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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20231011BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20231011BHJP
   H04N 25/10 20230101ALI20231011BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G06T5/00 710
H04N25/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020023458
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129244
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】立石 昌和
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-19017(JP,A)
【文献】特開2019-29832(JP,A)
【文献】特開2016-143990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G06T 5/00
H04N 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズを介して撮影された撮影画像のフレーム内に位置する画素の前記フレームの中心からの距離に応じた補正値が設定されている補正値テーブルと、
前記フレーム内の各注目画素の前記中心からの距離に応じて前記補正値テーブルより読み出された補正値に、少なくとも前記ズームレンズのズーム倍率とフォーカス距離とによって決まる調整係数を乗算して調整補正値を生成する第1の乗算器と、
前記調整補正値に前記中心に対する前記各注目画素の角度の余弦を乗算して、前記注目画素を水平方向に補正する水平補正値を生成する第2の乗算器と、
前記各注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に、左右非対称の係数を乗算した乗算結果を全て加算して水平方向のハイパスフィルタ成分を生成し、前記水平方向のハイパスフィルタ成分に前記水平補正値を乗算した水平補正成分を前記各注目画素に加算して、前記各注目画素を水平方向に補正する水平フィルタと、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記左右非対称の係数は、前記フレームの水平中心に対して左側と右側とのうちの一方である第1の側に位置している画素を補正するのに適した係数値とされており、
前記水平フィルタは、
注目画素が前記第1の側に位置しているとき、前記注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に前記左右非対称の係数をそのまま乗算し、
注目画素が前記フレームの水平方向の左側と右側とのうちの他方である第2の側に位置しているとき、前記注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に前記左右非対称の係数を左右に反転して乗算する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の乗算器は、前記フレーム内の各注目画素の前記中心からの距離に応じて前記補正値テーブルより読み出された補正値に、前記ズーム倍率と、前記フォーカス距離と、前記ズームレンズが有するアイリスのアイリス絞り値とによって決まる調整係数を乗算して調整補正値を生成する請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記水平フィルタは、前記各注目画素の過補正によって発生するリンギングを除去するクリッパをさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記水平フィルタは、注目画素が前記第1の側に位置しているか前記第2の側に位置しているかを示す左右判別値が前記第1の側に位置していることを示すとき、前記左右非対称の係数を反転せず、前記左右判別値が前記第2の側に位置しているかを示すとき、前記左右非対称の係数を反転し、
前記フォーカス距離に応じて前記左右判別値を反転する指示がなされると、前記左右判別値を反転する反転器をさらに備える
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記反転器は、前記フォーカス距離が第1の範囲であるときに前記左右判別値を反転し、第2の範囲であるときに前記左右判別値を反転せず、
前記フォーカス距離が前記第1の範囲と前記第2の範囲との境界のフォーカス距離であるときに、前記調整補正値を0とするために、前記調整係数が0とされている請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記調整補正値に前記中心に対する前記各注目画素の角度の正弦を乗算して、前記注目画素を垂直方向に補正する垂直補正値を生成する第3の乗算器と、
前記各注目画素を中心とした上下方向の複数の画素に、上下非対称の係数を乗算した乗算結果を全て加算して垂直方向のハイパスフィルタ成分を生成し、前記垂直方向のハイパスフィルタ成分に前記垂直補正値を乗算した垂直補正成分を前記各注目画素に加算して、前記各注目画素を垂直方向に補正する垂直フィルタと、
をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
