(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/06 20060101AFI20231011BHJP
G01S 15/50 20060101ALI20231011BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231011BHJP
G01S 17/06 20060101ALI20231011BHJP
G01S 17/50 20060101ALI20231011BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20231011BHJP
G01S 13/06 20060101ALI20231011BHJP
G01S 13/50 20060101ALI20231011BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20231011BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01S15/06
G01S15/50
G01S15/931
G01S17/06
G01S17/50
G01S17/931
G01S13/06
G01S13/50
G01S13/931
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020032117
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】福万 真澄
(72)【発明者】
【氏名】貴田 明宏
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187422(JP,A)
【文献】特開2018-132873(JP,A)
【文献】特開2002-123818(JP,A)
【文献】特開2000-329852(JP,A)
【文献】特開2016-166767(JP,A)
【文献】特開平07-311260(JP,A)
【文献】国際公開第2005/109033(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0203106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/64
G01S 13/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査波を出力すると共に該探査波が物体(100)で反射してきた反射波を取得することで前記物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、自車の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて、前記センシング情報に含まれる前記物体が検知された位置を示す検知座標と対応するグリッドである主グリッドに所定の投票数を加算すると共に、該主グリッドの周囲のグリッドである周囲グリッドに対して前記所定の投票数よりも低い投票数を加算することで、前記自車の周囲に存在する前記物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(31)と、
前記自車の車速が高いほど前記主グリッドの投票数の合計値が高くなるように、前記車速に応じて、前記主グリッドの投票数を調整する投票調整部(32)と、
前記グリッド作成部が作成した前記グリッドマップ中における前記投票数の合計値が所定の閾値を超えるグリッドを前記物体の存在するグリッドとして特定する物体特定部(33)と、を有し
、
前記投票調整部は、前記車速が高いほど、前記主グリッドに加算する前記投票数を高くする、物体検知装置。
【請求項2】
探査波を出力すると共に該探査波が物体(100)で反射してきた反射波を取得することで前記物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、自車の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて、前記センシング情報に含まれる前記物体が検知された位置を示す検知座標と対応するグリッドである主グリッドに所定の投票数を加算すると共に、該主グリッドの周囲のグリッドである周囲グリッドに対して前記所定の投票数よりも低い投票数を加算することで、前記自車の周囲に存在する前記物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(31)と、
前記自車の車速が高いほど前記主グリッドの投票数の合計値が高くなるように、前記車速に応じて、前記主グリッドの投票数を調整する投票調整部(32)と、
前記グリッド作成部が作成した前記グリッドマップ中における前記投票数の合計値が所定の閾値を超えるグリッドを前記物体の存在するグリッドとして特定する物体特定部(33)と、を有し、
前記投票調整部は、前記車速が所定の速度閾値未満であると、加算する前記投票数を低速走行時に設定する低速投票数設定とし、前記車速が所定の速度閾値以上であると、前記低速投票数設定よりも少なくとも前記主グリッドの前記投票数を高くした高速投票数設定とする
、物体検知装置。
【請求項3】
前記投票調整部は、前記車速が高いほど、前記周囲グリッドに加算する前記投票数も高くする、請求項
