IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電力線搬送制御システム 図1
  • 特許-電力線搬送制御システム 図2
  • 特許-電力線搬送制御システム 図3
  • 特許-電力線搬送制御システム 図4
  • 特許-電力線搬送制御システム 図5
  • 特許-電力線搬送制御システム 図6
  • 特許-電力線搬送制御システム 図7
  • 特許-電力線搬送制御システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電力線搬送制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20231011BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H04B3/54
H02J13/00 311B
H02J13/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019223981
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093658
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】大下田 久
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-017102(JP,A)
【文献】特開2008-092238(JP,A)
【文献】特開2019-118212(JP,A)
【文献】特表2016-521962(JP,A)
【文献】特開2002-111553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/76-3/44
H04B 3/50-3/60
H04B 7/00-7/015
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線搬送端局装置における受信レベルを検知する受信レベル監視装置と、
前記電力線搬送端局装置への電源供給の実行と遮断との切替えを行う電源制御装置と、
前記受信レベル監視装置が検知した前記受信レベルを受信するとともに前記電源制御装置に対して前記電源供給の切替えを行うための制御信号を送信する遠隔制御装置と、を有し、
前記受信レベルが所定の幅で低下したときに、前記遠隔制御装置が前記電源制御装置に対して前記電源供給を遮断するための制御信号を送信し、前記制御信号を受信した前記電源制御装置が動作して前記電力線搬送端局装置への前記電源供給が遮断される、
ことを特徴とする電力線搬送制御システム。
【請求項2】
入出力絶縁型のDC-DCコンバータと、
前記電源制御装置に接続されたリレー回路と、を有し、
前記電源制御装置が、前記DC-DCコンバータを介して電源と接続し、
前記電力線搬送端局装置が、前記リレー回路のリレー接点を介して前記電源と接続しており、
前記制御信号を受信した前記電源制御装置が前記リレー回路への電源供給を遮断して前記リレー接点が開路になることにより、前記電力線搬送端局装置への前記電源供給が遮断される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線搬送制御システム。
【請求項3】
前記所定の幅が、1~5dBmである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力線搬送制御システム。
【請求項4】
前記電源制御装置がマイナス接地であり、
前記電力線搬送端局装置がプラス接地である、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力線搬送制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力線搬送装置を遠隔で制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力線を伝送路として使用して通信を行う電力線搬送装置/電力線搬送通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-111553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力線搬送については、送電線作業時に現場機器に取り付けられる作業用接地のア-ス(「乙アース」や「乙種アース」とも呼ばれる)によって大地帰路方式となり、大地帰路方式に該当する場合には電波法第100条に基づく高周波利用申請を行って総務省の許可を取得することが必要である。このため、大地帰路方式とならないようにするためには、送電線作業を行う前に電力線搬送装置を停止する必要がある。
