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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020038711
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140978
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】西谷 章弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-106383(JP,U)
【文献】特開平9-55257(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167599(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070197(WO,A1)
【文献】米国特許第10177498(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一部品であり、接続対象である2本の導体に対して電気的に接触可能な1つの導通部材と、
弾性を有する絶縁性材料からなり、前記導通部材と前記2本の導体とに対して接触方向の押圧力を付与する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、一方の前記導体に押圧力を付与する第1押圧部と、他方の前記導体に押圧力を付与する第2押圧部とを有し、
前記第1押圧部と前記第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形することが可能であるコネクタ。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記第1押圧部と前記第2押圧部を連結する連結部を有している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
接続対象である2本の導体に対して電気的に接触可能な導通部材と、
弾性を有する絶縁性材料からなり、前記導通部材と前記2本の導体とに対して接触方向の押圧力を付与する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、一方の前記導体に押圧力を付与する第1押圧部と、他方の前記導体に押圧力を付与する第2押圧部とを有し、
前記第1押圧部と前記第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形することが可能であり、
前記押圧部材は、前記第1押圧部と前記第2押圧部を連結する連結部を有しており、
前記連結部は、前記第1押圧部及び前記第2押圧部と一体に連なり、前記第1押圧部及び前記第2押圧部よりも断面積の小さい形態であるコネクタ。
【請求項4】
前記導通部材が、前記第1押圧部、前記第2押圧部及び前記連結部に重ね合わされた導電性の板材からなり、
前記連結部と、前記導通部材における前記連結部との対向部位とが、前記第1押圧部及び前記第2押圧部よりも幅狭の形態である請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
接続対象である2本の導体に対して電気的に接触可能な導通部材と、
弾性を有する絶縁性材料からなり、前記導通部材と前記2本の導体とに対して接触方向の押圧力を付与する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、一方の前記導体に押圧力を付与する第1押圧部と、他方の前記導体に押圧力を付与する第2押圧部とを有し、
前記第1押圧部と前記第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形することが可能であり、
前記押圧部材は、前記第1押圧部と前記第2押圧部を連結する連結部を有しており、
前記押圧部材は、
前記第1押圧部を有する第1部品と、
前記第1部品とは別体であって前記第2押圧部を有する第2部品とを備えており、
前記連結部が、前記第1部品に形成した第1係合部と前記第2部品に形成した第2係合部とを係合して構成され、
前記第1部品と前記第2部品は、前記連結部によって相対変位し得るように連結されているコネクタ。
【請求項6】
支持部に固定された固定側の前記導通部材と、