1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
探査波を出力すると共に該探査波が物体(100)で反射してきた反射波を取得することで前記物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、自車の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて、前記センシング情報に含まれる前記物体が検知された位置を示す検知座標と対応するグリッドである主グリッドに所定の投票数を加算すると共に、該主グリッドの周囲のグリッドである周囲グリッドに対して前記所定の投票数よりも低い投票数を加算することで、前記自車の周囲に存在する前記物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(31)と、
前記自車の車速が高いほど前記主グリッドの投票数の合計値が高くなるように、前記車速に応じて、前記主グリッドの投票数を調整する投票調整部(32)と、
前記グリッド作成部が作成した前記グリッドマップ中における前記投票数の合計値が所定の閾値を超えるグリッドを前記物体の存在するグリッドとして特定する物体特定部(33)と、を有し、
前記投票調整部は、前記車速が高いほど、前記投票数の加算を行う前記周囲グリッドの範囲を広くする
、物体検知装置。
【請求項5】
前記投票調整部は、前記車速が所定の速度閾値未満であると、前記投票数を加算する前記周囲グリッドの範囲を低速走行時に設定する低速投票数設定とし、前記車速が所定の速度閾値以上であると、前記低速投票数設定よりも前記投票数を加算する前記周囲グリッドの範囲を広くした高速投票数設定とする、請求項
4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
探査波を出力すると共に該探査波が物体(100)で反射してきた反射波を取得することで前記物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、自車の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて、前記センシング情報に含まれる前記物体が検知された位置を示す検知座標と対応するグリッドである主グリッドに所定の投票数を加算すると共に、該主グリッドの周囲のグリッドである周囲グリッドに対して前記所定の投票数よりも低い投票数を加算することで、前記自車の周囲に存在する前記物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(31)と、
前記自車の車速が高いほど前記主グリッドの投票数の合計値が高くなるように、前記車速に応じて、前記主グリッドの投票数を調整する投票調整部(32)と、
前記グリッド作成部が作成した前記グリッドマップ中における前記投票数の合計値が所定の閾値を超えるグリッドを前記物体の存在するグリッドとして特定する物体特定部(33)と、を有し、
前記投票調整部は、前記車速が所定の速度閾値未満であると、前記投票数を加算する前記周囲グリッドの範囲を低速走行時に設定する低速投票数設定とし、前記車速が所定の速度閾値以上であると、前記低速投票数設定よりも前記投票数を加算する前記周囲グリッドの範囲を広くした高速投票数設定とする、物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の車両(以下、自車という)の周辺に存在する物体を検知する物体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ソナーなどを用いて自車の周辺に存在する物体を検知し、その検知結果を自動駐車などの車両制御に用いている。例えば、物体検知装置として、特許文献1に提案されているものがある。
【0003】
この装置には、投票数算出部、クラスター設定部、グリッド判別部および移動物体判別部が備えられている。投票数算出部は、レーダセンサなどの測距センサによる検出点の検出結果に基づいて、グリッドマップのグリッド毎に、測距センサの検出点が含まれる数である投票数を算出する。クラスター設定部は、測距センサによる検出点の検出結果に基づいて、検出点のクラスタリングにより、検知対象の物体であるクラスターをグリッドマップ上に設定する。グリッド判別部は、複数回算出されたグリッド毎の投票数の合計値に基づいて、クラスターが占有するグリッドから静止グリッドと移動グリッドとを判別する。移動物体判定部は、クラスターが占有するグリッドに含まれる静止グリッドおよび移動グリッドの配置に基づいて、クラスターが移動物体であるか静止物体であるか判定する。これらを用いて、自車の周辺に存在する物体を検知すると共に、検知対象の物体であるクラスターが移動物体であるか静止物体であるかを判定できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低速走行時と比較して、それよりも車速が高い高速走行時には、測距センサでの検知回数が少ないため、実際に物体が存在しているはずのグリッドに対して、存在確率が高いグリッドとなるグリッドの占有率が低くなってしまう。すなわち、測距センサは所定のサンプリング周期毎に検知を行っているため、例えば物体の側方を自車が通過する際に測距センサであるサイドソナーで物体を検知しても、その物体の検知座標が低速走行時には密になり、高速走行時には疎になる。