(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電動オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20231011BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F04C2/10 341D
F04C15/00 C
(21)【出願番号】P 2020039902
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孔二
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 友三
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-9790(JP,A)
【文献】特開2014-122629(JP,A)
【文献】特開2019-44679(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173827(WO,A1)
【文献】実開平5-77590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の軸方向に延びるシャフトを有するモータ部と、
前記シャフトに連結されるポンプ部と、
前記モータ部の回転を制御するインバータ部と、
前記モータ部、前記ポンプ部および前記インバータ部を収容するハウジングと、を備え、
前記モータ部は、ステータを有し、
前記ポンプ部は、
インナーロータと、
前記インナーロータを径方向外側から囲うアウターロータと、を有し、
前記ハウジングは、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記シャフトの外周面に接触するオイルシールと、
前記ポンプ部を収容するポンプ室と、
軸方向において前記ポンプ室と前記ステータとの間に配置され、前記オイルシールを収容するオイルシール室と、
前記ポンプ室と前記オイルシール室とを連通する貫通孔と、を有し、
前記ポンプ室は、
径方向内側を向く内周壁と、
前記内周壁の軸方向一方側の端部に繋がり、軸方向他方側を向く底壁と、
前記底壁から軸方向一方側に窪み、前記インナーロータと前記アウターロータとの径方向の隙間に軸方向一方側から対向する溝と、
前記溝の径方向内端部に位置し、径方向外側を向く溝内壁と、
前記溝内壁から径方向内側に窪む凹部と、を有し、
前記貫通孔は、少なくとも一部が前記凹部に開口する、
電動オイルポンプ。
【請求項2】
前記凹部は、軸方向一方側へ向かうに従い径方向外側に位置する傾斜面を有し、
前記貫通孔は、前記傾斜面に開口する部分を有する、
請求項1に記載の電動オイルポンプ。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記ポンプ室にオイルを吸入する吸入口と、
前記ポンプ室からオイルを吐出する吐出口と、を有し、
前記貫通孔のうち前記凹部に開口する部分と、前記吸入口とが、軸方向から見て重なる、
請求項1または2に記載の電動オイルポンプ。
【請求項4】
前記溝は、オイルを吸入する吸入溝である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項5】
前記溝は、周方向に延び、
前記溝は、
軸方向の溝深さが周方向において一定である第1溝部と、
前記第1溝部と周方向に接続され、周方向において前記第1溝部から離れるに従い軸方向の溝深さが浅くなる第2溝部と、を有し、
前記凹部は、前記溝内壁のうち前記第1溝部に位置する部分に配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項6】
前記凹部は、軸方向に延びる溝状であり、前記底壁に開口する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項7】
前記凹部は、表面が鋳肌である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項8】
