(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20231011BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20231011BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20231011BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/02
B60W40/08
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2020046288
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野山 直貴
(72)【発明者】
【氏名】山根 丈亮
(72)【発明者】
【氏名】皆川 里桜
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069968(JP,A)
【文献】特開2019-185293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記基準データの信頼度が所定の信頼度未満の場合に、前記所定の処理が行われる対象である対象車両の現在地を通過した他車両から収集した運転操作のデータである他車データに基づいて、前記所定の処理を行うか否か判定する、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、加減速度、または舵角の変化量に関するデータを前記基準データとして生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記運転データと前記基準データとの乖離度が前記閾値以上である時間が所定の長さ以上の場合に、前記所定の処理を行う、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記他車両からリアルタイムで収集した前記他車データ、または、前記他車両から過去に収集した前記他車データに基づいて、前記所定の処理を行うか否か判定する、
請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記他車両から過去に収集した前記他車データのうち、前記車両の周辺の状況または前記道路状況が所定の近似度のデータを用いる、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基準データの信頼度が低いほど、前記閾値を大きくする、
請求項1から5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両に設けられるセンサの信頼度に基づいて、前記基準データの前記信頼度を決定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両の周辺の状況または前記道路状況と、前記基準データの前記信頼度と、の関係を予め保持する、
請求項6または7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両の自動運転が可能な状況下において、前記所定の処理を行うことを実行する、
請求項1から8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記車両の周辺の状況または前記道路状況に基づいて前記車両の自動運転時の運転操作のデータである自動運転データを生成し、
前記自動運転データに基づいて前記基準データを生成する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記基準データの信頼度が低いほど、前記閾値を大きくする、情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータが、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
前記基準データの信頼度が所定の信頼度未満の場合に、前記所定の処理が行われる対象である対象車両の現在地を通過した他車両から収集した運転操作のデータである他車データに基づいて、前記所定の処理を行うか否か判定することと、
を実行する情報処理方法。
【請求項13】
加減速度、または舵角の変化量に関するデータを前記基準データとして生成する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータが、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
前記基準データの信頼度が低いほど、前記閾値を大きくすることと、
を実行する情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
前記基準データの信頼度が所定の信頼度未満の場合に、前記所定の処理が行われる対象である対象車両の現在地を通過した他車両から収集した運転操作のデータである他車データに基づいて、前記所定の処理を行うか否か判定することと、
を実行させるプログラム。
【請求項16】
加減速度、または舵角の変化量に関するデータを前記基準データとして生成する、
請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
コンピュータに、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に
前記運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すための所定の処理を行うことと、
前記基準データの信頼度が低いほど、前記閾値を大きくすることと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
手動運転状態と、自動運転状態とを切り換え可能な車両において、運転者の運転操作の結果と、車両の周辺状況に基づいて演算される自動制御内容とを比較することによって、運転者の運転技量を評価する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、手動運転中の運転者が不適切な運転操作を行うことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に所定の処理を行うことと、
を実行する制御部を備える情報処理装置である。
【0006】
本開示の態様の一つは、
コンピュータが、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に所定の処理を行うことと、
を実行する情報処理方法である。
【0007】
本開示の態様の一つは、
コンピュータに、
車両の周辺の状況または道路状況を取得し、基準となる運転操作のデータである基準データを生成することと、
前記車両の運転者による運転操作のデータである運転データと、前記基準データと、の乖離度が、閾値以上である場合に所定の処理を行うことと、
を実行させるプログラムである。
【0008】