このため、物体の検知座標をグリッドマップに変換した際に、グリッドマップ上での物体の座標位置での投票数の合計値、つまり物体の存在確率があまり高くならず、物体を認識できない可能性がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、車速の変化に対応して、精度良い物体検知を行うことが可能な物体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の物体検知装置は、探査波を出力すると共に該探査波が物体(100)で反射してきた反射波を取得することで物体の位置を測定する測距センサ(10)のセンシング情報を入力し、自車の周囲を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて、センシング情報に含まれる物体が検知された位置を示す検知座標と対応するグリッドである主グリッドに所定の投票数を加算すると共に、該主グリッドの周囲のグリッドである周囲グリッドに対して所定の投票数よりも低い投票数を加算することで、自車の周囲に存在する物体の位置を示したグリッドマップを作成するグリッド作成部(31)と、自車の車速が高いほど主グリッドの投票数の合計値が高くなるように、車速に応じて、主グリッドの投票数を調整する投票調整部(32)と、グリッド作成部が作成したグリッドマップ中における投票数の合計値が所定の閾値を超えるグリッドを物体の存在するグリッドとして特定する物体特定部(33)と、を有している。
【0008】
このように、投票調整部を備え、グリッド作成部がグリッドマップを作成する際に、車速に応じて物体の検知座標での投票数の設定を調整するようにしている。このため、物体の検知座標が低速走行時と比較して高速走行時に疎になったとしても、車速に応じた投票数に設定することで、物体の座標位置での投票数の合計値、つまり物体の存在確率が高くなるようにできる。このため、車速に対応して、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかる車両制御システムのブロック図である。
【
図2】低速走行時に、図の中心位置が物体の検知座標であった場合の各グリッドに設定される投票数の一例を示した図である。
【
図3】高速走行時に、図の中心位置が物体の検知座標であった場合の各グリッドに設定される投票数の一例を示した図である。
【
図5A】低速走行時のソナーでの物体検知の様子を示した図である。
【
図5B】高速走行時のソナーでの物体検知の様子を示した図である。
【
図6A】低速走行時に
図2に示した投票数に基づいて作成したグリッドマップを示す図である。
【
図6B】高速走行時に
図2に示した投票数に基づいて作成したグリッドマップを示す図である。
【
図6C】高速走行時に
図3に示した投票数に基づいて作成したグリッドマップを示す図である。
【
図7】第2実施形態で説明する高速走行時に、中心が物体の検知座標であった場合の各グリッドに設定される投票数の一例を示した図である。
【
図8】第2実施形態で説明する高速走行時に、中心が物体の検知座標であった場合の各グリッドに設定される投票数の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる物体検知装置が備えられた車両制御システムについて説明する。ここでは、車両制御として、自動駐車を行う駐車支援制御を実行するものを例に挙げて説明するが、物体検知装置での物体検知結果に基づいて車両制御を行うものであれば、他の制御を行うものであっても構わない。
【0013】
図1に示すように、車両制御システム1は、ソナー10、車速センサ20、物体検知装置を構成する電子制御装置(以下、ECUという)30、各種アクチュエータ40および表示器50を備えた構成とされている。
【0014】
ソナー10は、測距センサに相当するものである。ソナー10は、所定のサンプリング周期毎に、探査波として超音波を出力すると共にその反射波を取得することで得られた物標との相対速度や相対距離および物標が存在する方位角などの位置の測定結果をセンシング情報としてECU30へ逐次出力する。ソナー10は、物体を検知した場合には、その検知した位置の座標である検知座標をセンシング情報に含めて出力している。物体の検知座標については、移動三角測量法を用いて特定しており、自車の移動に伴って物体までの距離が変化することから、サンプリング周期毎の測定結果の変化に基づいて特定している。
【0015】
ここではソナー10を1つのみ図示しているが、実際には、車両に対して複数箇所に備えられる。ソナー10としては、例えば前後のバンパーに車両左右方向に複数個並べて配置されたフロントソナーや、車両の側方位置に配置されたサイドソナーが挙げられる。ソナー10のサンプリング周期は、ソナー10の配置場所に応じて設定されており、例えばフロントソナーでは第1周期、サイドソナーでは第1周期以下の第2周期とされている。
【0016】
なお、ここでは測距センサとしてソナー10を例に挙げるが、測距センサとしては、ミリ波レーダやLIDAR(Light Detection and Ranging)なども挙げられる。ミリ波レーダは、探査波としてミリ波を用いた測定、LIDARは、探査波としてレーザ光を用いた測定を行うものであり、共に、例えば車両の前方などの所定範囲内に探査波を出力し、その出力範囲内において測定を行う。
【0017】
