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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20231011BHJP
   B62D 25/16 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B62D35/00 Z
B62D25/16 B
B62D25/16 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020042837
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142878
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 龍太朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 基
(72)【発明者】
【氏名】大西 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 庸介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-040259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B62D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウス内への空気の流入を抑制する車体構造であって、
車輪を収容するホイールハウスと、
車体表面において前記ホイールハウスの周囲を覆うハウス外周部を有するフェンダパネルと、
前記ハウス外周部の前側に隣接するドアパネルまたは前記フェンダパネルと、
前記ハウス外周部と、当該ハウス外周部の前側に隣接する前記ドアパネルまたは前記フェンダパネルと、の間に形成され、かつ、車体側方に開口して車体内側からの空気を車体側方に排出することを許容する空気排出口と、
を有し、
前記ハウス外周部は、
前記空気排出口の後端縁から、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面部と、
前記平面部の後端縁から前記ホイールハウス内へ向けて延設されて車体側方に露出しているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度で折り曲げられた傾斜面部と、
前記傾斜面部における前記車輪の側からさらに車体内側に向けて折り曲げられた末端部と、
を有する、
車体構造。
【請求項2】
ホイールハウス内への空気の流入を抑制する車体構造であって、
車輪を収容するホイールハウスと、
車体表面において前記ホイールハウスの周囲を覆うハウス外周部を有するフェンダパネルと、
前記ハウス外周部における前記車輪の側の縁部、かつ、前記ハウス外周部における少なくとも前側の縁部、に取り付けられるハウス内取付部材と、
前記ハウス外周部と前記ハウス内取付部材との間に形成され、かつ、車体側方に開口して車体内側からの空気を車体側方に排出することを許容する空気排出口と、
を有し、
前記ハウス内取付部材は、
前記空気排出口の後端縁から、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面部と、
前記平面部の後端縁から前記ホイールハウス内へ向けて延設されているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度で折り曲げられた傾斜面部と、
を有する、
車体構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体構造であって、
前記空気排出口の後端縁から車体内側へと延設されてさらに車体前方へと延設されて、前記空気排出口から排出される空気の流れを車幅方向に吹き出す流れにする壁部、を有する、
車体構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の車体構造であって、
前記平面部は、前記空気排出口の前端縁に隣接している車体表面よりも車体外側に突出していない、
車体構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の車体構造であって、
前記空気排出口、前記平面部、及び前記傾斜面部は、前記ホイールハウスの外周に沿った円弧状とされている、
