(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20231011BHJP
B60R 21/20 20110101ALI20231011BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/20
(21)【出願番号】P 2019218245
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 豪軌
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0315303(US,A1)
【文献】特開2010-241241(JP,A)
【文献】特開2017-185953(JP,A)
【文献】特開2015-131586(JP,A)
【文献】特開2020-023203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/231
B60R 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内部に設けられたテーブルと、
シートクッションとシートバックとを有するシートであって、前記シートクッションを間において前記テーブルの反対側に前記シートバックが位置するように前記テーブルの周りに配置された複数の前記シートと、
前記シートに対応して複数設けられ、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、前記シートクッションを間において前記シートバックの反対側で前記シートバックに近接した部分の前記テーブルの上方へ向かって突出する突出部材と
、を備え、
前記テーブルには、前記シートバック側を向いた端面が形成されており、
前記テーブルの外周には、前記端面の上端部から前記テーブルの中央側に延びて上方を向いた面が形成されており、
前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、前記上方を向いた面を上方から覆って、上方向から見て前記端面から前記シートバック側へ張り出す乗員拘束装置。
【請求項2】
前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、前記端面を前記シートバック側から覆う
請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、前記シートバックから離れている部分の前記突出部材の突出高さが、前記シートバックに近い部分の前記突出部材の突出高さと比して高い
請求項1又は2に記載されている乗員拘束装置。
【請求項4】
前記加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置された前記シートに対応した前記突出部材が、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出する
請求項1~3の何れか1項に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
乗員が前記シートに着座しているか否かを検出する着座センサを備え、
前記加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置された前記シートに乗員が着座しているときに、前記シートに対応した前記突出部材が、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出する
請求項1~3の何れか1項に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記突出部材は、袋状で、前記テーブルの上方へ向かって膨出する
請求項1~5の何れか1項に記載の乗員拘束装置。
【請求項7】
前記加速度が車両に作用すると、前記テーブルの上面に対して下方から前記シートの前記シートバックに向かって突出する他の突出部材が前記シートに対応して複数設けられている
請求項1~6の何れか1項に記載の乗員拘束装置。
【請求項8】
前記他の突出部材が突出した後に、前記突出部材が突出する
請求項7に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両の車内には、円形状のテーブルが設けられており、この円形状のテーブルを囲むように複数のシートが配置されている。そして、車両の衝突時に膨張するエアバッグ装置の袋状のバッグは、1個で、テーブルの上面の上方に広がるように、テーブルの全周に亘って展開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乗員拘束装置では、1個の突出部材(バッグ)が、テーブルの上面の上方に広がるように、テーブルの全周に亘って突出(展開)される。このように、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させることで、衝突時に、シートに着座している乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制している。しかし、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させるため、突出部材が大きくなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させる場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出部材の大きさを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る乗員拘束装置は、車両の内部に設けられたテーブルと、シートクッションとシートバックとを有するシートであって、前記シートクッションを間において前記テーブルの反対側に前記シートバックが位置するように前記テーブルの周りに配置された複数の前記シートと、前記シートに対応して複数設けられ、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、前記シートクッションを間において前記シートバックの反対側で前記シートバックに近接した部分の前記テーブルの上方へ向かって突出する突出部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、シートクッションとシートバックとを有するシートが、テーブルの周りに複数配置されている。そして、シートに対応して設けられた突出部材が、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、シートクッションを間においてシートバックの反対側でシートバックに近接した部分のテーブルの上方へ向かって突出する。このため、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させる場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出部材の大きさを小さくすることができる。
【0008】
本発明の第2態様に係る乗員拘束装置は、第1態様に記載の乗員拘束装置において、前記テーブルには、前記シートバック側を向いた端面が形成されており、前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、上方向から見て前記端面から前記シートバック側へ張り出すことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、突出部材は、テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、上方向から見てテーブルの端面からシートバック側へ張り出す。このため、突出部材がテーブルの端面からシートバック側へ張り出さない場合と比して、車両に生じた加速度によって、乗員がテーブルの端面に当たるのを抑制することができる。
【0010】
本発明の第3態様に係る乗員拘束装置は、第2態様に記載の乗員拘束装置において、前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、前記端面を前記シートバック側から覆うことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、突出部材は、テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、テーブルの端面をシートバック側から覆う。このため、突出部材がテーブルの端面をシートバック側から覆っていない場合と比して、車両に生じた加速度によって、乗員がテーブルの端面に当たるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の第4態様に係る乗員拘束装置は、第1~第3態様の何れか1態様に記載の乗員拘束装置において、前記突出部材は、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、前記シートバックから離れている部分の前記突出部材の突出高さが、前記シートバックに近い部分の前記突出部材の突出高さと比して高いことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、突出部材は、テーブルの上面から上方へ向かって突出した状態で、シートバックから離れている部分の突出部材の突出高さが、シートバックに近い部分の突出部材の突出高さと比して高くなっている。このため、シートバックから離れている部分の突出部材の突出高さが、シートバックに近い部分突出部材の突出高さに対して低い場合と比して、突出部材が頭部の顔面を広い領域(面積)で受けることができる。
