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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両の内装組付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20231011BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B60K37/00 C
B60K37/00 G
B60K37/00 Z
B60R11/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020029251
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133712
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】三村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 秀雄
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-248757(JP,A)
【文献】特開2013-252800(JP,A)
【文献】特開2016-047680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内装となるパネル材を、電子機器が備えられたボディの上側を覆うように車両前後方向から組付ける車両の内装組付け構造において、
前記パネル材と前記ボディの少なくとも一方に、前記パネル材を車両前後方向から所定の組付け位置に導くガイド構造が設けられ、
前記ガイド構造は、前記パネル材を所定の組付け位置に導く過程において、前記電子機器を避けるように車両前後方向とは異なる他方向に前記パネル材を案内する構成とされ、
前記ガイド構造は、前記組付け位置に向かうように車両前後方向に延びるガイド部材と、前記ガイド部材に摺動可能に当接するガイド突部とから構成され、前記ガイド部材と前記ガイド突部とは、前記パネル材と前記ボディとに分かれて設けられており、
前記ガイド部材には、前記ガイド突部を乗り上げさせることで前記パネル材を他方向となる上方に導くガイド隆起部位が設けられ、前記ガイド突部が前記ガイド隆起部位に乗せられた状態において、前記パネル材の高さ位置が、前記電子機器の上端の高さと同じか、又は前記上端の高さ位置よりも高くなるように設定されている車両の内装組付け構造。
【請求項2】
前記パネル材は、組付けの際に前記電子機器を臨む先端部と、前記先端部とは反対側に位置する基端部とを有するとともに、前記先端部が、前記基端部を起点として他方向に移動可能に設けられている請求項1に記載の車両の内装組付け構造。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記電子機器に隣接又は近接するように前記ボディに設けられている請求項1又は2に記載の車両の内装組付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内装となるパネル材を、電子機器が備えられたボディを覆うように車両前後方向から組付ける車両の内装組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパネル材として、インストルメントパネルが特許文献1及び特許文献2に記載されている。この公知技術のインストルメントパネルは、フロントガラスの下側で車室の前席正面に位置するパネル材であり、電子機器が備えられた車室前部のボディを上側から覆うように組付けられて配設されている。例えば特許文献1では、電子機器としてのヘッドアップディスプレイが、車幅方向に延びるクロスカービーム(ボディの一例)の上側に固定されて、インストルメントパネルに形成された開口部から外部に露出している。また特許文献2においても、ヘッドアップディスプレイ装置がインパネコア(ボディの一例)の上側に配設されている。そして特許文献2のインストルメントパネルには、ヘッドアップディスプレイ装置の着脱を容易とするために比較的大きな着脱用開口が設けられ、この着脱用開口が、ヘッドアップディスプレイ用カバーで覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-169805号公報
