(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231011BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02K9/19 B
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2020049531
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】内藤 好晴
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107905(JP,A)
【文献】特開2013-135577(JP,A)
【文献】特開2019-097241(JP,A)
【文献】特開平09-154257(JP,A)
【文献】特開2013-179812(JP,A)
【文献】特開2000-130176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、回転軸線を中心にして回転する態様で前記ステータの中空内に配置されるロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容するハウジングと、オイルポンプとを備え、
前記ハウジングが、オイルを貯留するオイル貯留部と、前記オイル貯留部及び前記オイルポンプを経由したオイルを、前記ステータにおける、前記オイル貯留部との対向領域とは反対側の領域に向けて吐出する吐出口とを備える回転機であって、
前記ハウジングが、前記ハウジングにおける前記オイル貯留部とは反対側の領域に配置され、前記ロータの回転軸線方向に延びる第1油路と、前記第1油路における前記回転軸線方向の一方側の端と他方側の端とのうち、他方側の端に連通し、一方側から他方側に向かいつつ、前記回転軸線を中心とする径方向の外側から内側に向かう第2油路とを備え、
前記第1油路が、前記オイル貯留部側の壁に前記吐出口を備え、
前記第2油路が、前記回転軸線方向における他方側の端に開口を備え、
前記開口が、前記ロータの回転軸線方向の他方側の端よりも他方側に位置
し、
前記ハウジングが、前記ロータ又はステータの前記回転軸線方向の他方側の端面に対向する壁の全域のうち、前記開口よりも径方向の内側の領域に、前記径方向の外側から内側に向かうにつれて、前記回転軸線方向の一方側に近づく斜面と、前記斜面の上部に形成され略上下方向に延びる一方側の面と、を備え
前記開口から吐出したオイルの一部は前記一方側の面で跳ね返り前記ロータの他方側の端面に付着すると共に、
前記開口から吐出した流れたオイルの一部は前記斜面上を移動して前記ロータの他方側の端面に付着する、
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記斜面における、前記斜面上でのオイル移動方向と直交する方向の両脇からそれぞれ前記回転軸線方向の一方側に向けて立ち上がる斜面側壁を備える
ことを特徴とする請求項
1に記載の回転機。
【請求項3】
2つの前記斜面側壁間の距離が、径方向の外側から内側に向かうにつれて小さくなる
ことを特徴とする請求項
2に記載の回転機。
【請求項4】
前記ロータの前記回転軸線の位置に設けられた、前記回転軸線方向に延びる貫通孔に嵌め込まれるシャフトを備え、
前記壁における前記斜面を備える部分が、前記径方向に延び且つ前記回転軸線方向の一方側から他方側に窪む溝を備える
ことを特徴とする請求項
2または請求項3に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータの中空内に配置されるロータと、ステータ及びロータを収容するハウジングと、オイルポンプとを備える回転機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の回転機としてのモータジェネレータは、ステータ、ロータ、ハウジング、及びオイルポンプを備える。モータジェネレータのハウジングは、オイルを貯留するオイル貯留部たるオイルパンと、オイルパン及びオイルポンプを経由したオイルを、ステータにおけるオイルパンとの対向領域とは反対側の領域に向けて吐出する吐出口とを備える。吐出口から吐出されたオイルは、ステータや、ステータに巻かれたコイルに付着した後、重力によってオイル貯留部に滴下する過程で、ステータ及びコイルを冷却する。