補正値テーブルには、ズームレンズを介して撮影された撮影画像のフレーム内に位置する画素の前記フレームの中心からの距離に応じた補正値が設定されており、前記フレーム内の各注目画素の前記中心からの距離に応じて前記補正値テーブルより補正値を読み出し、
読み出された前記補正値に、少なくとも前記ズームレンズのズーム倍率とフォーカス距離とによって決まる調整係数を乗算して調整補正値を生成し、
前記調整補正値に前記中心に対する前記各注目画素の角度の余弦を乗算して、前記注目画素を水平方向に補正する水平補正値を生成し、
前記各注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に、左右非対称の係数を乗算した乗算結果を全て加算して水平方向のハイパスフィルタ成分を生成し、
前記水平方向のハイパスフィルタ成分に前記水平補正値を乗算した水平補正成分を前記各注目画素に加算して、前記各注目画素を水平方向に補正する
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズを備える撮像装置で使用するのに好適な画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズを備える撮像装置においては、レンズの倍率またはフォーカスの距離によっては、レンズの像面湾曲の影響により、フレームの中心でフォーカスが合う距離とフレームの端部でフォーカスが合う距離とがわずかにずれることがある。このような像面湾曲を有するレンズは、フレームの中心でフォーカスが合わせられていても、フレームの端部ではわずかにデフォーカスとなり、撮影された画像に歪みが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-149618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ズームレンズを介して撮影された画像に生じる歪みを補正することができる画像処理装置及び画像処理方法の登場が望まれる。本発明は、ズームレンズを介して撮影された画像に生じる歪みを補正することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ズームレンズを介して撮影された撮影画像のフレーム内に位置する画素の前記フレームの中心からの距離に応じた補正値が設定されている補正値テーブルと、前記フレーム内の各注目画素の前記中心からの距離に応じて前記補正値テーブルより読み出された補正値に、少なくとも前記ズームレンズのズーム倍率とフォーカス距離とによって決まる調整係数を乗算して調整補正値を生成する第1の乗算器と、前記調整補正値に前記中心に対する前記各注目画素の角度の余弦を乗算して、前記注目画素を水平方向に補正する水平補正値を生成する第2の乗算器と、前記各注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に、左右非対称の係数を乗算した乗算結果を全て加算して水平方向のハイパスフィルタ成分を生成し、前記水平方向のハイパスフィルタ成分に前記水平補正値を乗算した水平補正成分を前記各注目画素に加算して、前記各注目画素を水平方向に補正する水平フィルタとを備える画像処理装置を提供する。
【0006】
本発明は、補正値テーブルには、ズームレンズを介して撮影された撮影画像のフレーム内に位置する画素の前記フレームの中心からの距離に応じた補正値が設定されており、前記フレーム内の各注目画素の前記中心からの距離に応じて前記補正値テーブルより補正値を読み出し、読み出された前記補正値に、少なくとも前記ズームレンズのズーム倍率とフォーカス距離とによって決まる調整係数を乗算して調整補正値を生成し、前記調整補正値に前記中心に対する前記各注目画素の角度の余弦を乗算して、前記注目画素を水平方向に補正する水平補正値を生成し、前記各注目画素を中心とした左右方向の複数の画素に、左右非対称の係数を乗算した乗算結果を全て加算して水平方向のハイパスフィルタ成分を生成し、前記水平方向のハイパスフィルタ成分に前記水平補正値を乗算した水平補正成分を前記各注目画素に加算して、前記各注目画素を水平方向に補正する画像処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の画像処理装置及び画像処理方法によれば、ズームレンズを介して撮影された画像に生じる歪みを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ズームレンズを備える撮像装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】ベイヤ配列のカラーフィルタを示す部分平面図である。
図3】撮像装置による撮影画像に発生する滲みの第1の例を示す図である。
図4図3に示す撮影画像の滲みが発生している場合のなまった波形の矩形波信号を示す波形図である。
図5図1のデモザイク回路7より出力されるRGBの画像信号を示す部分平面図である。
図6】一実施形態の画像処理装置画像である、図1の画像なまり補正回路6の具体的な構成例を示すブロック図である。
図7】撮影画像のフレーム内の1つの注目画素が補正される動作を説明するための図である。
図8図6の補正値テーブル63に設定されている像高に応じた補正値を示す特性図である。
図9図8に示す補正値に乗算される、ズーム倍率、フォーカス距離、アイリス絞り値ごとに設定されている調整係数を示す図である。
図10図6の水平フィルタ67の具体的な構成例を示すブロック図である。
図11図10の乗算器6721~6729が画素データに乗算する係数k1~k9の係数値の一例を示す図である。
図12図4に示すなまった波形の矩形波信号が画像なまり補正回路6によって補正された矩形波信号を示す波形図である。
図13A図4に示すなまった波形の矩形波信号が画像なまり補正回路6によって過補正されてリンギングが発生している矩形波信号を示す波形図である。
