(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置及び車両用ドアロックシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 83/04 20140101AFI20231011BHJP
E05B 85/04 20140101ALI20231011BHJP
E05B 81/14 20140101ALI20231011BHJP
E05B 85/26 20140101ALI20231011BHJP
【FI】
E05B83/04
E05B85/04
E05B81/14
E05B85/26
(21)【出願番号】P 2019226257
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小田 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 進介
(72)【発明者】
【氏名】内恒見 正行
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05192096(US,A)
【文献】実開昭48-080994(JP,U)
【文献】特開2002-147090(JP,A)
【文献】特開平08-319745(JP,A)
【文献】特開2001-311336(JP,A)
【文献】特開2017-197022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 83/04
E05B 85/04
E05B 81/14
E05B 85/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア
の下端部又は車体
のドア開口部の下端部の一方に設けられ、前記ドア
の下端部又は前記車体
のドア開口部の下端部の他方に設けられるストライカに係合することにより、前記ドアを前記車体に拘束する車両用ドアロック装置であって、
前記ドア又は前記車体の一方に固定されるベースと、
基端部が前記ベースに回転可能に支持される第1フック及び第2フックと、
前記ベースに回転可能に支持され、前記第1フック及び前記第2フックを駆動する駆動体と、を備え、
前記第1フック及び前記第2フックは、互いに接近する先端部同士で前記ストライカを挟み込む係止位置及び先端部同士が互いに離れる退避位置の間を回動し、
前記駆動体は、前記第1フック及び前記第2フックを前記係止位置に配置する第1位置と前記第1フック及び前記第2フックを前記退避位置に配置する第2位置との間を変位する
ものであって、
前記ストライカは、前記第1フック及び前記第2フックに挟み込まれる部位が車両前後方向に延びているとともに、
前記第1フックの回動軸線及び前記第2フックの回動軸線は、車両前後方向に延びており、
前記第1フック及び前記第2フックが前記係止位置に配置される場合の前記ドアの下部の位置は、前記第1フック及び前記第2フックが前記退避位置に配置される場合の前記ドアの下部の位置よりも車両幅方向における内方に位置する
車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記第1フック及び前記第2フックが前記係止位置に配置される場合には、車両幅方向における外方に移動しようとする前記ドアを留めるべく、前記第1フック及び前記第2フックのうち車両幅方向における内方に位置する前記第1フックのみが前記ストライカに接する状態となる
請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記第1フック及び前記第2フックが前記退避位置から前記係止位置に回動する場合には、前記第1フックが前記ストライカを車両幅方向に相対的に引き込むことで、前記第1フックが前記ドアの下部を車両幅方向における内方に引き込む
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記駆動体の動力を前記第1フックに伝達し、前記駆動体と前記第1フックとともにリンク機構を構成する第1リンクと、
前記駆動体の動力を前記第2フックに伝達し、前記駆動体と前記第2フックとともにリンク機構を構成する第2リンクと、を備える
請求項1
~請求項3の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記駆動体は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢されるものであり、
前記第1位置に配置される前記駆動体に係止することにより、前記駆動体の前記第2位置への変位を制限するポールと、を備える
請求項1
~請求項
4の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記第1フック及び前記第2フックは、前記係止位置から前記退避位置に向かう方向に付勢されるものであり、
前記係止位置に配置される前記第1フック及び前記第2フックにそれぞれ係止することにより、前記第1フック及び前記第2フックの前記退避位置への回動をそれぞれ制限する第1ポール及び第2ポールと、を備える
請求項1
~請求項
4の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記第1フック及び前記第2フックの双方を回動可能に支持する支持軸を備える
請求項1~請求項
6の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
請求項1~請求項
7の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置と、
前記ストライカと、を備え、
前記ストライカは、前記第1フック及び前記第2フックに挟み込まれる部位が車両前後方向に延びる状態で、前記ドアに開閉される
前記ドア開口部の下端
部に設けられ、
前記車両用ドアロック装置は、前記第1フックの回動軸線及び前記第2フックの回動軸線が車両前後方向に延びる状態で、前記ドア
の下端部に設けられる
車両用ドアロックシステム。
【請求項9】
前記ストライカを覆う被覆プレートを備え、
前記被覆プレートは、前記ストライカを露出させるスリットを有する
請求項
8に記載の車両用ドアロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置及び車両用ドアロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側部にドア開口部が形成される車体と、ドア開口部を開閉するフロントスライドドア及びリアスライドドアと、を備える車両が記載されている。フロントスライドドアは、前方にスライドすることによりドア開口部の前半分を開放し、リアスライドドアは、後方にスライドすることによりドア開口部の後半分を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、両開き式のスライドドアを備える車両は、センターピラーが存在しない点で、センターピラーにストライカを設置することができない。つまり、上記のような車両では、センターピラーに設置されるストライカが無くても、スライドドアを全閉位置に拘束するドアロック装置が必要となる。なお、こうした実情は、両開き式のスライドドアを備える車両に限らず、ドアの閉方向における端部と対向する位置にストライカを有しない車両においても概ね共通する実情となっている。
【0005】
本発明の目的は、ストライカの設置箇所に関わらずドアを全閉位置に拘束できる車両用ドアロック装置及び車両用ドアロックシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用ドアロック装置は、ドア又は車体の一方に設けられ、前記ドア又は前記車体の他方に設けられるストライカに係合することにより、前記ドアを前記車体に拘束する車両用ドアロック装置であって、前記ドア又は前記車体の一方に固定されるベースと、基端部が前記ベースに回転可能に支持される第1フック及び第2フックと、前記ベースに回転可能に支持され、前記第1フック及び前記第2フックを駆動する駆動体と、を備え、前記第1フック及び前記第2フックは、互いに接近する先端部同士で前記ストライカを挟み込む係止位置及び先端部同士が互いに離れる退避位置の間を回動し、前記駆動体は、前記第1フック及び前記第2フックを前記係止位置に配置する第1位置と前記第1フック及び前記第2フックを前記退避位置に配置する第2位置との間を変位する。
【0007】