ステータやコイルとの熱交換によって温められたオイルは、オイルポンプの吸引口に至るまでの過程で、ハウジングの外に設けられた熱交換器によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる構成のモータジェネレータにおいては、オイルをステータの外周面に付着させてオイル貯留部に滴下させることから、ステータの中空内に配置されたロータを良好に冷却することが困難であった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オイルによってステータを冷却しつつ、ロータの冷却効率を高めることができる回転機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の回転機は、ステータと、回転軸線を中心にして回転する態様で前記ステータの中空内に配置されるロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容するハウジングと、オイルポンプとを備え、前記ハウジングが、オイルを貯留するオイル貯留部と、前記オイル貯留部及び前記オイルポンプを経由したオイルを、前記ステータにおける、前記オイル貯留部との対向領域とは反対側の領域に向けて吐出する吐出口とを備える回転機であって、前記ハウジングが、前記ハウジングにおける前記オイル貯留部とは反対側の領域に配置され、前記ロータの回転軸線方向に延びる第1油路と、前記第1油路における前記回転軸線方向の一方側の端と他方側の端とのうち、他方側の端に連通し、一方側から他方側に向かいつつ、前記回転軸線を中心とする径方向の外側から内側に向かう第2油路とを備え、前記第1油路が、前記オイル貯留部側の壁に前記吐出口を備え、前記第2油路が、前記回転軸線方向における他方側の端に開口を備え、前記開口が、前記ロータの回転軸線方向の他方側の端よりも他方側に位置する。前記ハウジングは、前記ロータ又はステータの前記回転軸線方向の他方側の端面に対向する壁の全域のうち、前記開口よりも径方向の内側の領域に、前記径方向の外側から内側に向かうにつれて、前記回転軸線方向の一方側に近づく斜面と、前記斜面の上部に形成され略上下方向に延びる一方側の面と、を備える。前記開口から吐出したオイルの一部は前記一方側の面で跳ね返り前記ロータの他方側の端面に付着すると共に、前記開口から吐出した流れたオイルの一部は前記斜面上を移動して前記ロータの他方側の端面に付着する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オイルによってステータを冷却しつつ、ロータの冷却効率を高めることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るモータシステムのステータ及びロータを示す横断面図である。
【
図4】同モータシステムのモータハウジング、オイルクーラ、及び電動オイルポンプを、回転軸線方向の他方側から示す斜視図である。
【
図5】同モータハウジング、同オイルクーラ、及び同電動オイルポンプを、同電動オイルポンプの回転軸線方向における吸入部及び吐出部の位置で破断した破断面を、回転軸線方向の一方側から示す横断面図である。
【
図6】同モータハウジング、同オイルクーラ、及び同電動オイルポンプを、同オイルクーラの回転軸線方向における流出部の位置で破断した破断面を、回転軸線方向の一方側から示す横断面図である。
【
図7】
図3の一部を拡大して示す拡大縦断面図である。
【
図8】同モータシステムのインバータハウジングを回転軸線方向の一方側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を用いて、本発明を適用した回転機システムとしてのモータシステムの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るモータシステムのステータ5及びロータ7を示す横断面図である。ステータ5は、円筒状のステータコア5aと、ステータコア5aに巻かれた巻線たる平角線コイル5bとを備える。ロータ7は、ステータコア5aの中空内に配置され、ロータコア7aと、ロータ7の回転軸線Lを中心とする周方向に並ぶ態様でロータコア7aに埋め込まれた複数の永久磁石7bとを備える。なお、
図1においては、平角線コイル5bの横断面に付されるべきハッチングが省略されている。
【0012】
図2は、実施形態に係るモータシステム1を示す斜視図である。なお、
図2においては、モータ部2の内部構成を可視化するために、後述のモータカバーの図示が省略されている。モータシステム1は、回転機たるモータ部2と、インバータ50と、電動オイルポンプ80と、オイルクーラ90とを備える。
【0013】
モータ部2は、回転可能なシャフト6を備える。回転軸部材としてのシャフト6は、図中において一点鎖線で示される回転軸線Lを中心にして回転可能に支持される。ロータ7は、シャフト6と一体的に回転する。回転軸線Lの延在方向は、本発明における回転軸線方向の一例である。
図2における矢印A方向は、回転軸線方向における一方側の一例である。また、
図2における矢印B方向は、回転軸線方向における他方側の一例である。
【0014】
回転機たるモータ部2は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータからなり、シャフト6の他に、モータハウジング3、ステータ5、ロータ7等を備える。モータハウジング3には、円柱状の中空が設けられている。前述の中空は、矢印A方向側(回転軸線方向の一方側)の端と、矢印B方向側(回転軸線方向の他方側)の端とのそれぞれに、開口を備える。矢印A方向側の端の開口は、不図示のモータカバーによって塞がれる。また、矢印B方向側の端の開口は、後述のインバータハウジング55によって塞がれる。