前記押圧部材の弾性変形に伴い、前記支持部に対して相対変位する可動側の前記導通部材とを備え、
前記導体が前記固定側の導通部材と前記可動側の導通部材との間で挟まれている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、導電性金属板を曲げ加工などして形成された雌端子を開示する。雌端子は、前部に雄端子が挿入される箱形状の電気接触部を有し、後部にオープンバレル状の一対の導体圧着片を有している。導体圧着片は、被覆電線の被覆が剥がされて露出した導体に圧着されて固定される。
【0003】
特許文献2は、雌端子金具と、第1および第2の斜め巻きコイルスプリングと、両斜め巻きコイルスプリングを保持する雌ハウジングとを備えた雌コネクタを開示する。両斜め巻きコイルスプリングは、導電金属製の線材を複数回巻回させたコイル状をなしている。雌端子金具は、平板状をなし、一端部に芯線が接続されている。
【0004】
雌端子金具は、2つの斜め巻きコイルスプリングに挟まれた状態で雌ハウジング内に収容される。雌コネクタが相手側の雄コネクタに嵌合されると、第1の斜め巻きコイルスプリングが雌ハウジング内の壁面(当接壁)と雌端子金具とに挟まれ、第2の斜め巻きコイルスプリングが雄コネクタに設けられた雄端子金具と雌端子金具とに挟まれる。このとき、両斜め巻きコイルスプリングの弾性復元力によって、第2の斜め巻きコイルスプリングが雌端子金具と端子接続部とに接触し、雌端子金具と雄端子金具とが電気的に接続される。また、第1の斜め巻きコイルスプリングは、雌端子金具を芯線側に押さえつけるように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-241219号公報
【文献】特開2019-46760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の場合、導体圧着片を導体に圧着するための工程が必要とされる。特許文献2の場合、第2の斜め巻きコイルスプリングが雄コネクタに設けられた雄端子金具と雌端子金具とに介在しているので、コネクタが大型化し易いという事情がある。
【0007】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、大型化することなく圧着工程を省略できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタは、
接続対象である2本の導体に対して電気的に接触可能な導通部材と、
弾性を有する絶縁性材料からなり、前記導通部材と前記2本の導体とに対して接触方向の押圧力を付与する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、一方の前記導体に押圧力を付与する第1押圧部と、他方の前記導体に押圧力を付与する第2押圧部とを有し、
前記第1押圧部と前記第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、大型化することなく圧着工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1の雌側コネクタの分解斜視図である。
図2図2は、雄側コネクタの分解斜視図である。
図3図3は、雌側コネクタの側断面図である。
図4図4は、雌側コネクタの平断面図である。
図5図5は、雌側コネクタにおいてフロント部材を外した状態をあらわす正面図である。
図6図6は、外径寸法の異なる第1導体と第2導体を接続した状態をあらわす側断面図である。
図7図7は、外径寸法が同じである第1導体と第2導体を接続した状態をあらわす側断面図である。
図8図8は、実施例2の押圧部材の分解斜視図である。
図9図9は、第1導体と第2導体を接続した状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)接続対象である2本の導体に対して電気的に接触する導通部材と、弾性を有する絶縁性材料からなり、前記導通部材と前記2本の導体とに対して接触方向の押圧力を付与する押圧部材とを備え、前記押圧部材は、一方の前記導体に押圧力を付与する第1押圧部と、他方の前記導体に押圧力を付与する第2押圧部とを有し、前記第1押圧部と前記第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形することが可能である。
【0012】
