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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】近接センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20231011BHJP
   H10N 50/00 20230101ALI20231011BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01R33/02 D
H10N50/00
H01H36/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020000395
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110549
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】一色 信賢
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-70621(JP,A)
【文献】特開2003-185759(JP,A)
【文献】特開平8-18430(JP,A)
【文献】特開平6-29818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
H10N 50/00
H10N 52/00
H10N 59/00
F41H 11/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振コイルを有し、金属により形成される検知対象物が前記発振コイルに近付くにつれて減衰する振幅を持つ発振信号を出力する発振回路と、
前記検知対象物と前記発振コイル間の相互作用による磁界の強さの変化に応じてインピーダンスが変化する磁界検出素子を有し、前記磁界検出素子のインピーダンスの変化量に応じて前記発振信号の振幅を低下させる発振制御回路と、
前記発振制御回路から出力される前記発振信号の振幅に応じた信号値と所定の閾値とを比較することで、前記検知対象物を検知したか否かを判定する判定回路と、
を有する近接センサ。
【請求項2】
前記発振制御回路は、
前記発振回路と前記判定回路の間に接続され、前記発振信号を分圧することで前記発振信号の振幅を低下させることが可能な分圧回路と、
前記磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると前記分圧回路に前記発振信号を分圧させ、前記磁界検出素子のインピーダンスの変化量が前記所定の閾値未満になると前記分圧回路に前記発振信号を分圧させないスイッチング素子とを有する、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記発振制御回路は、前記磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると前記発振回路から一定量の電流を前記発振コイル以外の所定の回路へ流すことで前記発振信号の振幅を低下させ、前記磁界検出素子のインピーダンスの変化量が前記所定の閾値未満になると前記発振回路から前記所定の回路への電流の流出を停止することで前記発振信号の振幅の低下を抑制する、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記発振回路は、前記発振コイルに電流を供給する発振回路本体をさらに有し、
前記磁界検出素子は、前記検知対象物と前記発振コイル間の相互作用による磁界の強さが低下するほどインピーダンスが増加し、かつ、前記発振コイルと前記発振回路本体との間に接続される、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記発振回路は、前記発振コイルに電流を供給する発振回路本体をさらに有し、
前記磁界検出素子は、前記検知対象物と前記発振コイル間の相互作用による磁界の強さが低下するほどインピーダンスが低下し、かつ、前記発振回路本体に対して前記発振コイルと並列に接続される、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項6】
磁気インピーダンス素子により形成される発振コイルを有し、金属により形成された検知対象物が前記発振コイルに近付くにつれて、前記磁気インピーダンス素子によるインピーダンスの変化量及び前記検知対象物と前記発振コイル間の相互作用による磁界の強さの変化量に応じて減衰する振幅を持つ発振信号を出力する発振回路と、
前記発振回路からの前記発振信号の振幅に応じた信号値と所定の閾値とを比較することで、前記検知対象物を検知したか否かを判定する判定回路と、
を有する近接センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
金属により形成された検知対象となる物体(以下、単に検知対象物と呼ぶ)の接近を検知するために、発振コイルを含む発振回路を用いる近接センサが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された技術では、検知対象物が発振コイルの漏洩磁場から離れているときには発振回路が発振し、一方、発振コイルの漏洩磁場に接近することで、発振コイルのコンダクタンスが増大して発振回路の発振条件が成立しなくなり、発振回路が発振停止状態となる。これにより、検知対象物が検知される。
【0003】