図13B】リンギングが除去された矩形波信号を示す波形図である。
図14図6の垂直フィルタ68の具体的な構成例を示すブロック図である。
図15図14の乗算器6821~6829が画素データに乗算する係数k1~k9の係数値の一例を示す図である。
図16】撮像装置による撮影画像に発生する滲みの第2の例を示す図である。
図17図16に示す撮影画像の滲みが発生している場合のなまった波形の矩形波信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の画像処理装置及び画像処理方法について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、ズームレンズを備える撮像装置の概略的な構成及び動作を説明する。図1において、ズームレンズ1を介して入射された被写体からの光は赤外カットフィルタ2によって赤外光がカットされて、可視光が撮像素子3に入射される。ズームレンズ1は、複数のレンズと、アイリスとを有する。
【0010】
撮像素子3は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサであってもよいし、CCD(Charge Coupled Device)であってもよい。撮像装置は、撮像素子3によって被写体の静止画像または動画像を撮影する。
【0011】
撮像素子3は、図2に示すベイヤ配列のカラーフィルタを備える。ベイヤ配列のカラーフィルタには、赤(R)の画素と緑(G)の画素の生成するためのRフィルタとGフィルタとを交互に配列した行と、青(B)とGの画素の生成するためのBフィルタとGフィルタとを交互に配列した行とが列方向に交互に並べられている。行は画像の水平方向であり、列は画像の垂直方向である。水平方向においてRフィルタに挟まれたGフィルタをG1フィルタ、Bに挟まれたGフィルタをG2フィルタとする。
【0012】
タイミングジェネレータ4は、撮像素子3に水平同期信号Hsync及び垂直同期信号Vsyncを供給する。撮像素子3は、Rフィルタ、G1フィルタ、G2フィルタ、Bフィルタにそれぞれ対応するデジタルの色信号である画素データR(3)、G1(3)、G2(3)、B(3)を生成する。撮像素子3は、画素データR(3)、G1(3)、G2(3)、B(3)、水平同期信号Hsync(3)、及び垂直同期信号Vsync(3)をホワイトバランス回路5に供給する。
【0013】
ホワイトバランス回路5は、画素データR(3)、G1(3)、G2(3)、B(3)の各値を調整してホワイトバランスを調整する。ホワイトバランス回路5は、ホワイトバランスを調整した画素データR(5)、G1(5)、G2(5)、B(5)、水平同期信号Hsync(5)、及び垂直同期信号Vsync(5)を、画像なまり補正回路6に供給する。
【0014】
中央処理装置10(以下、CPU10)には、ズームレンズ1より、ズーム倍率、フォーカス距離、及びアイリス絞り値が供給される。CPU10は、後述する、補正用設定値と調整係数Acoと反転オン/オフ信号を画像なまり補正回路6に供給する。
【0015】
図3及び図4を用いて、画像なまり補正回路6の概略的な動作を説明する。図3に示すように、撮像装置による撮影画像が黒と白とを交互に繰り返すような画像である場合、本来であれば画像信号は水平方向及び垂直方向に黒のレベルと白のレベルとを交互に繰り返す矩形波信号となる。ところが、フレームの中心でフォーカスが合わせられているとき、ズームレンズ1におけるレンズの像面湾曲の影響により、端部でわずかにデフォーカスとなって撮影された画像に歪みが生じる。
【0016】
図4に示すように矩形波信号がいびつな波形となり、一点鎖線の円で囲んで示すように水平方向または垂直方向に白から黒へと変化する境界部の黒付近において波形が大きくなまる。ところが、水平方向または垂直方向に黒から白へと変化する境界部の黒付近において波形はさほどなまらない。また、二点鎖線の円で囲んで示すように黒から白へと変化する境界部の白付近において波形がなまることもある。その結果、図3に示すように、水平方向または垂直方向に白から黒へと変化する境界の黒付近において滲みが発生し、また、黒から白へと変化する境界部の白付近においてもわずかな滲みが発生して、境界が明確とならない。なお、矩形波信号の歪みの程度はフレーム内の位置によって異なり、波形のなまりの程度も一定ではない。
【0017】
画像なまり補正回路6は、画素データR(3)、G1(3)、G2(3)、B(3)における図4に示すような波形のなまりを補正する。画像なまり補正回路6は、波形のなまりを補正した画素データR(6)、G1(6)、G2(6)、B(6)、水平同期信号Hsync(6)、及び垂直同期信号Vsync(6)を、デモザイク回路7に供給する。画像なまり補正回路6の具体的な構成及びその動作については後に詳述する。
【0018】
デモザイク回路7には、フレーム内に画素データR(6)、G1(6)、G2(6)、B(6)が混在した画像信号が入力される。デモザイク回路7は、Rの画素データが存在しない画素位置にRの画素データを補間してフレーム内の全画素をRの画素データとした図5の(a)に示すR画像信号R(7)を生成する。デモザイク回路7は、Gの画素データが存在しない画素位置にGの画素データを補間してフレーム内の全画素をGの画素データとした図5の(b)に示すG画像信号G(7)を生成する。デモザイク回路7は、Bの画素データが存在しない画素位置にBの画素データを補間してフレーム内の全画素をBの画素データとした図5の(c)に示すB画像信号B(7)を生成する。
【0019】
