(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/06 20060101AFI20231011BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231011BHJP
G01S 17/06 20060101ALI20231011BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20231011BHJP
G01S 13/06 20060101ALI20231011BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20231011BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01S15/06
G01S15/931
G01S17/06
G01S17/931
G01S13/06
G01S13/931
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020032116
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】福万 真澄
(72)【発明者】
【氏名】貴田 明宏
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187422(JP,A)
【文献】特開2018-132873(JP,A)
【文献】特開2017-129446(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03460512(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/64
G01S 13/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車(V)の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて前記自車の周囲に存在する物体(100)を検知する物体検知装置であって、
探査波を出力すると共に該探査波が前記物体で反射してきた反射波を取得することで、前記物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、前記グリッドマップを用いて、前記測距センサのセンシング情報に含まれる前記物体が検知された位置となる検知座標を示したグリッドマップを作成する物体認識部(31)と、
前記検知座標と対応するグリッドである主グリッドおよび該主グリッドの周囲に位置する周囲グリッドに対して所定の投票数を設定することで、前記自車の周囲に存在する前記物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(32)と、
前記グリッド作成部が作成する前記グリッドマップ中における投票数が所定の閾値を超えるグリッドを前記物体の存在するグリッドとして特定し、該特定されたグリッドと対応する前記検知座標を実際の前記物体の検知座標とする物体特定部(33)と、を有し
、
前記グリッド作成部は、前記主グリッドに前記閾値よりも小さな第1投票数を設定すると共に、前記周囲グリッドに前記第1投票数よりも小さな第2投票数を設定し、かつ、前記物体認識部で作成するグリッドマップ中において、前記検知座標が複数含まれている前記主グリッド、および、隣り合って連続している前記主グリッドには前記閾値より大きな数値の投票数を設定する、物体検知装置。
【請求項2】
前記グリッド作成部は、前記物体認識部で作成するグリッドマップ中において、同じグリッドに前記検知座標が複数含まれている場合には、該グリッドの投票数として該グリッドに含まれる前記検知座標の数分の前記第1投票数を加算することで前記閾値より大きな数値を設定する、請求項
1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記グリッド作成部は、前記物体認識部で作成するグリッドマップ中において、隣り合って連続している前記主グリッドには前記第1投票数に対して隣り合っている前記主グリッドの数分の前記第2投票数を加算することで前記閾値より大きな数値を設定する、請求項
1または
2に記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の車両(以下、自車という)の周辺に存在する物体を検知する物体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ソナーなどを用いて自車の周辺に存在する物体を検知し、その検知結果を自動駐車などの車両制御に用いている。例えば、物体検知装置として、特許文献1に提案されているものがある。
