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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】照合システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20231011BHJP
   H04B 1/3822 20150101ALI20231011BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20231011BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20231011BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20231011BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20231011BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B60R25/24
H04B1/3822
H04Q9/00 301Z
H04W12/06
H04W76/10
H04W52/02 110
E05B49/00 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020011772
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116002
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴明
(72)【発明者】
【氏名】小谷 里佳子
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081413(JP,A)
【文献】特開2001-090402(JP,A)
【文献】特開2014-121005(JP,A)
【文献】特開2015-059398(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102019003495(DE,A1)
【文献】特開2011-094459(JP,A)
【文献】特開2004-068434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/24
H04B 1/3822
H04Q 9/00
H04W 12/06
H04W 76/10
H04W 52/02
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出範囲に対して定期的に検出信号を出力し、認証コードが記憶された認証端末を検出する検出部と、
前記検出範囲内で、前記検出信号が出力されていないときに第1信号を出力し、前記第1信号に基づいて前記認証端末と通信を行う第1通信部と、
前記第1信号より遠くまで到達し、前記検出信号及び前記第1信号が出力されていないときに第2信号を出力し、前記第2信号に基づいて前記認証端末と通信を行う第2通信部と、
通信によって前記認証端末から取得した前記認証コードと保有のマスターコードとを照合する照合部と、
前記検出部による前記認証端末の検出結果と、前記第1信号に対する前記認証端末との応答状況と、前記照合部による照合結果の少なくともいずれかにより、前記第2信号の出力要否を判定する要否判定部と、を備え、
前記第2信号は、前記要否判定部の判定結果に応じて出力される照合システム。
【請求項2】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記第1通信部が前記認証端末と前記通信が行えなかった場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定する請求項1に記載の照合システム。
【請求項3】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記第1通信部が前記認証端末と前記通信が行えた場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定する請求項1又は2に記載の照合システム。
【請求項4】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項5】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致しない場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項6】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合において、その後に、予め設定された出力条件が成立するまでの間は前記第2信号の出力が不要であると判定する請求項1から5のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項7】
前記第1信号は、前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合に、前記第1信号の出力周期が定期的に出力される周期よりも長くなる請求項1から6のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項8】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出されない場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定する請求項1から7のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項9】
前記第1信号は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合に出力される請求項1から8のいずれか一項に記載の照合システム。
【請求項10】