車体構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の車体構造であって、
前記平面部の径方向幅は、前記傾斜面部の径方向幅よりも狭く設定されている、
車体構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の空気抵抗を低減する車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両は、排気ガスの排出量の低減等を目的として燃費をより向上させるために、軽量化、機械的損失の低減、空気抵抗の低減等、種々の改良が施されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の車両用空力装置では、前輪のホイールハウス内における前輪の前側部に、車両前後方向に沿って移動する可動ライナ部を備えている。可動ライナ部は、車両速度が所定速度を超えた場合には車両後方側へ移動して前輪と可動ライナ部の間の隙間を小さくして、車両速度が所定速度を下回った場合には車両前方側へ移動して前輪と可動ライナ部の間の隙間を大きくする。これにより、所定速度を超えた場合にホイールハウス内への空気の流入が抑制され、前輪の側方の空気の流れを乱すことが抑制され、空気抵抗を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-186166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用空力装置の可動ライナ部は、車両前後方向の移動を案内する案内部、移動させるための駆動装置、前輪に近づいた場合に前輪に接触しないようにするストッパ等、構造が比較的複雑かつ重量増加を伴う点で、あまり好ましくない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな構造で、重量もほぼ増加させずに車輪の空気抵抗を低減することができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、ホイールハウス内への空気の流入を抑制する車体構造であって、車輪を収容するホイールハウスと、車体表面において前記ホイールハウスの周囲を覆うハウス外周部を有するフェンダパネルと、前記ハウス外周部の前側に隣接するドアパネルまたは前記フェンダパネルと、前記ハウス外周部と、当該ハウス外周部の前側に隣接する前記ドアパネルまたは前記フェンダパネルと、の間に形成され、かつ、車体側方に開口して車体内側からの空気を車体側方に排出することを許容する空気排出口と、を有する。そして前記ハウス外周部は、前記空気排出口の後端縁から、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面部と、前記平面部の後端縁から前記ホイールハウス内へ向けて延設されているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度で折り曲げられた傾斜面部と、を有する、車体構造である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、ホイールハウス内への空気の流入を抑制する車体構造であって、車輪を収容するホイールハウスと、車体表面において前記ホイールハウスの周囲を覆うハウス外周部を有するフェンダパネルと、前記ハウス外周部における前記車輪の側の縁部、かつ、前記ハウス外周部における少なくとも前側の縁部、に取り付けられるハウス内取付部材と、前記ハウス外周部と前記ハウス内取付部材との間に形成され、かつ、車体側方に開口して車体内側からの空気を車体側方に排出することを許容する空気排出口と、を有する。そして、前記ハウス内取付部材は、前記空気排出口の後端縁から、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面部と、前記平面部の後端縁から前記ホイールハウス内へ向けて延設されているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度で折り曲げられた傾斜面部と、を有する、車体構造である。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る車体構造であって、前記空気排出口の後端縁から車体内側へと延設されてさらに車体前方へと延設されて、前記空気排出口から排出される空気の流れを車幅方向に吹き出す流れにする壁部、を有する、車体構造である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明のいずれか1つに係る車体構造であって、前記平面部は、前記空気排出口の前端縁に隣接している車体表面よりも車体外側に突出していない、車体構造である。