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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】飼料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 40/30 20160101AFI20231011BHJP
【FI】
A23K40/30 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020063222
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021158963
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】日下 仁
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-523094(JP,A)
【文献】特開平02-163044(JP,A)
【文献】特開昭56-154956(JP,A)
【文献】特開昭64-013953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の性質(A)及び(B)を有する芯物質に対して、着色料を含有し、融点が40℃以上の粉末状脂質によって被覆してなる被覆粒子であって、
前記被覆粒子は、37℃の水を用いた溶出試験において、15分後の芯物質の溶出率が3~30質量%である、前記被覆粒子を含む、飼料組成物。
(A)メジアン径(D50)が、200~850μmである。
(B)粒子径均一性(D90/D10)が、2.3以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色した粉末状脂質によって芯物質である粉粒状物質を被覆して得られる被覆粒子を含む、飼料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、家畜用飼料では家畜の生育に必要な様々な素材を組み合わせて製造されるが、素材の組み合わせによっては、素材同士が接触することで経時的に変色することが知られている。例えば、家畜の生育に必要なアスコルビン酸は、鉄などの他の素材と接触すると酸化され、褐変することが知られている。また、家畜の生育に必要な必須アミノ酸やペプチド、タンパク質などは還元糖やアスコルビン酸とメイラード性の反応を起こしやすく、このメイラード反応によっても著しく褐変する。具体的には、ピロリン酸第二鉄とアスコルビン酸の粉末を混合したものは、時間の経過に伴い褐変する。時間の経過に伴い変色する現象は流通上、好ましくなく、色調は一定であることが望まれる。一方で、家畜に供する直前に素材を計量し、混合することは作業者の負担になる。そのため、家畜飼料において、家畜の生育に必要な様々な素材を予め混ぜ合わせた商品に市場のニーズは高く、素材同士の接触が原因となる変色が抑制されることで、幅広い素材を家畜用混合飼料として使用することが可能になる。
また、家畜の生育に必要な素材は、牛などの反芻動物では、第一胃(ルーメン)中の微生物による発酵によって、揮発性脂肪酸や有機酸に分解され、微生物の栄養素として利用されてしまうため、第四胃以降の消化管から吸収することができないという問題がある。そこで、ルーメン内で微生物の発酵の影響を受けないように、素材を油脂で被覆し、ルーメンバイパス性を付与した組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、被覆材である硬化油脂の溶融物に素材の粉末を分散し、素材を含む溶融物を冷却した空気中に噴出させて固化することにより得られたルーメンバイパス製剤が開示されている。このルーメンバイパス製剤は、素材が被膜材中に分散した状態で被覆粒子を形成するため、他の素材との接触を防止することが期待される。しかし、被膜材中に分散する素材の一部は、被覆粒子の表面に位置しており、他成分と共存した際に変色を起こしてしまうという問題がある。また、被覆粒子の内部に位置する素材は溶融した油脂で完全に被覆されているため、他成分との接触は回避できるが、吸収されずに消化管を通過し、排出されてしまうという問題がある。
