(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20231011BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20231011BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F28F3/00 311
F28F3/08 311
F28D9/02
(21)【出願番号】P 2020029348
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】王 凱建
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐川 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】小野村 正行
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172270(JP,A)
【文献】特開平11-315721(JP,A)
【文献】特開2019-152341(JP,A)
【文献】特許第6056928(JP,B1)
【文献】特表2012-505366(JP,A)
【文献】米国特許第05392849(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板が積層され、前記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合された積層体であって、
前記積層体の最上層の金属板または前記積層体の最下層の金属板から前記積層体の内部に向かって配管を嵌合させる孔部が設けられ、
前記積層体において前記孔部を形成する少なくとも1つの金属板に前記配管を係止する係止部が設けられた
積層体。
【請求項2】
請求項1に記載された積層体であって、
前記最上層の金属板よりも下方に位置する少なくとも1つの金属板または前記最下層の金属板よりも上方に位置する少なくとも1つの金属板に、前記孔部に嵌合された前記配管を係止する係止部が設けられた
積層体。
【請求項3】
請求項1に記載された積層体であって、
前記最上層の金属板または前記最上層の金属板から前記積層体の内部に向かって、前記最上層の金属板または前記最上層の金属板からの少なくとも1つの金属板に、前記孔部に嵌合された前記配管を係止する係止部が設けられた
積層体。
【請求項4】
請求項1~3に記載された積層体であって、
前記孔部に嵌合された前記配管を前記孔部の中心軸の周りに回転したとき、
前記配管を所定の回転角で停止させるストッパが前記孔部を形成する少なくとも1つの金属板に設けられている
積層体。
【請求項5】
請求項1~4に記載された積層体であって、
前記配管を前記孔部に嵌合させたとき、
前記配管に前記孔部を塞ぐ閉塞するカバー部が設けられている
積層体。
【請求項6】
請求項1~5に記載された積層体であって、
前記配管が前記孔部に嵌合された
積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に利用される積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は冷凍サイクルの一要素として使用され、冷凍サイクル内の作動流体の温度を目標値にするためのパーツである。中でも、マイクロ流路熱交換器は、優れた性能が認識されている。
【0003】
このようなマイクロ流路熱交換器に、積層型マイクロ流路熱交換器がある。積層型マイクロ流路熱交換器は、例えば、表面に微細な高温流体流路が形成された金属板と、表面に微細な低温流体流路が形成された金属板を交互に積層して形成された積層体を上下から耐圧用の金属板で挟み、真空雰囲気で加圧・加熱することによって各金属板が互いに拡散接合されたものである(例えば、特許文献1参照)。そして、このような積層体には、作動流体を流入出させる配管を接合する場合がある。この配管は、例えば、積層体に設けられた孔部に差し込まれた後、加熱用の炉の中で真空や水素雰囲気でロウ付けを行うことによって積層体に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱用の炉を用いて配管のロウ付けを行う場合、積層体に設けられた孔に差し込んだ配管がずれたり傾いたりしないように、積層体は適切な姿勢で炉の中に置かれる。ところが積層体の大きさが大きかったり、一度に炉に入れる積層体の数が多かったりする場合は、適切な姿勢で積層体を炉の中に置くことができないことがある。
【0006】
このような場合、積層体に差し込んだ配管の位置が当初の位置からずれたり、あるいは、ロウ付け中に配管が積層体から外れたりする場合がある。さらには、積層体の下側から差し込まれた配管のロウ付けにおいては、配管が自重よって積層体から外れたりする場合もあり、積層体の生産性向上の妨げとなっていた。
