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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】乗物用収納構造、および乗物用収納部品
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/02 20060101AFI20231011BHJP
   B60R 13/01 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60R7/02
B60R13/01
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020074648
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172120
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶座 聖始
(72)【発明者】
【氏名】水野 辰也
(72)【発明者】
【氏名】室川 慶介
(72)【発明者】
【氏名】岸 慧
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-087625(JP,A)
【文献】特開2014-213656(JP,A)
【文献】特開2003-306056(JP,A)
【文献】特開平11-291825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0249232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/00 - 7/14
B60N 3/00
B65D 1/00 - 48/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた意匠面部と、
前記意匠面部に対して、乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品と、
を備え、
前記乗物用収納部品は、折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体と、前記収納部本体を折り畳んだ状態で収容するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記意匠面部に取り付けられて乗物室内側に開口し、折り畳まれた状態の前記収納部本体を収容するケース本体と、
前記ケース本体に対して前記ケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記ケース本体の開口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を前記ケース本体に磁力によって固定して前記収納部本体を収容した状態で前記ケース本体の開口が前記蓋部材で塞がれた状態とする磁力固定部と、
を有しており、
前記ケース本体は、前記意匠面部に向けて延びる取付部を有し、
前記意匠面部は、前記取付部を取り付け可能な被取付部を有し、
前記取付部を前記被取付部に取り付けて前記乗物用収納部品を前記意匠面部に取り付けた状態で、前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が回動して開かれる構成を備えており、
前記蓋部材は、前記回動軸とは反対側の端部に第1の磁石を備えており、
前記磁力固定部は、
磁力を発生し前記第1の磁石と引きあうことができる付着部と、
一端が前記付着部に接続されるとともに他端が前記ケース本体の上面に固定されている帯状部と、
を含んで構成され、
前記乗物用収納部品は、
前記蓋部材が前記ケース本体の開口を塞いだ状態において、前記付着部が前記蓋部材の外側から前記蓋部材の前記第1の磁石に対応する位置に付着することで前記蓋部材を前記ケース本体に固定することができるとともに、
前記付着部が前記蓋部材から脱着されることで、前記蓋部材の前記ケース本体への固定が解除される構成を備えている、乗物用収納構造。
【請求項2】
前記ケース本体は、前記意匠面部に取り付けられたときの上方の端部に第2の磁石を備えており、
前記乗物用収納部品は、前記蓋部材が前記ケース本体に対して開かれた状態においては、前記付着部を前記ケース本体の内側から前記ケース本体の前記第2の磁石と対応する位置に付着させる構成を備えている、請求項1に記載の乗物用収納構造。
【請求項3】
乗物の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた意匠面部と、
前記意匠面部に対して、乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品と、
を備え、
前記乗物用収納部品は、折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体と、前記収納部本体を折り畳んだ状態で収容するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記意匠面部に取り付けられて乗物室内側に開口し、折り畳まれた状態の前記収納部本体を収容するケース本体と、
前記ケース本体に対して前記ケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記ケース本体の開口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を前記ケース本体に磁力によって固定して前記収納部本体を収容した状態で前記ケース本体の開口が前記蓋部材で塞がれた状態とする磁力固定部と、
を有しており、
前記ケース本体は、前記意匠面部に向けて延びる取付部を有し、
