(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】天井ボード裏の検査治具及びそれを用いた天井ボード裏の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01V 9/00 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
G01V9/00 A
(21)【出願番号】P 2020025398
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 充洋
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-047533(JP,A)
【文献】国際公開第2018/195215(WO,A2)
【文献】特開昭60-203723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370868(US,A1)
【文献】特開2009-192305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の取り付け範囲に開けられた貫通孔から配線コードが引き込まれている天井ボードの裏側を検査するための天井ボード裏の検査治具において、
前記貫通孔に挿入される中棒と、
主アームの末端が前記中棒の中心軸方向にスライド自在に連結され、前記主アームの前記末端のスライド動作に連動して、前記主アームの先端が前記中棒に対して開閉するように構成された少なくとも1つのアーム部と、
前記主アームの前記スライド動作を前記中棒の末端側において操作する操作部と、
を備える天井ボード裏の検査治具。
【請求項2】
前記中棒の先端に取り付けられ、前記配線コードを把持する把持部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項3】
前記中棒は前記配線コードを先端側から末端側へと挿通可能なように中空に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項4】
前記アーム部は、
前記中棒の中心軸方向に沿ってスライド自在に構成され、前記主アームの前記末端が回転自在に連結されたスライドジョイントと、
前記中棒に固定された固定ジョイントと、
一端が前記固定ジョイントに回転自在に連結され、他端が前記主アームの途中に回転自在に連結された補助アームと、
を含み、前記スライドジョイントを前記中棒の末端側に向けてスライドさせることにより、前記主アームの前記先端が前記中棒から径方向外側に向かって開くように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項5】
前記操作部は、一端が前記スライドジョイントに接続され、他端が前記中棒の末端側から外部に露出した紐を含むことを特徴とする請求項4に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項6】
前記検査治具には、複数の前記アーム部が設けられ、
前記操作部は、前記複数のアーム部のそれぞれの前記スライドジョイントを一斉に前記中棒の先端側に向けて押し上げるためのアーム戻し部を含むことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項7】
前記中棒には、前記アーム部の開閉方向を特定するための目印が付されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項8】
前記中棒の一部の周囲を覆うように取り付けられた円環の弾性部材を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項9】
前記中棒を前記貫通孔に挿入した際に前記天井ボードに接するガイド盤を備え、
前記ガイド盤は、前記電気機器の取り付け位置の位置決めを行うためのガイド孔を含むことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査治具。
【請求項10】
電気機器の取り付け範囲に開けられた貫通孔から配線コードが引き込まれている天井ボードの裏側を検査するための検査治具を用いた天井ボード裏の検査方法において、
前記検査治具は、
前記貫通孔に挿入される中棒と、
主アームの末端が前記中棒の中心軸方向にスライド自在に連結され、前記主アームの前記末端のスライド動作に連動して、前記主アームの先端が前記中棒に対して開閉するように構成された少なくとも1つのアーム部と、
前記末端の前記スライド動作を前記中棒の末端側において操作する操作部と、を備え、
前記検査方法は、
前記検査治具を前記貫通孔に挿入する挿入工程と、
前記操作部を操作したときの前記主アームの動作状態に基づいて、前記天井ボード裏における前記主アームの開方向における障害物有無を確認する障害物確認工程と、
を備えることを特徴とする天井ボード裏の検査方法。
【請求項11】
前記検査治具は、前記中棒の先端に取り付けられ、前記配線コードを把持する把持部を更に備え、