また、近接センサを高感度化するために、磁気インピーダンス素子を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載された技術では、励磁コイルの内側に磁気インピーダンス素子が配置され、この磁気インピーダンス素子により、金属体からの渦電流磁束が検出される。また、励磁磁束に対して90度位相が遅れた渦電流磁束が発生するように、発振周波数が設定され、タイミング制御回路は、励磁用発振回路からの励磁電流がゼロとなる時点を中心とする所定期間にサンプリングパルスを生成する。そしてサンプリングパルスの出力期間における磁気インピーダンス素子からの出力が積分され、その積分結果が差動増幅回路において累積された後、コンパレータにおいて所定のしきい値と比較される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-25218号公報
【文献】特開2003-273718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、近接センサを高感度化するためには近接センサの構造が複雑となり過ぎるために、検知対象物を検知可能な距離(以下、単に検知可能距離と呼ぶ)を十分に取れないことがある。さらに、金属自身の磁力は非常に微弱であるため、特許文献2に記載された技術では、磁気インピーダンス素子からの出力信号における信号対雑音比が良好でない。そのため、この技術でも、検知可能距離を十分に取れないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、金属により形成された検知対象物を検知可能な距離を大きくすることが可能な近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、近接センサが提供される。この近接センサは、発振コイルを有し、金属により形成される検知対象物が発振コイルに近付くにつれて減衰する振幅を持つ発振信号を出力する発振回路と、検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さの変化に応じてインピーダンスが変化する磁界検出素子を有し、磁界検出素子のインピーダンスの変化量に応じて発振信号の振幅を低下させる発振制御回路と、発振制御回路から出力される発振信号の振幅に応じた信号値と所定の閾値とを比較することで、検知対象物を検知したか否かを判定する判定回路とを有する。
係る構成を有することにより、この近接センサは、金属により形成された検知対象物を検知可能な距離を大きくすることができる。また、発振コイルと磁界検出素子とを別個に設けることにより、この近接センサは、発振コイルと磁界検出素子とが並ぶ方向における、検知対象物を検知可能な距離を、その他の方向における検知対象物を検知可能な距離よりも大きくすること、すなわち、検知方向に関して指向性を持たせることができる。
【0008】
この近接センサにおいて、発振制御回路は、発振回路と判定回路の間に接続され、発振信号を分圧することで発振信号の振幅を低下させることが可能な分圧回路と、磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると分圧回路に発振信号を分圧させ、磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値未満になると分圧回路に発振信号を分圧させないスイッチング素子とを有することが好ましい。
これにより、この近接センサは、所定の閾値を近接センサの用途に応じて予め設定することで、磁界検出素子により発振信号の振幅が低下する検知対象物と発振コイル間の距離を設定できるので、検知対象物を検知可能な距離を適切に設定することができる。
【0009】
あるいは、この近接センサにおいて、発振制御回路は、磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると発振回路から一定量の電流を発振コイル以外の所定の回路へ流すことで発振信号の振幅を低下させ、磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値未満になると発振回路から所定の回路への電流の流出を停止することで発振信号の振幅の低下を抑制することが好ましい。
これにより、この近接センサは、所定の閾値を近接センサの用途に応じて予め設定することで、磁界検出素子により発振信号の振幅が低下する検知対象物と発振コイル間の距離を設定できるので、検知対象物を検知可能な距離を適切に設定することができる。
【0010】
あるいはまた、この近接センサにおいて、発振回路は、発振コイルに電流を供給する発振回路本体をさらに有し、磁界検出素子は、検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さが低下するほどインピーダンスが増加し、かつ、発振コイルと発振回路本体との間に接続されることが好ましい。
これにより、この近接センサは、簡単な回路構成で検知対象物を検知可能な距離を大きくすることができる。
【0011】
あるいはまた、この近接センサにおいて、発振回路は、発振コイルに電流を供給する発振回路本体をさらに有し、磁界検出素子は、検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さが低下するほどインピーダンスが低下し、かつ、発振回路本体に対して発振コイルと並列に接続されることが好ましい。
これにより、この近接センサは、簡単な回路構成で検知対象物を検知可能な距離を大きくすることができる。