従来の車両用ドアロック装置は、ストライカに噛み合う溝を有するラッチを備える。そして、ドアの閉作動に伴い、ストライカがラッチの溝に進入し、ラッチがストライカに噛み合うことで、ドアが車体に拘束される。この点、上記構成の車両用ドアロック装置は、第1フック及び第2フックがストライカを挟み込むことで、ドアを車体に拘束する。言い換えれば、上記構成の車両用ドアロック装置は、第1フック及び第2フックがストライカを挟み込むことさえできれば、ドアを車体に拘束できる。このため、ストライカに対する第1フック及び第2フックの配置自由度が高くなりやすい。したがって、車両用ドアロック装置は、ストライカの設置箇所に関わらずドアを全閉位置に拘束できる。
【0008】
上記車両用ドアロック装置は、前記駆動体の動力を前記第1フックに伝達し、前記駆動体と前記第1フックとともにリンク機構を構成する第1リンクと、前記駆動体の動力を前記第2フックに伝達し、前記駆動体と前記第2フックとともにリンク機構を構成する第2リンクと、を備えることが好ましい。
【0009】
上記構成の車両用ドアロック装置は、リンク機構により、駆動体の動力が第1フック及び第2フックに伝達される。つまり、車両用ドアロック装置は、簡易な構成で、第1フック及び第2フックを係止位置及び退避位置の間で回動させる動力伝達機構を実現できる。
【0010】
上記車両用ドアロック装置において、前記駆動体は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢されるものであり、前記第1位置に配置される前記駆動体に係止することにより、前記駆動体の前記第2位置への変位を制限するポールと、を備えることが好ましい。
【0011】
上記構成の車両用ドアロック装置は、駆動体が第1フック及び第2フックを駆動し続けなくても、第1フック及び第2フックを係止位置に留めることができる。また、車両用ドアロック装置は、ポールが1つでよい点で装置の構成を簡素化できる。
【0012】
上記車両用ドアロック装置において、前記第1フック及び前記第2フックは、前記係止位置から前記退避位置に向かう方向に付勢されるものであり、前記係止位置に配置される前記第1フック及び前記第2フックにそれぞれ係止することにより、前記第1フック及び前記第2フックの前記退避位置への回動をそれぞれ制限する第1ポール及び第2ポールと、を備えることが好ましい。
【0013】
上記構成の車両用ドアロック装置は、駆動体が第1フック及び第2フックを駆動し続けなくても、第1フック及び第2フックを係止位置に留めることができる。また、車両用ドアロック装置は、係止位置に配置される第1フック及び第2フックにそれぞれ係止する第1ポール及び第2ポールを備える点で、第1フック及び第2フックをより強固に係止位置に留めることができる。
【0014】
上記車両用ドアロック装置は、前記第1フック及び前記第2フックの双方を回動可能に支持する支持軸を備えることが好ましい。
上記構成の車両用ドアロック装置は、第1フックを回動可能に支持する支持軸と、第2フックを回動可能に支持する支持軸と、を別部材とする場合に比較して、装置の構成を簡素化できる。
【0015】
上記課題を解決する車両用ドアロックシステムは、上述した車両用ドアロック装置と、前記ストライカと、を備え、前記ストライカは、前記第1フック及び前記第2フックに挟み込まれる部位が車両前後方向に延びる状態で、前記ドアに開閉されるドア開口部の下端に設けられ、前記車両用ドアロック装置は、前記第1フックの回動軸線及び前記第2フックの回動軸線が車両前後方向に延びる状態で、前記ドアに設けられる。
【0016】
上記構成の車両用ドアロックシステムは、上述した車両用ドアロック装置と同等の作用効果を得ることができる。また、車両用ドアロックシステムは、ドアに対し車両幅方向における内方に向かって衝撃が作用する場合に、第1フック及び第2フックのうち、車両幅方向における外方に位置するフックとストライカとの係合により、ドアが車両幅方向における内方に向かって変位することを抑制できる。言い換えれば、車両用ドアロックシステムは、車両に対する側面衝突時に、車両幅方向における外方に位置するフックとストライカとの係合により、ドアが車室に向かって変位することを抑制できる。
【0017】
上記車両用ドアロックシステムは、前記ストライカを覆う被覆プレートを備え、前記被覆プレートは、前記ストライカを露出させるスリットを有することが好ましい。
上記構成の車両用ドアロックシステムは、ドア開口部の下端からストライカが突出することを抑制できる。このため、車両用ドアロックシステムは、車両を乗降するユーザがストライカを邪魔に感じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
車両用ドアロック装置及び車両用ドアロックシステムは、ストライカの設置箇所に関わらずドアを全閉位置に拘束できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の車両の概略構成を示す側面図。
【
図2】第1実施形態のロアロック装置及びロアロック駆動装置の斜視図。
【
図4】第1実施形態のロアロック駆動装置の側面図。
【
図7】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図8】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【
図9】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが係止位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図10】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが係止位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【
図11】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に復帰するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図12】第1実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に復帰するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【
図13】第2実施形態のロアロック装置及びロアロック駆動装置の斜視図。
【
図15】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図16】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【
図17】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが係止位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図18】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが係止位置に位置するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【
図19】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に復帰するときのロアロック装置と周辺構成との斜視図。
【
図20】第2実施形態において、第1フック及び第2フックが退避位置に復帰するときのロアロック装置と周辺構成との正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、車両用ドアロックシステムを備える車両の第1実施形態について説明する。以降の説明では、車両幅方向に延びる軸をX軸とし、車両前後方向に延びる軸をY軸とし、車両上下方向に延びる軸をZ軸とする。
【0021】
図1に示すように、車両10は、ドア開口部21を有する車体20と、ドア開口部21を開閉するスライドドア30と、を備える。
車体20は、ドア開口部21の上方に配置されるアッパレール22F,22Rと、ドア開口部21の前方及び後方にそれぞれ配置されるセンターレール23F,23Rと、スライドドア30を駆動するドア駆動部24F,24Rと、を備える。また、車体20は、ドア開口部21の前方に設けられるフロントストライカ25Fと、ドア開口部21の後方に設けられるリアストライカ25Rと、ドア開口部21の下端部であってドア開口部21の前後方向における中央に設けられるロアストライカ26F,26R(26)と、を備える。
【0022】
アッパレール22F及びセンターレール23Fは、ドア開口部21の前後方向における中央よりも前方に配置され、アッパレール22R及びセンターレール23Rは、ドア開口部21の前後方向における中央よりも後方に配置される。アッパレール22F,22R及びセンターレール23F,23Rは、略前後方向に延びる。