車速センサ20は、車速に応じた検出信号をECU30に入力するものであり、車速検出部に相当するものである。車速検出部は、車速を示す信号を出力できるものであれば良く、ここでは車速センサ20を例に挙げたが、他のものであっても良い。例えば、車速検出部の信号として、車輪速度センサの検出信号を用いても良いし、他のECUで車速情報を扱っている場合には、その車速情報がECU30に入力されるようにしても良い。
【0018】
ECU30は、物体の検知を行うと共に自動駐車を行うための駐車支援制御を実現するための各種制御を行うものであり、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。具体的には、ECU30は、ソナー10のセンシング情報に基づいてグリッドマップを作成することで自車の周囲に存在する物体を検知し、その物体の検知座標を選定する。さらに、本実施形態の場合には、ECU30は、物体の検知結果に基づいて駐車支援制御を行い、駐車支援制御に基づいて各種アクチュエータ40を制御して自動駐車を行わせる。具体的には、ECU30は、各種制御を実行する機能部として、グリッド作成部31、投票調整部32、出力選定部33および制御部34を備えた構成とされている。
【0019】
グリッド作成部31は、ソナー10から入力されるセンシング情報に基づき、自車の周辺を複数のグリッドに分割したグリッドマップを用いて自車の周辺の物体の位置を示したグリッドマップを作成する。例えば、グリッド作成部31は、自車を中心として自車よりも大きな数m×数mの範囲のグリッドマップを作成している。グリッドマップは、平面視で自車両の周囲を格子状に区分けして複数のグリッドに分割したマップである。ここでは、グリッド作成部31は、例えば数~十数cmの正方形を1グリッド、つまり1単位領域として、自車の前後方向および自車の左右方向において格子状に区分けしたグリッドマップを作成している。なお、ソナー10の解像度は高く、グリッドマップをより細かいグリッドで構成することも可能であるが、メモリ容量や処理負荷の低減のために、データを間引いて粗くしてもよい。
【0020】
グリッド作成部31によるグリッドマップの作成方法については周知の手法を用いれば良いが、例えばソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標およびその周囲と対応するグリッドに対して投票数を設定し、その投票数を算出している。投票数は物体の存在確率を示す指標となる値であり、ここでは投票数が大きい値であるほど物体の存在確率が高いことを示している。グリッド作成部31は、ソナー10でのセンシング情報が入力される毎にグリッドマップを作成するようにしても良いが、メモリ容量や処理負担が大きくなってしまう。このため、ここではグリッド作成部31は、ソナー認識が為された際、つまりセンシング情報に物体が認識されたことを示す情報が含まれていた際にグリッドマップを作成するようにしている。
【0021】
一例を挙げると、
図2に示すように、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標、すなわちソナー10が物体の存在を検知した位置を示す座標と対応するグリッドを主グリッドとしている。本図では、図の中心が主グリッドとなる場合を示している。この主グリッドについては最も投票数を高い値に設定しており、ここでは投票数をX1としている。また、主グリッドの周囲に位置するグリッドを周囲グリッドとしている。本実施形態の場合は主グリッドに隣り合う8つのグリッドを周囲グリッドとしている。周囲グリッドについては主グリッドよりも投票数が低い値に設定しており、ここでは投票数をY1としている。そして、ソナー10からセンシング情報が届くごとにそのセンシング情報が示す物体の検知座標およびその周囲と対応するグリッドに対する投票数を加算していくことでグリッドマップを更新していく。このようにして、グリッド作成部31は、グリッドマップを作成している。
【0022】
さらに、本実施形態では、グリッド作成部31は、物体の検知座標での投票数の設定について、車速に応じて調整するようにしている。これの詳細については、次の投票調整部32で説明する。
【0023】
投票調整部32は、車速に応じた投票数の調整を行う部分である。上記したグリッド作成部31は、この投票調整部32で調整された投票数の設定に基づいて、グリッドマップを作成する際の各グリッドでの投票数を算出している。投票数の調整の手法については複数あるが、ここでは車速に応じて投票数の設定を変更することで投票数の調整を行う。例えば、車速が高くなるほど投票数が高くなるように変更し、
図2に示すような設定の投票数に対して各グリッドの投票数を高くする。一例を挙げると、高速走行時には、各グリッドの投票数を所定値、ここではZずつ増加させている。そして、
図3に示すように、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標と対応する主グリッドの投票数をX2=X1+Z、周囲グリッドの投票数をY2=Y1+Zとしている。
【0024】
車速に応じた投票数の調整については、所定の速度閾値を設定しておき、車速がその速度閾値未満であるか速度閾値以上であるかに応じて行っている。すなわち、車速が速度閾値未満であると、
図2に示したような低速走行時の投票数設定(以下、低速投票数設定という)としている。そして、車速が速度閾値以上になると、
図3に示したような高速走行時の投票数設定(以下、高速投票数設定という)としている。ここでいう速度閾値については任意に設定可能であるが、例えば5km/hに設定している。