【0007】
従って、配管が設けられた積層体の生産性を向上するには、配管を積層体にロウ付けする際に積層体の姿勢によることなく配管を積層体に接合できる積層体が求められている。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、配管が設けられた積層体につき、その生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体は、複数の金属板が積層され、上記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合された積層体である。
上記積層体の最上層の金属板または上記積層体の最下層の金属板から上記積層体の内部に向かって配管を嵌合させる孔部が設けられている。
上記積層体において上記孔部を形成する少なくとも1つの金属板に上記配管を係止する係止部が設けられている。
【0010】
このような積層体であれば、配管を積層体にロウ付けする際に積層体の姿勢によることなく配管を積層体に接合することができ、配管が設けられた積層体の生産性が向上する。
【0011】
上記の積層体においては、上記最上層の金属板よりも下方に位置する少なくとも1つの金属板または上記最下層の金属板よりも上方に位置する少なくとも1つの金属板に、上記孔部に嵌合された上記配管を係止する係止部が設けられてもよい。
【0012】
このような積層体であれば、上記係止部によって配管を積層体にロウ付けする際に積層体の姿勢によることなく配管を積層体に接合することができ、配管が設けられた積層体の生産性が向上する。
【0013】
上記の積層体においては、上記最上層の金属板または上記最上層の金属板から上記積層体の内部に向かって、上記最上層の金属板または上記最上層の金属板からの少なくとも1つの金属板に、上記孔部に嵌合された上記配管を係止する係止部が設けられてもよい。
【0014】
このような積層体であれば、上記係止部によって配管を積層体にロウ付けする際に積層体の姿勢によることなく配管を積層体に接合することができ、配管が設けられた積層体の生産性が向上する。
【0015】
上記の積層体においては、上記孔部に嵌合された上記配管を上記孔部の中心軸の周りに回転したとき、上記配管を所定の回転角で停止させるストッパが上記孔部を形成する少なくとも1つの金属板に設けられてもよい。
【0016】
このような積層体であれば、上記ストッパによって配管の位置決めができるので、配管を積層体にロウ付けする際に積層体の姿勢によることなく配管を積層体に接合することができ、配管が設けられた積層体の生産性が向上する。
【0017】
上記の積層体においては、上記配管を上記孔部に嵌合させたとき、上記配管に上記孔部を塞ぐカバー部が設けられてもよい。
【0018】
このような積層体であれば、上記カバー部によって孔部が塞がれ、配管が設けられた積層体の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、配管が設けられた積層体につき、その生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る積層体の一例を示す模式的斜視図である。
【
図2】図(a)は、積層体に設けられた配管を係止する係止部の例を示す模式的斜視図である。図(b)は、配管が積層体に接合された例を示す模式的斜視図である。
【
図3】積層体の内部に形成された流路を示す模式的斜視図である。
【
図4】変形例1に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
【
図5】図(a)は、変形例1に係る配管の模式的上面図である。図(b)は、変形例1に係る積層体の模式的上面図である。
【
図6】変形例1の作用を示す配管及び積層体の模式的上面図である。
【
図7】図(a)は、変形例2に係る配管の模式的上面図である。図(b)は、変形例2に係る積層体の模式的上面図である。
【
図8】変形例2の作用を示す配管及び積層体の模式的上面図である。
【
図9】変形例2の効果の一例を示す配管の模式的斜視図である。
【
図10】変形例3に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
【
図11】変形例4に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
【
図12】変形例4の効果を示す、積層体及び配管のそれぞれの模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0022】
図1は、本実施形態に係る積層体の一例を示す模式的斜視図である。
【0023】
図1に示す積層体10は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。積層体10は、例えば、略直方体形状をしている。積層体10は、主面1u(上面)と、主面1uとは反対側の主面1d(下面)と、積層体10の積層方向に沿った側面1wとを有する。側面1wは、主面1uと主面1dとに連設されている。