【文献】特開2018-52291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでインストルメントパネル等のパネル材は、車室のボディの上側を覆うように車両前後方向から車室内に組付けられる。しかし公知技術のようにボディに電子機器が備えられていると、この電子機器が邪魔となってパネル材のスムーズな組付け作業が妨げられるおそれがある。もっとも特許文献2の技術のように、インストルメントパネルを組付けたのち、その着脱用開口を通じてヘッドアップディスプレイ装置を配設することもできる。しかしこのように組付け手順を限定することは、パネル材の効率的な組付け性などを考慮すると、必ずしも好ましいものではない。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の車室内装となるパネル材を、電子機器が備えられたボディを覆うように車両前後方向からスムーズに組付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両の内装組付け構造は、車両の車室内装となるパネル材を、電子機器が備えられたボディの上側を覆うように車両前後方向から組付けるための構造である。この種の車両の内装組付け構造では、パネル材を、電子機器との干渉を避けつつ、ボディを覆うように車両前後方向からスムーズに組付けられることが望ましい。そこで本発明では、パネル材とボディの少なくとも一方に、パネル材を車両前後方向から所定の組付け位置に導くガイド構造が設けられている。そしてガイド構造は、パネル材を所定の組付け位置に導く過程において、電子機器を避けるように車両前後方向とは異なる他方向にパネル材を案内する構成とされている。本発明では、パネル材を車両前後方向から所定の組付け位置に導くガイド構造をパネル材とボディの少なくとも一方に設けている。そしてガイド構造が、電子機器を避けるようにパネル材を他方向に案内することにより、このパネル材を、電子機器との干渉を極力回避しつつ、所定の組付け位置に導くことが可能となっている。
また第1発明の車両の内装組付け構造のガイド構造は、組付け位置に向かうように車両前後方向に延びるガイド部材と、ガイド部材に摺動可能に当接するガイド突部とから構成され、ガイド部材とガイド突部とは、パネル材とボディとに分かれて設けられている。そしてガイド部材には、ガイド突部を乗り上げさせることでパネル材を他方向となる上方に導くガイド隆起部位が設けられ、ガイド突部がガイド隆起部位に乗せられた状態において、パネル材の高さ位置が、電子機器の上端の高さと同じか、又は上端の高さ位置よりも高くなるように設定されている。本発明のガイド構造は、ガイド部材に対してガイド突部を車両前後方向に摺動させることで、パネル材を所定の組付け位置に導く構成としている。そしてパネル材を所定の組付け位置に導く過程で、ガイド突部をガイド隆起部位上に位置させることにより、パネル材の高さ位置が電子機器の上端の高さ位置以上となることから、これらの干渉をより確実に回避することが可能となっている。
【0006】
第2発明の車両の内装組付け構造は、第1発明の車両の内装組付け構造において、パネル材は、組付けの際に電子機器を臨む先端部と、先端部とは反対側に位置する基端部とを有するとともに、先端部が、基端部を起点として他方向に移動可能に設けられている。本発明では、組付け作業の際にパネル材の電子機器を臨む先端部が他方向に移動可能とされているため、この先端部を、ガイド構造にてより確実に他方向に案内することができる。
【0008】
発明の車両の内装組付け構造では、第1発明又は第2発明の車両の内装組付け構造において、ガイド部材は、電子機器に隣接又は近接するようにボディに設けられている。本発明では、ガイド部材を、ボディに安定的に配設して、電子機器に隣接又は近接して配置している。このためガイド部材によって、ガイド突部の設けられたパネル材を、電子機器との干渉をさらに確実に回避しつつ、所定の組付け位置に導くことが可能となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、車両の車室内装となるパネル材を、電子機器が備えられたボディを覆うように車両前後方向からスムーズに組付けることができる。また第1発明によれば、パネル材を、より確実にスムーズに組付けることができる。また第2発明によれば、パネル材を、よりスムーズに組付けることができるそして第発明によれば、パネル材を、更に確実にスムーズに組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の前部の斜視図である。
図2図1のII-II線断面に相当する車室の概略断面図である。
図3】ヘッドアップディスプレイとガイド部材の概略斜視図である。
図4】ヘッドアップディスプレイとガイド機構を示す概略断面図である。
図5】インストルメントパネルを裏側から見た概略斜視図である。
図6】ガイド部材を上側から見た斜視図である。
図7】ガイド部材を下側から見た斜視図である。
図8】組付け初期のインストルメントパネルを示す車室の概略断面図である。