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明~第4の発明のいずれか1つに係る車体構造であって、前記空気排出口、前記平面部、及び前記傾斜面部は、前記ホイールハウスの外周に沿った円弧状とされている、車体構造である。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明~第5の発明のいずれか1つに係る車体構造であって、前記平面部の径方向幅は、前記傾斜面部の径方向幅よりも狭く設定されている、車体構造である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、車両の走行時に車体側面に沿って流れる空気(側面空気流)は、ドアパネル(またはフェンダパネル)、空気排出口、ハウス外周部の平面部、ハウス外周部の傾斜面部、を経由して車輪に至る。このとき、側面空気流(図5の符号A1を参照)によって空気排出口からは車体内側から空気が吸い出され、吸い出された空気は側面空気流とともに車体の側面に沿って流れる吸出空気流(図5の符号B1を参照)となる。従って、車体側面と側面空気流の間に吸出空気流が流れる状態となる(図5参照)。吸出空気流は、側面空気流によって空気排出口から吸い出された後、平面部に沿って流れ、車体内側に向けて折り曲げられた傾斜面部からは離間(剥離)して流れ、側面空気流がホイールハウス内に流れ込むことを抑制する(図5参照)。これにより、よりシンプルな構造で、重量もほぼ増加させずに車輪の空気抵抗を低減することができる。
【0014】
第2発明では、ハウス外周部の車輪の側の縁部、かつ、ハウス外周部の少なくとも前側の縁部、にハウス内取付部材(例えばアーチモール)を有する。そして、空気排出口はハウス内取付部材の前側に設けられ、平面部と傾斜面部がホイールハウス取付部材に設けられている。従って、第1の発明と同様、吸出空気流は、側面空気流によって空気排出口から吸い出された後、平面部に沿って流れ、車体内側に向けて折り曲げられた傾斜面部からは離間(剥離)して流れ、側面空気流がホイールハウス内に流れ込むことを抑制する(図5参照)。これにより、よりシンプルな構造で、重量もほぼ増加させずに車輪の空気抵抗を低減することができる。
【0015】
第3の発明によれば、空気排出口から排出される吸出空気流を、車幅方向に吹き出す流れにすることで、より適切に、吸出空気流を傾斜面部から離間(剥離)させることができる。また、シンプルな構造にて空気排出口を容易にかつ適切に形成することができる。
【0016】
第4の発明によれば、空気排出口からの吸出空気流を、車体の側面と側面空気流との間に、適切に流すことができる。従って、より効果的に、側面空気流がホイールハウス内に流れ込むことを抑制することができる。
【0017】
第5の発明によれば、空気排出口、平面部、傾斜面部、を適切な範囲に配置して、より広い範囲で車輪の空気抵抗を低減することができる。
【0018】
第6の発明によれば、空気排出口からの吸出空気流を、より効率よく傾斜面部から離間(剥離)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の車体構造を適用した車両の左側面を示す図である。
図2図1に示す左後輪の周囲の拡大図であり、ハウス外周部の前側に空気排出口を設け、ハウス外周部に平面部と傾斜面部とを設けた、第1の実施の形態の車体構造を説明する図である。
図3図2の斜視図である。
図4図2におけるIV-IV断面図である。
図5】本発明の車体構造によって、走行中の車両の車体側面を流れる側面空気流が、空気排出口からの吸出空気流を発生させ、吸出空気流によって側面空気流がホイールハウス内に流れ込むことが抑制される様子を説明する図である。
図6】2ドアのタイプの車両等において、ハウス外周部の前側にドアパネルでなくフェンダパネルが配置されている、第2の実施の形態の車体構造を説明する図である。
図7】ハウス外周部の車輪の側にハウス内取付部材を取り付け、ハウス内取付部材の前側に空気排出口を設け、ハウス内取付部材に平面部と傾斜面部とを設けた、第3の実施の形態の車体構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。なお、図中に前、後、上、下、左、右が記載されている場合、車両1から見て、前方向、後方向、上方向、下方向、左方向、右方向を示す。