【0014】
本発明の第5態様に係る乗員拘束装置は、第1~第4態様の何れか1態様に記載の乗員拘束装置において、前記加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置された前記シートに対応した前記突出部材が、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置されたシートに対応した突出部材が、テーブルの上面から上方へ向かって突出する。このため、全ての突出部材が突出する場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出する突出部材の数を減らすことができる。
【0016】
本発明の第6態様に係る乗員拘束装置は、第1~第4態様の何れか1態様に記載の乗員拘束装置において、乗員が前記シートに着座しているか否かを検出する着座センサを備え、前記加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置された前記シートに乗員が着座しているときに、前記シートに対応した前記突出部材が、前記テーブルの上面から上方へ向かって突出することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置されたシートに乗員が着座しているときに、シートに対応した突出部材が、テーブルの上面から上方へ向かって突出する。このため、加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置されたシートに対応した突出部材が常に突出する場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出する突出部材の数を減らすことができる。
【0018】
本発明の第7態様に係る乗員拘束装置は、第1~第6態様の何れか1態様に記載の乗員拘束装置において、前記突出部材は、袋状で、前記テーブルの上方へ向かって膨出することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、突出部材は、袋状で、テーブルの上方へ向かって膨出する。このため、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させる場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出部材の展開時間を短くすることができる。
【0020】
本発明の第8態様に係る乗員拘束装置は、第1~第7態様の何れか1態様に記載の乗員拘束装置において、前記加速度が車両に作用すると、前記テーブルの上面に対して下方から前記シートの前記シートバックに向かって突出する他の突出部材が前記シートに対応して複数設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、加速度が車両に作用すると、他の突出部材が、テーブルの上面に対して下方からシートバックに向かって突出する。このため、乗員の腹部及び大腿部の少なくとも一方を他の突出部材によって拘束することができる。
【0022】
本発明の第9態様に係る乗員拘束装置は、第8態様に記載の乗員拘束装置において、前記他の突出部材が突出した後に、前記突出部材が突出することを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、他の突出部材が突出した後に突出部材が突出する。このため、突出部材が突出した後に他の突出部材が突出する場合と比して、腹部及び大腿部が拘束された乗員の上半身がテーブル側に倒れることで、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1個の突出部材をテーブルの全周に亘って突出させる場合と比して、乗員の頭部がテーブルの上面に当たるのを抑制した上で、突出部材の大きさを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置を備えた車両を示した斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置を示した平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置を示した側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第一エアバッグ装置を示した断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置を示した拡大断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第二エアバッグ装置のバッグが膨出した状態を示した断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第一エアバッグ装置のバッグが膨出した状態を示した断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第一エアバッグ装置のバッグが膨出して頭部がバッグに当たった状態を示した断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第二エアバッグ装置のバッグが膨出した状態を示した断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第一エアバッグ装置のバッグが膨出した状態を示した断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置の第一エアバッグ装置、第二エアバッグ装置であって、第一エアバッグ装置のバッグが膨出して頭部がバッグに当たった状態を示した断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態の乗員拘束装置に備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の斜視図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の斜視図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の側面図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の断面図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の断面図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置の断面図である。
【
図20】本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る乗員拘束装置に備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置の断面図である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置の拡大断面図である。
【
図23】本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置の第一突出装置、第二突出装置であって、第二突出装置の突出部材が突出した状態を示した断面図である。
【
図24】本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置の第一突出装置、第二突出装置であって、第一突出装置の突出部材が突出した状態を示した断面図である。
【
図25】本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置の第一突出装置、第二突出装置であって、第一突出装置の突出部材が突出して頭部がバッグに当たった状態を示した断面図である。
【
図26】(A)(B)本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置に備えられた第二突出装置を示した拡大断面図である。
【
図27】(A)(B)本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置に備えられた第一突出装置を示した拡大断面図である。
【
図28】本発明の第3実施形態に係る乗員拘束装置を示し、バッグが収納された状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置10を採用した車両100の一例について
図1~
図20を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Hは車両上下方向であって鉛直方向を示し、矢印Lは車両の進行方向である車両前後方向であって水平方向を示し、矢印Wは車両幅方向であって水平方向を示す。
【0027】
(車両100)
車両100は、
図1に示されるように、車室内100aに、乗員を車両100の衝突時に拘束する乗員拘束装置10を備えている。
【0028】
乗員拘束装置10は、テーブル12と、テーブル12の周りに配置された複数のシート16と、第一エアバッグ装置80と、第二エアバッグ装置50と、加速度センサ20と、着座センサ26(
図4参照)と、各部を制御する制御部30(
図13参照)とを備えている。さらに、乗員拘束装置10は、第二エアバッグ装置50を支持する支持ユニット36を備えている。
【0029】
〔テーブル12〕
テーブル12は、
図1、
図2に示されるように、車両上方から見て、円形状とされており、テーブル板12aと、上下方向に延びて先端がテーブル板12aの裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられた円柱状の支柱12bとを備えている。