【0012】
本発明の他の形態として、近接センサが提供される。この近接センサは、磁気インピーダンス素子により形成される発振コイルを有し、金属により形成された検知対象物が発振コイルに近付くにつれて、磁気インピーダンス素子によるインピーダンスの変化量及び検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さの変化量に応じて減衰する振幅を持つ発振信号を出力する発振回路と、発振回路からの発振信号の振幅に応じた信号値と所定の閾値とを比較することで、検知対象物を検知したか否かを判定する判定回路とを有する。
係る構成を有することにより、この近接センサは、金属により形成された検知対象物を検知可能な距離を大きくすることができる。また、発振コイル自体が磁気インピーダンス素子により形成されることにより、この近接センサは、小型化できるとともに、検知方向に関する指向性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一つの実施形態による近接センサの回路構成図である。
図2】検知対象物と近接センサ間の距離の変化に応じた、近接センサが有する発振回路からの発振信号の波形及び発振制御回路を経由した発振信号の波形の変化の一例を示す図である。
図3】近接センサの外観斜視図である。
図4】近接センサの分解斜視図である。
図5】近接センサの回路基板の側面図である。
図6】(a)は、近接センサを有する遊技機における、近接センサの配置の一例を示す、遊技球の流路の外観斜視図である。(b)は、(a)において矢印A、A’ 側から見た線における、流路の断面図である。
図7】変形例による、近接センサの回路構成図である。
図8】他の変形例による、近接センサの回路構成図である。
図9】さらに他の変形例による、近接センサの回路構成図である。
図10図9に示される変形例における、発振回路及び検知対象物の等価回路図である。
図11図9に示される変形例における、近接センサの外観斜視図である。
図12図9に示される変形例における、近接センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一つの実施形態による近接センサを、図を参照しつつ説明する。この近接センサは、発振コイルを有する発振回路から出力される発振信号の振幅に応じた信号値と閾値とを比較することで、検知対象物の有無を判定する。この近接センサは、検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さに応じてインピーダンスが変化する磁界検出素子をさらに有する。そしてこの近接センサは、検知対象物の接近により、磁界検出素子のインピーダンスが所定の閾値以上になると、発振回路から出力される発振信号の振幅を抑制することで、発振信号の振幅に応じた信号値が閾値以下となる、発振コイルと検知対象物間の距離、すなわち、検知可能距離を大きくする。
【0015】
図1は、本発明の一つの実施形態による近接センサの回路構成図である。近接センサ1は、発振回路10と、発振制御回路20と、判定回路30とを有する。
【0016】
発振回路10は、発振コイル11と共振コンデンサ12とで構成されるLC回路を用いた帰還型発振回路であり、例えば、ハートレー発振回路またはコルピッツ発振回路とすることができる。そのために、発振回路10は、発振コイル11と、発振コイル11と並列に接続される共振コンデンサ12と、発振コイル11及び共振コンデンサ12に電流を供給する発振回路本体13とを有する。そして発振回路10は、発振信号を発振制御回路20へ出力する。
【0017】
ここで、発振コイル11に検知対象物100が接近するにつれて、検知対象物100に生じる渦電流による損失が増大するので、発振コイル11近傍の磁界の強度が低下する。その結果として、発振回路10の発振条件が変動する。したがって、発振回路10から出力される発振信号の振幅は、検知対象物100が発振コイル11に近付くにつれて減衰する。このことから、近接センサ1は、発振回路10から出力される発振信号の振幅の変化に基づいて、検知対象物100の有無を判定することができる。
【0018】
発振制御回路20は、磁界検出素子21を有し、磁界検出素子21が検知した、検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さに応じて、発振回路10からの発振信号の振幅を制御する。本実施形態では、発振制御回路20は、磁界検出素子21のインピーダンスが所定値以上になると発振回路10からの発振信号の振幅を低下させる。そのために、発振制御回路20は、二つの抵抗のうちの一つを磁界検出素子21とする分圧回路22と、分圧回路22からの出力電圧にてオン/オフが切り替えられるスイッチング素子23と、スイッチング素子23と発振回路10の出力端子との間に接続される分圧回路24とを有する。
【0019】
磁界検出素子21は、発振コイル11と検知対象物100の相互作用による磁界の強度の変化に応じてインピーダンスが変化する素子である。本実施形態では、磁界検出素子21は、発振コイル11と検知対象物100の相互作用による磁界の強度が減少するにつれてインピーダンスが増加する素子であり、例えば、アモルファス合金ワイヤまたは磁性体薄膜を用いて構成される磁気インピーダンス素子とすることができる。そして磁界検出素子21は、発振コイル11と検知対象物100との相互作用による磁界の強度変化を検知できるよう、例えば、発振コイル11に対する検知対象物100の想定される最接近位置と発振コイル11との間に配置される。なお、発振コイル11と磁界検出素子21の配置の詳細については後述する。