また、本開示の他の態様は、上記のプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、手動運転中の運転者が不適切な運転操作を行うことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る車両の構成の一例を概略的に示したブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両の制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る運転者の運転操作の評価を行う処理のフローチャートである。
【
図4】検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上の状態が所定の長さの時間以上継続した場合に限り、通知処理を行う場合の処理のフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係るシステムの概略構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係るシステムを構成するサーバの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図7】第2実施形態に係る車両の制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図9】車両情報DBに格納されるテーブル構成を例示した図である。
【
図10】サーバが第一車両に対して他車データを提供するときのシステムの処理のシーケンス図である。
【
図11】サーバが車両情報DBを更新するときのサーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】サーバが第一車両に他車データを送信するときのサーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】各車両において検出データ等をサーバに送信する処理のフローを示したフローチャートである。
【
図14】第2実施形態に係る通知処理を行う場合の処理のフローチャートである。
【
図15】センサ群の信頼度に基づいて閾値を補正するときの処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の態様の一つである情報処理装置は、車両周辺の状況または道路状況を取得する。取得する「状況」は、車両の運転操作に影響を及ぼす状況であればよい。車両周辺の状況は、例えばセンサによって取得される状況であってもよい。車両周辺の状況は、例えば、車両周辺の障害物の状況、路面の状況、車両周辺に存在する他の車両の状況、交通渋滞の状況、または道路工事の状況などであってもよい。道路状況は、例えば、道路地図により得られる状況(例えば、道路の曲率などの状況)であってもよい。これらの状況によって基準となる運転操作に関するデータ(基準データ)を生成する。例えば、基準データは、車両周辺の状況または道路状況に応じた理想的な運転操作を示すデータとしてもよい。運転操作は、例えば、アクセル操作、ハンドル操作、ブレーキ操作など、車両の走行に伴う操作である。
【0012】
制御部は、車両の運転者による運転操作に関するデータ(運転データ)と、基準データとの乖離度が、閾値以上である場合に、所定の処理を行う。運転者による運転操作は、手動運転時に運転者が車両を操作したときに得られるデータである。運転データと基準データとの乖離度は、例えば、加減速度の差若しくは比、または、単位時間当たりの舵角の変化量(以下、舵角の変化率ともいう。)の差若しくは比などによって表すことができる。運転データと基準データとの乖離度が大きいほど、運転者の運転操作が基準となる運転操作から外れていることを意味する。そして、乖離度が閾値以上である場合に、制御部は所定の処理を行う。閾値は、例えば、運転者による運転操作が不適切である場合の乖離度である。所定の処理は、運転者に対する処理であってもよく、車両に対する処理であってもよく、車両外部に対する処理であってもよい。運転者に対する処理は、例えば、運転者へ警告または通知をするための処理としてもよい。車両に対する処理は、例えば、アクセル
操作、ブレーキ操作、または、ステアリング操作に関する処理としてもよい。車両外部に対する処理は、例えば、車両周辺の他車両へ警告または通知をするための処理、外部機関(例えば、警察など)に通報するための処理、または、サーバに不適切な運転操作があったことを記憶させるための処理としてもよい。運転者の手動運転時に不適切な運転操作があった場合に所定の処理が行われるため、運転者に対して不適切な運転操作の自粛を促すことができる。
【0013】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る車両10の構成の一例を概略的に示したブロック図である。車両10は自動運転及び手動運転が可能な車両である。自動運転は、運転者の運転操作によらない運転であり、手動運転は、運転者の運転操作による運転である。車両10は、車両10の周辺の情報、道路の情報及び運転者の運転操作に関する情報を取得し、それらの情報に基づいて、運転者の運転操作の評価を行う。車両10は、制御部100、センサ群110、及び、装置群120を有する。これらは、バス150により相互に接続される。
【0015】
制御部100は、車両10が有する構成要素を制御するコンピュータである。制御部100は、プロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、入力部104、出力部105、及び、通信部106を含む。プロセッサ101は、CPU(Central Processing
Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等である。プロセッサ101は、車両1
0を制御するための様々な情報処理の演算を行う。
【0016】
主記憶部102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。補助記憶部103は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディ
スクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、リムーバブルメディア等である。補助記憶
部103には、オペレーティングシステム(Operating System :OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。補助記憶部103に格納されたプログラムをプロセッサ101が主記憶部102の作業領域にロードして実行し、このプログラムの実行を通じて各構成部等が制御される。主記憶部102および補助記憶部103は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体である。
図1に示した構成は、複数台のコンピュータが連携したものであってもよい。また、補助記憶部103に格納される情報は、主記憶部102に格納されてもよい。また、主記憶部102に格納される情報は、補助記憶部103に格納されてもよい。
【0017】