【0030】
フロアパネル110の下方を向いた面には、車両幅方向に延びると共にフロアパネル110を補強するクロスメンバ114が複数配置されている。そして、支柱12bの基端は、クロスメンバ114によって補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0031】
ここで、「クロスメンバ114によって補強されている部分のフロアパネル110」とは、車両上方から見て、クロスメンバ114と重なっている部分のフロアパネル110である。
【0032】
また、テーブル板12aには、上方を向いた上面14aと、下方を向いた下面14bと、シート16の後述するシートバック44側を向いた端面14cとが形成されている。さらに、テーブル板12aの内部には、第一エアバッグ装置80が配置される空洞部22が4個形成されている。
【0033】
具体的には、空洞部22は、
図3に示されるように、車両上方から見て、支柱12bを間に置いて車両前後方向で並ぶように2個形成され、支柱12bを間に置いて車両幅方向で並ぶように2個形成されている。また、夫々の空洞部22は、車両上方から見て、テーブル板12aの周方向に延びる矩形状とされている第一空洞部22aと、第一空洞部22aから支柱12b側に延びている矩形状とされた第二空洞部22bとを有している。
【0034】
〔シート16〕
シート16は、
図3に示されるように、4個備えられており、テーブル12を間に置いて車両前後方向に向かい合うように2個配置され、テーブル12を間に置いて車両幅方向に向かい合うように2個配置されている。このように、シート16は、テーブル板12aに形成された空洞部22に対応して夫々配置されている。換言すれば、テーブル板12aに形成された空洞部22は、夫々のシート16に対応して夫々形成されている。
【0035】
夫々のシート16は、
図5に示されるように、シート16に着座した乗員の大腿部を支持するシートクッション42と、着座した乗員の背部を支持するシートバック44と、支柱46とを備えている。
【0036】
具体的には、シート16は、シートバック44がシートクッション42を間に置いてテーブル12の反対側に位置するように配置されている。また、支柱46は、円柱状で、車両上下方向に延びて先端がシートクッション42の裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられている。具体的には、支柱46の基端は、クロスメンバ114で補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0037】
この構成において、車両100の走行時及び停車時に、シート16に着座した乗員は、テーブル12を囲んで対話することができる。
【0038】
〔支持ユニット36〕
支持ユニット36は、
図2に示されるように、金属材料を用いて形成された環状部材38と、金属材料を用いて形成され、環状部材38を支持する4個の支柱40とを備えている。
【0039】
環状部材38は、テーブル板12aの下方に配置されており、テーブル12の支柱12bを囲むように配置されている。また、環状部材38は、車両上方から見て、円環状とされており、環状部材38の外径は、テーブル板12aの外径と比して小さくされている。
【0040】
4個の支柱40は、環状部材38の周方向に同様の間隔で配置されている。支柱40は、車両上下方向に延びて先端が環状部材38に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられている。具体的には、支柱40の基端は、クロスメンバ114で補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0041】
〔第二エアバッグ装置50〕
第二エアバッグ装置50は、
図5に示されるように、テーブル板12aの上方を向いた上面14aに対して下方に配置され、夫々のシート16に対応して夫々個別に備えられている。具体的には、第二エアバッグ装置50は、
図3に示されるように、車両上方から見て、シートバック44に対して車両前後方向又は車両幅方向に対向して夫々配置されている。
【0042】
また、第二エアバッグ装置50は、
図6に示されるように、エアバッグ本体52と、支持ユニット36の環状部材38にエアバッグ本体52を取り付けるためのブラケット56と、エアバッグ本体52を覆う被覆部材70とを備えている。
【0043】
-エアバッグ本体52-
エアバッグ本体52は、
図6に示されるように、金属製の筐体52aと、筐体52aの内部に配置されたインフレータ52bと、筐体52aの内部に配置された袋状のバッグ52cとを有している。このように、バッグ52cは、シート16に対応して夫々個別に備えられている。バッグ52cは、他の突出部材の一例である。
【0044】
筐体52aは、シートバック44側が開口された断面U字状で、インフレータ52bは、筐体52aの内部の底側(開口とは反対側)に配置されている。さらに、バッグ52cは、折り畳まれた状態で、筐体52aの内部に収納されている。
【0045】
この構成において、インフレータ52bの点火装置が作動することでインフレータ52bから噴出されるガスが、バッグ52cの内部に放出される。これにより、折り畳まれたバッグ52cが膨張する。
【0046】
-被覆部材70-
被覆部材70は、樹脂材料を用いて形成されており、
図6に示されるように、筐体52aの開口をシートバック44側から覆う蓋部72と、蓋部72の下端に連結されると共に筐体52aの下面を下方から覆う底板74とを有している。さらに、被覆部材70は、底板74から立ち上がると共に筐体52aの側面を側方から覆う側板76(
図4参照)を有している。なお、側板76と蓋部72とは、連結されていない。
【0047】
また、側板76の上端及び蓋部72の上端は、テーブル板12aの下方を向いた下面14bに取り付けられている。
【0048】
さらに、蓋部72は、板状とされており、蓋部72の下方側の部分には、他の部位と比して薄肉とされた薄肉部72aが形成されており、薄肉部72aは、水平方向に延びている。
【0049】
この構成において、インフレータ52bから噴出されたガスが、バッグ52cの内部に放出されることで、折り畳まれたバッグ52cが膨張する。そして、蓋部72がバッグ52cによって押され、薄肉部72aが破断する。さらに、蓋部72が蓋部72の上端を軸として回転し、
図7に示されるように、バッグ52cが、シート16のシートバック44に向かって膨出する。換言すれば、バッグ52cが、シート16のシートバック44に向かって突出する。
【0050】
そして、シート16にアメリカの成人男性の平均とされるAM50のダミー人形を乗員として着座させた状態では、シート16に着座している乗員の腹部がバッグ52cとシートバック44との間に挟まれ、シート16に着座している乗員の大腿部がバッグ52cとシートクッション42との間に挟まれる。これにより乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。
【0051】
-ブラケット56-
ブラケット56は、
図6に示されるように、環状部材38とエアバッグ本体52との間に配置されており、環状部材38に溶接によって取り付けられた金属製の取付具58と、筐体52aに溶接によって取り付けられた金属製の取付具60とを備えている。さらに、ブラケット56は、取付具58と取付具60とを連結させる連結ボルト62を備えている。
【0052】
取付具58は、環状部材38の外周面に沿った基部58aと、L字状の連結部58bとを有している。また、L字状の連結部58bには、連結ボルト62が通る図示せぬ貫通孔が形成され、連結ボルト62が締め込まれる溶接ナット58cが取り付けられている。
【0053】
取付具60は、筐体52aの外表面に沿った基部60aと、L字状の連結部60bとを有している。L字状の連結部60bには、連結ボルト62が通る図示せぬ貫通孔が形成されている。
【0054】
この構成において、連結ボルト62を、取付具60の連結部60bの貫通孔、及び取付具58の連結部58bの貫通孔を通し、溶接ナット58cに締め込む。これにより、エアバッグ本体52が、支持ユニット36の環状部材38に取り付けられる。
【0055】
〔第一エアバッグ装置80〕
第一エアバッグ装置80は、
図5に示されるように、夫々のシート16に対応して夫々個別に備えられている。具体的には、第一エアバッグ装置80は、4個設けられ、夫々のシート16に対応して形成されたテーブル板12aの空洞部22に配置されている。
【0056】
また、第一エアバッグ装置80は、
図6に示されるように、エアバッグ本体82と、エアバッグ本体82を上方から覆う被覆部材90とを備えている。
【0057】
-エアバッグ本体82-
エアバッグ本体82は、
図6に示されるように、第二空洞部22bに配置されたインフレータ82bと、折り畳まれた状態で、第一空洞部22aに配置された袋状のバッグ82cとを有している。このように、バッグ82cは、シート16に対応して夫々個別に備えられている。バッグ82cは、突出部材の一例である。
【0058】
この構成において、インフレータ82bの点火装置が作動することでインフレータ82bから噴出されたガスが、バッグ82cの内部に放出される。これにより、折り畳まれたバッグ82cが膨張する。
【0059】
-被覆部材90-
被覆部材90は、樹脂材料を用いて形成されており、テーブル板12aの上面14aの一部を構成している。被覆部材90は、第一空洞部22aを上方側から覆うように配置されており、上方から見て、被覆部材90の外形形状は、第一空洞部22aの外形形状と同様とされている。
【0060】