前記貫通孔を延長した仮想線が、前記内周壁と交わらない、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電動オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動オイルポンプは、モータ部とポンプ部との間にオイルシールを設けることにより、ポンプ部からモータ部へのオイルの浸入を抑制している。特許文献1の流体ポンプは、ポンプハウジングと、モータハウジングと、を備える。ポンプハウジングは、オイルシールが配置される空間とポンプ室とを連通する貫通孔を有する。貫通孔にはオイルが流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、オイルシールの直径を小さくしたり、電動オイルポンプを軸方向に小型化することへの要求にともない、オイルシールが配置される空間(オイルシール室)とポンプ室とを繋ぐ貫通孔を、ドリル等の加工装置で穴あけ加工することが困難になる場合がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、オイルシール室とポンプ室とを繋ぐ貫通孔を加工しやすい電動オイルポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動オイルポンプの一つの態様は、中心軸の軸方向に延びるシャフトを有するモータ部と、前記シャフトに連結されるポンプ部と、前記モータ部の回転を制御するインバータ部と、前記モータ部、前記ポンプ部および前記インバータ部を収容するハウジングと、を備える。前記モータ部は、ステータを有する。前記ポンプ部は、インナーロータと、前記インナーロータを径方向外側から囲うアウターロータと、を有する。前記ハウジングは、前記中心軸を中心とする環状であり、前記シャフトの外周面に接触するオイルシールと、前記ポンプ部を収容するポンプ室と、軸方向において前記ポンプ室と前記ステータとの間に配置され、前記オイルシールを収容するオイルシール室と、前記ポンプ室と前記オイルシール室とを連通する貫通孔と、を有する。前記ポンプ室は、径方向内側を向く内周壁と、前記内周壁の軸方向一方側の端部に繋がり、軸方向他方側を向く底壁と、前記底壁から軸方向一方側に窪み、前記インナーロータと前記アウターロータとの径方向の隙間に軸方向一方側から対向する溝と、前記溝の径方向内端部に位置し、径方向外側を向く溝内壁と、前記溝内壁から径方向内側に窪む凹部と、を有する。前記貫通孔は、少なくとも一部が前記凹部に開口する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、オイルシール室とポンプ室とを繋ぐ貫通孔を加工しやすい電動オイルポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動オイルポンプを示す断面図である。
【
図2】
図2は、ハウジング本体部の一部を拡大して示す断面図であり、ドリル等の加工装置による貫通孔の穴あけ加工を説明する図である。
【
図3】
図3は、ハウジング本体部の一部を拡大して示す下面図である。
【
図4】
図4は、ハウジング本体部の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の電動オイルポンプ10について、図面を参照して説明する。電動オイルポンプ10は、例えば図示しない車両の駆動装置に搭載される。つまり電動オイルポンプ10は、車両に搭載される。
図1に示すように、電動オイルポンプ10は、モータ部20と、ポンプ部30と、インバータ部50と、ハウジング40と、図示しないコネクタ部と、を備える。
【0010】
モータ部20は、中心軸Jを中心とするシャフト22を有し、中心軸JはZ軸方向に沿って延びる。以下の説明においては、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。軸方向は、中心軸Jが延びる方向である。本実施形態において、モータ部20の軸方向位置と、インバータ部50の軸方向位置とは、互いに異なる。つまりモータ部20とインバータ部50とは、軸方向において互いに異なる位置に配置される。軸方向のうち、モータ部20からインバータ部50へ向かう方向を軸方向一方側(+Z側)と呼び、インバータ部50からモータ部20へ向かう方向を軸方向他方側(-Z側)と呼ぶ。
【0011】
中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Jに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Jから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本実施形態において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。
【0012】
モータ部20は、ロータ21と、ステータ26と、複数のベアリング11,12と、を有する。ロータ21は、シャフト22と、ロータコア23と、マグネット24と、を有する。
【0013】
