】
このように第5の形態の車両用空調装置では、エコノミーモードが車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0078】
そのため、第5の形態の車両用空調装置では、エコノミーモードが車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0079】
<第6の形態>
次に、図5及び図11を参照しながら、第6の形態の車両用空調装置について説明する。第6の形態の車両用空調装置はハイブリッド車両に搭載される。第6の形態の車両用空調装置は、第1の形態の車両用空調装置10と同じ構成を有し、第1の形態の車両用空調装置10とは、制御装置30が実行する制御ルーチンのみが異なる。そのため、第6の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを以下に記載し、その他の説明を省略する。
【0080】
第6の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンを図11に示す。この制御ルーチンは、第1の形態の車両用空調装置10の制御装置30が実行する図2に示す制御ルーチンと比較すると、ステップS11とステップS12との間にステップS60が入る点のみが異なる。そのため、第6の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する図11に示す制御ルーチンについて、ステップS60に関わる点のみを以下に記載し、図2に示す制御ルーチンと共通する部分の説明を省略する。
【0081】
第6の形態の車両用空調装置の制御装置30が実行する制御ルーチンでは、図11に示すように、ステップS11からステップS60に進んだ場合、ステップS60において、メインバッテリを走行用の動力源とするEVモードがハイブリッド車両の走行モードとして選択されているか判定する。そして、EVモードが選択されている場合は、ステップS60からステップS12に進む。また、EVモードが選択されていない場合は、ステップS60からステップS16に進む。
【0082】
このように第6の形態の車両用空調装置では、EVモードがハイブリッド車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件において、更に液温が所定の液温よりも低ければ、図5に示すように外気温度によって変動する上限値が風量増加量として許容される上限値として設けられる。
【0083】
そのため、第6の形態の車両用空調装置では、EVモードがハイブリッド車両の走行モードとして選択されており、室温の上昇が大きく求められる空調条件では、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値を抑制するため、空気清浄制御による車両の燃費や電費の悪化を抑制し、冷風による乗員の不快感を低減することができる。
【0084】
<実施形態の補足>
本開示の車両用空調装置は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、上述の形態では、室温の上昇が大きく求められる空調条件において、暖房の熱源となる液体の液温が所定の液温よりも低い場合に、空気清浄制御による風量増加量として許容される上限値として図5に示すように外気温度によって変動する上限値が設けられているが、外気温度ではなく室温や液温によって変動する上限値が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 加熱ヒータ、2 ヒートポンプ、3 内外気切替ドア、4 送風機、5 エアミックスドア、6 インジケータ、7 空気清浄制御スイッチ、10 車両用空調装置、11 室温センサ、12 外気温度センサ、13 液温センサ、14 日射量センサ、15 内気汚染度センサ、20 操作部、30 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11