【0024】
側面1wは、積層体10において、複数の金属板2A、2Bが積層された方向(第1方向)に沿って形成される。第1方向は、本実施形態では、Z軸方向に対応する。また、
図1に示す状態において、主面1uの側が積層体10の上側、主面1dの側が積層体10の下側であるとする。
【0025】
また、積層体10には、配管51~54が接合されている。例えば、
図1の例では、配管51~54のそれぞれが積層体10の主面1uに接合されている。例えば、高温の媒体が積層体10の配管51から流入すると、媒体は、積層体10の内部を経由し、配管52から流出する。一方、低温の媒体が配管53から流入すると、媒体は、積層体10の内部を経由し、配管54から流出する。
【0026】
積層体10は、複数の金属板2Aと、複数の金属板2Bと、金属板3Aと、金属板3Bとを有する。積層体10は、金属板3A、複数の金属板2A、2B、及び金属板3Bのそれぞれが、この積層順に拡散接合により接合された積層体である。拡散接合としては、固相接合、熱間圧接、冷間圧接等があげられる。金属板3Aと金属板3Bとの間に積層された複数の金属板2A、2Bをまとめて積層体2とする。
【0027】
複数の金属板2A及び複数の金属板2Bのそれぞれは、伝熱板である。金属板3Aは、下側外殻板である。金属板3Bは、上側外殻板である。金属板3Aと金属板3Bとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Aと、複数の金属板2Bとが交互に積層されている。また、金属板3A及び金属板3Bのそれぞれにおいても、複数の金属板が積層されている。
【0028】
また、
図1では、積層方向に積層した複数の金属板のそれぞれの境界に実線が描かれているが、拡散接合された積層体10では、このような実線は目視されることなく消滅することがある。また、複数の金属板が積層方向に積層されて積層体10が形成されることから、積層体10の高さ(積層方向における長さ)は、金属板2A、2B、3A、3Bのそれぞれの枚数に依存する。
【0029】
複数の金属板2Aのそれぞれ及び複数の金属板2Bのそれぞれには、流路が形成されている(後述)。配管51、52、53、54は、積層体10の主面1uに挿入される。配管51~54は、例えば、主面1uにロウ付けにより接合される。例えば、配管51から配管52に向かう方向と、配管53から配管54に向かう方向とが交差するように配管51~54が配置される。
【0030】
積層体10の最上層の金属板3Bからは、積層体10の内部に向かって配管51~54を嵌合させる孔部60が設けられている。配管51~54を嵌合させる孔部60は、積層体10の上面(主面1u)とは限らず、積層体10の最下層の金属板3Aから積層体10の内部に向かって設けられてもよい。なお、配管51~54が孔部60に嵌合され、孔部60に接合された積層体10も本実施形態に含まれる。
【0031】
図2(a)は、積層体に設けられた配管を係止する係止部の例を示す模式的斜視図である。
図2(b)は、配管が積層体に接合された例を示す模式的斜視図である。
【0032】
図2(a)、(b)では、積層体10の上層部分である金属板3Bが示されている。また、
図2(a)では、積層体10の内部に設けられた係止部301を示すため、金属板3Bが積層方向に分解された様子が示されている。また、配管として、
図2(a)、(b)には、配管51が示されている。
【0033】
例えば、
図2(a)に示すように、金属板3Bは、金属板3Ba、3Bb、3Bc、3Bd、3Be、3Bfの6枚の金属板を有している。また、配管51以外の配管52~54も、配管51と同じ構造を有し、
図2(a)に示す係止部301に係止される。
【0034】
積層体10においては、金属板3Bに含まれる金属板3Ba~3Bfのそれぞれに孔部60が形成されている。金属板3Ba~3Bfのそれぞれの孔部60が積層方向に繋がることで、積層体10の主面1uから内部に掘り下げられた孔部60が形成される。金属板3Ba~3Bfのそれぞれの孔部60を形成する処理は、拡散接合前におけるエッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。
【0035】
積層体10においては、孔部60が形成された少なくとも1つの金属板に、孔部60に嵌合された配管51を係止する係止部301が設けられている。例えば、係止部301は、最上層の金属板3Baよりも下方に位置する少なくとも1つの金属板に設けられる。例えば、
図2(a)の例では、最上層の金属板3Baから3番目の金属板3Bcに係止部301が設けられている。係止部301は、例えば、孔部60の内周面から孔部60の中心軸600に向かって突出する凸部によって形成される。
【0036】