【0023】
ドア駆動部24F,24Rは、例えば、モータと、モータの動力をスライドドア30に伝達する伝達機構と、を含んで構成される。ドア駆動部24F,24Rの伝達機構は、プーリとベルトとを含んで構成することもできるし、ドラムとケーブルとを含んで構成することもできる。なお、ドア駆動部24F,24Rは、スライドドア30に内蔵することもできる。
【0024】
スライドドア30は、ドア開口部21の前後方向における中央から前端までの範囲を開閉する第1スライドドア30Fと、ドア開口部21の前後方向における中央から後端までの範囲を開閉する第2スライドドア30Rと、を備える。スライドドア30がドア開口部21を全開するときの位置を「全開位置」とし、スライドドア30がドア開口部21を全閉するときの位置を「全閉位置」とする。本実施形態のスライドドア30は、ドア駆動部24F,24Rにより全閉位置及び全開位置の間を開閉作動される点で、いわゆるパワースライドドアであるといえる。
【0025】
第1スライドドア30Fは、前方に移動することで開作動し、後方に移動することで閉作動する。一方、第2スライドドア30Rは、後方に移動することで開作動し、前方に移動することで閉作動する。つまり、第1スライドドア30F及び第2スライドドア30Rは、互いに離れる方向に移動することで開作動し、互いに接近する方向に移動することで閉作動する。
【0026】
第1スライドドア30Fは、アッパレール22F及びセンターレール23Fに沿ってそれぞれ移動するアッパガイドユニット31F及びセンターガイドユニット32Fと、車室を向く面に配置されるドアハンドル33Fと、を備える。また、第1スライドドア30Fは、第1スライドドア30Fの前端部を車体20に拘束するフロントロック装置34Fと、第1スライドドア30Fの後端部と第2スライドドア30Rの前端部とを連結するセンターロック装置35Fと、第1スライドドア30Fの下端部を車体20に拘束するロアロック装置40F(40)と、を備える。
【0027】
また、第1スライドドア30Fは、フロントロック装置34Fを駆動するフロントロック駆動装置36Fと、ロアロック装置40Fを駆動するロアロック駆動装置50F(50)と、ドアハンドル33F、フロントロック駆動装置36F、センターロック装置35F及びロアロック装置40Fの間で伝達される動力を中継するリモコン37Fと、を備える。さらに、第1スライドドア30Fは、フロントロック駆動装置36Fとリモコン37Fとを接続する第1ケーブル381Fと、リモコン37Fとセンターロック装置35Fとを接続する第2ケーブル382Fと、リモコン37Fとロアロック装置40Fとを接続する第3ケーブル383Fと、リモコン37Fとフロントロック駆動装置36Fとを接続する第4ケーブル384Fと、を備える。
【0028】
フロントロック装置34Fは、フロントストライカ25Fに係止するラッチ341を有する。フロントロック装置34Fは、フロントストライカ25Fにラッチ341が係止する係止状態と、フロントストライカ25Fにラッチ341が係止しない解除状態と、を切り替える。
【0029】
センターロック装置35Fは、後述する第2スライドドア30Rのセンターストライカ35Rに係止するラッチ351を有する。センターロック装置35Fは、センターストライカ35Rにラッチ351が係止する係止状態と、センターストライカ35Rにラッチ351が係止しない解除状態と、を切り替える。
【0030】
ロアロック装置40Fは、ロアストライカ26Fに後述する第1フック421及び第2フック422が係止する係止状態と、ロアストライカ26Fに第1フック421及び第2フック422が係止しない解除状態と、を切り替える。
【0031】
そして、フロントロック装置34F、センターロック装置35F及びロアロック装置40Fは、係止状態となることで、第1スライドドア30Fを全閉位置に拘束する。
フロントロック駆動装置36Fは、フロントロック装置34Fを解除状態から係止状態に移行させたり、フロントロック装置34Fを係止状態から解除状態に移行させたりする。フロントロック駆動装置36Fは、第1スライドドア30Fが全閉位置の付近まで閉作動された後に、フロントロック装置34Fを解除状態から係止状態に移行させることで、第1スライドドア30Fを全閉位置まで移動させる。
【0032】
一方、フロントロック駆動装置36Fは、第1スライドドア30Fを全閉位置から開作動させる際に、フロントロック装置34Fを係止状態から解除状態に移行させることで、フロントロック装置34Fによる第1スライドドア30Fの拘束を解除する。また、フロントロック駆動装置36Fは、フロントロック装置34Fを係止状態から解除状態に移行させるときに、第1ケーブル381Fを牽引する。
【0033】
ロアロック駆動装置50Fは、ロアロック装置40Fを解除状態から係止状態に移行させる。ロアロック駆動装置50Fは、フロントロック駆動装置36Fがフロントロック装置34Fを係止状態に移行させた後、すなわち、第1スライドドア30Fが全閉位置に配置された後に、ロアロック装置40Fを係止状態に移行させる。こうして、ロアロック駆動装置50Fは、第1スライドドア30Fの下端部を車体20に拘束する。
【0034】
なお、ロアロック駆動装置50Fがロアロック装置40Fを係止状態に移行させるタイミングは、フロントロック駆動装置36Fがフロントロック装置34Fを係止状態に移行させるタイミングと同じタイミングとすることもできる。
【0035】
リモコン37Fは、フロントロック駆動装置36Fがフロントロック装置34Fを解除状態に移行させるとき、言い換えれば、フロントロック駆動装置36Fが第1ケーブル381Fを牽引するときに、第2ケーブル382F及び第3ケーブル383Fを牽引する。そして、リモコン37Fは、センターロック装置35F及びロアロック装置40Fを係止状態から解除状態に移行させる。
【0036】
また、リモコン37Fは、ユーザがドアハンドル33Fを開操作するときに、第2ケーブル382F、第3ケーブル383F及び第4ケーブル384Fを牽引する。そして、リモコン37Fは、フロントロック装置34F、センターロック装置35F及びロアロック装置40Fを係止状態から解除状態に移行させる。
【0037】
次に、第2スライドドア30Rについて説明する。
第2スライドドア30Rは、アッパレール22R及びセンターレール23Rに沿ってそれぞれ移動するアッパガイドユニット31R及びセンターガイドユニット32Rと、車室を向く面に配置されるドアハンドル33Rと、を備える。また、第2スライドドア30Rは、第2スライドドア30Rの後端部を車体20に拘束するリアロック装置34Rと、第1スライドドア30Fの後端部と連結されるセンターストライカ35Rと、第2スライドドア30Rの下端部を車体20に拘束するロアロック装置40R(40)と、を備える。
【0038】
また、第2スライドドア30Rは、リアロック装置34Rを駆動するリアロック駆動装置36Rと、ロアロック装置40Rを駆動するロアロック駆動装置50R(50)と、ドアハンドル33R、リアロック駆動装置36R及びロアロック装置40Rの間で伝達される動力を中継するリモコン37Rと、を備える。さらに、第2スライドドア30Rは、リアロック駆動装置36Rとリモコン37Rとを接続する第1ケーブル381Rと、リモコン37Rとロアロック装置40Rとを接続する第3ケーブル383Rと、リモコン37Rとリアロック駆動装置36Rとを接続する第4ケーブル384Rと、を備える。
【0039】
第2スライドドア30Rは、フロントロック装置34Fの代わりにリアロック装置34Rを備える点と、センターロック装置35Fの代わりにセンターストライカ35Rを備える点と、第2ケーブル382Fに相当するケーブルを備えない点を除いて、第1スライドドア30Fと略同様に構成される。このため、第2スライドドア30Rにおいて、センターストライカ35Rを除く構成については説明を省略する。
【0040】
センターストライカ35Rは、第2スライドドア30Rの前端部であって、第1スライドドア30Fのセンターロック装置35Fと前後方向に対向する位置に設置される。センターストライカ35Rは、センターロック装置35Fのラッチ351が係止する対象である。
【0041】
次に、ロアロック装置40及びロアロック駆動装置50について詳しく説明する。本実施形態では、ロアロック装置40F,40Rの双方が「車両用ドアロック装置」の一例に相当する。また、ロアロック装置40F,40Rは、前後方向と直交する面を挟んで対称な形状であり、ロアロック駆動装置50F,50Rは、前後方向と直交する面を挟んで対称な形状である。このため、以降の説明では、ロアロック装置40F及びロアロック駆動装置50Fを、ロアロック装置40及びロアロック駆動装置50の符号を用いて説明する。