前記検査方法は、前記挿入工程に先立って、前記配線コードを前記把持部に把持する把持工程を更に備え、
前記挿入工程は、前記配線コードとともに前記検査治具を前記貫通孔に挿入することを特徴とする請求項10に記載の天井ボード裏の検査方法。
【請求項12】
前記中棒は中空に構成され、
前記検査方法は、前記挿入工程に先立って、前記配線コードを前記中棒の先端側から末端側へと挿通する挿通工程を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の天井ボード裏の検査方法。
【請求項13】
前記検査治具は、前記中棒の一部の周囲を覆うように取り付けられた円環の弾性部材を更に備え、
前記検査方法は、前記貫通孔の側面に前記弾性部材を押圧した際の前記弾性部材の押圧跡に基づいて、前記天井ボードの板厚を確認する板厚確認工程を更に備えることを特徴とする請求項10から請求項12の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査方法。
【請求項14】
前記障害物確認工程は、前記主アームが開いた状態で前記中棒を周方向に回転移動させることにより、前記主アームの回転範囲の障害物有無を更に確認することを特徴とする請求項10から請求項13の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査方法。
【請求項15】
前記検査治具は、前記中棒を前記貫通孔に挿入した際に前記天井ボードに接するガイド盤を備え、
前記ガイド盤は、前記電気機器を取り付け位置の位置決めを行うためのガイド孔を含み、
前記検査方法は、前記障害物確認工程において障害物がないと確認された方向に対応する前記ガイド盤の前記ガイド孔を用いて、前記天井ボードにマーキングを行うマーキング工程を更に備えることを特徴とする請求項10から請求項14の何れか1項に記載の天井ボード裏の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井ボード裏の検査治具に係り、特に、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け位置における天井ボード裏の障害物有無を検査するための検査治具及びそれを用いた天井ボード裏の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井ボードに照明器具等を埋め込んで取り付ける際における円形開口部を形成するための天井ボードの開口装置が開示されている。天井ボードに開口部を設ける作業には、不安定な姿勢を余儀なくされ、作業効率が悪いという課題がある。特許文献1の装置では、作業者が床面から直接に天井ボードの開口ができるようにしたので、作業効率の確保が図られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井ボードには、パッシブセンサ等の電気機器が取り付けられることがある。これらの電気機器の取り付け位置には、貫通孔が開けられ、この貫通孔から配線コードが引き込まれている。電気機器は、配線コードに接続した上で、当該貫通孔に重なる位置に取り付けられる。
【0005】
電気機器は、天井ボードに直接ねじ止めするか、又は天井ボードにボードアンカーを挿入した後にねじ止めすることにより取り付けされる。この際、天井ボードのねじ止め位置の裏側に金属フレーム等の障害物があると、挿入したねじ又はボードアンカーが当該障害物に接触するおそれがある。そのため、天井ボードに電気機器を取り付ける際には、天井ボードの裏側における障害物の有無を事前に検査することが求められる。しかしながら、天井ボードにおける電気機器の取り付け位置には、配線コードを引き込むための孔が開けられているのみであり、天井ボード裏側の状況を確認することは容易ではない。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け位置における天井ボード裏の障害物有無を検査するための検査治具及びそれを用いた天井ボード裏の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の検査治具は、電気機器の取り付け範囲に開けられた貫通孔から配線コードが引き込まれている天井ボードの裏側を検査するための天井ボード裏の検査治具において、貫通孔に挿入される中棒と、主アームの末端が中棒の中心軸方向にスライド自在に連結され、主アームの末端のスライド動作に連動して、主アームの先端が中棒に対して開閉するように構成された少なくとも1つのアーム部と、主アームのスライド動作を中棒の末端側において操作する操作部と、を備えるものである。
【0008】
また、本開示の検査方法は、電気機器の取り付け範囲に開けられた貫通孔から配線コードが引き込まれている天井ボードの裏側を検査するための検査治具を用いた天井ボード裏の検査方法において、検査治具は、貫通孔に挿入される中棒と、主アームの末端が中棒の中心軸方向にスライド自在に連結され、主アームの末端のスライド動作に連動して、主アームの先端が中棒に対して開閉するように構成された少なくとも1つのアーム部と、
