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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20231011BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20231011BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F27/29 125
H01F27/29 S
H01F27/28 128
H01F41/10 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020035712
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021141128
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】浅井 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】常盤 葵
(72)【発明者】
【氏名】占部 大輔
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508298(JP,A)
【文献】特開2004-179551(JP,A)
【文献】特表2010-534947(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168133(JP,U)
【文献】特開2019-091736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 27/28
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍔部及び巻芯部を含むドラム型コアと、
前記鍔部に固定された端子金具と、
前記巻芯部に巻回され、端部が前記端子金具に接続されたワイヤと、を備え、
前記鍔部は、前記巻芯部とは反対側に位置する外側面を有し、
前記端子金具は、前記ワイヤを位置決めする位置決め部と、前記ワイヤの端部が溶接されてなる溶接玉と、前記位置決め部と前記溶接玉の間に位置する溶接部とを有し、
前記位置決め部、前記溶接部及び前記溶接玉は、いずれも前記鍔部の外側面上に位置し、
前記溶接部は、前記ワイヤを前記巻芯部の軸方向に挟み込むタブ形状を有しており、

前記溶接玉は、前記鍔部と重ならない突出部を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記位置決め部の前後において延在方向が変化することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記ワイヤを挟み込むことによって位置決めすることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
鍔部及び巻芯部を含むドラム型コアを用意し、前記鍔部の前記巻芯部とは反対側に位置する外側面上に位置決め部及び溶接部が配置されるよう、前記位置決め部及び溶接部を有する端子金具を前記鍔部に固定する第1の工程と、
前記巻芯部にワイヤを巻回し、前記位置決め部によって前記ワイヤの端部を前記溶接部に位置決めした後、前記溶接部を折りたたむことによって、前記ワイヤの端部を前記巻芯部の軸方向に挟み込む第2の工程と、
前記溶接部を加熱することによって前記ワイヤの端部を前記溶接部に溶接し、これにより溶接玉を形成する第3の工程と、を備え、
前記溶接部は前記鍔部と重ならない突出部を有し、これにより前記溶接玉の一部は前記鍔部から突出することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程は、ビームの中心が前記突出部に位置するようレーザービームを照射することによって行うことを特徴とする請求項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
鍔部及び巻芯部を含むドラム型コアを用意し、前記鍔部の前記巻芯部とは反対側に位置する外側面上に位置決め部及び溶接部が配置されるよう、前記位置決め部及び溶接部を有する端子金具を前記鍔部に固定する第1の工程と、
前記巻芯部にワイヤを巻回し、前記位置決め部によって前記ワイヤの端部を前記溶接部に位置決めする第2の工程と、
前記溶接部を加熱することによって前記ワイヤの端部を前記溶接部に溶接し、これにより溶接玉を形成する第3の工程と、を備え、
前記第3の工程は、ビームの中心が前記突出部に位置するようレーザービームを照射することによって行い、
前記溶接部は前記鍔部と重ならない突出部を有し、これにより前記溶接玉の一部は前記鍔部から突出することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、ドラム型コアを用いたコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム型コアを用いたコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、ドラム型コアの巻芯部に2本のワイヤが巻回されており、2本のワイヤの一端は一方の鍔部に設けられた端子金具に継線され、2本のワイヤの他端は他方の鍔部に設けられた端子金具に継線された構成を有している。特許文献1においては、ワイヤの継線が溶接によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品においては、ワイヤが溶接されてなる溶接玉が実装面側に位置している。