【0020】
本実施形態では、発振コイル11に検知対象物100が接近することで検知対象物100に生じる渦電流による損失に応じて発振コイル11近傍の磁界の強度が低下するにつれて、磁界検出素子21のインピーダンスは増加する。そして詳細は後述するが、検知対象物100が発振コイル11近傍の磁界に作用しないときの磁界検出素子21のインピーダンス(以下、基準インピーダンスと呼ぶ)に対する、磁界検出素子21のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると、発振制御回路20は、発振回路10から出力された発振信号の振幅を抑制する。
【0021】
なお、磁界検出素子21は、磁気インピーダンス素子の代わりに、磁気抵抗素子またはコイルを有してもよい。この場合も、磁界検出素子21は、発振コイル11と検知対象物100の相互作用による、発振コイル11近傍の磁界の強度が減少するにつれてインピーダンスが増加するように構成されればよい。
【0022】
分圧回路22は、電圧源Vccに一端が接続され、他端が磁界検出素子21と接続される抵抗R0と、磁界検出素子21とにより構成される。分圧回路22において、磁界検出素子21の一端は抵抗R0の他端と接続され、磁界検出素子21の他端は接地される。そして、抵抗R0の他端と磁界検出素子21の一端との間から、電圧源Vccから供給される電圧Vが、抵抗R0のインピーダンスと磁界検出素子21のインピーダンスの和に対する、磁界検出素子21のインピーダンスの比にて分圧することで得られる電圧が出力される。したがって、磁界検出素子21のインピーダンスが高くなるほど、すなわち、発振コイル11近傍の磁界の強度が低下するほど、分圧回路22から出力される電圧は高くなる。また、抵抗R0のインピーダンス、すなわち、スイッチング素子23がオンとなる、磁界検出素子21のインピーダンスの基準インピーダンスからの変化量を近接センサ1の用途に応じて予め設定することで、磁界検出素子21により発振回路10からの発振信号の振幅が低下する、検知対象物100と発振コイル11間の距離を適切に設定できるので、近接センサ1は、検知対象物100を検知可能な距離を適切に設定することができる。
なお、抵抗R0は、インピーダンスを調整可能な可変抵抗であってもよい。この場合には、近接センサ1は、抵抗R0のインピーダンスを調整することで、スイッチング素子23がオンとなる磁界検出素子21のインピーダンス、すなわち、基準インピーダンスからのインピーダンスの変化量に対する閾値を変更することができる。すなわち、近接センサ1の検知可能距離を調節することができる。
【0023】
スイッチング素子23は、例えば、npn型のトランジスタであり、ベース端子が分圧回路22と接続され、コレクタ端子が分圧回路24と接続され、エミッタ端子が接地される。そしてスイッチング素子23のオン/オフは、分圧回路22から出力される電圧に応じて切り替えられる。なお、スイッチング素子23は、nチャネル型のMOSFETであってもよい。この場合には、ゲート端子が分圧回路22と接続され、ドレイン端子が分圧回路24と接続され、ソース端子が接地されればよい。
【0024】
本実施形態では、上記のように、磁界検出素子21のインピーダンスが高くなるほど分圧回路22から出力される電圧は高くなり、磁界検出素子21のインピーダンスが所定の閾値以上となると、スイッチング素子23はオンとなる。この場合、発振回路10から出力され、発振制御回路20に入力された発振信号は、分圧回路24により分圧されてから判定回路30へ出力される。一方、磁界検出素子21のインピーダンスが所定の閾値よりも低い場合には、スイッチング素子23はオフとなる。この場合には、発振回路10から出力され、発振制御回路20に入力された発振信号は、分圧回路24により分圧されずに判定回路30へそのまま出力される。
【0025】
分圧回路24は、発振回路10の出力端子とスイッチング素子23との間に直列に接続される二つの抵抗R1、R2により構成される。抵抗R1の一端は発振回路10の出力端子と接続され、他端は抵抗R2の一端と接続される。また、抵抗R2の他端はスイッチング素子23と接続される。そして抵抗R1の他端と抵抗R2の一端との間から、入力された振幅に応じた振幅を持つ発振信号が出力される。そのため、スイッチング素子23がオンになると、分圧回路24から出力される発振信号の振幅は、発振回路10から出力された発振信号の振幅を、分圧回路24の抵抗R1のインピーダンスと抵抗R2のインピーダンスの和に対する、抵抗R2のインピーダンスの比にて分圧して得られたものに減衰される。一方、スイッチング素子23がオフである場合には、抵抗R2の方へ電流が流れず、発振回路10から出力された発振信号は、分圧回路24により分圧されない。そのため、この場合には、発振回路10からの発振信号の振幅は低下せず、その発振信号が分圧回路24からそのまま出力される。
【0026】
なお、磁界検出素子21は、検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さが減少するにつれて、インピーダンスも低下するように構成されてもよい。この場合には、分圧回路22において、抵抗R0よりも電圧源側に磁界検出素子21が接続されればよい。この場合、磁界検出素子21のインピーダンスが低下するほど、分圧回路22からの出力電圧は増加する。そして、基準インピーダンスからの磁界検出素子21のインピーダンスの低下量が所定の閾値以上になるとスイッチング素子23がオンとなり、上記と同様に、発振回路10からの発振信号の振幅が抑制される。