主アームのスライド動作を中棒の末端側において操作する操作部と、を備え、検査方法は、検査治具を貫通孔に挿入する挿入工程と、操作部を操作したときの主アームの動作状態に基づいて、天井ボード裏における主アームの開方向における障害物有無を確認する障害物確認工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の天井ボード裏の検査治具によれば、中棒の末端側の操作部によって、主アームの先端が中棒に対して開閉するように操作することができる。これにより、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け位置において、検査治具を貫通孔に挿入し、操作部を操作したときの主アームの動作状態に基づいて、天井ボード裏における主アームの開方向における障害物有無を検査することができる。これにより、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け可能位置を把握することができるので、取り付け作業の作業効率が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における検査治具を斜め上方から見た図である。
【
図2】アーム部が径方向内側に向かって閉じた状態の検査治具を上方から見た平面図である。
【
図3】
図2のA-A方向からアーム部が径方向内側に向かって閉じた状態の検査治具の内部構造を見た部分断面図である。
【
図4】アーム部が径方向外側に向かって開いた状態の検査治具を上方から見た平面図である。
【
図5】
図4のB-B方向からアーム部が径方向外側に向かって開いた状態の検査治具の内部構造を見た部分断面図である。
【
図6】取り付け位置確認検査において配線コードを把持する把持工程を示す図である。
【
図7】取り付け位置確認検査において検査治具を挿入する挿入工程を示す図である。
【
図8】取り付け位置確認検査における障害物確認工程を示す図である。
【
図9】取り付け位置確認検査における障害物確認工程の他の例を示す図である。
【
図10】取り付け位置確認検査におけるアーム戻し工程を説明するための図である。
【
図11】取り付け位置確認検査における引き抜き工程を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2の検査治具を上方から見た平面図である。
【
図13】
図12のC-C方向から検査治具の内部構造を見た部分断面図である。
【
図14】取り付け位置確認検査における挿通工程を説明するための図である。
【
図15】取り付け位置確認検査において検査治具を挿入する挿入工程を示す図である。
【
図16】実施の形態3の検査治具を正面から見た正面図である。
【
図18】取り付け位置確認検査において検査治具を挿入する挿入工程を示す図である。
【
図19】取り付け位置確認検査における障害物確認工程及びマーキング工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における検査治具を斜め上方から見た図である。本実施の形態の検査治具10は、パッシブセンサ等の電気機器を天井ボードに取り付ける際に、取り付け位置の天井ボード裏側に金属レール等の障害物が存在しないかを検査するための治具である。以下の説明では、この検査を「取り付け位置確認検査」と表記する。天井ボードの取り付け位置には、電気機器に接続するための配線コードが貫通孔を介して天井裏から室内に引き込まれている。貫通孔は、例えば20mm程度の孔径を有している。検査治具10は、具体的には、室内側からこの貫通孔に挿入されることによって天井裏の状態が検査される。本実施の形態では、パッシブセンサの取り付けを例に、検査治具10の構成及び取り付け位置確認検査の手順について順に説明する。
【0013】
1-1.実施の形態1の検査治具の構成
図1に示すように、本実施の形態の検査治具10は、円筒形状の中棒12を備えている。中棒12は、少なくとも天井の貫通孔の孔径よりも小径に構成されている。以下の説明では、中棒12を構成する円筒の中心軸方向、径方向、及び周方向を、それぞれ検査治具10の中心軸方向、径方向、及び周方向と定義する。また、検査治具10は、先端側を鉛直上方に向けた状態で使用される。そこで、以下の説明では、中心軸方向のうち、先端側へ向かう方向を上方向と定義し、末端側へ向かう方向を下方向と定義する。
【0014】
中棒12の中心軸上方向の先端面には、配線コードを把持するためのコード把持部14が設けられている。コード把持部14は、例えばクリップである。コード把持部14は、先端面の範囲内で配線コードを把持可能な構成であれば、その構成に限定はない。
【0015】
中棒12の側面の先端側の領域には、複数のアーム部16が設けられている。アーム部16は、中棒12に対して開閉する可動アーム機構である。
図2は、アーム部が径方向内側に向かって閉じた状態の検査治具を上方から見た平面図である。
図3は、
図2のA-A方向からアーム部が径方向内側に向かって閉じた状態の検査治具の内部構造を見た部分断面図である。
図4は、アーム部が径方向外側に向かって開いた状態の検査治具を上方から見た平面図である。
図5は、