本開示の構成によれば、導通部材と導体は、押圧部材から付与される接触方向の弾性的な押圧力によって接触するので、導体と導通部材を圧着するための工程が不要である。押圧部材は絶縁性材料からなり、押圧部材とは別に絶縁のための構造を設ける必要がないので、コネクタの大型化を回避することができる。したがって、本開示のコネクタは、大型化することなく圧着工程を省略できる。第1押圧部と第2押圧部は互いに独立した形態で弾性変形するので、第1押圧部からの押圧力を受ける一方の導体の外径寸法と、第2押圧部からの押圧力を受ける他方の導体の外径寸法が異なっていても、1つの導通部材を2本の導体に対して確実に接触させることができる。
【0013】
(2)前記押圧部材は、前記第1押圧部と前記第2押圧部を連結する連結部を有していることが好ましい。この構成によれば、第1押圧部と第2押圧部を一体化した状態で取り扱うことができる。
【0014】
(3)(2)において、前記連結部は、前記第1押圧部及び前記第2押圧部と一体に連なり、前記第1押圧部及び前記第2押圧部よりも断面積の小さい形態であることが好ましい。この構成によれば、押圧部材を単一部品で構成することができる。
【0015】
(4)(3)において、前記導通部材が、前記第1押圧部、前記第2押圧部及び前記連結部に重ね合わされた導電性の板材からなり、前記連結部と、前記導通部材における前記連結部との対向部位とが、前記第1押圧部及び前記第2押圧部よりも幅狭の形態であることが好ましい。この構成によれば、第1押圧部と第2押圧部が互いに独立して弾性変形することができるとともに、導通部材が、第1押圧部と第2押圧部の弾性変形に追従して変形することができる。
【0016】
(5)(2)において、前記押圧部材は、前記第1押圧部を有する第1部品と、前記第1部品とは別体であって前記第2押圧部を有する第2部品とを備えており、前記連結部が、前記第1部品に形成した第1係合部と前記第2部品に形成した第2係合部とを係合して構成され、前記第1部品と前記第2部品は、前記連結部によって相対変位し得るように連結されていることが好ましい。この構成によれば、第1押圧部と第2押圧部が弾性変形したときに、その弾性変形の影響が相手側の押圧部に及ぶことはない。
【0017】
(6)支持部に固定された固定側の前記導通部材と、前記押圧部材の弾性変形に伴い、前記支持部に対して相対変位する可動側の前記導通部材とを備え、前記導体が前記固定側の導通部材と前記可動側の導通部材との間で挟まれていることが好ましい。この構成によれば、押圧部材の弾性変形の形態の影響を受けずに、導体と固定側の導通部材とを確実に接触させることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、図1図7を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、図3~7における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1~3,5~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図5にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。
【0019】
本実施例1のコネクタは、図1,2に示すように、互いに嵌合される雌側コネクタFと雄側コネクタMとを有する。図1に示すように、雌側コネクタFは、1つの雌側ハウジング10と、複数の押圧部材25と、複数の可動側導通部材30と、複数の固定側導通部材35と、1つの第1電線モジュール40とを有する。雄側コネクタMは、1つの雄側ハウジング50と、1つの第2電線モジュール55とを有する。
【0020】
雌側ハウジング10は、合成樹脂材料からなり、図3に示すように、ハウジング本体11と、ハウジング本体11に前方から取り付けたフロント部材20とを有している。ハウジング本体11は、左右方向に並列する複数のキャビティ12と、ハウジング本体11の後端面に開口する1つの保持空間18とを有する。キャビティ12は、全体として前後方向に細長い空間を構成する。
【0021】
キャビティ12の前端部には、ハウジング本体11の前端面に開口する接続部13が形成されている。接続部13は、後述する固定側導通部材35を固定するための支持部としての機能を有する。として機能する。接続部13の内部は、後述する第1導体42と第2導体57との接続を行うための接続空間として機能する。図5に示すように、接続部13には、第1導体42と第2導体57を幅方向に位置決めするための左右一対の位置決め部14が形成されている。一対の位置決め部14は、接続部13の左右両内壁面から幅方向内側へ突出した形態である。接続部13の内側面の上端部、即ち位置決め部14よりも上方の領域には、前後方向に延びる左右一対の溝部15が形成されている。