【0021】
●[車両1の外観(図1)]
まず図1を用いて、車両1の外観について説明する。図1に示すように、車両1の外側から見て(車両1の左側から見て)、車両1は、バンパ11、12、フェンダパネル21、51、ドアパネル31、32、ホイールハウス41A、42A、車輪41、42、ルーフ61、ピラー62、63、64、65等を有している。車両1は、図示省略したシャーシフレームを有しており、当該シャーシフレームに、バンパ11、12、フェンダパネル21、51、ピラー62~65が接続されている。そしてルーフ61は、ピラー62~65に接続されている。またフェンダパネル21、51は、ホイールハウス41A、42Aの周囲を覆うハウス外周部22、52を有している。
【0022】
バンパ11、フェンダパネル21、ドアパネル31は、図示省略したシャーシフレームに取り付けられ、かつ、ホイールハウス41Aの周囲に取り付けられている。ホイールハウス41A内には車輪41が収容されている。そしてホイールハウス41Aの外周部には、フェンダパネル21の一部であってホイールハウス41Aの周囲(車体前方側の一部を含む周囲)を囲むように円弧状に形成されたハウス外周部22が設けられている。
【0023】
同様に、バンパ12、フェンダパネル51、ドアパネル32は、図示省略したシャーシフレームに取り付けられ、かつ、ホイールハウス42Aの周囲に取り付けられている。ホイールハウス42A内には車輪42が収容されている。そしてホイールハウス42Aの外周部には、フェンダパネル51の一部であってホイールハウス42Aの周囲(車体前方側の一部を含む周囲)を囲むように円弧状のハウス外周部52が設けられている。
【0024】
車両1の走行中には、種々の空気流が車両1の表面に沿って前方から後方に流れて空気抵抗を発生させる。例えば走行中の車両1の左側面には、図1に示すように、車輪41及び車輪42を通る側面空気流A1や、車輪41及び車輪42を通らない側面空気流A2など、種々の空気流がある。特に、車輪41及び車輪42を通る側面空気流A1は、回転している車輪41、42の前方に発生する負圧によって、車輪41、42の前方側のホイールハウス41A、42A内に流れ込んで車輪41、42と干渉して比較的大きな空気抵抗を発生させる。本発明の、車体構造は、図1中における側面空気流A1によって車輪41や車輪42にて発生する空気抵抗をより抑制(低減)させる。以下、図1に示す車輪42の周囲の車体構造を例として説明する。
【0025】
●[第1の実施の形態の車体構造(図2図5)]
次に図2図5を用いて、車輪42の周囲の外観や車体構造等における第1の実施の形態について説明する。図2は、図1における車輪42の周囲の拡大図であり、図3は車輪42の周囲の斜視図であり、図4図2におけるIV-IV断面図である。第1の実施の形態の車体構造は、図2に示すように、ホイールハウス42A、ハウス外周部52を有するフェンダパネル51、ハウス外周部52の前側に隣接するドアパネル32、ハウス外周部52とドアパネル32との間に形成された空気排出口58等を有する。
【0026】
図4に示すように、ドアパネル32は、ドアアウタパネル32Pとドアインナパネル32Qにて構成されている。またハウス外周部52は、ハウス外周部アウタパネル52Pとハウス外周部インナパネル52Qにて構成されている。そして空気排出口58は、車体内側1Kと車体の外側の空間を連通している。
【0027】
図2及び図3に示すように、車両1の外側から見て、フェンダパネル51は、車体表面においてホイールハウス42Aの周囲を覆う円弧状のハウス外周部52を有している。なお、ホイールハウス42Aは、車輪42を収容する空洞部である。車両1の外側から見て、ハウス外周部52の前側には、ドアパネル32が隣接して設けられている。なお、「ハウス外周部52の前側」とは、少なくとも図2に示す車輪42の回転軸線42Jよりも前側を指す。
【0028】
また、図2図4に示すように、ハウス外周部52と、当該ハウス外周部52の前側に隣接するドアパネル32と、の間には空気排出口58が形成されている。空気排出口58は、車体側方に開口して車体内側1K(図4参照)からの空気を車体側方に排出することを許容する。つまり、空気排出口58は、車体内側1Kと車体側方空間(車体の外側の空間)とを連通している。なお、空気排出口58は、ハウス外周部52の前側の少なくとも一部に設けられている。
【0029】