【0027】
判定回路30は、発振信号の振幅に応じた電圧を持つ信号値と所定の閾値電圧とを比較することで、検知対象物100を検知したか否かを判定する。そのために、判定回路30は、例えば、発振制御回路20側から順に直列に接続される検波回路31と、弁別回路32と、出力回路33とを有する。
【0028】
検波回路31は、例えば、発振制御回路20を介して入力される発振信号を包絡線検波するための回路を有する。なお、検波回路31は、入力される発振信号を整流する全波整流回路または半波整流回路と、整流された発振信号を平滑化する平滑回路を有してもよい。そして検波回路31は、発振制御回路20を介して入力される発振信号の振幅が大きいほど、大きな電圧を持つ信号を出力する。
【0029】
弁別回路32は、検波回路31から出力された信号と所定の閾値電圧とを比較し、その比較結果に応じた電圧を持つ信号を出力する。そのために、弁別回路32は、例えば、コンパレータを有し、コンパレータの二つの入力端子の一方に、検波回路31から出力された信号が入力され、その二つの入力端子の他方に閾値電圧が入力されることで、コンパレータの出力端子から、検波回路31から出力された信号の電圧と所定の閾値電圧との比較結果に応じた電圧を持つ信号が出力される。なお、弁別回路32は、検波回路31から出力された信号の電圧と所定の閾値電圧とを比較するための他の構成の回路を有していてもよい。
【0030】
出力回路33は、弁別回路32から出力された信号を他の回路、例えば、近接センサ1が実装される装置の主制御回路へ出力するためのインターフェース回路を有する。そして出力回路33は、弁別回路32から出力された信号、すなわち、近接センサ1による、検知対象物100の検知結果を表す検知信号を出力する。
【0031】
図2は、検知対象物100と近接センサ1間の距離の変化に応じた、発振回路10からの発振信号の波形及び発振制御回路20を経由した発振信号の波形の変化の一例を示す図である。図2において、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。そして波形201は、発振回路10からの発振信号の波形を表し、波形202は、発振制御回路20から出力される発振信号の波形を表す。また、波形203は、検波回路31から出力される信号の波形を表し、波形204は、比較例として、発振回路10からの発振信号が検波回路31により直接検波された場合の信号の波形を表す。さらに、波形205は、出力回路33から出力される検知信号の波形を表す。なお、検知信号の電圧がV1である場合、検知対象物100が検知されたことを表し、一方、検知信号の電圧がV0である場合、検知対象物100が検知されていないことを表す。
【0032】
図2において、期間P1では、検知対象物100が発振コイル11に対して徐々に接近し、期間P2では、発振制御回路20が発振回路10から出力される発振信号の振幅を低下させなくても検知可能なほど検知対象物100が発振コイル11に接近した位置に存在し、期間P3では、検知対象物100が発振コイル11から徐々に遠ざかるものとする。波形201に示されるように、発振回路10からの発振信号の振幅は、検知対象物100が発振コイル11に近付くにつれて徐々に小さくなる。そして期間P2のように、検知対象物100が発振コイル11にある程度以上近付くと、発振回路10は発振しなくなる。また、発振回路10からの発振信号の振幅は、検知対象物100が発振コイル11から遠ざかるにつれて徐々に大きくなる。さらに、波形202に示されるように、時刻t1において、基準インピーダンスに対する磁界検出素子21のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上となるほど検知対象物100が発振コイル11に近付くと、発振制御回路20のスイッチング素子23がオンとなり、発振回路10からの発振信号の振幅と比較して、発振制御回路20からの出力信号の振幅はより小さくなる。その状態は、時刻t2において、磁界検出素子21のインピーダンスの変化量が所定の閾値よりも小さくなるほど検知対象物100が発振コイル11から離れるまで継続する。したがって、波形203~波形205に示されるように、検波回路31から出力された信号の電圧が弁別回路32で使用される閾値電圧Vsh以下となる期間が、発振回路10からの発振信号が直接検波された場合の信号の電圧が閾値電圧Vsh以下となる期間よりも長くなる。すなわち、近接センサ1に磁界検出素子21及び発振制御回路20が設けられることで、近接センサ1の検知可能距離が長くなることが分かる。
【0033】
図3は、近接センサ1の外観斜視図であり、図4は、近接センサ1の分解斜視図である。そして図5は、近接センサ1が有する回路基板の側面図である。図3図5に示されるように、近接センサ1は、ケース101と、カバー102と、図1に示される各回路が設けられる回路基板103と、フェライト材で形成されるフェライトコア104とを有する。なお、フェライトコア104は省略されてもよい。
【0034】
回路基板103の一端側には、発振コイル11及び磁界検出素子21を構成するアモルファスワイヤを巻き付けるために円筒状のコア部103aが設けられ、その円筒状のコア部103aにフェライトコア104が挿入される。したがって、発振コイル11及び磁界検出素子21の何れも、フェライトコア104の周囲に巻き付けられる。また、回路基板103の一方の面上に、発振回路10の本体13、発振制御回路20及び判定回路30等が設けられる。ケース101とカバー102とは、それらが組み立てられた状態で回路基板103及びフェライトコア104をその内部に収容する近接センサ1の筐体を構成する。