前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致しない場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定し、次の前記検出信号の出力に応じて行われる検出判定が終了したときに前記第2信号の出力が必要であると判定する請求項1記載の照合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信方式による通信を行って認証端末から取得した認証コードを、マスターコードと照合する照合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両や建物においてデジタルキー(電子錠)が利用されている。一方、このようなデジタルキーは、認証コードが記録された認証端末と、認証コードとマスターコードとを照合する照合装置との距離に応じて、多様な通信方式が利用されている。このようなデジタルキーに関する技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、車両に搭載された複数のアンテナを同時に駆動可能な車両用無線送信回路が開示されている。この車両用無線送信回路は、同時に複数のアンテナから相異なる強度でLF帯の電波によるリクエスト信号を送信するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-121005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用無線送信回路は、複数のアンテナを同時に且つ異なる電流値で駆動する。このため、複数のアンテナの夫々に通電するために、電流容量の大きい電源が必要となり、コストアップの要因となる。また、複数のアンテナに同時に通電することから、互いに干渉する可能性がある。
【0006】
そこで、電源容量が増大することを避けつつ、互いに干渉することがない照合システムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る照合システムの特徴構成は、検出範囲に対して定期的に検出信号を出力し、認証コードが記憶された認証端末を検出する検出部と、前記検出範囲内で、前記検出信号が出力されていないときに第1信号を出力し、前記第1信号に基づいて前記認証端末と通信を行う第1通信部と、前記第1信号より遠くまで到達し、前記検出信号及び前記第1信号が出力されていないときに第2信号を出力し、前記第2信号に基づいて前記認証端末と通信を行う第2通信部と、通信によって前記認証端末から取得した前記認証コードと保有のマスターコードとを照合する照合部と、前記検出部による前記認証端末の検出結果と、前記第1信号に対する前記認証端末との応答状況と、前記照合部による照合結果の少なくともいずれかにより、前記第2信号の出力要否を判定する要否判定部と、を備え、前記第2信号は、前記要否判定部の判定結果に応じて出力される点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、検出信号、第1信号、及び第2信号が同時に出力されないので、電源容量を小さくできる。したがって、電源容量の小さい電源を用いて構成できるので低コスト化が可能である。また、検出信号、第1信号、及び第2信号が同時に出力されないので、検出部、第1信号部、及び第2信号部が互いに近接して配置された場合であっても、互いの干渉を抑制できる。
【0009】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記第1通信部が前記認証端末と前記通信が行えなかった場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、第1信号による通信ができなかった場合に、第2信号により通信を試みることができる。
【0011】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記第1通信部が前記認証端末と前記通信が行えた場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出され、且つ、第1通信部が認証端末と通信が行えた場合には、第2信号が出力されないので、電力消費量を低減することができると共に、第2信号以外の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0013】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定すると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出され、且つ、第1通信部による通信に基づいて認証コードとマスターコードとが一致した場合には、第2信号が出力されないので、電力消費量を低減することができると共に、第2信号以外の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致しない場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、第1通信部の通信に基づいて、認証コードとマスターコードとが一致しなかった場合に、第2信号により通信を試みることができる。
【0017】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合において、その後に、予め設定された出力条件が成立するまでの間は前記第2信号の出力が不要であると判定すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出され、且つ、第1通信部による通信に基づいて認証コードとマスターコードとが一致した場合には、所定期間に亘って第2信号が出力されないので、電力消費量を低減することができると共に、第2信号以外の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0019】
また、前記第1信号は、前記認証コードと前記マスターコードとが一致した場合に、前記第1信号の出力周期が定期的に出力される周期よりも長くなると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、第1通信部による通信に基づいて認証コードとマスターコードとが一致した場合には、第1信号の出力周期が元の周期よりも長くなるので、電力消費量を低減することができると共に、第1信号以外の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0021】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出されない場合に、前記第2信号の出力が必要であると判定すると好適である。