なお、係止部301が積層体10の主面1d(下面)の側に設けられるときは、最下層の金属板3Aよりも上方に位置する少なくとも1つの金属板3Aに係止部301が形成される。
【0037】
配管51は、被係止部501と、開口部502と、通過部503とを有する。被係止部501と開口部502とは連通し、開口部502と通過部503とは連通している。さらに、通過部503は、配管51の下端51dを切欠き、配管51の中心軸500の方向に開放されている。
【0038】
通過部503は、配管51の中心軸500の方向に係止部301を通過させる溝である。開口部502は、通過部503を通過した係止部301に、通過部503の上から被係止部501の上にかけて遊びを持たせる空間である。被係止部501は、中心軸500の方向において係止部301と噛み合う凹部である。
【0039】
例えば、配管51が主面1uの側から孔部60に挿入されると、係止部301が積層体10の内部において配管51の通過部503を通過して、開口部502に到達する。そして、配管51が中心軸500を中心に時計回りに回転されると、係止部301が被係止部501の直上に位置する。この後、配管51は、配管51が孔部60に挿入された方向と反対方向に引き上げられ、係止部301が被係止部501によって積層方向に嵌合され係止される。
【0040】
これにより、配管51は、孔部60から外れにくくなり、さらに中心軸500の周りに回転しにくくなり、いわゆる回転ずれが起きにくくなる。また、積層体10を
図1に示す状態から横向き、さらには主面1uと主面1dとを180度反転させても、配管51は、孔部60から外れにくくなる。
【0041】
この後、配管51及び積層体10は、加熱用の炉(図示せず)に収納されて、ロウ材61によって積層体10に接合される(
図2(b))。この際、加熱用の炉では、積層体10の主面1uが上向きに収納されてもよく、積層体10が横向きに収納されてもよく、主面1uと主面1dとを180度反転させて収納されてもよい。また、接合方法は、加熱用の炉とロウ材61を用いたロウ付けによらず、アーク溶接、レーザ溶接等を採用してもよい。
【0042】
ここで、金属板2A、2Bの構造の一例、及び配管51~54が積層体10に接合される前の積層体10が拡散接合により形成される過程を説明する。
【0043】
図3(a)、(b)は、積層体の内部に形成された流路を示す模式的斜視図である。
図3(a)には、金属板2Aの構造が示され、
図3(b)には、金属板2Bの構造が示されている。
【0044】
図3(a)に示す金属板2Aは、主面2uと、主面2uとは反対側の主面2dと、主面2uと主面2dとに連なる側面2wとを有する。
【0045】
金属板2Aには、その外周端の4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Aの主面2uには、高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aが設けられている。溝25A、30A、31Aは、金属板2Aの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。
【0046】
溝25A、30A、31Aの深さはいずれの箇所も均一であってよい。複数の溝25Aは、X軸方向に沿って形成される。溝25Aの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Aの形状は直線状に限らず、任意の曲線状でもよい。溝30A、31Aは、Y軸方向に沿って形成される。溝30Aは、その一端が開口部212と連通する。溝31Aは、その一端が開口部222と連通する。
【0047】
図3(b)に示す金属板2Bは、主面2uと、主面2dと、側面2wとを有する。金属板2Bの材料は、金属板2Aの材料と同じである。
【0048】
金属板2Bには、その4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Bの主面2uには、低温流体の流路を形成する溝25Bが設けられている。溝25Bは、金属板2Bの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。複数の溝25Bは、X軸方向に沿って形成される。溝25Bの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Bの形状は直線状に限らず、任意の曲線状でもよい。溝25Bは、その一端が開口部232と連通し、他端は、開口部242と連通する。
【0049】
上記の溝、開口部を形成する処理は、拡散接合前におけるエッチング処理のほか、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などでもよい。
【0050】
金属板2A(
図3(b))と金属板2B(
図3(a))とが