被覆部材90は、板状とされており、被覆部材90には、第一空洞部22a側が凹むことで、他の部位と比して薄肉とされた薄肉部90aが、テーブル板12aの外周形状にそって延びて形成されている。具体的には、この薄肉部90aは、被覆部材90において、シートバック44側の部分で、テーブル板12aの外周形状にそって延びて形成されている。
【0061】
そして、被覆部材90は、薄肉部90aに対して支柱12b側に配置された蓋部92と、薄肉部90aに対して端面14c側に配置された本体部94とを有している。さらに、被覆部材90には、蓋部92を、テーブル板12aの周方向から挟む一対の薄肉部(図示省略)が形成されている。つまり、蓋部92において、テーブル板12aの径方向の外側の端部には、薄肉部90aが形成され、蓋部92において、テーブル板12aの周方向の端部には、一対の薄肉部が形成されている。
【0062】
この構成において、インフレータ82bから噴出されたガスが、バッグ82cの内部に放出されることで、折り畳まれたバッグ82cが膨張する。そして、蓋部92がバッグ82cによって押され、蓋部92において、テーブル板12aの径方向の外側の端部に形成された薄肉部92a、及びテーブル板12aの周方向の端部に形成された一対の薄肉部が破断する。さらに、蓋部92が、蓋部92の支柱12b側の部分を軸として回転し、
図8に示されるように、バッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出する。換言すれば、バッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって突出する。
【0063】
バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、上方向から見て、テーブル板12aの端面14cからシートバック44側へ張り出している。さらに、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、テーブル板12aの端面14cをシートバック44側から覆っている。ここで、「バッグ82cが膨出した状態」とは、膨出したバッグ82cに乗員が当たる前の状態である。
【0064】
また、バッグ82cが膨出した状態で、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高くなっている。つまり、図中高さL01は、図中高さL02と比して高くなっている。
【0065】
〔加速度センサ20、着座センサ26〕
加速度センサ20は、
図1に示されるように、車両100のフロアパネル110の下面に取り付けられている。そして、加速度センサ20は、車両100に作用する加速度と、加速度が車両100に作用した方向とを検出するようになっている。
【0066】
着座センサ26は、
図5に示されるように、夫々のシート16のシートクッション42に取り付けられている。そして、夫々の着座センサ26は、シート16に乗員が着座したか否かを、シートクッション42に作用した押圧力によって検出するようになっている。
【0067】
〔制御部30〕
制御部30は、
図13に示されるように、加速度センサ20の検出結果、及び着座センサ26の検出結果に基づいて、夫々のインフレータ52bの点火装置の作動、不作動、及び夫々のインフレータ82bの点火装置の作動、不作動を制御する。なお、制御部30の各部に対する制御については、後述する作用と共に説明する。
【0068】
(作用)
次に、乗員拘束装置10の作用について、比較形態に係る乗員拘束装置610と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係る乗員拘束装置610の構成について、乗員拘束装置10と異なる部分を主に説明する。
【0069】
〔乗員拘束装置610の構成〕
比較形態に係る乗員拘束装置610について、
図14~
図20を用いて説明する。乗員拘束装置610は、
図14に示されるように、車室内100aに配置されたテーブル612と、テーブル612の周りに配置された複数のシート16と、エアバッグ装置650と、加速度センサ20と、各部を制御する制御部630(
図20参照)とを備えている。なお、乗員拘束装置610は、着座センサを備えていない。
【0070】
-テーブル612-
テーブル612は、車両上方から見て、円形状とされており、
図14に示されるように、テーブル板612aと、上下方向に延びて先端がテーブル板612aの裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられた円筒状の支柱612bとを備えている。
【0071】
フロアパネル110の下方を向いた面には、車両幅方向に延びると共にフロアパネル110を補強するクロスメンバ114が複数配置されている。そして、支柱612bの基端は、クロスメンバ114で補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0072】
また、テーブル板612aの外周部には、
図16に示されるように、シート16のシートバック44側を向いた端面614が形成されている。さらに、テーブル板612aの外周側の部分には、裏面が凹んで形成され、他の部位に対して薄肉とされると共にエアバッグ装置650を構成する蓋部652eが全周に亘って形成されている。
【0073】
また、支柱612bは、円筒状とされており、支柱612bの内部には、後述するインフレータ652bが配置されている。
【0074】
-エアバッグ装置650-
エアバッグ装置650は、
図16、
図17に示されるように、エアバッグ本体652を備えている。
【0075】
エアバッグ本体652は、金属製の筐体652aと、円筒状の支柱612bの内部に配置されたインフレータ652bと、袋状のバッグ652cと、配管652dと、蓋部652eとを有している。
【0076】
蓋部652eは、樹脂材料を用いて形成されており、蓋部652eの外周側の部分には、他の部位と比してさらに薄肉とされた薄肉部654が、全周に亘って形成されている。
【0077】
筐体652aは、蓋部652eの下方で、全周に亘って配置され、蓋部652e側が開口された断面U字状とされている。また、筐体652aには、配管652dが通る貫通孔653が形成されている。そして、筐体652aは、テーブル板612aに取り付けられている。また、バッグ652cは、折り畳まれた状態で、筐体652aの内部に収納されている。
【0078】
配管652dは、インフレータ652bとバッグ652cとを連通するように配置されており、インフレータ652bの点火装置が作動することでインフレータ652bから噴出されたガスが配管652dを通り、バッグ652cの内部に放出される。そして、内部に放出されたガスによって、折り畳まれたバッグ652cが膨張するようになっている。
【0079】
-制御部630-
制御部630は、
図20に示されるように、加速度センサ20の検出結果に基づいて、インフレータ652bの点火装置の作動、不作動を制御する。なお、制御部630の各部に対する制御については、後述する作用と共に説明する。
【0080】
〔乗員拘束装置10、610の作用〕
-乗員拘束装置610の作用-
車両100が走行している状態で、衝突対象物に衝突した場合、又は停車している車両100が後方から衝突対象物によって追突された場合には、車両100に加速度が作用する。加速度センサ20は、車両100に作用した加速度と、加速度が作用した方向とを検出する。
【0081】
図20に示す乗員拘束装置610に備えられた制御部630は、加速度センサ20が検出した加速度を取得する。さらに、制御部630は、加速度が予め決められた値以上の場合に、バッグ652cを膨張させる。
【0082】
具体的には、制御部630は、エアバッグ本体652のインフレータ652bの点火装置を作動させる。点火装置を作用させることで、
図17、
図18に示されるように、インフレータ652bから噴出されるガスが、バッグ652cの内部に放出される。これにより、折り畳まれたバッグ652cが膨張する。そうすると、蓋部652eがバッグ652cによって押され、薄肉部654(
図17参照)が破断する。さらに、蓋部652eが蓋部652eの径方向の内側の基端を軸として回転し、1個のバッグ652cが、テーブル612のテーブル板612aの上面616の上方に広がるように全周に亘って膨出する(
図15参照)。
【0083】
具体的には、バッグ652cは、テーブル板612aの上面か616ら上方へ向かって膨出(突出)した状態で、バッグ652cは、上方向から見て、テーブル板612aの端面614からシートバック44側へ張り出していない。さらに、シートバック44から離れている部分のバッグ652cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ652cの突出高さと比して低くなっている。つまり、図中高さL11は、図中高さL12と比して低くなっている。
【0084】
これにより、
図19に示されるように、車両100に生じた加速度によって、シート16に着座した乗員の頭部がテーブル板612aの上面616に当たりそうになった場合でも、頭部がバッグ652cに当たる。これにより、シート16に着座した乗員の頭部がテーブル板612aの上面616に当たるのが抑制される。
【0085】
-乗員拘束装置10の作用-
車両が走行可能状態となると、
図13に示す制御部30は、シート16に乗員が着座したか否かの着座情報を、着座センサ26からシート16毎に取得する。なお、この着座情報については、車両が走行可能状態である場合は、随時更新される。また、「走行可能状態」とは、自動運転車両の場合には、車両が交通状況等を認知して、運転に関わる操作を制御できる状態であって、手動運転車両の場合には、イグニッションスイッチをONにした状態である。
【0086】
