(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20231011BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2020036832
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138168(JP,A)
【文献】特開2015-39026(JP,A)
【文献】特開2018-107201(JP,A)
【文献】特開2018-107198(JP,A)
【文献】特開2019-192897(JP,A)
【文献】特開2020-184570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向において積層されている複数の絶縁体層を有している素体と、
前記素体内に配置されているコイルと、
前記素体に配置されている端子電極と、を備え、
前記素体は、直方体形状を呈し、前記第一方向において互いに対向している一対の側面と、前記第一方向と交差する第二方向において互いに対向している一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向において互いに対向している一対の主面と、を有し、
前記端子電極は、一方の前記主面に露出された第一露出面を含む第一電極部分と、一方の前記端面に露出された第二露出面を含む第二電極部分と、を有し、
前記第一露出面及び前記第二露出面は、前記素体における前記一方の主面と前記一方の端面との間の稜線部を介して互いに隣り合っており、
前記第一露出面は、前記一方の主面の外縁から離間しており、
前記第二露出面は、前記一方の端面の外縁から離間している、
積層コイル部品。
【請求項2】
前記コイルは、前記第一方向に沿うコイル軸を有している、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記コイルの端部と前記第二電極部分とを接続している接続導体を更に備え、
前記接続導体は、前記第二電極部分の前記第三方向の中央よりも他方の前記主面側に接続され、前記他方の主面側に向かって延在している、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第一電極部分は、前記第一露出面と対向している第一対向面と、前記第一露出面と前記第一対向面とを接続し、前記第二方向において互いに対向する一対の第一側面と、を有し、
前記一対の第一側面は、それぞれ湾曲している、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記第二電極部分は、前記第二露出面と対向している第二対向面と、前記第二露出面と前記第二対向面とを接続し、前記第三方向において互いに対向する一対の第二側面と、を有し、
前記一対の第二側面は、それぞれ湾曲している、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記第一電極部分及び前記第二電極部分は、前記素体内において互いに電気的に接続されていない、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項7】
前記第一電極部分の前記第三方向の端部は、凹凸形状を呈している、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項8】
前記第二電極部分の前記第二方向の端部は、凹凸形状を呈している、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の絶縁体層が積層されて構成された素体と、素体内に設けられている回路素子と、回路素子に電気的に接続された端子電極と、を備える電子部品が記載されている。この電子部品では、端子電極は、素体の2つの隣り合う面にわたって連続して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電子部品では、端子電極が外部応力によって剥がれるおそれがある。
【0005】
本開示の一側面は、端子電極の剥離を抑制できる積層コイル部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層コイル部品は、第一方向において積層されている複数の絶縁体層を有している素体と、素体内に配置されているコイルと、素体に配置されている端子電極と、を備え、素体は、直方体形状を呈し、第一方向において互いに対向している一対の側面と、第一方向と交差する第二方向において互いに対向している一対の端面と、第一方向及び第二方向と交差する第三方向において互いに対向している一対の主面と、を有し、端子電極は、一方の主面に露出された第一露出面を含む第一電極部分と、一方の端面に露出された第二露出面を含む第二電極部分と、を有し、第一露出面及び第二露出面は、素体における一方の主面と一方の端面との間の稜線部を介して互いに隣り合っており、第一露出面は、一方の主面の外縁から離間しており、第二露出面は、一方の端面の外縁から離間している。
【0007】