【0042】
図2及び
図3に示すように、ロアロック装置40は、スライドドア30に組み付けられるベース41と、ロアストライカ26に係止する第1フック421及び第2フック422と、第1フック421及び第2フック422を駆動する駆動リンク43と、を備える。また、ロアロック装置40は、第1フック421と駆動リンク43とを連結する第1リンク441と、第2フック422と駆動リンク43とを連結する第2リンク442と、駆動リンク43に係止するポール45と、ポール45を駆動するリリースレバー46と、を備える。また、ロアロック装置40は、第2フック422を付勢するフック付勢ばね471と、ポール45を付勢するポール付勢ばね472と、リリースレバー46を付勢するリリースレバー付勢ばね473と、を備える。
【0043】
また、ロアロック装置40は、第1フック421及び第2フック422の双方を回動可能に支持する「支持軸」の一例としての第1支持軸481と、駆動リンク43を回動可能に支持する第2支持軸482と、ポール45を回動可能に支持する第3支持軸483と、リリースレバー46を回動可能に支持する第4支持軸484と、を備える。さらに、ロアロック装置40は、第1フック421と第1リンク441とを相対回転可能に連結する第1連結軸491と、駆動リンク43と第1リンク441とを相対回転可能に連結する第2連結軸492と、第2フック422と第2リンク442とを相対回転可能に連結する第3連結軸493と、駆動リンク43と第2リンク442とを相対回転可能に連結する第4連結軸494と、を備える。
【0044】
図2及び
図3に示すように、ベース41は、平板状をなす第1ベース411及び第2ベース412を有する。第1ベース411は、第2ベース412から第2ベース412と交差する方向に延びる。このため、ベース41は、上方からの平面視において、略L字状をなしている。第1ベース411は、ボルトなどの締結部材を介して、スライドドア30に固定される。第2ベース412は、ボルトなどの締結部材を介して、ロアロック駆動装置50に連結される。
【0045】
図3に示すように、第1フック421及び第2フック422は、正面視において略三角状をなす板状部材である。第1フック421及び第2フック422は、前後方向を軸方向とする第1支持軸481により、第1ベース411の下端部に配置される。つまり、第1フック421及び第2フック422の回動軸線は前後方向に延びる。
【0046】
第1フック421において、第1支持軸481及び第1連結軸491に支持される部位を基端部としたとき、第1フック421は、先端部に係止爪423と凹部424とを有する。係止爪423は、第1フック421の回動方向に延び、凹部424は、係止爪423の延びる方向と逆方向に凹む。
【0047】
同様に、第2フック422において、第1支持軸481及び第3連結軸493に支持される部位を基端部としたとき、第2フック422は、先端部に係止爪423と凹部424とを有する。係止爪423は、第2フック422の回動方向に延び、凹部424は、係止爪423の延びる方向と逆方向に凹む。第1フック421及び第2フック422の凹部424の大きさは、ロアストライカ26に応じた大きさである。
【0048】
第1フック421及び第2フック422は、先端部同士が互いに接近することによりロアストライカ26を挟み込む係止位置及び先端部同士が互いに離れる退避位置の間を第1支持軸481の軸線回りに回動する。本実施形態では、第1フック421及び第2フック422は、係止位置及び退避位置の間で回動する際、
図3において第1支持軸481の中心を通り且つ上下方向に延びる直線に対して略線対称の位置関係を取る。また、第1フック421及び第2フック422が係止位置に位置する場合、第1フック421及び第2フック422の凹部424にロアストライカ26が収まる。
【0049】
図2及び
図3に示すように、駆動リンク43は、平板状をなしている。駆動リンク43は、前後方向を軸方向とする第2支持軸482により、第1ベース411の中央部に配置される。言い換えれば、駆動リンク43は、第1フック421及び第2フック422と上下方向に間隔をあけて配置される。
図3に示すように、駆動リンク43は、駆動リンク43の回動方向と直交する方向に延びる係合突起431と、駆動リンク43の回動方向に延びる摺動面432と、摺動面432と交差する方向に延びる規制面433と、を有する。駆動リンク43は、「駆動体」の一例に相当する。
【0050】
図3に示すように、第1リンク441は、駆動リンク43と第1ベース411と第1フック421とともに4節リンク機構を構成する。第1リンク441を含む4節リンク機構において、第1支持軸481及び第2支持軸482の軸線間距離は、第1連結軸491及び第2連結軸492の軸線間距離よりも長い。また、第1支持軸481及び第1連結軸491の軸線間距離及び第2支持軸482及び第2連結軸492の軸線間距離は、第1連結軸491及び第2連結軸492の軸線間距離よりも短い。第1リンク441は、いわゆる中間リンクに相当し、駆動リンク43の動力を第1フック421に伝達する。
【0051】
一方、第2リンク442は、駆動リンク43と第1ベース411と第2フック422とともに4節リンク機構を構成する。第2リンク442を含む4節リンク機構において、第1支持軸481及び第2支持軸482の軸線間距離は、第3連結軸493及び第4連結軸494の軸線間距離よりも長い。また、第1支持軸481及び第3連結軸493の軸線間距離及び第2支持軸482及び第4連結軸494の軸線間距離は、第3連結軸493及び第4連結軸494の軸線間距離よりも短い。第2リンク442は、いわゆる中間リンクに相当し、駆動リンク43の動力を第2フック422に伝達する。
【0052】
第1リンク441を含む4節リンク機構及び第2リンク442を含む4節リンク機構は、駆動リンク43を共有している。このため、駆動リンク43が回動する場合には、第1フック421及び第2フック422がともに回動する。また、第1フック421及び第2フック422の一方が回動する場合には、第1フック421及び第2フック422の他方と駆動リンク43とが回動する。つまり、第1フック421、第2フック422、駆動リンク43、第1リンク441及び第2リンク442は、互いに連動する。したがって、駆動リンク43の位置が決まれば、第1フック421及び第2フック422の位置も一義に決まる。
【0053】
以降の説明では、第1フック421及び第2フック422を係止位置に配置するときの駆動リンク43の位置を「第1位置」とし、第1フック421及び第2フック422を退避位置に配置するときの駆動リンク43の位置を「第2位置」とする。また、駆動リンク43は、第2支持軸482の軸線回りに回動することで、第1位置及び第2位置の間を変位する。
【0054】
図2及び
図3に示すように、ポール45は、前後方向を軸方向とする第3支持軸483により、第1ベース411の上部に配置される。つまり、ポール45は、駆動リンク43よりも上方に配置される。ポール45は、第3支持軸483の軸方向と交差する方向に延びる第1係合片451及び第2係合片452を有する。第1係合片451は、駆動リンク43に向かって延び、第2係合片452は、第2ベース412に向かって延びる。
【0055】
図2に示すように、リリースレバー46は、幅方向を軸方向とする第4支持軸484により、第2ベース412の上部に配置される。リリースレバー46は、第4支持軸484の軸方向と交差する方向に延びる第1レバー461及び第2レバー462を有する。第1レバー461は、第1ベース411に向かって延び、第2レバー462は、第1ベース411に沿って延びる。第2レバー462の先端には、リモコン37Fから延びる第3ケーブル383Fの端部が固定される。第3ケーブル383Fが牽引される場合、リリースレバー46は、第1レバー461の先端が下降する方向に回動する。
【0056】
図2及び
図3に示すように、フック付勢ばね471は、いわゆる引張コイルばねである。フック付勢ばね471は、一端が第3支持軸483に係止され、他端が第3連結軸493に係止される。フック付勢ばね471は、第2フック422が係止位置から退避位置に向かって回動する方向に第2フック422を付勢する。
【0057】
上述したように、第2フック422が回動する場合、第1フック421が回動するため、フック付勢ばね471は、第1フック421及び第2フック422の双方を付勢しているということもできる。また、第2フック422が回動する場合、駆動リンク43が回動するため、フック付勢ばね471は、駆動リンク43を第1位置から第2位置に向かう方向に付勢しているということもできる。こうした点で、フック付勢ばね471は、第1フック421を付勢する構成に置き換えることもできるし、駆動リンク43を付勢する構成に置き換えることもできる。