色補正回路8は、R画像信号R(7)、G画像信号G(7)、B画像信号B(7)の色を補正してR画像信号R(8)、G画像信号G(8)、B画像信号B(8)を生成する。ガンマ補正回路9は、R画像信号R(8)、G画像信号G(8)、B画像信号B(8)にガンマ補正を施して、R画像信号R(9)、G画像信号G(9)、B画像信号B(9)として出力する。R画像信号R(9)、G画像信号G(9)、B画像信号B(9)は、図示していない変換回路によって輝度及び色差信号に変換されて出力されてもよいし、図示していない表示部に表示されてもよいし、図示していない記録部に記録されてもよい。
【0020】
図6は、画像なまり補正回路6の具体的な構成例を示す。図6に示すように、画像なまり補正回路6は、タイミングジェネレータ61、反転器62、補正値テーブル63、乗算器64~66、4つの水平フィルタ67、4つの垂直フィルタ68を備える。
【0021】
タイミングジェネレータ61には、水平同期信号Hsync、垂直同期信号Vsync、補正用設定値としての水平センタ値Hctr及び垂直センタ値Vctrが入力される。水平センタ値Hctrはフレームの水平方向の中心(水平中心)であり、垂直センタ値Vctrはフレームの垂直方向の中心(垂直中心)である。図7に示すように、フレームが例えば水平方向2000画素、垂直方向1000ラインであるとすると、タイミングジェネレータ61には、水平センタ値Hctrとして1000、垂直センタ値Vctrとして500が入力される。
【0022】
フレームの水平方向の画素数、垂直方向のライン数が偶数であると、厳密な水平中心の画素及び垂直中心の画素は存在しないが、水平中心及び垂直中心に最も近い画素を水平センタ値Hctr及び垂直センタ値Vctrの画素とすればよい。
【0023】
撮像装置が手振れ補正機能を備える場合、手振れ補正に応じて水平センタ値Hctr及び垂直センタ値Vctrをずらすことが好ましい。光学式手振れ補正であっても、電子式手振れ補正であっても、手振れ補正のために撮影する画角をシフトするシフト量に対応して水平センタ値Hctr及び垂直センタ値Vctrをずらすのがよい。
【0024】
図7に示す例では、水平同期信号Hsyncから9画素目が有効画像領域の水平方向の画素の開始位置であり、垂直同期信号Vsyncから9ライン目が有効画像領域の垂直方向の画素の開始位置となっている。図7に示すように、フレームにおける水平センタ値Hctrに対する左側をLR=0、右側をLR=1、垂直センタ値Vctrに対する上側をUD=0、下側をUD=1とする。LR値は左右判別値であり、UD値は上下判別値である。水平センタ値Hctrの画素のLR値は0であっても1であってもよい。垂直センタ値Vctrの画素のUD値は0であっても1であってもよい。
【0025】
タイミングジェネレータ61は、水平フィルタ67に入力される画素データR(5)、G1(5)、G2(5)、B(5)の各画素位置に対応してLR値及びUD値を生成して反転器62に供給する。反転器62には反転オン/オフ信号が入力される。反転器62は、反転オン/オフ信号として反転オフを示す0であれば、入力されたLR値を反転せず4つの水平フィルタ67に供給し、入力されたUD値を反転せず4つの垂直フィルタ68に供給する。
【0026】
反転器62は、反転オン/オフ信号として反転オンを示す1であれば、入力されたLR値を反転して4つの水平フィルタ67に供給し、入力されたUD値を反転して4つの垂直フィルタ68に供給する。反転オン/オフ信号の意味及び反転器62の動作については後述する。反転オン/オフ信号の値1は、LR値の反転を指示する指示信号である。
【0027】
タイミングジェネレータ61は、水平フィルタ67に入力される画素データR(5)、G1(5)、G2(5)、B(5)の各画素位置に対応して像高IHを生成して補正値テーブル63に供給する。一例として、補正対象の注目画素Pが図7に示す画素位置であれば、水平センタ値Hctr及び垂直センタ値Vctrであるフレームの中心から画素Pまでの距離が像高IHとなる。
【0028】
補正値テーブル63には、一例として図8に示すような特性を有する、像高IHに応じた補正値ZGが設定されている。補正値ZGは、フレームの中心である像高IHが0から所定の像高IHまでは0である。補正値ZGは、その所定の像高IHを超えると、最大値の1.0まで上に凸の曲線状に漸増し、最大値の1.0に達した後に最大像高まで上に凸の曲線状に漸減する。
【0029】
補正値ZGは、像高IHに応じて、レンズの像面湾曲の影響による画像の歪みを補正する特性を有すればよい。補正値ZGの特性は撮像装置で使用されているレンズに応じて設定すればよく、図8に示す特性に限定されるものではない。一般的には、フレームの中心部では補正する必要がないので、補正値ZGはフレームの中心から所定の像高IHまでは0であって、その所定の像高IHを超えると像高IHに応じた補正値ZGが設定されていればよい。
【0030】
補正値テーブル63は、各注目画素の像高IHに対応する補正値ZGを読み出して、乗算器64(第1の乗算器)に供給する。図9に示すように、CPU10は、ズーム倍率とフォーカス距離とによって決まる1未満の調整係数Acoを乗算器64に供給する。ズーム倍率とフォーカス距離とに対応した調整係数Acoは、アイリス絞り値ごとに設定されていることが好ましい。図9に示す例では、アイリス絞り値としてF2.8、F4、F5.6、F8、F11、及びF16以上に分けて、ズーム倍率とフォーカス距離とに対応した調整係数Acoが設定されている。
【0031】
CPU10には、ズーム倍率とフォーカス距離(好ましくはズーム倍率とフォーカス距離とアイリス絞り値)に応じて、レンズの像面湾曲の影響による画像の歪みを適切に補正することができる調整係数Acoが設定されていればよい。具体的な調整係数Acoは撮像装置で使用されているレンズに応じて設定すればよく、図9に示す値に限定されるものではない。
【0032】
本実施形態で使用したレンズにおいては、フォーカス距離が2m、ズーム倍率が1倍及び18倍において歪みがほとんどなく、補正値ZGを0とするために調整係数Acoを0としている。