そして、車両100が走行している状態で、衝突対象物に衝突した場合、又は停車している車両100が後方から衝突対象物によって追突された場合には、加速度が車両100に作用する。加速度センサ20は、車両100に作用した加速度と、加速度が車両100に作用した方向とを検出する。
【0087】
乗員拘束装置10に備えられた制御部30は、加速度センサ20が検出した加速度と、加速度が車両100に作用した方向を取得する。制御部30は、検出された加速度が予め決められた値以上で、かつ、その加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に乗員が着座している場合に、着座しているシート16に対応しているバッグ52c、及びバッグ82cを膨出させる。
【0088】
以下、具体的に説明する。説明の便宜上、
図3に示されるように、4個のシート16の中で最も車両前方側(図中左側)に配置されているシート16をシート16aと記載し、4個のシート16の中で最も車両後方側(図中右側)に配置されているシート16をシート16bと記載することがある。さらに、4個のシート16の中で最も車幅方向の一方側(図中上側)に配置されているシート16をシート16cと記載し、4個のシート16の中で最も車幅方向の他方側(図中下側)に配置されているシート16をシート16dと記載することがある。
【0089】
例えば、走行している車両100が前方の衝突対象物に衝突した前突の場合に、車両100には、
図3に示す矢印S01方向に加速度が作用する。そこで、この加速度が予め決められた値以上で、かつ、矢印S01に対いて反対方向(図中矢印S11)に向かって乗員が着座するように配置されたシート16bに乗員が着座している場合に、制御部30は、シート16bに対応するインフレータ52bの点火装置を作動させる。
【0090】
点火装置を作用させることで、
図5、
図7に示されるように、インフレータ52bからガスが噴出し、噴出されるガスが、バッグ52cの内部に放出される。バッグ52cの内部に放出されたガスによって、折り畳まれたバッグ52cが膨張する。そして、蓋部72がバッグ52cによって押され、薄肉部72aが破断する。さらに、蓋部72が蓋部72の上端を軸として回転し、バッグ52cが、シート16bのシートバック44に向かって膨出する。換言すれば、バッグ52cが、シート16bのシートバック44に向かって突出する。
【0091】
そして、シート16bに着座している乗員の腹部がバッグ52cとシートバック44との間に挟まれ、シート16bに着座している乗員の大腿部がバッグ52cとシートクッション42との間に挟まれる。これにより乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。
【0092】
さらに、第二エアバッグ装置50のバッグ52cが膨出した後に、制御部30は、第一エアバッグ装置80のバッグ82cが膨出するように、インフレータ82bの点火装置を作動させる。換言すれば、制御部30は、シート16bに対応する第二エアバッグ装置50のインフレータ52bの点火装置を作動させた後、シート16bに対応する第一エアバッグ装置80のインフレータ82bの点火装置を作動させる。本実施形態では、一例として、制御部30は、インフレータ52bの点火装置を作動させた後、5〔msec〕以上100〔msec〕以下経過後に、インフレータ82bの点火装置を作動させる。
【0093】
インフレータ82bの点火装置を作用させることで、
図7、
図8に示されるように、インフレータ82bからガスが噴出し、噴出されるガスが、バッグ82cの内部に放出される。バッグ82cの内部に放出されたガスによって、折り畳まれたバッグ82cが膨張する。
【0094】
膨張したバッグ82cに押された蓋部92が回転し、バッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出する。バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、上方向から見て、テーブル板12aの端面14cからシートバック44側へ張り出している。さらに、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、テーブル板12aの端面14cをシートバック44側から覆っている。また、バッグ82cが膨出した状態で、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高くなっている。
【0095】
そして、
図9に示されるように、バッグ52cによって腹部及び大腿部が拘束されている乗員の上半身がテーブル12側に倒れ、乗員の頭部が、バッグ82cに当たる。これにより、シート16bに着座した乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのが抑制される。ここで、バッグ82cが膨出した状態で、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高い。このため、バッグ82cが頭部の顔面と広い領域(面積)で当たる。
【0096】
また、停車している車両100が後方から衝突対象物に衝突された後突の場合(追突の場合)に、車両100には、
図3に示す矢印S02方向に加速度が作用する。そこで、この加速度が予め決められた値以上で、かつ、矢印S02に対いて反対方向(図中矢印S12)に向かって乗員が着座するように配置されたシート16aに乗員が着座している場合に、制御部30は、シート16aに対応するインフレータ52bの点火装置を作動させる。点火装置を作用させることで、
図10に示されるように、インフレータ52bからガスが噴出し、噴出されるガスが、バッグ52cの内部に放出される。バッグ52cの内部に放出されたガスによって、折り畳まれたバッグ52cが膨張する。そうすると、蓋部72がバッグ52cによって押され、薄肉部72aが破断する。そして、前突の場合と同様に、バッグ52cがシート16aのシートバック44に向かって膨出し、乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。
【0097】
さらに、制御部30は、シート16aに対応するインフレータ52bの点火装置を作動させた後、シート16aに対応する第一エアバッグ装置80のインフレータ82bの点火装置を作動させる。
【0098】
インフレータ82bの点火装置を作用させることで、
図10、
図11に示されるように、インフレータ82bからガスが噴出し、噴出されるガスが、バッグ82cの内部に放出される。バッグ82cの内部に放出されたガスによって、折り畳まれたバッグ82cが膨張する。
【0099】
膨張したバッグ82cに押された蓋部92が回転し、バッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出する。バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、上方向から見て、テーブル板12aの端面14cからシートバック44側へ張り出している。さらに、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、テーブル板12aの端面14cをシートバック44側から覆っている。また、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高くなっている。
【0100】
そして、
図12に示されるように、バッグ52cによって腹部及び大腿部が拘束されている乗員の上半身がテーブル12側に倒れ、乗員の頭部が、バッグ82cに当たる。これにより、シート16bに着座した乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのが抑制される。
【0101】
また、走行又は停車している車両100が車両幅方向の一方(側方)から衝突対象物に衝突された側突の場合に、車両100には、
図3に示す矢印S03方向に加速度が作用する。そこで、この加速度が予め決められた値以上で、かつ、矢印S03に対いて反対方向(図中矢印S13)に向かって乗員が着座するように配置されたシート16dに乗員が着座している場合に、制御部30は、シート16dに対応するインフレータ52bの点火装置、及びインフレータ82bの点火装置をこの順番で作動させる。これにより、前突、及び後突と同様に、バッグ52cがシート16dのシートバック44に向かって膨張し、乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)される。さらに、バッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出し、乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのが抑制される。
【0102】
なお、走行又は停車している車両100が車両幅方向の他方(側方)から衝突対象物に衝突された側突の場合も、車両幅方向の一方(側方)から衝突対象物に衝突された側突の場合と同様である。
【0103】
また、走行又は停車している車両100が急に加速した場合に、
図3に示す矢印S02方向に加速度が作用する。そこで、この加速度が予め決められた値以上で、かつ、矢印S02に対いて反対方向(図中矢印S12)に向かって乗員が着座するように配置されたシート16aに乗員が着座している場合に、制御部30は、各部を制御する。具体的には、制御部30は、後突の場合(追突の場合)と同様に、シート16aに対応するインフレータ52bの点火装置、及びインフレータ82bの点火装置をこの順番で作動させる。
【0104】