【0022】
図3に示すように、キャビティ12のうち接続部13の後端に連なる領域は、接続部13よりも小径のガイド孔を有するガイド部16として機能する。キャビティ12のうちガイド部16の後端からキャビティ12の後端に至る領域は、ガイド部16よりも大径の挿通部17として機能する。保持空間18は、ハウジング本体11の後端面において左右方向に長いスリット状に開口している。図4に示すように、保持空間18は、複数の全てのキャビティ12(挿通部17)の後端と連通している。保持空間18の左右両端部には、左右一対の抜止め突起19が形成されている。
【0023】
フロント部材20は、キャップ状をなし、図3に示すように、ハウジング本体11の前面を覆う前壁部21と、ハウジング本体11の前端側領域を包囲する周壁部22と、前壁部21から後方へ延出して周壁部22の一部を構成するロックアーム23とを有している。複数の接続部13の前端の開口は、前壁部21によって覆われている。前壁部21の各キャビティ12(接続部13)と対応する複数位置には、前壁部21を前後方向に貫通する複数の挿入孔24が形成されている。各挿入孔24は、接続部13よりも小径の断面円形をなしている。
【0024】
複数の押圧部材25は、電気的に絶縁性のゴム材料からなり、弾性変形することが可能である。複数の押圧部材25は、複数の接続部13内に個別に収容されている。押圧部材25は、接続部13の底面に載置された状態で配置されている。図1,3に示すように、押圧部材25は、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fと連結部27とを有する単一部品であり、全体として前後方向に長い直方体形状をなしている。押圧部材25の最大幅寸法は、一対の位置決め部14の突出端同士の間隔よりも大きい寸法に設定されている。
【0025】
第1押圧部26Rは、押圧部材25の後端側部分を構成し、第2押圧部26Fは押圧部材25の前端側部分を構成する。第1押圧部26Rと第2押圧部26Fは前後対称な形状である。連結部27は、第1押圧部26Rの前端と第2押圧部26Fの後端とを連結する。第1押圧部26Rの上面と連結部27の上面と第2押圧部26Fの上面は、同じ高さで連なっている。
【0026】
押圧部材25の左右両側面のうち一方の側面は、連結部27において溝状に凹んでいる。つまり、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fの並び方向である前後方向と直角に押圧部材25を切断したときに、連結部27の断面積は、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fの断面積よりも小さい。したがって、連結部27は、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fよりも弾性変形し易い。第1押圧部26Rと第2押圧部26Fが弾性変形したときには、連結部27の後端部が第1押圧部26Rに追従し、連結部27の前端部が第2押圧部26Fに追従するので、第1押圧部26Rの動きは第2押圧部26Fに殆ど伝わらず、第2押圧部26Fの動きは第1押圧部26Rに殆ど伝わらない。
【0027】
可動側導通部材30は、例えば銅またはアルミなどの金属製の板材からなる。可動側導通部材30は、押圧部材25の上面と同じ形状である。図1,3に示すように、可動側導通部材30は、第1押圧部26Rの上面に固着された第1導通部31Rと、第2押圧部26Fの上面に固着された第2導通部31Fと、連結部27の上面に固着された連結用導通部32とを有する。図3に示すように、可動側導通部材30と押圧部材25は、接続部13のうち位置決め部14よりも下方の領域内に収容されている。なお、可動側導通部材30は第1押圧部26R、第2押圧部26F、連結部27の全ての部位において固着されている必要はなく、部分的に固着されていてもよい。
【0028】