前記意匠面部は、前記取付部を取り付け可能な被取付部を有し、
前記取付部を前記被取付部に取り付けて前記乗物用収納部品を前記意匠面部に取り付けた状態で、前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が回動して開かれる構成を備えており、
前記収納部本体は、展開した状態で上方に開口を有する有底箱状であって、90度に開かれた前記ケース本体と前記蓋部材との上方に展開された状態において、
前記ケース本体に固定される背面部と、
前記蓋部材に固定され、前記背面部の下端と接続される底面部と、
前記底面部に対し前記背面部とは反対側において接続され、前記背面部の側を向くように立設される板状の前面部と、
前記前面部、前記底面部、および前記背面部に対し、前記回動軸に沿う方向の両方の端部においてそれぞれ接続される一対の側面部と、
を備えており、
前記収納部本体は、前記前面部を前記底面部に重ね、前記一対の側面部を折り曲げることで折り畳まれて前記ケースに収容されるとともに、
前記ケースが前記意匠面部に取り付けられた状態で前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が開かれることで、前記収納部本体の前記底面部が前記背面部に対して展開される構成を備えている、乗物用収納構造。
【請求項4】
前記意匠面部には、複数の前記被取付部が設けられており、
前記取付部は、複数の前記被取付部から選択されるいずれかの前記被取付部に対して取り付け可能に構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用収納構造。
【請求項5】
前記意匠面部は、乗物の後部座席と後方ドアとの間に設けられた荷室の側壁をなすデッキサイドトリムであって、
前記ケースは、前記磁力固定部によって閉じられた状態において、前記後部座席に干渉することなく、前記デッキサイドトリムに取り付けられる構成を備えている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用収納構造。
【請求項6】
乗物の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた意匠面部と、
前記意匠面部に対して、乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品と、
により構成される乗物用収納構造に用いられる乗物用収納部品であって、
折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体と、
前記収納部本体を折り畳んだ状態で収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記意匠面部に取り付けられて乗物室内側に開口し、折り畳まれた状態の前記収納部本体を収容するケース本体と、
前記ケース本体に対して前記ケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記ケース本体の開口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を前記ケース本体に磁力によって固定して前記収納部本体を収容した状態で前記ケース本体の開口が前記蓋部材で塞がれた状態とする磁力固定部と、
を有しており、
前記ケース本体は、前記意匠面部に向けて延びる取付部を有し、
前記意匠面部は、前記取付部を取り付け可能な複数の被取付部を有し、
前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が回動して開かれる構成を備えており、
前記蓋部材は、前記回動軸とは反対側の端部に第1の磁石を備えており、
前記磁力固定部は、
磁力を発生し前記第1の磁石と引きあうことができる付着部と、
一端が前記付着部に接続されるとともに他端が前記ケース本体の上面に固定されている帯状部と、
を含んで構成され、
前記蓋部材が前記ケース本体の開口を塞いだ状態において、前記付着部が前記蓋部材の外側から前記蓋部材の前記第1の磁石に対応する位置に付着することで前記蓋部材を前記ケース本体に固定することができるとともに、
前記付着部が前記蓋部材から脱着されることで、前記蓋部材の前記ケース本体への固定が解除される構成を備えている、乗物用収納部品。
【請求項7】
乗物の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた意匠面部と、
前記意匠面部に対して、乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品と、
により構成される乗物用収納構造に用いられる乗物用収納部品であって、
折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体と、
前記収納部本体を折り畳んだ状態で収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記意匠面部に取り付けられて乗物室内側に開口し、折り畳まれた状態の前記収納部本体を収容するケース本体と、
前記ケース本体に対して前記ケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記ケース本体の開口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を前記ケース本体に磁力によって固定して前記収納部本体を収容した状態で前記ケース本体の開口が前記蓋部材で塞がれた状態とする磁力固定部と、
を有しており、
前記ケース本体は、前記意匠面部に向けて延びる取付部を有し、
前記意匠面部は、前記取付部を取り付け可能な複数の被取付部を有し、
前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が回動して開かれる構成を備えており、