【0003】
この装置には、投票数算出部、クラスター設定部、グリッド判別部および移動物体判別部が備えられている。投票数算出部は、レーダセンサなどの測距センサによる検出点の検出結果に基づいて、グリッドマップのグリッド毎に、測距センサの検出点が含まれる数である投票数を算出する。クラスター設定部は、測距センサによる検出点の検出結果に基づいて、検出点のクラスタリングにより、検知対象の物体であるクラスターをグリッドマップ上に設定する。グリッド判別部は、複数回算出されたグリッド毎の投票数の合計値に基づいて、クラスターが占有するグリッドから静止グリッドと移動グリッドとを判別する。移動物体判定部は、クラスターが占有するグリッドに含まれる静止グリッドおよび移動グリッドの配置に基づいて、クラスターが移動物体であるか静止物体であるか判定する。これらを用いて、自車の周辺に存在する物体を検知すると共に、検知対象の物体であるクラスターが移動物体であるか静止物体であるかを判定できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1ではグリッドマップを用いて移動物体と静止物体の判定が行えるようにしているが、そのグリッドマップを用いて物体の座標を作成すると、グリッドで抽象化することによる量子化誤差が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、グリッドマップを用いてグリッドに抽象化しても、量子化誤差の発生を抑制でき、精度良い物体検知を行うことが可能な物体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、自車(V)の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて自車の周囲に存在する物体(100)を検知する物体検知装置であって、探査波を出力すると共に該探査波が物体で反射してきた反射波を取得することで物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、グリッドマップを用いて、測距センサのセンシング情報に含まれる物体が検知された位置となる検知座標を示したグリッドマップを作成する物体認識部(31)と、検知座標と対応するグリッドである主グリッドおよび該主グリッドの周囲に位置する周囲グリッドに対して所定の投票数を設定することで、自車の周囲に存在する物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(32)と、グリッド作成部が作成するグリッドマップ中における投票数が所定の閾値を超えるグリッドを物体の存在するグリッドとして特定し、該特定されたグリッドと対応する検知座標を実際の物体の検知座標とする物体特定部(33)と、を有し、グリッド作成部は、主グリッドに閾値よりも小さな第1投票数を設定すると共に、周囲グリッドに第1投票数よりも小さな第2投票数を設定し、かつ、物体認識部で作成するグリッドマップ中において、検知座標が複数含まれている主グリッド、および、隣り合って連続している主グリッドには閾値より大きな数値の投票数を設定する。
【0008】
このように、測距センサのセンシング情報に含まれる物体の検知座標を解像度の低いグリッドマップ上におけるグリッドに変換し、主グリッドおよび周囲グリッドに投票数を設定している。また、投票数を閾値と比較することで物体が存在するグリッドを特定している。そして、グリッドマップに基づいて物体の存在が検知されたグリッドについて、そのグリッドの座標を出力するのではなく、測距センサでの物体の検知座標をそのまま出力するようにしている。
【0009】
このため、グリッドの座標を出力するよりも、より物体の位置を的確に示したデータを出力できる。しがたって、グリッドマップを用いてグリッドに抽象化しても、そのグリッドに対応する検知座標を出力することで、量子化誤差の発生を抑制でき、精度良い物体検知を行うことが可能になる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態にかかる車両制御システムのブロック図である。
【
図2】図の中心位置が物体の検知座標であった場合の各グリッドに設定される投票数の一例を示した図である。
【
図4】比較例として示す検知座標をグリッドマップ上のグリッドに変換した後、物体が検知されたグリッドの座標を出力する場合の一例を示した図である。
【
