(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両用被塗装部品
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B60R19/52 K
(21)【出願番号】P 2020001183
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高島 愼也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 良道
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256150(JP,A)
【文献】実開平04-135859(JP,U)
【文献】実開昭56-083526(JP,U)
【文献】特開2012-101404(JP,A)
【文献】特開2012-236574(JP,A)
【文献】米国特許第06612595(US,B1)
【文献】実開平05-020914(JP,U)
【文献】特許第6336884(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外殻部材に取り付けられる被塗装部品において、
少なくとも一つのルーバを備えており、
前記ルーバの
上面と下面のうち前記上面が、前記外殻部材の表面側に円滑面を有すると共に、前記表面側とは反対側の裏面側に前記円滑面から連続する微細凹凸面を有している、ことを特徴とする被塗装部品。
【請求項2】
前記被塗装部品が合成樹脂の射出成形品であり、前記微細凹凸面に形成される微細凹凸が前記表面側から前記裏面側に延在する多数の平行な微細溝を有する平目ローレット様の微細凹凸である、ことを特徴とする請求項1に記載の被塗装部品。
【請求項3】
前記被塗装部品が合成樹脂の射出成形品であり、前記円滑面と前記微細凹凸面との境界線上に射出成形金型の分割線が位置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被塗装部品。
【請求項4】
前記円滑面が、その表面に噴霧塗装によって形成された塗膜を有しており、前記塗膜によって前記合成樹脂の表面が完全に被覆されている、ことを特徴とする請求項3に記載の被塗装部品。
【請求項5】
前記被塗装部品がフロントグリルであり、その前記裏面側において、前記ルーバとの隣接領域に開口が形成されている、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の被塗装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧塗装によって塗装された後に車両の外殻部材に取り付けられる被塗装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、噴霧塗装によって塗装された後に車両の外殻部材に取り付けられる被塗装部品であるフロントグリルを開示している。フロントグリルは、車両の前部に取り付けられ、エンジンルーム内に走行風を取り入れる。取り入れられた走行風によって、ラジエータやエアコンのコンデンサなどの空冷式熱交換器で熱交換が行われる。特許文献1に開示されたフロントグリルは、水平かつ平行なルーバを備えており、さらに、垂直なルーバも備えており、メッシュ状のフロントグリルである。フロントグリルは、合成樹脂を射出成形することで形成され、噴霧塗装によって塗装される。なお、フロントグリルは、金属によって形成されることもあり、その場合も噴霧塗装によって塗装され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
噴霧塗装時には、塗装吹付角度が浅くなると、ルーバの奥に位置する塗装面には塗料が十分に届かなかったり、塗装面への塗料の付着が弱くて十分な塗膜強度が得られなかったりする場合がある。ルーバの奥であるのであまり目は届かないが、車両の外殻部材に取り付けられる部品には、違和感のない外観を与えることが求められる。
【0005】