この積層コイル部品では、第一露出面は、一方の主面の外縁から離間していると共に、第二露出面は、一方の端面の外縁から離間している。つまり、第一露出面の全体が一方の主面によって囲まれた状態であると共に、第二露出面の全体が一方の端面によって囲まれた状態である。このため、端子電極が一方の主面及び一方の端面にわたって連続して形成されている場合に比べて、第一電極部分と素体とが接触している面積、及び第二電極部分と素体とが接触している面積は、それぞれ広くなる。したがって、端子電極と素体との接着力が増すので、端子電極が素体から剥離することが抑制される。
【0008】
コイルは、第一方向に沿うコイル軸を有していてもよい。この場合、第一方向に沿う磁束が発生する。端子電極は、主面及び端面に設けられている。したがって、端子電極が、第一方向と交差する側面に設けられている場合に比べて、端子電極と交差する磁束が少なくなる。よって、Q値を向上させることができる。
【0009】
上記積層コイル部品は、コイルの端部と第二電極部分とを接続している接続導体を更に備え、接続導体は、第二電極部分の第三方向の中央よりも他方の主面側に接続され、他方の主面側に向かって延在していてもよい。この場合、第二電極部分と接続導体との間に形成される浮遊容量(寄生容量)を抑制することができる。
【0010】
第一電極部分は、第一露出面と対向している第一対向面と、第一露出面と第一対向面とを接続し、第二方向において互いに対向する一対の第一側面と、を有し、一対の第一側面は、それぞれ湾曲していてもよい。この場合、素体にクラックが生じることが抑制される。
【0011】
第二電極部分は、第二露出面と対向している第二対向面と、第二露出面と第二対向面とを接続し、第三方向において互いに対向する一対の第二側面と、を有し、一対の第二側面は、それぞれ湾曲していてもよい。この場合、素体にクラックが生じることが抑制される。
【0012】
第一電極部分及び第二電極部分は、素体内において互いに電気的に接続されていなくてもよい。この場合、第一電極部分及び第二電極部分間の電気経路が素体内に存在しない。第一電極部分及び第二電極部分間の電気経路が、素体の内部と外部との二つとなると、電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、素体の外部に第一電極部分及び第二電極部分間の電気経路が形成されたとしても、電気特性への悪影響が抑制される。
【0013】
第一電極部分の第三方向の端部は、凹凸形状を呈していてもよい。この場合、第一電極部分と素体との間の接着力が増す。よって、端子電極の剥離が更に抑制される。
【0014】
第二電極部分の第二方向の端部は、凹凸形状を呈していてもよい。この場合、第二電極部分と素体との間の接着力が増す。よって、端子電極の剥離が更に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、端子電極の剥離を抑制できる積層コイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の積層コイル部品の側面図である。
図2(b)は、
図1の積層コイル部品の底面図である。
【
図6】
図6(a)は、変形例に係る積層コイル部品の側面図である。
図6(b)は、変形例に係る積層コイル部品の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置されている一対の端子電極3と、コイル10と、接続導体26,27と、を備えている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0019】
素体2は、互いに対向している一対の端面2aと、互いに対向している主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2eと、を有している。以下では、一対の側面2eが対向している方向を第一方向D1、一対の端面2aが対向している方向を第二方向D2、主面2c,2dが対向している方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに交差(ここでは直交)している。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の幅方向である。第一方向D1は、主面2c,2dの短辺方向でもある。第二方向D2は、素体2の長さ方向である。第二方向D2は、主面2c,2dの長辺方向でもある。第三方向D3は、素体2の高さ方向である。
【0020】
一対の端面2aは、主面2c,2dの間を連結するように第三方向D3に延在している。一対の端面2aは、一対の側面2eの間を連結するように第一方向D1にも延在している。主面2c,2dは、一対の端面2aの間を連結するように第二方向D2に延在している。主面2c,2dは、一対の側面2eの間を連結するように第一方向D1にも延在している。一対の側面2eは、主面2c,2dの間を連結するように第三方向D3に延在している。一対の側面2eは、端面2a,2bの間を連結するように第二方向D2にも延在している。積層コイル部品1は、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に、たとえば、はんだ実装される。積層コイル部品1では、主面2cが、電子機器に対向する実装面を構成する。
【0021】
図2(a)、
図2(b)及び、