図5】第1実施形態として説明する検知座標をグリッドマップ上のグリッドに変換した後、物体が検知されたグリッドと対応するソナーでの検知座標を出力する場合の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる物体検知装置が備えられた車両制御システムについて説明する。ここでは、車両制御として、自動駐車を行う駐車支援制御を実行するものを例に挙げて説明するが、物体検知装置での物体検知結果に基づいて車両制御を行うものであれば、他の制御を行うものであっても構わない。
【0014】
図1に示すように、車両制御システム1は、ソナー10、物体検知装置を構成する電子制御装置(以下、ECUという)30、各種アクチュエータ40および表示器50を備えた構成とされている。
【0015】
ソナー10は、測距センサに相当するものである。ソナー10は、所定のサンプリング周期毎に、探査波として超音波を出力すると共にその反射波を取得することで得られた物標との相対速度や相対距離および物標が存在する方位角などの位置の測定結果をセンシング情報としてECU30へ逐次出力する。ソナー10は、物体を検知した場合には、その検知した位置の座標である検知座標をセンシング情報に含めて出力している。物体の検知座標については、移動三角測量法を用いて特定しており、自車の移動に伴って物体までの距離が変化することから、サンプリング周期毎の測定結果の変化に基づいて特定している。
【0016】
ここではソナー10を1つのみ図示しているが、実際には、車両に対して複数箇所に備えられる。ソナー10としては、例えば前後のバンパーに車両左右方向に複数個並べて配置されたフロントソナーや、車両の側方位置に配置されたサイドソナーが挙げられる。ソナー10のサンプリング周期は、ソナー10の配置場所に応じて設定されており、例えばフロントソナーでは第1周期、サイドソナーでは第1周期以下の第2周期とされている。
【0017】
なお、ここでは測距センサとしてソナー10を例に挙げるが、測距センサとしては、ミリ波レーダやLIDAR(Light Detection and Ranging)なども挙げられる。ミリ波レーダは、探査波としてミリ波を用いた測定、LIDARは、探査波としてレーザ光を用いた測定を行うものであり、共に、例えば車両の前方などの所定範囲内に探査波を出力し、その出力範囲内において測定を行う。
【0018】
ECU30は、物体の検知を行うと共に自動駐車を行うための駐車支援制御を実現するための各種制御を行うものであり、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。具体的には、ECU30は、ソナー10のセンシング情報に基づいてグリッドマップを作成することで自車の周囲に存在する物体を検知し、その物体の検知座標を選定する。さらに、本実施形態の場合には、ECU30は、物体の検知結果に基づいて駐車支援制御を行い、駐車支援制御に基づいて各種アクチュエータ40を制御して自動駐車を行わせる。具体的には、ECU30は、各種制御を実行する機能部として、物体認識部31、グリッド作成部32、出力選定部33および制御部34を備えた構成とされている。
【0019】
物体認識部31は、ソナー10から入力されるセンシング情報に基づき、自車の周辺を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて自車の周辺の物体の位置を示したグリッドマップを作成する。例えば、物体認識部31は、自車を中心として自車よりも大きな数m×数mの範囲のグリッドマップを作成している。グリッドマップは、平面視で自車両の周囲を格子状に区分けして複数のグリッドに分割したマップである。ここでは、物体認識部31は、例えば数~十数cmの正方形を1グリッド、つまり1単位領域として、自車の前後方向および自車の左右方向において格子状に区分けしたグリッドマップを作成している。そして、物体認識部31は、物体の検知座標がグリッドマップ上のどのグリッドに配置されるかを認識する。
【0020】
なお、ソナー10の解像度は高く、グリッドマップをより細かいグリッドで構成することも可能であるが、メモリ容量や処理負荷の低減のために、グリッドサイズを大きくとることでデータを間引いて粗くしてもよい。このため、グリッドマップを用いて物体の検知座標をグリッドに抽象化すると、上記したように量子化誤差が発生することになる。
【0021】
グリッド作成部32は、物体認識部31でのグリッドマップ上のどのグリッドに物体の検知座標が配置されるかの認識結果に基づいて、検知座標を投票数で表したグリッドへ変換する。投票数は物体の存在確率を示す指標となる値であり、ここでは投票数が大きい値であるほど物体の存在確率が高いことを示している。具体的には、ソナー10からのセンシング情報に含まれる検知座標と対応するグリッドを主グリッド、主グリッドの周囲に位置するグリッドを周囲グリッドとして、それぞれに対応する投票数を設定する。これにより、グリッド作成部32は、ソナー10のセンシング情報に含まれる検知座標を反映したグリッドマップを作成している。