【0015】
以下、モータハウジング3及びインバータハウジング55をまとめて、単にハウジング(3、55)と言う。なお、インバータハウジング55の回転軸線方向の一方側は、モータ部2のボールベアリング8等を収容することから、モータハウジングを兼ねている。
【0016】
モータハウジング3は、円柱状の中空内に、ステータ5、シャフト6、及びロータ7を収容する。シャフト6及びロータ7は、円筒状のステータコア5aの中空内に配置される。但し、シャフト6の回転軸線方向の一端部は、ステータコア5aの長手方向の一端から突出し、シャフト6の回転軸線方向の他端部は、ステータコア5aの長手方向の他端から突出する。
【0017】
モータハウジング3、及びインバータハウジング55の回転軸線方向の一方側は、オイルを貯留するオイル貯留部3aを内部に備える。モータシステム1は、オイル貯留部3aを鉛直方向下方側に向ける姿勢(以下、正規姿勢と言う)で配置されることを前提にした設計がなされている。以下、正規姿勢で配置されたモータシステム1における、モータシステム1、モータハウジング3、及び後述のインバータハウジング55について、鉛直方向の下側になる部分を下部と言い、上側になる部分を上部と言う。
【0018】
モータハウジング3の内部空間、及びインバータハウジング55の回転軸線方向の一方側の内部空間には、一定量のオイルが収容される。正規姿勢で配置されたモータシステム1において、モータハウジング3内、及びインバータハウジング55の回転軸線方向の一方側に収容されたオイルは、重力によってオイル貯留部3a内に流れ込んで貯留される。
【0019】
図3は、モータシステム1の縦断面図である。
図3においても、モータハウジング3における図中矢印A方向側の開口を塞ぐモータカバーの図示が省略されている。以下、回転軸線Lを中心とする周方向を単に周方向と言う。また、回転軸線Lを中心とする径方向を単に径方向と言う。
【0020】
シャフト6は、ロータコア7aの中心に設けられた貫通穴に嵌め込まれる。シャフト6における矢印A方向側(一方側)、及び矢印B方向側(他方側)のそれぞれは、ボールベアリング8によって回転可能に支持される。
【0021】
モータ部2と、インバータ50とは、互いに回転軸線方向に隣接する。インバータ50は、車両のECU(Engine Control Unit)等の上位装置から送られてくる指令に従って、モータ部2に三相電源の電力を指令に基づく周波数で供給するものである。インバータカバー51、制御基板52、及びインバータハウジング55を備えるインバータ50は、回転軸線方向において、モータ部2よりも他方側(矢印B方向側)に配置される。
【0022】
インバータカバー51及びインバータハウジング55のそれぞれは、中空構造の鋳造品からなる。インバータハウジング55は、回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)に、隔壁55aを備える。この隔壁55aは、モータハウジング3の回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)の開口を塞ぎ、モータ部2とインバータ50とを隔てる。
【0023】
インバータハウジング55の回転軸線方向の他方側の中空内には、制御基板52が配置される。インバータハウジング55の回転軸線方向の他方側は、他方側に向けて開口している。この開口は、インバータカバー51によって塞がれる。
【0024】
モータハウジング3は、オイルを流通させるための第1油路3bを備える。第1油路3bは、モータハウジング3における、ステータ5よりも径方向の外側の領域であって、且つオイル貯留部3aとは反対側の領域(上部)に配置され、ロータ7の回転軸線方向に延びる。なお、本発明において、回転軸線方向に延びる態様は、厳密に回転軸線方向に沿って延びる態様の他、回転軸線方向から45〔°〕未満に傾いた方向に延びる態様も含む。
【0025】
インバータハウジング55の障壁55aは、第2油路55a1を備える。第2油路55a1は、第1油路3bにおける回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)の端と他方側(矢印B方向側)の端とのうち、他方側の端に連通し、一方側から他方側に向かいつつ、径方向の外側から内側に向かう。第2油路55a1は、回転軸線方向における他方側(矢印B方向側)の端に開口55a2を備える。この開口55a2は、図示のように、ロータ7の回転軸線方向の他方側の端よりも他方側に位置する。
【0026】
モータハウジング3は、オイルを流通させるための第1油路3bを備える。第1油路3bは、モータハウジング3におけるオイル貯留部3aとは反対側の領域(上部)に配置され、ロータ7の回転軸線方向に延びる。第1油路3bは、回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)の端部に第1吐出口3b1を備え、且つ回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)の端部に第2吐出口3b2を備える。