図9】上側に案内されたインストルメントパネルを示す車室の概略断面図である。
図10】組付け後期のインストルメントパネルを示す車室の概略断面図である。
図11】インストルメントパネルの移動軌跡を示す車室の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図11を参照して説明する。なお図1図2及び図8図11には、便宜上、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示し、図2にのみ各部材の断面を示すハッチを付けている。また図3図7では、各部材が車両に組付けられている状態を基準として、各部材の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。
【0012】
[車両の前部の構造]
車両の内装組付け構造について説明する前に、まず車両2の前部の概要について説明する。図1に示す車両2の前部では、エンジンルームERを開閉可能に覆うエンジンフード3が設けられ、その後方の車両ボディの左右両側にフロントドア4a,4bが設けられている。また各フロントドア4a,4bの前側には、それぞれフロントピラー5a,5bが立設されており、左右のフロントピラー5a,5bによってルーフパネル(図示省略)の前部が支持されている。そして左右のフロントピラー5a,5bとルーフパネルとによって囲まれた位置にはフロントガラス6が設けられている。
【0013】
また図2に示す車室Rの前部には、フロントガラス6の下端を支持するカウルパネル7と、エンジンルームERと車室Rとを仕切るダッシュパネル8とが、板状の室内内装であるインストルメントパネル20にて覆われている。ここでダッシュパネル8は、エンジンルームERと車室Rを仕切るように車幅方向(左右方向)に延びる縦壁状に設けられて、車幅方向における両端部が左右のフロントピラー間に配置されている。このダッシュパネル8の上端部は前方に曲げられており、その前端縁にカウルパネル7が固定されている。このカウルパネル7は、車幅方向に延びる横壁状に設けられて、車幅方向における両端部がエンジンルームERの上部側壁を構成するアッパメンバ(図示省略)に固定されている。そしてカウルパネル7はエンジンルームERの天井となる天井部7aと、天井部7aの前端位置で一段高くなった段差部7bとを備え、この段差部7bによってフロントガラス6の下部を後側から支えている。またカウルパネル7の天井部7aの上には、各種の情報をフロントガラス6に投射するヘッドアップディスプレイ10が配設されている。そしてヘッドアップディスプレイ10の一部(後述する光投射口13)は、図1に示すようにインストルメントパネル20の右側に設けられている窓部21から外部に露出している。
【0014】
[車両の内装組付け構造]
そして図2に示す内装組付け構造IMは、本発明のパネル材に相当するインストルメントパネル20を、車両前後方向から車室R内(図2に示す所定の組付け位置)に組付けるための構造である。このインストルメントパネル20は、所定の組付け位置において、本発明のボディに相当するカウルパネル7及びダッシュパネル8の上側を覆うように配置される。またインストルメントパネル20は、その前端に取付けられているウェザストリップ20Eを介してフロントガラス6に当接している。なおインストルメントパネル20の車幅方向における両端部は、左右のフロントピラー間に組付けておくことができる。そしてインストルメントパネル20に設けられている窓部21からは、カウルパネル7上に備えられた電子機器としてのヘッドアップディスプレイ10の一部が外部に露出している。この種の構成では、インストルメントパネル20を車両前後方向から組付ける際に、カウルパネル7上のヘッドアップディスプレイ10が邪魔となってスムーズな組付け作業が妨げられるおそれがある。そこで本実施例の内装組付け構造IMでは、後述するガイド構造GMによって、インストルメントパネル20を、ヘッドアップディスプレイ10が備えられたボディ(7,8)に車両前後方向からスムーズに組付けることとした。以下、内装組付け構造IMの各構成と、インストルメントパネル20の組付け手法を詳述する。
【0015】
[ヘッドアップディスプレイ(電子機器)]
ここで図2及び図3に示すヘッドアップディスプレイ10は、上述したようにカウルパネル7上に備え付けられている。このヘッドアップディスプレイ10は、図3に示すように、その本体をなす箱状の筐体部(11,12)と、複数の取付けブラケット15~18とを有している。ここで筐体部は、左右の寸法が異なる後部11及び前部12で形成されている。筐体部の後部11は、上方視において左右の寸法が小さい略矩形に形成されており、筐体部の前部12は、相対的に左右の寸法が大きい略矩形に形成されている。そして筐体部の前部12には、その左右の側面が段差状に外方に張出すことで形成された受部12bが設けられており、この受部12bによって、後述するガイド部材40の一部を支持することができる。また筐体部の後部11は、筐体部の前部12から後方に突出しているとともに、この筐体部の後部11の上面11aが概ね水平に後方に延びている。また筐体部の後部11の後端には、後方に向かうにつれて次第に下方に傾斜する傾斜面部110aが設けられている。