【0022】
一例を挙げると、
図2に示すように、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標、すなわちソナー10が物体の存在を検知した位置を示す座標と対応するグリッドを主グリッドとしている。本図では、図の中心が主グリッドとなる場合を示している。また、主グリッドの周囲に位置するグリッドを周囲グリッドとしている。そして、主グリッドについては第1投票数、周辺グリッドについては第1投票数より少ない第2投票数を設定する。本実施形態の場合は主グリッドに隣り合う8つの周囲グリッドとして、この8つの周囲グリッドそれぞれに第2投票数を設定している。例えば、第1投票数については正の投票数、ここではXを設定している。第2投票数についても正の投票数、ここではYを設定している。なお、ここでは第1投票数および第2投票数を共に正の投票数としたが、第1投票数については正の投票数、第2投票数については0もしくは負の投票数など、投票数がすべて正である必要はない。
【0023】
また、投票数の設定については、検知座標ごとに行う。すなわち、同じグリッドに2つの検知座標がある場合、そのグリッドは主グリッドになるが、2つ分の第1投票数を加算することで投票数を設定する。第1投票数がXである場合には、2つ分の投票数となる2×Xがその主グリッドの投票数として設定される。周囲グリッドについても同様であり、2つ分の第2投票数を加算することで投票数が設定される。さらに、隣り合うグリッドに検知座標が含まれている場合には、検知座標が含まれているグリッドは、主グリッドであり、かつ、周辺グリッドでもあるため、第1投票数に隣り合う主グリッドの数分の第2投票数を加算した投票数が設定される。
【0024】
出力選定部33は、物体特定部に相当し、グリッド作成部32で作成されたグリッドマップから物体の存在するグリッドを特定し、そのグリッドに存在すると検知された物体の検知座標を制御部34に出力する。例えば、出力選定部33は、投票数の閾値を記憶しており、グリッドマップ中の各グリッドの投票数が閾値未満であれば物体が存在しないグリッドと判定し、閾値以上であれば物体が存在するグリッドと判定する。ここでは、閾値をThに設定しており、投票数の合計値がTh以上になったグリッドを物体が存在しているグリッドと特定している。閾値Thについては任意に設定可能であるが、例えばX<Th≦X+Yを満たすようにしている。そして、物体認識部31で作成したグリッドマップのうち、ここで物体が存在すると特定されたグリッドと対応する物体の検知座標を実際の物体の検知座標として制御部34に出力している。
【0025】
このとき、物体の存在するグリッドの座標を制御部34に出力することも考えられる。しかしながら、ソナー10の解像度が高く、グリッドマップのデータの解像度が低くて粗いため、ソナー10のセンシング情報が示す検知座標をそのまま出力した方が、より詳細なデータとなる。例えば、物体の存在するグリッドの座標を出力する場合、そのグリッドの中心座標を出力することになる。しかし、物体の検知座標とグリッドの中心座標とは必ずしも一致している訳ではない。このため、グリッドの座標を出力するよりも、物体の検知座標をそのまま出力した方が、より物体の位置を的確に示したデータを出力できる。しがたって、グリッドマップを用いてグリッドに抽象化しても、そのグリッドに対応する検知座標を出力することで、量子化誤差の発生を抑制でき、精度良い物体検知を行うことが可能になる。
【0026】
また、ソナー10のセンシング情報に含まれる検知座標が同じグリッドに複数存在している場合には、複数の検知座標をそれぞれ出力でき、1つの粗いグリッドのデータが出力されるよりも、より正確なデータを出力できる。
【0027】
さらに、単にソナー10のセンシング情報に含まれる物体の検知座標をそのまま出力すれば良いため、改めてグリッドの座標を算出したり記憶したりする必要がなく、ECU30のメモリ容量および処理負荷の低減を図ることができる。
【0028】
そして、物体の検知座標が1つ存在するグリッドについては閾値以下の投票数が加算されるようにしておき、同一グリッドや隣接するグリッドにも物体の検知座標が存在している場合に、そのグリッドの投票数が閾値を超えるようにしている。このため、物体の検知座標が1つのみノイズ的に含まれていても、その検知座標に対応する主グリッドの投票数が閾値を超えない。したがって、グリッドマップを用いて検知座標をグリッドに量子化することで、ノイズ除去を図ることも可能となる。