図3に示されるように、素体2は、第一方向D1において複数の絶縁体層6が積層されて構成されている。素体2は、第一方向D1において積層されている複数の絶縁体層6を有している。素体2では、複数の絶縁体層6が積層されている積層方向が、第一方向D1と一致する。実際の素体2では、各絶縁体層6は、各絶縁体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
図2(a)及び
図2(b)では、積層方向の両端部以外に位置する絶縁体層6の図示が省略されている。
【0022】
各絶縁体層6は、ガラス成分を含む誘電体材料で形成されている。すなわち、素体2は、素体2を構成する元素の化合物として、ガラス成分を含む誘電体材料を含んでいる。ガラス成分は、たとえば、ホウケイ酸ガラスなどである。誘電体材料としては、たとえばBaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、又は(Ba,Ca)TiO3系などの誘電体セラミックである。各絶縁体層6は、ガラスセラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。
【0023】
図4に示されるように、素体2は、一対の凹部7を有している。一対の凹部7は、第二方向D2で互いに離間している。各凹部7は、素体2の外表面から内側に窪んだ空間である。各凹部7は、対応する端子電極3の形状に対応した形状を呈している。一対の凹部7は、互いに同形状を呈している。
【0024】
一方の凹部7は、素体2の一方の端面2a側に設けられている。他方の凹部7は、素体2の他方の端面2a側に設けられている。各凹部7は、対応する端面2aに設けられた端面凹部8と、主面2cに設けられた主面凹部9と、を有している。端面凹部8及び主面凹部9は、素体2における主面2cと端面2aとの間の稜線部2iを介して互いに隣り合っている。端面凹部8及び主面凹部9は、互いに連結されていない。互いに一方の凹部7の端面凹部8は、一方の端面2aに設けられている。他方の凹部7の端面凹部8は、他方の端面2aに設けられている。一方の凹部7の主面凹部9は、他方の凹部7の主面凹部9よりも一方の端面2a側に設けられている。
【0025】
図1~
図5に示されるように、一対の端子電極3は、第二方向D2で互いに離間している。各端子電極3は、素体2に埋設されている。各端子電極3は、対応する凹部7に配置されている。各端子電極3は、略矩形板状を呈している。一対の端子電極3は、互いに同形状を呈している。一対の端子電極3は、それぞれコイル10の端部10aと電気的に接続されている。
【0026】
一方の端子電極3は、素体2の一方の端面2a側に設けられている。他方の端子電極3は、素体2の他方の端面2a側に設けられている。各端子電極3は、電極部分4と、電極部分5と、を有している。電極部分4は、端面凹部8に設けられ、端面凹部8の内面に接触している。電極部分5は、主面凹部9に設けられ、主面凹部9の内面に接触している。
【0027】
電極部分4,5は、それぞれ別体として設けられている。電極部分4,5は、稜線部2iを介して互いに隣り合っている。電極部分4,5は、稜線部2iを介して互いに離間しており、互いに連結されていない。電極部分4,5は、素体2内において、互いに電気的に接続されていない。つまり、電極部分4,5は、素体2内において、互いに電気的に絶縁されている。端子電極3は、端面2a及び主面2cにわたって形成されていない。端子電極3は、稜線部2iには設けられていない。端子電極3は、稜線部2iには露出していない。稜線部2iには、導体層が露出しておらず、絶縁体層6が露出している。電極部分4,5は、たとえば、積層コイル部品1が実装基板にはんだ実装された場合に、素体2の外部において、はんだによって互いに電気的に接続される。
【0028】
電極部分4は、略矩形板状を呈し、端面2aに沿って設けられている。電極部分4は、露出面4aと、対向面4bと、一対の側面4cと、一対の側面4dと、を有している。露出面4aは、端面2aに露出され、端面2aと略面一である。露出面4aは、矩形状を呈している。露出面4aは、第一方向D1に沿う一対の長辺と、第三方向D3に沿う一対の短辺と、を有している。露出面4aは、第二方向D2から見て、端面2aの外縁2gから離間している。露出面4aは、端面2aに囲まれている。端面2aは、露出面4aの全周を囲んでいる。
【0029】
対向面4bは、第二方向D2において露出面4aと対向している。対向面4bは、露出面4aと平行に配置されている。第二方向D2から見て、対向面4bの全体が露出面4aと重なっている。本実施形態では、対向面4bは平面であるが、曲面であってもよい。
【0030】
一対の側面4cは、露出面4aと対向面4bとを接続している。一対の側面4cは、第三方向D3において互いに対向している。側面4cは、湾曲している湾曲面であり、対向面4bと滑らかに接続されている。第二方向D2から見て、側面4cの全体が露出面4aと重なっている。本実施形態では、側面4cは、全体が湾曲面であるが、一部(たとえば、対向面4b側の部分)が湾曲面であってもよいし、全体が平面であってもよい。一対の側面4cは、互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。
【0031】