【0022】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出されない場合に、第2信号により通信を試みることができる。
【0023】
また、前記第1信号は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合に出力されると好適である。
【0024】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出された場合に、第1信号により通信を試みることができる。
【0025】
また、前記要否判定部は、前記検出部により前記認証端末が検出された場合で、且つ、前記照合部による前記第1通信部の通信により取得された前記認証コードと前記マスターコードとが一致しない場合に、前記第2信号の出力が不要であると判定し、次の前記検出信号の出力に応じて行われる検出判定が終了したときに前記第2信号の出力が必要であると判定すると好適である。
【0026】
このような構成とすれば、検出部により認証端末が検出された場合で、且つ、照合部による第1通信部の通信により取得された認証コードとマスターコードとが一致しない場合には第2信号が出力されないので、電力消費量を低減することができると共に、第2信号以外の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】照合システムの構成を示すブロック図である。
図2】照合システムが搭載された車両の周囲の状況を示す図である。
図3】照合システムの動作を示すタイミングチャートである。
図4】照合システムの動作説明図である。
図5】その他の実施形態に係る照合システムの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る照合システムは、認証端末から取得した認証コードを、マスターコードと照合することが可能である。以下、本実施形態の照合システム1について説明する。ここで、本実施形態では、照合システム1は車両2のドアロックのデジタルキー(電子錠)の施錠及び解錠に利用される場合の例を挙げて説明する。したがって、本実施形態では、照合システム1は車両2に搭載される。
【0029】
図1は、照合システム1の構成を模式的に示したブロック図である。図2は、照合システム1が搭載される車両2の周囲の状況を示す図である。図3は、本実施形態の照合システム1の動作を示すタイミングチャートである。図1に示されるように、照合システム1は、検出部10、第1通信部11、第2通信部12、照合部13、要否判定部14、ドアロック制御部15を備えて構成され、各機能部は、認証コードとマスターコードとの照合に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0030】
検出部10は、検出範囲Rに対して定期的に検出信号を出力し、認証コードが記憶された認証端末を検出する。検出範囲Rとは、図2に示されるように検出部10を中心として設定された範囲である。具体的には、検出部10を中心とする同心円状の範囲(例えば数メートルから十数メートルの範囲)であると良い。検出部10は、このような検出範囲Rに対して、定期的に検出信号を出力する。本実施形態では、図3の(a)に示されるように検出信号がT1(例えば数ミリ秒)毎に継続して出力される。
【0031】
認証コードとは、車両2のドアロックのデジタルキーを施錠及び解錠することが可能なキー情報である。認証端末とは、車両2のユーザが所有する端末であって、例えばスマートフォン等の携帯端末であっても良いし、スマートキーであっても良い。このような認証端末には、予め車両2に適合する認証コードが記憶されている。
【0032】
ここで、上述したように、車両2の検出部10から継続して定期的に検出信号が検出範囲Rに対して出力される。検出部10は、図3の(b)に示されるように、検出信号が出力される毎に検出判定を行う。したがって、検出判定も、検出信号の出力と同様に、定期的に継続して行われる。検出部10は、このような検出信号の出力及び検出判定に基づき、検出範囲R内に存在する認証端末を検出する。なお、この時、認証端末は当該検出部10が搭載された車両2に対応したものであるか否かを特定していなくても良い。すなわち、検出部10は、車両2に対応した認証端末であるか否かに関わらず、検出範囲R内の認証端末を検出する。図3の(c)には、理解を容易にするために、検出判定により認証端末が検出されたことを示す信号が示される。すなわち、検出信号により認証端末が検出された場合に、検出部10から検出したことを示す信号が出力される。このような検出部10は、例えばソナーや超音波を利用した障害物センサを用いて構成することが可能である。検出部10による検出結果は、このような信号として、後述する第1通信部11及び要否判定部14に伝達される。
【0033】
第1通信部11は、検出範囲R内で、検出信号が出力されていないときに第1信号を出力し、第1信号に基づいて認証端末と通信を行う。検出範囲R内とは、検出範囲Rの外縁部である遠端部R1よりも内側である。したがって、第1通信部11から見て検出範囲Rの外縁部よりも第1通信部11に近い側にあたる。本実施形態では、第1通信部11は車両2の左右両側のドアのノブに設けられる。本実施形態では、第1通信部11から見て検出範囲Rの外縁部よりも第1通信部11に近い側として、図2で示される検出範囲R内の範囲であって、第1通信部11を中心とする範囲R2が相当する。具体的には、第1通信部11を中心とする同心円状の範囲(例えば数センチメートル程度の範囲)であると良い。
【0034】