【0025】
出力選定部33は、物体特定部に相当し、グリッド作成部31で作成されたグリッドマップから物体の存在するグリッドを特定し、そのグリッドに存在すると検知された物体の検知座標を制御部34に出力する。例えば、出力選定部33は、投票数の閾値を記憶しており、グリッドマップ中の各グリッドの投票数が閾値未満であれば物体が存在しないグリッドと判定し、閾値以上であれば物体が存在するグリッドと判定する。ここでは、閾値をThに設定しており、投票数の合計値がTh以上になったグリッドを物体が存在しているグリッドと特定している。閾値Thについては任意に設定可能であるが、例えばX1、Y1<Th≦X2、X1+Y1を満たすようにしている。そして、ここで物体が存在すると特定されたグリッドと対応するソナー10での物体の検知座標を実際の物体の検知座標として制御部34に出力している。
【0026】
このとき、物体の存在するグリッドの座標を制御部34に出力することもできる。しかしながら、ここではグリッドに存在すると検知された物体の検知座標についてはソナー10のセンシング情報が示す検知座標をそのまま出力している。このようにすれば、物体の存在するグリッドの座標を作成する必要がなくなり、ECU30のメモリ容量および処理負荷の低減を図ることができる。また、ソナー10の解像度が高く、グリッドマップのデータの方が粗いため、ソナー10のセンシング情報が示す検知座標をそのまま出力した方が、より詳細なデータとなる。
【0027】
制御部34は、自動駐車を行うための駐車支援制御を行う。駐車支援制御では、現在位置から駐車予定位置までの駐車経路生成や、生成した駐車経路に沿って自車を移動させる経路追従制御、駐車支援制御に関する表示制御を実行している。駐車経路生成は、出力選定部33から伝えられる物体の検知座標に基づいて行われる。例えば、制御部34は、物体の検知座標を避けるように駐車経路を生成する。経路追従制御は、駐車経路生成によって生成された駐車経路に沿って自車を移動させるために、加減速制御や操舵制御などの車両運動制御を行う制御である。また、制御部34は、駐車支援制御中に新たに駐車経路中に物体が検知された場合には、駐車経路を再生成したり、その物体が移動するまで経路追従制御での自車の移動を停止させることで、物体との接触が避けられるようにしている。
【0028】
表示制御は、駐車支援制御に係わる表示を行うことでドライバに駐車支援制御中であることを伝えたり、駐車経路や自車の様子、例えば駐車経路中のどの位置を移動中であるかなどの表示を制御するものである。制御部34は、表示制御として表示器50を制御している。
【0029】
なお、本実施形態では、ECU30を1つで構成し、そのECU30内に各機能部を備えた構成としているが、複数のECUを組み合わせた構成としても良く、一部のみ、例えば制御部34だけを1つもしくは複数のECUで構成したものとしても良い。制御部34を複数のECUで構成する場合の各種ECUとしては、例えば、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECUおよびブレーキECU等が挙げられる。
【0030】
具体的には、制御部34は、図示しないが、自車に搭載されたアクセルポジションセンサ、ブレーキ踏力センサ、舵角センサ、シフトポジションセンサ等の各センサから出力される検出信号を取得している。そして、制御部34は、取得した検出信号より各部の状態を検出し、駐車経路に追従して自車を移動させるべく、各種アクチュエータ40に対して制御信号を出力する。
【0031】
各種アクチュエータ40は、自車の走行や停止に係わる各種走行制御デバイスであり、電子制御スロットル41、ブレーキアクチュエータ42、EPS(Electric Power Steering)モータ43、トランスミッション44等がある。これら各種アクチュエータ40が制御部34からの制御信号に基づいて制御され、自車Vの走行方向や舵角、制駆動トルクが制御される。それにより、駐車経路に従って自車を移動させて駐車予定位置に駐車させるという経路追従制御を含む駐車支援制御が実現される。
【0032】
表示器50は、ナビゲーションシステムにおけるディスプレイ(以下、ナビディスプレイという)51やメータに備えられるディスプレイ(以下、メータディスプレイという)52などで構成される。ここでは、駐車支援制御中に、ナビディスプレイ51やメータディスプレイ52に駐車経路や駐車経路中のどの位置に自車が移動中であるかの表示を行うようにしている。
【0033】
以上のようにして、本実施形態にかかる車両制御システム1が構成されている。次に、本実施形態にかる車両制御システム1の作動について説明する。なお、車両制御システム1のECU30で行われる駐車支援制御としては、駐車経路生成、経路追従制御、表示制御を行っているが、これらについては上記の通りであるため、説明を省略する。ここでは、駐車経路生成に用いるグリッドマップ作成や物体の検知座標の出力を含む物体検知について、
図4を参照して説明する。
図4は、ECU30が実行する物体検知処理のフローチャートである。この物体検知処理は、イグニッションスイッチなどの自車の起動スイッチがオンされている際に、所定の制御周期毎、例えばソナー10のサンプリング周期よりも短い周期毎に実行される。ECU30のうちのグリッド作成部31、投票調整部32および出力選定部33が処理部として機能して、この物体検知処理を行っている。
【0034】