このため、実使用時において回路基板との干渉を防止するためには、溶接玉を収容する切り欠きをドラム型コアに設ける必要がある。これにより、ドラム型コアのボリュームが大幅に減少することから、磁気特性が低下するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、ワイヤと端子金具が溶接されてなるコイル部品において、ドラム型コアのボリュームを確保することによって、磁気特性を高めることを目的とする。また、本発明は、このようなコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、鍔部及び巻芯部を含むドラム型コアと、鍔部に固定された端子金具と、巻芯部に巻回され、端部が端子金具に接続されたワイヤとを備え、鍔部は、巻芯部とは反対側に位置する外側面を有し、端子金具は、ワイヤを位置決めする位置決め部と、ワイヤの端部が溶接されてなる溶接玉を有し、位置決め部及び溶接玉はいずれも鍔部の外側面上に位置し、溶接玉は鍔部と重ならない突出部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ワイヤの端部が溶接されてなる溶接玉が鍔部の外側面上に位置していることから、実使用時において回路基板との干渉を防止するための切り欠きをドラム型コアに設ける必要がない。これにより、ドラム型コアのボリュームが十分に確保されることから、高い磁気特性を得ることが可能となる。しかも、溶接玉の一部が鍔部と重ならないことから、溶接工程におけるドラム型コアへのダメージも低減される。
【0008】
本発明において、ワイヤは、位置決め部の前後において延在方向が変化しても構わない。また、位置決め部は、ワイヤを挟み込むことによって位置決めするものであっても構わない。これらによれば、ワイヤをより正確に位置決めすることができる。
【0009】
本発明によるコイル部品の製造方法は、鍔部及び巻芯部を含むドラム型コアを用意し、鍔部の巻芯部とは反対側に位置する外側面上に位置決め部及び溶接部が配置されるよう、位置決め部及び溶接部を有する端子金具を鍔部に固定する第1の工程と、巻芯部にワイヤを巻回し、位置決め部によってワイヤの端部を溶接部に位置決めする第2の工程と、溶接部を加熱することによってワイヤの端部を溶接部に溶接し、これにより溶接玉を形成する第3の工程とを備え、溶接部は鍔部と重ならない突出部を有し、これにより溶接玉の一部は鍔部から突出することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、位置決め部及び溶接部が鍔部の外側面上に設けられていることから、ドラム型コアのボリュームが十分に確保することができる。しかも、溶接部の一部が鍔部と重ならないことから、加熱によるドラム型コアへのダメージも低減される。
【0011】
本発明において、溶接部は、ワイヤの端部を挟み込むものであっても構わない。これによれば、ワイヤをより正確に仮固定することができる。
【0012】
本発明において、第3の工程は、ビームの中心が突出部に位置するようレーザービームを照射することによって行っても構わない。これによれば、レーザービームによるドラム型コアへのダメージを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、ワイヤと端子金具が溶接されてなるコイル部品において、ドラム型コアのボリュームを確保することができる。これにより、高い磁気特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、コイル部品1をx方向から見た略正面図である。
図3図3は、コイル部品1の製造プロセスを説明するための工程図である。
図4図4は、コイル部品1の製造プロセスを説明するための工程図である。
図5図5は、コイル部品1の製造プロセスを説明するための工程図である。
図6図6は、変形例によるコイル部品1Aの外観を示す略斜視図である。
図7図7は、コイル部品1Aの製造プロセスを説明するための工程図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の外観を示す略斜視図である。
図9図9は、コイル部品2をx方向から見た略正面図である。
図10図10は、コイル部品2の製造プロセスを説明するための工程図である。
図11図11は、コイル部品2の製造プロセスを説明するための工程図である。
図12図12は、変形例によるコイル部品2Aの外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
【0017】
本実施形態によるコイル部品1はコモンモードチョークコイルであり、図1に示すように、ドラム型コア10と、端子金具E1~E4と、ワイヤW1,W2とを備えている。ドラム型コア10の材料としては、フェライトなどの透磁率の高い磁性材料が用いられる。ドラム型コア10及に用いる磁性材料としては、透磁率μが10~4000H/mである材料を用いることが好ましい。
【0018】
ドラム型コア10は、x方向を軸方向とする巻芯部13と、巻芯部13のx方向における一端に設けられた鍔部11と、巻芯部13のx方向における他端に設けられた鍔部12とを含む。そして、端子金具E1,E2は鍔部11に設けられ、且つ、この順にy方向に配列される。また、端子金具E3,E4は鍔部12に設けられ、且つ、この順にy方向に配列される。ワイヤW1,W2は巻芯部13に巻回される。ワイヤW1,W2の一端はそれぞれ端子金具E1,E2に接続され、ワイヤW1,W2の他端はそれぞれ端子金具E3,E4に接続される。ワイヤW1とワイヤW2のターン数及び巻回方向は互いに同じである。ワイヤW1,W2は、銅などの芯材をポリアミドイミドなどからなる被覆材によって被覆された構造を有している。被覆材の耐軟化温度は、250℃以上であることが好ましい。