本発明の目的は、車両の外殻部材に取り付けられる部品として、違和感のない外観を与えることのできる、車両用被塗装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用被塗装部品は、車両の外殻部材に取り付けられるものである。被塗装部品は、少なくとも一つのルーバを備えている。ルーバの少なくとも一方の面は、外殻部材の表面側に円滑面を有すると共に、表面側とは反対側の裏面側に円滑面から連続する微細凹凸面を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用被塗装部品は、車両の外殻部材に取り付けられる部品として(塗装の掠れや薄れのような)違和感のない外観を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る被塗装部品(フロントグリル)の部分斜視図である。
【
図3】上記フロントグリルの円滑面と微細凹凸面との境界の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施形態に係る車両用被塗装部品について説明する。
図1に示されるように、本実施形態の被塗装部品は、フロントグリル1である。フロントグリル1は、合成樹脂の射出成形品である。フロントグリル1の下縁及び両側縁は、車両の外殻部材であるフロントバンパ(図示せず)に取り付けられる。なお、
図1には、フロントグリル1に取り付けられる、クロムメッキされたモール2やエンブレム3も示されている。モール2は、フロントグリル1の下縁及び両側縁を前方から覆うように、フロントグリル1に取り付けられている。また、フロントグリル1の上縁は、カバー4を介して、ラジエタコアサポート(図示せず)にも取り付けられる。
【0010】
フロントグリル1は、そのフレーム1aの内部に三つの水平なルーバ1bを有している。フレーム1aの上下の水平材もルーバ1bであると考えることができ得る。フレーム1aの内側のルーバ1b以外の部分には、前面から後面に貫通する空気流路が形成されている。即ち、フロントグリル1の後面側において、ルーバ1bとの隣接領域には開口10が形成されている。各ルーバ1bは、厚みがあり、その内部には空間が形成されている(
図5参照)。フレーム1aの上下の水平材を含む各ルーバ1bの間には、フロントグリル1の剛性を補強するためのステー1cも形成されている。
【0011】
各ルーバ1bには、主にデザインとして、厚さの厚い第一部分11と厚さの薄い第二部分12とが、その長さ方向に交互に形成されている。
図2に示されるように、フレーム1aの下方の水平材の上面及び各ルーバ1bの上面には、表面側に円滑面13を有すると共に、表面側とは反対側の裏面側に円滑面13から連続する微細凹凸面14が形成されている。円滑面13は、平面でもよいし、なだらかな曲面でもよい。なお、上述した第一部分11及び第二部分12が形成されているルーバ1bでは、微細凹凸面14は第一部分11(及び、第一部分11と第二部分12との間の推移部)にのみ形成されている。
【0012】
なお、本実施形態では、フレーム1aの下方の水平材の上面及び各ルーバ1bの上面にのみ微細凹凸面14が形成されており、下面には微細凹凸面14は形成されていない。しかし、下面にも微細凹凸面14が形成されてもよい。微細凹凸面14は、視覚的に円滑面13と区別し得る微細な凹凸が形成されている面であれば、その微細凹凸の形態は限定されない。しかし、本実施形態の微細凹凸面14に形成された微細凹凸は、
図3に示されるようなローレット様の微細凹凸である。
【0013】
ローレットとは、主として金属製の円柱や円筒の外周面上に滑り止め等のため形成された微細凹凸であり、英語ではナーリング[knurling]と表現される。ローレットは、微細凹凸が形成された駒を外周面に押圧して微細凹凸を転写することで形成されたり(転造方式)、外周面上に微細凹凸を切削加工することによって形成されたり(切削方式)する。射出成形樹脂部品であるフロントグリル1の微細凹凸面14では、「ローレット様」、即ち、上述した転造方式や切削方式によるローレットの微細凹凸と同様の形状を有する「ローレットのような」微細凹凸が射出成形時に形成される。
【0014】
本実施形態の射出成形樹脂部品であるフロントグリル1の微細凹凸面14の微細凹凸は、射出成形時に金型の内面に形成された微細凹凸によって形成される。本実施形態の微細凹凸面14は、表面側から裏面側に延在する多数の平行な微細溝を有する平目ローレット様の微細凹凸を有している。なお、ローレットとしては、平目ローレット以外にも、微細溝が交差する綾目ローレット等がある。本実施形態の微細凹凸面14の微細凹凸はローレット様の微細凹凸であるが、これに限定されず、シボによる微細凹凸等でもよい。