まず、ステップS100では、ソナー認識が行われたか否か、つまりソナー10から出力されるセンシング情報に物体が認識されたことを示す情報が含まれているか否かが判定される。そして、ソナー10のセンシング情報に物体が認識されたことを示す情報が含まれているとステップS110に進み、含まれていなければ本処理を繰り返す。
【0035】
ステップS110では、車速が所定の速度閾値、例えば5km/h未満であるか否かを判定する。具体的には、車速センサ20が出力する車速に応じた検出信号から車速を求め、その車速を所定の速度閾値と大小比較している。そして、ステップS110で肯定判定されればステップS120に進み、低速投票数設定を行ってステップS140に進む。また、ステップS110で否定判定されればステップS130に進み、高速投票数設定を行ってステップS140に進む。
【0036】
そして、ステップS140においてグリッドの演算処理を行うことでグリッドマップを作成する。すなわち、物体が存在していると判定された主グリッドとその周囲に位置する周囲グリッドについて、ステップS130での低速投票数設定もしくはS140での高速投票数設定に応じた投票数を用いてグリッドマップを作成する。このとき、前の制御周期の際に作成したグリッドマップがあれば、そのグリッドマップ上において、今回の制御周期の際に物体が存在していると判定された主グリッドおよびその周囲に位置する周囲グリッドについて投票数の加算を行えば良い。または、今回の制御周期の際に物体が存在していると判定された主グリッドおよびその周囲に位置する周囲グリッドについて投票数を設定したグリッドマップを作成したのち、それを前回の制御周期のグリッドマップと統合する。このようにして、グリッドマップを作成すると、ステップS150に進む。
【0037】
ステップS150では、出力選定処理を行う。すなわち、ステップS140で作成したグリッドマップから物体の存在するグリッドを特定し、そのグリッドに存在すると検知された物体の検知座標を制御部34に出力する。
【0038】
このようにして、駐車経路生成に用いるグリッドマップ作成や物体の検知座標の出力を含む物体検知が完了し、制御部34に物体の検知座標が伝えられる。なお、ここで説明した各処理のうち、ステップS100、S140の処理はグリッド作成部31、ステップS110~S130の処理は投票調整部32、ステップS150の処理は出力選定部33によって実行される。
【0039】
そして、制御部34に物体の検知座標が伝えられると、制御部34において、駐車支援制御として、駐車経路生成、経路追従制御、表示制御が実行される。これにより、物体を避けるようにして駐車経路が作成されたのち、各種アクチュエータ40が制御されて駐車経路に追従した自動駐車が行われると共に、表示器50にて駐車経路や駐車経路中のどの位置に自車が移動中であるかの表示が行われる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の車両制御システム1では、投票調整部32を備え、グリッド作成部31がグリッドマップを作成する際に、車速に応じて物体の検知座標での投票数の設定を調整するようにしている。このため、物体の検知座標が低速走行時と比較して高速走行時に疎になったとしても、車速に応じた投票数に設定することで、物体の座標位置での投票数の合計値、つまり物体の存在確率が高くなるようにできる。このため、車速に対応して、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことができる。
【0041】
例えば、自車が物体の側方を通過する場合を想定してみる。
図5Aおよび
図5Bに示すように、ソナー10として自車Vの側方に備えられたサイドソナーにて物体100が検知されることになる。しかしながら、
図5Aに点S1~S5で示したように、低速走行時にはソナー10でのサンプリング回数が多くなるが、
図5Bに点S1~S3で示したように、高速走行時にはソナー10でのサンプリング回数が低速走行時よりも少なくなる。つまり、
図5Bにおいて破線で示した位置ではソナー10でのサンプリングが行われない。
【0042】
低速走行時に作成されるグリッドマップは、物体の検知座標と対応する主グリッドでは投票数がX1、その周囲に位置する周囲グリッドでは投票数がY1となるため、
図6Aのようなグリッドマップが作成されることになる。グリッドマップ中にハッチングで示した部分は投票数が0ではないグリッドである。ハッチングの種類は、投票数の大きさに応じたものになっており、
図6Aの右側に示した物体の存在確率に対応している。
【0043】
なお、
図6Aは、グリッドマップのイメージを図示したものであり、必ずしも車両や物体のサイズおよび車速を正確に反映させたものではない。ここでは、低車速走行時の一例として、自車が1グリッド移動する時間とソナー10のサンプリング周期が一致している場合のグリッドマップを示してある。
【0044】
この図に示されるように、物体の存在確率が高い投票数が閾値Th以上のグリッドが隣り合った状態になっている。つまり、途切れることなく連続するグリッドが物体の存在確率の高いグリッドとなっている。このため、実際に物体が存在しているはずのグリッドに対して、存在確率が高いグリッドとなるグリッドの占有率が高くなる。したがって、物体が存在していた場合に、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことが可能となる。
【0045】