【0029】
制御部34は、自動駐車を行うための駐車支援制御を行う。駐車支援制御では、現在位置から駐車予定位置までの駐車経路生成や、生成した駐車経路に沿って自車を移動させる経路追従制御、駐車支援制御に関する表示制御を実行している。駐車経路生成は、出力選定部33から伝えられる物体の検知座標に基づいて行われる。例えば、制御部34は、物体の検知座標を避けるように駐車経路を生成する。経路追従制御は、駐車経路生成によって生成された駐車経路に沿って自車を移動させるために、加減速制御や操舵制御などの車両運動制御を行う制御である。また、制御部34は、駐車支援制御中に新たに駐車経路中に物体が検知された場合には、駐車経路を再生成したり、その物体が移動するまで経路追従制御での自車の移動を停止させることで、物体との接触が避けられるようにしている。
【0030】
表示制御は、駐車支援制御に係わる表示を行うことでドライバに駐車支援制御中であることを伝えたり、駐車経路や自車の様子、例えば駐車経路中のどの位置を移動中であるかなどの表示を制御するものである。制御部34は、表示制御として表示器50を制御している。
【0031】
なお、本実施形態では、ECU30を1つで構成し、そのECU30内に各機能部を備えた構成としているが、複数のECUを組み合わせた構成としても良く、一部のみ、例えば制御部34だけを1つもしくは複数のECUで構成したものとしても良い。制御部34を複数のECUで構成する場合の各種ECUとしては、例えば、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECUおよびブレーキECU等が挙げられる。
【0032】
具体的には、制御部34は、図示しないが、自車に搭載されたアクセルポジションセンサ、ブレーキ踏力センサ、舵角センサ、シフトポジションセンサ等の各センサから出力される検出信号を取得している。そして、制御部34は、取得した検出信号より各部の状態を検出し、駐車経路に追従して自車を移動させるべく、各種アクチュエータ40に対して制御信号を出力する。
【0033】
各種アクチュエータ40は、自車の走行や停止に係わる各種走行制御デバイスであり、電子制御スロットル41、ブレーキアクチュエータ42、EPS(Electric Power Steering)モータ43、トランスミッション44等がある。これら各種アクチュエータ40が制御部34からの制御信号に基づいて制御され、自車Vの走行方向や舵角、制駆動トルクが制御される。それにより、駐車経路に従って自車を移動させて駐車予定位置に駐車させるという経路追従制御を含む駐車支援制御が実現される。
【0034】
表示器50は、ナビゲーションシステムにおけるディスプレイ(以下、ナビディスプレイという)51やメータに備えられるディスプレイ(以下、メータディスプレイという)52などで構成される。ここでは、駐車支援制御中に、ナビディスプレイ51やメータディスプレイ52に駐車経路や駐車経路中のどの位置に自車が移動中であるかの表示を行うようにしている。
【0035】
以上のようにして、本実施形態にかかる車両制御システム1が構成されている。次に、本実施形態にかる車両制御システム1の作動について説明する。なお、車両制御システム1のECU30で行われる駐車支援制御としては、駐車経路生成、経路追従制御、表示制御を行っているが、これらについては上記の通りであるため、説明を省略する。ここでは、駐車経路生成に用いるグリッドマップ作成や物体の検知座標の出力を含む物体検知について、
図3を参照して説明する。
図3は、ECU30が実行する物体検知処理のフローチャートである。この物体検知処理は、イグニッションスイッチなどの自車の起動スイッチがオンされている際に、所定の制御周期毎、例えばソナー10のサンプリング周期よりも短い周期毎に実行される。ECU30のうちの物体認識部31、グリッド作成部32および出力選定部33が処理部として機能して、この物体検知処理を行っている。
【0036】
まず、ステップS100では、ソナー認識が行われたか否か、つまりソナー10から出力されるセンシング情報に物体が認識されたことを示す情報が含まれているか否かが判定される。そして、ソナー10のセンシング情報に物体が認識されたことを示す情報が含まれていればステップS110に進み、含まれていなければ本処理を繰り返す。
【0037】