入力部104は、運転者が行った入力操作を受け付ける手段であり、例えば、タッチパネル、押しボタン、マウス、キーボード等である。出力部105は、運転者に対して情報を提示する手段であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electroluminescence)パネル、スピーカ、ランプ等である。入力部104及び出力部105は、1
つのタッチパネルディスプレイとして構成してもよい。
【0018】
通信部106は、車両10を外部のネットワークに接続するための通信手段である。通信部106は、例えば、移動体通信サービス(例えば、5G(5th Generation)、4G(4th Generation)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)等の電話
通信網)、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信網を利用して、ネットワーク経由で他の装置(例えば外部のサーバ等)と通信を行うための回路である。
【0019】
センサ群110は、車両10の走行に関する情報を取得する各種センサである。センサ
群110は、例えば、位置情報センサ111、環境情報センサ112、車速センサ113、加速度センサ114、舵角センサ115、横加速度センサ116、アクセルセンサ117、及び、ブレーキセンサ118を含む。センサ群110によって得られた検出値は、例えば、補助記憶部103等に記録される。
【0020】
位置情報センサ111は、所定の周期で、車両10の位置情報(例えば緯度、経度)を取得する。位置情報センサ111は、例えば、GPS(Global Positioning System)受
信部、無線LAN通信部等である。
【0021】
環境情報センサ112は、車両10の周辺をセンシングする手段である。環境情報センサ112は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子を用いて撮影を行うカメラであってもよい。また、環境情報センサ112は、レーザスキャナ、LIDAR、またはレーダであってもよい。
【0022】
車速センサ113は、車両10の速度を検出するセンサである。加速度センサ114は、車両10の加減速度を検出するセンサである。加速度センサ114の検出値は、速度が増加する場合には正の値となり、速度が減少する場合には負の値となる。なお、車速センサ113の検出値を微分することにより車両10の加速度を検出することで加速度センサ114を省略することもできる。また、加速度センサ114の検出値を微分することにより、車両10の加加速度を算出することもできる。
【0023】
舵角センサ115は、ステアリング操作によって得られた舵角を検出するセンサである。舵角センサ115は、例えば、ステアリングホイールの角度を検出する。なお、本実施形態は、舵角として、ステアリングホイールの角度を検出しているが、タイヤの切れ角を直接的に又は間接的に表す値を用いてもよい。横加速度センサ116は、車両10の横加速度を検出するセンサである。アクセルセンサ117は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキセンサ118は、運転者のブレーキペダルの踏み込み量を検出するセンサである。
【0024】
装置群120は、車両10が有する複数の装置であって、制御部100によって制御される装置である。装置群120は、例えば、ステアリング装置121、駆動装置122、ブレーキ装置123を含む。装置群120には、シフト装置などがさらに含まれていてもよい。なお、本例では電気自動車を例に挙げて説明するが、対象の車両はエンジンを有する車両であってもよい。
【0025】
ステアリング装置121は、車両10が有する操舵システムである。ステアリング装置121は、インタフェース(ステアリングホイール等)、ステアリングモータ1211、ギアボックス、ステアリングコラム等を含んで構成される。ステアリングモータ1211は、操舵操作をアシストするための手段である。制御部100から指令を受けたステアリングモータ1211が駆動することで、ステアリング操作に必要な力を軽減することができる。また、ステアリングモータ1211を駆動することで、乗員の操作によらないステアリング操作の自動化も可能である。
【0026】
駆動装置122は、車両10が有する駆動システムである。駆動装置122は、駆動モータ1221、ドライブシャフト、トランスミッション等を含んで構成される。駆動モータ1221は、車両10を駆動させるための手段である。制御部100から指令を受けた駆動モータ1221が車両10を駆動することで、車両10を走行させることができる。
【0027】
ブレーキ装置123は、車両10が有する機械ブレーキシステムである。ブレーキ装置
123は、インタフェース(ブレーキペダル等)、アクチュエータ1231、油圧系統、ブレーキシリンダ等を含んで構成される。アクチュエータ1231は、ブレーキ系統における油圧を制御するための手段である。制御部100から指令を受けたアクチュエータ1231がブレーキ油圧を制御することで、機械ブレーキによる制動力を確保することができる。
【0028】
(機能構成)
図2は、本実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成の一例を示す図である。制御部100は、機能構成要素として、手動制御部1011、状況認知部1012、自動制御部1013、及び評価部1014を含む。手動制御部1011、状況認知部1012、自動制御部1013、及び評価部1014は、例えば、制御部100のプロセッサ101が、補助記憶部103に記憶された各種プログラムを実行することで提供される機能構成要素である。
【0029】
手動制御部1011は、運転者による手動運転時に車両10を制御する。手動制御部1011は、舵角センサ115の検出値、アクセルセンサ117の検出値、ブレーキセンサ118の検出値などに基づいて、装置群120を制御するための制御指令を生成する。
【0030】
手動制御部1011は、ステアリング装置121に含まれるステアリングモータ1211を制御することで、ステアリング角度または操舵輪の角度を制御することができる。手動制御部1011は、例えば、舵角センサ115の検出値に応じてステアリングモータ1211を駆動することで、車両10の車輪の切れ角を制御する。この制御には公知の技術を用いることができる。
【0031】
また、手動制御部1011は、駆動電圧や電流、駆動周波数等を制御することで駆動モータ1221の回転数を制御する。手動制御部1011は、例えば、アクセルセンサ117の検出値に応じて、駆動モータ1221の回転数を制御する。この制御には公知の技術を用いることができる。
【0032】
また、手動制御部1011は、ブレーキ装置123に含まれるアクチュエータ1231を制御することで、機械ブレーキによる制動力を制御する。手動制御部1011は、ブレーキセンサ118の検出値に応じてアクチュエータ1231を駆動することで、ブレーキ油圧を制御する。この制御には公知の技術を用いることができる。
【0033】
