(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】キャリブレーション判定結果提示装置、キャリブレーション判定結果提示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20231011BHJP
G01C 3/00 20060101ALI20231011BHJP
G01S 17/87 20200101ALI20231011BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20231011BHJP
【FI】
G01S7/497
G01C3/00 120
G01S17/87
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020017772
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝弘
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058166(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112102375(CN,A)
【文献】特開2015-127664(JP,A)
【文献】特表2021-518308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01B 21/00 - 21/32
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するキャリブレーション値取得部と、
前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得する実測点群データ取得部と、
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成する統合点群データ生成部と、
前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定する判定部と、
前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示する判定結果表示部と、
を有することを特徴とするキャリブレーション判定結果表示装置。
【請求項2】
前記判定結果表示部は、前記共通の座標を示すマップ上に前記所定の領域と当該所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性とを重畳して表示することを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション判定結果表示装置。
【請求項3】
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データは、前記所定領域に設置されたターゲットに対して前記第1レーザセンサ及び前記第2レーザセンサの各々がレーザ光の照射及び反射光の受光を行うことにより得られた点群データであり、
前記判定部は、前記統合点群データを用いた前記ターゲットの物体検出の結果に基づいて、前記所定領域における前記物体検出の正確性を判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリブレーション判定結果表示装置。
【請求項4】
前記所定領域に設置されたターゲットについて得られた前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データに基づいて、前記共通の座標上の前記所定領域とは異なる他の領域に前記ターゲットが移動したと仮定した場合に得られることが想定される第1の仮想点群データ及び第2の仮想点群データを生成する仮想点群データ生成部をさらに有し、
前記統合点群データ生成部は、前記第1の仮想点群データ及び前記第2の仮想点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した仮想統合点群データを生成し、
前記判定部は、前記仮想統合点群データに基づいて、前記他の領域における物体検出の正確性を判定し、
前記判定結果表示部は、前記他の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記他の領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のキャリブレーション判定結果表示装置。
【請求項5】
それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するステップと、
前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得するステップと、
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成するステップと、
前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、
前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、
を含むことを特徴とするキャリブレーション判定結果表示方法。
【請求項6】
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データに基づいて、前記共通の座標上の前記所定領域とは異なる他の領域についての仮想の点群データである第1の仮想点群データ及び第2の仮想点群データを生成するステップと、
前記第1の仮想点群データ及び前記第2の仮想点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した仮想統合点群データを生成するステップと、
前記仮想統合点群データに基づいて、前記他の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、
前記他の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記他の領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載のキャリブレーション判定結果表示方法。
【請求項7】
コンピュータに、
それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するステップと、
前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得するステップと、
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成するステップと、
前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、
前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データに基づいて、前記共通の座標上の前記所定領域とは異なる他の領域についての仮想の点群データである第1の仮想点群データ及び第2の仮想点群データを生成するステップと、
前記第1の仮想点群データ及び前記第2の仮想点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した仮想統合点群データを生成するステップと、
前記仮想統合点群データに基づいて、前記他の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、
前記他の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記他の領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、
を実行させることを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザセンサのキャリブレーション結果の正確性を判定して提示するキャリブレーション判定結果提示装置、キャリブレーション判定結果提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR等のレーザセンサを用いて人や車などの物体を検出する技術が広く用いられている。しかし、レーザは物体に遮られるため、死角が発生しやすい。そこで、ある監視範囲の物体を検出する場合には、死角の発生を減らすため、複数台のレーザセンサを用いて多方向から物体の検出を行うことが必要である。
【0003】
複数台のレーザセンサを用いて物体の位置情報を取得する装置として、複数台のレーザスキャナ及びカメラを備えた計測車両を走行させ、取得したレーザスキャナの計測データとカメラの映像とに基づいて、走行地域の三次元地図を生成するモービルマッピングシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、第1の観測点から第1群の測定点までの距離と方位とを計測する第1の計測手段と、第2の観測点から第2群の測定点までの距離と方位とを計測する第1の計測手段と、を有し、第1群と第2群とに共通に含まれる同一の測定点に関する計測結果に基づいて第2の計測手段の計測結果を補正し、第1群と第2群の測定点の3次元座標を算出することにより、3次元の対象物形状を特定するシステムが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-175423号公報
【文献】国際公開2005/080914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数台のレーザセンサを用いて、ある監視範囲内での物体検出を行う場合、複数台のレーザセンサ間のキャリブレーションを正確に行うことが必要である。キャリブレーションが正確に行われないと、複数台のレーザセンサの測定結果を共通の座標上で統合する際にズレが生じてしまい、物体の検出を正確に行うことができない。
【0007】
しかしながら、レーザセンサ間のキャリブレーション結果は、測定結果の点群座標をアフィン変換する行列の値を示す数値群として出力される。このため、数値だけを見てキャリブレーション結果の良し悪しを判断することは困難であり、キャリブレーション値が正確であるかどうかを現場の作業者が判断することは難しいという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、キャリブレーション値の正確性についての判定結果を分かりやすく提示することが可能なキャリブレーション判定結果表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るキャリブレーション判定結果表示装置は、それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するキャリブレーション値取得部と、前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得する実測点群データ取得部と、前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成する統合点群データ生成部と、前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定する判定部と、前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示する判定結果表示部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るキャリブレーション判定結果表示方法は、それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するステップと、前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得するステップと、前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成するステップと、前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータに、それぞれがレーザ光を照射して反射光を受光することにより点群データを得る第1レーザセンサと第2レーザセンサとの間で座標系を共有するための補正値であるキャリブレーション値を取得するステップと、前記第1レーザセンサにより得られた点群データである第1の実測点群データ及び前記第2レーザセンサにより得られた点群データである第2の実測点群データを取得するステップと、前記第1の実測点群データ及び前記第2の実測点群データを前記キャリブレーション値に基づいて共通の座標上に統合した統合点群データを生成するステップと、前記統合点群データに基づいて、前記共通の座標上の所定の領域における物体検出の正確性を判定するステップと、前記物体検出の正確性に基づいて、前記所定の領域における物体検出に対する前記キャリブレーション値の正確性を、前記共通の座標における前記所定領域の位置情報と対応付けて視認可能に表示するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数台のレーザセンサを用いて物体検出を行う物体検出システムにおいて、所定領域での物体検出に対するキャリブレーションの正確性を判定し、所定領域の位置と対応付けて視認可能に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】レーザセンサ及び対象物の配置位置を模式的に示す上面図である。