「検出信号が出力されていないときに第1信号を出力し」とは、検出部10からの検出信号と第1通信部11からの第1信号とが、同時に出力されていない状態をいう。詳細は後述するが、本実施形態では、図3の(d)に示されるように、検出部10から検出信号が出力され、当該検出信号に基づく検出判定の終了後(検出範囲R内において認証端末が検出された場合)に第1信号が出力される。本実施形態では、図3の(d)に示されるように第1信号は、検出信号よりも長い周期のT2(例えば数百ミリ秒)で出力される。第1信号が出力される周期は検出信号が出力される周期と異なっているので、第1信号は検出信号により認証端末が検出された毎に出力されるものではない。第1通信部11は、この第1信号に基づき認証端末と通信を行う。本実施形態では、第1通信部11は、13.56MHzの周波数帯を使用する、所謂近距離無線通信(NFC(Near-Field-Communication)通信)により認証端末と通信を行う。図3の(e)には、理解を容易にするために、第1信号により認証端末と通信が行えたことを示す信号が示される。すなわち、第1信号により認証端末と通信が行えた場合に、第1通信部11から通信が行えたことを示す信号が出力される。第1通信部11の通信結果は、このような信号として後述する照合部13に伝達される。
【0035】
第2通信部12は、第1信号より遠くまで到達し、検出信号及び第1信号が出力されていないときに第2信号を出力し、第2信号に基づいて認証端末と通信を行う。「第1信号より遠く到達し」とは、第2通信部12から見て第1信号が到達する範囲R2よりも外側まで到達することを意味する。図2では、第2通信部12は検出部10に近接して設けられているが、第2通信部12は車両2の左右両側のドアのノブに設けられていても良い。本実施形態では、第2信号は、例えば10メートル程度の範囲に到達するように出力される。なお、図2においては、第2信号が到達する範囲R3は、検出範囲Rの遠端部R1よりも車両2に近い側に設定されるが、遠端部R1と等しくても良いし、遠端部R1よりも遠い側に設定されても良い。
【0036】
「検出信号及び第1信号が出力されていないときに第2信号を出力し」とは、詳細は後述するが、図3の(f)に示されるように、検出部10からの検出信号及び第1通信部11からの第1信号と第2信号とが、同時に出力されていない状態をいう。また、本実施形態では、図3の(f)に示されるように第2信号は、第1信号が出力されていない場合には、検出部10による検出信号の検出判定後に出力され、第1信号が出力されている場合で且つ第1信号に対する応答がない場合には、第1信号に対する応答がないことを要否判定部14が認識した直後に出力される。したがって、第2信号が出力される周期は一定ではない。第2通信部12は、この第2信号に基づき認証端末と通信を行う。本実施形態では、第2通信部12は、数百MHzから数GHzの広い周波数帯を使用する、所謂超広帯域無線通信(UWB(Ultra-Wide-Band)通信)により認証端末と通信を行う。図示はしないが、第2信号により認証端末と通信が行えた場合には、第2通信部12は通信が行えたことを示す信号を通信結果として後述する照合部13に伝達する。なお、上述した第1信号に対する応答がないことは、後述する照合部13が第1通信部11から第1信号に対する応答がないことを示す情報を取得し、この情報に基づいて照合部13が要否判定部14に伝達すると良い。
【0037】
照合部13は、通信によって認証端末から取得した認証コードと保有のマスターコードとを照合する。通信とは、第1通信部11による第1信号に基づく通信と、第2通信部12による第2信号に基づく通信とが相当する。これらの通信が可能である場合には、当該通信により認証端末から認証コードが取得される。したがって、認証コードは、第1通信部11による第1信号に基づく通信や、第2通信部12による第2信号に基づく通信により取得され、照合部13に伝達される。保有のマスターコードとは、車両2のドアロックの施錠や解錠を行うためのデジタルキーである。このデジタルキーは、照合部13に予め記憶されていても良いし、別の記憶部(図示しない)に予め記憶しておき、照合部13が当該記憶部から取得するように構成しても良い。このため、認証コードと保有のマスターコードとを照合するとは、認証端末から取得した認証コードが、車両2のドアロックの施錠や解錠を行うためのデジタルキーであるか否かを照合することを意味する。照合部13による照合結果は、後述する要否判定部14及びドアロック制御部15に伝達される。本実施形態では、この照合結果には、上述した第1信号に対する応答がないことを示す情報も含まれる。もちろん、上述した第1信号に対する応答がないことを示す情報は照合部13を介さずに、第1通信部11から要否判定部14に直接伝達するように構成することも可能である。
【0038】
要否判定部14は、検出部10による認証端末の検出結果と、第1信号に対する認証端末との応答状況と、照合部13による照合結果の少なくともいずれかにより、第2信号の出力要否を判定する。検出部10による認証端末の検出結果とは、検出部10から出力された検出信号に基づいて検出範囲R内において存在する認証端末の検出結果である。第1信号に対する認証端末との応答状況とは、第1通信部11から出力される第1信号に対して、認証端末から応答があったか否かの状況である。照合部13による照合結果とは、照合部13による認証端末から取得された認証コードと予め記憶されているマスターコードとを照合した結果である。
【0039】
要否判定部14は、検出部10による認証端末の検出結果や、検出部10による認証端末の検出結果及び第1信号に対する認証端末の応答状況や、検出部10による認証端末の検出結果、第1信号に対する認証端末の応答状況、及び照合部13による照合結果の少なくともいずれかに基づいて、第2信号を出力するか否かを判定する。第2通信部12が第2信号を出力する場合には、要否判定部14は第2通信部12に対して要否判定の判定結果を出力する。一方、第2信号が第2通信部12以外の機能部から出力される場合には、要否判定部14は第2信号を出力する第2通信部12に対して要否判定の判定結果を出力する。
【0040】
ドアロック制御部15は、照合部13の照合結果に応じてロック機構を駆動する。照合部13の照合結果は、照合部13から伝達される。ロック機構とは、車両2に備えられ、ドアロックを施錠したり解錠したりする機構である。ドアロック制御部15は、照合部13から認証コードがマスターコードと一致する照合結果が伝達された場合において、ドアロックが施錠されているときには解錠するようにロック機構を駆動し、ドアロックが解錠されているときには施錠するようにロック機構を駆動する。
【0041】
以上のように照合システム1は構成される。これにより、車両2のロック機構を適切に駆動することが可能となる。