【0015】
平目ローレット様の微細凹凸における微細溝に対して垂直な断面図を
図4に示す。微細凹凸面14の各凸部の三角形断面の稜線が、円滑面13の表面と同じ高さにある。フロントグリル1は、上述したように射出成形樹脂部品であるが、その成形金型は上述した前方側と後方側とに開型される。そして、前方側金型と後方側金型との分割線は、円滑面13と微細凹凸面14との境界線上に配置されている。また、後方側金型の開型方向は、形成される平目ローレット様の微細溝の延在方向と一致する。このため、スライドコア式の金型を用いることなく、微細凹凸面14を形成することができる。
【0016】
さらに、金型の分割線は、成形品の表面上に転写されていわゆるパーティングラインを形成する。しかし、本実施形態では、パーティングラインは円滑面13と微細凹凸面14との境界線上に位置するため、フロントグリル1のルーバ1bの表面上にはパーティングラインは形成されず、外観が美麗になる。本実施形態の微細凹凸は(
図4参照)、上述した三角形の頂点の(稜線での)断面角度θが90度で、微細溝の溝幅D1が0.5~1.0mmである。即ち、微細凹凸とは、凹凸の繰り返し方向(本実施形態では微細溝の延設方向に対して垂直な方向)において10mm中に2~20の凸部(又は凹部)が含まれる凹凸のことである。
【0017】
図1及び
図2に示される被塗装部品としてのフロントグリル1は、既に塗装されている。フロントグリル1は、その前方側から噴霧塗装されており、塗装後に上述したモール2やエンブレム3が取り付けられている。この噴霧塗装によって、各ルーバ1bの円滑面13には塗膜が形成されており、この塗膜によって合成樹脂の表面は完全に被覆されている。即ち、少なくとも、円滑面13は均一に塗装されている。一方、微細凹凸面14は、ルーバ1bの奥に位置しており、前方側からの塗装吹付角度が浅くなる。このため、微細凹凸面14では、塗料が十分に届かなかったり、塗装面への塗料の付着が弱くて十分な塗膜強度が得られなかったりする場合がある。
【0018】
しかし、上述したように、微細凹凸面14は、その微細凹凸によって円滑面13とは視覚的に区別し得る外観を呈する。このため、微細凹凸面14がしっかりと噴霧塗装されなくても、円滑面13とは視覚的に区別されている微細凹凸面14は、(塗装の掠れや薄れによって)違和感を与えることを回避でき、ルーバ1b(フロントグリル1)に美麗な外観を与えることができる。
図5は、塗装吹付角度とルーバ1bとの関係を示す断面図である(第一部分11での断面)。塗装吹付角度とは、塗装面への塗料粒の入射角である。
図5中のαが塗装面上のA部に対する塗装吹付角度である(0<α≦90度)。噴霧塗装時に用いられるスプレーガンは移動しつつ塗装するが、塗装面に対して、図中Xの範囲では塗料吹付角度はαより大きくなり、図中Yの範囲では塗料吹付角度はαより小さくなる。
【0019】
スプレーガンの仕様等によって多少の変動はあるが、塗料吹付角度αが45度より浅くなると、塗装面が美麗な外観を呈さない可能性が生じることを発明者らは知見した。塗料吹付角度α<許容限界角度45度であると、塗料が十分に届かなかったり、塗装面への塗料の付着が弱くて十分な塗膜強度が得られなかったりする。このため、塗料吹付角度αの許容限界角度は45度とされている。塗料吹付角度α≧許容限界角度45度の条件が満たされる塗装面は、均一な塗膜が形成されるため違和感のない美麗な外観を呈することができる。
【0020】
ルーバ1bの前面側であれば、スプレーガンの向きを変えることで、容易に塗料吹付角度α≧許容限界角度45度の条件を成立させることができる。しかし、ルーバ1bの前面側については、
図5に示されるように隣接するルーバ1bによって阻まれるので、塗料吹付角度α≧許容限界角度45度の条件を成立させることができない範囲が生じ得る。このため、本実施形態では、
図5中においてα=45度の場合のA部に円滑面13と微細凹凸面14との境界が配置されている。即ち、A部よりも奥に位置する微細凹凸面14への塗料吹付角度は45度よりも浅くなる(
