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  • 特許-交流電動機の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】交流電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/06 20160101AFI20231011BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02P21/06
H02P27/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020043892
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145516
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 和希
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-230311(JP,A)
【文献】特開2002-223600(JP,A)
【文献】特開2012-249424(JP,A)
【文献】特開平06-028006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/06
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波と電圧指令値との比較結果により交流電動機を駆動させるインバータ回路と、
前記交流電動機に流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換し、PI制御により前記d軸電流とd軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流とq軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出し、補正後の前記d軸電圧指令値及び補正後の前記q軸電圧指令値を前記電圧指令値に変換する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記d軸電流指令値が入力される第1のローパスフィルタと、
前記q軸電流指令値が入力される第2のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値と前記d軸電流との第1の差が第1の閾値以下になるように前記第1のローパスフィルタのカットオフ周波数を調整する第1の調整部と、
前記第2のローパスフィルタから出力されるq軸電流指令値と前記q軸電流との第2の差が第2の閾値以下になるように前記第2のローパスフィルタのカットオフ周波数を調整する第2の調整部と、
前記q軸電流が前記d軸電流に干渉することによる前記第1のローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値の変動分に対応するd軸電圧指令値を第1の補正値として出力するとともに前記d軸電流が前記q軸電流に干渉することによる前記第2のローパスフィルタから出力されるq軸電流指令値の変動分に対応するq軸電圧指令値を第2の補正値として出力する非干渉制御部と、
補正前の前記d軸電圧指令値と前記第2の補正値との加算値を補正後の前記d軸電圧指令値として出力する第1の加算部と、
補正前の前記q軸電圧指令値と前記第1の補正値との加算値を補正後の前記q軸電圧指令値として出力する第2の加算部と、
を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交流電動機の制御装置であって、
前記第1及び第2の調整部は、前記交流電動機の駆動中、前記第1及び第2のローパスフィルタのそれぞれのカットオフ周波数を繰り返し調整する
ことを特徴とする交流電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電動機の制御装置として、PI制御(Proportional Integral)により生成されるd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を、ローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いて非干渉制御により補正するものがある。この制御装置によれば、ローパスフィルタによりd軸電流指令値及びq軸電流指令値に含まれる高周波成分を抑制させることができ、ローパスフィルタにおける応答速度[rad/s]をPI制御における応答速度に近づけることにより電流応答性を向上させることができる。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、ローパスフィルタにおける応答速度をPI制御における応答速度に近づけるためにローパスフィルタのカットオフ周波数を調整する必要がある。
【0004】
そのため、上記制御装置では、実験やシミュレーションを用いてカットオフ周波数を調整する場合、その調整に比較的多くの工数がかかるという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-072856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、PI制御により生成されるd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を、ローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いて非干渉制御により補正する交流電動機の制御装置において、ローパスフィルタのカットオフ周波数の調整にかかる工数を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である交流電動機の制御装置は、搬送波と電圧指令値との比較結果により交流電動機を駆動させるインバータ回路と、交流電動機に流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換し、PI制御によりd軸電流とd軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともにq軸電流とq軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出し、補正後のd軸電圧指令値及び補正後のq軸電圧指令値を電圧指令値に変換する制御回路とを備える。