可動側導通部材30は、全体として前後方向に長い長方形をなす。可動側導通部材30の最大幅寸法は、一対の位置決め部14の突出端同士の間隔よりも大きい寸法に設定されている。可動側導通部材30の左右方向における一方の側縁部を溝状に切欠くことによって、連結用導通部32が形成されている。第1導通部31Rは、第1押圧部26Rの上面部と一体的に上下方向へ変位する。第2導通部31Fは、第2押圧部26Fの上面部と一体的に上下方向へ変位する。連結用導通部32は、連結部27の上面部と一体的に変形する。
【0029】
固定側導通部材35は、可動側導通部材30と同様、例えば銅またはアルミなどの金属製の板材からなる。図1,3に示すように、固定側導通部材35は、前後に間隔を空けて配置された3つの取付部36と、第1接点部37Rと、第1接点部37Rよりも前方に位置する第2接点部37Fとを有する単一部品である。第1接点部37Rの前端と後端は、中央に位置する取付部36の後端と、後側に位置する取付部36の前端とに連なっている。第2接点部37Fの前端と後端は、前側に位置する取付部36の後端と、中央に位置する取付部36の前端とに連なっている。固定側導通部材35を側方から見た側面視において、第1接点部37Rと第2接点部37Fは、下方へ膨らむように湾曲した形状をなし、取付部36よりも下方へ突出した形状である。
【0030】
固定側導通部材35は、3つの取付部36の左右両端部を接続部13の溝部15に嵌合することによって、接続部13内の上端部に固定して取り付けられている。固定側導通部材35は、押圧部材25及び可動側導通部材30よりも上方に位置し、可動側導通部材30との間に所定の間隔を空けて上下方向に対向している。第1接点部37R及び第2接点部37Fの下端と、押圧部材25が弾性変形してない状態における可動側導通部材30の上面との間の上下方向の間隔は、後述する第1導体42及び第2導体57の外径寸法よりも小さい寸法に設定されている。第1接点部37R及び第2接点部37Fの幅寸法は、一対の位置決め部14の突出端同士の間隔よりも小さい寸法に設定されている。雌側コネクタFを前方から見た正面視において、第1接点部37Rと第2接点部37Fは、一対の位置決め部14の間に配置されている。
【0031】
第1電線モジュール40は、複数本の第1被覆電線41と、1つの第1保持部材45とを一体化させたものである。第1被覆電線41は第1導体42を第1絶縁被覆43で包囲したものである。第1導体42は、銅またはアルミなどの金属材料からなる単芯線であり、断面円形の形状を維持する剛性を有している。第1導体42の外径寸法は、第1導通部31R及び第2導通部31Fの幅寸法よりも小さく、一対の位置決め部14の突出端同士の間隔よりも小さい寸法に設定されている。第1被覆電線41の端部においては、第1絶縁被覆43が除去され、第1導体42が露出している。第1導体42の露出部分を第1接続端部44と定義する。
【0032】
第1保持部材45は、図1に示すように、幅方向に扁平な形状であって、横並びに配置された複数本の第1被覆電線41の中間皮剥ぎ部を一括して保持する。第1保持部材45は、複数の第1被覆電線41の周囲を樹脂で覆ったモールド成形品である。複数本の第1被覆電線41は、第1保持部材45を前後方向に貫通し、左右方向において一定の間隔に位置決めされた状態に保持される。第1保持部材45の左右両側面には、左右一対の係止突起46が形成されている。
【0033】
第1電線モジュール40は、雌側ハウジング10の後方からハウジング本体11内に組み付けられている。第1電線モジュール40を雌側ハウジング10に組み付けた状態では、第1保持部材45の係止突起46が雌側ハウジング10の抜止め突起19に係止することにより、第1電線モジュール40が雌側ハウジング10に対して抜止めされた状態に保持される。
【0034】
組付けの過程では、複数本の第1導体42の第1接続端部44が、挿通部17とガイド部16を順に貫通し、接続部13内に進入して第1導通部31Rと第1接点部37Rとの間に割り込んで挟まれる。押圧部材25が弾性変形していない状態では、第1導通部31Rと第1接点部37Rとの間隔が、第1接続端部44の外径寸法よりも小さいので、第1導通部31Rが、第1押圧部26Rを潰すように弾性変形させながら、下方へ変位する。第1押圧部26Rの弾性復元力によって、第1導体42と第1導通部31Rとが所定の接圧で導通可能に接続されるとともに、第1導体42と第1接点部37Rとが所定の接圧で導通可能に接続される。
【0035】