これにより、シート16aに着座している乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。さらに、乗員の頭部が、バッグ82cに当たることで、テーブル板12aの上面14aに当たるのが抑制される。
【0105】
また、走行している車両100が急に減速した場合に、
図3に示す矢印S01方向に加速度が作用する。そこで、この加速度が予め決められた値以上で、かつ、矢印S01に対いて反対方向(図中矢印S11)に向かって乗員が着座するように配置されたシート16bに乗員が着座している場合に、制御部30は、各部を制御する。具体的には、制御部30は、前突の場合と同様に、シート16bに対応するインフレータ52bの点火装置、及びインフレータ82bの点火装置をこの順番で作動させる。
【0106】
これにより、シート16bに着座している乗員の腹部及び大腿部が、バッグ52cによって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。さらに、乗員の頭部が、バッグ82cに当たることで、テーブル板12aの上面14aに当たるのが抑制される。
【0107】
(まとめ)
以上説明したように、乗員拘束装置10では、予め決められた以上の加速度が車両100に作用すると、シート16に対応して夫々個別に備えられた第一エアバッグ装置80のバッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出する。このため、1個のバッグ652cが、テーブル612のテーブル板612aの上面616の上方に広がるように全周に亘って膨出する乗員拘束装置610の場合と比して、乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのを抑制した上で、バッグ82cの大きさを小さくすることができる。つまり、バッグ652cと比して、4個のバック82cの合計の大きさを小さくすることができる。
【0108】
また、乗員拘束装置10では、予め決められた以上の加速度が車両100に作用すると、シート16に対応して夫々個別に備えられた第一エアバッグ装置80のバッグ82cが、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出する。このため、1個のバッグ652cが、テーブル612のテーブル板612aの上面616の上方に広がるように全周に亘って膨出する乗員拘束装置610の場合と比して、乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのを抑制した上で、バッグ82cの展開時間を短くすることができる。
【0109】
また、乗員拘束装置10では、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、上方向から見て、テーブル板12aの端面14cからシートバック44側へ張り出している。このため、バッグ652cがテーブル板612aの端面614からシートバック44側へ張り出していない乗員拘束装置610の場合と比して、車両100に生じた加速度によって、乗員がテーブル板12aの端面14cに当たるのを抑制することができる。
【0110】
また、乗員拘束装置10では、バッグ82cが膨出した状態で、バッグ82cは、テーブル板12aの端面14cをシートバック44側から覆っている。このため、バッグ652cがテーブル板612aの端面614をシートバック44側から覆っていない乗員拘束装置610の場合と比して、車両100に生じた加速度によって、乗員がテーブル板12aの端面14cに当たるのを抑制することができる。
【0111】
また、乗員拘束装置10では、バッグ82cが膨出した状態で、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高い。このため、シートバック44から離れている部分のバッグ652cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ652cの突出高さに対して低い乗員拘束装置610の場合と比して、乗員の上半身がテーブル12側に倒れて乗員の頭部がバッグ82cに当たるときに、バッグ82cが頭部の顔面と広い領域(面積)で当たることができる。換言すれば、乗員拘束装置10では、バッグ82cが頭部の顔面を広い領域で受けることができる。
【0112】
また、乗員拘束装置10では、乗員がシート16に着座しているか否かを検出する着座センサ26が備えられている。そして、制御部30は、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に乗員が着座している場合に、制御部30は、そのシート16に対応したバッグ82cを、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出させる。このため、加速度が作用した方向と反対方向に向かって着座するように配置されたシート16に対応したバッグ82cが常に膨出する場合と比して、乗員の頭部がテーブル12の上面14aに当たるのを抑制した上で、膨出するバッグ82cの数を減らすことができる。
【0113】
また、乗員拘束装置10では、シート16毎に、テーブル板12aの上面14aに対して下方からシートバック44に向かって突出するバッグ52cを備えている。このため、乗員拘束装置610と比して、シートに着座している乗員の拘束性能を向上させることができる。
【0114】
また、乗員拘束装置10では、制御部30は、バッグ52cが膨出した後に、バッグ82cが膨出するように、バッグ52c及びバッグ82cの膨出を制御する。換言すれば、制御部30は、乗員の腹部及び大腿部をバッグ52cによって拘束した後に、バッグ82cが膨出するように制御する。これにより、バッグ52cによって乗員の腹部及び大腿部が拘束されている乗員の上半身がテーブル12側に倒れ、バッグ52cが膨出した後に膨出したバッグ82cに乗員の頭部が当たる。このように、バッグ52cが膨出した後にバッグ82cを膨出させることで、バッグ82cが膨出した後にバッグ52cを膨出させる場合と比して、腹部及び大腿部が拘束された乗員の上半身がテーブル側に倒れることで、乗員の頭部がテーブル板の上面に当たるのを効果的に抑制することができる。
【0115】
<第2実施形態>
(構成)
本発明の第2実施形態に係る乗員拘束装置210の一例について、
図21~
図27を用いて説明する。第2実施形態に係る乗員拘束装置210については、第1実施形態の乗員拘束装置10と異なる部分を主に説明する。
【0116】
乗員拘束装置210は、
図21に示されるように、テーブル212と、テーブル212の周りに配置された複数のシート16と、第一突出装置280と、第二突出装置250とを備えている。乗員拘束装置210は、加速度センサ、着座センサ、及び制御部を備えていない。
【0117】
〔テーブル212〕
テーブル212は、車両上方から見て、円形状とされており、
図21に示されるように、テーブル板212aと、上下方向に延びて先端がテーブル板212aの裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられた円柱状の支柱212bとを備えている。
【0118】
フロアパネル110の下方を向いた面には、車両幅方向に延びると共にフロアパネル110を補強するクロスメンバ114が複数配置されている。そして、支柱212bの基端は、クロスメンバ114によって補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0119】
さらに、テーブル板212aの下面214bの外周部分は、下方へ突出している。また、テーブル板212aの上面214aの外周部分は、中央部分に比して下方へ凹んでおり、第一突出装置280が配置される凹部222が4個形成されている。
【0120】
具体的には、凹部222は、車両上方から見て、支柱212bを車両前後方向から挟むように2個形成され、支柱212bを車両幅方向から挟むように2個形成されている。また、凹部222において外周側の部分には、第一突出装置280の後述する突出機構286が配置されている空洞部226が形成されている。
【0121】
空洞部226の上下方向の中央側の部分には、
図22に示されるように、段差面226aが形成されている。この段差面226aにおいてテーブル板212aの径方向の内側の部分は、径方向の外側の部分と比して、高くなっている。つまり、段差面226aは、テーブル板212aの径方向の内側の部分が高くなるように傾斜している。
【0122】
〔第二突出装置250〕
第二突出装置250は、
図21、
図22に示されるように、テーブル212に備えられたテーブル板212aの上方を向いた上面214aに対して下方に配置され、夫々のシート16に対応して夫々個別に設けられている。具体的には、第二突出装置250は、車両上方から見て、シートバック44に対向して夫々配置されている。
【0123】
第二突出装置250は、本体252と、本体252を支持ユニット36の環状部材38に取り付けるためのブラケット270とを備えている。
【0124】
-本体252-
本体252は、
図22、
図26(A)に示されるように、樹脂製の筐体254と、筐体254の内部に配置された付勢部材256と、シートバック44に向かって突出する発泡体状の突出部材258と、突出部材258を支持する支持板260とを備えている。さらに、本体252は、突出機構262を備えている。突出部材258は、他の突出部材の一例である。
【0125】
筐体254は、シートバック44側が開口された断面U字状で、筐体254の天板255には、貫通孔255aが形成されている。付勢部材256は、圧縮コイルバネで、筐体254の内部の底側(開口側とは反対側)に配置されている。
【0126】