【0008】
制御回路は、d軸電流指令値が入力される第1のローパスフィルタと、q軸電流指令値が入力される第2のローパスフィルタと、第1のローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値とd軸電流との第1の差が第1の閾値以下になるように第1のローパスフィルタのカットオフ周波数を調整する第1の調整部と、第2のローパスフィルタから出力されるq軸電流指令値とq軸電流との第2の差が第2の閾値以下になるように第2のローパスフィルタのカットオフ周波数を調整する第2の調整部と、q軸電流がd軸電流に干渉することによる第1のローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値の変動分に対応するd軸電圧指令値を第1の補正値として出力するとともにd軸電流がq軸電流に干渉することによる第2のローパスフィルタから出力されるq軸電流指令値の変動分に対応するq軸電圧指令値を第2の補正値として出力する非干渉制御部と、補正前のd軸電圧指令値と第2の補正値との加算値を補正後のd軸電圧指令値として出力する第1の加算部と、補正前のq軸電圧指令値と第1の補正値との加算値を補正後のq軸電圧指令値として出力する第2の加算部とを備える。
【0009】
これにより、第1及び第2の調整部において、第1及び第2のローパスフィルタにおける応答速度をPI制御における応答速度に近づけることができるため、第1及び第2のローパスフィルタのカットオフ周波数の調整にかかる工数を低減することができる。
【0010】
また、第1の閾値を第1の差の最小値とし、第2の閾値を第2の差の最小値としてもよい。
【0011】
これにより、第1の閾値を第1の差の最小値より大きい値とし、第2の閾値を第2の差の最小値より大きい値とする場合に比べて、電流応答性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、第1及び第2の調整部は、交流電動機の駆動中、第1及び第2のローパスフィルタのそれぞれのカットオフ周波数を繰り返し調整するように構成してもよい。
【0013】
これにより、交流電動機の駆動中に交流電動機が劣化することでPI制御における応答速度が変化しても、その変化する応答速度に追従して、第1及び第2のローパスフィルタの応答速度を変化させることができるため、電流応答性を保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PI制御により生成されるd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を、ローパスフィルタから出力されるd軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いて非干渉制御により補正する交流電動機の制御装置において、ローパスフィルタのカットオフ周波数の調整にかかる工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の交流電動機の制御装置を示す図である。
図2】補正値出力部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0017】
図1は、実施形態の交流電動機の制御装置を示す図である。
【0018】
図1に示す制御装置1は、例えば、車両(電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車など)に搭載される交流電動機M(永久磁石同期電動機など)を駆動するための制御装置であって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、交流電動機Mは、回転子の位相θ(電気角)を検出し、その検出した位相θを制御回路3に出力する電気角検出部Sp(レゾルバなど)を備えているものとする。
【0019】
インバータ回路2は、電源Pから供給される直流電力を交流電力に変換して交流電動機Mを駆動するものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など)と、電流センサSi1、Si2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端が電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端が電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSi1を介して交流電動機MのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSi2を介して交流電動機MのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点は交流電動機MのW相の入力端子に接続されている。
【0020】
コンデンサCは、電源Pからインバータ回路2に出力される電圧を平滑する。