一対の側面4dは、露出面4aと対向面4bとを接続している。一対の側面4dは、第一方向D1において互いに対向している。本実施形態では、側面4dは、平面であり、主面2cと平行に配置されている。側面4dは、湾曲面であってもよい。一対の側面4dは、互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。
【0032】
電極部分5は、略矩形板状を呈し、主面2cに沿って設けられている。電極部分5は、露出面5aと、対向面5bと、一対の側面5cと、一対の側面5dと、を有している。露出面5aは、主面2cに露出され、主面2cと略面一である。露出面5aは、矩形状を呈している。露出面5aは、第一方向D1に沿う一対の長辺と、第二方向D2に沿う一対の短辺と、を有している。露出面5aは、第三方向D3から見て、主面2cの外縁2hから離間している。露出面5aは、主面2cに囲まれている。主面2cは、露出面5aの全周を囲んでいる。
【0033】
対向面5bは、第三方向D3において露出面5aと対向している。対向面5bは、露出面5aと平行に配置されている。第三方向D3から見て、対向面5bの全体が露出面5aと重なっている。本実施形態では、対向面5bは平面であるが、曲面であってもよい。
【0034】
一対の側面5cは、露出面5aと対向面5bとを接続している。一対の側面5cは、第二方向D2において互いに対向している。側面5cは、湾曲している湾曲面であり、対向面5bと滑らかに接続されている。第二方向D2から見て、側面5cの全体が露出面5aと重なっている。本実施形態では、側面5cは、全体が湾曲面であるが、一部(たとえば、対向面5b側の部分)が湾曲面であってもよいし、全体が平面であってもよい。一対の側面5cは、互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。
【0035】
一対の側面5dは、露出面5aと対向面4bとを接続している。一対の側面5dは、第二方向D2において互いに対向している。本実施形態では、側面5dは、平面であり、側面2eと平行に配置されている。側面5dは、湾曲面であってもよい。一対の側面5dは、互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。
【0036】
図3に示されるように、端子電極3は、複数の電極層11が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層11の数は、「6」である。各電極層11は、対応する絶縁体層6に形成されている欠損部に設けられている。欠損部は、凹部7を構成する。電極層11は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。電極層11は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。電極層11は、ガラス成分を更に含んでいてもよい。すなわち、電極層11は、導電性材料粉末からなる金属成分及びガラス成分を含む導電性ペーストの焼結体として構成されていてもよい。ガラス成分は、素体2を構成する元素の化合物であり、素体2に含まれるガラス成分と同じ成分である。ガラス成分の含有量は、適宜設定されればよい。各電極層11は、層部分11a,11bを有している。層部分11aは、第三方向D3に沿って延在している。層部分11bは、第二方向D2に沿って延在している。
【0037】
電極部分4は、複数の電極層11の層部分11aが積層されることにより構成されている。電極部分4では、複数の層部分11aは、層部分11aの間の境界が視認できない程度に一体化されている。電極部分5は、複数の電極層11の層部分11bが積層されることにより構成されている。電極部分5では、複数の層部分11bは、層部分11bの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0038】
図5に示されるように、コイル10、及び、接続導体26,27は、素体2内に配置され、素体2から露出してない。コイル10は、第一方向D1に沿うコイル軸AXを有している。コイル10の一対の端部10aは、一対の端子電極3に電気的に接続されている。一方の端部10aは、接続導体26によって一方の端子電極3に電気的に接続されている。他方の端部10aは、接続導体27によって他方の端子電極3に電気的に接続されている。
【0039】
図3に示されるように、コイル10は、第一コイル導体22と、第二コイル導体23と、第三コイル導体24と、第四コイル導体25と、を有している。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25は、第一方向D1に沿って、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25の順に配置されている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25は、ループの一部が途切れた形状を呈しており、それぞれ一端部と他端部とを有している。
【0040】