【0016】
また図3及び図4に示す筐体部の前部12の上面12aには光投射口13が形成されており、この光投射口13は、側面視で中心部が低く前後の縁(13a,13b)に向けてしだいに高くなる三次元の湾曲面をなしている。そして光投射口13には、光透過性の保護カバー14が取付けられており、筐体部11,12内に設置された表示光発生器(図示省略)の光を、この保護カバー14を通じてフロントガラス6へと投影させる構成とされている。また光投射口13の後縁13aは、前縁13bに比して大きく上方に張り出しており、ヘッドアップディスプレイ10の上端を形成している。そして光投射口13の後縁13aは、筐体部の後部11の上面11aの高さ位置H0を基準とした場合、当該上面11aから上方に突出寸法(T0)で突出している。
【0017】
また図3に示す筐体部11(12)には、その左右位置にそれぞれ取付けブラケット15,16(17,18)が配設されている。各後側取付けブラケット15,16は、筐体部の後部11の左右の下端から下方に延びたのちに外方に張り出す板状部位であり、その外方に張り出している部分に挿通孔Hが設けられている。また各前側取付けブラケット17,18は、筐体部の前部12の左右の下端から外方に張り出す板状部位であり、外方に張り出した部分に挿通孔Hが設けられている。
【0018】
[インストルメントパネル及びガイド構造]
図1及び図2に示すインストルメントパネル20は、車幅方向に長尺な矩形の板状部材である。このインストルメントパネル20は、図2に示すように、ウェザストリップ20Eの取付けられている前端が先端部20aとなり、その反対側に位置する後端が基端部20bとなっている。またインストルメントパネル20の骨格部分は、適度な可撓性を備えた樹脂で形成されており、その先端部20aを、基端部20bを起点に上下方向に撓ませて移動させることが可能となっている。そして本実施例の内装組付け構造IMでは、このインストルメントパネル20を、ガイド構造GMによって後から前に導くことにより、図2に示す所定の組付け位置に配置してフロントガラス6に隣接させておく。このガイド構造GMは、図3図5を参照して、一対のガイド突部30,35と、後述するガイド部材40から構成されている。そして一対のガイド突部30,35は、図5に示すようにインストルメントパネル20に設けられている(図5では、便宜上、ウェザストリップを省略して図示する)。
【0019】
[ガイド突部]
図5に示す一対のガイド突部(左ガイド突部30,右ガイド突部35)は、インストルメントパネル20の下面20cから突出する縦板状の部位であり、窓部21の右側と左側に分かれて設けられている。これら各ガイド突部30,35は、車両前後方向における位置が概ね一致した状態で、インストルメントパネル20の先端部20aから後方に距離L1だけ離れて形成されており、窓部21よりも若干前側に配置されている。ここで左ガイド突部30と右ガイド突部35とは、概ね同一の基本構成を有しているため、以下に、左ガイド突部30を一例にその詳細を説明する。図4に示す左ガイド突部30は、側面形状が略逆台形状に形成されており、インストルメントパネル20の下面20cから下方に突出寸法(T1)で突出している。そして左ガイド突部30の最も下側の底縁部31は、インストルメントパネル20の下面20cに概ね平行な状態で前後方向に延びている。また底縁部31の前後の端には、概ね前後対称となるように後縁部32及び前縁部33が形成されており、後縁部32と前縁部33は互いに離れる向きに傾斜して下面20cにつながっている。
【0020】
[ガイド部材]
また図3図6及び図7に示すガイド部材40は、上方視で前方が解放された略コ字形状に形成されており、その前部をなす後板部41と、後板部41の左右から前方に延びる左板部42及び右板部43を有している。ここで後板部41は、ガイド部材40の後部をなして左右方向に延長し、その上面は、後方に向かうにつれて次第に下方に湾曲している。また後板部41の左端からは、適度な左右の寸法を持った左板部42が前方に延長し、さらに左板部42の左縁後部には、ガイド部材40の左面をなす左フランジ42aが下方に延長している。また後板部41の右端からは、適度な左右の寸法を持った右板部43が前方に延長し、さらに右板部43の右縁後部には、ガイド部材40の右面をなす右フランジ43aが下方に延長している。そして左板部42と右板部43の間には、その前後方向の略中間位置に、左右に延びる受板部44が渡されて固定されている。