【0005】
電力線搬送装置の停止対応は、当該の電力線搬送装置が設置されている現場へと作業員が出向いて通信回線を物理的に切り離す手法で直営作業を実施しており、労働生産性における不利益が大きい(言い換えると、人的、時間的損失が大きい)、という問題がある。また、電力線搬送装置の停止対応は、送電線作業が実施される長期間にわたって毎日の停電作業に対応することが困難であることから、長期間にわたって継続する通信回線の停止が必要となるため、災害時における遠隔監視制御装置用の回線等の2ルート同時停止のリスクが高まる、という問題がある。
【0006】
そこでこの発明は、現地に出向くことなく作業用接地のアースの設置を検知するとともに電力線搬送装置の遠隔制御による停止を実現することを可能とする、電力線搬送制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電力線搬送端局装置における受信レベルを検知する受信レベル監視装置と、前記電力線搬送端局装置への電源供給の実行と遮断との切替えを行う電源制御装置と、前記受信レベル監視装置が検知した前記受信レベルを受信するとともに前記電源制御装置に対して前記電源供給の切替えを行うための制御信号を送信する遠隔制御装置と、を有し、前記受信レベルが所定の幅で低下したときに、前記遠隔制御装置が前記電源制御装置に対して前記電源供給を遮断するための制御信号を送信し、前記制御信号を受信した前記電源制御装置が動作して前記電力線搬送端局装置への前記電源供給が遮断される、ことを特徴とする電力線搬送制御システムである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力線搬送制御システムにおいて、入出力絶縁型のDC-DCコンバータと、前記電源制御装置に接続されたリレー回路と、を有し、前記電源制御装置が、前記DC-DCコンバータを介して電源と接続し、前記電力線搬送端局装置が、前記リレー回路のリレー接点を介して前記電源と接続しており、前記制御信号を受信した前記電源制御装置が前記リレー回路への電源供給を遮断して前記リレー接点が開路になることにより、前記電力線搬送端局装置への前記電源供給が遮断される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1また2に記載の電力線搬送制御システムにおいて、前記所定の幅が、1~5dBmである、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の電力線搬送制御システムにおいて、前記電源制御装置がマイナス接地であり、前記電力線搬送端局装置がプラス接地である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電力線搬送端局装置における受信レベルの特定の変化に基づいて現場機器に対して作業用接地のア-スが取り付けられたことを現地に出向くことなく検知することができるとともに、前記検知に基づいて電力線搬送端局装置を遠隔制御で停止することができ、電力線搬送装置の運用・管理に係る労働生産性を向上させることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、電源と電源制御装置との間に入出力絶縁型のDC-DCコンバータを介在させるとともに、電源と電力線搬送端局装置との間にリレー接点を介在させることにより、電源制御装置と電力線搬送端局装置とを直接接続することなく電力線搬送端局装置への電源供給を制御することができ、電源制御装置と電力線搬送端局装置との極性に関係なく、電力線搬送端局装置への電源供給を制御する仕組みを構成することが可能となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、現場機器に対して作業用接地のア-スが取り付けられたことを的確に検知することが可能となる。
【0014】
請求項4の発明によれば、マイナス接地の電源制御装置とプラス接地の電力線搬送端局装置とを用いて、電力線搬送端局装置への電源供給を制御する仕組みを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態に係る電力線搬送制御システムの概略構成図である。
図2図1の電力線搬送制御システムの構成図である。
図3図1の電力線搬送制御システムの遠隔制御装置の概略構成ブロック図である。