【0027】
第1油路3b内のオイルは、回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)において、第1吐出口3b1から吐出される。吐出されたオイルは、ステータ5の平角線コイル5bにおける回転軸線方向の一方側の端部に付着して平角線コイル5bを冷却した後、重力によってモータハウジング3のオイル貯留部3aに落下する。また、第1油路3b内のオイルは、回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)において、第2吐出口3b2から吐出される。吐出されたオイルは、ステータ5の平角線コイル5bにおける回転軸線方向の他方側の端部に付着して平角線コイル5bを冷却した後、重力によってモータハウジング3のオイル貯留部3aに落下する。ステータコア7aは、平角線コイル7bを介してオイルによって冷却される。
【0028】
インバータハウジング55の隔壁55aは、第2油路55a1を備える。第2油路55a1は、第1油路3bにおける回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)の端に連通し、一方側から他方側に向かいつつ、径方向の外側から内側に向かう方向に延びる。第2油路55a1は、回転軸線方向における他方側(矢印B方向側)の端に第3吐出口55a2を備える。この第3吐出口55a2は、図示のように、ロータ7の回転軸線方向の他方側の端よりも他方側に位置する。
【0029】
図4は、モータハウジング3、オイルクーラ90、及び電動オイルポンプ80を、回転軸線方向の他方側から示す斜視図である。モータハウジング3の下部には、オイル貯留部3aに通じる第3油路3eが設けられる。
【0030】
図5は、モータハウジング3、オイルクーラ90、及び電動オイルポンプ80を、電動オイルポンプ80の回転軸線方向における吸入部80a及び吐出部80bの位置で破断した破断面を、回転軸線方向の一方側から示す横断面図である。なお、
図5においては、オイルクーラ90及び電動オイルポンプ80の内部構造の図示が省略されている。
【0031】
図4に示される第3油路3eは、
図5に示されるように、電動オイルポンプ80の吸入部80aに通じる。モータハウジング3は、電動オイルポンプ80の吐出部80bからオイルクーラ90の流入部90aへ通じる第4油路3fを備える。
【0032】
図6は、モータハウジング3、オイルクーラ90、及び電動オイルポンプ80を、オイルクーラ90の回転軸線方向における流出部90bの位置で破断した破断面を、回転軸線方向の一方側から示す横断面図である。図示のように、モータハウジング3は、オイルクーラ90の流出部90bから第1油路3bにおける回転軸線方向の中央部へ通じる第5油路3gを備える。
【0033】
オイル貯留部3aに貯留されたオイルは、電動オイルポンプ80の吸引力により、
図4に示される第3油路3eの開口を通じて第3油路3e内に吸引された後、
図5に示される電動オイルポンプ80の吸入部80aに吸入される。その後、オイルは、電動オイルポンプ80の吐出部80bから吐出されて第4油路3f内をモータハウジング3の下部から上部に向けて移動し、オイルクーラ90の流入部90aを通じてオイルクーラ90内に流入する。
【0034】
オイルクーラ90は、不図示の冷媒路と、冷媒路に隣接するオイル流路とを筐体内に備える。冷媒路には、外部から送られてくるクーラント等の冷媒が通る。オイルクーラ90内に流入したオイルは、オイル流路を流れる過程で、冷媒路内の冷媒との熱交換によって冷却される。冷却後のオイルは、
図6に示される、オイルクーラ90の流出部90bから流出して第5油路3g内に流入した後、第5油路3gから、第1油路3bの回転軸線方向の中央部に流入する。
【0035】
第1油路3bの回転軸線方向の中央部に流入したオイルは、第1経路に沿って流れるオイルと、第2経路に沿って流れるオイルと、第3経路に沿って流れるオイルとに分かれる。第1経路に沿って流れるオイルは、
図3において、第1油路3b内を回転軸線方向に沿って他方側から一方側(B側からA側)に向けて流れた後、第1吐出口3b1から吐出する。そして、前述のオイルは、ステータ5の平角線コイル5bの回転軸線方向における一方側の端部(矢印A方向側の端部)に付着する。第2経路に沿って流れるオイルは、第1油路3b内を回転軸線方向に沿って一方側から他方側(A側からB側)に向けて流れた後、第2吐出口3b2から吐出する。そして、前述のオイルは、ステータ5の平角線コイル5bの回転軸線方向における他方側の端部(矢印B方向側の端部)に付着する。第3経路については、後述する。
【0036】
図7は、