シャフト22は、軸方向に延びる。シャフト22は、中心軸Jを中心として回転する。シャフト22は、複数のベアリング11,12により中心軸J回りに回転自在に支持される。つまり複数のベアリング11,12は、シャフト22を回転自在に支持する。複数のベアリング11,12は、例えばボールベアリング等である。複数のベアリング11,12のうち、第1のベアリング11は、シャフト22のうちロータコア23よりも軸方向他方側に位置する部分を支持する。複数のベアリング11,12のうち、第2のベアリング12は、シャフト22のうちロータコア23よりも軸方向一方側に位置する部分を支持する。
【0014】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、中心軸Jを中心とする環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0015】
マグネット24は、ロータコア23の径方向外端部に配置される。マグネット24は、複数設けられる。複数のマグネット24は、ロータコア23の径方向外端部に、互いに周方向に間隔をあけて配置される。なおマグネット24は、例えば、1つの円筒状のリングマグネットでもよい。
【0016】
ステータ26は、ロータ21の径方向外側に配置され、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向する。つまりステータ26は、ロータ21と径方向に対向する。ステータ26は、周方向の全周にわたって、ロータ21を径方向外側から囲う。ステータ26は、ステータコア27と、インシュレータ28と、複数のコイル29と、を有する。
【0017】
ステータコア27は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア27は、ロータ21の径方向外側に配置されて、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア27は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0018】
ステータコア27は、コアバックと、複数のティースと、を有する。コアバックは、中心軸Jを中心とする環状である。コアバックは、軸方向に延びる筒状である。コアバックの径方向外側面は、ハウジング40の後述するハウジング本体部41の内周面と固定される。コアバックは、ハウジング本体部41内に嵌合する。ティースは、コアバックの径方向内側面から径方向内側に突出する。ティースは、板状であり、一対の板面が周方向を向く。複数のティースは、コアバックの径方向内側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0019】
インシュレータ28は、ステータコア27に装着される。インシュレータ28は、ティースを覆う部分を有する。インシュレータ28は、絶縁材料により構成される。インシュレータ28は、例えば樹脂製である。
【0020】
複数のコイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に取り付けられる。つまり複数のコイル29は、ステータコア27に取り付けられる。複数のコイル29は、各ティースに、インシュレータ28を介して導線が巻き回されることによりそれぞれ構成される。コイル29は、後述するインバータ基板55と電気的に接続される。
【0021】
ポンプ部30は、モータ部20によって駆動される。ポンプ部30は、ステータ26よりも軸方向他方側に配置される。ポンプ部30は、シャフト22の軸方向他方側の端部と接続される。つまりポンプ部30は、シャフト22に連結される。本実施形態ではポンプ部30が、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ部30は、インナーロータ30aと、インナーロータ30aの径方向外側に位置するアウターロータ30bと、を有する。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ30aは、シャフト22の軸方向他方側の端部に固定される。アウターロータ30bは、インナーロータ30aを径方向外側から囲う。モータ部20は、インナーロータ30aを回転させてポンプ部30を駆動する。
【0022】
インバータ部50は、モータ部20と電気的に接続される。インバータ部50は、モータ部20の回転を制御する。インバータ部50は、インバータ基板55と、図示しないコンデンサと、を有する。インバータ基板55は、板状であり、一対の板面が軸方向を向く。インバータ基板55は、ステータ26の軸方向一方側に位置する。インバータ基板55は、ハウジング40の後述するハウジング本体部41の複数の柱部41fにより軸方向他方側から支持され、各柱部41fにネジ73でそれぞれ固定される。特に図示しないが、コンデンサは、インバータ基板55の軸方向他方側の面に取り付けられる電子部品である。コンデンサは、インバータ基板55から軸方向他方側に突出する。