図4】通常時(送電線に対して作業用接地のアースが設置されていない場合)の、電力線搬送端局装置における受信レベルの例を示す図である。
図5】送電線に対して作業用接地のアースが1箇所設置された場合の、電力線搬送端局装置における受信レベルの推移の例を示す図である。
図6】送電線に障害が発生した場合の、電力線搬送端局装置における受信レベルの推移の例を示す図である。
図7】電力線搬送端局装置がプラス接地であるとともに電源制御装置がマイナス接地である場合の、電源制御装置に関係する回路の概略構成を示す図である。
図8図1の電力線搬送制御システムの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る電力線搬送制御システム1の概略構成図である。この電力線搬送制御システム1は、電力線を伝送路として使用して通信を行う電力線搬送装置を遠隔で制御するシステムである。この実施の形態では、電気所10Aと電気所10Bとの間に送電線11および送電線12が配設され、送電線11,12が電力線搬送の伝送線路として使用される。
【0018】
電力線搬送制御システム1は、電気所10Aと電気所10Bとのそれぞれに設置される構成として、電力線搬送端局装置13の受信レベルを取得する受信レベル監視装置2、および、通信用電源14から電力線搬送端局装置13への電源供給を制御する電源制御装置3を有するとともに、各電気所10A,10Bから離れて遠隔地に設置される構成として、受信レベル監視装置2から提供される情報に基づいて電源制御装置3を遠隔操作する遠隔制御装置4を有する。
【0019】
受信レベル監視装置2、電源制御装置3、および遠隔制御装置4は各々通信機能を備え、受信レベル監視装置2と遠隔制御装置4とが通信自在に構成されるとともに、電源制御装置3と遠隔制御装置4とが通信自在に構成される。この実施の形態では、受信レベル監視装置2、電源制御装置3、および遠隔制御装置4は、インターネットやイントラネット(例えば、ローカル系のIPネットワーク)などの通信網20を介して通信自在であるように構成される。
【0020】
電力線搬送制御システム1は主として受信レベル監視装置2、電源制御装置3、および遠隔制御装置4を備える点が特徴的構成であり、電力線搬送を行う仕組み自体は従来の電力線搬送と同等の構成となっており、従来と同等の構成についての詳細な説明は省略するが、この実施の形態では概略次のような構成となっている(図2参照)。
【0021】
各送電線11,12(具体的には、単相3線方式の引込線のうちの中性線;図では「白相」と表記)は、各電気所10A,10B内へと引き込まれて、結合コンデンサ15、線間結合フィルター(EF)16、および金属回路用平衡形結合フィルター(MF)17を介するとともに電力線搬送用保安装置18をさらに介して電力線搬送端局装置13と接続している。各送電線11,12は、また、ライントラップ19を介して変電設備と接続している。
【0022】
電力線搬送端局装置13は、送電線11,12を伝送路として使用して通信を行う電力線搬送における端局として機能する機器である。
【0023】
通信用電源14は、電力線搬送端局装置13に電源を供給する設備であり、例えば直流分電盤である。
【0024】
そして、この実施の形態の電力線搬送制御システム1は、電力線搬送端局装置13における受信レベルを検知する受信レベル監視装置2と、電力線搬送端局装置13への電源供給の実行と遮断との切替えを行う電源制御装置3と、受信レベル監視装置2が検知した受信レベルを受信するとともに電源制御装置3に対して電源供給の切替えを行うための制御信号を送信する遠隔制御装置4と、を有し、受信レベルが所定の幅で低下したときに、遠隔制御装置4が電源制御装置3に対して電源供給を遮断するための制御信号(遮断信号)を送信し、前記制御信号(遮断信号)を受信した電源制御装置3が動作して電力線搬送端局装置13への電源供給が遮断される、ようにしている。
【0025】
受信レベル監視装置2は、電力線搬送端局装置13の受信レベルを収集して遠隔制御装置4へと提供する。この実施の形態では、受信レベル監視装置2は、送電線11,12に重畳されて送信される信号の、電力線搬送端局装置13における受信レベルを検知し、検知された受信レベルのデータ(受信レベルを表す信号)を遠隔制御装置4に対して通信網20を介して送信する。
【0026】
電源制御装置3は、通信用電源14と電力線搬送端局装置13との間に介在して、通信用電源14から電力線搬送端局装置13への電源供給の実行と遮断との切替えを行う機器である。
【0027】