【0058】
図2及び
図3に示すように、ポール付勢ばね472は、いわゆるねじりコイルばねである。ポール付勢ばね472は、第3支持軸483が挿通された状態で、一端が第1ベース411に係止され、他端がポール45の第2係合片452に係止される。ポール付勢ばね472は、第1係合片451が駆動リンク43を押す方向にポール45を付勢する。
【0059】
図2に示すように、リリースレバー付勢ばね473は、いわゆるねじりコイルばねである。リリースレバー付勢ばね473は、第4支持軸484が挿通された状態で、一端が後述するロアロック駆動装置50の支持プレート51に係止され、他端がリリースレバー46の第2レバー462に係止される。リリースレバー付勢ばね473は、リリースレバー46の第1レバー461の先端がポール45の第2係合片452から離れる方向にリリースレバー46を付勢する。
【0060】
次に、ロアロック駆動装置50について説明する。
図2及び
図4に示すように、ロアロック駆動装置50は、平板状をなす支持プレート51と、支持プレート51に回動可能に支持されるドライブギヤ52と、支持プレート51に回動可能に支持されるアクティブレバー53と、支持プレート51に回動可能に支持される連結リンク54と、アクティブレバー53と連結リンク54とを連結するクローズレバー55と、ドライブギヤ52を駆動する駆動部56と、を備える。
【0061】
支持プレート51は、ロアロック装置40のベース41とボルトなどの締結部材により連結される。支持プレート51は、ロアロック装置40のベース41と一体とすることも可能である。アクティブレバー53は、ドライブギヤ52と噛み合うギヤ部531と、連結リンク54に連結されるレバー部532と、を有する。レバー部532は、ロアロック装置40の第1ベース411に向かって延びる。
【0062】
そして、支持プレート51とアクティブレバー53と連結リンク54とクローズレバー55とは、4節リンク機構を構成する。このため、アクティブレバー53が一方向及び他方向に回動する場合、クローズレバー55が上下動する。駆動部56は、モータと、モータの動力をドライブギヤ52に伝達する伝達機構と、を含んで構成される。駆動部56は、ドライブギヤ52を回動させることにより、アクティブレバー53を回動させる。こうして、ロアロック駆動装置50は、任意のタイミングでクローズレバー55を作動させる。
【0063】
次に、ロアストライカ26に係る構成について説明する。
図5及び
図6に示すように、車体20は、上述したロアストライカ26が配置されるフロア27と、ロアストライカ26を覆う被覆プレート28と、を備える。
【0064】
フロア27は、ロアストライカ26を収容する収容凹部271を有する。収容凹部271は、フロア27の幅方向における外端に設けられる。言い換えれば、収容凹部271は、ドア開口部21の下端に設けられる。ロアストライカ26において、ロアロック装置40の第1フック421及び第2フック422が係止する棒状部位は、前後方向に延びる。言い換えれば、ロアストライカ26において、第1フック421及び第2フック422に挟み込まれる部位は前後方向に延びる。
【0065】
被覆プレート28は、幅方向を長手方向とし前後方向を短手方向とするスリット281を有する。つまり、スリット281は、ロアストライカ26の棒状部位の延びる方向と直交する方向、すなわち幅方向に延びる。被覆プレート28は、収容凹部271を被覆する状態で車体20のフロア27に固定される。このとき、被覆プレート28は、車体20のフロア27と面一となることが好ましい。また、被覆プレート28は、スリット281でロアストライカ26の棒状部位を上方に露出させる。
【0066】
本実施形態では、上述したロアロック装置40とロアロック駆動装置50とロアストライカ26と被覆プレート28と、を含んで「車両用ドアロックシステム」の一例が構成される。
【0067】
本実施形態の作用について説明する。
詳しくは、
図1及び
図7~
図12を参照して、スライドドア30の閉作動時及び開作動時におけるロアロック装置40及びロアロック駆動装置50の作用について説明する。
【0068】
車両10において、ユーザからスライドドア30の閉作動要求がある場合、ドア駆動部24F,24Rが駆動され、スライドドア30の閉作動が開始される。スライドドア30が全閉位置の近傍まで閉作動すると、ドア駆動部24F,24Rに代わり、フロントロック駆動装置36F及びリアロック駆動装置36Rが駆動される。その結果、フロントロック装置34F及びリアロック装置34Rが係止状態に移行し、スライドドア30がドア開口部21を全閉する全閉位置に配置される。
【0069】
スライドドア30が全閉位置に配置される場合には、第1スライドドア30Fの後端部及び第2スライドドア30Rの前端部が最も接近する。このため、第1スライドドア30Fのセンターロック装置35Fのラッチ351が第2スライドドア30Rのセンターストライカ35Rに係止する。つまり、スライドドア30が全開位置に配置される場合には、センターロック装置35Fも係止状態に移行する。センターロック装置35Fを係止状態に移行させるための動力は、スライドドア30の閉作動に伴い、センターストライカ35Rがラッチ351を押す力である。
【0070】
フロントロック装置34F、リアロック装置34R及びセンターロック装置35Fが係止状態に移行した段階では、スライドドア30に、自重によるモーメントが作用したり、車体20とスライドドア30との間で圧縮されるウェザーストリップの弾性力が作用したりするため、スライドドア30の下端部の姿勢が定まらない。このため、ロアロック装置40を係止状態として、スライドドア30の下端部の姿勢を安定させる必要がある。
【0071】
そこで、スライドドア30が全閉位置に配置された後は、ロアロック駆動装置50が駆動される。詳しくは、駆動部56が駆動されることで、
図7に実線矢印で示す方向にアクティブレバー53が回動する。すると、
図8に実線矢印で示す方向にクローズレバー55が上昇し、クローズレバー55が駆動リンク43の係合突起431を上方に押す。その結果、駆動リンク43が第2位置から第1回動方向R1に回動し、第1リンク441及び第2リンク442を介して、第1フック421及び第2フック422に動力が伝達される。また、駆動リンク43が第1回動方向R1に回動する場合、ポール45の第1係合片451が駆動リンク43の摺動面432と摺動する。
【0072】
図9及び
図10に示すように、クローズレバー55が最も上昇すると、駆動リンク43は、第1位置に配置される。駆動リンク43が第1位置に配置されると、ポール付勢ばね472の付勢力に基づきポール45が回動し、ポール45の第1係合片451が駆動リンク43の規制面433に係止する。つまり、駆動リンク43は、第2位置に向かって回動不能となる。
【0073】
また、駆動リンク43が第1位置に配置される場合、第1フック421及び第2フック422は、第1支持軸481の軸線回りに互いに異なる方向に回動することで、ロアストライカ26を挟み込む係止位置に位置する。こうして、スライドドア30の下部の幅方向への移動が制限され、スライドドア30の全閉位置における姿勢が安定する。また、第1フック421及び第2フック422が係止位置まで回動する場合には、フック付勢ばね471が伸張する。
【0074】
図10に示すように、第1フック421及び第2フック422が係止位置に回動する場合には、第1フック421がロアストライカ26を幅方向に相対的に引き込むことで、第1フック421がスライドドア30の下部を幅方向における内方に引き込む。このため、
図8及び
図10に示すように、第1フック421及び第2フック422が係止位置に配置される場合のスライドドア30の下部の位置は、第1フック421及び第2フック422が退避位置に配置される場合のスライドドア30の下部の位置よりも幅方向における内方に位置する。言い換えれば、第1フック421及び第2フック422が退避位置から係止位置に回動することにより、スライドドア30の下部が幅方向における内方に移動する。また、第1フック421及び第2フック422が係止位置に配置される場合には、幅方向における外方に移動しようとするスライドドア30を留めるべく、第1フック421のみがロアストライカ26に接する状態となる。
【0075】
駆動リンク43を第1位置に配置した後は、ロアロック駆動装置50の駆動部56が駆動されることで、
図9に実線矢印で示す方向にアクティブレバー53が回動する。つまり、
図10に実線矢印で示す方向にクローズレバー55が下降し、クローズレバー55が駆動リンク43の係合突起431から離れる。ただし、駆動リンク43は、ポール45により、第2位置に向かって回動不能であるため、アクティブレバー53が駆動リンク43の係合突起431から離れた後も、駆動リンク43は第1位置に留まる。つまり、第1フック421及び第2フック422も係止位置に留まる。