図4のB-B方向からアーム部が径方向外側に向かって開いた状態の検査治具の内部構造を見た部分断面図である。なお、これらの図では、4本のアーム部16が等間隔で設けられている例を図示しているが、アーム部16の個数及びその配置に限定はない。
【0016】
各アーム部16は、主アーム161と、補助アーム162と、を備えている。主アーム161の末端は、スライドジョイント163に回転自在に連結されている。中棒12の側面には、先端側から中心軸下方向の末端側に向かってスライド溝121が形成されている。スライドジョイント163は、スライド溝121に沿って中心軸方向にスライド自在に設けられている。
【0017】
補助アーム162の一端は、主アーム161の途中に回転自在に連結されている。補助アーム162の他端は、中棒12の側面に固定された固定ジョイント164に回転自在に連結されている。
【0018】
スライドジョイント163には、操作部としての紐18の一端が接続されている。紐18の他端は、中棒12の筒内を通って下端から外部へと露出するように引き出されている。引き出された紐18が下方に向かって引っ張られると、スライドジョイント163が下方向へ向かってスライドする。スライドジョイント163がスライドすると、これに連結された主アーム161の末端が下方向へ向かってスライドする。主アーム161は、末端の下方向へのスライド動作に連動して先端が中棒12に対して径方向外側に向かって開く。なお、アーム部16は、対象とする電気機器の取り付け位置よりも径方向外側に広がるように、主アーム161及び補助アーム162の長さが決められている。
【0019】
中棒12の筒内には、操作部としてのアーム戻し部20が中棒12の末端側から挿入されている。アーム戻し部20は、中棒12の内径よりも小径の円筒形状を有し、その先端が複数のアーム部16に対応した全てのスライドジョイント163に接触するように構成されている。アーム部16が径方向外側に向かって開いた状態では、スライドジョイント163は中心軸下方向へスライドしている。アーム戻し部20が中棒12の筒内に押し込まれると、複数のスライドジョイント163が中棒12の先端側へと一斉に押し上げられる。スライドジョイント163がスライドすると、これに連結された主アーム161の末端が上方向へ向かってスライドする。主アーム161は、末端の上方向へのスライド動作に連動して先端が中棒12に向かって閉じる。これにより、複数のアーム部16は、径方向内側に向かって一斉に閉じられる。
【0020】
中棒12の側面において、アーム部16よりも中心軸下方向の領域には、板厚確認部22が設けられている。板厚確認部22は円環形状を有し、中棒12の一部の周囲を覆うように設けられている。板厚確認部22は、押圧跡が短時間残存するゴム等の弾性部材で構成される。
【0021】
中棒12の側面において、板厚確認部22よりも更に中心軸下方向の領域にはエリア確認部24が設けられている。エリア確認部24は、複数のアーム部16のそれぞれの開方向を含むエリアを特定するための目印である。エリア確認部24は、複数のアーム部16のそれぞれの開閉方向に対応して区分けされ、それぞれのアーム部16に対応する番号が付されている。
【0022】
1-2.実施の形態1の検査治具を用いた取り付け位置確認検査の手順
次に、本実施の形態の検査治具10を用いて取り付け位置確認検査を行う際の検査方法について説明する。
【0023】
1-2-1.把持工程
図6は、取り付け位置確認検査において配線コードを把持する把持工程を示す図である。
図6に示すように、取り付け位置確認検査の把持工程では、先ず、天井ボードの貫通孔から室内へ引き出されている配線コードをコード把持部14に把持する。把持工程は、後述する挿入工程に先立って行われる。
【0024】
1-2-2.挿入工程
図7は、取り付け位置確認検査において検査治具10を挿入する挿入工程を示す図である。配線コードが室内に引き出された状態では、検査治具10を貫通孔に挿入することができないおそれがある。そこで、取り付け位置確認検査の挿入工程では、把持した配線コードとともに、検査治具10を貫通孔に挿入する。
【0025】
1-2-3.天井ボード板厚確認工程
検査治具10を貫通孔に挿入した際、検査治具10を径方向に動かして板厚確認部22を貫通孔の側面に押圧する。板厚確認部22には、貫通孔の側面の押圧跡がしばらく残る。ここでは、押圧跡の中心軸方向の幅を測定する。これにより、天井ボードの板厚を確認することができるので、パッシブセンサを取り付ける際に使用するねじ又はボードアンカーを適切に選定することができる。
【0026】
1-2-4.障害物確認工程
図8は、取り付け位置確認検査における障害物確認工程を示す図である。障害物確認工程では、複数のアーム部16のそれぞれに対応した紐18を順に引っ張った時のそれぞれのアーム部16の動作状態に基づいて障害物有無を検査する。紐18を引っ張ると、対応するアーム部16が径方向外側に向かって開く。アーム部16が完全に開くまで紐18を引くことができれば、アーム部16が開いた方向に障害物がないと判断することができる。
図8では、障害物が存在せず、全ての紐18を引くことができた場合を例示している。
【0027】