【0033】
乗算器64は、入力された補正値ZGに、CPU10より供給された、ズーム倍率、フォーカス距離、及びアイリス絞り値によって決まる調整係数Acoを乗算して、調整補正値ZGAを生成する。調整補正値ZGAは、乗算器65及び66に供給される。
【0034】
タイミングジェネレータ61は、フレームの中心に対して各注目画素が位置する角度θに応じたcosθ(余弦)の値を乗算器65(第2の乗算器)に供給し、sinθ(正弦)の値を乗算器66(第3の乗算器)に供給する。図7に示すように、調整補正値ZGAにcosθの値を乗算すれば、注目画素Pを補正する調整補正値ZGAの水平成分を得ることができ、調整補正値ZGAにsinθの値を乗算すれば、注目画素Pを補正する調整補正値ZGAの垂直成分を得ることができる。乗算器65は、調整補正値ZGAにcosθの値を乗算した水平補正値AHを4つの水平フィルタ67に供給する。乗算器66は、調整補正値ZGAにsinθの値を乗算した垂直補正値AVを4つの垂直フィルタ68に供給する。
【0035】
図10は水平フィルタ67の具体的な構成例を示す。水平フィルタ67は、シフトレジスタを構成するDフリップフロップ6701~6709、最大値・最小値検出部6710、セレクタ6711~6714及び6716~6719、乗算器6721~6729、加算器6730、乗算器6731、加算器6732、セレクタ6733、クリッパ6734を備える。
【0036】
直列に接続されたDフリップフロップ6701~6709は、順に入力される注目画素の画素データを1画素期間ずつ順に遅延する。
【0037】
Dフリップフロップ6701より出力された画素データは、セレクタ6711の端子t0及びセレクタ6719の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6702より出力された画素データは、セレクタ6712の端子t0及びセレクタ6718の端子t1に供給される。
【0038】
Dフリップフロップ6703より出力された画素データは、セレクタ6713の端子t0及びセレクタ6717の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6704より出力された画素データは、セレクタ6714の端子t0及びセレクタ6716の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6705より出力された画素データは、乗算器6725に供給される。Dフリップフロップ6705より出力された画素データが、実際に歪みが補正される注目画素の画素データである。
【0039】
Dフリップフロップ6706より出力された画素データは、セレクタ6716の端子t0及びセレクタ6714の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6707より出力された画素データは、セレクタ6717の端子t0及びセレクタ6713の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6708より出力された画素データは、セレクタ6718の端子t0及びセレクタ6712の端子t1に供給される。Dフリップフロップ6709より出力された画素データは、セレクタ6719の端子t0及びセレクタ6711の端子t1に供給される。
【0040】
セレクタ6711~6714及び6716~6719には、LR値が入力される。セレクタ6711~6714及び6716~6719は、LR値が0であるとき、即ち、注目画素がフレームの水平中心に対して左側に位置しているとき、端子t0に入力された画素データを選択する。セレクタ6711~6714及び6716~6719は、LR値が1であるとき、即ち、画素がフレームの水平中心に対して右側に位置しているとき、端子t1に入力された画素データを選択する。セレクタ6711~6714及び6716~6719によって選択された画素データは、それぞれ、乗算器6721~6724及び6726~6729に供給される。
【0041】
図11に示すように、乗算器6721~6729は、入力された画素データに、係数k1~k9として、それぞれ、-0.18、-0.14、-0.15、0.10、0.59、-0.02、0、0、0を乗算して出力する。係数k1~k9の係数値は一例である。図11に示す係数k1~k9は、フレームの水平中心に対して左側に位置している画素を補正するのに適した係数値とされており、注目画素を中心として左右方向に非対称である。
【0042】
上記のように、注目画素がフレームの水平中心に対して左側に位置しているとき、セレクタ6711~6714及び6716~6719が端子t0に入力された画素データを選択すれば、乗算器6721~6729は各注目画素を中心とした左右方向の9画素に対して図11に示す係数値の係数k1~k9をそのまま乗算することができる。
【0043】
フレームの水平中心に対して左側で生じる歪みと右側で生じる歪みとは左右対称であるから、フレームの水平中心に対して右側に位置している画素を補正するのに適した係数値は、図11に示す係数k1~k9を左右に反転すればよい。上記のように、注目画素がフレームの水平中心に対して右側に位置しているとき、セレクタ6711~6714及び6716~6719が端子t1に入力された画素データを選択すれば、乗算器6721~6729は各注目画素を中心とした左右方向の9画素に対して図11に示す係数k1~k9を左右方向に反転させて乗算することができる。
【0044】
加算器6730は、乗算器6721~6729による乗算結果を全て加算して、水平方向のハイパスフィルタ成分HHFを生成する。ハイパスフィルタ成分HHFは交流成分であって、正または負の値を有する。乗算器6731は、ハイパスフィルタ成分HHFに水平補正値AHを乗算して、水平補正成分AHHを生成する。加算器6732は、Dフリップフロップ6705より出力された注目画素の画素データに水平補正成分AHHを加算して、注目画素の画素データを水平方向に補正する。