【0021】
また図3及び図7を参照して、ガイド部材40は、その裏側(下側)に設けられた左右一対の後側柱部45,46及び左右一対の前側柱部47,48によって、ヘッドアップディスプレイ10の筐体部11,12に配設される。各後側柱部45(46)は、左板部42(右板部43)の後部裏側から下方に突出する柱状の部位であり、筐体部の後部11の対応する後側取付けブラケット15(16)に挿設可能な位置に形成されている。また各前側柱部47(48)は、左板部42(右板部43)の前部裏側から下方に突出する柱状の部位であり、筐体部の前部12の対応する前側取付けブラケット17(18)に挿設可能な位置に形成されている。そして各柱部45~48の外形寸法は、下側の先端から上方に向かうにつれて次第に大きくなっており、その途中までは各取付けブラケット15~18の挿通孔Hに挿入可能とされている。
【0022】
図3に示すガイド部材40の配設に際しては、このガイド部材40を、筐体部11,12の上方位置から下方に移動させて、筐体部11,12の後側と左右側を囲むように配置する(図3の二点破線で示すガイド部材を参照)。このときガイド部材40の各柱部45~48を、対応する取付けブラケット15~18の挿通孔Hに押し込んで挿設し、さらに右板部43と左板部42に渡された受板部44を筐体部の後部11の上面11aにあてがっておく。そしてガイド部材40の後板部41は、筐体部の後部11(傾斜面部110a)の後側に隣接して配置される。また左板部42は、筐体部11,12の左側に隣接した状態で前後方向に延びている。このとき左板部42の後部に設けられた左フランジ42aが筐体部の後部11を外側から覆い、さらに左板部42の前側が筐体部の前部12の受部12bに支持される。また右板部43は、筐体部11,12の右側に隣接した状態で前後方向に延びている。このとき右板部43の後部に設けられた右フランジ43aが筐体部の後部11を外側から覆い、さらに右板部43の前側が筐体部の前部12の受部(12b)に支持される。こうしてガイド部材40は、ボディの一部をなすヘッドアップディスプレイ10に安定的に配設されて、筐体部11,12に概ね隣接した状態となる。
【0023】
そして図3及び図6に示すガイド部材40では、その後板部41の上面と左板部42の上面とによって左ガイド面50が形成され、後板部41の上面と右板部43の上面とによって右ガイド面55が形成される。これら左右の各ガイド面50(55)は、ヘッドアップディスプレイ10の右側と左側に分かれて配置されるとともに、図5に示すインストルメントパネル20の対応するガイド突部30(35)を摺動可能に支持できる。ここで図6に示す左ガイド面50と右ガイド面55とは、左右対称となるように形成されて概ね同一の構成を有しているため、以下に、左ガイド面50を一例にその詳細を説明する。
【0024】
図4に示す左ガイド面50は、ヘッドアップディスプレイ10の筐体部の後部11の後方から筐体部の前部12にかけての部分に配置されている。この左ガイド面50は、上下の高さが変わるように曲げられており、後ガイド部位51と、ガイド隆起部位52と、前ガイド部位53とが一連となるように形成されている。ここで後ガイド部位51は、左ガイド面50の後部をなす部位であって、左ガイド突部30を迎え入れられるように、筐体部の後部11から後方に張り出している。この後ガイド部位51は、概ね後板部41の湾曲した上面で形成されており、後方から前方に向かうにつれて次第に上方に向けて湾曲している。そして後ガイド部位51の上端の高さ位置は、筐体部の後部11の上面11aの高さ位置H0に概ね一致しているとともに、後ガイド部位51の上下の途中には、左ガイド突部30が最初に突き当たる当接箇所51aが設定されている。この当接箇所51aは、筐体部の後部11から後方に距離L2だけ離れた位置に設定され、当該距離L2は、インストルメントパネル20の先端部20aと左ガイド突部30の間の距離L1(L1<L2)よりも大きくなっている。このため当接箇所51aには、図4及び図8を参照して、左ガイド突部30が最初に突き当たることとなり、この左ガイド突部30が誤って筐体部の後部11に当接するといった事態を極力回避できる。
【0025】
[ガイド隆起部位]