図5中の範囲Y参照)。しかし、上述したように、微細凹凸面14は、円滑面13とは視覚的に区別し得る外観を呈するので、たとえ均一な塗膜が形成されなくてもルーバ1bとして違和感を与えることを回避できる。
【0021】
図5中の塗料吹付角度αを示す直線Lは、ルーバ1bの表面上の一点(
図5ではA部)について塗料吹付角度αが最も大きくなるときの、当該一点と噴霧塗装時の噴霧点(スプレーガン噴霧孔)とを含む断面上における噴霧点及び当該一点を結ぶ線である。このような直線Lを引いたときに、塗料吹付角度α<許容限界角度45度の条件が満たされてしまう場合は微細凹凸面14を設けることが好ましい。即ち、ルーバ1bにおいて、塗料吹付角度α<45度となる領域(=移動する噴霧点を考慮しても塗料吹付角度α≧45度が満たされない領域)に微細凹凸面14を形成することが好ましい。
【0022】
なお、上述したように
図5は第一部分11での断面であり、第一部分11には塗料吹付角度が45度より浅くなる範囲に微細凹凸面14が形成されている。しかし、
図5中点線で示される第二部分12には塗料吹付角度が45度より浅くなる範囲は存在しない(
図5において、第二部分12は範囲X内にある)。このため、
図1に示されるように、第二部分12には微細凹凸面14は設けられておらず、均一な塗膜を形成できる円滑面13のみが設けられている。
【0023】
上述したように、微細凹凸面14によってルーバ1bとして違和感を与えることを回避できるが、逆に言えば、微細凹凸面14によってルーバ1bの奥行方向の幅を広く確保することができる。ここで、本実施形態の被塗装部品はフロントグリル1であるが、フロントグリル1を通して走行風がエンジンルーム内に導入される。フロントグリル1の背後には、走行風と熱交換を行う空冷式熱交換器が配置される。このような熱交換器としては、内燃機関を冷却するクーラントのためのラジエータや空調システムのコンデンサが挙げられる。また、バッテリ電気自動車(DEV)やハイブリッド電気自動車(HEV)のモータジェネレータやバッテリ及びそれらのコントロールユニットは発熱するのでこれらを冷却するためにも空冷式熱交換器は用いられ得る。
【0024】
ルーバ1bの奥行方向の幅を広くすることで、このような熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。ルーバ1bの幅が広くなると、エンジンルーム内に導入される走行風を整流する効果が向上する。整流された走行風は、乱流を生じさせないため、通気抵抗も増えない。また、通気抵抗が増えないため、その流速も低下しない。これらの点から、空冷式熱交換器の熱交換部分を通過する走行風の量が増え、熱交換効率が向上する。即ち、微細凹凸面14を設けることで、ルーバ1bとして違和感を与えることなく、背後の空冷式熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0025】
本実施形態のルーバ1bを有する被塗装部品はフロントグリル1であり、その裏面側においてルーバ1bと隣接して開口10が形成されている。しかし、被塗装部品において、ルーバに隣接する開口が形成されていなくてもよい。例えば、被塗装部品がフロントグリルである場合でも、その一部の空気流路を塞いで背後への走行風の導入を制御する場合がある。また、ルーバを有する被塗装部品がダミーグリルである場合もある。このように開口が形成されない場合、噴霧塗装時にエアが背後に抜けないのでルーバの奥側にエア溜まりが生じ、塗料の粒が巻き上げられて塗装面に乗りにくくなる。従って、このような場合も、微細凹凸面を形成することで、違和感のない外観を与えることができる。
【0026】
図6及び
図7に微細凹凸面14の変形例を示す。
図6は
図2相当図であり、
図7は
図3相当図である。本変形例の微細凹凸面14も、フロントグリル1の表面側から裏面側に延在する多数の平行な微細溝によって形成されている。しかし、その微細溝14a(及びそれらの間の凸部14b)の断面形状が異なる。なお、本変形例でも、微細溝の延在方向が、射出成形金型の後方側金型の開型方向と一致する。このため、スライドコア式の金型を用いることなく、微細凹凸面14を形成することができる。
【0027】