【0021】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S1がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S1がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S2がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S2がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S3がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S3がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S4がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S4がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S5がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S5がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力されるパルス幅変調信号S6がハイレベルであるときオンし、パルス幅変調信号S6がローレベルであるときオフする。なお、搬送波は、三角波、ノコギリ波(鋸歯状波)、逆ノコギリ波などとする。
【0022】
スイッチング素子Sw1~SW6がそれぞれオン、オフすることで、電源Pから出力される直流の電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる交流電圧Vu、Vv、Vwに変換される。そして、交流電圧Vuが交流電動機MのU相の入力端子に印加され、交流電圧Vvが交流電動機MのV相の入力端子に印加され、交流電圧Vwが交流電動機MのW相の入力端子に印加されることで、交流電動機Mに互いに位相が120度ずつ異なる交流電流Iu、Iv、Iwが流れ、交流電動機Mの回転子が回転する。
【0023】
電流センサSi1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、交流電動機MのU相に流れる交流電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSi2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、交流電動機MのV相に流れる交流電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0024】
制御回路3は、ドライブ回路4と、演算部5と、記憶部6とを備える。なお、記憶部6は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0025】
ドライブ回路4は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部5から出力されるU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*と搬送波とを比較し、その比較結果に応じたパルス幅変調信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。
【0026】
例えば、ドライブ回路4は、U相電圧指令値Vu*が搬送波以上である場合、ハイレベルのパルス幅変調信号S1を出力するとともにローレベルのパルス幅変調信号S2を出力し、U相電圧指令値Vu*が搬送波より小さい場合、ローレベルのパルス幅変調信号S1を出力するとともにハイレベルのパルス幅変調信号S2を出力する。また、ドライブ回路4は、V相電圧指令値Vv*が搬送波以上である場合、ハイレベルのパルス幅変調信号S3を出力するとともにローレベルのパルス幅変調信号S4を出力し、V相電圧指令値Vv*が搬送波より小さい場合、ローレベルのパルス幅変調信号S3を出力するとともにハイレベルのパルス幅変調信号S4を出力する。また、ドライブ回路4は、W相電圧指令値Vw*が搬送波以上である場合、ハイレベルのパルス幅変調信号S5を出力するとともにローレベルのパルス幅変調信号S6を出力し、W相電圧指令値Vw*が搬送波より小さい場合、ローレベルのパルス幅変調信号S5を出力するとともにハイレベルのパルス幅変調信号S6を出力する。
【0027】
演算部5は、マイクロコンピュータなどにより構成され、回転数演算部7と、減算部8と、トルク制御部9と、トルク/電流指令値変換部10と、座標変換部11と、減算部12と、減算部13と、電流制御部14と、補正値出力部15と、加算部16と、加算部17と、座標変換部18とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部6に記憶されているプログラムを実行することにより、回転数演算部7、減算部8、トルク制御部9、トルク/電流指令値変換部10、座標変換部11、減算部12、減算部13、電流制御部14、補正値出力部15、加算部16、加算部17、及び座標変換部18が実現される。
【0028】
回転数演算部7は、電気角検出部Spにより検出される位相θを用いて、交流電動機Mの回転数ωを演算する。例えば、回転数演算部7は、位相θを所定時間T(演算部5の動作クロックなど)で除算することにより回転数ωを求める。
【0029】
減算部8は、外部から入力される回転数指令値ω*と回転数演算部7から出力される回転数ωとの差Δωを算出する。
【0030】
トルク制御部9は、減算部8から出力される差Δωを用いて、トルク指令値T*を求める。例えば、トルク制御部9は、記憶部6に記憶されている、交流電動機Mの回転数ωと交流電動機Mのトルクとが互いに対応付けられている情報を参照して、差Δωに相当する回転数ωに対応するトルクを、トルク指令値T*として求める。
【0031】
トルク/電流指令値変換部10は、トルク制御部9から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、記憶部6に記憶されている、交流電動機Mのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を求める。