一方、高速走行時に、仮に、低速投票設定と同様の投票数の設定、つまり物体の検知座標と対応する主グリッドでは投票数がX1、その周囲に位置する周囲グリッドでは投票数がY1であったとすると、
図6Bのようなグリッドマップが作成される。
図6Bにおいてもグリッドマップ中にハッチングで示した部分の意味は
図6Aと同様である。
【0046】
なお、
図6Bも、グリッドマップのイメージを図示したものであり、必ずしも車両や物体のサイズおよび車速を正確に反映させたものではない。ここでは、高速走行時として、自車が1グリッド移動する時間の方がソナー10のサンプリング周期よりも短くなる場合のグリッドマップを示してある。
【0047】
この図に示されるように、物体の存在確率が比較的高い投票数が閾値Th以上となっているグリッドが隣り合って配置された状態になっていない。このため、実際に物体が存在しているはずのグリッドに対して、存在確率が高いグリッドとなるグリッドの占有率が低くなるし、存在確率が比較的高くなっていたとしても投票数の合計値が閾値Th未満になって、物体として認識されない。したがって、物体が存在していた場合でも、的確に物体を認識できない可能性があり、精度良い物体検知が行えない。
【0048】
これに対して、本実施形態では、高速投票数設定を設け、低速投票数設定の場合よりも投票数が多くなるようにしており、物体の検知座標と対応する主グリッドでは投票数がX2、その周囲に位置する周囲グリッドでは投票数がY2としている。このため、
図6Cのようなグリッドマップが作成されることになる。
図6Cにおいてもグリッドマップ中にハッチングで示した部分の意味は
図6Aと同様である。
【0049】
なお、
図6Cも、グリッドマップのイメージを図示したものであり、必ずしも車両や物体のサイズおよび車速を正確に反映させたものではない。ここでは、高速走行時として、自車が1グリッド移動する時間の方がソナー10のサンプリング周期よりも短くなる場合のグリッドマップを示してある。
【0050】
この図に示されるように、物体の存在確率が高いグリッドが隣り合っており、サンプリングされたときの主グリッドの間に位置しているグリッドでの存在確率は
図6Bの場合よりも高くなっている。このため、
図6Bの場合と比較して、実際に物体が存在しているはずのグリッドに対して、存在確率が高いグリッドとなるグリッドの占有率を高められる。したがって、物体が存在していた場合に、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことができる。
【0051】
なお、
図6Cのように、周囲グリッドのすべてについて投票数の増加数を同じにすると、物体の外形に沿ったグリッドだけでなく、その前後、
図6Cで言えば上下位置にも存在確率が高くなるグリッドが発生してしまう。これを考慮して、そのグリッドに対応する位置にも物体があると認識され得る。このため、投票数の増加数については、周辺グリッドのうち主グリッドと辺が接しているグリッドでは第1所定数、例えばZ1とし、主グリッドの四隅に接しているだけのグリッドでは第1所定数よりも小さな第2所定数、例えばZ2としても良い。また、投票数の増加については、主グリッドに対して自車の移動方向に沿う方向に位置する周囲グリッドを第1所定数、例えばZ1とし、その他の周囲グリッドを第1所定数よりも小さな第2所定数、例えばZ2としても良い。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して高速投票数設定する周囲グリッドの範囲を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
第1実施形態では、高速投票数設定の際に投票数を加算する周囲グリッドの範囲については低速投票数設定と同じ範囲とし、その範囲内における投票数を低速投票数設定よりも増加させるようにした。これに対して、本実施形態では、高速投票数設定の際に投票数を加算する周囲グリッドの範囲を低速投票数設定よりも広い範囲とする。
【0054】
一例を挙げると、低速投票数設定の際には、上記した
図2に示すように、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標と対応する主グリッドの投票数をX1、その周囲に位置する周囲グリッドの投票数をY1としている。そして、高速投票数設定の際には、
図7に示すように投票数を加算する周囲グリッドの範囲を
図2に示した範囲よりも1回り広くし、物体の検知座標と対応する主グリッドの周囲に位置する8グリッドおよびそれを囲む16グリッドとしている。
【0055】
このように、車速に応じて投票数を加算する周囲グリッドの範囲を変更している。これにより、物体の検知座標が低速走行時と比較して高速走行時に疎になったとしても、物体の検知座標となる主グリッドでの投票数の合計値、つまり物体の存在確率が高くなるようにできる。このため、車速に対応して、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことができる。
【0056】
例えば、自車が物体の側方を通過する場合を想定してみる。その場合、第1実施形態で説明した
図5Aおよび
図5Bに示すように、ソナー10として自車の側方に備えられたサイドソナーにて物体が検知されることになる。しかしながら、本実施形態のような高速投票数設定とすれば、高速走行時には
図8のようなグリッドマップが作成されることになる。