【0035】
磁界検出素子21は、検知対象物100が発振コイル11に最接近する際の想定位置と発振コイル11との間に配置される。図5に示される例では、検知対象物100が発振コイル11に最接近する際の想定位置は、回路基板103の表面103bの上方に位置している。そのため、発振コイル11及び磁界検出素子21は、回路基板103の表面103bに対する法線方向、すなわち、コア部103aの軸方向に沿って並べて配置されており、かつ、発振コイル11よりも磁界検出素子21の方が回路基板103の表面103bから離れた位置に設けられる。これにより、回路基板103の表面103bの法線方向、かつ、表面103bの上方において、磁界検出素子21は、検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さの変化を検知可能となる。したがって、回路基板103の表面103bの法線方向、かつ、表面103bの上方における近接センサ1の検知可能距離は、他の方向における近接センサ1の検知可能距離よりも大きくなる。このように、近接センサ1は、検知方向に関して指向性を持たせることができる。
【0036】
本実施形態による近接センサ1は、様々な装置に実装することが可能である。特に、近接センサ1は、特定の方向に存在する検知対象物を検知し、それ以外の方向において磁界の変動を生じさせる物体または機構などが存在するような装置において好適に利用される。例えば、近接センサ1は、遊技機に実装され、遊技機内に設けられる流路を通過する遊技球を検知するために用いられてもよい。
【0037】
図6(a)は、近接センサを有する遊技機における、近接センサの配置の一例を示す、遊技球の流路の外観斜視図である。この例において、遊技球は、検知対象物の一例である。図6(b)は、図6(a)において矢印A、A’側から見た線における、流路の断面図である。図6(a)及び図6(b)に示される例では、遊技機に二つの流路601、602が、それらの一部において互いに隣接するように設けられている。そして、上記の実施形態による二つの近接センサ1-1、1-2が、それぞれ、流路601と流路602とが隣接する部分において、流路601と流路602の間に配置されている。
【0038】
近接センサ1-1は、流路601内を流下する遊技球611を検知できるように、近接センサ1-1の検知範囲621が流路601へ指向するように設置される。すなわち、流路601に近い方から順に、磁界検出素子21、発振コイル11の順に並ぶように、近接センサ1-1は配置される。したがって、近接センサ1-1の検知範囲621は、流路601と重なる一方、流路602とは重ならない。したがって、近接センサ1-1は、流路601内を流下する遊技球611が検知範囲621内に進入すると、遊技球611を検知し、一方、流路602内を流下する遊技球612を検知しない。
【0039】
同様に、近接センサ1-2は、流路602内を流下する遊技球612を検知できるように、近接センサ1-2の検知範囲622が流路602へ指向するように設置される。すなわち、流路602に近い方から順に、磁界検出素子21、発振コイル11の順に並ぶように、近接センサ1-2は配置される。したがって、近接センサ1-2の検知範囲622は、流路602と重なる一方、流路601とは重ならない。したがって、近接センサ1-2は、流路602内を流下する遊技球612が検知範囲622内に進入すると、遊技球612を検知し、一方、流路601内を流下する遊技球611を検知しない。このように、近接センサ1-1、1-2は、指向性を有するため、検知対象以外の流路を流下する遊技球を誤検知することなく、検知対象となる流路を流下する遊技球を検知することができる。
なお、近接センサを挟んで流路と反対側に、磁界の変動を生じさせる機構が存在する場合においても、流路側から順に磁界検出素子21、発振コイル11の順に並ぶように近接センサ1を設置することで、近接センサ1は、そのような機構の動作により遊技球を誤検知することなく、流路を流下する遊技球を精度良く検知することができる。
【0040】
以上に説明してきたように、この近接センサは、検知対象物が発振コイルに近付くにつれて減衰する振幅を持つ発振信号を出力する発振回路と別個に、検知対象物と発振コイル間の相互作用による磁界の強さに応じてインピーダンスが変化する磁界検出素子を有する。そしてこの近接センサは、検知対象物の接近により、基準インピーダンスに対する磁界検出素子のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上になると、発振回路から出力される発振信号の振幅を抑制する。これにより、この近接センサは、発振信号の振幅に応じた信号値が閾値以下となる、発振コイルと検知対象物間の距離、すなわち、検知可能距離を大きくすることができる。また、この近接センサは、信号対雑音比が比較的良好な発振回路からの発振信号に基づいて検知対象物の有無を判定するので、検知可能距離を大きくしても、検知対象物を精度良く検知できる。さらに、この近接センサは、発振コイルと磁界検出素子の並び方向によって検知方向に指向性を持たせることができる。
【0041】
変形例によれば、近接センサの発振制御回路は、分圧回路24の代わりに、定電流源を有してもよい。
【0042】