状況認知部1012は、センサ群110に含まれるセンサによって取得されたデータに基づいて、車両10周辺の環境を検出する。検出の対象は、例えば、車線の数や位置、自車両の周辺に存在する他車両の数や位置、自車両の周辺に存在する障害物(例えば歩行者、自転車、構造物、建築物など)の数や位置、道路の構造、道路標識などであるが、これらに限られない。自律的な走行を行うために必要なものであれば、検出の対象はどのようなものであってもよい。状況認知部1012が検出した、環境に関するデータ(以下、環境データともいう。)は、補助記憶部103に記憶される。
【0034】
自動制御部1013は、車両10の自動運転時に車両10を制御する。自動制御部1013は、状況認知部1012が検出した環境データを用いて、装置群120を制御するための制御指令を生成する。自動制御部1013は、装置群120を制御することにより、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度などを制御する。
【0035】
自動制御部1013は、例えば、環境データに基づいて車両10の走行軌跡を生成し、当該走行軌跡に沿って走行するよう、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度を決定して、装置群120を制御する。なお、車両を自律走行させる方法に
ついては、公知の方法を採用することができる。自律走行時に、センサ群110の検出値に基づいたフィードバック制御を実施してもよい。
【0036】
評価部1014は、運転者の運転操作を評価する。ここで、本実施形態に係る車両10では、制御部100による自動運転と、運転者による手動運転と、を切り替え可能である。例えば、運転者が入力部104を介して手動運転または自動運転の何れかを選択する。自動制御部1013は、手動運転時においても、環境データに基づいて、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度を決定する。手動運転時に環境データに基づいて決定される、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度を示すデータを以下では「基準データ」ともいう。また、手動運転時にセンサ群110によって検出される、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度を示すデータを以下では「検出データ」ともいう。評価部1014は、手動運転時に検出データと基準データとを比較することにより運転者の運転操作を評価する。
【0037】
なお、以下では、加減速度、舵角、舵角の変化率、横加速度、または、横加加速度を、「状態量」ともいう。基準データは、例えば、運転者が理想的な運転操作を行った場合の状態量を示すデータ、または、運転者が適切な運転操作を行った場合の状態量を示すデータである。評価部1014による評価は、例えば、検出データと基準データとの乖離度が閾値以上であるか否かを判定することにより行われる。乖離度は、例えば、差または比であってもよい。例えば、検出データと基準データとの差または比が閾値以上であれば、運転者の運転操作が不適切であると判定して、運転者または外部機関に警告または通知する。外部機関は、例えば、警察等である。外部機関への通知は、サーバを介して行ってもよい。運転者への警告または通知は、例えば、出力部105を介して行われる。検出データと基準データとの差または比の閾値は、運転者が適切な運転操作を行った場合の検出データと基準データとの差または比の上限値として予め決定し補助記憶部103に記憶させておく。なお、閾値は、環境データに基づいて変動してもよい。
【0038】
上記の基準データは、自動制御部1013が決定した状態量である。すなわち、自動運転が行われていると仮定したときの状態量を基準として、手動運転時の運転者の運転操作を評価する。したがって、自動制御部1013は、手動運転時であっても、環境データに基づいて車両10の走行軌跡を生成し、当該走行軌跡に沿って走行するように状態量を決定する。
【0039】
例えば、加減速度(正の値)と基準データとの差が閾値以上である場合には、運転者が不適切な急加速をしていると判断することができる。また、例えば、加減速度(負の値)と基準データとの差の絶対値が閾値以上である場合には、運転者が不適切な急ブレーキをかけたと判断することができる。また、例えば、舵角の変化率と基準データとの差が閾値以上である場合には、運転者が不適切な急ハンドルを行ったと判断することができる。
【0040】
上記のような不適切な運転操作が行われると、周りの車両に迷惑をかける場合がある。そのため、検出データと基準データとの差または比が閾値以上であると判定された場合には、例えば、運転者に対する警告を出力部105に表示させたり、または、出力部105から警告音を発生させたりする。なお、評価部1014は、不適切な運転操作をしている運転者についての情報を通信部106を介してサーバに送信してもよい。そして、例えば、サーバが警察に不適切な運転操作について通報してもよい。また、評価部1014は、不適切な運転をしている運転者についての情報を通信部106を介して、外部機関(例えば、警察)に直接送信してもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係る運転者の運転操作の評価を行う処理について説明する。
図3は、本実施形態に係る運転者の運転操作の評価を行う処理のフローチャートである。
図3に
示した処理は、所定の周期ごとに制御部100によって実行される。なお、環境データは取得済みであることを前提に説明する。
【0042】
まず、ステップS101で、自動制御部1013が、環境データに基づいて走行計画を生成する。走行計画とは、所定の周期における車両10の挙動を示すデータである。走行計画は、車両10の走行軌跡を含んでいてもよいし、車両10の加減速に関する情報を含んでいてもよい。
【0043】
次に、ステップS102で、自動制御部1013が、走行計画を実現するための基準データを生成する。例えば、加減速度についての基準データ、及び、舵角の変化率についての基準データは、車速と最大舵角との関係、走行環境と加減速度または舵角の変化率との関係、オペレーション(例えば車線変更)を完了すべき時間幅など、事前に設定されたパラメータに基づいて生成される。
【0044】
ステップS103では、自動制御部1013が、車両10が自動運転中であるか否か判定する。本ルーチンは、自動運転時及び手動運転時の何れの運転時であっても実行されるが、ステップS103より後の処理が自動運転時と手動運転時とで異なる。ステップS103で肯定判定された場合にはステップS104へ進み、否定判定された場合にはステップS107へ進む。
【0045】
次に、ステップS104では、自動制御部1013が、基準データに基づいて生成される制御指令を装置群120に送信する。ステップS105では、自動制御部1013が、制御指令を送信した後の検出データを取得する。
【0046】
次に、ステップS106では、自動制御部1013が、検出データに基づいて走行計画を修正する。本ステップでは、センサ群110により取得されたデータに基づいて、車両10が所望の状態となっているか否かを判定する。車両10の挙動は、現在の駆動モータ1221の負荷や、道路の状況(例えば勾配)等に影響されるため、センサデータのフィードバックを受けることで、所望の物理制御量が得られているか否かを判定する。例えば、フィードバックデータが、駆動モータ1221の負荷が高く、要求された加速度が得られない旨を示していた場合、より高い加速度が得られるよう、走行計画を修正する。