第1導体42を第1導通部31Rと第1接点部37Rとの間に挟み込んだ状態では、第1押圧部26Rが上下に潰れるように弾性変形しているが、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fとの間には連結部27が介在しているので、第1押圧部26Rの弾性変形の影響が第2押圧部26Fに及ぶことはない。また、第1導通部31Rが、第1押圧部26Rと一体となって下方へ変位しているが、第1導通部31Rと第2導通部31Fとの間には、幅寸法が小さくて第1導通部31R及び第2導通部31Fよりも変形し易い連結用導通部32が介在している。これに加え、第2押圧部26Fが第2導通部31Fを弾性的に上方へ押圧している。これにより、連結用導通部32が屈曲変形し、第2導通部31Fは、第1導体42が第1導通部31Rと第1接点部37Rとの間に挟まれていないときと、殆ど同じ高さに保たれる。
【0036】
雄側コネクタMを構成する雄側ハウジング50は、合成樹脂製であって、図2に示すように、ハウジング部51と、ハウジング部51から突出する筒状のフード部52とを有する単一部品である。フード部52の上壁部の内面には、雌側コネクタFのロックアーム23に係止させるロック部53を有している。ハウジング部51は、図示は省略するが、雌側コネクタFの複数のガイド部16、複数の挿通部17及び保持空間18と同様の複数のガイド部16、複数の挿通部17及び保持空間18を有している。ハウジング部51は、雌側コネクタFの接続部13に相当する部位は有していない。
【0037】
第2電線モジュール55は、第1電線モジュール40と同様、複数本の第2被覆電線56と、1つの第2保持部材とを一体化させたものである。第2被覆電線56の構成は、第1被覆電線41と同様、第2導体57を第2絶縁被覆58で包囲したものである。第2導体57は、銅またはアルミなどの金属材料からなる単芯線からなり、断面円形の形状を維持する剛性を有している。
【0038】
第2導体57の外径寸法は、第1導通部31R及び第2導通部31Fの幅寸法よりも小さく、一対の位置決め部14の突出端同士の間隔よりも小さく、第1導体42の外径寸法よりも小さい寸法に設定されている。第2被覆電線56の端部においては、第2絶縁被覆58が除去され、第2導体57が露出している。第2導体57の露出部分を第2接続端部59と定義する。第2保持部材60は、第1保持部材45と同じ形状であり、第1保持部材45と同じ構成によって第2被覆電線56と一体化されている。
【0039】
第2電線モジュール55も、第1電線モジュール40と同様の構成により、ハウジング部51に組み付けられている。第2電線モジュール55を雄側ハウジング50に組み付けた状態では、第2導体57の第2接続端部59が、ハウジング部51の前面からフード部52内へ突出する。
【0040】
雄側コネクタMと雌側コネクタFを接続する際には、雌側コネクタFをフード部52内に嵌合する。嵌合の過程では、第2導体57の第2接続端部59が、挿入孔24を貫通して接続部13内に進入し、第2導通部31Fと第2接点部37Fとの間に入り込む。この時点では、第1導通部31Rと第1接点部37Rとの間に第1導体42が挟み込まれているが、第2押圧部26Fから第2導通部31Fに作用する剛性によって、連結用導通部32が屈曲変形し、連結部27が弾性変形している。したがって、第2導通部31Fと第2接点部37Fとの間隔は、第2導体57の外径寸法よりも小さい状態に保たれている。これにより、第2導通部31Fが、第2押圧部26Fを潰すように弾性変形させながら、下方へ変位する。
【0041】
第2導体57の外径寸法は、第1導体42の外径寸法よりも小さいので、第1導通部31Rと第2導通部31Fとの間では高低差が生じ、第2押圧部26Fの上下方向の弾性変形量は、第1押圧部26Rの上下方向の弾性変形量よりも小さくなる。第1押圧部26Rと第2押圧部26Fを繋ぐ連結部27は、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fよりも剛性が低いので、第1押圧部26Rの弾性変形の影響は、第2押圧部26Fへは殆ど及ばない。したがって、第2押圧部26Fは第2導体57側に対して押圧力を付与することができる。
【0042】
第1導体42の外径寸法と第2導体57の外径寸法が同じ寸法である場合は、図7に示すように、第1押圧部26Rの弾性変形量と第2押圧部26Fの弾性変形量が同じである。したがって、連結用導通部32は変形せず、第1導通部31Rと第2導通部31Fと連結用導通部32は、同じ高さで1つの平面を構成する。
【0043】