また、図2図4に示すように、ハウス外周部52は、平面部52Mと傾斜面部52Nとを有している。平面部52Mは、空気排出口58の後端縁52Fから、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面状の面である。傾斜面部52Nは、平面部52Mの後端縁52MFからホイールハウス42A内へ向けて延設されているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度θ1(図4参照)で折り曲げられた円錐面状の面である。また図4に示すように、傾斜面部52Nにおける車輪42の側は、傾斜面部52Nからさらに車体内側に向けて折り曲げられた末端部52Tが形成されている。
【0030】
また図4に示すように、空気排出口58から車体内側には、前側に向かって凹形状となる壁部52Hが設けられている。壁部52Hは、空気排出口58の後端縁52Fから車体内側1Kへと延設され、さらに車体前方へと延設されている。壁部52Hは、空気排出口58の後端縁52Fに沿って設けられている。図5に示すように、車体内側1K内の空気は、側面空気流A1によって空気排出口58から吸い出される際、壁部52Hによって、車幅方向に吹き出す吸出空気流B1となる。
【0031】
また図4に示すように、空気排出口58の正面となるAA方向から空気排出口58を見た場合、空気排出口58の奥には壁部52Hが見えるが、壁部52Hの奥の車体内側1Kが見えないようにされている。これにより、比較的大きな隙間である空気排出口58の見栄えが悪くなることを防止している。
【0032】
また図4に示すように、平面部52Mは、空気排出口58の前端縁32Fに隣接している車体表面(図4の場合、前端縁32Fに隣接しているドアパネル32の車体外側の面)よりも車体外側に突出していない面である。図4に示す例では、平面部52Mは、前端縁32Fに隣接している車体表面(図4の例ではドアパネル32の車体外側の面)と略面一となるように配置(同一の仮想平面上に配置)されているが、当該車体表面よりも少し車体内側に配置されていてもよい。
【0033】
また図2に示すように、空気排出口58、平面部52M、傾斜面部52Nは、ホイールハウス42Aの外周に沿った円弧状とされている。また図2図4に示すように、平面部52Mの径方向幅L2(平面部52Mにおける車輪42の径方向の幅)は、傾斜面部52Nの径方向幅L3(傾斜面部52Nにおける車輪42の径方向の幅)よりも狭く設定(径方向幅L2<径方向幅L3に設定)されている。また図2図4に示すように、空気排出口58の径方向幅L1(空気排出口58における車輪42の径方向の幅)は、平面部52Mの径方向幅L2よりも狭く設定(径方向幅L1<径方向幅L2に設定)されている。
【0034】
●[車両1の走行時における側面空気流A1の流れ(図4図5)]
図5は、車両1が走行時の場合において、上述した第1の実施の形態の車体構造に対する側面空気流A1(図1参照)の流れを実線にて示している。また図5では、側面空気流A1によって、車体内側1Kから空気排出口58を経由して吸い出された空気の流れである吸出空気流B1の流れを二点鎖線にて示している。
【0035】
上述したように、「空気排出口58の径方向幅L1(図4参照)」<「平面部52Mの径方向幅L2(図4参照)」<「傾斜面部52Nの径方向幅L3(図4参照)」となるように、径方向幅L1、L2、L3のそれぞれの寸法が設定されている。また、径方向幅L1、L2、L3は、空気排出口58から吸い出されて平面部52Mに沿って流れてきた吸出空気流B1が、傾斜面部52Nから適切に離間(剥離)するように設定されており、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって適切な値に設定されている。また、空気排出口58の径方向幅L1の上限は、見栄えが悪くならないようにするために、平面部52Mの径方向幅L2に設定されている。また、空気排出口58の径方向幅L1の下限は、吸出空気流B1における上述した流量・流速を確保するために、約2[mm]以上とすることが好ましい。
【0036】
また、図4に示す平面部52Mの径方向幅L2は、図5に示すように、吸出空気流B1が、平面部52Mに沿って流れた後、傾斜面部52Nから適切に離間(剥離)するように、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって適切な値が設定されている。同様に、図4に示す傾斜面部52Nの径方向幅L3及び所定傾斜角度θ1は、図5に示すように、吸出空気流B1が、平面部52Mに沿って流れた後、傾斜面部52Nから適切に離間(剥離)するように、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって適切な値が設定されている。