図1に示す金属板3Aの上に交互に積層されて、さらにその上に、孔部60を含む金属板3B(金属板3Ba~3Bf)が積層される。この後、積層方向に積層された金属板3A、2A、2B、3Bが、例えば、Z軸方向に加圧され減圧雰囲気で拡散接合される。これにより、複数の金属板2Aに形成された開口部212、222、232、242のそれぞれが複数の金属板2Bに形成された開口部212、222、232、242のそれぞれと連通する。
【0051】
さらに、積層体10において開口部212、222、232、242のそれぞれは、それぞれの上方に位置する金属板3Bの孔部60に連通する。そして、それぞれの孔部に配管51~54が接合されることから、開口部212は、配管51に連通し、開口部222は、配管52に連通し、開口部232は、配管53に連通し、開口部242は、配管54に連通することになる。このような過程で熱交換機等に適用される積層体10が形成される。
【0052】
配管の積層体へのロウ付けを加熱用の炉によって実行する場合、積層体に設けられた孔に差し込んだ配管がずれたり、傾いたり、外れたりしないように、積層体は適切な姿勢で炉の中に置かれる。ところが積層体の大きさが大きかったり、一度に炉に入れる積層体の数が多かったりする場合は、適切な姿勢で積層体を炉の中に置くことができないことがある。このような場合、配管の位置が元の位置からずれたり、あるいは、ロウ付け中に配管が積層体から外れたりする場合がある。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る積層体10によれば、配管51~54が積層体10に係止されることから、例えば積層体10を横向きにして配管51~54のロウ付けを実行しても、配管51~54の位置が元の位置からずれにくい。さらに、ロウ付け中に配管51~54が積層体10から外れたりすることがない。また、ロウ付け前に配管51~54をTig(Tungsten Inert Gas)溶接等で仮止めする必要がなく、積層体10の生産性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る積層体10によれば、生産性の都合から、加熱用の炉内で複数の積層体を横置きにしてロウ付けを実行しても、配管51~54の位置が元の位置からずれにくく、ロウ付け中に配管51~54が積層体10から外れたりすることがない。
【0055】
また、本実施形態に係る積層体10によれば、配管51~54が積層体10に係止されることから、例えば、積層体10の下面(主面1d)に配管51~54を取り付けてロウ付けを実行しても、配管51~54の位置が元の位置からずれにくく、ロウ付け中に配管51~54が自重によって積層体10から落下することがない。
【0056】
特に、本実施形態では、例えば、エッチング加工により形成した係止部301を含む金属板3Bcの上下に、金属板3Ba、3Bb及び金属板3Bd~3Bfを積層して拡散接合によって孔部60を形成するため、複雑な3次元加工に依らずに、簡便な手法で孔部60の内部に係止部301を形成することができる。
【0057】
このように、配管51~54を接合する積層体として、本実施形態の積層体10を適用することにより、配管の接合が容易となり、配管を設けた積層体の生産性が向上する。
【0058】
(変形例1)
【0059】
図4は、変形例1に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
【0060】
積層体10においては、最上層の金属板3Baから積層体10の内部に向かって、最上層の金属板3Baからの少なくとも1つの金属板に、孔部60に嵌合された配管55を係止する係止部311が設けられもよい。配管55は、配管51~54の外径を同じ外径を持つ配管である。
【0061】
例えば、
図4の例では、最上層の金属板3Baと、金属板3Baの直下の金属板3Bbとに配管55を積層方向に係止する係止部311が設けられている。係止部311は、配管55の被係止部552を積層方向に係止する庇部により形成される。このような係止部311は、最下層の金属板3Aから積層体10の内部に向かって、最下層の金属板からの少なくとも1つの金属板3Aに設けられてもよい。
【0062】
積層体10において、孔部60は、例えば、一組の金属板3Ba、3Bbに形成された孔部601と、一組の金属板3Bc、3Bdに形成された孔部602と、一組の金属板3Be、3Bfに形成された孔部603とによって形成される。孔部601、孔部602、及び孔部603のそれぞれの形状は、異なっている。
【0063】
配管55は、本体部551と、被係止部552とを有する。本体部551の外径は、金属板3Ba、3Bbに設けられた孔部60の内径、金属板3Bc、3Bdに設けられた孔部60の内径、及び金属板3Be、3Bfに設けられた孔部60の内径よりも小さい。
【0064】
図5(a)は、変形例1に係る配管の模式的上面図である。
図5(b)は、変形例1に係る積層体の模式的上面図である。
【0065】