【0023】
ハウジング40は、モータ部20、ポンプ部30およびインバータ部50を収容する。ハウジング40は、ハウジング本体部41と、ポンプカバー44と、ベアリングホルダ42と、インバータカバー43と、を有する。
【0024】
ハウジング本体部41は、金属製である。ハウジング本体部41は、少なくともモータ部20を収容する。本実施形態ではハウジング本体部41が、モータ部20およびポンプ部30を収容する。ハウジング本体部41は、筒状であり、軸方向に延びる。ハウジング本体部41は、有底筒状である。
【0025】
ハウジング本体部41は、周壁部41aと、第1フランジ部41jと、柱部41fと、底壁部41bと、ベアリング保持筒部41hと、オイルシール41gと、ポンプ室46と、オイルシール室41iと、貫通孔47と、を有する。つまりハウジング40は、オイルシール41gと、ポンプ室46と、オイルシール室41iと、貫通孔47と、を有する。
【0026】
周壁部41aは、中心軸Jを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。周壁部41aは、内部にステータコア27が嵌合する。第1フランジ部41jは、周壁部41aの軸方向一方側の端部から径方向外側に拡がる。柱部41fは、周壁部41aの軸方向一方側の端部に配置され、軸方向に延びる。柱部41fは、周壁部41aの軸方向一方側の開口部内に配置される。柱部41fは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。複数の柱部41fは、軸方向から見てインバータ基板55と重なる。各柱部41fの軸方向一方側を向く端面は、インバータ基板55の軸方向他方側を向く板面と接触する。
【0027】
図2に示すように、底壁部41bは、周壁部41aの軸方向他方側の端部と接続される。底壁部41bは、第1円環板部41cと、筒壁部41dと、第2円環板部41eと、を有する。第1円環板部41cは、中心軸Jを中心とする円環板状であり、一対の板面が軸方向を向く。第1円環板部41cは、外周部が周壁部41aの軸方向他方側の端部と接続される。筒壁部41dは、周壁部41aの径方向内側に配置される。筒壁部41dは、中心軸Jを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。筒壁部41dは、軸方向他方側の端部が第1円環板部41cの内周部と接続される。第2円環板部41eは、中心軸Jを中心とする円環板状であり、一対の板面が軸方向を向く。第2円環板部41eは、第1円環板部41cよりも軸方向一方側に位置する。第2円環板部41eは、外周部が筒壁部41dの軸方向一方側の端部と接続される。
【0028】
ベアリング保持筒部41hは、中心軸Jを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。ベアリング保持筒部41hは、第2円環板部41eの軸方向一方側を向く板面から軸方向一方側に突出する。
図1に示すように、ベアリング保持筒部41hは、第1のベアリング11を保持する。第1のベアリング11は、ベアリング保持筒部41h内に嵌合する。第1のベアリング11は、ベアリング保持筒部41h内の軸方向一方側の部分に配置される。
【0029】
オイルシール41gは、中心軸Jを中心とする環状である。オイルシール41gは、ベアリング保持筒部41h内に配置され、第1のベアリング11よりも軸方向他方側に位置する。オイルシール41gは、ベアリング保持筒部41h内の軸方向他方側の部分に配置される。オイルシール41gの外周部は、ベアリング保持筒部41hの内周面と全周にわたって接触する。オイルシール41gの内周部は、シャフト22の外周面と全周にわたって接触する。つまりオイルシール41gは、シャフト22の外周面に接触する。
【0030】
ポンプ室46は、ハウジング本体部41の軸方向他方側の端部に配置される。ポンプ室46は、ハウジング本体部41の軸方向他方側を向く端面から軸方向一方側に窪む有底の穴状である。本実施形態ではポンプ室46が、中心軸Jを中心とする円穴状である。ポンプ室46には、ポンプ部30が配置される。ポンプ室46は、ポンプ部30を収容する。ポンプ室46の上記以外の構成については、別途後述する。
【0031】
オイルシール室41iは、ベアリング保持筒部41hの内周面のうち軸方向他方側の部分と、第2円環板部41eの軸方向一方側を向く板面のうち内周部と、により構成される。オイルシール室41iは、中心軸Jを中心とする円筒状の室である。オイルシール室41iは、ステータ26よりも軸方向他方側に配置される。オイルシール室41iは、ポンプ室46よりも軸方向一方側に配置される。すなわちオイルシール室41iは、軸方向においてポンプ室46とステータ26との間に配置される。オイルシール室41iは、オイルシール41gを収容する。