図8においてもグリッドマップ中にハッチングで示した部分の意味は
図6Aと同様である。
【0057】
この図に示されるように、一方向に並んだグリッドが物体の存在確率が高いグリッドとなっている。つまり、物体に沿うグリッドが物体の存在確率の高いグリッドとなっている。このため、実際に物体が存在しているはずのグリッドに対して、存在確率が高いグリッドとなるグリッドの占有率が高くなる。したがって、物体が存在していた場合に、的確に物体を認識することが可能となり、精度良い物体検知を行うことが可能となる。
【0058】
また、第1実施形態のように、高速投票数設定の際の各グリッドでの投票数を低速投票数設定の投票数よりも多くする場合、ソナー10が1回でも物体を検知したら、その検知座標での物体の存在確率が所定の閾値を超えてしまう。このため、ソナー10での物体の検知がノイズであったとしてもそれを除去することができない。
【0059】
これに対して、本実施形態では、高速投票数設定の際に、低速投票数設定の際よりも投票数を加算する周囲グリッドの範囲を増加させ、低速投票数設定と同じ範囲内では投票数を同じにしている。このようにすれば、ソナー10での物体検知がノイズであった場合に、物体の検知座標での物体の存在確率が所定の閾値を超えないようにできる。このため、ソナー10での物体の検知がノイズであった場合に、それを除去することができる。
【0060】
ただし、第1実施形態のような高速投票数設定とすれば、ソナー10で1回だけでも物体が検知されれば、グリッドマップからもその物体を的確に検知できるため、物体の検知漏れが発生することを抑制できる。その反面、本実施形態のような高速投票数設定とすると、ソナー10で1回だけ物体が検知されただけでは、グリッドマップからその物体を的確に検知できない可能性があるため、ソナー10で複数回物体が検知されることが必要になる。
【0061】
なお、
図6Cのように、周囲グリッドのすべてについて投票数の増加数を同じにすると、主グッドについては存在確率が高くなるものの、主グリッドの間に位置するグリッドについては存在確率があまり高くならない。このため、主グリッドに対して、自車の移動方向に沿う方向に位置する周囲グリッドについては第1実施形態と組み合わせて、投票数を増加させるようにしても良い。
【0062】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0063】
(1)例えば、上記第1、第2実施形態で説明した投票数や物体と検知する際に用いる所定の閾値の数値については一例を示したに過ぎず、任意に設定可能である。例えば、投票数を正の値に設定する場合を例に挙げたが、負の値に設定することもできる。また、第1、第2実施形態では、低速投票数設定と高速投票数設定という2段階の車速域で投票数を変更するようにした。つまり、速度閾値を設定し、その速度閾値未満であるか速度閾値以上であるかに応じて低速投票数設定と高速投票数設定という2種類の設定を用いて投票数の調整を行った。しかしながら、これも一例を示したに過ぎず、3種類以上の設定としても良い。
【0064】
その場合、第1実施形態のように車速に対応して設定値を変更する場合には、車速が高くなるほど設定値が徐々に高くなるようにすれば良い。設定値を高くする仕方については任意であり、例えば主グリッドのみ投票数が徐々に高くなるようにし、周囲グリッドについては投票数が不変もしくは所定車速までは高くなるようにしてそれ以上の車速で不変となるようにしても良い。
【0065】
また、第2実施形態のように車速に対応して投票数を加算するグリッドの範囲を広くする場合には、車速が高くなるほど範囲が徐々に広くなるようにすれば良い。範囲を広くする方法については任意であり、車速が高くなった時に、それよりも低い車速のときに設定されていた範囲を全域囲む範囲となるようにしても良いが、必ずしも全域囲む範囲となっていなくても良い。
【0066】
(2)上記第1、第2実施形態では、ソナー10のセンシング情報が示す物体の検知座標と対応する主グリッドに加えて、その周囲に位置する周囲グリッドのすべてについて投票数を加算するようにしているが、そのうちの一部だけにしても良い。また、周囲グリッドについて投票数を異ならせても良い。
【0067】
例えば、ソナー10の場合、幅方向の検知精度はあまり高くないが、物体までの距離の検知精度は高いため、物体を認識した場合、その物体よりも近い位置には何もない可能性が高い。このため、周囲グリッドのうち検知座標のグリッドよりもソナー10に近い側に相当するグリッドについては、投票数を加算しないもしくは他のグリッドよりも投票数の加算を小さくするようにしても良い。
【0068】
(3)上記第1、第2実施形態では、自車の起動スイッチがオンされている際に
図4に示した物体検知処理が実行されるようにしたが、起動スイッチがオンされている際に常に実行されなくても良い。例えば、駐車支援制御の実行を指示する図示しないスイッチがオンされた際に、物体検知処理が実行されるようにしても良い。つまり、物体検知処理の結果が用いられる制御の実行が指示された際に、物体検知処理も実行されるようにすれば良い。
【0069】
(4)なお、本開示に記載の処理部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両制御システム
10 ソナー
20 車速センサ
30 ECU
31 グリッド作成部
32 投票調整部
33 出力選定部
34 制御部
40 アクチュエータ
50 表示器