以上のとおり、各種素材が混合される家畜飼料において、保管中に変色が起こらずに、それぞれの素材を十分に吸収することができる飼料組成物は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/030528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、素材同士が接触する混合物において、時間の経過に伴い発生する変色を抑制し、保管中の変色を目立たなくすることが可能であり、かつ、体内で素材が吸収されて、その栄養効果を得られる被覆粒子を含む、飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するにあたって鋭意検討した結果、着色した粉末状脂質によって被覆する芯物質の粒子径を特定の大きさに調整することにより、上記の課題を解決し得ることの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0006】
[1]
下記の性質(A)及び(B)を有する芯物質に対して、着色料を含有し、融点が40℃以上の粉末状脂質によって被覆してなる被覆粒子を含む、飼料組成物。
(A)メジアン径(D50)が、200~850μmである。
(B)粒子径均一性(D90/D10)が、2.3以下である。
[2]
前記被覆粒子は、37℃の水を用いた溶出試験において、15分後の芯物質の溶出率が3~30質量%である、[1]に記載の被覆粒子を含む、飼料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、素材同士が接触する混合物において、時間の経過に伴い発生する変色を抑制し、保管中の変色を目立たなくすることが可能であり、かつ、体内で素材が吸収されて、その栄養効果を得られる飼料組成物を提供することができる。
また、本発明の飼料組成物によれば、着色することで有効成分を視覚的に分かりやすくすることができ、家畜に供した際に、有効成分を喫食しているかを判断しやすくなるなど、家畜飼料としての価値も高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[被覆粒子]
本発明の飼料組成物は、(A)メジアン径(D50)が、200~850μmであり、(B)粒子径均一性(D90/D10)が、2.3以下である芯物質に対して、着色料を含有し、融点が40℃以上の粉末状脂質を被覆してなる被覆粒子を含む。
本願発明は、均一な大きさに調整した芯物質(素材)を着色した粉末状脂質で被覆することにより、素材同士の接触を回避し、経時的な変色を抑制することができる。また、着色料を含有する脂質によって芯物質を被覆するため、経時的な変色を目立たなくするという効果がある。さらには、メジアン径が200~850μm以上であり、粒子径均一性(D90/D10)が2.3以下である芯物質を用いることにより、芯物質の表面に粉末状脂質が均一に配置されるため、素材同士の接触を回避することができる。また、粉末状脂質で芯物質を被覆することから、芯物質を体内の消化管で溶出させ、栄養効果を得ることができる。
【0009】
<粉末状脂質>
本願発明において、粉末状脂質は芯物質である粒子(以下、「芯物質粒子」ともいう。)を被覆することで、変色を引き起こす接触を抑制するとともに、着色した脂質で均一な被覆層を形成することにより、経時的な変色がわずかであれば、その変色を目立たなくすることができる。粉末状脂質は、融点が40℃以上の脂質を使用することができる。40℃未満であると常温において粉末状態として存在することが困難となり、被覆粒子を常温において保管した時に粉末状態を維持できないためである。なお、融点は、基準油脂分析試験法「2.2.4.2融点(上昇融点)」に準じて測定する。
【0010】
粉末状脂質の材料としては、特に制限されず、例えば、コーン油、菜種油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、ゴマ油、オリーブ油、ヤシ油、カカオ脂、パーム油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、米ぬかワックス、さとうきびワックス、カルナウバワックス、小麦ワックス等の植物性ワックス、蜜蝋、羊毛ろう等の動物性ワックス、高級アルコール、高級脂肪酸等がある。また、粉末状脂質は、これらの脂質の融点が40℃以上になるよう水素添加し、粉末化することにより得ることができる。これらの脂質は1種または2種以上のものを混合して使用できる。
【0011】
本発明に用いる着色料は、飼料用に使えるものであれば、特に限定されないが、被覆する油脂に均一に分散可能であることより、好ましくは油溶性色素である。着色料として、例えばクチナシ色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、ウコン色素、紅コウジ色素、カラメル色素等の天然色素、βカロテン、バターイエロー、オレンジ色素、赤色色素、緑色色素、青色色素、黄色色素の合成色素等があり、これらを1種または2種以上混合して用いることができる。その使用量は、脂質に対して0.01~25重量%の範囲で用途により適宜決める。
粉末状脂質の着色方法としては、特に限定はされず、溶解した脂質に油溶性着色料を添加し、再度結晶化させて粉末化することが一般的である。