前記収納部本体は、展開した状態で上方に開口を有する有底箱状であって、90度に開かれた前記ケース本体と前記蓋部材との上方に展開された状態において、
前記ケース本体に固定される背面部と、
前記蓋部材に固定され、前記背面部の下端と接続される底面部と、
前記底面部に対し前記背面部とは反対側において接続され、前記背面部の側を向くように立設される板状の前面部と、
前記前面部、前記底面部、および前記背面部に対し、前記回動軸に沿う方向の両方の端部においてそれぞれ接続される一対の側面部と、
を備えており、
前記収納部本体は、前記前面部を前記底面部に重ね、前記一対の側面部を折り曲げることで折り畳まれて前記ケースに収容されるとともに、
前記ケースが前記意匠面部に取り付けられた状態で前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が開かれることで、前記収納部本体の前記底面部が前記背面部に対して展開される構成を備えている、乗物用収納部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用収納構造、および乗物用収納部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な物品を収納するための箱について、折り畳みが可能な構成を備えるものが提案されている。例えば、特許文献1には、小型に折り畳みが可能であって、組み立てた時の強度を十分に保ち得る箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-298245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の箱は、不使用時の態様や、使用時の組み立て操作の簡便性などについては何ら検討がなされていない。例えば、人を乗せて移動する乗物の荷室等において、ユーザーが荷物を持つなどして片手が塞がれた状態であっても、円滑に使用状態に移行できる収納構造が提供されれば望ましい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、円滑に使用状態に移行することができる乗物用収納構造を提供することを目的とする。また、他の観点から、本発明は、この乗物用収納構造に用いられる乗物用収納部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、ここに開示される技術は、乗物の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた意匠面部と、前記意匠面部に対して、乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品と、を備える乗物用収納構造を提供する。この乗物用収納構造において、前記乗物用収納部品は、折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体と、前記収納部本体を折り畳んだ状態で収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記意匠面部に取り付けられて乗物室内側に開口し、折り畳まれた状態の前記収納部本体を収容するケース本体と、前記ケース本体に対して前記ケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動可能に設けられ、前記ケース本体の開口を塞ぐ蓋部材と、前記蓋部材を前記ケース本体に磁力によって固定して前記収納部本体を収容した状態で前記ケース本体の開口が前記蓋部材で塞がれた状態とする磁力固定部と、を有している。また、前記ケース本体は、前記意匠面部に向けて延びる取付部を有し、前記意匠面部は、前記取付部を取り付け可能な被取付部を有している。そして、この乗物用収納構造は、前記取付部を前記被取付部に取り付けて前記乗物用収納部品を前記意匠面部に取り付けた状態で、前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が回動して開かれる構成を備えている。
【0007】
上記構成によると、乗物用収納部品は、収納部本体を折り畳んでケースに収容した状態で、意匠面部に取り付けておくことができる。したがって、乗物が移動する際に、振動や急制動等により乗物用収納部品が乗物室内で移動することが規制される。また、乗物用収納部品は、不使用時には、意匠面部に沿って保管することができ、乗物の室内を広く利用することができる。さらに、ケースは、蓋部材がケース本体の下端に位置する回動軸を中心に回動するため、意匠面部に取り付けた状態で磁力固定部による固定を解除することで、蓋部材がいったん回動を開始すると自重によって開かれる構成とされている。これにより、ユーザは片手で磁力固定部による固定の解除を行ってケースを簡便に開くことができる。また、ユーザは、ケースを開く工程を踏むことなくスムーズに、折り畳まれた収納部本体の展開を行うことができる。
【0008】
ここに開示される乗物用収納構造の好適な一態様において、前記蓋部材は、前記回動軸とは反対側の端部に第1の磁石を備えており、前記磁力固定部は、磁力を発生し前記第1の磁石と引きあうことができる付着部と、一端が前記付着部に接続されるとともに他端が前記ケース本体の上面に固定されている帯状部と、を含んで構成されている。そして前記乗物用収納部品は、前記蓋部材が前記ケース本体の開口を塞いだ状態において、前記付着部が前記蓋部材の外側から前記蓋部材の前記第1の磁石に対応する位置に付着することで前記蓋部材を前記ケース本体に固定することができるとともに、前記付着部が前記蓋部材から脱着されることで、前記蓋部材の前記ケース本体への固定が解除される構成を備えている。
【0009】