本実施例1のコネクタを構成する雌側コネクタFは、第1導体42と第2導体57が挿入される雌側ハウジング10を有する。雌側ハウジング10内には、接続対象である第1導体42及び第2導体57に対して電気的に接触する可動側導通部材30と固定側導通部材35とが収容されている。雌側コネクタFは、弾性を有する絶縁性材料からなる押圧部材25を有している。押圧部材25は、可動側導通部材30と、固定側導通部材35と、雌側ハウジング10に挿入された第1導体42及び第2導体57とに対して接触方向の押圧力を付与する。押圧部材25は、第1導体42に押圧力を付与する第1押圧部26Rと、第2導体57に押圧力を付与する第2押圧部26Fとを有する。第1押圧部26Rと第2押圧部26Fは、互いに独立した形態で弾性変形することが可能である。
【0044】
この構成によれば、可動側導通部材30と固定側導通部材35は、押圧部材25から付与される接触方向の弾性的な押圧力によって第1導体42及び第2導体57に接触する。したがって、第1導体42に可動側導通部材30や固定側導通部材35を圧着するための工程と、第2導体57に可動側導通部材30や固定側導通部材35を圧着するための工程が不要である。押圧部材25は絶縁性材料からなり、押圧部材25とは別に絶縁のための構造を設ける必要がないので、雌側コネクタFの大型化を回避することができる。
【0045】
本実施例1のコネクタは、大型化することなく圧着工程を省略できる。第1押圧部26Rと第2押圧部26Fは互いに独立した形態で弾性変形するので、第1押圧部26Rからの押圧力を受ける第1導体42と、第2押圧部26Fからの押圧力を受ける第2導体57の外径寸法が異なっていても、1つの導通部材を第1導体42及び第2導体57に対して確実に接触させることができる。
【0046】
押圧部材25は、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fを連結する連結部27を有しているので、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fを一体化した状態で取り扱うことができる。連結部27は、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fと一体に連なり、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fよりも断面積の小さい形態であるから、押圧部材25を単一部品で構成することが実現できた。
【0047】
可動側導通部材30は、第1押圧部26R、第2押圧部26F及び連結部27に重ね合わされた導電性の板材からなる。連結部27と、可動側導通部材30における連結部27との対向部位(連結用導通部32)は、第1押圧部26R及び第2押圧部26Fよりも幅狭の形態である。この構成によれば、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fが互いに独立して弾性変形することができるとともに、可動側導通部材30が、第1押圧部26Rと第2押圧部26Fの弾性変形に追従して変形することができる。
【0048】
コネクタは、雌側ハウジング10の接続部13に固定された固定側導通部材35と、押圧部材25の弾性変形に伴い、接続部13に対して相対変位する可動側導通部材30とを備えている。第1導体42と第2導体57は、固定側導通部材35と可動側導通部材30との間で挟まれている。この構成によれば、押圧部材25の弾性変形の形態の影響を受けずに、第1導体42と固定側導通部材35とを確実に接触させることができるとともに、第2導体57と固定側導通部材35とを確実に接触させることができる。
【0049】
[実施例2]
本開示のコネクタを具体化した実施例2を、図8図9を参照して説明する。本実施例2のコネクタは、押圧部材70において第1押圧部72Rと第2押圧部72Fを連結する連結部74を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0050】
本実施例2の押圧部材70は、第1部品71Rと、第1部品71Rとは別体の第2部品71Fとを組み付けて構成されている。第1部品71Rは、第1押圧部72Rと第1係合部73Rとを有する単一部品であり、全体として直方形状をなしている。第1係合部73Rは、第1部品71Rの前端面を凹ませた形態であり、第1部品71Rの上面と下面に開口する上下方向の溝状をなす。押圧部材70を上から見た平面視において、第1係合部73Rは、前端から後端に向かって幅寸法が大きくなる台形状をなしている。第1部品71Rのうち第1係合部73Rよりも後方の大部分の部位が、第1押圧部72Rとして機能する。