【
図2】実施例1の判定結果表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の判定結果表示処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図4】レーザセンサ及びターゲットの位置関係を示す図である。
【
図5A】第1のレーザセンサにより取得される点群の例を示す図である。
【
図5B】第2のレーザセンサにより取得される点群の例を示す図である。
【
図7】キャリブレーションの判定結果を表示する表示画面の例を示す図である。
【
図8】実施例2の判定結果表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施例2の判定結果表示処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】実施例2の判定結果表示処理における移動ベクトルの算出を模式的に示す図である。
【
図11】実施例2の判定結果表示処理において作成される仮想ターゲットの位置を模式的に示す図である。
【
図12A】第1のレーザセンサにより取得される対象物及び仮想ターゲットの点群の例を示す図である。
【
図12B】第2のレーザセンサにより取得される対象物及び仮想ターゲットの点群の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0015】
本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置は、2台のレーザセンサを用いて対象物の位置及び形状を検出する物体検出システムにおいて実行されるレーザセンサ間のキャリブレーションの結果の正確性を判定し、その判定結果を表示する装置である。レーザセンサ間のキャリブレーションは、各々のレーザセンサでの測定結果を共通の座標系に統合するための補正値を得るために実行される。
【0016】
図1は、2台のレーザセンサの配置位置及びキャリブレーションに用いる対象物の位置を模式的に示す上面図である。
【0017】
第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2は、レーザ光を物体に照射してその反射光を受光し、受光結果に基づいて物体までの距離を測定する計測装置である。第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2は、例えばLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)装置によって構成されている。
【0018】
第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2は、例えば掘削工事中のトンネル内の地面に配置される。対象物OBは、トンネル内の物体を検出するためのキャリブレーションに用いる目標物である。例えば、トンネル内の所定範囲の物体を検出する場合、当該所定範囲に位置する工事車両等が対象物OBとして選択される。第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2は、例えば対象物OBを挟んで対向するように配置される。
【0019】
第1レーザセンサL1及び第2のレーザセンサL2は、照射方向を経時的に変化させつつレーザ光の照射を行い、当該レーザ光が物体に反射されることにより生じた反射光を受光して、レーザ光が反射した位置である反射位置の3次元座標のデータ(以下、点群データと称する)を得る。そして、第1レーザセンサL1により得られた点群データ及び第2レーザセンサL2により得られた点群データに対して座標変換を行い、共通の座標上でICP(Iterative Closest Points)等の手法を用いてマッチングすることにより、キャリブレーションを行う。
【0020】
本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置100は、このキャリブレーションの結果(すなわち、キャリブレーション値)を用いて実際に物体の検出を行い、物体検出の結果に基づいて、所定領域内での物体検出に対するキャリブレーションの正確性を示す判定結果を表示する装置である。従って、キャリブレーション判定結果表示装置100による判定結果表示処理を行う際には、作業者は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の検出範囲が重なる検出領域内に検出対象物としてのターゲットを配置する必要がある。第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々は、ターゲットにレーザ光を照射し、反射光を受光することにより、反射位置を示す点群データを得る。
【0021】
図2は、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置100の構成を示すブロック図である。キャリブレーション判定結果表示装置100は、データ取得部10、データ変換部11、キャリブレーション結果保存部12、データ統合部13、検出処理部14、キャリブレーション結果判定部15、判定条件保存部16及び判定結果表示部17を有する。
【0022】
データ取得部10、データ変換部11、データ統合部13、検出処理部14及びキャリブレーション結果判定部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の処理制御部が所定のプログラムを実行することにより、機能ブロックとして形成される。
【0023】