【0076】
その後、ユーザからスライドドア30の開作動要求がある場合、フロントロック駆動装置36F及びリアロック駆動装置36Rが駆動される。その結果、フロントロック装置34F及びリアロック装置34Rが解除状態に移行し、センターロック装置35F及びロアロック装置40が解除状態に移行する。
【0077】
図11に示すように、ロアロック装置40では、実線矢印で示す方向にリモコン37Fが第3ケーブル383Fを牽引することにより、実線矢印で示す方向にリリースレバー46が回動する。つまり、
図12に示すように、リリースレバー46の第1レバー461が下降し、リリースレバー46の第1レバー461がポール45の第2係合片452を押し下げる。すると、ポール45の第1係合片451が駆動リンク43から離れ、ポール45の第1係合片451が駆動リンク43の規制面433に係止しなくなる。
【0078】
第1フック421及び第2フック422は、フック付勢ばね471により、係止位置から退避位置に向かって回動する方向に付勢されている。このため、駆動リンク43にポール45が係止しなくなった後は、第1フック421及び第2フック422が退避位置に向かって回動し、駆動リンク43が第2回動方向R2に回動する。第1フック421及び第2フック422が退避位置に復帰すると、駆動リンク43が第2位置に復帰する。こうして、ロアロック装置40は、
図7及び
図8に示す状態、すなわち解除状態に移行する。
【0079】
フロントロック装置34F、リアロック装置34R、センターロック装置35F及びロアロック装置40が解除状態に移行すると、スライドドア30が車体20に対して拘束されなくなる。このため、ドア駆動部24F,24Rが駆動され、スライドドア30の開作動が開始される。
【0080】
第1実施形態の効果について説明する。
(1)ロアロック装置40は、第1フック421及び第2フック422がロアストライカ26を挟み込むことで、スライドドア30を車体20に拘束する。言い換えれば、ロアロック装置40は、第1フック421及び第2フック422でロアストライカ26を挟み込むことさえできれば、スライドドア30を車体に拘束できる。この点で、ロアストライカ26に対する第1フック421及び第2フック422の配置自由度が高くなりやすい。したがって、ロアロック装置40は、ロアストライカ26の設置箇所に関わらずスライドドア30を全閉位置に拘束できる。
【0081】
(2)駆動リンク43の動力は、リンク機構により、第1フック421及び第2フック422に伝達される。このため、ロアロック装置40は、簡易な構成で、第1フック421及び第2フック422を異なる方向に回動させる動力伝達機構を実現できる。
【0082】
(3)ロアロック装置40は、第1位置に配置される駆動リンク43に係止することにより、駆動リンク43の第2位置への回動を制限するポール45を備える。このため、ロアロック装置40は、ロアロック駆動装置50を駆動し続けなくても、第1フック421及び第2フック422を係止位置に留めることができる。また、ロアロック装置40は、ポール45が1つでよい点で装置の構成を簡素化できる。
【0083】
(4)ロアロック装置40は、第1フック421及び第2フック422の双方を回動可能に支持する第1支持軸481を備える。このため、ロアロック装置40は、第1フック421を回動可能に支持する支持軸と、第2フック422を回動可能に支持する支持軸と、を別部材とする場合に比較して、装置の構成を簡素化できる。
【0084】
(5)ロアストライカ26を覆う被覆プレート28により、フロア27からロアストライカ26が突出することが抑制される。よって、ユーザが車両10を乗降する際に、ロアストライカ26を邪魔に感じにくくなる。
【0085】
(6)スライドドア30に対し幅方向における内方に向かって衝撃が作用する場合には、第2フック422とロアストライカ26との係合により、スライドドア30が幅方向における内方に向かって変位することを抑制できる。例えば、車両10に対する側面衝突時に、第2フック422とロアストライカ26との係合により、スライドドア30が車室に向かって変位することを抑制したり、車両10に対する衝突物が車室に入り込むことを抑制したりできる。
【0086】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るロアロック装置60について詳しく説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。さらに、第2実施形態に係るロアロック駆動装置50は、第1実施形態に係るロアロック駆動装置50と構成部材の形状及び配置が僅かに異なる程度であるため同一の符号を付して説明を省略する。また、第2実施形態では、ロアロック装置60が「車両用ドアロック装置」の一例に相当する。
【0087】
図13及び
図14に示すように、ロアロック装置60は、スライドドア30に組み付けられるベース61と、ロアストライカ26に係止する第1フック621及び第2フック622と、第1フック621及び第2フック622を駆動する駆動リンク63と、を備える。また、ロアロック装置60は、第1フック621と駆動リンク63とを連結する第1リンク641と、第2フック622と駆動リンク63とを連結する第2リンク642と、第1フック621及び第2フック622にそれぞれ係止する第1ポール651及び第2ポール652と、第1ポール651及び第2ポール652とともに動作する連結レバー66と、連結レバー66を駆動するリリースレバー67と、を備える。
【0088】
また、ロアロック装置60は、駆動リンク63を付勢する駆動リンク付勢ばね681と、第1ポール651及び第2ポール652を間接的に付勢するポール付勢ばね682と、リリースレバー67を付勢するリリースレバー付勢ばね683と、を備える。また、ロアロック装置60は、第1フック621及び第2フック622の双方を回動可能に支持する「支持軸」の一例としての第1支持軸691と、駆動リンク63を回動可能に支持する第2支持軸692と、第1ポール651及び第2ポール652を回動可能にそれぞれ支持する第3支持軸693,694と、リリースレバー67を回動可能に支持する第4支持軸695と、を備える。さらに、ロアロック装置60は、第1フック621と第1リンク641とを相対回転可能に連結する第1連結軸696と、駆動リンク63、第1リンク641及び第2リンク642を相対回転可能に連結する第2連結軸697と、第2フック622と第2リンク642とを相対回転可能に連結する第3連結軸698と、を備える。
【0089】
図13及び
図14に示すように、ベース61は、平板状をなす第1ベース611及び第2ベース612を有する。第1ベース611は、第2ベース612から第2ベース612と交差する方向に延びる。このため、ベース61は、上方からの平面視において、略L字状をなしている。第1ベース611は、ボルトなどの締結部材を介して、スライドドア30に固定される。第2ベース612は、ボルトなどの締結部材を介して、ロアロック駆動装置50に連結される。
【0090】
図14に示すように、第1フック621及び第2フック622は、正面視において略扇形をなす板状部材である。第1フック621及び第2フック622は、前後方向を軸方向とする第1支持軸691により、第1ベース611の下端部に配置される。つまり、第1フック621及び第2フック622の回動軸線は前後方向に延びる。
【0091】
第1フック621において、第1支持軸691及び第1連結軸696に支持される部位を基端部としたとき、第1フック621は、先端部に係止爪623と凹部624とを有する。係止爪623は、第1フック621の回動方向に延び、凹部624は、係止爪623の延びる方向と逆方向に凹む。また、第1フック621は、第1フック621の回動方向において、係止爪623が設けられる端面とは逆側の端面に、周方向と交差する規制面625を有する。同様に、第2フック622において、第1支持軸691及び第3連結軸698に支持される部位を基端部としたとき、第2フック622は、先端部に係止爪623と凹部624とを有する。また、第2フック622は、第2フック622の回動方向において、係止爪623が設けられる端面とは逆側の端面に、周方向と交差する規制面625を有する。
【0092】
第1フック621及び第2フック622は、先端部同士が互いに接近することによりロアストライカ26を挟み込む係止位置及び先端部同士が互いに離れる退避位置の間を第1支持軸691の軸線回りに回動する。本実施形態では、第1フック621及び第2フック622は、係止位置及び退避位置の間で回動する際、