図3の一部を拡大して示す拡大縦断面図である。第3経路に沿って流れるオイルは、第1油路3bの内部を回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)から他方側(矢印B方向側)に向かって流れ、第1油路3bの他方側の端を介して、第2油路55a1内に流れ込む。そして、オイルは、第2油路55a1内を、回転軸線方向の一方側から他方側に向かいつつ、径方向の外側から内側に向かう方向に流れる。第2油路55a1の回転軸線方向の他方側の端まで移動したオイルは、第2油路55a1の開口55a2から吐出した後、矢印Cで示されるように、障壁55aの一方側の面55a3上で跳ね返る。跳ね返ったオイルは、回転軸線方向の他方側から一方側に向かいつつ、重力によって径方向の外側から内側に向かう方向に飛んで、ロータ7の回転軸線方向における他方側の端面に付着する。
【0037】
かかる構成のモータシステム1によれば、オイルをステータ5の外周面の上部に付着させ、且つオイルをロータ7の回転軸線方向における他方側の端に付着させることで、ステータ5を冷却しつつ、ロータ7の冷却効率を高めることができる。
【0038】
図3に示されるように、障壁55aは、ロータ7及びステータ5の回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)の端面に対向する。障壁55aの全域のうち、第2油路55a1の開口55a2開口よりも径方向の内側の領域には、
図7に示されるように、径方向の外側から内側に向かうにつれて、回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)に近づく斜面55a4が設けられている。障壁55aの面55a3上で回転軸線方向の一方側に向けて良好に跳ね返らなかったオイルは、重力によって斜面55a4上を矢印D方向に移動しながら、ロータ7の回転軸線方向の他方側の端面に近づいて付着する。
【0039】
かかる構成によれば、斜面55a4により、ロータ7の回転軸線方向の他方側(矢印B方向側)の端面に付着するオイルの量を増加させて、ロータ7の冷却効率をより向上させることができる。
【0040】
図8は、インバータハウジング55を回転軸線方向の一方側から示す斜視図である。インバータハウジング55の障壁55aは、斜面55a4における、斜面55a4上でのオイル移動方向と直交する方向の両脇、からそれぞれ回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)に向けて立ち上がる斜面側壁55a5を備える
【0041】
かかる構成においては、斜面55a4上を移動するオイルの移動方向と直交する方向への広がりを2つの斜面側壁55a5によって阻止することで、オイルの広がりによるロータ7の端面へのオイル付着量低下を防止する。これにより、オイルの広がりによるロータ7の冷却効率の低下を防止することができる。
【0042】
2つの斜面側壁55a5間の距離は、図示のように、径方向の外側から内側に向かうにつれて小さくなることから、2つの斜面側壁55a5の間の空間の容量は、径方向の外側から内側に向かうにつれて小さくなる。斜面55a4は、径方向の外側から内側に向かうにつれて、回転軸線方向の他方側から一方側に近づくので、前述の容量は、ロータ7の端面に近づくにつれて小さくなる。かかる構成によれば、ロータ7の回転軸線方向の他方側の端面に近づくにつれて、2つの斜面側壁55a5の間のオイルの液位を上昇させて、ロータ7の端面に付着させ易くすることで、ロータ7の冷却効率を更に向上させることができる。
【0043】
障壁55aにおける斜面55a4を備える部分は、径方向に延び且つ回転軸線方向の一方側(矢印A方向側)から他方側(矢印B方向側)に窪む溝55a6を備える。重力によって斜面55a4上を移動するオイルの一部は、溝55a6内に進入し、ほぼ重力方向に沿って移動してシャフト(
図3の6)に付着する。よって、モータシステム1によれば、溝55a6によってオイルのシャフトへの付着を促して、シャフトの冷却効率を高めることができる。
【0044】
図3~
図7を用いて説明したように、モータハウジング3は、オイル貯留部3aから、電動オイルポンプ80と、オイルクーラ90とを経て、第1吐出口3b1、第2吐出口3b2、第3吐出口55a2に至るまでのオイルの流路を全て備える。かかる構成のモータシステム1によれば、オイルをオイルクーラ90内とモータ部2内とで循環させる循環路を構成するための配管をモータ外に設けることなく、オイルを循環させることが可能なので、モータシステム1の生産性を向上させることができる。
【0045】
本発明を回転機としてのモータ部2に適用した例について説明したが、本発明を回転機としての発電機(ダイナモ)に適用してもよい。
【0046】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の構成を適用し得る範囲内で、実施形態とは異なる構成を採用することもできる。本発明は、以下に説明する態様毎に特有の作用効果を奏する。
【0047】
〔第1態様〕