【0037】
以上の実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって、例えば、径方向幅L1は約4.5[mm]に設定され、径方向幅L2は約6[mm]に設定され、径方向幅L3は約22[mm]に設定され、所定傾斜角度θ1は約17[°]に設定されている。
【0038】
以上に説明した適切な寸法、適切な角度により、車両1の走行時において、図5に示すように、ドアパネル32に沿って流れてきた側面空気流A1は、空気排出口58を通過する際に、車体内側1K内の空気を空気排出口58から吸い出す。空気排出口58から吸い出された空気は、側面空気流A1によって平面部52Mに沿って流れる吸出空気流B1となる。つまり、平面部52Mと側面空気流A1との間に吸出空気流B1が位置している。
【0039】
そして上述した適切な寸法(径方向幅L1、L2.L3)及び適切な角度(所定傾斜角度θ1)により、吸出空気流B1は、平面部52Mに沿って流れた後、傾斜面部52Nに達すると、傾斜面部52Nから離間(剥離)して流れる。傾斜面部52Nから離間(剥離)した吸出空気流B1は、側面空気流A1を傾斜面部52Nから離間(剥離)させる。これにより、図5中に示す実線の側面空気流A1、二点鎖線の吸出空気流B1のように、車輪42の前方側のホイールハウス42A内に流入する空気の量(側面空気流A1の量、及び吸出空気流B1の量)が減少するので、空気抵抗が低減される。
【0040】
図示省略した従来の車体構造(例えば、空気排出口が非常に狭い(または無い)車体構造)では、図5中において点線にて示した[従来]のように、側面空気流は傾斜面部から離間(剥離)せずに傾斜面部に沿って流れる。そして側面空気流は、傾斜面部に沿って流れた後、車輪42の前方側のホイールハウス42A内に、より多く流入し、より大きな空気抵抗を発生させる。発明者は、この従来と比較して、第1の実施の形態にて説明した車体構造にて、空気抵抗を約1[%]低減できることを確認した。
【0041】
●[ハウス外周部52の前側に、ドアパネル32でなくフェンダパネル51が隣接している、第2の実施の形態の車体構造(図6)]
上述した第1の実施の形態の車体構造(図1図5を用いて説明した車体構造)は、4ドアのタイプの車両の例であり、ハウス外周部52の前側にドアパネル32(後ドア)が隣接している例であった。2ドアのタイプの車両では、図6に示すように、ドアパネル32(後ドア)が無く、ハウス外周部52の前側には、ドアパネル31(前ドア)が隣接しておらず、フェンダパネル51が隣接している。
【0042】
図6に示す2ドアの車両の場合、空気排出口58は、ドアパネル31の後端縁31Fの位置に設けられていない。図6に示す2ドアの車両の場合、空気排出口58は、ハウス外周部52と、当該ハウス外周部52の前側に隣接するフェンダパネル51と、の間に形成されている。その他の点については、上述した第1の実施の形態と同様であるので、第1の実施の形態と同様の効果(車輪の空気抵抗の低減)を得ることができる。
【0043】
●[ハウス外周部52の代わりにハウス内取付部材72を用いた、第3の実施の形態の車体構造(図7)]
上述した第1の実施の形態の車体構造(図1図5を用いて説明した車体構造)では、フェンダパネル51の一部であるハウス外周部52に平面部52M、傾斜面部52Nが設けられ、ハウス外周部52の前側に空気排出口58が設けられている。図7に示す第3の実施の形態の車体構造では、上述したハウス外周部52の代わりに、ハウス外周部52Bにおける車輪42の側の縁部52BF、かつ、ハウス外周部52Bにおける少なくとも前側の縁部52BF、に円弧状のハウス内取付部材72(例えばアーチモール)が取り付けられている。そしてハウス内取付部材72に平面部72M、傾斜面部72Nが設けられ、ハウス内取付部材72とハウス外周部52Bとの間に空気排出口78が設けられている。
【0044】
空気排出口78は、ハウス外周部52Bとハウス内取付部材72との間に形成され、かつ、車体側方に開口して車体内側からの空気を車体側方に排出することを許容するように、車体内側と車体の外側とを連通している。
【0045】