第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25は、所定の幅(第一方向D1に交差する方向の長さ)及び高さ(第一方向の長さ)で形成されている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25は、互いに同等の幅及び高さで形成されている。
【0041】
第一コイル導体22は、一対の電極層11と同じ層に位置している。第一コイル導体22は、同じ層に位置している他方の電極層11の層部分11aに、接続導体26を介して接続されている。接続導体26は、一対の電極層11及び第一コイル導体22と同じ層に位置している。接続導体26は、第一コイル導体22と他方の電極層11の層部分11aとを接続している。第一コイル導体22の一端部が、接続導体26と接続されている。第一コイル導体22の一端部は、コイル10の他方の端部10aを構成している。本実施形態では、第一コイル導体22、接続導体26、及び他方の電極層11の層部分11aは、一体に形成されている。
【0042】
接続導体26は、
図5にも示されるように、層部分11a(電極部分4)の第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されている。接続導体26は、第一方向D1から見て、所定の幅を有している。具体的には、接続導体26の幅方向の中央が、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されている。接続導体26は、第一方向D1から見て、接続導体26の幅方向の半分以上の部分において、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されていればよく、幅方向の一部において、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2c側に接続されていてもよい。接続導体26は、層部分11a(電極部分4)における接続部分から、第三方向D3に沿って、主面2d側に向かって延在している。接続導体26は、直線状を呈し、第三方向D3に対して、素体2の内側に傾斜している。なお、接続導体26は、第一コイル導体22と層部分11b(電極部分5)とを接続していてもよい。
【0043】
第二コイル導体23は、一対の電極層11と同じ層に位置している。第二コイル導体23は、同じ層に位置している一対の電極層11から離間している。第一コイル導体22の他端部と、第二コイル導体23の一端部とは、第一方向D1で互いに隣り合い、互いに直接接している。第一方向D1から見て、第一コイル導体22の他端部と、第二コイル導体23の一端部とが、互いに重なっている。
【0044】
第三コイル導体24は、一対の電極層11と同じ層に位置している。第三コイル導体24は、同じ層に位置している一対の電極層11から離間している。第二コイル導体23の他端部と、第三コイル導体24の一端部とは、第一方向D1で互いに隣り合い、互いに直接接している。第一方向D1から見て、第二コイル導体23の他端部と、第三コイル導体24の一端部とが、互いに重なっている。
【0045】
第四コイル導体25は、一対の電極層11と同じ層に位置している。第四コイル導体25は、同じ層に位置している一方の電極層11の層部分11aに、接続導体27を介して接続されている。接続導体27は、一対の電極層11及び第四コイル導体25と同じ層に位置している。接続導体27は、第四コイル導体25と一方の電極層11の層部分11aとを接続している。第四コイル導体25の他端部が、接続導体27と接続されている。第四コイル導体25の他端部は、コイル10の一方の端部10aを構成している。本実施形態では、第四コイル導体25、接続導体27、及び一方の電極層11の層部分11aは、一体に形成されている。
【0046】
接続導体27は、
図5にも示されるように、層部分11a(電極部分4)の第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されている。接続導体27は、第一方向D1から見て、所定の幅を有している。具体的には、接続導体27の幅方向の中央が、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されている。接続導体27は、第一方向D1から見て、接続導体27の幅方向の半分以上の部分において、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続されていればよく、幅方向の一部において、層部分11aの第三方向D3の中央よりも主面2c側に接続されていてもよい。接続導体27は、層部分11a(電極部分4)における接続部分から、第三方向D3に沿って、主面2d側に向かって延在している。接続導体27は、直線状を呈し、第三方向D3に対して、素体2の内側に傾斜している。なお、接続導体27は、第四コイル導体25と層部分11b(電極部分5)と接続されていてもよい。
【0047】
第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。
【0048】
本実施形態では、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、各端子電極3と同じ導電性材料を含んでいる。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、各端子電極3と異なる導電性材料を含んでいてもよい。