【0032】
図2に示すように、ポンプ室46は、筒壁部41dの内周面と、第2円環板部41eの軸方向他方側を向く板面と、により構成される。ポンプ室46の軸方向他方側の開口は、ポンプカバー44により塞がれる。
図2から
図4に示すように、ポンプ室46は、内周壁46aと、底壁46bと、溝46c,46dと、溝内壁46eと、凹部46fと、を有する。
【0033】
内周壁46aは、筒壁部41dの内周面により構成される。内周壁46aは、径方向内側を向く。
図1に示すように、内周壁46aは、アウターロータ30bの外周面と接触する。内周壁46aは、アウターロータ30bの外周面と固定される。底壁46bは、第2円環板部41eの軸方向他方側を向く板面により構成される。底壁46bは、内周壁46aの軸方向一方側の端部に繋がり、軸方向他方側を向く。
【0034】
図2から
図4に示すように、一対の溝46c,46dのうち一方の溝46cは、底壁46bから軸方向一方側に窪む。溝46cは、ポンプ室46の軸方向一方側の端部に位置し、ポンプ室46の一部を構成する。溝46cは、オイルシール室41iよりも軸方向他方側に配置される。溝46cは、オイルシール室41iよりも径方向外側に配置される。溝46cは、周方向に沿って円弧状に延びる。つまり溝46cは、周方向に延びる。
図3に示すように、溝46cは、周方向の長さが中心軸Jを中心とする中心角で180°未満である。
図1に示すように、溝46cは、インナーロータ30aとアウターロータ30bとの径方向の隙間に軸方向一方側から対向する。溝46cは、オイルを吸入する吸入溝である。インナーロータ30aとアウターロータ30bとが相対回転し、ポンプ部30が駆動されることにより、溝46cには負圧が作用する。
【0035】
図3および
図4に示すように、溝46cは、第1溝部46gと、第2溝部46hと、を有する。第1溝部46gと第2溝部46hとは、周方向に互いに接続される。以下の説明では、周方向のうち、溝46cにおいて第1溝部46gから第2溝部46hへ向かう方向を周方向一方側θ1と呼び、溝46cにおいて第2溝部46hから第1溝部46gへ向かう方向を周方向他方側θ2と呼ぶ。第1溝部46gは、溝46cのうち周方向他方側θ2の部分に配置される。第2溝部46hは、溝46cのうち周方向一方側θ1の部分に配置される。溝46cは、周方向一方側θ1へ向かうに従い、径方向の長さつまり溝幅が大きくなる。
【0036】
第1溝部46gは、底壁46bから軸方向一方側へ窪む深さが、周方向に沿って一定である。つまり第1溝部46gは、軸方向の溝深さが周方向において一定である。第1溝部46gは、周方向一方側θ1へ向かうに従い径方向の長さつまり溝幅が大きくなる。第2溝部46hは、第1溝部46gと周方向に接続され、周方向において第1溝部46gから離れるに従い軸方向の溝深さが浅くなる。つまり第2溝部46hは、軸方向の溝深さが周方向一方側θ1へ向かうに従い小さくなる。第2溝部46hの周方向他方側θ2の端部の溝深さは、第1溝部46gの溝深さと同じである。第2溝部46hは、周方向一方側θ1へ向かうに従い溝幅が大きくなる。
【0037】
図2から
図4に示すように、一対の溝46c,46dのうち他方の溝46dは、底壁46bから軸方向一方側に窪む。溝46dは、ポンプ室46の軸方向一方側の端部に位置し、ポンプ室46の一部を構成する。溝46dは、オイルシール室41iよりも軸方向他方側に配置される。溝46dは、オイルシール室41iよりも径方向外側に配置される。溝46dは、周方向に沿って円弧状に延びる。つまり溝46dは、周方向に延びる。他方の溝46dは、周方向において一方の溝46cとは異なる位置に配置される。
図3に示すように、溝46dは、周方向の長さが中心軸Jを中心とする中心角で180°未満である。
図1に示すように、溝46dは、インナーロータ30aとアウターロータ30bとの径方向の隙間に軸方向一方側から対向する。溝46dは、オイルを吐出する吐出溝である。インナーロータ30aとアウターロータ30bとが相対回転し、ポンプ部30が駆動されることにより、溝46dには正圧が作用する。
【0038】
図3および
図4に示すように、溝46dは、第3溝部46iと、第4溝部46jと、を有する。第3溝部46iと第4溝部46jとは、周方向に互いに接続される。周方向のうち、溝46dにおいて第3溝部46iから第4溝部46jへ向かう方向が周方向他方側θ2であり、溝46dにおいて第4溝部46jから第3溝部46iへ向かう方向が周方向一方側θ1である。第3溝部46iは、溝46dのうち周方向一方側θ1の部分に配置される。第4溝部46jは、溝46dのうち周方向他方側θ2の部分に配置される。溝46dは、周方向他方側θ2へ向かうに従い、径方向の長さつまり溝幅が大きくなる。