図14において第1支持軸691の中心を通り且つ上下方向に延びる直線に対して略線対称の位置関係を取る。また、第1フック621及び第2フック622が係止位置に位置する場合、第1フック621及び第2フック622の凹部624にロアストライカ26が収まる。
【0093】
図13及び
図14に示すように、駆動リンク63は、前後方向を軸方向とする第2支持軸692により、第1ベース611の上部に配置される。
図14に示すように、駆動リンク63は、第2支持軸692の軸方向と交差する方向に延びる第1部分631及び第2部分632を有する。第1部分631の先端は、第2連結軸697を介して第1リンク641及び第2リンク642と回動可能に連結される。第2部分632は、第2ベース612に向かって延びる。駆動リンク63は、「駆動体」の一例に相当する。
【0094】
図14に示すように、第1リンク641は、駆動リンク63と第1ベース611と第1フック621とともに4節リンク機構を構成する。第1リンク641を含む4節リンク機構において、第1支持軸691及び第2支持軸692の軸線間距離は、第1連結軸696及び第2連結軸697の軸線間距離よりも長い。また、第1支持軸691及び第1連結軸696の軸線間距離及び第2支持軸692及び第2連結軸697の軸線間距離は、第1連結軸696及び第2連結軸697の軸線間距離よりも短い。第1リンク641は、いわゆる中間リンクに相当し、駆動リンク63の動力を第1フック621に伝達する。
【0095】
一方、第2リンク642は、駆動リンク63と第1ベース611と第2フック622とともに4節リンク機構を構成する。第2リンク642を含む4節リンク機構において、第1支持軸691及び第2支持軸692の軸線間距離は、第2連結軸697及び第3連結軸698の軸線間距離よりも長い。また、第1支持軸691及び第3連結軸698の軸線間距離及び第2支持軸692及び第2連結軸697の軸線間距離は、第2連結軸697及び第3連結軸698の軸線間距離よりも短い。第2リンク642は、いわゆる中間リンクに相当し、駆動リンク63の動力を第2フック622に伝達する。
【0096】
第1リンク641を含む4節リンク機構及び第2リンク642を含む4節リンク機構は、駆動リンク63を共有している。このため、駆動リンク63が回動する場合には、第1フック621及び第2フック622がともに回動する。また、第1フック621及び第2フック622の一方が回動する場合には、第1フック621及び第2フック622の他方と駆動リンク63とが回動する。つまり、第1フック621、第2フック622、駆動リンク63、第1リンク641及び第2リンク642は、互いに連動している。したがって、駆動リンク63の位置が決まれば、第1フック621及び第2フック622の位置も一義に決まる。
【0097】
以降の説明では、第1フック621及び第2フック622を係止位置に配置するときの駆動リンク63の位置を「第1位置」とし、第1フック621及び第2フック622を退避位置に配置するときの駆動リンク63の位置を「第2位置」とする。また、駆動リンク63は、第2支持軸692の軸線回りに回動することで、第1位置及び第2位置の間を変位する。
【0098】
図13及び
図14に示すように、第1ポール651及び第2ポール652は、前後方向を軸方向とする第3支持軸693,694により、第1ベース611の上下方向における中間部にそれぞれ配置される。
【0099】
図14に示すように、第1ポール651は、第3支持軸693の軸方向と交差する方向に延びる第1係合片653及び第2係合片654を有する。第1ポール651において、第1係合片653は、第1フック621に向かって延び、第2係合片654は、第2ベース612に向かって延びる。第1ポール651の第2係合片654は、先端を貫通するガイド孔655を含む。
【0100】
同様に、第2ポール652は、第3支持軸694の軸方向と交差する方向に延びる第1係合片653及び第2係合片654を有する。第2ポール652において、第1係合片653は、第2フック622に向かって延び、第2係合片654は、第2ベース612から離れる方向に向かって延びる。第2ポール652の第2係合片654は、先端を貫通するガイド孔655を含む。
【0101】
図14に示すように、連結レバー66は、第3支持軸694により、第1ベース611の上下方向における中間部に配置される。つまり、連結レバー66の回動軸線は、第2ポール652の回動軸線と一致する。連結レバー66は、第3支持軸694の軸方向と交差する方向に延びる第1レバー661及び第2レバー662を有する。第1レバー661は、第2ベース612から遠ざかる方向に延び、第2レバー662は、第2ベース612に向かって延びる。
【0102】
第1レバー661は、先端に第3支持軸694の軸方向に延びるガイド軸663を有する。ガイド軸663は、第1ポール651及び第2ポール652のガイド孔655に挿入される。このため、連結レバー66が回動する場合には、第1ポール651及び第2ポール652が回動する。詳しくは、第2レバー662が上昇する方向に連結レバー66が回動する場合、第1ポール651は、第1係合片653が第1フック621から遠ざかる方向に回動し、第2ポール652は、第1係合片653が第2フック622から遠ざかる方向に回動する。
【0103】
図13に示すように、リリースレバー67は、幅方向を軸方向とする第4支持軸695により、第2ベース612の下部に配置される。リリースレバー67は、第4支持軸695の軸方向と交差する方向に延びる第1レバー671及び第2レバー672を有する。第1レバー671は、第1ベース611に向かって延び、第2レバー672は、第1ベース611に沿って延びる。第2レバー672の先端には、リモコン37Fから延びる第3ケーブル383Fの後端が固定される。第3ケーブル383Fが牽引される場合、リリースレバー67は、第1レバー671の先端が上昇する方向に回動する。
【0104】
図14に示すように、駆動リンク付勢ばね681は、いわゆるねじりコイルばねである。駆動リンク付勢ばね681は、一端が第1ベース611に係止され、他端が駆動リンク63の第2部分632に係止される。駆動リンク付勢ばね681は、駆動リンク63が第1位置から第2位置に向かって回動する方向に駆動リンク63を付勢する。上述したように、ロアロック装置60において、駆動リンク63が回動する場合、第1フック621及び第2フック622が回動するため、駆動リンク付勢ばね681は、第1フック621及び第2フック622の双方を付勢しているということもできる。こうした点で、駆動リンク付勢ばね681は、第1フック621を付勢する構成に置き換えることもできるし、第2フック622を付勢する構成に置き換えることもできる。
【0105】
図14に示すように、ポール付勢ばね682は、いわゆるねじりコイルばねである。ポール付勢ばね682は、一端が第1ベース611と一体となる係合片613に係止され、他端が連結レバー66の第1レバー661に係止される。ポール付勢ばね682は、連結レバー66の第2レバー662が下降する方向に連結レバー66を付勢する。言い換えれば、ポール付勢ばね682は、連結レバー66を介して、第1ポール651の第1係合片653が第1フック621を押す方向に第1ポール651を付勢し、第2ポール652の第1係合片653が第2フック622を押す方向に第2ポール652を付勢する。
【0106】
図13に示すように、リリースレバー付勢ばね683は、いわゆるねじりコイルばねである。リリースレバー付勢ばね683は、第4支持軸695が挿通された状態で、一端が後述するロアロック駆動装置50の支持プレート51に係止され、他端がリリースレバー67の第2レバー672に係止される。
図14に示すように、リリースレバー付勢ばね683は、第1レバー671の先端が連結レバー66の662から離れる方向にリリースレバー67を付勢する。
【0107】
本実施形態では、上述したロアロック装置60とロアロック駆動装置50とロアストライカ26と被覆プレート28と、を含んで「車両用ドアロックシステム」の一例が構成されている。
【0108】
本実施形態の作用について説明する。
詳しくは、
図15~
図20を参照して、スライドドア30の閉作動時及び開作動時におけるロアロック装置60の作用について説明する。
【0109】
車両10において、ユーザからスライドドア30の閉作動要求がある場合、ドア駆動部24F,24Rが駆動され、スライドドア30の閉作動が開始される。スライドドア30が全閉位置の近傍まで閉作動すると、ドア駆動部24F,24Rに代わり、フロントロック駆動装置36F及びリアロック駆動装置36Rが駆動される。その結果、フロントロック装置34F及びリアロック装置34Rが係止状態に移行し、スライドドア30がドア開口部21を全閉する全閉位置に配置される。
【0110】