【0042】
次に、第2信号の出力について説明する。第2信号は、要否判定部14の判定結果に応じて出力される。図4は、照合システム1の動作を示す説明図であって、第2信号の出力形態について示される。
【0043】
上述したように(図3の(a)に示されるように)、検出部10から検出範囲Rに対して定期的に検出信号が出力され、認証端末の検出が行われる(#1)。検出信号に対する応答がない場合には、認証端末が検出されなかったことから(#2)、第1通信部11から第1信号が出力されない(#3)。この場合には、検出部10から要否判定部14に検出信号に対する応答がなかったことを示す結果が伝達される。これにより、要否判定部14は、第2通信部12が第2信号の出力が必要であると判定する。この判定結果を受け、第2通信部12が第2信号を出力する(#4)。
【0044】
第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#5)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致した(整合)場合には(#6)、ロック機構に対する制御が実行される(#7)。これにより、ドアロックが施錠されているときには解錠し、ドアロックが解錠されているときには施錠する。
【0045】
一方、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#5)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致しなかった(不整合)場合(#8)や、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えなかった場合には(#9)、ロック機構に対する制御は実行されない。
【0046】
検出部10から検出範囲Rに対して定期的に検出信号が出力され(#1)、検出信号に対して認証端末から応答がある場合には、検出部10により認証端末が検出されたことから(#10)、第1通信部11から第1信号が出力される(#11)。
【0047】
出力された第1信号に対して認証端末から応答がなかった場合には(#12)、第1通信部11が認証端末と通信が行えなかったことから、要否判定部14は第2信号の出力が必要であると判定する。この判定結果を受け、第2通信部12が第2信号を出力する(#13)。
【0048】
第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#14)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致した(整合)場合には(#15)、ロック機構に対する制御が実行される(#16)。これにより、ドアロックが施錠されているときには解錠し、ドアロックが解錠されているときには施錠する。
【0049】
一方、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#14)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致しなかった(不整合)場合(#17)や、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えなかった場合には(#18)、ロック機構に対する制御は実行されない。
【0050】
また、検出部10により認証端末が検出された場合には(#10)、第1通信部11から第1信号が出力され(#11)、第1通信部11が第1信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#19)、第1通信部11の通信により認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致した(整合)場合には(#20)、要否判定部14は第2信号の出力が不要であると判定する。この場合には、第2通信部12から第2信号が出力されず(#21)、ロック機構に対する制御が実行される(#22)。これにより、ドアロックが施錠されているときには解錠し、ドアロックが解錠されているときには施錠する。なお、第1通信部11の通信により認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが整合した(一致)場合には、要否判定部14は、一定期間(例えば15分や、ドアが開閉されるまで)、第2信号の出力が不要であるとして判定しても良い。
【0051】
検出部10により認証端末が検出された場合であって(#10)、出力された第1信号に対して認証端末から応答があったが(#19)、照合部13による第1通信部11の通信による認証端末から取得された認証コードとマスターコードとが一致しなかった(不整合)場合には(#23)、要否判定部14は第2信号の出力が必要であると判定する。この判定結果を受け、第2通信部12が第2信号を出力する(#24)。
【0052】
第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#25)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致した(整合)場合には(#26)、ロック機構に対する制御が実行される(#27)。これにより、ドアロックが施錠されているときには解錠し、ドアロックが解錠されているときには施錠する。
【0053】
一方、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えた場合であって(#25)、認証端末から取得した認証コードとマスターコードとが一致しなかった(不整合)場合(#28)や、第2通信部12が第2信号に基づいて認証端末と通信が行えなかった場合には(#29)、ロック機構に対する制御は実行されない。
【0054】
以上のように、本照合システム1によれば、認証端末の検出に利用する検出信号の出力と、認証端末との通信に利用する第1信号の出力と、認証端末との通信に利用する第2信号の出力とを、互いに異なる時に行うので、夫々の信号の生成に利用する電力を低減することができる。したがって、電源容量の小さい電源を用いることができるので、低コストで実現できる。また、例えば電力を生成する電源部を1つで実現することも可能となる。