【0049】
第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、対応する絶縁体層6に形成されている欠損部に設けられている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。
【0050】
グリーンシートに形成される欠損部は、たとえば、以下の過程によって形成される。まず、絶縁体層6の構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材上に付与することにより、グリーンシートを形成する。基材は、たとえば、PETフィルムである。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法によりグリーンシートを露光及び現像し、基材上のグリーンシートに欠損部を形成する。欠損部が形成されたグリーンシートは、素体パターンである。
【0051】
電極層11、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、及び、接続導体26,27は、たとえば、以下の過程によって形成される。
【0052】
まず、感光性材料を含む導電性ペーストを基材上に付与することにより、導体材料層を形成する。導電性ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法により導体材料層を露光及び現像し、欠損部の形状に対応する導体パターンを基材上に形成する。
【0053】
積層コイル部品1は、たとえば、上述した過程に続く以下の過程によって得られる。導体パターンが、素体パターンの欠損部に組み合わされることにより、素体パターンと導体パターンとが同一層とされたシートが用意される。用意した所定枚数のシートを積層して得られた積層体を熱処理した後に、積層体から、複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機で、グリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。次に、グリーンチップを焼成する。この焼成により、積層コイル部品1が得られる。各端子電極3の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、電極部分4の露出面4aは、端面2aの外縁2gから離間していると共に、電極部分5の露出面5aは、主面2cの外縁2hから離間している。つまり、露出面4aの全体が端面2aによって囲まれた状態であると共に、露出面5aの全体が主面2cによって囲まれた状態である。このため、端子電極3が端面2a及び主面2cにわたって連続して形成されている場合に比べて、電極部分4,5と素体2とが接触している面積が広くなる。したがって、端子電極3(すなわち電極部分4,5)と素体2との接着力が増すので、端子電極3が素体2から剥離することが抑制される。
【0055】
たとえば、積層コイル部品1の特性を検査するために、端子電極3の露出面5aに検査用のピンが押し当てられる場合がある。積層コイル部品1では、端子電極3と素体2との接着力が増しているので、このような外部応力を受けても、端子電極3が素体2から剥離することが抑制される。
【0056】
検査用のピンが露出面5aからはみ出し、主面2cのうち露出面5aの短辺と隣接する部分に押し当てられる場合がある。主面2cのうち露出面5aの短辺と隣接する部分は、
図2(b)に示されるように、積層端に位置する絶縁体層6により構成されている。ここで、比較例として、露出面5aの長辺が外縁2hと一致している積層コイル部品について考える。この比較例に係る積層コイル部品では、積層端に位置する絶縁体層6は、主面2c近傍領域において、第二方向D2における中央部(一対の電極部分5の間の部分)だけで隣接する絶縁体層6と接着されている。絶縁体層6と端子電極3との接着力は、絶縁体層6同士の接着力よりも弱い。このため、検査用のピンが主面2cのうち露出面5aの短辺と隣接する部分に押し当てられると、積層端に位置する絶縁体層6の剥離が剥離するおそれがある。
【0057】
これに対し、本実施形態では、積層端に位置する絶縁体層6は、主面2c近傍において、第二方向D2の中央部(一対の電極部分5の間の部分)だけでなく、第二方向D2の両端部(一対の電極部分5の外側の部分)においても、隣接する絶縁体層6と接着されている。このため、検査用のピンが主面2cのうち露出面5aの短辺と隣接する部分に押し当てられる場合でも、積層端に位置する絶縁体層6の剥離が抑制される。
【0058】
他の比較例として、露出面4aの長辺が外縁2h(主面2c側の外縁2h)と一致している積層コイル部品について考える。この他の比較例に係る積層コイル部品では、電極部分4が主面2cに露出し易い。主面2cにおいて、電極部分4が露出した部分に検査用のピンが押し当てられると、電極部分4が剥離するおそれがある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、露出面4aは、外縁2hから離間し、主面2cに露出していない。このため、主面2cに押し当てられる検査用のピンが電極部分4に押し当てられることがない。よって、電極部分4の剥離が抑制される。