そして、ソナー10で物体が検知された場合には、ステップS110以降の各処理が実行される。ステップS110では、ソナー10のセンシング情報に含まれる検知座標と対応するグリッドを検索する。このグリッドが今回の制御周期における主グリッドになる。この処理は、検知座標ごとに行われ、検知座標ごとに主グリッドが設定される。ステップS115では、ステップS110で検索した主グリッドの投票数を加算する。つまり、先の制御周期までに作成していたグリッドマップ中において、今回の制御周期における主グリッドの投票数を加算する。ここでは、投票数として第1投票数となるXを加算しており、同じグリッド中に2つの検知座標が含まれている場合には、そのグリッドについては2つ分の第1投票数が加算されて投票数が2×Xになる。
【0038】
ステップS120では、主グリッドの周囲に位置する8つの周囲グリッドに投票数を加算する。ここでは投票数として第2投票数となるYを加算している。周囲グリッドについても、検知座標ごとに設定される主グリッドそれぞれに設定されるため、同じグリッドに2つ検知座標が含まれている主グリッドの周囲グリッドについては、2つ分の第2投票数が加算されて投票数が2×Yになる。また、隣り合うグリッドに検知座標が含まれている場合には、連続して隣り合うように主グリッドが設定されることになるが、お互いがもう一方の主グリッドに対する周囲グリッドでもある。このため、隣り合う主グリッドについては、主グリッドとして加算された第1投票数に対して周囲グリッドとして加算される第2投票数が加算され、投票数がX+Yになる。このようにして、グリッドマップが更新される。
【0039】
続いて、ステップS140に進み、出力選定処理を行う。すなわち、ステップS130で作成したグリッドマップから物体の存在するグリッドを特定し、そのグリッドに存在すると検知された物体の検知座標を制御部34に出力する。具体的には、グリッドマップの中から投票数の合計値が閾値以上、ここではTh以上のグリッドを物体が存在しているグリッドと判定する。そして、ソナー10のセンシング情報に含まれていた検知座標のうち、物体が存在しているグリッドと判定されたものと対応する検知座標を制御部34に出力する。
【0040】
このようにして、駐車経路生成に用いるグリッドマップ作成や物体の検知座標の出力を含む物体検知が完了し、制御部34に物体の検知座標が伝えられる。なお、ここで説明した各処理のうち、ステップS100、S110の処理は物体認識部31、ステップS120、S130の処理はグリッド作成部32、ステップS140の処理は出力選定部33によって実行される。
【0041】
そして、制御部34に物体の検知座標が伝えられると、制御部34において、駐車支援制御としては、駐車経路生成、経路追従制御、表示制御が実行される。これにより、物体を避けるようにして駐車経路が作成されたのち、各種アクチュエータ40が制御されて駐車経路に追従した自動駐車が行われると共に、表示器50にて駐車経路や駐車経路中のどの位置に自車が移動中であるかの表示が行われる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の車両制御システム1では、ソナー10のセンシング情報に含まれる物体の検知座標を解像度の低いグリッドマップ上におけるグリッドに変換し、主グリッドおよび周囲グリッドに投票数を設定している。また、投票数を閾値と比較することで物体が存在するグリッドを特定している。そして、グリッドマップに基づいて物体の存在が検知されたグリッドについて、そのグリッドの座標を出力するのではなく、ソナー10での物体の検知座標をそのまま出力するようにしている。このため、グリッドの座標を出力するよりも、より物体の位置を的確に示したデータを出力できる。しがたって、グリッドマップを用いてグリッドに抽象化しても、そのグリッドに対応する検知座標を出力することで、量子化誤差の発生を抑制でき、精度良い物体検知を行うことが可能になる。
【0043】
また、ソナー10のセンシング情報に含まれる検知座標が同じグリッドに複数存在している場合には、複数の検知座標をそれぞれ出力でき、1つの粗いグリッドのデータが出力されるよりも、より正確なデータを出力できる。
【0044】
さらに、単にソナー10のセンシング情報に含まれる物体の検知座標をそのまま出力すれば良いため、改めてグリッドの座標を算出したり記憶したりする必要がなく、ECU30のメモリ容量および処理負荷の低減を図ることができる。
【0045】
また、物体の検知座標が1つ存在する毎に、主グリッドおよび周囲グリッドに投票数を設定している。そして、物体の検知座標が1つ存在するグリッドについては閾値以下の投票数が加算されるようにしておき、同一グリッドや隣接するグリッドにも物体の検知座標が存在している場合に、そのグリッドの投票数が閾値を超えるようにしている。このため、物体の検知座標が1つのみノイズ的に含まれていても、その検知座標に対応する主グリッドの投票数が閾値を超えない。したがって、グリッドマップを用いて検知座標をグリッドに量子化することで、ノイズ除去を図ることが可能となる。