また図4に示す後ガイド部位51の前側は、筐体部の後部11の上面11aの高さ位置H0で概ね水平に延びたのちにガイド隆起部位52につながっている。このガイド隆起部位52は、左ガイド面50が上側に曲げられて隆起している箇所であり、左ガイド面50の中で最も上側に位置している。そしてガイド隆起部位52は、側方視で上方に凸の台形状に形成されており、最も上側に位置する上辺部52aと、上辺部52aの前後の端から下方に延長する後辺部52b及び前辺部52cとから構成されている。このガイド隆起部位52は、光投射口13の後縁13aから後方に距離L3だけ離れた位置に形成され、当該距離L3は、インストルメントパネル20の先端部20aと左ガイド突部30の間の距離L1(L1<L3)よりも大きくなっている。このためガイド隆起部位52には、インストルメントパネル20の先端部20aが光投射口13の後縁13aに当接する前に、左ガイド突部30が乗り上がることとなる。
【0026】
そして図4に示すガイド隆起部位52の上辺部52aは、筐体部の後部11の上面11aと概ね平行な状態で車両前後方向に延びており、後述するように左ガイド突部30を乗せ上げさせることができる。このガイド隆起部位52の上辺部52aは、後述するようにインストルメントパネル20の先端部20aが光投射口13の後縁13aを乗り越える位置まで前方に延長している。そしてガイド隆起部位52の上辺部52aは、筐体部の後部11の上面11aの高さ位置H0を基準とした場合、当該上面11aから上方に突出寸法(T2)で突出した状態となっている。このガイド隆起部位52の上辺部52aの突出寸法(T2)は、光投射口13の後縁13aの突出寸法(T0)未満となっており、ガイド隆起部位52が過度に上方に突出しないように設定されている。そして図4及び図9を参照して、ガイド隆起部位52に左ガイド突部30が乗せられることで、これらの突出寸法の合計分(T1+T2)だけ、インストルメントパネル20の先端部20aが持ち上げられて上方に導かれる。そこで本実施例では、上記先端部20aが光投射口13の後縁13aを乗り越えられるように、左ガイド突部30とガイド隆起部位52の突出寸法の合計(T1+T2)を光投射口13の後縁13aの突出寸法(T0)以上に設定している。
【0027】
また図4に示すガイド隆起部位52の前辺部52cは下方且つ前方に傾斜して、前ガイド部位53につながっている。この前ガイド部位53は、左ガイド面50の前部をなす部位であって、車両前後方向に延びながら筐体部の前部12まで延長している。そして本実施例では、ガイド隆起部位52の前辺部52cを相対的に下方に大きく延設し、これにより前ガイド部位53の高さ位置を相対的に低くしている。このためインストルメントパネル20は、図9及び図10を参照して、ガイド隆起部位52で高さ位置が一時的に高くなるが、この後ガイド部位51に至ることで所定の組付け位置の高さ位置H1に戻される。
【0028】
[インストルメントパネルの組付け作業]
つぎに図8図11を参照して、内装組付け構造IMによるインストルメントパネル20の組付け作業について説明する(なお図11では、便宜上、インストルメントパネルの移動軌跡Xを二点破線で図示している)。ここで図8に示すインストルメントパネル20は、その基端部20bが図示しない治具で保持されることで、概ね水平な状態で車両前後方向を向いている。そこでこの状態のインストルメントパネル20を、カウルパネル7及びダッシュパネル8の後方位置から、これらの上側を覆うように前方に向けて移動させていく。このときインストルメントパネル20の高さ位置H1は、所定の組付け位置における高さ位置H1となるように設定している。そしてインストルメントパネル20を、高さ位置H1で前方に移動させる場合、その先端部20aがヘッドアップディスプレイ10と干渉することで、スムーズな組付け作業が妨げられるおそれがある。
【0029】
そこで内装組付け構造IMでは、図3図5を参照して、インストルメントパネル20を車両前後方向から所定の組付け位置に導くガイド構造GMを設けている。そしてインストルメントパネル20を、ガイド構造GMによって、ヘッドアップディスプレイ10を避けるように上方(他方向)に案内しつつ、車両前後方向から所定の組付け位置に導くこととしている。そこで以下に、ガイド構造GMの働きを、左ガイド突部30と、ガイド部材40の左ガイド面50を一例に説明する。
【0030】
この内装組付け構造IMでは、図8及び図11に示すように、インストルメントパネル20を高さ位置H1で前方に移動させていくことで、その左ガイド突部30をガイド部材40に最初に突き当てることができる。すなわち左ガイド面50の後ガイド部位51の当接箇所51aは、上述のように筐体部の後部11から後方に距離L2だけ離れた位置に設定されている。そこでインストルメントパネル20を前方に押し込んで、左ガイド突部30を、後ガイド部位51にガイドさせながら前方且つ上方に向けて摺動させて、筐体部の後部11の上面11aの高さ位置H0まで駆け上がらせていく。そして左ガイド突部30の形成されたインストルメントパネル20の先端部20aは、筐体部の後部11の手前で上方に案内され、この筐体部の後部11から逸れるように上方位置に配置されていく。
【0031】