配管55の被係止部552は、
図4に示すように配管55の外周面553の周回りに設けられ、外周面553から遠ざかる方向に延在する2つの羽根部552aと、2つの羽根部552aを繋ぐ部分552bとによって形成される。羽根部552aは、変形例1の例では、180度おきに2個設けられている。換言すれば、中心軸500は、2つの羽根部552aによって挟まれている。例えば、被係止部552は、バジル加工、並びに機械的切削、レーザ加工、放電加工等の手法が適宜複合されて形成される。被係止部552は、金属板3Ba、3Bbに形成された係止部311に係止される。
【0066】
例えば、
図5(a)に示すように、中心軸500に直交する平面において、被係止部552の外周は、中心軸500を挟む2本の平行線と、中心軸500を挟み、前述の2本の平行線のそれぞれと交差する2本の円弧とによって形成される。被係止部552の平面形状は、いわゆるHカットと呼ばれる形状で、長方形の対向する短辺を円弧に置き換えた形状、あるいは、中心軸500を中心とする円において、中心を挟み円周上で対向する2つの領域を互いに平行に並ぶ直線に置き換えた形状に対応している。このため、被係止部552は、対向する円弧間が長手となり、対向する平行線間が短手となる。
【0067】
ここで、被係止部552の長手方向における最大長さをD1とする。また、被係止部552の短手方向の長さをD4とする。また、本体部551の外径をD3とする。
【0068】
また、孔部60は、例えば、
図5(b)に示すように、第1孔部601と、第2孔部602と、第3孔部603とを有する。ここで、第1孔部601の平面形状は、例えば、被係止部552の平面形状と略相似する形状を有している。第2孔部602及び第3孔部603の平面形状は、例えば、円形である。ここで、第1孔部601の最大長さをD2m、第1孔部601の幅をD5とする。第2孔部602の内径をD2とする。第1孔部601の内径をD5とする。
【0069】
これらのD1~D6、D2mについては、D2、D2m>D1>D5>D4>D6>D3の関係がある。D2mとD2とは、同じ長さとしてもよい。
【0070】
図6(a)、(b)は、変形例1の作用を示す配管及び積層体の模式的上面図である。
【0071】
例えば、D2m>D1、D5>D4であり、D6>D3であることから、配管55を孔部60に挿入すると、
図6(a)に示すように、配管55の被係止部552は、第1孔部601に引っ掛からずに、第1孔部601に収まる。
【0072】
さらに、D2>D1>D4であることから、配管55をさらに下に下げることができる。例えば、配管55の被係止部552を第1孔部601を通過させて、被係止部552が第2孔部602の高さに位置するように、配管55の高さを調整することができる。このとき、被係止部552下の本体部551は、D6>D3であることから、第3孔部603に収容されている。
【0073】
次に、D2>D1であることから、
図6(b)に示すように、配管55の被係止部552を孔部602内で90度回転させることができ、被係止部552を係止部311の下に位置させることができる。これにより、積層方向において被係止部552(
図5の羽根部552a)が係止部311によって係止される。このような積層体と配管の組み合わせによっても、配管55が積層体10に係止される。
【0074】
(変形例2)
【0075】
図7(a)は、変形例2に係る配管の模式的上面図である。
図7(b)は、変形例2に係る積層体の模式的上面図である。
【0076】
積層体10においては、ストッパ314が孔部60を形成する少なくとも1つの金属板に設けられてもよい。このストッパ314は、孔部60に嵌合された配管55を孔部60の中心軸600の周りに回転したときに、配管55の中心軸500を中心とする回転の動きを所定の回転角で停止させる。
【0077】
例えば、
図7(a)に示すように、配管55の被係止部552には、切欠部554が設けられている。また、
図7(b)に示すように、金属板3Bcには、配管55を中心軸500を中心に回転させたとき、切欠部554を突き当てて配管55の回転を規制するストッパ314が設けられている。ストッパ314は、金属板3Bc直下の金属板3Bdにも設けられてもよい。
【0078】
図8(a)、(b)は、変形例2の作用を示す配管及び積層体の模式的上面図である。
図9(a)、(b)は、変形例2の効果の一例を示す配管の模式的斜視図である。
【0079】
例えば、配管55を孔部60に挿入すると、
図8(a)に示すように、配管55の被係止部552は、第1孔部601に引っ掛からずに、第1孔部601に収まる。さらに、配管55が下げられて、被係止部552が第2孔部602の高さに位置するように、配管55の高さが調整される。
【0080】
次に、
図8(b)に示すように、配管55を第2孔部602内で90°回転させると、被係止部552に設けられた切欠部554がストッパ314に突き当たり、配管55の回転が規制される。このような積層体と配管の組み合わせによっても、配管55が積層体10に係止される。