【0032】
座標変換部11は、電流センサSi1により検出される交流電流Iu及び電流センサSi2により検出される交流電流Ivを用いて、交流電動機MのW相に流れる交流電流Iwを求める。なお、電流センサSi1、Si2により検出される電流は、交流電流Iu、Ivの組み合わせに限定されず、交流電流Iv、Iwの組み合わせ、または、交流電流Iu、Iwの組み合わせでもよい。電流センサSi1、Si2により交流電流Iv、Iwが検出される場合、座標変換部11は、交流電流Iv、Iwを用いて、交流電流Iuを求める。また、電流センサSi1、Si2により交流電流Iu、Iwが検出される場合、座標変換部11は、交流電流Iu、Iwを用いて、交流電流Ivを求める。
【0033】
また、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される位相θを用いて、交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id(弱め界磁を発生させるための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを発生させるための電流成分)に変換する。例えば、座標変換部11は、下記式1に示す変換行列C1を用いて、交流電流Iu、Iv、Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
【0034】
【数1】
【0035】
また、インバータ回路2において、電流センサSi1、Si2の他に、交流電動機MのW相に流れる交流電流Iwを検出する電流センサSi3をさらに備える場合、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される位相θを用いて、電流センサSi1~Si3により検出される交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0036】
減算部12は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*と、座標変換部11から出力されるd軸電流Idとの差ΔIdを算出する。
【0037】
減算部13は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるq軸電流指令値Iq*と、座標変換部11から出力されるq軸電流Iqとの差ΔIqを算出する。
【0038】
電流制御部14は、減算部12から出力される差ΔId及び減算部13から出力される差ΔIqを用いたPI制御によりd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電流制御部14は、下記式2を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式3を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、Lqは交流電動機Mを構成するコイルのq軸インダクタンスとし、Ldは交流電動機Mを構成するコイルのd軸インダクタンスとし、ωは交流電動機Mの回転子の回転数とし、Keは誘起電圧定数とする。
【0039】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+Ki×∫(差ΔId)-ωLqIq・・・式2
【0040】
q軸電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+Ki×∫(差ΔIq)+ωLdId+ωKe・・・式3
【0041】
補正値出力部15は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*と座標変換部11から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqとを用いて、補正値v_dc*及び補正値v_qc*を出力する。
【0042】
加算部16は、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*(補正前のd軸電圧指令値)と補正値出力部15から出力される補正値v_qc*との加算値を補正後のd軸電圧指令値Vd**として出力する。
【0043】
加算部17は、電流制御部14から出力されるq軸電圧指令値Vq*(補正前のq軸電圧指令値)と補正値出力部15から出力される補正値v_dc*との加算値を補正後のq軸電圧指令値Vq**として出力する。
【0044】
座標変換部18は、電気角検出部Spにより検出される位相θを用いて、d軸電圧指令値Vd**及びq軸電圧指令値Vq**を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。例えば、座標変換部18は、下記式4に示す変換行列C2を用いて、d軸電圧指令値Vd**及びq軸電圧指令値Vq**を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。
【0045】
【数2】
【0046】
図2は、補正値出力部15を示す図である。
【0047】
図2に示す補正値出力部15は、ローパスフィルタ151(第1のローパスフィルタ)と、ローパスフィルタ152(第2のローパスフィルタ)と、調整部153(第1の調整部)と、調整部154(第2の調整部)と、非干渉制御部155とを備える。
【0048】
ローパスフィルタ151は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*の高周波成分を抑制してd軸電流指令値Id**を出力する。なお、ローパスフィルタ151が有するカットオフ周波数ωcdに応じて、ローパスフィルタ151における応答速度が変化するものとする。
【0049】
ローパスフィルタ152は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるq軸電流指令値Iq*の高周波成分を抑制してq軸電流指令値Iq**を出力する。なお、ローパスフィルタ152が有するカットオフ周波数ωcqに応じて、ローパスフィルタ152における応答速度が変化するものとする。