発泡体状の突出部材258は、圧縮された状態で、筐体254の内部に収納されている。また、突出部材258が、シートバック44に向かって突出すると、突出部材258への圧縮力が解除され、
図26(B)に示されるように、突出側の外形が湾曲状に膨らむ。この突出部材258は、筐体254の内部の開口側に収納される収納位置と、シートバック44に向かって突出する突出位置とに配置されるようになっている。ここで、「発泡体状」とは、合成樹脂中に気体(ガス)を細かく分散させ、発泡状(フォーム)または多孔質形状に成形されている状態である。
【0127】
支持板260は、突出部材258の付勢部材256側に取り付けられており、支持板260の板厚方向は、突出部材258の突出方向とされている。また、支持板260の端面には、凹部260aが形成されている。突出部材258が収納位置に配置された状態で、支持板260に形成された凹部260aが、筐体254の天板255に形成された貫通孔255aと連通するようになっている。
【0128】
突出機構262は、筐体254の天板255の上方に配置されている。突出機構262は、突出部材258が収納位置に配置された状態で、天板255の貫通孔255aに挿入されて支持板260に形成された凹部260aと係合する係合爪264aが形成された揺動部材264を備えている。さらに、突出機構262は、球状のボール266を備えている。
【0129】
揺動部材264は、突出部材258の突出方向に延びており、揺動部材264において筐体254の底側の部分には、前述した係合爪264aが形成されている。また、揺動部材264において筐体254の開口側の部分には、揺動軸264bが形成されている。そして、揺動部材264と筐体254の天板255との上下方向における隙間は、突出部材258が収納位置に配置された状態で、筐体254の開口側から底側に向かうに従って徐々に狭くなっている。また、突出部材258が収納位置に配置された状態で、ボール266は、揺動部材264と筐体254の天板255との間で、揺動部材264の揺動軸264b側に配置されている。
【0130】
-ブラケット270-
ブラケット270は、
図22、
図26(A)に示されるように、金属製で断面H状とされ、環状部材38と本体252との間に配置されている。そして、ブラケット270は、環状部材38に溶接によって取り付けられており、本体252の筐体254に図示せぬ取付具によって取り付けられている。
【0131】
〔第一突出装置280〕
第一突出装置280は、
図21、
図22に示されるように、夫々のシート16に対応して夫々個別に備えられている。具体的には、第一突出装置280は、4個設けられ、夫々のシート16に対応したテーブル板212aの外周側の部分に形成された凹部222に個別に配置されている。また、第一突出装置280は、蓋部材292と、付勢部材296と、発泡体状の第一突出部材282と、発泡体状の第二突出部材284と、突出機構286とを備えている。
【0132】
-蓋部材292-
蓋部材292は、断面L字状とされ、テーブル板212aの上面214aの一部を構成する基部292aと、基部292aの端部から下方に延びて、テーブル板212aの端面214cの一部を構成する延出部292bとを有している。また、蓋部材292は、基部292aにおいて延出部292bの反対側の部分に設けられ、回転軸を構成する軸部292cを有している。さらに、延出部292bの先端側の部分で、かつ、裏側には、凹部294が形成されている。
【0133】
この構成において、蓋部材292は、軸部292cを中心に回転し、凹部222を閉塞する閉塞位置(
図27(A)参照)と、凹部222を開放する開放位置(
図27(B)参照)との間を移動する。
【0134】
-付勢部材296-
付勢部材296は、トーションバネであって、
図27(A)(B)に示されるように、蓋部材292の軸部292cに配置されている。これにより、付勢部材296は、蓋部材292を開放位置へ付勢する。つまり、閉塞位置に配置されている蓋部材292には、付勢部材296によって、開放位置へ移動する付勢力が作用している。
【0135】
-第一突出部材282、第二突出部材284-
発泡体状の第一突出部材282、及び発泡体状の第二突出部材284は、
図27(A)に示されるように、圧縮された状態で、閉塞位置に配置された蓋部材292と、凹部222の底面222aとの間に収納されている。そして、第一突出部材282は、凹部222の底面222aに取り付けられており、第二突出部材284は、蓋部材292の基部292aの裏面に取り付けられている。第一突出部材282は、突出部材の一例である。
【0136】
また、閉塞位置の蓋部材292が開放位置へ移動すると、第一突出部材282への圧縮力が解除され、第一突出部材282は、
図27(B)に示されるように、断面台形状に膨らみ、テーブル板212aの上面214aから上方へ向かって突出する。さらに、閉塞位置の蓋部材292が開放位置へ移動すると、第二突出部材284への圧縮力が解除され、第二突出部材284は、
図27(B)に示されるように、断面台形状に膨らみ、シートバック44側へ向かって突出する。
【0137】
-突出機構286-
突出機構286は、テーブル板212aに形成された空洞部226に配置されている。突出機構286は、
図22に示されるように、蓋部材292が閉塞位置に配置された状態で、蓋部材292の延出部292bに形成された凹部294と係合する係合爪298aが形成された揺動部材298を備えている。さらに、突出機構286は、球状のボール288を備えている。
【0138】
揺動部材298は、上下方向に延びており、揺動部材298の中間部は、屈曲している。揺動部材298の上端部には、前述した係合爪298aが形成され、揺動部材298の下端部には、回転軸を構成する揺動軸298bが形成されている。そして、揺動軸298bには、揺動部材298の係合爪298aが凹部294と係合するように、揺動部材298を付勢する図示せぬトーションばねが設けられている。
【0139】
また、ボール288は、空洞部226の段差面226aへ配置されている。前述したように、段差面226aは、テーブル板212aの径方向の内側の部分が高くなるように傾斜している。このため、ボール288は、段差面226aにおいて、テーブル板212aの径方向の外側の部分に配置されている。また、ボール288の質量は、第二突出装置250のボール266の質量と比して重くなっている。
【0140】
(作用)
次に、乗員拘束装置210の作用について説明する。
【0141】
図21、
図22に示されるように、第二突出装置250の突出部材258が収納位置に配置され、この状態では、揺動部材264の係合爪264aが、支持板260に形成された凹部260aと係合している。そして、ボール266は、揺動部材264の揺動軸264b側に配置されている。また、支持板260には、付勢部材256の付勢力が作用している。
【0142】
さらに、第一突出装置280の蓋部材292が閉塞位置に配置され、この状態では、揺動部材298の係合爪298aが、蓋部材292の延出部292bに形成された凹部294と係合している。また、ボール288は、段差面226aにおいて、テーブル板212aの径方向の外側の部分に配置されている。そして、蓋部材292には、付勢部材296の付勢力が作用している。
【0143】
予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に対応した第二突出装置250のボール266が移動する。さらに、第一突出装置280のボール288が移動する。前述したように、ボール288の質量は、第二突出装置250のボール266の質量と比して重くなっている。このため、ボール266の移動速度が、ボール288の移動速度と比して速くなる。
【0144】
具体的には、車両100に加速度が作用することで、
図26(A)、
図26(B)に示されるように、第二突出装置250の揺動部材264の揺動軸264b側に配置されているボール266が、揺動部材264の係合爪264a側に転がって移動する。これにより、ボール266が揺動部材264の係合爪264a側の部分を上方に持ち上げ、揺動部材264が揺動軸264bを中心に揺動し、係合爪264aと凹部260aとの係合が解除される。
【0145】
係合爪264aと凹部260aとの係合が解除されると、突出部材258が付勢部材256の付勢力によって、収納位置から突出位置へ移動する。換言すれば、突出部材258に、押圧力の一例である付勢力が作用することで、突出部材258は、シートバック44に向かって突出する(
図23参照)。
【0146】
そして、突出部材258がシートバック44に向かって突出することで、
図23に示されるように、シート16に着座している乗員の腹部が突出部材258とシートバック44との間に挟まれ、シート16に着座している乗員の大腿部が突出部材258とシートクッション42との間に挟まれる。これにより乗員の腹部及び大腿部が、突出部材258によって拘束(規制)されることで、乗員が保護される。
【0147】
さらに、段差面226aにおいてテーブル板212aの径方向の外側の部分に配置されている第一突出装置280のボール288が、
図27(A)(B)に示されるように、揺動部材298側に転がって移動する。これにより、ボール288が揺動部材298を押圧し、係合爪298aと凹部294との係合が解除される。
【0148】
係合爪298aと凹部294との係合が解除されると、付勢部材296の付勢力によって、閉塞位置の蓋部材292が、開放位置へ移動する。蓋部材292が開放位置へ移動することで、第一突出部材282への圧縮力が解除され、第一突出部材282は、断面台形状に膨らみ、テーブル板212aの上面214aから上方へ向かって突出する。さらに、閉塞位置の蓋部材292が開放位置へ移動すると、第二突出部材284への圧縮力が解除され、第二突出部材284は、断面台形状に膨らみ、シートバック44側へ向かって突出する。