【0081】
このような変形例2によれば、例えば、
図9(a)に示すように、配管55がL字状に曲がっているときには、ストッパ314を配管55に適用することにより、L字に曲がった配管55を所望の向きに向け、その後ロウ付けすることで配管の向きを固定できる。また、
図9(b)に示すように、配管55の先にナット等の固定冶具が形成されているときには、ストッパ314を配管55に適用することにより、固定冶具のナットの一辺の向きを所望の向きに設定することが可能になる。
【0082】
(変形例3)
【0083】
図10は、変形例3に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
【0084】
積層体10の係止部に係止される配管55の被係止部は、配管55の外周面553の周回りに形成されることなく、外周面553の少なくとも一部に設けられてもよい。
【0085】
例えば、
図10に示す配管55においては、外周面553の一部に外周面553から遠ざかる方向に凸状の被係止部555が設けられている。被係止部555は、バルジ加工、機械的切削、レーザ加工、放電加工等の手法が適宜複合されて形成される。
【0086】
また、金属板3Ba、3Bbに設けられた第4孔部601Aは、被係止部555を通過させる切欠部604を有する。第4孔部601Aは、配管55の本体部551を通過させる内径を有する。
【0087】
配管55の被係止部555が切欠部604を通過するように配管55が孔部60に挿入されると、被係止部555が第2孔部602の高さに位置するように配管55の高さが調整される。そして、配管55を孔部60で所定の回転角まで回転させると、被係止部555が第2孔部602内で金属板3Ba、3Bbの下に位置することになり、被係止部555が積層方向において金属板3Ba、3Bbにより係止される。
【0088】
変形例3によれば、外周面553の一部に設けられた被係止部555を通過させる切欠部604が第4孔部601Aに設けられることで、第4孔部601Aの開口面積が第4孔部601の開口面積に比べてより小さくなる。これにより、配管55を積層体10に接合する際、ロウ材61の孔部60への流れ込みを抑制することができる。なお、第2孔部602には、配管55の中心軸500を中心とする回転運動を停止するストッパ314が設けられてもよい。
【0089】
(変形例4)
【0090】
図11は、変形例4に係る、積層体及び配管のそれぞれを示す模式的斜視図である。
図12は、変形例4の効果を示す、積層体及び配管のそれぞれの模式的上面図である。
【0091】
図11に示すように、配管55には、被係止部552の上に、孔部60を主面1u側から塞ぐカバー部556が設けられている。カバー部556は、バルジ加工、機械的切削、レーザ加工、放電加工等の手法が適宜複合されて形成される。このようなカバー部556を有する配管55を孔部60に嵌合させたとき、また配管55を回転させたとき、
図12に示すように、孔部60を形成する最上層の第1孔部601と配管55の間の隙間が主面1u側からカバー部556によって容易に塞がれる。
【0092】
このような構造によれば、ロウ材61を用いて配管55を積層体10の孔部60に接合しても、ロウ材61の孔部60への流れ込みをより確実に抑制することができる。また、積層体の下面に配管を挿入・ロウ付けするときに発生する溶けたロウ材が自重で配管先端方向へ流れ出てしまう問題をカバー部556で止めることができる。また、第1孔部601と配管55の間の気密性を容易に確保することができる。
【0093】
また、カバー部556が積層体10にロウ付けされることにより、カバー部556のない配管をロウ付けする場合に比べて、カバー部556の分だけ積層体10にロウ付けされる面積が大きくなり、ロウ付け後の強度が向上する。また、カバー部556により外観が向上する。
【0094】
また、カバー部556がない場合は、多量のロウ材61を用いて第1孔部601を塞ぐ必要があるが、カバー部556を設ければ、多量のロウ材61を要さず、第1孔部601を塞ぐことができる。これは生産性向上に繋がる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0096】
1d、1u、2u、2d…主面
1w、2w…側面
2、10…積層体
2A、2B、3A、3B…金属板
25A、25B、30A、31A…溝
51d…下端
51、52、53、54、55…配管
60、601、601A、602、603…孔部
61…ロウ材
212、222、232、242…開口部
301、311…係止部
314…ストッパ
500、600…中心軸
501、552、555…被係止部
502…開口部
503…通過部
551…本体部
552a…羽根部
552b…部分
553…外周面
554、604…切欠部
556…カバー部