遠隔制御装置4は、受信レベル監視装置2から提供される情報を用いて電力線搬送端局装置13における受信レベルの状態を監視し前記受信レベルの変化を検出して電力線搬送端局装置13への電源供給の遮断の判定に纏わる処理を実行するとともに、前記判定の結果に基づいて電源制御装置3の遠隔操作に纏わる処理を実行する機器である。遠隔制御装置4は、図3に示すように、主として、データ受信部41と、指令送信部42と、表示部43と、入力部44と、メモリ45と、メインタスク46と、これらを制御などする中央処理部47とを備える。
【0028】
中央処理部47は、例えば、CPUなどを用いたプロセッサにより構成されたり、メモリ45に記憶されたプログラムに従って各機能を実現するものとして構成されたりする。
【0029】
データ受信部41は、受信レベル監視装置2から送信される、電力線搬送端局装置13における受信レベルのデータ(受信レベルを表す信号)を通信網20を介して受信する。データ受信部41は、受信した受信レベルのデータをメインタスク46へと転送する。
【0030】
指令送信部42は、メインタスク46から転送される、通信用電源14から電力線搬送端局装置13への電源供給を遮断したり再開したりするための制御信号を電源制御装置3に対して通信網20を介して送信する。
【0031】
表示部43は、例えば液晶画面であり、送電線11,12の状態に関する情報などを表示する。
【0032】
入力部44は、例えばキーボードやマウスであり、作業員の操作を受け付けて操作信号を中央処理部47やメインタスク46に転送する。
【0033】
メモリ45は、各種の情報やデータを記憶可能な記憶装置であり、データ受信部41が受信した受信レベルのデータなどの記憶領域として機能したり、電源制御装置3の動作の判定や遠隔操作に纏わる処理を実行する際の作業領域として機能したりなどする。
【0034】
メインタスク46は、電源制御装置3の動作の判定や遠隔操作に纏わる処理を実行するためのタスク・プログラム群である。このメインタスク46は、主として、受信レベル判定タスク46aと、遮断信号生成タスク46bと、警報出力タスク46cと、再開信号生成タスク46dとを備える。
【0035】
受信レベル判定タスク46aは、受信レベル監視装置2から送信される受信レベルのデータに基づいて送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたか否かを判断する処理を実行するタスク・プログラムである。受信レベル判定タスク46aは、データ受信部41から転送される受信レベルのデータの入力を受けて処理を行い、作業用接地のアースが設置されたと判断した場合に、その判断結果を遮断信号生成タスク46bへと転送する。
【0036】
ここで、通常時には、言い換えると、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されていない場合には、図4に示すように、送電線11に重畳されて送信される信号の、電力線搬送端局装置13における受信レベルは-20dBm程度で安定する。これに対し、発明者の知見によると、送電線11,12に対して作業用接地のアースが1箇所設置されると、図5に示すように、送電線11に重畳されて送信される信号の、電力線搬送端局装置13における受信レベルが3dBm程度低下して結果的に-23dBm程度になり、作業用接地のアースが設置されている間は受信レベルが-23dBm程度で安定する。
【0037】
そこで、受信レベル判定タスク46aは、電力線搬送端局装置13における受信レベルの低下の程度が所定の幅である場合に、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたと判断する。なお、作業用接地のアースが2箇所に設置される場合には、1箇所に設置されたときの-23dBm程度で安定した状態から受信レベルがさらに3dBm程度低下して結果的に-26dBm程度になり、作業用接地のアースが2箇所に設置されている間は受信レベルが-26dBm程度で安定する。
【0038】
電力線搬送端局装置13における、通常時における受信レベルの程度や、作業用接地のアースが設置された場合の受信レベルの低下の程度は、送配電に係る設備の特性、電力線搬送通信に係る設備の特性、および作業用接地のアースが設置されたときの種々の設備への影響の度合などにより、上記の例には限定されないことも考えられる。このため、特に作業用接地のアースが設置された場合の受信レベルの低下の程度は、作業用接地のアースが設置されたときに各電力線搬送端局装置13において実際に観測される受信レベルの低下の程度の実績に基づいて電力線搬送端局装置13ごとにそれぞれ設定されるようにしてもよい。送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたときの受信レベルの低下の程度(所定の幅、または、所定の値)のことを「アース設置低下レベル」と呼ぶ。