つづいて左ガイド突部30は、図9及び図11に示すように、後ガイド部位51の水平な部分を通ってガイド隆起部位52に到達し、このガイド隆起部位52に沿って更に上方に駆け上がっていく。このガイド隆起部位52は、上述のように光投射口13の後縁13aから後方に距離L3(L1<L3)だけ離れた位置に設定されている。このためガイド隆起部位52には、インストルメントパネル20の先端部20aが光投射口13の後縁13aに当接する前に、左ガイド突部30を乗り上がらせておくことができる。そしてガイド隆起部位52に左ガイド突部30が乗せられることで、これらの突出寸法の合計分(T1+T2)だけ、インストルメントパネル20の先端部20aが上方に導かれる。そして左ガイド突部30とガイド隆起部位52の突出寸法の合計は、上述したように光投射口13の後縁13aの突出寸法以上に設定されている(T1+T2≧T0)。このためインストルメントパネル20の先端部20aが、左ガイド突部30とガイド隆起部位52(ガイド構造GM)によって、光投射口13の後縁13aを乗り越えられる高さ位置H2に案内されることとなる。そして左ガイド突部30をガイド隆起部位52の上辺部52aに沿って前方に摺動させていく。こうすることで左ガイド突部30の形成されたインストルメントパネル20の先端部20aを、光投射口13の後縁13aを越えて前方に導くことができる。このときインストルメントパネル20の先端部20aは、図8に示す基端部20bを起点に上方に向けて撓み変形(移動)できるため、この先端部20aを、ガイド構造GMにてより確実に他方向となる上方に案内することができる。
【0032】
つづいて左ガイド突部30が、図10及び図11に示すように、ガイド隆起部位52の前辺部52cに沿って下方に摺動して前ガイド部位53に至ることで、インストルメントパネル20が所定の高さ位置H1に下げられる。そしてインストルメントパネル20を前方に更に押し込んで、左ガイド突部30を前ガイド部位53の前方に移動させることで、インストルメントパネル20が、図2に示す所定の組付け位置に到達する。またインストルメントパネル20が所定の高さ位置H1に下げられることで、その窓部21が、ヘッドアップディスプレイ10の光投射口13の直上に配置される。
【0033】
こうして図2に示すインストルメントパネル20は、所定の組付け位置において、カウルパネル7及びダッシュパネル8の上側を覆うように車室R内に組付けられる。またインストルメントパネル20は、その先端部20aに取付けられているウェザストリップ20Eを介してフロントガラス6に当接した状態となる。そして所定の組付け位置に配置されたインストルメントパネル20では、その窓部21からヘッドアップディスプレイ10の光投射口13が外部に露出し、この光投射口13によって、各種の情報をフロントガラス6に投射することが可能となる。そして左ガイド突部30は、フロントガラス6とヘッドアップディスプレイ10の間でインストルメントパネル20の下面20cから突出している。この左ガイド突部30は、所定の組付け位置に配置されたインストルメントパネル20の前部を補強するリブとして機能する。なおインストルメントパネル20は、上述の組付け手順と逆の手順で取外すことができ、この取外し作業も、ガイド構造GMにてスムーズに行うことが可能となっている。
【0034】
以上説明した通り本実施例では、インストルメントパネル20(パネル材)を車両前後方向から所定の組付け位置に導くガイド構造GMを、インストルメントパネル20とヘッドアップディスプレイ10(ボディの一部)とに設けている。そしてガイド構造GMが、電子機器としてのヘッドアップディスプレイ10を避けるようにインストルメントパネル20を他方向に案内することにより、このインストルメントパネル20を、ヘッドアップディスプレイ10との干渉を極力回避しつつ、所定の組付け位置に導くことが可能となっている。特に本実施例のガイド構造GMは、ガイド部材40に対してガイド突部30,35を車両前後方向に摺動させることにより、インストルメントパネル20を所定の組付け位置に導く構成としている。そしてインストルメントパネル20を所定の組付け位置に導く過程で、各ガイド突部30,35をガイド隆起部位52上に位置させることにより、インストルメントパネル20の高さ位置が、ヘッドアップディスプレイ10の上端の高さ位置以上となることから、これらの干渉をより確実に回避することが可能となっている。このため本実施例によれば、車両2の車室R内装となるインストルメントパネル20を、ヘッドアップディスプレイ10が備えられたボディ(7,8)を覆うように車両前後方向からスムーズに組付けることができる。
【0035】