【0051】
第2部品71Fは、第2押圧部72Fと第2係合部73Fとを有する単一部品であり、全体として直方形状をなしている。第2係合部73Fは、第2部品71Fの後端面からリブ状に突出した形態であり、上下方向に延びている。平面視において、第2係合部73Fは、第1係合部73Rと同様、前端から後端に向かって幅寸法が大きくなる台形状をなしている。第2部品71Fのうち第2係合部73Fよりも前方の大部分の部位が、第2押圧部72Fとして機能する。
【0052】
第1係合部73Rと第2係合部73Fは、第1押圧部72Rと第2押圧部72Fを連結するための連結部74を構成する。第1部品71Rと第2部品71Fは、第1係合部73Rと第2係合部73Fとの係合によって、上下方向(第1押圧部72Rと第2押圧部72Fが弾性変形する方向)へ相対変位し得るように連結されている。したがって、第1押圧部72Rが弾性変形したときに、第1押圧部72Rの弾性変形の影響が第2押圧部72Fに及ぶことはない。第2押圧部72Fが弾性変形したときに、第2押圧部72Fの弾性変形の影響が第1押圧部72Rに及ぶことはない。
【0053】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1,2では、第1押圧部と第2押圧部を連結部で連結したが、第1押圧部と第2押圧部を連結しない形態としてもよい。
【0054】
上記実施例1,2では、可動側導通部材が、銅、アルミなどの金属製の板状部材であるが、可動側導通部材は、金属製の線状部材または棒状部材でもよく、銅、アルミなどの金属箔、カーボン粉末、カーボンナノチューブなどからなり、押圧部材に塗布される導電材であってもよい。
上記実施例1,2では、押圧部材はゴム製であったが、押圧部材はゴム製に限らず、合成樹脂製であってもよい。
上記実施例1,2では、第1導体と第2導体は電線の単芯線であったが、第1導体と第2導体、は単芯線に限らず、撚り線を超音波溶着やレーザ溶着などで固めて構成されるものであっても良く、金属板材からなるバスバーであってもよい。
上記実施例1,2において、可動側第1導通部と可動側第2導通部の少なくとも一方に突起状の接点部を形成してもよい。
上記実施例1,2において、複数の可動側導通部材を1つの第1押圧部と一体化させてもよい。
上記実施例1,2において、複数の可動側導通部材同士を連結部を介して一体化させてもよい。
上記実施例1,2において、複数の固定側導通部材同士を連結部を介して一体化させてもよい。
上記実施例1,2では、可動側導通部材と固定側導通部材を導体に接触させるが、固定側導通部材を設けず、可動側導通部材のみを導体に接触させてもよく、可動側導通部材を設けず、固定側導通部材のみを導体に接触させてもよい。
上記実施例1,2において、固定側導通部材に替えて、押圧部材と可動側導通部材を設け、一対の押圧部材の弾力によって、一対の可動側導通部材を2本の導体に弾性的に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0055】
F …雌側コネクタ
M …雄側コネクタ
10…雌側ハウジング
11…ハウジング本体
12…キャビティ
13…接続部(支持部)
14…位置決め部
15…溝部
16…ガイド部
17…挿通部
18…保持空間
19…抜止め突起
20…フロント部材
21…前壁部
22…周壁部
23…ロックアーム
24…挿入孔
25…押圧部材
26F…第2押圧部
26R…第1押圧部
27…連結部
30…可動側導通部材(導通部材、可動側の導通部材)
31F…第2導通部
31R…第1導通部
32…連結用導通部
35…固定側導通部材(導通部材、固定側の導通部材)
36…取付部
37F…第2接点部
37R…第1接点部
40…第1電線モジュール
41…第1被覆電線
42…第1導体(一方の導体)
43…第1絶縁被覆
44…第1接続端部
45…第1保持部材
46…係止突起
50…雄側ハウジング
51…ハウジング部
52…フード部
53…ロック部
55…第2電線モジュール
56…第2被覆電線
57…第2導体(他方の導体)
58…第2絶縁被覆
59…第2接続端部
60…第2保持部材
70…押圧部材
71F…第2部品
71R…第1部品
72F…第2押圧部
72R…第1押圧部
73F…第2係合部
73R…第1係合部
74…連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9