【0012】
本願発明において、粉末状脂質のメジアン径(D50)は、芯物質粒子のメジアン径(D50)より小さく、5~50μmであることが好ましい。被覆材である粉末状脂質のメジアン径(D50)を、芯物質粒子のメジアン径(D50)より小さくすることにより、芯物質粒子の表面への粉末状脂質の付着を促進することができる。さらに、被覆材である粉末状脂質のメジアン径(D50)を5~50μmとすることにより、芯物質粒子の表面に緻密な被膜が形成されるため、他の素材との接触を抑制するという効果を一層発揮することができる。なお、メジアン径(D50)は、レーザー乾式粒度分布測定機(商品名:SALD-2100、(株)島津製作所製)及び同測定機に内蔵するプログラム(Wing-1)を用いて3回測定した結果の平均値である。
【0013】
被覆粒子に含まれる粉末状脂質の含有量は、特に制限されないが、例えば5~60質量%である。粉末状脂質の含有量の下限値は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。また、粉末状脂質の含有量の上限値は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。粉末状脂質の含有量の上限値を上記範囲に調整することにより、芯物質粒子を充分に被覆することができる。また、粉末状脂質の含有量の上限値を上記範囲に調整することにより、素材を多く含有する被覆粒子を得ることができ、変色を抑制し、消化管内で吸収されるという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0014】
<芯物質>
被覆粒子の芯物質としては、メジアン径(D50)が200~850μmで、かつ、粒子径均一性(D90/D10)が2.3以下の粒子を使用することができる。粒子径均一性(D90/D10)が2.3より大きい場合は、芯物質中に様々な大きさの粒子が存在するため、粉末状脂質により均一な被膜が形成されずに被覆性能が低下してしまう。被覆性能が低下した粒子は、ルーメン内で素材が溶出し微生物によって分解されやすくなり、消化管内で吸収されなくなってしまう。メジアン径(D50)は、レーザー乾式粒度分布測定機(商品名:SALD-2100、(株)島津製作所製)及び同測定機に内蔵するプログラム(Wing-1)を用いて3回測定した結果の平均値である。また、粒子径均一性(D90/D10)は、同様にレーザー乾式粒度分布測定機で3回測定したD90とD10の平均値から算出する。芯物質粒子のメジアン径(D50)の下限値は、好ましくは250μm以上である。また、芯物質粒子のメジアン径(D50)の上限値は、好ましくは800μm以下である。メジアン径(D50)が200μm未満の場合は、芯物質粒子の表面積が大きくなるため、上記の被覆粒子に含まれる粉末状脂質の含有量においては、脂質層が薄い部分が形成され、着色した脂質層で変色を目立たなくすることができない。一方、メジアン径(D50)が850μmより大きい場合は、被覆粒子が大きくなるため、粒子が割れやすくなり、露出した芯物質が他の素材と接触し変色が発生してしまう。また、粒子径均一性(D90/D10)の上限値は、好ましくは2.2以下であり、より好ましくは1.9以下である。粒子径均一性(D90/D10)が2.3より大きい場合は、芯物質中に様々な大きさの粒子が存在するため、粉末状脂質により不均一な被膜が形成され、芯物質の被覆されない部分が表面に露呈する原因となり、他成分と共存した際に着色した脂質によって目立たなくすることができないほどの変色を示してしまい、保管中の商品価値を損なってしまう。
【0015】
また、芯物質粒子の粒子径が小さい場合には、粉末状脂質が芯物質粒子の表面に付着せず、変色を引き起こしてしまう。そのため、粒子径の小さい芯物質粒子の含有量は少ない方が望ましい。具体的には、上述したレーザー乾式粒度分布測定機により得られたD10の値が、100μm以上であることが好ましい。
【0016】
本発明において芯物質の種類は特に制限はなく、飼料に通常使用可能な材料で、かつ他成分との接触によって変色を引き起こす物質が全て可能である。具体的には、ビタミン類やアミノ酸類、糖質が挙げられる。芯物質の一部を造粒かつ整粒することによって、上記のメジアン径(D50)や粒子径均一性(D90/D10)に製造したものを使用することができる。被覆粒子に含まれる芯物質粒子の含有量は、特に制限されないが、例えば40~95質量%である。
【0017】