【0047】
一方、ステップS107では、評価部1014が、検出データを取得する。この検出データは、運転者の運転操作に関連した状態量を示すデータである。次に、ステップS108では、評価部1014が、検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上であるか否か判定する。本ステップでは、評価部1014が、運転者の運転操作が不適切であるか否か判定している。検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上であれば、運転操作が不適切であり、閾値未満であれば、運転操作が適切であると判定される。ステップS108で肯定判定された場合にはステップS109へ進み、否定判定された場合には本ルーチンを終了させる。
【0048】
ステップS109では、評価部1014が、通知処理を実行する。通知処理は、例えば、運転者、外部機関、またはサーバに運転者の運転操作が不適切であることを通知する処理である。通知処理は、所定の処理の一例である。評価部1014は、例えば、出力部105から音声を発したり、警告するための文章を表示させたり、または、ランプを点滅させたりして、運転者に対して通知を行う。また、評価部1014は、例えば、通信部106を介して、サーバに、運転者の運転操作が不適切であることを示す情報を送信する。この情報を受信したサーバは、例えば警察にその旨を通報する。また、評価部1014は、例えば、外部機関(例えば、警察)に、運転者の運転操作が不適切であることを示す情報を送信する。
【0049】
なお、誤って通知が行われることを抑制するために、検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上の状態が所定の長さの時間以上継続した場合に限り、上記の通知を行ってもよい。所定の長さは、運転者の操作が適切であるか否かを判定可能な長さの時間として予め決定しておく。
【0050】
図4は、検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上の状態が所定の長さの時間以上継続した場合に限り、通知処理を行う場合の処理のフローチャートである。
図4に示した処理は、所定の周期ごとに制御部100によって実行される。ステップS108より前の処理については、
図3に示したフローチャートと同じため図示及び説明を省略する。
図4に示したフローチャートでは、ステップS108で肯定判定された場合には、ステップS201へ進む。ステップS201では、検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上の状態の継続時間が所定の長さ以上であるか否か判定される。ステップS201で肯定判定された場合にはステップS109へ進んで通知処理が行われ、否定判定された場合には本ルーチンを終了させる。このように、不適切な運転操作の継続時間が所定の長さ以上の場合に通知処理を行うことにより、誤通知を抑制できる。
【0051】
なお、本実施形態では、自動運転が可能な状態であるにもかかわらず、手動運転が行われている場合に、運転者の運転操作の評価を行ってもよい。例えば、運転者が煽り運転を行う場合には、自動運転から手動運転に切り替える必要がある。このような場合に、不適切な運転操作が行われる。したがって、自動運転から手動運転に切り替わったことをトリガーとして、
図3または
図4に示した処理を実行してもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、自動運転時の運転操作を基準として、運転者の運転操作の評価を行うことができる。これにより、手動運転中の運転者が不適切な運転操作を行ったことを検出し通知することができる。これにより、運転者が不適切な運転操作を行うことを抑制できる。
【0053】
<第2実施形態>
本実施形態では、自車両以外の他の車両の挙動を考慮して基準データを生成する。例えば、車両10が道路工事中の箇所を通過するときに、対向車線を走行せざるを得ない場合がある。このような場合に、自車両の挙動だけを見ると、不適切な運転操作が行われていると判定される虞がある。そこで、本実施形態では、第1実施形態において運転操作が不適切である判定され得る状態であっても、自車両の挙動が他車両の挙動と同じ傾向を示しているのであれば、運転操作が適切であると判定する。
【0054】
そのため、本実施形態では、他車両の検出データを取得するサーバを備える。そして、サーバが自車両に対して他車両の検出データを提供する。なお、本実施形態では、サーバが他車両の検出データを取得するが、これに代えて、車車間通信によって自車両が他車両から検出データを直接取得してもよい。また、サーバから自車両に提供されるのは、現時点の直前または直後を含むリアルタイムの検出データであってもよく、過去に蓄積された検出データであってもよい。さらには、過去の検出データの平均値であってもよい。
【0055】
図5は、本実施形態に係るシステム1の概略構成を示す図である。
図5に示すシステム1は、第一車両10A、第二車両10B、サーバ30を含む。第一車両10Aは、自車両の一例である。また、第二車両10Bは、自車両以外の他車両の一例である。
【0056】
第一車両10A、第二車両10B、及び、サーバ30は、ネットワークN1によって相互に接続されている。ネットワークN1は、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網でありWAN(Wide Area Network)やその他の通信網が採用さ
れてもよい。また、ネットワークN1は、携帯電話等の電話通信網、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信網を含んでもよい。
図5には、例示的に各1台の第一車両10A及び第二車両10Bを図示しているが、第一車両10A及び第二車両10Bは複数存在し得る。なお、本実施形態では、便宜上、第一車両10Aと第二車両10Bとを分けて説明するが、各車両10は第一車両10A及び第二車両10Bの何れの機能も有する。以下において、第一車両10Aと第二車両10Bとを区別しない場合には、単に、車両10という。
【0057】
(ハードウェア構成)
次に、
図6に基づいて、サーバ30のハードウェア構成について説明する。
図6は、本実施形態に係るシステム1を構成するサーバ30の構成の一例を概略的に示すブロック図である。なお、第一車両10A及び第二車両10Bのハードウェア構成は、
図1に示した車両10の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0058】
サーバ30は、プロセッサ31、主記憶部32、補助記憶部33、及び、通信部34を有する。これらは、バスにより相互に接続される。サーバ30のプロセッサ31、主記憶部32、補助記憶部33、及び、通信部34については、第1実施形態で説明した車両10のプロセッサ101、主記憶部102、及び、補助記憶部103、通信部106と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