平面部72Mは、空気排出口78の後端縁72Fから、前後方向に対して略平行となるように後方へ向けて延設された平面状の面である。傾斜面部72Nは、平面部72Mの後端縁72MFからホイールハウス42A内へ向けて延設されているとともに車体内側に向けて所定傾斜角度で折り曲げられた円錐面状の面である。また、傾斜面部72Nにおける車輪42の側は、傾斜面部72Nからさらに車体内側に向けて折り曲げられた末端部が形成されている(図示省略)。
【0046】
平面部72M、傾斜面部72N、空気排出口78の構造は、上述した第1の実施の形態の平面部52M、傾斜面部52N、空気排出口58と同様であるので説明を省略する。また、空気排出口78の径方向幅L1、平面部72Mの径方向幅L2、傾斜面部72NのL3も、上述した第1の実施の形態の空気排出口58の径方向幅L1、平面部52Mの径方向幅L2、傾斜面部52Nの径方向幅L3と同様である。従って、第1の実施の形態と同様の効果(車輪の空気抵抗の低減)を得ることができる。
【0047】
ハウス内取付部材72は、既存の前輪のホイールハウス内や後輪のホイールハウス内に容易に取り付けることができるので便利である。また、前側にドアが無く、前側がほとんどバンパ11(図1参照)である前輪のホイールハウス41A(図1参照)に対して、特に便利である。
【0048】
以上、第1、第2の実施の形態にて説明した車体構造は、図2図6に示すように、フェンダパネル51のハウス外周部52に平面部52M、傾斜面部52Nを形成し、ハウス外周部52の前側に空気排出口58を形成するだけでよいので、非常にシンプルな構造で、重量の増加もほとんど無く、車輪の空気抵抗を低減できる。
【0049】
また、図7に示すように、ハウス内取付部材72をホイールハウス42A内に追加した第3の実施の形態の車体構造では、前輪のホイールハウスや、既存のホイールハウスへの適用が容易である。また、ハウス内取付部材72は、薄い鋼板や樹脂等を用いて比較的小型・軽量な部材とすることが可能であり、重量の増加もほとんど無く、車輪の空気抵抗を低減できる。
【0050】
本発明の車体構造は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0051】
本実施の形態の説明では、図4に示すように、空気排出口58の後端縁52Fから車体内側へと延設されてさらに車体前方へと湾曲するように延設された壁部52Hを設けた例を説明したが、湾曲した壁部52Hの代わりに単純な傾斜面を設けるようにしてもよい。
【0052】
本実施の形態の説明では、図4に示すように、平面部52Mが、空気排出口58の前端縁32Fに隣接している車体表面よりも車体外側に突出していない例を説明したが、平面部52Mが、前端縁32Fに隣接している車体表面よりも車体外側に(少しくらいであれば)突出していてもよい。
【0053】
本実施の形態の説明では、図2図6、(図7)に示すように、空気排出口58(78)、平面部52M(72M)、傾斜面部52N(72N)が、ホイールハウスの外周に沿った円弧状、かつ、ホイールハウスの前側から上側、さらに後側へと形成された例を説明したが、ホイールハウスの少なくとも前側の一部であってもよく、形状も円弧状でなくてもよい。
【0054】
また、本実施の形態の説明にて、4ドアのタイプの車両において、後ドアの前方にヒンジを有して後ドアの後方が開閉するドアのドアパネル32を例として図示したが、スライド式の後ドアのタイプの車両等、種々のタイプの車両に対して、本発明の車体構造を適用することができる。
【0055】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
1K 車体内側
11、12 バンパ
21 フェンダパネル
22 ハウス外周部
31、32 ドアパネル
32F 前端縁(空気排出口の前端縁)
32P ドアアウタパネル
32Q ドアインナパネル
41、42 車輪
41A、42A ホイールハウス
42J 回転軸線
51 フェンダパネル
52 ハウス外周部
52B ハウス外周部
52BF 縁部
52F 後端縁(空気排出口の後端縁)
52H 壁部
52M 平面部
52MF 後端縁(平面部の後端縁)
52N 傾斜面部
52P ハウス外周部アウタパネル
52Q ハウス外周部インナパネル
52T 末端部
58 空気排出口
61 ルーフ
62、63、64、65 ピラー
72 ハウス内取付部材
72F 後端縁(空気排出口の後端縁)
72M 平面部
72MF 後端縁(平面部の後端縁)
72N 傾斜面部
78 空気排出口
A1、A2 側面空気流
B1 吸出空気流
L1、L2、L3 径方向幅
θ1 所定傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7