さらに本実施例では、組付け作業の際にインストルメントパネル20のヘッドアップディスプレイ10を臨む先端部20aが他方向に移動可能とされているため、この先端部20aを、ガイド構造GMにてより確実に他方向に案内することができる。そして本実施例では、ガイド部材40を、ボディの一部をなすヘッドアップディスプレイ10に安定的に配設して、ヘッドアップディスプレイ10に隣接又は近接して配置している。このようにガイド部材40をヘッドアップディスプレイ10に隣接等させることで、ガイド機構GMによって、ヘッドアップディスプレイ10に干渉するおそれのあるインストルメント部分をより確実に他方向に案内できる。このためガイド部材40によって、各ガイド突部30,35の設けられたインストルメントパネル20を、ヘッドアップディスプレイ10との干渉をさらに確実に回避しつつ、所定の組付け位置に導くことが可能となっている。
【0036】
本実施形態の車両の内装組付け構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、ガイド構造GMの構成を例示したが、ガイド構造の構成を限定する趣旨ではない。例えばガイド構造を、パネル材に設けられたガイド部材と、ボディに設けられたガイド突部とで構成することができる。またパネル材とボディの少なくとも一方にガイド構造としての車輪を設けることができる。例えばパネル材の下面に車輪を設け、この車輪を回転させながらパネル材が電子機器を乗り越える構成とすることもできる。またガイド機構の配設位置は適宜変更可能であり、例えばガイド部材は、ダッシュパネルやカウルパネルなどのボディの適宜の位置に設けることができる。そしてガイド機構は、電子機器の構成に応じて、パネル材を、上方や車幅方向などの適宜の他方向に案内できるように構成できる。例えばガイド面を縦向きに配置してガイド突部を車幅方向から当てておくことで、このガイド突部の形成されたパネル材を車幅方向(他方向)に案内することができる。なおガイド突部は、逆台形などの角形状のほか、半円形や半楕円形などの円弧形状に形成することができる。またガイド部材(ガイド面等)とガイド突部は複数又は単数形成することができる。そしてガイド突部とガイド隆起部位の突出寸法の合計は、本実施例では光投射口の後縁の突出寸法よりも大きくしたが、光投射口の後縁の突出寸法と一致させることもできる。こうすることでガイド突部がガイド隆起部位に乗せられた状態において、パネル材の高さ位置を、電子機器の上端の高さと同じか、又は上端の高さ位置よりも高くなるように設定することができる。
【0037】
また本実施形態では、パネル材としてインストルメントパネル20を例示し、電子機器としてヘッドアップディスプレイ10を例示したが、パネル材と電子機器の構成を限定する趣旨ではない。例えばパネル材として、後部座席の背後に配設されるリヤシェルフを例示でき、このリヤシェルフは、車両前方から車両後方に移動させながら所定の組付け位置に組付けられる。なおインストルメントパネルも、フロントガラスが配置される前であれば、車両前方から車両後方に移動させて所定の組付け位置に配置することができる。またパネル材では、先端部と基端部の間にヒンジ部を設け、このヒンジ部を境に先端部を他方向に移動させる構成とすることもできる。また電子機器として、各種のディスプレイ類やセンサ類を例示できる。
【符号の説明】
【0038】
2 車両
3 エンジンフード
4a,4b フロントドア
5a,5b フロントピラー
6 フロントガラス
ER エンジンルーム
R 車室
7 カウルパネル(本発明のボディ)
8 ダッシュパネル(本発明のボディ)
7a ダッシュパネルの天井部
7b ダッシュパネルの段差部
10 ヘッドアップディスプレイ(本発明の電子機器)
11 筐体部の後部
11a 筐体部の後部の上面
110a 傾斜面部
12 筐体部の前部
12a 筐体部の前部の上面
12b 受部
13 光投射口
13a 光投射口の後縁(本発明の電子機器の上端)
13b 光投射口の前縁
14 保護カバー
15,16 後側取付けブラケット
17,18 前側取付けブラケット
20 インストルメントパネル(本発明のパネル材)
20E ウェザストリップ
20a インストルメントパネルの先端部
20b インストルメントパネルの基端部
20c インストルメントパネルの下面
21 窓部
IM 車両の内装組付け構造
GM ガイド構造
30 左ガイド突部
31 左ガイド突部の底縁部
32 左ガイド突部の後縁部
33 左ガイド突部の前縁部
35 右ガイド突部
40 ガイド部材
41 後板部
42 左板部
42a 左フランジ
43 右板部
43a 右フランジ
44 受板部
45,46 後側柱部
47,48 前側柱部
50 左ガイド面
51 後ガイド部位
51a 当接箇所
52 ガイド隆起部位
52b 後辺部
52a 上辺部
52c 前辺部
53 前ガイド部位
55 右ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11