【0019】
ドラム型コア10の鍔部11,12は、yz面を構成する外側面11S,12Sと、xy面を構成する底面11B,12Bをそれぞれ有している。そして、端子金具E1,E2は、鍔部11の外側面11S及び底面11Bに亘って設けられたL字型形状を有し、端子金具E3,E4は、鍔部12の外側面12S及び底面12Bに亘って設けられたL字型形状を有している。さらに、端子金具E1~E4は、外側面11S又は12Sを覆う本体部30と、本体部30に設けられた位置決め部31、溶接部32及び溶接玉33を有している。外側面11S,12Sは、端子金具E1~E4で覆われない部分がx方向に突出しており、これにより鍔部11,12のボリュームが増大されている。
【0020】
図1に示すように、鍔部11の底面11Bにはx方向に延在する溝11Gが設けられ、鍔部12の底面12Bにはx方向に延在する溝12Gが設けられている。そして、巻芯部13と端子金具E1,E2の間に位置するワイヤW1,W2の引き出し部は溝11Gに収容され、巻芯部13と端子金具E3,E4の間に位置するワイヤW1,W2の引き出し部は溝12Gに収容される。これにより、巻芯部13に巻回された部分のみならず、引き出し部においても、ワイヤW1,W2を互いに沿った状態とすることができるため、Sパラメータなどの特性のばらつきが抑制される。
【0021】
溝11G,12Gを通過したワイヤW1,W2は、位置決め部31によってz方向に位置決めされ、位置決め部31に対してy方向に隣接する溶接玉33に溶接される。位置決め部31は、ワイヤW1,W2を挟み込むようなタブ形状を有しており、位置決め部31の前後においてワイヤW1,W2の延在方向が変化する。図1に示す例では、ワイヤW1,W2の引き出し部は、溝11G,12Gから位置決め部31の間の区間では-z方向に傾きながら+y方向又は-y方向に延在し、位置決め部31から溶接玉33の間の区間では+y方向又は-y方向に直線的に延在する。このように、位置決め部31は、ワイヤW1,W2を挟み込むことによって位置決めするとともに、位置決め部31の前後においてワイヤW1,W2の延在方向が変化することから、ワイヤW1,W2を正確に位置決めすることができる。
【0022】
溶接玉33は、溶接部32とワイヤW1,W2の端部が溶接されてなる金属塊である。溶接部32は、ワイヤW1,W2を挟み込むようなタブ形状を有しており、溶接によって十分なサイズの溶接玉33が形成されるよう、位置決め部31よりも大きなサイズを有している。
【0023】
図2は、本実施形態によるコイル部品1をx方向から見た略正面図である。図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1をx方向から見ると、溶接玉33の一部は鍔部11,12と重ならない突出部33aを構成している。また、位置決め部31と溶接玉33の間においては、ワイヤW1,W2が露出している。ここで、溶接玉33に突出部33aが設けられるのは、以下に説明する製造プロセスに起因するものである。
【0024】
コイル部品1の製造プロセスにおいては、まず、ドラム型コア10を用意し、ドラム型コア10の鍔部11,12に端子金具E1~E4を固定する。端子金具E1~E4の固定は、接着剤を用いて行うことができる。次に、巻芯部13にワイヤW1,W2を巻回し、位置決め部31によってワイヤW1,W2の端部を溶接部32に位置決めする。この時、図3に示すように溶接部32は開いた状態であり、ワイヤW1,W2のz方向位置は、位置決め部31によって位置決めされる。
【0025】
次に、図4に示すように、溶接部32を折りたたむことによって、ワイヤW1,W2の端部を溶接部32によって挟み込む。これにより、ワイヤW1,W2の端部が溶接部32に仮固定される。この状態で溶接部32にレーザービームを照射することによって加熱し、ワイヤW1,W2の端部と溶接部32が一体化した溶接玉33を形成する。これにより、ワイヤW1,W2の端部が溶接玉33に強固に固定される。レーザービームの照射においては、図5に示すように、ビームの中心Pが溶接部32の突出部32aに位置するように行う。つまり、x方向から見て、最も高温となるビームの中心Pが鍔部11,12と重ならないよう、レーザービームを照射する。これにより、レーザービームの照射による鍔部11,12へのダメージが抑えられ、製品の信頼性を高めることができる。
【0026】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、ワイヤW1,W2の端部が溶接によって端子金具E1~E4に固定されていることから、ハンダや熱圧着によって継線する場合に比べ、強固に接続することができる。しかも、ワイヤW1,W2の端部が溶接されてなる溶接玉33が鍔部11,12の外側面上に位置していることから、実使用時において回路基板との干渉を防止するための切り欠きをドラム型コア10に設ける必要がない。これにより、ドラム型コア10のボリュームが十分に確保されることから、高い磁気特性を得ることが可能となる。さらに、溶接工程においては、ビームの中心Pが鍔部11,12と重ならないよう、レーザービームを照射していることから、レーザービームの照射による鍔部11,12へのダメージを低減することが可能となる。
【0027】
図6は、変形例によるコイル部品1Aの外観を示す略斜視図である。
【0028】