図7は、変形例による、近接センサ2の回路構成図である。この変形例による近接センサ2は、発振回路10と、発振制御回路40と、判定回路30とを有する。この変形例による近接センサ2は、図1に示される近接センサ1と比較して、発振制御回路40が、発振回路10とスイッチング素子23との間に接続される定電流源25を、分圧回路24の代わりに有する点、及び、発振回路10から出力される発振信号が判定回路30に直接入力される点で相違する。そこで以下では、この相違点及び関連部分について説明する。近接センサ2の他の構成要素の詳細については、近接センサ1の対応する構成要素の説明を参照されたい。
【0043】
定電流源25は、発振回路10とスイッチング素子23との間に接続され、スイッチング素子23がオンになると、発振回路10からグラウンドへ一定の電流を流すように構成される回路である。なお、グラウンドは、発振コイル11以外の所定の回路の一例である。なお、定電流源25は、スイッチング素子23を介して、発振コイル11と異なる他の回路(図示せず)と接続されてもよい。すなわち、検知対象物100の発振コイル11への接近に伴う、基準インピーダンスに対する磁界検出素子21のインピーダンスの変化量が所定の閾値以上となると、スイッチング素子23がオンになる。そしてスイッチング素子23がオンになると、定電流源25を介して発振回路10から一定の電流が流出する。その結果、発振回路10から出力される発振信号の振幅は小さくなる。一方、磁界検出素子21のインピーダンスの変化量が所定の閾値よりも小さい場合には、スイッチング素子23はオフのままとなり、発振回路10からの電流の流出は停止される。そのため、発振回路10から出力される発振信号の振幅は低下せずに、その発振信号は判定回路30へ出力される。したがって、この変形例による近接センサ2も、上記の実施形態による近接センサ1と同様の効果を奏する。
【0044】
他の変形例によれば、発振制御回路は、発振回路10の発振コイル11及び共振コンデンサ12と、発振回路本体13との間に接続されてもよい。
【0045】
図8は、他の変形例による、近接センサ3の回路構成図である。この変形例による近接センサ3は、発振回路10と、発振制御回路50と、判定回路30とを有する。この変形例による近接センサ3は、図1に示される近接センサ1と比較して、発振制御回路50の接続位置及び構成、及び、発振回路10から出力される発振信号が判定回路30に直接入力される点で相違する。そこで以下では、この相違点及び関連部分について説明する。近接センサ3の他の構成要素の詳細については、近接センサ1の対応する構成要素の説明を参照されたい。
【0046】
発振制御回路50は、発振回路10の発振コイル11及び共振コンデンサ12と、発振回路本体13との間において、互いに並列に接続される磁界検出素子21及び抵抗R0を有する。なお、抵抗R0は、検知可能距離を調整するための可変抵抗であってもよい。そして発振回路本体13からの電流は、発振制御回路50を介して発振コイル11及び共振コンデンサ12へ供給される。したがって、検知対象物100が発振コイル11へ接近して検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さが減少するにつれて、磁界検出素子21のインピーダンスが大きくなり、その結果として発振コイル11及び共振コンデンサ12へ供給される電流の量が、発振制御回路50が無い場合よりも減少する。したがって、発振回路10から出力される発振信号の振幅も、発振制御回路50が無い場合より低下する。一方、検知対象物100が発振コイル11から遠ざかるにつれて、磁界検出素子21のインピーダンスが低下するので、発振コイル11及び共振コンデンサ12へ供給される電流の量が増加する。したがって、発振回路10から出力される発振信号の振幅も大きくなる。したがって、この変形例による近接センサ3も、上記の実施形態による近接センサ1と同様の効果を奏する。また、この変形例による近接センサ3は、発振制御回路50の構成を簡単化できるので、近接センサ3自体の構成も簡単化できる。
【0047】
磁界検出素子21は、検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さが減少するにつれて、インピーダンスが低下するように構成されてもよい。この場合には、発振回路13本体に対して、発振制御回路50が有する磁界検出素子21が発振コイル11と並列に接続されればよい。このように磁界検出素子21が接続されることで、検知対象物100が発振コイル11に接近するにつれて、検知対象物100と発振コイル11との相互作用による磁界の強さが減少し、発振回路本体13から磁界検出素子21へ流れる電流が増加する。そのため、発振コイル11及び共振コンデンサ12に供給される電流の量が減少して、発振回路10から出力される発振信号の振幅が、発振制御回路50が無い場合における発振信号の振幅よりも低下する。したがって、この場合も、近接センサ3は、上記の実施形態による近接センサ1と同様の効果を奏する。
【0048】
これらの変形例による近接センサも、図4に示される回路基板103に実装され、かつ、図3及び図4に示されるケース101及びカバー102内に収容されてもよい。また、これらの変形例による近接センサも、図6(a)及び図6(b)に示されるように、遊技機において流路を流下する遊技球を検知するために使用することができる。
【0049】
さらに他の変形例によれば、発振コイル自体が磁気インピーダンス素子により形成されてもよい。
【0050】