【0045】
最大値・最小値検出部6710は、Dフリップフロップ6701~6709より出力された画素データのうちの最大値Vmaxと最小値Vminを検出して、セレクタ6733に供給する。ハイパスフィルタ成分HHFが正であるか負であるかを示す符号HHFsはセレクタ6733及びクリッパ6734に供給される。符号HHFsはハイパスフィルタ成分HHFが正であるとき0、負であるとき1である。セレクタ6733は、符号HHFsが0であれば、最大値Vmaxを選択して出力し、符号HHFsが1であれば、最小値Vminを選択して出力する。
【0046】
加算器6732より出力された画素データが過補正されておらず、符号HHFsが0であって補正後の画素値が最大値Vmaxを上回らなければ、また、符号HHFsが1であって補正後の画素値が最小値Vminを下回らなければ、クリッパ6734は動作しない。クリッパ6734は、加算器6732より出力された画素データをそのまま補正画素データとして出力する。
【0047】
図12は、水平方向に白から黒へと変化する境界部の黒付近においてなまっている矩形波信号が水平フィルタ67によって補正された矩形波信号を示している。一点鎖線の円で囲んだ水平方向に白から黒へと変化する境界部の黒付近の波形は、細い実線で示す補正前の波形から太い実線で示すように補正される。なまっていない黒から白へと変化する境界部の黒付近の波形は補正されず、元の波形が維持されている。よって、水平方向に白から黒へと変化する境界の黒付近における滲みが解消し、境界が明確となる。
【0048】
また、図12は、水平方向に黒から白へと変化する境界部の白付近においてなまっている矩形波信号が水平フィルタ67によって補正された矩形波信号を示している。二点鎖線の円で囲んだ水平方向に黒から白へと変化する境界部の白付近の波形は、細い実線で示す補正前の波形から太い実線で示すように補正される。なまっていない白から黒へと変化する境界部の白付近の波形は補正されず、元の波形が維持されている。よって、水平方向に黒から白へと変化する境界の白付近における滲みが解消し、境界が明確となる。
【0049】
以上のように、フレームの中心でフォーカスを合わせることを前提とすると、画像なまり補正回路6は、端部において生じる画像に歪みを補正することができる。ところが、例えばマニュアルフォーカスによってフレームの端部でフォーカスを合わせると、端部において生じる歪みが小さくなり、水平フィルタ67による補正が過補正となることがある。
【0050】
具体的には、加算器6732より出力された画素データが過補正されて、図13Aに示すように、補正後の画素値が最大値Vmaxを上回ったり、最小値Vminを下回ったりして、一点鎖線の円で囲んで示すようにリンギングが発生することがある。
【0051】
クリッパ6734は、符号HHFsが0であって補正後の画素値が最大値Vmaxを上回っていれば、セレクタ6733より供給された最大値Vmaxで加算器6732より出力された画素データをクリップする。クリッパ6734は、符号HHFsが1であって補正後の画素値が最小値Vminを下回っていれば、セレクタ6733より供給された最小値Vminで加算器6732より出力された画素データをクリップする。
【0052】
この結果、図13Bに一点鎖線の円で囲んで示すように、クリッパ6734は、加算器6732より出力された画素データに付加されているリンギングを除去した水平方向の補正画素データを出力する。
【0053】
図6において、4つの水平フィルタ67によって水平方向に補正された画素データR(6H)、G1(6H)、G2(6H)、B(6H)は4つの垂直フィルタ68にそれぞれ入力されて、垂直方向にも補正される。
【0054】
図14は垂直フィルタ68の具体的な構成例を示す。垂直フィルタ68は、ラインメモリ6801~6809、最大値・最小値検出部6810、セレクタ6811~6814及び6816~6819、乗算器6821~6829、加算器6830、乗算器6831、加算器6832、セレクタ6833、クリッパ6834を備える。
【0055】
直列に接続されたラインメモリ6801~6809は、入力された画素データを1水平期間ずつ順に遅延する。ラインメモリ6801より出力された画素データは、セレクタ6811の端子t0及びセレクタ6819の端子t1に供給される。ラインメモリ6802より出力された画素データは、セレクタ6812の端子t0及びセレクタ6818の端子t1に供給される。
【0056】
ラインメモリ6803より出力された画素データは、セレクタ6813の端子t0及びセレクタ6817の端子t1に供給される。ラインメモリ6804より出力された画素データは、セレクタ6814の端子t0及びセレクタ6816の端子t1に供給される。ラインメモリ6805より出力された画素データは、乗算器6825に供給される。ラインメモリ6805より出力された画素データが、実際に歪みが補正される注目画素の画素データである。
【0057】
ラインメモリ6806より出力された画素データは、セレクタ6816の端子t0及びセレクタ6814の端子t1に供給される。ラインメモリ6807より出力された画素データは、セレクタ6817の端子t0及びセレクタ6813の端子t1に供給される。ラインメモリ6808より出力された画素データは、セレクタ6818の端子t0及びセレクタ6812の端子t1に供給される。ラインメモリ6809より出力された画素データは、セレクタ6819の端子t0及びセレクタ6811の端子t1に供給される。
【0058】