【0055】
また、上記構成によれば、検出部10により認証端末が検出された場合に第1信号が出力され、第1信号に基づいて認証端末から取得された認証コードとマスターコードとが一致した(整合)場合には第2信号の出力が行われないので、電力損失や夫々の信号同士の干渉を低減することが可能となる。
【0056】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、第1通信部11が認証端末と通信が行えなかった場合に、第2信号の出力が必要であると判定するとして説明したが、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、第1通信部11が認証端末と通信が行えた場合に、第2信号の出力が不要であると判定するように構成することも可能である。係る場合、第1信号を出力する時点では第2信号の出力を保留することが可能となり、照合部13における第1信号に基づく認証コードの照合結果に応じて要否判定部14が第2信号を出力するか否かを判定すると好適である。
【0057】
上記実施形態では、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、照合部13による第1通信部11の通信により取得された認証コードとマスターコードとが一致した場合に、第2信号の出力が不要であると判定するとして説明したが、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、照合部13による第1通信部11の通信により取得された認証コードとマスターコードとが一致した場合において、その後に、予め設定された出力条件が成立するまでの間は第2信号の出力が不要であると判定するように構成することも可能である。予め設定された条件とは、例えば、所定時間(例えば数十秒)の経過や、ロック機構の施錠から解錠への切り替えや、ロック機構の解錠から施錠への切り替え等である。このような条件が成立すると、改めて検出部10が認証端末を検出し、その検出結果に応じて第1信号や第2信号を出力することでロック機構の制御を行うことが可能となる。
【0058】
上記実施形態では、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、照合部13による第1通信部11の通信により取得された認証コードとマスターコードとが一致しない場合に、第2信号の出力が必要であると判定するとして説明したが、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合で、且つ、照合部13による第1通信部11の通信により取得された認証コードとマスターコードとが一致しない場合にも、第2信号の出力が不要であると判定するように構成しても良い。係る場合、図5の(c)-(d)に示されるように、検出信号に基づき認証端末が検出され、第1信号が出力された場合には、図5の(e)-(f)に示されるように第1信号に対する応答がない場合であっても、第2信号の出力は行わず、次の検出信号による検出判定が終了したタイミングに応じて、第2信号を出力するように構成すると良い。
【0059】
上記実施形態では、第1信号は、検出信号よりも長い周期のT2(数百ミリ秒)で出力されるとして説明した。例えば、第1信号は、認証コードとマスターコードとが一致した場合に、第1信号の出力周期が定期的に出力される周期よりも長くなるように構成することも可能である。認証コードとマスターコードとが一致した場合には、第1信号に基づいて通信を行う機会が減るので、電力消費量を低減することが可能となる。
【0060】
上記実施形態では、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出されない場合に、第2信号の出力が必要であると判定するとして説明したが、要否判定部14は検出部10により認証端末が検出されない場合であっても、第1信号に基づく通信結果に応じて第2信号が出力するか否かを判定するように構成することも可能である。
【0061】
上記実施形態では、第1信号は、検出部10により認証端末が検出された場合に出力されるとして説明したが、第1信号は、検出部10により認証端末が検出されなかった場合においても出力するように構成することも可能である。
【0062】
上記実施形態では、要否判定部14が、検出部10による認証端末の検出結果と、第1信号に対する認証端末との応答状況と、照合部13による照合結果の少なくともいずれかにより、第2信号の出力要否を判定するとして説明した。すなわち、要否判定部14は、検出部により認証端末が検出された場合には、第2信号の出力が不要であると判定するように構成しても良い。
【0063】
例えば、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出された場合には、認証端末が検出されない場合に対し、第2信号の信号出力を変更しても良い。すなわち、要否判定部14は、検出部10により認証端末が検出される前後において、第1信号が出力される周期と第2信号が出力される周期との割合を変更しても良い。具体的には、例えば、第1信号が4回出力される毎に、第2信号を1回出力する構成を、検出部10により認証端末が検出された場合に、代位信号が8回出力される毎に、第2信号を1回出力するように構成しても良い。
【0064】
上記実施形態では、第1信号が出力される周期が、第2信号が出力される周期よりも長いものとして図3に示したが、第2信号が出力される周期が、第1信号が出力される周期よりも長くても良い。
【0065】
上記実施形態では、照合システム1は車両2のドアロックのデジタルキー(電子錠)の施錠及び解錠に利用される場合の例を挙げて説明したが、照合システム1を例えば建物(例えば住宅やビル等)のドアロックに利用することも可能である。もちろん、その他の施錠及び解錠を行うようなシステムに利用することも可能である。
【0066】
本発明は、複数の通信方式による通信を行って認証端末から取得した認証コードを、マスターコードと照合する照合システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:照合システム
10:検出部
11:第1通信部
12:第2通信部
13:照合部
14:要否判定部
R:検出範囲
R1:遠端部
図1
図2
図3
図4
図5