データ取得部10は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々によって得られた点群データを取得する。
【0024】
データ変換部11は、キャリブレーション結果保存部12に保存されているキャリブレーション結果(すなわち、キャリブレーション値)を用いて、データ取得部10が取得した点群データの座標変換を行う。この座標変換により、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々によって得られた点群データを共通の座標系で表す点群データが得られる。
【0025】
キャリブレーション結果保存部12は、フラッシュメモリやHDD等の半導体記憶装置から構成されている。キャリブレーション結果保存部12は、事前に行われた第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2についてのレーザセンサ間のキャリブレーションに基づいて、その結果であるキャリブレーション値を記憶する。
【0026】
データ統合部13は、データ変換部11による座標変換を経た第1レーザセンサL1の点群データと第2レーザセンサL2の点群データとを、共通の座標上で統合する処理を行う。例えば、データ統合部13は、ICP(Iterative Closest Points)等の手法を用いて点群同士をマッチングすることにより、点群データを統合する。
【0027】
検出処理部14は、データ統合部13によって統合された点群データに基づいて、ターゲットの物体検出を行う。例えば、検出処理部14は、データ統合部13による統合処理を経た点群データから地面を示す点群を除去した後に、一定距離内に存在する点群を同一物体としてクラスタリングすることにより、ターゲットを検出する。
【0028】
キャリブレーション判定部15は、検出処理部14による物体検出の結果に基づいて、所定領域(すなわち、ターゲットが設置された領域)における物体検出の正確性を判定する。ターゲットの物体検出は、キャリブレーション値を用いた座標変換を前提として行われているため、物体検出の正確性についての判定が、キャリブレーション値の正確性についての判定となる。
【0029】
すなわち、物体検出が正確であると判定された場合、キャリブレーション値は、少なくともその領域での物体検出にとっては正確であると判定される。一方、物体検出が正確ではないと判定された場合、キャリブレーション値は、少なくともその領域での物体検出にとっては正確ではないと判定される。
【0030】
判定条件保存部16は、フラッシュメモリやHDD等の半導体記憶装置から構成されている。判定条件保存部16は、キャリブレーション判定部15の判定に用いる判定条件を保存する。
【0031】
キャリブレーション判定部15の判定に用いる判定条件は、検出処理部14による検出に求める精度に応じて異なる。例えば、ターゲットを1つの物体として検出できる程度の精度を求めるのであれば、ターゲットの数が判定条件の1つとなる。また、物体の大きさを正確に検出したいのであれば、予め計測したターゲットの大きさと検出処理により得られたターゲットのサイズとの誤差についての許容範囲が判定条件となる。
【0032】
判定結果表示部17は、液晶表示装置等の表示装置から構成されている。判定結果表示部17は、キャリブレーション判定部15による判定結果を、第1レーザL1及び第2レーザL2による物体検出の検出対象領域を示すマップ情報と対応付けて表示する。
【0033】
次に、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置100の動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
作業者は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2が物体検出の対象とする領域(以下、所定領域と称する)の任意の位置にターゲットを設置する(STEP101)。
【0035】
図4は、第1レーザセンサL1、第2レーザセンサL2及びターゲットTGの配置例を示す上面図である。ここでは、第1レーザセンサL1と第2レーザセンサL2との中間付近の位置に直方体の形状を有するターゲットTGが配置される場合を例として示している。なお、ターゲットTGはレーザセンサで検出可能な大きさの物体であればよく、形状や材質は特に限定されない。
【0036】
第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々は、レーザ光の照射及び反射光の受光をそれぞれ行い、点群データを取得する。キャリブレーション判定結果表示装置100のデータ取得部10は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々によって得られた点群データを取得する(STEP102)。
【0037】
図5Aは、第1レーザセンサL1によって得られた点群データPD1を模式的に示す図である。本実施例では、ターゲットTGが上面視において矩形(例えば、長方形)の形状を有するため、当該矩形を構成する四辺のうち、第1レーザセンサL1に面した二辺に相当する点群を含む点群データPD1得られる。
【0038】
また、
図5Bは、第2レーザセンサL2によって得られた点群データPD2を模式的に示す図である。ターゲットTGを上面視した矩形を構成する四辺のうち、第2レーザセンサL2に面した二辺に相当する点群を含む点群データPD2が得られる。
【0039】
データ変換部11は、キャリブレーション結果保存部12に保存されているキャリブレーション値を読み出す(STEP103)。
【0040】
データ変換部11は、読み出したキャリブレーション値を用いて座標変換を行い、点群データPD1及びPD2の座標を共通の座標系に変換する(STEP104)。
【0041】
データ統合部13は、データ変換部11による座標変換を経て得られた点群データPD1及びPD2(すなわち、第1レーザセンサL1により得られた点群データ及び第2レーザセンサにより得られた点群データの各々に、キャリブレーションの結果を反映させた点群データ)を、1つの点群データに統合する処理を行う(STEP105)。
【0042】
図6は、点群データの統合を模式的に示す図である。例えば、ICP等の手法を用いて点群同士をマッチングすることにより、第1レーザセンサL1により取得された点群と第2レーザセンサL2により取得された点群とを共通の座標上で統合した点群が統合点群データとして得られる。