【0046】
具体的に、
図4および
図5を参照して、上記した物体検知処理のメカニズムについて説明する。
図4は、比較例であり、物体の検知座標をグリッドに変換したのちに、物体の存在するグリッドの座標を出力する場合の様子を示している。
図5は、本実施形態の一例であり、物体の検知座標をグリッドに変換したのちに、物体の存在するグリッドと対応するソナー10での物体の検知座標を出力する場合の様子を示している。
【0047】
まず、
図4に基づいて比較例について説明する。
図4の(1)に示すように、ソナー10から入力されるセンシング情報に基づき、自車の周辺を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて自車の周辺の物体の位置を示したグリッドマップを作成する。すなわち、自車を中心とした所定範囲のグリッドマップを作成し、そのグリッドマップ上のどのグリッドに物体の検知座標が配置されているかを認識する。
【0048】
続いて、
図4中の(2)に示すように、グリッドマップ上のどのグリッドに物体の検知座標が配置されているかの認識結果に基づいて、検知座標を投票数で表したグリッドに変換する。このとき、同じグリッド中に物体の検知座標が複数含まれていれば、その数分の投票数が設定されるようにする。このため、図中右上の主グリッドについては、物体の検知座標が2つ含まれていることから2つ分の投票数となる2×Xがその主グリッドの投票数として設定される。一方、図中左上の主グリッドについては、物体の検知座標が1つしか含まれていないことから1つ分の投票数となるXがその主グリッドの投票数として設定される。また、下から2段目に、物体の検知座標が含まれる隣接した2つは、主グリッドであり、かつ、周辺グリッドでもあるため、第1投票数と第2投票数を加算したX+Yが投票数として設定される。
【0049】
この後、投票数が閾値、ここではTh以上となっているグリッドが物体の存在しているグリッドとして特定される。このとき、(3)に示されるように、図中左上のグリッドについては、投票数がXとなっていて、閾値となるTh以上ではないため、グリッドの座標が出力されないようにできる。このため、ノイズ的にソナー10でのセンシング情報に物体の検知座標として含まれていたとしても、それを除去することができる。
【0050】
また、投票数が閾値を超えて物体が存在すると特定されたグリッドについては、そのグリッドの座標、具体的にはそのグリッドの中心座標が制御部34に出力される。このため、図中右上のグリッドにおいては、(1)の段階では物体の検知座標が2つ含まれていたにもかかわらず出力されるのは1座標のみになってしまう。また、図中右上のグリッドも、下から二段目の隣接する2つのグリッドも、実際の物体の検知座標はグリッドの中心座標と一致していないのに、出力されるのはグリッドの中心座標になってしまう。したがって、物体の位置を的確に示したデータを出力することができない。
【0051】
次に、
図5に基づいて本実施形態について説明する。
図5の(1)、(2)については、
図4(1)、(2)と同様である。そして、
図5(2)に示すように検知座標が投票数で表したグリッドに変換されると、その後、投票数が閾値以上となっているグリッドが物体の存在しているグリッドとして特定される。このとき、(3)に示されるように、図中左上のグリッドについては、投票数がXとなっていて、閾値となるTh以上ではないため、グリッドの座標が出力されないようにできる。このため、ノイズ的にソナー10でのセンシング情報に物体の検知座標として含まれていたとしても、それを除去することができる。
【0052】
また、投票数が閾値を超えて物体が存在すると特定されたグリッドについては、そのグリッドの座標ではなく、そのグリッドに含まれるソナー10での物体の検知座標がそのまま制御部34に出力される。つまり、
図5中の(1)と(2)を比較し、(2)において物体が存在すると特定されたグリッドに含まれる(1)で示された物体の検知座標を抽出して出力する。このため、図中右上のグリッドにおいては、(1)の段階では物体の検知座標が2つ含まれていれば、それがそのまま2座標として出力される。また、図中右上のグリッドも、下から二段目の隣接する2つのグリッドも、実際の物体の検知座標はグリッドの中心座標と一致していないが、その一致していない座標のまま正確に出力される。したがって、物体の位置を的確に示したデータを出力することができる。
【0053】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0054】