エリア確認部24に付された番号は、そのエリアに配置されたアーム部16の番号に対応している。このため、エリア確認部24に付された番号を確認しながら対応する紐18を引くことにより、現在検査しているアーム部16の開方向を把握することができる。
【0028】
なお、障害物確認工程では、紐を引いた状態で検査治具10を周方向に回転移動させて障害物に接触するか否かを検査することが好ましい。これにより、主アーム161の回転範囲の障害物有無を検査することができる。例えば、検査治具10が4本のアーム部16を備える場合、周方向に90°回転させることにより、アーム部16が開いている範囲の全エリアを検査することが可能となる。このような検査動作は、アーム部16の本数が少ない場合に特に有効である。
【0029】
図9は、取り付け位置確認検査における障害物確認工程の他の例を示す図である。
図9に示す例は、複数のアーム部16のうちの一つが障害物に接触した場合を示している。この場合、紐18を途中までしか引くことができない。検査者は、この紐18に対応するエリアをエリア確認部24によって確認する。
図9に示す例では、検査者は、エリア1の方向に障害物があることを把握することができる。
【0030】
1-2-5.アーム戻し工程
図10は、取り付け位置確認検査におけるアーム戻し工程を説明するための図である。アーム戻し工程では、アーム戻し部20を中心軸上方向に押し込む。これにより、全てのアーム部16が一斉に閉じる。
【0031】
1-2-6.引き抜き工程
図11は、取り付け位置確認検査における引き抜き工程を説明するための図である。引き抜き工程では、アーム戻し部20を中心軸上方向に押し込んだ状態で検査治具10を貫通孔から引き抜く。これにより、コード把持部14に把持されている配線コードが貫通孔から室内へと引き出される。
【0032】
以上のような一連の検査工程によれば、パッシブセンサの取り付け位置における天井ボード裏の障害物有無を検査することができる。これにより、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け可能位置を把握することができるので、取り付け作業の作業効率が上がる。
【0033】
1-3.実施の形態1の変形例
実施の形態1の検査治具は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0034】
アーム部16の数量及び配置に限定はない。アーム部16の数量が多いほど隣接するアーム部16の間隔が狭くなるので、障害物の有無を漏れなく検査することができる。また、アーム部16の機構に限定はない。すなわち、アーム部16は、手元の操作によって主アーム161の末端を中心軸方向にスライドさせて中棒12に対して主アーム161を開閉させることができる機構であればよい。
【0035】
操作部としての紐18は、スライドジョイント122を下方に引っ張ることが可能な構成であれば、例えば棒でもよい。なお、操作部が棒で構成されている場合、スライドジョイント122を上方に押し上げるアーム戻し部20としての機能を持たせてもよい。
【0036】
板厚確認部22、及びエリア確認部24の構成は、検査治具10の必須の構成要素ではない。
【0037】
2.実施の形態2.
2-1.実施の形態2の検査治具の構成
実施の形態1の検査治具10は、配線コードをコード把持部14に把持した状態で検査治具10を貫通孔に挿入することとした。本実施の形態では、中棒12の先端側から末端側に向かって配線コードを挿通させる構成に特徴を有している。
図12は実施の形態2の検査治具を上方から見た平面図である。
図13は、
図12のC-C方向から検査治具の内部構造を見た部分断面図である。
図12及び
図13に示すように、中空の中棒12の先端面には、開口124が設けられている。開口124は、少なくとも配線コードを挿通可能な大きさとされる。開口124の形状に限定はない。アーム戻し部20は、中心軸上方向の先端面及び下方向の末端面が何れも開口している。本実施の形態における検査治具10の他の構成は、実施の形態1で開示した構成と同様である。
【0038】
2-2.実施の形態2の検査治具を用いた取り付け位置確認検査の手順
次に、本実施の形態の検査治具10を用いて取り付け位置確認検査を行う際の検査手順について説明する。
【0039】
2-2-1.挿通工程
図14は、取り付け位置確認検査における挿通工程を説明するための図である。挿通工程では、天井ボードの貫通孔から室内へ引き出されている配線コードが検査治具10の中棒12に設けられた開口124から筒内を通って、アーム戻し部20の末端の開口から引き出される。挿通工程は、挿入工程に先立って行われる。
【0040】
2-2-2.挿入工程
図15は、取り付け位置確認検査において検査治具10を挿入する挿入工程を示す図である。本実施の形態の挿入工程では、配線コードが挿通された検査治具10を貫通孔に挿入する。その後の障害物確認工程、アーム戻し工程、及び引き抜き工程については、実施の形態1の取り付け位置確認検査と同様である。
【0041】
以上の検査手順によれば、配線コードを室内に引き出した状態で取り付け位置確認検査を行うことができる。これにより、配線コードが天井裏から引き出せなくなることを防止することができる。
【0042】
3.実施の形態3.