セレクタ6811~6814及び6816~6819には、UD値が入力される。セレクタ6811~6814及び6816~6819は、UD値が0であるとき、即ち、注目画素がフレームの垂直中心に対して上側に位置しているとき、端子t0に入力された画素データを選択する。セレクタ6811~6814及び6816~6819は、UD値が1であるとき、即ち、注目画素がフレームの垂直中心に対して下側に位置しているとき、端子t1に入力された画素データを選択する。セレクタ6811~6814及び6816~6819によって選択された画素データは、それぞれ、乗算器6821~6824及び6826~6829に供給される。
【0059】
図15に示すように、乗算器6821~6829は、入力された画素データに、係数k1~k9として、それぞれ、-0.18、-0.14、-0.15、0.10、0.59、-0.02、0、0、0を乗算して出力する。係数k1~k9の係数値は一例であって、ここでは水平フィルタ67の乗算器6721~6729が用いる係数k1~k9と同じ係数値としている。乗算器6821~6829が用いる係数値を乗算器6721~6729が用いる係数値と異ならせてもよい。
【0060】
図15に示す係数k1~k9は、フレームの垂直中心に対して上側に位置している画素を補正するのに適した係数値とされており、注目画素を中心として上下方向に非対称である。
【0061】
上記のように、注目画素がフレームの垂直中心に対して上側に位置しているとき、セレクタ6811~6814及び6816~6819が端子t0に入力された画素データを選択すれば、乗算器6821~6829は各注目画素を中心とした上下方向の9画素に対して図15に示す係数値の係数k1~k9をそのまま乗算することができる。
【0062】
フレームの垂直中心に対して上側で生じる歪みと下側で生じる歪みとは上下対称であるから、フレームの垂直中心に対して下側に位置している画素を補正するのに適した係数値は、図15に示す係数k1~k9を上下に反転すればよい。上記のように、注目画素がフレームの垂直中心に対して下側に位置しているとき、セレクタ6811~6814及び6816~6819が端子t1に入力された画素データを選択すれば、乗算器6821~6829は各注目画素を中心とした上下方向の9画素に対して図15に示す係数k1~k9を上下方向に反転させて乗算することができる。
【0063】
加算器6830は、乗算器6821~6829による乗算結果を全て加算して、垂直方向のハイパスフィルタ成分VHFを生成する。ハイパスフィルタ成分VHFは交流成分であって、正または負の値を有する。乗算器6831は、ハイパスフィルタ成分VHFに垂直補正値AVを乗算して、垂直補正成分AVVを生成する。加算器6832は、ラインメモリ6805より出力された注目画素の画素データに垂直補正成分AVVを加算して、注目画素の画素データを垂直方向に補正する。
【0064】
最大値・最小値検出部6810は、ラインメモリ6801~6809より出力された画素データのうちの最大値Vmaxと最小値Vminを検出して、セレクタ6833に供給する。ハイパスフィルタ成分VHFが正であるか負であるかを示す符号VHFsはセレクタ6833及びクリッパ6834に供給される。符号VHFsはハイパスフィルタ成分VHFが正であるとき0、負であるとき1である。セレクタ6833は、符号VHFsが0であれば、最大値Vmaxを選択して出力し、符号VHFsが1であれば、最小値Vminを選択して出力する。
【0065】
加算器6832より出力された画素データが過補正されておらず、符号VHFsが0であって補正後の画素値が最大値Vmaxを上回らなければ、また、符号VHFs0が1であって補正後の画素値が最小値Vminを下回らなければ、クリッパ6834は動作しない。クリッパ6834は、加算器6832より出力された画素データをそのまま補正画素データとして出力する。
【0066】
垂直フィルタ68は、図12と同様に、垂直方向に白から黒へと変化する境界部の黒付近においてなまっている矩形波信号を補正する。よって、垂直方向に白から黒へと変化する境界の黒付近における滲みが解消し、境界が明確となる。また、垂直フィルタ68は、垂直方向に黒から白へと変化する境界部の白付近においてなまっている矩形波信号を補正する。よって、垂直方向に黒から白へと変化する境界の白付近における滲みが解消し、境界が明確となる。
【0067】
水平フィルタ67と同様に、加算器6832より出力された画素データが過補正されると、補正後の画素値が最大値Vmaxを上回ったり、最小値Vminを下回ったりして、リンギングが発生することがある。
【0068】
クリッパ6834は、符号VHFsが0であって補正後の画素値が最大値Vmaxを上回っていれば、セレクタ6833より供給された最大値Vmaxで加算器6832より出力された画素データをクリップする。クリッパ6834は、符号VHFsが1であって補正後の画素値が最小値Vminを下回っていれば、セレクタ6833より供給された最小値Vminで加算器6832より出力された画素データをクリップする。この結果、クリッパ6834は、加算器6832より出力された画素データに付加されているリンギングを除去した垂直方向の補正画素データを出力する。
【0069】
以上のようにして、図6の4つの垂直フィルタ68からは、フレーム内の各画素において水平方向及び垂直方向に補正された画素データR(6)、G1(6)、G2(6)、B(6)が出力される。
【0070】
ここで、反転オン/オフ信号の意味及び反転器62の動作について説明する。以上の説明では水平方向及び垂直方向に白から黒へと変化する境界部において波形がなまって境界において滲みが発生すると述べたが、フォーカス距離によっては、逆方向に波形のなまりが発生することがある。
【0071】