(機能構成:車両)
図7は、本実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成の一例を示す図である。制御部100は、機能構成要素として、手動制御部1011、状況認知部1012、自動制御部1013、評価部1014、及び情報送受信部1015を含む。手動制御部1011、状況認知部1012、自動制御部1013、評価部1014、及び情報送受信部1015は、例えば、制御部100のプロセッサ101が、補助記憶部103に記憶された各種プログラムを実行することで提供される機能構成要素である。手動制御部1011、状況認知部1012、及び、自動制御部1013については、第1実施形態と同じため、説明を省略する。
【0060】
情報送受信部1015は、検出データを、通信部106を介してサーバ30に送信する。以下では、第一車両10Aで取得される検出データを自車データともいい、第二車両10Bで取得される検出データを他車データともいう。情報送受信部1015は、自車データをサーバ30に送信するときに、評価部1014による評価結果を併せて送信してもよい。なお、本実施形態では、運転者の運転操作が不適切であるか否かにかかわらず、自車データをサーバ30に送信するが、これに代えて、運転者の運転操作が不適切である場合に限り、自車データをサーバ30に送信してもよい。このようにすることで、通信量を低減することもできる。
【0061】
情報送受信部1015が、自車データを送信するタイミングは適宜設定可能であり、例えば、通知処理において送信してもよいし、定期的に送信してもよいし、何らかの情報をサーバ30に送信するタイミングに合わせて送信してもよいし、サーバ30からの要求に応じて送信してもよい。情報送受信部1015は、車両10を識別する識別情報(車両ID)及び自車データを取得した日時と関連付けて、自車データをサーバ30に送信する。
【0062】
また、情報送受信部1015は、サーバ30から他車データを受信する。受信する他車データは、第一車両10Aが走行する地点に関する他車データ、または、第一車両10Aの現在地から所定の領域内の地点に関する他車データとしてもよい。所定の領域は、第一車両10Aが走行し得る領域としてもよい。
【0063】
本実施形態に係る評価部1014は、運転者の運転操作を評価するときに、他車データ
を考慮する。例えば、自車データと基準データとの差が閾値以上であっても、自車データと他車データとの差が閾値未満の場合には、通知処理を行わない。閾値は、第一車両10Aと第二車両10Bとで運転操作の傾向が異なる場合の自車データと他車データとの差の下限値である。この閾値は、ステップS108における閾値と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。閾値は、予め決定して補助記憶部103に記憶させておく。なお、閾値は、環境データに基づいて変動してもよい。また、本実施形態では、自車データと他車データとの差に基づいた処理を例に挙げて説明するが、差の代わりに比を用いた処理も可能である。
【0064】
自車データと他車データとの差が閾値未満の場合には、第一車両10Aと第二車両10Bとで同じ傾向の運転操作が行われていることになる。例えば、道路上の障害物を避けたり、または、工事中の箇所を避けたりしている場合には、各車両10が同じ傾向の運転操作を行うことが多い。したがって、第二車両10Bと同じ傾向の運転操作が行われた第一車両10Aでは、運転操作が適切であると判定する。
【0065】
(機能構成:サーバ)
図8は、サーバ30の機能構成の一例を示す図である。サーバ30は、機能構成要素として、情報取得部301、情報提供部302、車両情報DB311、及び、地図情報DB312を含む。情報取得部301、及び、情報提供部302は、例えば、サーバ30のプロセッサ31が、補助記憶部33に記憶された各種プログラムを実行することで提供される機能構成要素である。
【0066】
車両情報DB311、及び、地図情報DB312は、プロセッサ31によって実行されるデータベース管理システム(Database Management System、DBMS)のプログラムが、補助記憶部33に記憶されるデータを管理することで構築される、例えば、リレーショナルデータベースである。なお、サーバ30の各機能構成要素のいずれか、またはその処理の一部は、ネットワークN1に接続される他のコンピュータにより実行されてもよい。
【0067】
情報取得部301は、各車両10から送信された情報(自車データ、及び、評価結果に関するデータなど)を取得して管理する。情報取得部301は、各車両10から送信された情報を、車両ID及び日時と関連付けて車両情報DB311に格納する。
【0068】
情報提供部302は、第一車両10Aに対して、現在地に対応する他車データを送信する。情報提供部302は、車両情報DB311に格納された他車データであって、第一車両10Aの現在地に対応する他車データを送信する。なお、第一車両10Aに送信する他車データは、第一車両10Aの現在地で通知処理を行った第二車両10Bに係る他車データであってもよい。また、情報提供部302は、第一車両10Aから要求があったときに、第一車両10Aに他車データを送信してもよいし、または、第一車両10Aから要求があったか否かにかかわらず、第一車両10Aに他車データを送信してもよい。
【0069】
車両情報DB311は、補助記憶部33に各車両10から受信した情報が格納されて形成されている。車両情報DB311には、車両ID、日時に関する情報、評価結果に関する情報、及び、自車データ(例えば、加減速度に関する情報、及び、舵角の変化率に関する情報など)が格納される。ここで、車両情報DB311に格納される情報の構成について、
図9に基づいて説明する。
図9は、車両情報DB311に格納されるテーブル構成を例示した図である。情報テーブルは、例えば、車両ID、日時、評価結果、位置、加減速度、及び、舵角の変化率の各フィールドを有する。車両IDフィールドには、車両10を特定する識別情報が入力される。日時フィールドには、情報が取得された日時に関する情報が入力される。評価結果フィールドには、車両10が送信した運転者の運転操作の評価
結果に関する情報を入力される。位置フィールドには、車両10が送信した位置情報が入力される。加減速度フィールドには、車両10が送信した加減速度に関する情報が入力される。舵角の変化率フィールドには、車両10が送信した舵角の変化率に関する情報が入力される。
【0070】
地図情報DB312には、地図データ、当該地図データ上の各地点の特性を示す文字や写真等のPOI(Point of Interest)情報を含む地図情報が格納される。なお、地図情
報DB312は、ネットワークN1に接続される他のシステム、例えば、GIS(Geographic Information System)から提供されてもよい。地図データには、例えば、道路(リ
ンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等が含まれる。
【0071】
(処理の流れ:システム)