3-1.実施の形態3の検査治具の構成
本実施の形態では、取り付け位置確認検査において、パッシブセンサの取り付け位置を確認するためのガイド盤を設けた構成に特徴を有している。
図16は、実施の形態3の検査治具を正面から見た正面図である。
図17は、
図16の検査治具を下方から見た底面図である。
図16及び
図17に示すように、中棒12の板厚確認部22の下側には、円形のガイド盤30が設けられている。検査治具10の末端側に面するガイド盤30の表面には、パッシブセンサ等の電気機器の取り付け位置の位置決めを行うための指標として、エリア区画線302と、ガイド孔304と、ガイドライン306と、が設けられている。
【0043】
エリア区画線302は、複数のアーム部16のそれぞれの位置に対応する検査エリアを区画するための線である。エリア区画線302によって区画されたそれぞれの検査エリアには、それぞれのアーム部16に対応する番号が付されている。ガイド孔304は、天井ボードにねじ止め位置をマーキングするための孔である。また、ガイドライン306は、天井ボードの貫通孔の中心からの距離の目安となるラインである。
【0044】
なお、ガイド盤30に付されたエリア区画線302、ガイド孔304、及びガイドライン306等のガイドの内容に限定はない。すなわち、ガイド盤30に付されるガイドの内容は、取り付ける電気機器の種類に応じて専用に設定されていてもよい。ガイド盤30が電気機器に対応した専用品である場合、ガイド盤30は、検査治具10から着脱可能に構成されていてもよい。これにより、取り付ける電気機器に応じて、専用のガイド盤30を選択して装着することが可能となる。
【0045】
また、ガイド盤30に付されるガイドの内容は、より汎用性の高い内容でもよい。例えば、ガイド盤30に付されるガイド孔304は、径方向に延びる長孔形状のスリットとして構成されていてもよい。
【0046】
3-2.実施の形態3の検査治具を用いた取り付け位置確認検査の手順
次に、本実施の形態の検査治具10を用いて取り付け位置確認検査を行う際の検査手順について説明する。
【0047】
3-2-1.把持工程
取り付け位置確認検査における把持工程は実施の形態1の手順と同様である。
【0048】
3-2-2.挿入工程
図18は、取り付け位置確認検査において検査治具10を挿入する挿入工程を示す図である。
図18に示すように、実施の形態3の検査治具における挿入工程では、ガイド盤30が天井ボードに接する位置まで検査治具10を貫通孔に挿入する。
【0049】
3-2-3.障害物確認工程及びマーキング工程
図19は、取り付け位置確認検査における障害物確認工程及びマーキング工程を示す図である。障害物確認工程では、複数のアーム部16のそれぞれに対応した紐18を順に引っ張る。紐18を引っ張ると、対応するアーム部16が径方向外側に向かって開く。アーム部16が完全に開くまで紐18を引くことができれば、アーム部16が開いた方向に障害物がないと判断することができる。
【0050】
ガイド盤30に付されたエリア別の番号は、そのエリアに配置されたアーム部16の番号に対応している。マーキング工程では、障害物確認工程において開くことのできたアーム部16に対応したガイド盤30の検査エリアを特定し、特定された検査エリアのガイド孔304を用いて天井ボードにマーキングを行う。これにより、障害物がないことが確認された検査エリアに取り付け位置のマーキングを行うことができる。取り付け位置確認検査におけるその後のアーム戻し工程及び引き抜き工程は、実施の形態1の検査手順と同様である。
【0051】
以上のような一連の検査工程によれば、パッシブセンサの取り付け位置における天井ボード裏の障害物有無を検査するとともに、パッシブセンサの取り付け位置のマーキングを同時に行うことができる。これにより、パッシブセンサを取り付ける際の作業効率を上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 検査治具、 12 中棒、 14 コード把持部、 16 アーム部、 18 紐、 20 アーム戻し部、 22 板厚確認部、 24 エリア確認部、 30 ガイド盤、 121 スライド溝、 124 開口、 161 主アーム、 162 補助アーム、 163 スライドジョイント、 164 固定ジョイント、 302 エリア区画線、 304 ガイド孔、 306 ガイドライン