図9は、さらに他の変形例による、近接センサ4の回路構成図である。また、図10は、発振回路10及び検知対象物100の等価回路図である。この変形例による近接センサ4は、発振回路10と、判定回路30とを有する。この変形例による近接センサ4は、図1に示される近接センサ1と比較して、発振制御回路20を有さない代わりに、発振回路10が有する発振コイル14が磁気インピーダンス素子により形成される点で相違する。そこで以下では、この相違点及び関連部分について説明する。近接センサ4の他の構成要素の詳細については、近接センサ1の対応する構成要素の説明を参照されたい。
【0051】
発振コイル14は、アモルファスワイヤといった磁気インピーダンス素子により形成される。この場合、検知対象物100が発振コイル14による磁界と相互作用する場合における、発振コイル14のインピーダンスZは、次式で表される。
【数1】
ここで、r1は、発振コイル14自身の固有の抵抗値であり、Δr1は、検知対象物100と発振コイル14の相互作用による磁界の強さの変化に応じた、発振コイル14を形成する磁気インピーダンス素子の抵抗値成分の変化量を表す。また、r2は、検知対象物100の抵抗値を表す。さらに、L1は、発振コイル14自身のインダクタンスを表し、ΔL1は、検知対象物100と発振コイル14の相互作用による磁界の強さの変化に応じた、発振コイル14を形成する磁気インピーダンス素子のインダクタンス成分の変化量を表す。さらに、L2は、検知対象物100のインダクタンスを表す。さらにまた、Mは、発振コイル14と検知対象物100の相互インダクタンスを表す。そしてωは、発振回路10の発振信号の角周波数であり、発振回路10の発振周波数をfとすれば、角周波数ω=2πfである。
【0052】
(1)式から明らかなように、検知対象物100が発振コイル14に近付くにつれて、検知対象物100における渦電流損による相互インダクタンスMの増加だけでなく、発振コイル14を形成する磁気インピーダンス素子の抵抗値成分の変化量Δr1が増加することにより、発振コイル14のインピーダンスZは増加する。そしてインピーダンスZの増加に応じて、発振回路10から出力される発振信号の振幅は減衰する。そのため、検知対象物100が発振コイル14に近付くにつれて、発振回路10から出力される発振信号の振幅は、発振コイル14が磁気インピーダンス素子で形成されない場合における発振信号の振幅よりも低下する。そのため、上記の実施形態及び各変形例と同様に、この変形例による近接センサ4は、検知可能距離を大きくすることができる。また、近接センサ4は、上記の実施形態または各変形例と同様に、信号対雑音比が比較的良好な発振回路からの発振信号に基づいて検知対象物100の有無を判定するので、検知可能距離を大きくしても、検知対象物100を精度良く検知できる。さらに、上記の実施形態及び各変形例と異なり、近接センサ4では、発振コイル自身が磁気インピーダンス素子で形成されるため、検知方向が指向性を有することを抑制できる。さらにまた、発振コイル自身が磁気インピーダンス素子で形成されるため、近接センサ4の回路構成を簡単化することができ、その結果として、近接センサ4を小型化することができる。
【0053】
図11は、近接センサ4の外観斜視図であり、図12は、近接センサ4の分解斜視図である。図11及び図12に示されるように、近接センサ4は、ケース201と、カバー202と、図9に示される各回路が設けられる回路基板203とを有する。
【0054】
回路基板203の一端側には、発振コイル14を形成するアモルファスワイヤを巻き付けるために、回路基板203の表面203aの法線方向に沿って突起する円柱状のスプール203bが設けられる。なお、スプール203bは、フェライト材で形成されてもよい。また、回路基板203の一方の面上に、発振回路10の本体及び判定回路30が設けられる。ケース201とカバー202とは、それらが組み立てられた状態で回路基板203をその内部に収容する近接センサ4の筐体を構成する。
【0055】
上記のように、発振コイル14自身が磁気インピーダンス素子により形成されるので、近接センサ4の検知方向の指向性が抑制される。そのため、近接センサ4は、発振コイル14の巻き軸の何れ側から、すなわち、回路基板203の表面側あるいは裏面側の何れから接近する検知対象物も検知することができる。したがって、近接センサ4は、例えば、回路基板203の表面側だけでなく、裏面側の何れにも検知対象物が接近する可能性があるような装置において好適に利用される。例えば、図6(a)及び図6(b)に示される遊技機の二つの流路の何れを流下する遊技球も区別せずに検知されればよい場合には、二つの近接センサ1-1、1-2の代わりに、一つの近接センサ4が用いられてもよい。
なお、近接センサ4も、上記の実施形態または各変形例による近接センサと同様に、図3及び図4に示される筐体及び回路基板に実装されてもよい。
【0056】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1-1、1-2、2、3、4 近接センサ
10 発振回路
11、14 発振コイル
12 共振コンデンサ
13 発振回路本体
20、40、50 発振制御回路
21 磁界検出素子
22、24 分圧回路
23 スイッチング素子
25 定電流源
30 判定回路
31 検波回路
32 弁別回路
33 出力回路
100 検知対象物
101、201 ケース
102、202 カバー
103、203 回路基板
104 フェライトコア
601、602 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12