本発明の被覆粒子の被覆性能は溶出試験によって評価でき、37℃の水を用いた溶出試験において、15分後の芯物質の溶出率が3~45質量%であることが好ましい。15分後の芯物質の溶出率の下限値は、好ましくは4質量%以上である。また、15分後の芯物質の溶出率の上限値は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。溶出率をこの範囲とすることにより、他成分との接触による変色を抑制し、消化管内で吸収されるという本発明の効果を一層発揮することができる。なお、溶出率は、日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法)に基づき、37℃の精製水を用いて測定する。
【0018】
また、溶出性の観点から、30分後の芯物質の溶出率が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、180分後の芯物質の溶出率は、50質量%以上であることが好ましい。30分後の芯物質の溶出率が5質量%以上であることにより、体内で芯物質である素材が溶出するため、素材を栄養成分として吸収することができる。
【0019】
[被覆粒子の製造方法]
本発明の被覆粒子の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
〔I〕メジアン径(D50)が200~850μmであり、粒子均一性(D90/D10)が2.3以下である芯物質粒子を準備する工程。
〔II〕融点40℃以上の着色された粉末状脂質を準備する工程。
〔III〕芯物質粒子と粉末状脂質とを混合する工程。
【0020】
工程〔I〕は、メジアン径(D50)が200~850μmであり、粒子均一性(D90/D10)が2.3以下である芯物質粒子を準備する工程である。例えば、芯物質を公知の粉砕方法により粉砕する工程、または芯物質を公知の造粒方法により造粒する工程、または粉砕や造粒したものを篩や整粒機により整粒する工程によって、芯物質のメジアン径(D50)を200~850μm、粒子均一性(D90/D10)が2.3以下に調整することができる。また、メジアン径(D50)が200~850μmであり、かつ粒子均一性(D90/D10)が2.3以下である市販の芯物質粒子を調達してもよい。また、篩を用いて微粉を除去することにより、D10を100μm以上としてもよい。
【0021】
工程〔II〕は、融点40℃以上の粉末状脂質を準備する工程である。例えば、脂質に水素添加処理を行い、脂質の融点を40℃以上に調整し、次に、油溶性の着色料を適量配合することにより、着色した脂質を製造し、次に、着色した脂質を粉末化することにより、融点40℃以上の粉末状脂質を得ることができる。また、市販の融点40℃以上の着色された粉末状脂質を調達してもよいし、融点40℃以上の着色された脂質を調達して、粉末化のみを行ってもよい。脂質の粉末化は、公知のスプレークーリング法や、公知の粉砕方法により行うことができる。
【0022】
工程〔III〕は、芯物質粒子と粉末状脂質とを混合する工程である。この工程では、芯物質粒子と粉末状脂質とを、粉末状脂質の融点以下の温度で混合することが好ましい。混合時の温度を、粉末状脂質の融点温度以下とすることにより、粉末状脂質が粉末状態として芯物質粒子の表面に付着することができる。混合時の温度は、例えば、粉末状脂質の融点の10℃以下であることが好ましい。なお、混合時の温度とは、芯物質粒子と粉末状脂質の混合粉末の内部の温度である。
【0023】
混合方法は、粉末状脂質が芯物質粒子を十分に混合され、芯物質粒子の表面に粉末状脂質が被覆できる方法であれば、どのような方法でもかまわない。混合装置として、高能率粉体混合機などの装置を用いて製造される。高能率粉体混合機は、例えば、「高速流動混合機(商品名:SMV-5)」((株)カワタ製)などが挙げられる。
【0024】
以上のようにして製造される本発明の被覆粒子は、他の素材と混ぜて畜産用飼料として用いることができる。また、反芻動物用の飼料組成物として利用することが好ましい。
反芻動物では、第一胃(ルーメン)中の微生物による発酵によって、揮発性脂肪酸や有機酸に分解され、微生物の栄養素として利用されてしまうため、第四胃以降の消化管から吸収することができないという問題があった。また、従来の反芻動物用のルーメンバイパス製剤では、被覆粒子の内部に位置する素材は溶融した油脂で完全に被覆されているため、栄養成分である素材が消化管で吸収されずに、排出されてしまうという問題がある。本発明の反芻動物用の飼料組成物によれば、他の素材との混合飼料としても、時間の経過に伴い発生する変色を抑制し、保管中の変色を目立たなくすることが可能であり、かつ、ルーメン中の微生物による発酵を抑制し、体内での素材の吸収性に優れたルーメンバイパス製剤を提供することができる。
【実施例