【0039】
第3溝部46iは、底壁46bから軸方向一方側へ窪む深さが、周方向に沿って一定である。つまり第3溝部46iは、軸方向の溝深さが周方向において一定である。第3溝部46iは、周方向他方側θ2へ向かうに従い径方向の長さつまり溝幅が大きくなる。第4溝部46jは、第3溝部46iと周方向に接続され、周方向において第3溝部46iから離れるに従い軸方向の溝深さが浅くなる。つまり第4溝部46jは、軸方向の溝深さが周方向他方側θ2へ向かうに従い小さくなる。第4溝部46jの周方向一方側θ1の端部の溝深さは、第3溝部46iの溝深さと同じである。第4溝部46jは、周方向他方側θ2へ向かうに従い溝幅が大きくなる。
【0040】
図2から
図4に示すように、溝内壁46eは、一方の溝46cの溝幅方向つまり径方向を向く一対の周壁(側壁)のうち、径方向内側に位置する周壁により構成される。すなわち、溝内壁46eは、溝46cの径方向内端部に位置し、径方向外側を向く。溝内壁46eは、オイルシール室41iよりも軸方向他方側に位置する。溝内壁46eは、オイルシール室41iよりも径方向外側に位置する。
【0041】
凹部46fは、溝内壁46eから径方向内側に窪む凹状である。凹部46fは、軸方向において溝内壁46eの少なくとも一部に配置される。本実施形態では凹部46fが、溝内壁46eに、溝内壁46eの軸方向の全長にわたって配置される。凹部46fは、軸方向に延びる溝状であり、底壁46bに開口する。凹部46fは、オイルシール室41iよりも軸方向他方側に位置する。凹部46fは、オイルシール室41iよりも径方向外側に位置する。凹部46fの上記以外の構成については、別途後述する。
【0042】
図1に示すように、貫通孔47は、ポンプ室46とオイルシール室41iとを連通する。貫通孔47は、オイルシール室41iに溜ったオイルをポンプ室46へ流す機能を有する。貫通孔47は、円孔状であり、軸方向他方側へ向かうに従い径方向外側に位置する。つまり貫通孔47は、中心軸Jに対して傾斜して延びる。
図2から
図4に示すように、貫通孔47は、少なくとも一部が凹部46fに開口する。貫通孔47は、軸方向他方側の端部が凹部46fに開口する。貫通孔47は、径方向外端部が凹部46fに開口する。貫通孔47は、軸方向一方側の端部がオイルシール室41iに開口する。貫通孔47は、径方向内端部がオイルシール室41iに開口する。
【0043】
本実施形態によれば、
図2に示すように、ドリル等の加工装置(以下、ドリルDと呼ぶ場合がある)によりハウジング40に貫通孔47を穴あけ加工する際に、凹部46fにドリルDの刃先を当てることで、刃先をずれにくくすることができる。これにより、貫通孔47を所定の位置に簡単にかつ安定して加工できる。したがって、電動オイルポンプ10の生産性を向上できる。
【0044】
また本実施形態では、吸入溝である溝46cの溝内壁46eの凹部46fに貫通孔47が開口するので、オイルシール室41iに溜ったオイルが、貫通孔47を通してポンプ室46へ安定して吸入される。
【0045】
また本実施形態では、凹部46fが、軸方向に延びる溝状であり、底壁46bに開口するので、ドリルDの刃先を凹部46f内に干渉なく進入させやすい。また凹部46fが軸方向他方側へ向けて底壁46bに開口するので、ハウジング40を鋳造する際に凹部46fを成形しやすい。
【0046】
凹部46fは、表面が鋳肌である。すなわち本実施形態では、ハウジング40を鋳造する際に凹部46fが成形される。このため、製造工程を増やすことなく凹部46fを設けることができ、かつ貫通孔47を安定して加工できる。
【0047】
図2および
図4に示すように、凹部46fは、傾斜面46kを有する。傾斜面46kは、凹部46fの軸方向一方側の端部に配置される。傾斜面46kは、軸方向一方側へ向かうに従い径方向外側に位置する。傾斜面46kは、径方向外側かつ軸方向他方側を向く。本実施形態では傾斜面46kが、凹曲面状である。貫通孔47は、傾斜面46kに開口する部分を有する。貫通孔47は、軸方向他方側の端部が傾斜面46kに開口する。貫通孔47は、径方向外端部が傾斜面46kに開口する。本実施形態では、ドリルDの刃先を傾斜面46kに正対させて、貫通孔47を穴あけ加工することができる。このためドリルDの刃先をよりずれにくくして、貫通孔47を所定の位置に精度よく加工できる。
【0048】
図3および