本変形例の微細溝14aは平坦な底面を有する角張った断面を有しており、その溝幅D2は3.5mmであり、深さは0.5mmである。二つの微細溝14aの間に位置する凸部14bの上面が、円滑面13と同じ高さの円滑面13から連続する面として形成されており、その幅D3は3.0mmである。このような変形例によっても、上述した
図2及び
図3に示された実施形態と同様の効果がもたらされる。
【0028】
上記実施形態(変形例含む)の被塗装部品によれば、円滑面13とは視覚的に区別し得る外観を呈する微細凹凸面14をルーバ1bの奥側に形成することで、外殻部品に取り付けられた際に違和感のない美麗な外観を呈することができる。なお、ルーバ1bの奥側とは、被塗装部品(フロントグリル)1が車両の外殻部材に取り付けられた際の裏面側である。
【0029】
ここで、上記実施形態(変形例含む)では、被塗装部品(フロントグリル1)が合成樹脂の射出成形品である。また、微細凹凸面14の微細凹凸が表面側から裏面側に延在する多数の平行な微細溝を有する平目ローレット様の微細凹凸である。従って、微細凹凸を射出成形時に金型によって形成することができる。その際に、後方側金型の開型方向を平目ローレット様の微細溝の延在方向と一致させることで、金型にスライドコア構造などを設けることなく微細凹凸を形成することができる。
【0030】
さらに、円滑面13と微細凹凸面14との境界線上に射出成形金型の分割線が位置される。従って、分割線が成形品の表面上に転写されて形成されるパーティングラインが円滑面13と微細凹凸面14との境界線上に位置するため、被塗装部品(フロントグリル1)のルーバ1bの表面上にパーティングラインは形成されず、その外観を美麗にできる。
【0031】
またさらに、上記実施形態(変形例含む)では、円滑面13が、その表面に噴霧塗装によって形成された塗膜を有しており、塗膜によって合成樹脂の表面が完全に被覆されている。即ち、パーティングラインが形成されないため、噴霧塗装に際して前処理は不要であるし、噴霧塗装によって円滑面13にきれいな塗膜を形成することができる。即ち、円滑面13上に形成された塗膜は美麗な外観を呈する。
【0032】
上記実施形態(変形例含む)では、被塗装部品がフロントグリル1であり、その裏面側において、ルーバ1bとの隣接領域に開口10が形成されている。微細凹凸面14によって、ルーバ1bの前後方向の幅を広く確保することができる。ルーバ1bの奥行方向の幅を広くすることで、フロントグリル1を通過する走行風を整流できる。走行風が整流されることで、フロントグリル1の背後に配置される空冷式熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、被塗装部品はフロントグリルであったが、ルーバを有する他の部品でもよい。例えば、車両後面(例えば、リアボディパネルやリアバンパ等の外殻部品)に取り付けられるベンチレーショングリルや、ミッドシップ車の車両側部(例えば、リヤフェンダパネル等の外殻部品)に取り付けられるエアインテークグリルなどでもよい。また、被塗装部品は、フロントバンパに取り付けられる、フロントグリル以外のエアインテークグリル(ブレーキ用やフロントタイヤのエアカーテン用)でもよい。あるいは、フロントフェンダパネル(外殻部品)に取り付けられるエアアウトレットダミーグリルなどでもよい(上述したように、必ずしも開口を有していなくてもよい)。
【0034】
また、被塗装部品は噴霧塗装後に外殻部品に取り付けられるが、本発明は、塗装後の被塗装部品のみならず、未塗装状態(即ち、塗装前)の被塗装部品も含む。また、上記実施形態の被塗装部品(フロントグリル1)は合成樹脂による射出成形品であったが、本発明は、噴霧塗装される他の素材(例えば金属等)の被塗装部材であってもよい。なお、上記実施形態では、転造方式や切削方式によらないローレット様の微細凹凸面14を形成した。しかし、転造方式や切削方式によるローレットを有する微細凹凸面14が形成されてもよい。即ち、「ローレット様の微細凹凸」には、「ローレットによる微細凹凸」も含まれる。「ローレットによる微細凹凸」は、主として金属に対して形成されるが、樹脂等に対して形成されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 被塗装部品(フロントグリル)
1b ルーバ
10 開口
13 円滑面
14 微細凹凸面