(1)例えば、上記第1実施形態で説明した投票数や物体と検知する際に用いる所定の閾値の数値については一例を示したに過ぎず、任意に設定可能である。例えば、第1投票数をX、第2投票数をYとしたが、第1投票数、第2投票数を他の数値にしても良い。また、第1、第2投票数を必ずしも正の値にする必要はなく、0や負の値に設定しても良い。また、物体が存在しているグリッドと判定する閾値についても、投票数に対応した値にすれば良く、例えば第1投票数、第2投票数を他の数値に設定するのであれば、閾値もそれに合わせて設定すればよい。
【0055】
また、同じグリッドにソナー10での検知座標が複数含まれる場合に、その数分の第1投票数を加算してそのグリッドの投票数を設定するようにしたが、必ずしもその数分の第1投票数を加算する必要はない。すなわち、検知座標が複数含まれるグリッドについては、物体の存在する確率が高いことから、検知座標の数分の第1投票数を加算するという手法を含めて、閾値以上となる所定値が投票数として設定されるようにしておけば良い。
【0056】
(2)また、第1実施形態では、ソナー10のセンシング情報に基づいてグリッドマップを作成し、物体検知を行ったが、ソナー10以外の他のセンサのセンシング情報に基づいてグリッドマップを作成しても良い。また、ソナー10および他のセンサのいずれかで構成される多種類のセンサを用いて、多種類のセンサそれぞれのセンシング情報に基づいてグリッドマップを作成して物体検知を行うこともできる。
【0057】
例えば、物体認識部31にて、多種類のセンサそれぞれのセンシング情報に基づいて物体の検知座標を示したグリッドマップを作成したのち、それを統合して物体の検知座標を示した1つのグリッドマップを作成する。その後、グリッド作成部32にて、その検知座標を投票数で表したグリッドへ変換する。そして、物体認識部31で作成したグリッドマップとグリッド作成部32が作成したグリッドに変換後のグリッドマップとを比較し、物体が存在すると特定されたグリッドに含まれる物体の識別座標を出力する。
【0058】
このときに比較に用いる物体認識部31で作成したグリッドとしては、統合後のグリッドとしても良いし、多種類のセンサそれぞれのセンシング情報に基づいて作成したグリッドマップとしても良い。統合後のグリッドマップとする場合、多種類のセンサそれぞれの特性に基づいて、より正確な物体の検知座標を出力することが可能になる。すなわち、ソナー10などの測距センサは物体幅方向の測定は不得意であるが物体までの距離の測定は得意であり、車載カメラは物体までの距離の測定は不得意であるが物体幅方向の測定は得意である。このため、多種類のセンサそれぞれのセンシング情報に基づいて作成したグリッドマップを統合することでセンサフュージョンを行うことができ、得意とする特性を生かしたグリッドマップにできる。このように、多種類のセンサの特性を考慮した統合グリッドマップを作成することで、物体の検知精度を高めることが可能となり、1つの測距センサのみで物体検知を行う場合のような誤検知を抑制することが可能となる。
【0059】
(3)上記第1実施形態では、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標と対応する主グリッドに加えて、その周囲に位置する周囲グリッドのすべてについて投票数を加算するようにしているが、そのうちの一部だけにしても良い。また、周囲グリッドについて投票数を異ならせても良い。
【0060】
例えば、ソナー10の場合、幅方向の検知精度はあまり高くないが、物体までの距離の検知精度は高いため、物体を認識した場合、その物体よりも近い位置には何もない可能性が高い。このため、周囲グリッドのうち検知座標のグリッドよりもソナー10に近い側に相当するグリッドについては、投票数を加算しないもしくは他のグリッドよりも投票数の加算を小さくするようにしても良い。
【0061】
(4)上記第1実施形態では、自車の起動スイッチがオンされている際に
図3に示した物体検知処理が実行されるようにしたが、起動スイッチがオンされている際に常に実行されなくても良い。例えば、駐車支援制御の実行を指示する図示しないスイッチがオンされた際に、物体検知処理が実行されるようにしても良い。つまり、物体検知処理の結果が用いられる制御の実行が指示された際に、物体検知処理も実行されるようにすれば良い。
【0062】
(5)なお、本開示に記載の処理部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 車両制御システム
10 ソナー
30 ECU
31 物体認識部
32 グリッド作成部
33 出力選定部
34 制御部
40 アクチュエータ
50 表示器