【0149】
そして、
図24、
図25に示されるように、突出部材258によって腹部及び大腿部が拘束されている乗員の上半身がテーブル212側に倒れ、乗員の頭部が、第一突出部材282に当たる。これにより、シート16に着座した乗員の頭部がテーブル板212aの上面214aに当たるのが抑制される。
【0150】
(まとめ)
以上説明したように、乗員拘束装置210では、予め決められた以上の加速度が車両100に作用すると、シート16に対応して夫々個別に備えられた第一突出装置280の第一突出部材282が、テーブル212の上面214aから上方へ向かって突出する。このため、1個の突出部材が、テーブルの上面の上方に広がるように全周に亘って突出する場合と比して、乗員の頭部がテーブル板212aの上面214aに当たるのを抑制した上で、突出部材の大きさを小さくすることができる。
【0151】
また、乗員拘束装置210では、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に対応した第一突出部材282を、テーブル212の上面214aから上方へ向かって突出させる。このため、全ての第一突出部材282が、テーブル212の上面214aから上方へ向かって突出する場合と比して、乗員の頭部がテーブル板212aの上面214aに当たるのを抑制した上で、突出する第一突出部材282の数を減らすことができる。
【0152】
また、乗員拘束装置210では、突出部材258が突出した後に、第一突出部材282が突出するように、ボール288の質量とボール266の質量とが決められている。換言すれば、乗員の腹部及び大腿部を突出部材258によって拘束した後に、第一突出部材282が突出する。これにより、突出部材258によって乗員の腹部及び大腿部が拘束されている乗員の上半身がテーブル212側に倒れる。このように、突出部材258が突出した後に第一突出部材282を突出させることで、第一突出部材282が突出した後に突出部材258を突出させる場合と比して、腹部及び大腿部が拘束されて乗員の上半身がテーブル側に倒れることで、乗員の頭部がテーブル板212aの上面214aに当たるのを効果的に抑制することができる。
【0153】
また、乗員拘束装置210では、第一突出部材282は、発泡体状で、圧縮力が解除されることで、断面台形状に膨らみ、テーブル板212aの上面214aから上方へ向かって突出する。このため、中身がつまった中実部材である場合と比して、乗員の頭が突出部材に当たったときの衝撃を緩和することができる。
【0154】
また、乗員拘束装置210では、突出部材258は、発泡体状で、付勢力が作用することで移動してシート16のシートバック44に向かって突出する。このため、中身がつまった中実部材である場合と比して、突出部材が乗員に接触したときの乗員への衝撃を緩和することができる。
【0155】
<第3実施形態>
(構成)
本発明の第3実施形態に係る乗員拘束装置310の一例について、
図28を用いて説明する。第3実施形態に係る乗員拘束装置310については、第1実施形態の乗員拘束装置10と異なる部分を主に説明する。
【0156】
図28に示されるように、乗員拘束装置310は、車室内100aに配置されたテーブル312と、テーブル312の周りに配置された複数のシート16と、第一エアバッグ装置80と、第二エアバッグ装置50と、加速度センサ20とを備えている。さらに、乗員拘束装置310は、着座センサ26と、各部を制御する制御部30(
図13参照)と、第二エアバッグ装置50を支持する支持ユニット336を備えている。
【0157】
〔テーブル312、シート16〕
テーブル312は、車両上方から見て、車両前後方向に延びる矩形状とされており、テーブル板312aと、上下方向に延びて先端がテーブル板312aの裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネルに取り付けられた円柱状の支柱312bとを備えている。
【0158】
シート16は、4個設けられ、車両幅方向に対向するように配置されている。具体的には、2個のシート16が、テーブル312に対して車両幅方向の一方側に配置され、2個のシート16が、テーブル312に対して車両幅方向の他方側に配置されている。
【0159】
〔支持ユニット336〕
支持ユニット336は、金属材料を用いて形成された環状部材338と、金属材料を用いて形成され、環状部材338を支持する4個の支柱340とを備えている。
【0160】
環状部材338は、テーブル板312aの下方に配置されており、テーブル312の支柱312bを囲むように配置されている。また、環状部材338は、車両上方から見て車両前後方向に延びる矩形状とされている。
【0161】
4個の支柱340は、上下方向に延びて先端が環状部材338に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネルに取り付けられている。また、第3実施形態の乗員拘束装置310の作用については、第1実施形態の乗員拘束装置10の作用と同様である。
【0162】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1、3実施形態では、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に対応したバッグ82cが、テーブル12、312の上面14a、314aから上方へ向かって膨出したが、全てのバッグ82cが、テーブル12、312の上面14a、314aから上方へ向かって膨出してもよい。この場合には、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に対応したバッグ82cが、膨出することで奏する作用は奏しないが、1個のバッグをテーブルの全周に亘って展開させる場合と比して、バッグ82cの展開時間を短くすることができる。
【0163】
また、上記第1、3実施形態では、バッグ82cは、テーブル12、312の上面14a、314aから上方へ向かって膨出した状態で、上方向から見て端面14c、314cからシートバック44側へ張り出したが、張り出さなくてもよい。しかし、この場合は、上方向から見て端面14c、314cからシートバック44側へ張り出すことで奏する作用は奏しない。
【0164】
また、上記第1、3実施形態では、バッグ82cは、テーブル12、312の上面14a、314aから上方へ向かって膨出した状態で、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高かったが、高くなくてもよい。しかし、この場合は、シートバック44から離れている部分のバッグ82cの突出高さが、シートバック44に近い部分のバッグ82cの突出高さと比して高いことで奏する作用は奏しない。
【0165】
また、上記第1、3実施形態では、制御部30は、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に乗員が着座している場合に、制御部30は、そのシート16に対応したバッグ82cを、テーブル12の上面14aから上方へ向かって膨出させた。しかし、加速度が車両100に作用した方向に対して反対方向に向かって乗員が着座するように配置されたシート16に対応したバッグ82cを、テーブル12の上面14aから上方へ膨出させてもよい。これにより、全てのバッグを膨出させる場合と比して、乗員の頭部がテーブル板12aの上面14aに当たるのを抑制した上で、膨出するバッグの数を減らすことができる。
【0166】
また、上記実施形態では、バッグ52c、突出部材258は、乗員の腹部及び大腿部を拘束したが、乗員の腹部及び大腿部の少なくとも一方を拘束すればよい。
【0167】
また、上記第1、3実施形態では、特に説明しなかったが、車両前後に対して傾斜する方向に加速度が作用した場合には、その加速度の成分を車両前後方向及び車両幅方向に分ける。そして、その分けられた加速度の成分が、予め決められた以上か否かで、制御部30が、インフレータ52b、82bの点火装置の作動、不作動としてもよい。
【0168】
また、上記第2実施形態では、特に説明しなかったが、例えば、揺動部材264、298の揺動を制限する制限部材を設けて、突出部材258、第一突出部材282の突出を制御してもよい。
【0169】
また、上記第1、2実施形態では、テーブルの形状を円形状とし、上記第3実施形態では、テーブルの形状を矩形状としたが、テーブルは、他の形状でもよく、例えば、楕円形状であったり、多角形状であったりしてもよい。
【0170】
また、上記実施形態では、シート16の数は、4個であったが、1個であってもよく、4個以外の複数であってもよい。
【0171】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、車両100は、人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる自動運転車であってもよく、自動運転車でなくもよい。
【0172】
また、上記第1、3実施形態では、1個のシート16に対して、1個のバッグ82cが設けられたが、例えば、2個のシートに対して1個のバッグが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0173】
10 乗員拘束装置
12 テーブル
14a 上面
14c 端面
16 シート
26 着座センサ
30 制御部
42 シートクッション
44 シートバック
52c バッグ(他の突出部材の一例)
82c バッグ(突出部材の一例)
100 車両
100a 車室内
210 乗員拘束装置
212 テーブル
214a 上面
214c 端面
258 突出部材(他の突出部材の一例)
282 第一突出部材(突出部材の一例)
310 乗員拘束装置
312 テーブル