変形例によるコイル部品1Aは、溶接部32がタブ状ではなく、平板状である点において上述したコイル部品1と相違している。その他の基本的な構成は上述したコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
変形例によるコイル部品1Aが例示するように、溶接部32が折りたたみ可能なタブ状である点は必須でなく、溶接部32を形成可能なボリュームがあれば、平板状であっても構わない。変形例によるコイル部品1Aの製造プロセスにおいては、図7に示すように、仮止め部34を有する端子金具E1~E4を用いることができる。仮止め部34は、位置決め部31とともに、ワイヤW1,W2の端部を平板状の溶接部32に位置決めするために用いられる。そして、ワイヤW1,W2の端部を溶接部32上に位置決めした状態で、レーザービームを照射すれば、溶接玉33を形成することができる。その後、仮止め部34を切断すれば、変形例によるコイル部品1Aが完成する。
【0030】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の外観を示す略斜視図である。
【0031】
図8に示すように、本実施形態によるコイル部品2は、板状コア20をさらに備えている点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。板状コア20の材料としては、フェライトなどの透磁率の高い磁性材料が用いられる。ここで、ドラム型コア10及び板状コア20に用いる磁性材料としては、互いに同じものであっても構わないし、互いに異なるものであっても構わない。さらに、本実施形態によるコイル部品2は、鍔部11,12の外側面11S,12Sが平坦とされている。また、溝11G,12Gは、鍔部11,12の底面11B,12Bとは反対側の面、つまり、板状コア20と向かい合う面に設けられている。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品1と同じであることから、同一の要素には同一の要素を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
鍔部11,12と向かい合う板状コア20の表面には、溝11G,12Gと重なる位置にx方向に延在する溝20Gが設けられている。本実施形態においては、溝11G,12Gのサイズが第1の実施形態と比べて縮小されており、これによって鍔部11,12のボリュームが増大されている。また、溝11G,12Gが狭いことから、溝11G,12Gの内部においてワイヤW1,W2が正しくx方向に延在し、且つ、互いに沿った状態で位置決めされることから、Sパラメータなどの特性のばらつきが抑制される。溝11G,12Gが狭いと、製造ばらつきによって溝11G,12GからワイヤW1,W2が突出する可能性があるが、この場合であっても、板状コア20に溝20Gが設けられていることから、ワイヤW1,W2と板状コア20が干渉することはない。
【0033】
図9は、本実施形態によるコイル部品2をx方向から見た略正面図である。図9に示すように、本実施形態においても、溶接玉33の一部は鍔部11,12と重ならない突出部33aを構成している。また、位置決め部31と溶接玉33の間においては、ワイヤW1,W2が露出している。
【0034】
コイル部品2の製造プロセスにおいては、まず、ドラム型コア10を用意し、ドラム型コア10の鍔部11,12に端子金具E1~E4を固定する。端子金具E1~E4の固定は、接着剤を用いて行うことができる。次に、巻芯部13にワイヤW1,W2を巻回し、位置決め部31によってワイヤW1,W2の端部を溶接部32に位置決めする。この時、図10に示すように溶接部32は開いた状態であり、ワイヤW1,W2のz方向位置は、位置決め部31によって位置決めされる。
【0035】
次に、図11に示すように、溶接部32を折りたたむことによって、ワイヤW1,W2の端部を溶接部32によって挟み込む。これにより、ワイヤW1,W2の端部が溶接部32に仮固定される。この状態で溶接部32にレーザービームを照射することによって加熱し、ワイヤW1,W2の端部と溶接部32が一体化した溶接玉33を形成する。これにより、ワイヤW1,W2の端部が溶接玉33に強固に固定される。レーザービームの照射においては、図5を用いて説明したように、ビームの中心Pが溶接部32の突出部32aに位置するように行う。つまり、x方向から見て、最も高温となるビームの中心Pが鍔部11,12と重ならないよう、レーザービームを照射する。これにより、レーザービームの照射による鍔部11,12へのダメージが抑えられ、製品の信頼性を高めることができる。
【0036】
図12は、変形例によるコイル部品2Aの外観を示す略斜視図である。
【0037】
変形例によるコイル部品2Aは、溶接部32がタブ状ではなく、平板状である点において上述したコイル部品2と相違している。その他の基本的な構成は上述したコイル部品2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
このように、溶接部32は平板状であっても構わない。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1,1A,2,2A コイル部品
10 ドラム型コア
11,12 鍔部
11B,12B 底面
11G,12G 溝
11S,12S 外側面
13 巻芯部
20 板状コア
20G 溝
30 本体部
31 位置決め部
32 溶接部
32a 突出部
33 溶接玉
33a 突出部
34 仮止め部
E1~E4 端子金具
P ビームの中心
W1,W2 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12