【0050】
調整部153は、ローパスフィルタ151から出力されるd軸電流指令値Id**と座標変換部11から出力されるd軸電流Idとの第1の差が第1の閾値以下になるようにローパスフィルタ151のカットオフ周波数ωcdを調整する。例えば、第1の閾値は、第1の差の最小値Idmin(ゼロなど)からその最小値Idminより大きい所定値Idrefまでの範囲の任意の値とする。例えば、所定値Idrefは、電流制御部14におけるd軸電流指令値Id*の応答速度を5[%]変化させるために必要なd軸電流指令値Id*の変化量と最小値Idminとの加算値とする。第1の閾値を最小値Idminとする場合は、第1の閾値を最小値Idminより大きい値にする場合に比べて、電流応答性をさらに向上させることができる。
【0051】
例えば、調整部153は、下記式5に示す評価関数と、下記式6に示すアルゴリズムとを用いる重み付き最小二乗法により、第1の差が最小になるようなカットオフ周波数ωcdを算出する。なお、yを下記式7とし、θを下記式8とする。また、λは重み係数とし、0<λ≦1とする。
【0052】
【数3】
【0053】
【数4】
【0054】
=d軸電流Id ・・・式7
【0055】
θ=d軸電流指令値Id**=(1-カットオフ周波数ωcd×所定時間T)×d軸電流指令値Id**k-1+カットオフ周波数ωcd×所定時間T×d軸電流指令値Id*k-1 ・・・式8
【0056】
調整部154は、ローパスフィルタ152から出力されるq軸電流指令値Iq**と座標変換部11から出力されるq軸電流Iqとの第2の差が第2の閾値以下になるようにローパスフィルタ152のカットオフ周波数ωcqを調整する。例えば、第2の閾値は、第2の差の最小値Iqmin(ゼロなど)からその最小値Iqminより大きい所定値Iqrefまでの範囲の任意の値とする。例えば、所定値Iqrefは、電流制御部14におけるq軸電流指令値Iq*の応答速度を5[%]変化させるために必要なq軸電流指令値Iq*の変化量と最小値Iqminとの加算値とする。第2の閾値を最小値Iqminとする場合は、第2の閾値を最小値Iqminより大きい値にする場合に比べて、電流応答性をさらに向上させることができる。
【0057】
例えば、調整部154は、上記式5に示す評価関数と、上記式6に示すアルゴリズムとを用いる重み付き最小二乗法により、第2の差が最小になるようなカットオフ周波数ωcqを算出する。なお、yを下記式9とし、θを下記式10とする。
【0058】
=q軸電流Iq ・・・式9
【0059】
θ=q軸電流指令値Iq**=(1-カットオフ周波数ωcq×所定時間T)×q軸電流指令値Iq**k-1+カットオフ周波数ωcq×所定時間T×q軸電流指令値Iq*k-1 ・・・式10
【0060】
なお、カットオフ周波数ωcd、ωcqの調整タイミングは特に限定されない。例えば、調整部153、154は、交流電動機Mの駆動開始時、カットオフ周波数ωcd、ωcqを調整する。または、調整部153、154は、交流電動機Mの駆動中、カットオフ周波数ωcd、ωcqを繰り返し調整する。交流電動機Mの駆動中、カットオフ周波数ωcd、ωcqが繰り返し調整される場合は、交流電動機Mの駆動中に交流電動機Mが劣化することでPI制御における応答速度が変化しても、その変化する応答速度に追従して、ローパスフィルタ151、152の応答速度を変化させることができるため、電流応答性を保つことができる。
【0061】
非干渉制御部155は、q軸電流Iqがd軸電流Idに干渉することによるローパスフィルタ151から出力されるd軸電流指令値Id**の変動分に対応するd軸電圧指令値Vd*を補正値v_dc*として出力するとともにd軸電流Idがq軸電流Iqに干渉することによるローパスフィルタ152から出力されるq軸電流指令値Iq**の変動分に対応するq軸電圧指令値Vq*を補正値v_qc*として出力する。例えば、非干渉制御部155は、d軸電流指令値Id**とd軸インダクタンスLdとの乗算値を補正値v_dc*とし、q軸電流指令値Iq**とq軸インダクタンスLqとの乗算値を補正値v_qc*とする。そして、d軸電圧指令値Vd*と補正値v_dc*とが加算されてd軸電圧指令値Vd*が補正されるとともにq軸電圧指令値Vq*と補正値v_qc*とが加算されてq軸電圧指令値Vq*が補正されることにより、q軸電流Iqがd軸電流Idに干渉することによるd軸電流指令値Id*の変動分やd軸電流Idがq軸電流Iqに干渉することによるq軸電流指令値Iq*の変動分が互いに打ち消し合い、電流応答性を向上させることができる。
【0062】
実施形態の制御装置1は、ローパスフィルタ151から出力されるd軸電流指令値Id**と実電流であるd軸電流Idとの第1の差が第1の閾値以下になるようにローパスフィルタ151のカットオフ周波数ωcdを調整する調整部153と、ローパスフィルタ152から出力されるq軸電流指令値Iq**と実電流であるq軸電流Iqとの第2の差が第2の閾値以下になるようにローパスフィルタ152のカットオフ周波数ωcqを調整する調整部154とを備える構成である。このように、調整部153、154によりカットオフ周波数ωcd、ωcqを自動で調整することができるため、従来のように実験やシミュレーションなどによってカットオフ周波数ωcd、ωcqが調整される場合に比べて、カットオフ周波数ωcd、ωcqの調整にかかる工数を低減することができる。
【0063】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 ドライブ回路
5 演算部
6 記憶部
7 回転数演算部
8 減算部
9 トルク制御部
10 トルク/電流指令値変換部
11 座標変換部
12 減算部
13 減算部
14 電流制御部
15 補正値出力部
16 加算部
17 加算部
18 座標変換部
151、152 ローパスフィルタ
153、154 調整部
155 非干渉制御部
図1
図2