【0039】
また、例えば落雷などによって送電線11,12に障害が発生した場合には、図6に示すように、送電線11に重畳されて送信される信号の、電力線搬送端局装置13における受信レベルは大幅に、具体的には例えば40dBm程度低下して-60dBm程度になる(或いは、40dBm以上低下して-60dBm以下になる)。このため、受信レベル判定タスク46aは、電力線搬送端局装置13における受信レベルの低下の程度が、所定の幅内である場合には送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたと判断し、所定の幅を超える場合には送電線11,12に障害が発生したと判断する。
【0040】
送電線11,12に障害が発生した場合の受信レベルの低下の程度は、障害が発生したときに各電力線搬送端局装置13において実際に観測される受信レベルの低下の程度の実績に基づいて電力線搬送端局装置13ごとにそれぞれ設定されるようにしてもよい。送電線11,12に障害が発生したときの受信レベルの低下の程度(所定の幅、または、所定の値)のことを「障害発生低下レベル」と呼ぶ。
【0041】
発明者の知見や上記も踏まえ、受信レベル判定タスク46aは、例えば、電力線搬送端局装置13における受信レベルが1~5dBm程度の範囲内で低下した場合に送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたと判断するようにしたり、または、受信レベルが2~4dBm程度の範囲内で低下した場合に作業用接地のアースが設置されたと判断するようにしたり、或いは、3dBm程度低下した場合に作業用接地のアースが設置されたと判断するようにしたりすることが好ましい。
【0042】
そして、受信レベル判定タスク46aは、受信レベル監視装置2から送信されてデータ受信部41から転送される受信レベルのデータを分析して、電力線搬送端局装置13における受信レベルが、アース設置低下レベルに当てはまる低下をしたときに、遮断信号生成タスク46bに対して、電力線搬送端局装置13への電源供給を遮断する信号を作成する指示(「遮断信号生成指示」と呼ぶ)を転送する。受信レベル判定タスク46aは、また、警報出力タスク46cに対しても、遮断信号生成指示を転送する。
【0043】
一方で、受信レベル判定タスク46aは、電力線搬送端局装置13における受信レベルが、アース設置低下レベルに当てはまらない低下をしたときには、遮断信号生成指示の転送を行わない。
【0044】
遮断信号生成タスク46bは、受信レベル判定タスク46aから転送される指示に基づいて電源制御装置3を遠隔操作する信号を生成する処理を実行するタスク・プログラムである。遮断信号生成タスク46bは、受信レベル判定タスク46aから転送される遮断信号生成指示の入力を受けて処理を開始し、電源制御装置3から電力線搬送端局装置13への電源供給を遠隔操作で遮断するための信号(「遮断信号」と呼ぶ)を生成して指令送信部42へと転送する。
【0045】
警報出力タスク46cは、受信レベル判定タスク46aから転送される指示に基づいて送電線11,12の状態に関する情報を出力する処理を実行するタスク・プログラムである。警報出力タスク46cは、受信レベル判定タスク46aから転送される遮断信号生成指示の入力を受けて処理を開始し、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたことを示す情報を出力する。警報出力タスク46cは、例えば、遠隔制御装置4が備える表示部43に作業用接地のアースが設置されたことを表すメッセージを表示させたり、遠隔制御装置4が備えるスピーカ(図示していない)から音を出させたりする。
【0046】
再開信号生成タスク46dは、入力部44を介して与えられる指示に基づいて電源制御装置3を遠隔操作する信号を生成する処理を実行するタスク・プログラムである。再開信号生成タスク46dは、作業員による入力部44の操作によって与えられる指示の入力を受けて処理を開始し、電源制御装置3から電力線搬送端局装置13への電源供給を遠隔操作で再開するための信号(「再開信号」と呼ぶ)を生成して指令送信部42へと転送する。
【0047】