本実施形態では、第一車両10Aにおいて検出データから基準データを減算した値の絶対値が閾値以上の場合に、第一車両10Aの評価部1014が、サーバ30に対して、他車データを要求する。そして、サーバ30は、この要求があった場合に、車両情報DB311を参照して、第一車両10Aの現在地に対応する位置情報が入力されており、且つ、評価結果が不適切を示す情報が入力されているレコードが存在するか否か判定する。そして、そのレコードが存在する場合には、サーバ30が第一車両10Aに対して、他車データを送信する。なお、そのようなレコードが存在しない場合には、サーバ30が第一車両10Aに対して、その旨を通知してもよい。
【0072】
他車データを受信した第一車両10Aでは、評価部1014が自車データと他車データとを比較し、その差が閾値未満であれば、通知処理を行わない。例えば、道路で工事が行われており、対向車線を通行しなければならない場合には、検出データと基準データとの差が閾値以上になり得る。しかし、この場合には、そのときの状況に合った運転操作をしているだけなので、通知処理を行う必要はない。そこで、自車データと他車データとの差が閾値未満のときに通知処理を行わないようにすれば、誤った通知が行われることを抑制できる。
【0073】
図10は、サーバ30が第一車両10Aに対して他車データを提供するときのシステム1の処理のシーケンス図である。なお、
図10は、第一車両10A及び第二車両10Bが各1台である場合を例示している。
【0074】
車両10は、夫々自車データ及び評価結果に関するデータを含む情報を生成し(S01,S03)、夫々サーバ30に送信する(S02,S04)。各車両10から情報を受信したサーバ30は、車両情報DB311を更新してこれらの情報を記憶する(S05)。S01からS05までの処理は、繰り返し実行される。第一車両10Aにおいて、運転者の運転操作を評価するために、自車データと基準データとが比較される(S06)。このときに、運転者の運転操作が不適切であると評価される場合には、第一車両10Aからサーバ30に、他車データを要求するための情報が送信される(S07)。サーバ30は、他車データの要求があった場合に、第一車両10Aの位置情報に基づいて、同じ位置で運転者の運転操作が不適切であると評価された第二車両10Bに係る他車データを抽出し(S08)、その他車データを第一車両10Aに送信する(S09)。そして、第一車両10Aでは、自車データと他車データとを比較して、運転者の運転操作が評価される。
【0075】
(処理の流れ:サーバ)
次に、
図11及び
図12を参照して、第2実施形態に係るサーバ30の処理を説明する。
図11は、サーバ30が車両情報DB311を更新するときのサーバ30の処理の一例
を示すフローチャートである。
図11に示す処理は、所定の時間(例えば、一定の周期間隔)毎に情報取得部301により実行される。
【0076】
ステップS301では、情報取得部301が、第一車両10Aから自車データ及び評価結果に関するデータを受信したか否か判定する。ステップS301で肯定判定された場合にはステップS302へ進み、否定判定された場合には本ルーチンを終了させる。ステップS302では、情報取得部301が、各車両10から受信した情報に基づいて、車両情報DB311を更新する。すなわち、各車両10から送信された情報を、車両ID及び日時と関連付けて車両情報DB311に格納する。
【0077】
次に、
図12は、サーバ30が第一車両10Aに他車データを送信するときのサーバ30の処理の一例を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、所定の時間(例えば、一定の周期間隔)毎に情報提供部302により実行される。なお、本ルーチン実行前に、車両情報DB311が生成されていることを前提として説明する。
【0078】
ステップS401では、情報提供部302が、他車データを送信する依頼を第一車両10Aから受信したか否か判定する。ステップS401で肯定判定された場合にはステップS402へ進み、否定判定された場合には本ルーチンを終了させる。ステップS402では、情報提供部302が、車両情報DB311から第一車両10Aに関する情報を取得する。ステップS403では、情報提供部302が、車両情報DB311を参照して、第一車両10Aの現在地に対応する位置を通過した第二車両10Bの検出データを他車データとして抽出する。このときに、評価結果が「不適切」であるレコードにおける検出データを抽出してもよい。また、時間帯が所定の近似度のレコードにおける検出データを抽出してもよい。所定の近似度は、例えば、運転操作の評価において影響がない、または、影響がほとんどない程度の差しかないこと示す。また、各レコードに天気に関する情報が格納されている場合には、天気が同じレコードにおける検出データを抽出してもよい。次に、ステップS404では、情報提供部302が、他車データを第一車両10Aに送信する。
【0079】
(処理の流れ:第一車両)
次に、
図13を参照して、各車両10において検出データ等をサーバ30に送信する処理について説明する。
図13は、各車両10において検出データ等をサーバ30に送信する処理のフローを示したフローチャートである。
図13に示す処理は、所定の時間(例えば、一定の周期間隔)毎に情報送受信部1015により実行される。
【0080】
ステップS501では、情報送受信部1015が、自車データ、及び、評価結果に関するデータを取得する。ステップS502では、情報送受信部1015が、サーバ30へ送信する情報を生成する。この情報には、車両ID、自車データを取得した日時、自車データ、及び、評価結果に関するデータが含まれる。次に、ステップS503では、情報送受信部1015が、生成した情報をサーバ30に送信する。
【0081】
(通知処理の流れ:第一車両)
図14は、本実施形態に係る通知処理を行う場合の処理のフローチャートである。ステップS108より前の処理については、
図3に示したフローチャートと同じため図示及び説明を省略する。
図14に示した処理は、所定の周期ごとに制御部100によって実行される。なお、
図14におけるステップS201は省略することができる。
【0082】
図14に示したフローチャートでは、ステップS201で肯定判定された場合に、ステップS601へ進む。ステップS601では、評価部1014が、サーバ30に依頼情報を送信する。依頼情報とは、他車データの送信を依頼するための情報である。依頼情報には、第一車両10Aの位置情報が含まれていてもよい。評価部1014は、依頼情報を生
成し、サーバ30に送信する。次に、ステップS602では、評価部1014が、サーバ30から他車データを受信したか否か判定する。ステップS602で肯定判定された場合にはステップS603へ進む。一方、ステップS602で否定判定された場合には、他車データがないため、不適切な運転操作があったとの評価が確定する。そのため、ステップS602で否定判定された場合には、ステップS109へ進んで通知処理が行われる。
【0083】