【0043】
検出処理部14は、統合点群データに対してクラスタリング処理等を実行することにより、ターゲットの物体検出を行う(STEP106)。
【0044】
キャリブレーション判定部15は、判定条件保存部16に保存されている判定条件を読み出し、読み出した判定条件に基づいて、物体検出の正確性を判定する。これにより、所定領域(すなわち、ターゲットが設置された領域)での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性が判定される(STEP107)。
【0045】
なお、STEP107の判定は、あくまでSTEP101でターゲットを設置した位置を含む所定範囲の領域である所定領域を対象としたキャリブレーションの正確性についての判定である。従って、所定領域以外の領域を対象としてキャリブレーションの正確性を判定した場合には、ターゲットの設置位置を変更しつつ、上記の一連の処理を繰り返す必要がある。
【0046】
判定結果表示部17は、キャリブレーション判定部15の判定結果、すなわち所定領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性についての情報を、検出対象領域を示すマップ情報と対応付けて表示する(STEP108)。
【0047】
図7は、判定結果の表示画面の例を示す図である。ここでは、ターゲットの配置位置を変えつつSTEP101~108の処理が繰り返し行われ、検出対象領域内の複数の領域に亘って判定が行われた場合の表示画面を示している。
【0048】
マップ上では、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の配置位置及び検出対象領域が上面図として表示されている。検出対象領域は例えば格子状(すなわち、マス目状)に複数の領域に分割されており、分割された領域毎のキャリブレーション値の正確性についての情報が重畳して表示される。
【0049】
例えば、ある領域におけるターゲットの物体検出の結果がSTEP107で設定した条件を満たしている場合には、物体検出が正確に行われており、当該領域での物体検出に対してキャリブレーション値が基準以上の正確性を有していると判定される。このため、当該領域を示すマップ上の位置が、薄い色の領域(
図7では白色の領域として示す)として表示される。一方、ある領域におけるターゲットの物体検出の結果がSTEP107で設定した条件を満たしていない場合には、物体検出が正確に行われておらず、当該領域での物体検出に対してはキャリブレーション値の正確性が基準未満であると判定される。このため、当該領域を示すマップ上の位置が、濃い色の領域(
図7では斜線の領域として示す)として表示される。
【0050】
作業者は、表示画面を視認することにより、物体検出の対象とする領域(すなわち、目的とする監視範囲)にとってキャリブレーション値が正確か否かを判断することができる。そして、キャリブレーション値が正確な範囲についての情報を保存しておくことにより、実際に第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2を用いて物体の検出を行った際に、その検出結果に信頼がおけるか否かを判定するための情報として利用することができる。また、キャリブレーション値の正確性が十分でない場合には、キャリブレーションを再び実行したり、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の配置位置や向きを変更したりすることにより、物体検出のための調整を行うことができる。
【0051】
以上のように、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置100は、ターゲットの設置位置を変更しつつ、キャリブレーション値を用いてターゲットの物体検出を行い、物体検出の結果が条件を満たしているか否かを判定することにより、ターゲットが設置されている領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性を判定する。そして、検出対象領域を示すマップ情報と対応付けて判定結果を表示する。
【0052】
本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置によれば、所定領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性を判定し、判定結果を当該所定領域の位置と対応付けて視認可能に表示することが可能となる。これにより、物体検出を行う領域毎のキャリブレーション値の正確性を作業者に分かりやすく提示することが可能となる。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置は、実施例1のキャリブレーション判定結果表示装置とは異なり、1か所に設置したターゲットについての物体検出の結果に基づいて、ターゲットが設置された領域以外の様々な領域における物体検出に対するキャリブレーション値の正確性を判定することが可能に構成されている。
【0054】
図8は、本発明の実施例2に係るキャリブレーション判定結果表示装置200の構成を示すブロック図である。本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置200は、ターゲット移動ベクトル算出部20、移動ベクトル保存部21、仮想点群作成部22及び仮想点群作成条件保存部23を有する点で、実施例1のキャリブレーション判定結果表示装置100と異なる。
【0055】
ターゲット移動ベクトル算出部20は、ターゲットが移動したと仮定した場合に、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々により取得される点群が移動する方向及び距離を移動ベクトルとして算出する。
【0056】
移動ベクトル保存部21は、フラッシュメモリやHDD等の半導体記憶装置から構成され、ターゲット移動ベクトル算出部20により算出された移動ベクトルのデータを記憶する。
【0057】
仮想点群作成部22は、移動ベクトル保存部21に記憶されている移動ベクトルのデータと仮想点群作成条件保存部に保存されている仮想点群の作成条件に基づいて、ターゲットが任意の位置に移動した場合に第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2により取得されることが想定される点群を仮想的に作成する。