【0025】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す組成で被覆粒子を次の方法により製造した。ビタミンC(扶桑化学工業社製、商品名:ビタミンC 32M)を流動層造粒装置(フロイント産業製、フローコーター)に800g仕込み、ビタミンC10gとヒドロキシプロピルセルロース(商品名「セルニーL」日本曹達(株)製)4g、水186gの混合溶液を噴霧しながら乾燥させた。運転条件は、給気温度:80℃、給気風量:1m/min、噴霧液速度:15g/minで行いビタミンC造粒物を得た。得られたビタミンC造粒物を目開き250μmの篩を用いて篩上に残ったものを回収し、メジアン径(D50)485μm、粒子均一性1.9のビタミンC造粒物を得た。得られたビタミンC造粒物700gと融点67℃の粉末状の菜種極度硬化油に対油5重量%のクチナシ色素(三栄源エフエフアイ社製、油性イエローNo.3)を添加して着色した粉末状脂質300g(メジアン径(D50):38μm)を高速流動混合機((株)カワタ製、商品名:SMV-5)に仕込み、攪拌羽回転数1000rpmにて30分間処理をし、被覆粒子を得た。なお、混合時の粉末の温度は、10~30℃であった。得られた被覆粒子を、実施例1の被覆粒子とした。
【0026】
(実施例2)
表1に示す組成で芯物質を実施例1と同様の方法で製造し、メジアン径(D50)292μm、粒子均一性2.0のビタミンC造粒物を得た。得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例2の被覆粒子とした。
【0027】
(実施例3)
表1に示す組成で芯物質を実施例1と同様の方法で製造し、メジアン径(D50)690μm、粒子均一性1.8のビタミンC造粒物を得た。得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例3の被覆粒子とした。
【0028】
(実施例4)
表1に示す組成で芯物質を実施例1と同様の方法で製造し、メジアン径(D50)222μm、粒子均一性2.1のビタミンC造粒物を得た。得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例4の被覆粒子とした。
【0029】
(実施例5)
表1に示す組成で芯物質をグルコース(塩水港精糖社製、商品名:グルファイナル)を用いて実施例1と同様の方法で製造し、メジアン径(D50)411μm、粒子均一性1.8のグルコース造粒物を得た。得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例5の被覆粒子とした。
【0030】
(実施例6)
表1に示す組成で、実施例5で得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例6の被覆粒子とした。
【0031】
(実施例7)
表1に示す組成で芯物質をプロリン(味の素ヘルシーサプライ社製、商品名:L-プロリン)を用いて実施例1と同様の方法で製造し、メジアン径(D50)388μm、粒子均一性1.7のプロリン造粒物を得た。得られた造粒物を実施例1と同様の条件で着色した粉末状脂質と混合し、被覆粒子を得た。この被覆粒子を実施例7の被覆粒子とした。
【0032】
(比較例1)
実施例1で得られたビタミンC造粒物を本願発明の範囲外の着色していない粉末状脂質で被覆し、他は実施例1と同様の条件で処理して被覆粒子を調製した。得られた被覆粒子を、比較例1の被覆粒子とした。
【0033】
(比較例2)
ビタミンC粒子のメジアン径(D50)を本発明の範囲外の120μmとし、他は実施例1と同様の条件で処理して被覆粒子を調製した。得られた被覆粒子を、比較例2の被覆粒子とした。
【0034】
(比較例3)
ビタミンC粒子のメジアン径(D50)を本発明の範囲外の1,220μm、粒子均一性を5.8とし、他は実施例1と同様の条件で処理して被覆粒子を調製した。得られた被覆粒子を、比較例3の被覆粒子とした。
【0035】
(比較例4)
ビタミンC粒子の粒子均一性を本発明の範囲外の3.2とし、他は実施例1と同様の条件で処理して被覆粒子を調製した。得られた被覆粒子を、比較例4の被覆粒子とした。
【0036】
(比較例5)
実施例1で得られたビタミンC造粒物を、融点67℃の菜種極度硬化油の溶融物に分散し、噴霧冷却装置により被覆粒子を調製した。得られた被覆粒子を、比較例5の被覆粒子とした。
【0037】
[測定方法]
実施例1~7の試料及び比較例1~5の試料について、以下の方法で測定した。
(メジアン径(D50))
芯物質のメジアン径(D50)は、レーザー乾式粒度分布測定機(商品名:SALD-2100、(株)島津製作所製)を用いて評価した。内蔵するプログラム(Wing-1)で処理したデータを用いた。なお、芯物質のメジアン径(D50)は、3回の測定値の平均値とした。
【0038】
(試験1:溶出試験)