第1態様は、ステータ(例えばステータ5)と、回転軸線(例えば回転軸線L)を中心にして回転する態様で前記ステータの中空内に配置されるロータ(例えばロータ7)と、前記ステータ及び前記ロータを収容するハウジング(例えばハウジング(3、55))と、オイルポンプ(例えば電動オイルポンプ80)とを備え、前記ハウジングが、オイルを貯留するオイル貯留部(例えばオイル貯留部3a)と、前記オイル貯留部及び前記オイルポンプを経由したオイルを、前記ステータにおける、前記オイル貯留部との対向領域とは反対側の領域に向けて吐出する吐出口とを備える回転機(例えばモータ部2)であって、前記ハウジングが、前記ハウジングにおける前記オイル貯留部とは反対側の領域に配置され、前記ロータの回転軸線方向に延びる第1油路(例えば第1油路3b)と、前記第1油路における前記回転軸線方向の一方側の端と他方側の端とのうち、他方側の端に連通し、一方側から他方側に向かいつつ、前記回転軸線を中心とする径方向の外側から内側に向かう第2油路(例えば第2油路55a1)とを備え、前記第1油路が、前記オイル貯留部側の壁に前記吐出口(例えば吐出口3b1)を備え、前記第2油路が、前記回転軸線方向における他方側の端に開口(例えば開口55a2)を備え、前記開口が、前記ロータの回転軸線方向の他方側の端よりも他方側に位置することを特徴とする回転機である。
【0048】
第1態様において、吐出口から吐出したオイルは、ステータの外周面の上部に付着した後、重力によって外周面上を移動してステータを冷却する。一方、第2油路内のオイルは、第2油路の回転軸線方向の他方側の端まで移動して開口55a2から吐出した後、ハウジングの壁(例えば障壁55a)における回転軸線方向の一方側の面上で跳ね返る。跳ね返ったオイルは、回転軸線方向の他方側から一方側に向かいつつ、重力によって径方向の外側から内側に向かう方向に飛んで、ロータの回転軸線方向における他方側の端面に付着する。この付着により、前述のオイルはロータを冷却する。よって、第1態様によれば、ステータを冷却しつつ、ロータの冷却効率を高めることができる。
【0049】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、前記ハウジングが、前記ロータ又はステータの前記回転軸線方向の他方側の端面に対向する壁(例えば障壁55a)の全域のうち、前記開口よりも径方向の内側の領域に、前記径方向の外側から内側に向かうにつれて、前記回転軸線方向の一方側に近づく斜面(例えば斜面55a4)を備えることを特徴とする回転機である。
【0050】
かかる構成によれば、斜面により、ロータの回転軸線方向の他方側の端面に付着するオイルの量を増加させて、ロータの冷却効率をより向上させることができる。
【0051】
〔第3態様〕
第3態様は、第2態様の構成と、前記斜面における、前記斜面上でのオイル移動方向と直交する方向の両脇からそれぞれ前記回転軸線方向の一方側に向けて立ち上がる斜面側壁(例えば斜面側壁55a5)とを備えることを特徴とする回転機である。
【0052】
第3態様によれば、2つの斜面側壁により、斜面上を移動するオイルの移動方向と直交する方向への広がりを阻止することで、オイルの広がりによるロータの冷却効率の低下を防止することができる。
【0053】
〔第4態様〕
第4態様は、第3態様の構成を備え、2つの前記斜面側壁間の距離が、径方向の外側から内側に向かうにつれて小さくなることを特徴とする回転機である。
【0054】
第4態様によれば、ロータの回転軸線方向の他方側の端面に近づくにつれて、2つの斜面側壁の間のオイルの液位を上昇させて、ロータの端面に付着させ易くすることで、ロータの冷却効率を更に向上させることができる。
【0055】
〔第5態様〕
第5態様は、第2態様~第4態様の何れかの構成と、前記ロータの前記回転軸線の位置に設けられた、前記回転軸線方向に延びる貫通孔に嵌め込まれるシャフト(例えばシャフト6)とを備え、前記壁における前記斜面を備える部分が、前記径方向に延び且つ前記回転軸線方向の一方側から他方側に窪む溝(例えば溝55a6)を備えることを特徴とする回転機である。
【0056】
かかる構成によれば、溝によってオイルのシャフトへの付着を促して、シャフトの冷却効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
1:モータシステム、 2:モータ部(回転機)、 3:モータハウジング(ハウジングの一部)、 、3a:オイル貯留部、 3b:第1油路、 3b1:第1吐出口、 3b2:第2吐出口、 3e:第3油路、 3f:第4油路、 3g:第5油路、 5:ステータ、 5a:ステータコア、 5b:平角線コイル(巻線)、 6:シャフト、 7:ロータ、 7a:ロータコア、 7b:永久磁石、 55:インバータハウジング(ハウジングの一部)、 55a:障壁(壁)、 55a1:第2油路、 55a2:開口、 55a3:面、 55a4:斜面、 55a5:斜面側壁、 55a6:溝、 80:電動オイルポンプ(オイルポンプ)、 80a:吸入部、 80b:吐出部、 90:オイルクーラ、 90a:流入部、 90b:流出部