ここで、電力線搬送端局装置13への電源供給の実行と遮断とを切り替える仕組みとして電源制御装置3を電力線搬送端局装置13にそのまま直接接続するようにしてもよいが、電力線搬送端局装置13がプラス接地であるのに対して電源制御装置3の主要部分を構成する機器(「リブータ」などとも呼ばれる)がマイナス接地である場合には電源制御装置3を電力線搬送端局装置13にそのまま直接接続することができない。この問題を解消するための、すなわち、電力線搬送端局装置13がプラス接地であるとともに電源制御装置3の主要部分を構成する機器がマイナス接地である場合の、電源制御装置3に関係する回路の概略構成を図7に示す。図7に示す構成において、電源制御装置3はマイナス接地であり、電力線搬送端局装置13はプラス接地である。
【0048】
図7に示す構成では、入出力絶縁型のDC-DCコンバータ7と、電源制御装置3に接続されたリレー回路9と、を有し、電源制御装置3が、DC-DCコンバータ7を介して電源(分電盤5)と接続し、電力線搬送端局装置13が、リレー回路9のリレー接点91を介して電源(分電盤5)と接続しており、制御信号(遮断信号)を受信した電源制御装置3がリレー回路9への電源供給を遮断してリレー接点91が開路になることにより、電力線搬送端局装置13への電源供給が遮断される、ようにしている。
【0049】
分電盤5は、図1図2における通信用電源14に相当する設備であり、電源側端子6と接続してDC-48V(尚、DC-24Vの場合も考えられる)の直流電力を分岐供給する直流分電盤である。なお、分電盤5から供給される電源としての極性はプラス接地である。
【0050】
DC-DCコンバータ7は、入出力絶縁型のDC-DCコンバータであり、絶縁耐性をもたせることを可能とする。このため、DC-DCコンバータ7は、分電盤5と電源制御装置3との間に介在することにより、異なる極性接地の機器である分電盤5と電源制御装置3との接続を可能とする(つまり、極性の変換を可能とする。言い換えると、機器の極性の違いの解消を可能とする)。DC-DCコンバータ7は、図7に示す例では、直流48Vから直流24V(100W)への変換を行う(または、分電盤5がDC-24Vである場合には、直流24Vから直流24V(50W)への変換を行う)。なお、図7中の符号22はヒューズである。
【0051】
電力線搬送端局装置13は、分電盤5から電力が供給される電源側端子6と接続している装置側端子8に接続して、つまり分電盤5から電源側端子6および装置側端子8を経由して、電力の供給を受ける。なお、分電盤5から供給される電源としての極性はプラス接地であるとともに電力線搬送端局装置13もプラス接地であるので、これらの間では極性の変換は必要ない。
【0052】
電源側端子6と装置側端子8との間にリレー接点91が設けられる。リレー接点91の開閉によって電力線搬送端局装置13への電源供給の実行と遮断との切替えが行われる。リレー接点91は、通常時には閉路になっている。リレー接点91が閉路になっているときに電力線搬送端局装置13への電源供給が実行され、リレー接点91が開路になっているときに電力線搬送端局装置13への電源供給が遮断する。
【0053】
電源制御装置3は、遠隔制御装置4との間で通信網20を介して通信を行うための通信部31と、DC-DCコンバータ7を介して直流電力の入力を受ける電力入力部32と、外部回路への電源供給の実行と遮断とを制御する制御部33とを有する。
【0054】
電源制御装置3は、分電盤5から電力が供給される電源側端子6と接続しているDC-DCコンバータ7に接続して、つまり分電盤5から電源側端子6およびDC-DCコンバータ7を経由して、電力の供給を受ける。電源制御装置3は、通常時には外部回路への電源供給を実行し、遠隔制御装置4から送信された遮断信号を通信部31を介して受信すると外部回路への電源供給を遮断する。
【0055】
電源制御装置3の制御部33に、外部回路としてリレー回路9が接続される。リレー回路9は、通常時には電源制御装置3から電源供給を受けてリレー接点91を閉路にし、電源制御装置3が遮断信号を受信して外部回路としてのリレー回路9への電源供給を遮断すると動作してリレー接点91を開路にする。リレー接点91が開路になることにより、電源供給が遮断されて電力線搬送端局装置13は停止する。
【0056】
次に、このような構成の電力線搬送制御システム1の作用、動作などについて、図8も用いて説明する。なお、下記の説明における受信レベルの値はいずれも例である。
【0057】
まず、通常時として、電源制御装置3からリレー回路9に電源供給が行われて(ステップS1)リレー接点91が閉路になっており(ステップS2)、これによって電力線搬送端局装置13への電源供給が実行されて(ステップS3)送電線11,12が伝送路として使用されて電力線搬送通信が行われている(ステップS4)。このとき、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されていない場合には、受信レベル判定タスク46aは、受信レベル監視装置2から送信されて(ステップS5)データ受信部41から転送される受信レベルのデータに基づいて、電力線搬送端局装置13における受信レベルが-20dBm程度で安定しており、送電線11,12に対して作業用接地のアースは設置されていないと判断する。