図4に示すように、凹部46fは、溝内壁46eのうち第1溝部46gに位置する部分に配置される。具体的に凹部46fは、溝内壁46eのうち第1溝部46gの周方向一方側θ1の端部に位置する部分に開口する。本実施形態では、溝内壁46eのうち軸方向の溝深さが一定とされた第1溝部46gに位置する部分に凹部46fが設けられるので、凹部46fを安定して作りやすい。
【0049】
図2に示すように、貫通孔47をポンプ室46側へ向けて延ばした延長上に、内周壁46aは位置していない。具体的に、貫通孔47を径方向外側かつ軸方向他方側へ向けて延ばした仮想線VLは、内周壁46aと同じ径方向位置では、内周壁46aよりも軸方向他方側に配置される。つまり、貫通孔47を延長した仮想線VLは、内周壁46aと交わらない。本実施形態によれば、ドリルDが内周壁46aを含む底壁部41bに干渉することが抑制されるため、ドリルDにより貫通孔47を簡単に加工でき、生産性が高められる。
【0050】
図1に示すように、ポンプカバー44は、ハウジング本体部41の軸方向他方側に配置される。ポンプカバー44は、ハウジング本体部41の軸方向他方側を向く端面に接触する。ポンプカバー44は、ハウジング本体部41の軸方向他方側の端部に、図示しないボルト部材により固定される。ポンプカバー44は、ポンプ部30を軸方向他方側から覆う。ポンプカバー44は、吸入口44aと、吐出口44bと、を有する。つまりハウジング40は、吸入口44aと、吐出口44bと、を有する。
【0051】
吸入口44aは、ポンプカバー44の軸方向他方側を向く面に開口する。吸入口44aは、ポンプカバー44を軸方向に貫通する。吸入口44aは、ポンプ室46と連通する。吸入口44aは、ポンプ室46にオイルを吸入する。吸入口44aは、軸方向から見て、溝46cの一部と重なる。吸入口44aは、軸方向から見て凹部46fと重なる。このため、貫通孔47のうち凹部46fに開口する部分と、吸入口44aとは、軸方向から見て重なる。本実施形態では、ポンプ室46のうち軸方向から見て吸入口44aと重なる位置に貫通孔47が開口するので、貫通孔47にポンプ室46の負圧を作用させやすい。このため、オイルシール室41iに溜ったオイルが、貫通孔47を通してポンプ室46へ安定して吸入され、排出される。
【0052】
吐出口44bは、ポンプカバー44の軸方向他方側を向く面に開口する。吐出口44bは、ポンプカバー44を軸方向に貫通する。吐出口44bは、ポンプ室46と連通する。吐出口44bは、ポンプ室46からオイルを吐出する。吐出口44bは、軸方向から見て、溝46dの一部と重なる。
【0053】
ベアリングホルダ42は、ハウジング本体部41の内部に配置される。ベアリングホルダ42は、ロータコア23の軸方向一方側に配置される。ベアリングホルダ42は、第2のベアリング12を保持する。ベアリングホルダ42は、ハウジング本体部41の軸方向一方側の端部と固定される。
【0054】
インバータカバー43は、ハウジング本体部41の軸方向一方側に配置される。インバータカバー43は、インバータ部50を軸方向一方側から覆う。インバータカバー43は、蓋部43aと、第2フランジ部43bと、を有する。蓋部43aは、インバータ基板55に軸方向一方側から対向する。第2フランジ部43bは、蓋部43aの軸方向他方側の端部から径方向外側に拡がる。第2フランジ部43bは、ハウジング本体部41の第1フランジ部41jに軸方向一方側から接触する。第1フランジ部41jと第2フランジ部43bとは、ボルト部材48により互いに固定される。
【0055】
特に図示しないが、コネクタ部は、ハウジング本体部41に取り付けられる。コネクタ部は、周壁部41aを径方向に貫通する孔部に挿入される部分と、孔部から径方向外側に突出する部分と、を有する。またコネクタ部は、樹脂部と、樹脂部に埋め込まれる配線部材と、を有する。配線部材は、インバータ基板55と接続される。コネクタ部には、ステータ26に電力を供給する図示しない外部電源等が接続される。
【0056】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0057】
前述の実施形態では、凹部46fが、軸方向に延びる溝状である例を挙げたが、これに限らない。凹部46fは、例えば、溝内壁46eから径方向内側に窪む穴状等でもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0059】
10…電動オイルポンプ、20…モータ部、22…シャフト、26…ステータ、30…ポンプ部、30a…インナーロータ、30b…アウターロータ、40…ハウジング、41g…オイルシール、41i…オイルシール室、44a…吸入口、44b…吐出口、46…ポンプ室、46a…内周壁、46b…底壁、46c…溝(吸入溝)、46e…溝内壁、46f…凹部、46g…第1溝部、46h…第2溝部、46k…傾斜面、47…貫通孔、50…インバータ部、J…中心軸、VL…仮想線