ステップS603では、評価部1014が、自車データから他車データを減算した値の絶対値が閾値以上であるか否か判定する。本ステップでは、他車データを用いて、通知処理を行うか否か判定する。ステップS603で肯定判定された場合には、自車両と他車両とで運転傾向が異なるため、不適切な運転操作があったとの評価が確定する。そのため、ステップS603で肯定判定された場合には、ステップS109へ進んで通知処理が行われる。一方、ステップS603で否定判定された場合には、自車両と他車両とで運転傾向が同じため、適切な運転操作であると評価される。そのため、ステップS603で否定判定された場合には、本ルーチンを終了させる。なお、ステップS603における閾値は、ステップS108における閾値と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、自動運転時の制御部100の制御による運転操作を基準として、運転者の運転操作の評価を行うときに、他車データを考慮することにより、手動運転中の運転者の運転操作の評価の精度をより高めることができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、サーバ30が第一車両10Aに他車データを提供するときに、他車データが取得された時間帯が、現在の時間帯と同じレコードに係る他車データを提供してもよい。例えば、平日のラッシュ時と、休日の閑散時とでは、交通量が異なるために、運転者の運転操作の傾向が異なる場合がある。このような交通量の変化に対応した他車データを提供することにより、手動運転中の運転者の運転操作の評価の精度をより高めることができる。また、天気などの運転操作に影響のある他のデータに応じて、提供する他車データを決定してもよい。
【0086】
本実施形態においては、ステップS108において肯定判定された後に、他車データを用いた判定が行われるが、これに代えて、他車データを用いて基準データを変動させてもよい。例えば、第一車両10Aの現在地と同じ地点において、同じ傾向を示す他車データが複数取得されている場合には、それらの平均的なデータを基準データとして用いて、ステップS108の処理を実行してもよい。この場合、ステップS108の処理を実行する前に、サーバ30から第一車両10Aに基準データが送信される。サーバ30では、車両情報DB311参照して、同じ位置で評価結果が不適切であった車両10が複数存在し、それらの検出データが所定の類似度である場合に、それらの検出データの平均値を求めて、その平均値をその位置の基準データとして設定してもよい。
【0087】
<第3実施形態>
本実施形態では、基準データの信頼度を考慮した運転操作の評価を実施する。ここで、基準データは、センサ群110の検出値に基づいて決定されるが、センサ群110の精度は変動する場合がある。例えば、環境情報センサ112を用いて車両10の周辺の状況などを検出する場合、逆光時、夜間、雨天時などでは画像認識の精度が低下し得る。また、雨天時には、ミリ波レーダの検出精度が低下し得る。そのため、基準データの算出値が環境の変化に応じて変動し得る。そうすると、運転操作の評価にも影響する。そこで本実施形態では、基準データの信頼度に基づいて閾値を補正する。例えば、信頼度が低いほど、運転操作の評価において「不適切」と判定され難くなるように、検出データと基準データとの差の閾値を大きくする。すなわち、検出データと基準データとの乖離度が、より大きくなっても許容されるようにする。基準データの信頼度は、センサ群110の信頼度と相関していてもよい。基準データの信頼度は、例えば、時間帯または天気に応じて設定され
てもよい。また、信頼度は、予め実験またはシミュレーション等により得てもよい。時間帯または天気と、信頼度との関係は、補助記憶部33に記憶させておくことができる。なお、時間帯または天気は、車両の周辺の状況の一例である。例えば、同じ時間帯または同じ天気のときには、車両の周辺の状況または道路状況が所定の近似度であるものと考える。
【0088】
図15は、センサ群110の信頼度に基づいて閾値を補正するときの処理のフローチャートである。ステップS107より前の処理については、
図3に示したフローチャートと同じため図示及び説明を省略する。
図15に示したフローチャートでは、ステップS107の処理が完了すると、ステップS701へ進む。ステップS701では、センサ群110の信頼度が取得される。信頼度と、時間帯及び天気との関係は、予め補助記憶部33に記憶されている。したがって、時間帯及び天気に基づいて、信頼度を取得する。天気は、環境情報センサ112によって取得してもよいし、サーバ30から取得してもよいし、または、天気の情報を提供する他のサーバから取得してもよい。次に、ステップS702では、信頼度に基づいて運転操作の評価に用いる閾値を補正する。信頼度と閾値の補正量または補正係数との関係は、予め補助記憶部33に記憶されている。なお、信頼度と閾値との関係は、線形である必要はない。信頼度に応じて閾値を連続的に変化させてもよく、段階的に変化させてもよい。また、信頼度が低いほど閾値を大きくしてもよい。そして、ステップS702の処理が完了すると、ステップS108へ進む。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、自動運転時の制御部100の制御による運転操作を基準として、運転者の運転操作の評価を行うときに、基準データの信頼度に基づいて閾値を変動させるため、手動運転中の運転者の運転操作の評価の精度をより高めることができる。
【0090】
なお、第2実施形態において、第3実施形態で説明した信頼度を用いることもできる。例えば、第2実施形態において、基準データの信頼度が所定の信頼度未満の場合に限り、他車データを用いた運転操作の評価を行ってもよい。センサ群110の信頼度が低い場合には、運転操作の評価を誤る虞があるので、このときに他車データをさらに参照して運転操作の評価を行えば、運転操作の評価の精度を向上させることができる。所定の信頼度は、運転操作の評価を正しく行うことができる信頼度として設定される。
【0091】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。上記実施形態では、車両10が、手動制御部1011、状況認知部1012、自動制御部1013、及び評価部1014を含んでいるが、これらの機能構成要素の一部または全部が、サーバ30に含まれていてもよい。例えば、運転者の運転操作の評価をサーバ30が行ってもよい。この場合、運転操作が不適切と判定した場合にサーバ30が車両10に警告に関する情報を送信してもよい。
【0092】
また、上記実施形態において、閾値を変動させる例について説明したが、これに代えて、検出データまたは基準データを変動させても同じ評価が可能である。
【0093】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0094】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0095】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0096】
1 システム
10 車両
30 サーバ
100 制御部
101 プロセッサ
102 主記憶部
103 補助記憶部
110 センサ群
120 装置群
150 バス
1011 手動制御部
1012 状況認知部
1013 自動制御部
1014 評価部