【0060】
一対の側面4cは、それぞれ湾曲している。このため、側面4c及び対向面4bが互いに滑らかに接続される。よって、側面4cと対向面4bとがなす角部に起因して、素体2にクラックが生じることが抑制される。一対の側面5cは、それぞれ湾曲している。このため、側面5c及び対向面5bが互いに滑らかに接続される。よって、側面5cと対向面5bとがなす角部に起因して、素体2にクラックが生じることが抑制される。
【0061】
接続導体26,27は、電極部分4の第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続され、主面2d側に向かって延在している。このため、接続導体26,27が、電極部分4の第三方向D3の中央よりも主面2c側に接続され、主面2d側に向かって延在している場合、又は、電極部分4の第三方向D3の中央よりも主面2d側に接続され、主面2c側に向かって延在している場合に比べて、電極部分4において、素体2を介して第二方向D2で接続導体26,27と対向する領域が減少する。これにより、電極部分4と接続導体26,27との間で形成される浮遊容量を抑制することができる。
【0062】
電極部分4,5が素体2内において互いに電気的に接続されている構成では、たとえば、積層コイル部品1が実装基板にはんだ実装され、電極部分4,5が素体2の外部においても互いに電気的に接続された場合、電極部分4,5間の電流経路が素体2の内部と外部との二つとなり、電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。これに対し、本実施形態では、電極部分4,5は、素体2内において互いに電気的に絶縁されている。これにより、電極部分4,5間の電流経路が一つとなるので、電気特性に対する影響を抑制することができる。更に、電極部分4,5が別体として分離して形成されているので、電極部分4,5が一体として形成されている場合に比べて、焼成時の収縮量を抑制することができる。
【0063】
コイル10は、第一方向D1に沿うコイル軸AXを有している。このため、第一方向D1に沿う磁束が発生する。端子電極3は、第一方向D1に沿って延在している主面2c及び端面2aに設けられており、第一方向D1と交差する側面2eには設けられていない。したがって、端子電極3が側面2eに設けられている場合に比べて、端子電極3と交差する磁束が少なくなる。よって、Q値を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0065】
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、変形例に係る積層コイル部品1Aは、主に端子電極3の形状の点で、実施形態に係る積層コイル部品1と相違している。積層コイル部品1Aでは、電極部分4,5の端部4e,5eが凹凸形状を呈している。具体的には、電極部分4の第三方向D3の端部4e(露出面4aの長辺を含む)、及び、電極部分5の第二方向D2の端部5e(露出面5aの長辺を含む)がそれぞれ凹凸形状を呈している。電極部分4の第三方向D3の両端部4eが凹凸形状を呈していてもよいし、一方の端部4eが凹凸形状を有していてもよい。電極部分5の第二方向D2の両端部5eが凹凸形状を呈していてもよいし、一方の端部5eが凹凸形状を有していてもよい。積層コイル部品1Aは、凸部に対応し、延在長さが長い層部分11a,11bを有する層と、凹部に対応し、延在長さが短い層部分11a,11bを有する層とが交互に積層されて形成される。
【0066】
積層コイル部品1Aにおいても、露出面4aが端面2aの外縁2gから離間していると共に、露出面5aが主面2cの外縁2hから離間している。よって、端子電極3の剥離が抑制される。更に、電極部分4,5の端部4e,5eが凹凸形状を有しているので、電極部分4,5と素体2との間の接着力が増す。よって、端子電極3の剥離が更に抑制される。
【0067】
上記実施形態では、コイル10が、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24及び第四コイル導体25を有している形態を一例に説明した。しかし、コイル10を構成するコイル導体の数は4に限られない。
【0068】
上記実施形態では、露出面4aは、端面2aと略面一であるが、露出面4aは、端面2aから突出していてもよいし、端面2aから窪んでいてもよい。露出面5aは、主面2cと略面一であるが、露出面5aは、主面2cから突出していてもよいし、主面2cから窪んでいてもよい。露出面4a,5aは、平面に限らず、曲面であってもよい。
【0069】
電極部分4,5は、素体2内において、互いに電気的に接続されていてもよい。この場合、電気めっきによりめっき膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A…積層コイル部品、2…素体、2a…端面、2c,2d…主面、2e…側面、2g,2h…外縁、2i…稜線部、3…端子電極、4,5…電極部分、4a,5a…露出面、4b,5b…対向面、4c,5c…側面、4d,5d…側面、4e,5e…端部、6…絶縁体層、7…凹部、8…端面凹部、9…主面凹部、10…コイル、10a…端部、26,27…接続導体、AX…コイル軸。