日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法)に基づき、被覆粒子を約30~100mg精秤し、900mLの精製水を満たした容器に入れ、37℃で経時的に溶液中の成分を測定した。溶液中の成分の測定方法は、ビタミンCの場合は波長265ナノメールの吸光度測定により、またグルコースの場合はグルコース分析キット(富士フィルム和光純薬(株)製、商品名:グルコースCIIテストワコー)を用い、また、プロリンの場合はプロテインアッセイブラッドフォード試薬(富士フィルム和光純薬(株)製、商品名:プロテインアッセイブラッドフォード試薬)を用いて溶液中の濃度を測定した。被覆効率の指標として試験を開始して15分後、30分後の溶液中の濃度を溶出率として求めた。
【0039】
(試験2:接触試験)
実施例1~4及び比較例1~5で調製した被覆粒子は、ビタミンCとして10重量%となる被覆粒子、10質量%のピロリン酸第二鉄(太平化学産業製、商品名:ピロリン酸第二鉄)、残部をセルロース(旭化成製、商品名:セオラスST-100)として混合した混合物をシャーレに移し、40℃75%RH恒温槽内に5日間保管し変色の程度を観察した。実施例5、6で調製した被覆粒子は、グルコースとして10重量%となる被覆粒子、10重量%のプロリン(味の素ヘルシーサプライ社製、商品名:L-プロリン)、残部をセルロース(旭化成製、商品名:セオラスST-100)として混合した混合物をシャーレに移し、40℃75%RH恒温槽内に5日間保管し変色の程度を観察した。実施例7で調製した被覆粒子は、プロリンとして10重量%となる被覆粒子、10重量%のビタミンC(扶桑化学工業社製、商品名:ビタミンC Type S)、残部をセルロース(旭化成製、商品名:セオラスST-100)として混合した混合物をシャーレに移し、40℃75%RH恒温槽内に1日間保管し変色の程度を観察した。
【0040】
(評価方法)
実施例1~7の試料及び比較例1~5の試料について、上記試験の結果から以下の方法で評価した。
(溶出性の評価)
上記溶出試験の結果から、溶出性を以下のように評価した。
○;30分後の溶出率が5質量%以上である。
×;30分後の溶出率が5質量%未満である。
【0041】
(変色試験の評価)
実施例1~5の試料及び比較例1~4の試料をそれぞれ接触物質と接触させた直後のものと、接触物質と接触させたのち、恒温槽で上記の期間保管した後のものを比較し、保管前後の色を客観的に評価した。結果は以下のように評価した。
◎;保管前後に色の変化が無い、又は、横に並べて比較すれば気付く程度のわずかな変化である。
○;保管前後に多少の色の変化がある。
×;保管前後に明らかな色の変化がある。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~7で得られた被覆粒子の溶出試験と接触試験は良好な結果であった。具体的には、メジアン径(D50)が、200~850μmであり、粒子径均一性(D90/D10)が、2.3以下であることにより、接触試験前後に変色の傾向は認められず、実使用上に問題なかった。このことから、本発明において、変色抑制が可能な被覆粒子を調製できたことが分かる。
さらに詳細に検討すると、実施例1~6の結果から、15分後の溶出率が30%以下の場合には変色抑制効果が特に優れることがわかる。
【0044】
一方で、着色していない粉末状脂質で被覆した比較例1においては、着色を目立たなくさせることができないため、保存前後で色の変化が認められた。
芯物質のメジアン径(D50)が本発明の範囲外のサイズ(200μm未満)の比較例2では、粉末状油脂による被覆が不十分であるため変色が抑制できなかった。また、粉末状脂質を着色しても変色を目立たなくできないほど変色した。
芯物質のメジアン径(D50)と粒子均一性が本発明の範囲外(850μm超、2.3超)の比較例3では、変色が認められ、粉末状脂質による被覆の効果が十分とはならなかった。比較例3は、芯物質粒子の粒子均一性が5.8であり、粒度にバラツキがあることから、粉末状油脂と同等のサイズの芯物質粒子が存在する。そのため、粉末状油脂と同等のサイズの芯物質粒子が粉末状油脂の芯物質粒子への付着を妨害すると推察される。
芯物質の粒子均一性は本発明の範囲外(2.3超)の比較例4では、変色が認められ、粉末状脂質による被覆の効果が十分とはならなかった。この結果は、比較例3と同様であると推察される。
硬化油の溶融物で被覆した比較例5では、30分後の溶出率が5%未満であり、溶出しないことから、体内での吸収ができないと推察される。
【0045】
以上の結果から、本願発明の飼料組成物は、素材同士が接触する混合物において、素材同士の接触による変色を抑制し、保管中の変色を目立たなくすることが可能であり、かつ、体内で素材が吸収されて、その栄養効果を得られることが分かった。