本実施形態で使用したレンズにおいては、フォーカス距離が4m以上では図4に示すように水平方向及び垂直方向に白から黒へと変化する境界の黒付近において滲みが発生する。また、水平方向及び垂直方向に黒から白へと変化する境界の白付近において滲みが発生する。ところが、フォーカス距離が1m及び1.5mでは、図4とは逆で、図16に示すように、水平方向及び垂直方向に黒から白へと変化する境界の黒付近において滲みが発生する。また、水平方向及び垂直方向に白から黒へと変化する境界の白付近においても滲みが発生する。
【0072】
図17に示すように、矩形波信号は、一点鎖線の円で囲んで示すように水平方向及び垂直方向に黒から白へと変化する境界部の黒付近において波形が大きくなまる。また、矩形波信号は、二点鎖線の円で囲んで示すように水平方向及び垂直方向に白から黒へと変化する境界部の白付近において波形が大きくなまる。
【0073】
そこで、CPU10は、フォーカス距離が1m及び1.5mを第1の範囲、フォーカス距離が4m以上を第2の範囲とする。CPU10は、フォーカス距離が第2の範囲であるときには反転オン/オフ信号として反転オフを示す0を出力し、フォーカス距離が第1の範囲であるときには反転オン/オフ信号として反転オンを示す1を出力する。画像なまり補正回路6の反転器62は、反転オン/オフ信号が1であればLR値及びUD値を反転させる。
【0074】
LR値及びUD値を反転させれば、フレームの水平中心に対して左側または垂直中心に対して上側に位置している注目画素を補正する際には係数k1~k9が反転されて使用される。また、フレームの水平方中央に対して右側または垂直中心に対して下側に位置している注目画素を補正する際には係数k1~k9は反転されずそのまま使用される。
【0075】
これによって、画像なまり補正回路6は、波形がなまる境界が逆方向であっても、波形のなまりを補正することができる。
【0076】
撮像装置が、例えばフォーカス距離を1m、1.5m、2m、4m…と順に変化させていくと、矩形波信号を補正する方向がフォーカス距離1.5mとフォーカス距離4mとの間で反転する。このとき、第1の範囲と第2の範囲との境界のフォーカス距離であるフォーカス距離2mでは調整係数Acoは0とされているから、調整補正値ZGAは0とされる。よって、フォーカス距離2mでは矩形波信号は補正されないので、矩形波信号を補正する方向が反転することによる視覚的な違和感が発生しにくい。
【0077】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。画像なまり補正回路6は、水平フィルタ67及び垂直フィルタ68を備え、各画素を水平方向及び垂直方向の双方に補正している。水平フィルタ67によって各画素を水平方向のみに補正しても効果的であるので、垂直フィルタ68を省略してもよい。
【0078】
補正値テーブル63は、複数の像高IHに対応した離散的な複数の補正値を記憶するROMのような記憶部であってもよいし、予め設定した計算式に基づいて像高IHに対応した補正値を計算して出力するプロセッサであってもよい。
【0079】
本実施形態においては、図11に示す係数k1~k9を、フレームの水平中心に対して左側に位置している画素を補正するのに適した係数値としている。係数k1~k9を、フレームの水平中心に対して右側に位置している画素を補正するのに適した係数値として、フレームの水平中心に対して左側に位置する画素を補正する際に係数k1~k9を反転してもよい。
【0080】
また、本実施形態においては、図15に示す係数k1~k9を、フレームの垂直中心に対して上側に位置している画素を補正するのに適した係数値としている。係数k1~k9を、フレームの垂直中心に対して下側に位置している画素を補正するのに適した係数値として、フレームの垂直中心に対して上側に位置する画素を補正する際に係数k1~k9を反転してもよい。
【0081】
左右非対称の係数k1~k9は、フレームの水平中心に対して左側と右側とのうちの一方である第1の側に位置している画素を補正するのに適した係数値として、左側と右側とのうちの他方である第2の側に位置している画素を補正する際に左右に反転すればよい。上下非対称の係数k1~k9は、フレームの垂直中心に対して上側と下側とのうちの一方である第3の側に位置している画素を補正するのに適した係数値として、上側と下側とのうちの他方である第4の側に位置している画素を補正する際に上下に反転すればよい。
【0082】
本実施形態においては、フレームの端部でのデフォーカスに起因する画像の歪みを補正しているが、本実施形態は色収差等に起因する画像の歪みを補正することも可能である。
【0083】
本発明は、画像処理装置(画像なまり補正回路6)の機能をハードウェアの回路によって構成することに限定されない。画像処理装置と同等の機能を実行させるコンピュータプログラム(画像処理プログラム)を構成して、コンピュータ(CPU)に画像処理プログラムを実行させることも可能である。この場合、CPU10に画像処理プログラムを実行させてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ズームレンズ
2 赤外カットフィルタ
3 撮像素子
4,61 タイミングジェネレータ
5 ホワイトバランス回路
6 画像なまり補正回路
7 デモザイク回路
8 色補正回路
9 ガンマ補正回路
10 中央処理装置
62 反転器
63 補正値テーブル
64 乗算器(第1の乗算器)
65 乗算器(第2の乗算器)
66 乗算器
67 水平フィルタ
68 垂直フィルタ
6701~6709 Dフリップフロップ
6710,6810 最大値・最小値検出部
6711~6714,6716~6719,6733,6811~6814,6816~6819,6833 セレクタ
6721~6729,6731,6821~6829,6831 乗算器
6730,6732,6830,6832 加算器
6734,6834 クリッパ
6801~6809 ラインメモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17