【0058】
仮想点群作成条件保存部23は、フラッシュメモリやHDD等の半導体記憶装置から構成され、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の相対的な位置関係やターゲットの初期位置等に基づく仮想点群の作成条件を保存する。
【0059】
次に、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置200の動作について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
作業者は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2が物体検出の対象とする領域の任意の位置にターゲットを設置する(STEP201)。
【0061】
第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々は、レーザ光の照射及び反射光の受光をそれぞれ行い、点群データを取得する。キャリブレーション判定結果表示装置100のデータ取得部10は、第1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々によって得られた点群データを取得する(STEP202)。
【0062】
ターゲット移動ベクトル算出部20は、データ取得部10が取得した点群データに基づいて、ターゲットがある位置に移動した場合に点群が移動する方向及び距離を表す移動ベクトルを算出する(STEP203)。
【0063】
図10は、移動ベクトルの算出を模式的に示す図である。例えば上面視で矩形の形状を有するターゲットTGを設置し、第1レーザセンサL1で点群データを取得する。矩形の辺の延長方向にターゲットTGを移動した場合、点群が移動するベクトルは、各辺の端部の点の差から求めることができる。第2レーザセンサL2についても同様である。
【0064】
仮想点群作成部22は、ターゲットが任意の位置に移動したと仮定した場合に1レーザセンサL1及び第2レーザセンサL2の各々によって得られる点群を仮想点群として作成する(STEP204)。
【0065】
図11は、仮想ターゲットの位置を模式的に示す図である。
図12Aは、第1のレーザセンサにより取得される仮想点群、
図12Bは第1のレーザセンサにより取得される仮想点群の例を示す図である。このように、実際に設置したターゲットTGについての点群とは別に、ターゲットTGを移動させたと仮定した仮想ターゲットVTについての仮想点群データVD1及びVD2が得られる。
【0066】
データ変換部11は、キャリブレーション結果保存部12からキャリブレーション結果を読み出す(STEP205)。
【0067】
データ変換部11は、読み出したキャリブレーション結果を用いて、仮想点群データVD1及びVD2の座標変換を行う(STEP206)。
【0068】
データ統合部13は、データ変換部11による座標変換を経て得られた仮想点群データVD1及びVD2を、共通の座標上で1つの点群データに統合する処理を行う(STEP207)。
【0069】
検出処理部14は、点群データの統合により得られた統合点群データに対してクラスタリング処理等を実行することにより、ターゲットの物体検出を行う(STEP208)。
【0070】
キャリブレーション判定部15は、判定条件保存部16に保存されている判定条件を読み出し、読み出した判定条件に基づいて、物体検出の正確性を判定する。これにより、ターゲットの仮想の移動先である領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性が判定される(STEP209)。
【0071】
判定結果表示部17は、キャリブレーション判定部15の判定結果、すなわち仮想の移動先である領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性についての情報を、検出対象領域を示すマップ情報と対応付けて表示する(STEP210)。
【0072】
なお、ターゲットの仮想の移動先を変えつつSTEP203~209の処理を繰り返すことにより、複数の領域についてキャリブレーション値の正確性についての判定結果を得ることができる。そして、最終的には、実施例1と同様に検出対象領域全般をについてキャリブレーション値の正確性についての判定を行い、その結果を表示することが可能となる。
【0073】
以上のように、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置200によれば、ターゲットを実際に複数の位置に移動させることなく、複数の領域での物体検出に対するキャリブレーション値の正確性を判定し、判定結果を作業者に視認可能に表示することができる。
【0074】
例えば、検出領域が道路である場合、実際にターゲットを様々な位置に設置して検出を行おうとすると、道路を通行止めにしなければならない場合がある。しかし、本実施例のキャリブレーション判定結果表示装置200によれば、そのような措置をとることなく、検出領域全体について、物体検出に対するキャリブレーションの正確性の判定及びその判定結果の表示を簡易に行うことができる。
【0075】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例に記載したものに限られない。例えば、上記実施例では、直方体の形状を有するターゲットを用いる場合を例として説明したが、ターゲットの形状はこれに限られない。例えば、円錐状の物体や上面視で五角形や六角形の形状を有する物体をターゲットとして用いることが可能である。
【0076】
また、上記実施例では、キャリブレーション値の正確性の判定結果を検出領域と共にマップに重畳して表示する例を示したが、表示態様はこれに限られず、領域毎の物体検出に対するキャリブレーションの正確性を作業者に視認可能な方法で表示するものであればよい。
【符号の説明】
【0077】
100,200 キャリブレーション判定結果表示装置
10 データ取得部
11 データ変換部
12 キャリブレーション結果保存部
13 データ統合部
14 検出処理部
15 キャリブレーション結果判定部
16 判定条件保存部
17 判定結果表示部
20 ターゲット移動ベクトル算出部
21 移動ベクトル保存部
22 仮想点群作成部
23 仮想点群作成条件保存部