スライドドア30が全閉位置に配置される場合には、第1スライドドア30Fの後端部及び第2スライドドア30Rの前端部が最も接近する。このため、第1スライドドア30Fのセンターロック装置35Fのラッチ351が第2スライドドア30Rのセンターストライカ35Rに係止する。つまり、スライドドア30が全開位置に配置される場合には、センターロック装置35Fも係止状態に移行する。
【0111】
スライドドア30が全閉位置に配置された後は、ロアロック駆動装置50が駆動される。詳しくは、駆動部56が駆動されることで、
図15に実線矢印で示す方向にアクティブレバー53が回動する。すると、
図16に実線矢印で示す方向にクローズレバー55が上昇し、クローズレバー55が駆動リンク63の第2部分632を上方に押す。その結果、駆動リンク63が第2位置から第1回動方向R1に回動し、第1リンク641及び第2リンク642を介して、第1フック621及び第2フック622に動力が伝達される。
【0112】
図17及び
図18に示すように、クローズレバー55が最も上昇すると、駆動リンク63は、第1位置に配置される。駆動リンク63が第1位置に配置されると、第1フック621及び第2フック622がロアストライカ26を挟み込む係止位置に位置する。こうして、スライドドア30の下部の幅方向への移動が制限され、スライドドア30の全閉位置における姿勢が安定する。また、駆動リンク63が第1回動方向R1に回動する場合には、駆動リンク付勢ばね681が伸張する。
【0113】
図18に示すように、駆動リンク63が第1位置に配置されると、第1ポール651の第1係合片653が第1フック621の規制面625に係止し、第2ポール652の第1係合片653が第2フック622の規制面625に係止する。つまり、第1フック621及び第2フック622が退避位置に向かって回動不能となり、駆動リンク63が第2位置に向かって回動不能となる。
【0114】
さらに、第1フック621及び第2フック622が係止位置に配置される場合には、第1フック621がロアストライカ26を幅方向に相対的に引き込むことで、第1フック621がスライドドア30の下部を幅方向における内方に引き込む。このため、
図16及び
図18に示すように、第1フック621及び第2フック622が係止位置に配置される場合のスライドドア30の下部の位置は、第1フック621及び第2フック622が退避位置に配置される場合のスライドドア30の下部の位置よりも幅方向における内方に位置する。
【0115】
駆動リンク63を第1位置に配置した後は、ロアロック駆動装置50の駆動部56が駆動されることで、
図17に実線矢印で示す方向にアクティブレバー53が回動する。つまり、
図18に実線矢印で示す方向にクローズレバー55が下降し、クローズレバー55が駆動リンク63の第2部分632から離れる。ここで、第1フック621及び第2フック622は、第1ポール651及び第2ポール652により、退避位置に向かって回動不能な状態である。このため、アクティブレバー53が駆動リンク63から離れた後も、第1フック621及び第2フック622は、係止位置に留まる。つまり、駆動リンク63も第1位置に留まる。
【0116】
その後、ユーザからスライドドア30の開作動要求がある場合、フロントロック駆動装置36F及びリアロック駆動装置36Rが駆動される。その結果、フロントロック装置34F及びリアロック装置34Rが解除状態に移行し、センターロック装置35F及びロアロック装置60が、解除状態に移行する。
【0117】
図19に示すように、ロアロック装置60では、実線矢印で示す方向にリモコン37Fが第3ケーブル383Fを牽引することにより、実線矢印で示す方向にリリースレバー67が回動する。つまり、
図20に示すように、リリースレバー67の第1レバー671の先端が上昇し、リリースレバー67の第1レバー671が連結レバー66の第2レバー662を押し上げる。すると、連結レバー66の第1レバー661が第1ポール651の第2係合片654及び第2ポール652の第2係合片654を押し下げる。その結果、第1ポール651の第1係合片653が第1フック621から離れる方向に第1ポール651が回動し、第2ポール652の第1係合片653が第2フック622から離れる方向に第2ポール652が回動する。その結果、第1ポール651の第1係合片653が第1フック621の規制面625に係止しなくなり、第2ポール652の第1係合片653が第2フック622の規制面625に係止しなくなる。
【0118】
上述した通り、駆動リンク63は、駆動リンク付勢ばね681により、第2位置から第1位置に向かって付勢されている。このため、第1フック621及び第2フック622に第1ポール651及び第2ポール652がそれぞれ係止しなくなった後は、駆動リンク63が第2回動方向R2に回動し、第1フック621及び第2フック622が退避位置に向かって回動する。駆動リンク63が第2位置に復帰すると、第1フック621及び第2フック622が退避位置に復帰する。こうして、ロアロック装置60は、
図16及び
図17に示す状態、すなわち解除状態に移行する。
【0119】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の効果(1),(2),(4),(5),(6)に加え、以下の効果を得ることができる。
(7)ロアロック装置60は、第1フック621及び第2フック622の退避位置への回動をそれぞれ制限する第1ポール651及び第2ポール652を備える。このため、ロアロック装置60は、ロアロック駆動装置50を駆動し続けなくても、第1フック621及び第2フック622を係止位置に留めることができる。また、ロアロック装置60は、係止位置に配置される第1フック621及び第2フック622にそれぞれ係止する第1ポール651及び第2ポール652を備える点で、第1フック621及び第2フック622をより強固に係止位置に留めることができる。
【0120】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ロアストライカ26とロアロック装置40との設置箇所を入れ替えてもよい。すなわち、車体20のドア開口部21の下端部にロアロック装置40を配置し、スライドドア30の下端部にロアストライカ26を設置してもよい。
【0121】
・駆動リンク43は、特定の方向に直線的に進退する「駆動体」として構成してもよい。この場合、ロアロック装置40は、第1リンク441及び第2リンク442の代わりに、駆動体の直線運動を第1フック421及び第2フック422の回転運動に変換する変換機構を備えることが好ましい。
【0122】
・駆動リンク43自体をアクチュエータとして構成してもよい。例えば、駆動リンク43は、ソレノイドなどで構成してもよい。
・駆動リンク43から第1フック421及び第2フック422に対して動力を伝達する機構は、適宜に変更することができる。例えば、動力伝達機構は、複数のギヤからなる機構でもよいし、ワイヤを含む機構でもよい。
【0123】
・ロアロック装置40は、第1フック421を支持する支持軸と第2フック422を支持する支持軸とを別々に備えてもよい。また、ロアロック装置40は、第1フック421を駆動する第1駆動リンクと、第2フック422を駆動する第2駆動リンクと、を別々に備えてもよい。
【0124】
・ロアロック装置40は、スライドドア30の上部に設けてもよい。この場合、ロアストライカ26は、ドア開口部21の上端部に設置されるアッパストライカとなる。
・車体20は、ドア開口部21の下方に配置されるロアレールを備えてもよいし、スライドドア30は、ロアレールに沿って前後方向に移動するロアガイドユニットを備えてもよい。この場合であっても、ロアロック装置40は、係止状態となることで、全閉位置におけるスライドドア30の下端部の姿勢を安定化できる。
【0125】
・スライドドア30は、車両10の前部に設けてもよいし、車両10の後部に設けてもよい。つまり、スライドドア30が開閉作動するときの移動方向は幅方向であってもよい。
【0126】
・スライドドア30は、車体20の後部に設けられるドア開口部を開閉するバックドアでもよい。また、スライドドア30は、上下方向又は前後方向に延びる軸線回りに揺動するドアでもよい。
【符号の説明】
【0127】
20…車体
26…ロアストライカ(ストライカの一例)
28…被覆プレート
281…スリット
30…スライドドア(ドアの一例)
31…第1スライドドア
32…第2スライドドア
40,60…車両用ドアロック装置
41,61…ベース
421,621…第1フック
422,622…第2フック
43,63…駆動リンク(駆動体の一例)
441,641…第1リンク
442,642…第2リンク
45…ポール
481,691…第1支持軸(支持軸の一例)
651…第1ポール
652…第2ポール