【0058】
上記の状態から、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されると、電力線搬送端局装置13における受信レベルが3dBm程度低下して結果的に-23dBm程度になる。このとき、受信レベル判定タスク46aは、受信レベル監視装置2から送信されて(ステップS6)データ受信部41から転送される受信レベルのデータに基づいて、電力線搬送端局装置13における受信レベルが3dBm程度低下して結果的に-23dBm程度になった状態で安定しており、送電線11,12に対して作業用接地のアースが設置されたと判断する。そして、受信レベル判定タスク46aは、遮断信号生成タスク46bおよび警報出力タスク46cに対して遮断信号生成指示を転送する(ステップS7)。
【0059】
遮断信号生成指示の入力を受けた警報出力タスク46cは、遠隔制御装置4が備える表示部43に、作業用接地のアースが設置されたことを表すメッセージを表示させたり、遠隔制御装置4が備えるスピーカ(図示していない)から音を出させたりする(ステップS8)。
【0060】
遮断信号生成指示の入力を受けた遮断信号生成タスク46bは、遮断信号を生成して指令送信部42へと転送する(ステップS9)。遮断信号の入力を受けた指令送信部42は、前記遮断信号を、電源制御装置3に対して通信網20を介して送信する(ステップS10)。そして、遮断信号の入力を受けた電源制御装置3はリレー回路9への電源供給を遮断し(ステップS11)、これにより、リレー接点91が開路になり(ステップS12)、電力線搬送端局装置13への電源供給が遮断されて(ステップS13)電力線搬送端局装置13が停止する(ステップS14)。
【0061】
その後、送電線11,12に対して設置されていた作業用接地のアースが撤去されて、作業員によって入力部44が操作されて電力線搬送端局装置13への電源供給の再開に対応する指示が入力されると、再開信号生成タスク46dは、再開信号を生成して指令送信部42へと転送する(ステップS15)。
【0062】
再開信号の入力を受けた指令送信部42は、前記再開信号を、電源制御装置3に対して通信網20を介して送信する(ステップS16)。そして、再開信号の入力を受けた電源制御装置3はリレー回路9への電源供給を再開し(ステップS17)、これにより、リレー接点91が閉路になり(ステップS18)、電力線搬送端局装置13への電源供給が再開されて(ステップS19)電力線搬送端局装置13が起動する(ステップS20)。そして、通常時として、送電線11,12が伝送路として使用されて電力線搬送通信が行われる。
【0063】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0064】
例えば、複数の電気所間で行われる電力線搬送通信を監視するために複数の遠隔制御装置4が配置される場合には、複数の遠隔制御装置4との間で通信網20を介して通信を行ってこれら複数の遠隔制御装置4を管理する総合制御装置(図示していない)が設置されるようにしてもよい。この場合には、管理対象地域内の複数の電気所間で行われる電力線搬送通信の状態を一元的に管理することができ、また、総合制御装置から遠隔制御装置4を操作可能であるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 電力線搬送制御システム
2 受信レベル監視装置
3 電源制御装置
31 通信部
32 電力入力部
33 制御部
4 遠隔制御装置
41 データ受信部
42 指令送信部
43 表示部
44 入力部
45 メモリ
46 メインタスク
46a 受信レベル判定タスク
46b 遮断信号生成タスク
46c 警報出力タスク
46d 再開信号生成タスク
47 中央処理部
5 分電盤
6 電源側端子
7 DC-DCコンバータ
8 装置側端子
9 リレー回路
91 リレー接点
10A 電気所
10B 電気所
11 送電線
12 送電線
13 電力線搬送端局装置
14 通信用電源
15 結合コンデンサ
16 線間結合フィルター(EF)
17 金属回路用平衡形結合フィルター(MF)
18 電力線搬送用保安装置
19 ライントラップ
20 通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8