上記構成によると、乗物用収納部品は、蓋部材の第1の磁石に対応する位置に対して付着部を付着させたり脱着させたりするという簡単な操作によって、蓋部材をケース本体に固定したり、その固定を解除したりすることができる。
【0010】
ここに開示される乗物用収納構造の好適な一態様において、前記ケース本体は、前記意匠面部に取り付けられたときの上方の端部に第2の磁石を備えており、前記乗物用収納部品は、前記蓋部材が前記ケース本体に対して開かれた状態においては、前記付着部を前記ケース本体の内側から前記ケース本体の前記第2の磁石と対応する位置に付着させる構成を備えている。上記構成によると、乗物用収納部品は、磁力固定部を使用しないときには付着部をケース本体の内側に固定しておくことができ、ユーザが収納物を収納部本体へ収納する際に磁力固定部が収納の妨げになることを防ぐことができる。
【0011】
ここに開示される乗物用収納構造の好適な一態様において、前記収納部本体は、展開した状態で上方に開口を有する有底箱状であって、90度に開かれた前記ケース本体と前記蓋部材との上方に展開された状態において、前記ケース本体に固定される背面部と、前記蓋部材に固定され、前記背面部の下端と接続される底面部と、前記底面部に対し前記背面部とは反対側において接続され、前記背面部の側を向くように立設される板状の前面部と、前記前面部、前記底面部、および前記背面部に対し、前記回動軸に沿う方向の両方の端部においてそれぞれ接続される一対の側面部と、を備えている。そして、前記収納部本体は、前記前面部を前記底面部に重ね、前記一対の側面部を折り曲げることで折り畳まれて前記ケースに収容されるとともに、前記ケースが前記意匠面部に取り付けられた状態で前記磁力固定部による前記ケース本体と前記蓋部材との固定が解除されると、前記ケース本体に対して前記蓋部材が開かれることで、前記収納部本体の前記底面部が前記背面部に対して展開される構成を備えている。
【0012】
上記構成によると、収納部本体は有底の箱状であるため、小さい収納物であっても隙間から零れることなく収納することができる。また、収納部本体は、背面部がケース本体に、底面部が蓋部材に固定されており、ケースの開閉を利用して、収納部本体の展開または折り畳みの一部を行うことができる。さらに、収納部本体の前面部は板状であるため、ユーザは、ケースの開閉時に前面部を蓋部材に対して簡単に立ち上げたり倒したりすることができる。これにより、収納部本体の折り畳みと展開とを簡便に行える乗物用収納構造が提供される。
【0013】
ここに開示される乗物用収納構造の好適な一態様において、前記意匠面部には、複数の前記被取付部が設けられており、前記取付部は、複数の前記被取付部から選択されるいずれかの前記被取付部に対して取り付け可能に構成されている。上記構成によると、乗物用収納部品は、意匠面部に対して被取付部が設けらた任意の位置に着脱自在に取り付けることができる。これにより、例えば、乗物用収納部品の使用が予想される場合に、乗物用収納部品を乗物の室内意匠面に取り付けておき、乗物用収納部品を使用しないことが予想される場合には、乗物用収納部品を乗物の室内意匠面から取り外して、乗物を使用することができる。また、例えば、様々なサイズの乗物用収納部品を用意しておくことで、ユーザーは、所望のサイズの一つまたは二つ以上の乗物用収納部品を乗物の室内意匠面に取り付けて携帯することができる。
【0014】
ここに開示される乗物用収納構造の好適な一態様において、前記意匠面部は、乗物の後部座席と後方ドアとの間に設けられた荷室の側壁をなすデッキサイドトリムであって、前記ケースは、前記磁力固定部によって閉じられた状態において、前記後部座席に干渉することなく、前記デッキサイドトリムに取り付けられる構成を備えている。上記構成によると、上記構成によると、後部座席のシートアレンジに支障をきたすことなく、乗物用収納部品をデッキサイドトリムに取り付けることができる。また、ここに開示される乗物用収納部品の、幅の薄くて嵩張り難いという利点を効果的に活かすことができる点において好ましい。
【0015】
また、ここに開示される技術は、上記乗物用収納構造に好適に用いることができる上記の乗物用収納部品を提供する。上記乗物用収納構造においては、意匠面部に対し、ユーザが任意のタイミングで自在に乗物用収納部品を取り付けたり取り外したりすることができ、この用途に用いられる乗物用収納部品として、様々な大きさ、形状、デザイン、および構造的機能を備えるものが提供され得る。そのため、例えばユーザは、予め複数の乗物用収納部品を用意しておき、そのときの用途に応じたいずれか1つまたは2つ以上の乗物用収納部品を選択して利用することができる。このような観点から、ここに開示される技術は、この用途に用いられる様々な大きさ、形状、デザイン、構造的機能を備える乗物用収納部品を提供する。このことにより、乗物用収納構造を多様なユーザの嗜好および要求に応じたものとして実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円滑に使用状態に移行することができる乗物用収納構造が提供される。また、この乗物用収納構造に好適に用いられる乗物用収納部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る乗物用収納構造を採用した車両の荷室を示す斜視図
図2図1における乗物用収納構造を示す要部拡大図
図3図2の乗物用収納部品を背面部の側から視た斜視図
図4図2のIV-IV線矢視図に相当し、乗物用収納部品の蓋部材が閉じられた状態における磁力固定部の配置を示す断面図
図5図4の乗物用収納部品の蓋部材が開かれた状態における磁力固定部の配置を示す要部断面図
図6図2の乗物用収納部品の蓋部材が開かれた状態を示す斜視図
図7図6の乗物用収納部品の収納部本体を展開した状態を示す斜視図
図8】取付ボードを裏面から視た一部拡大図
図9】取付孔を取付ボードの裏面から視た拡大図
図10】突出部が第1孔部に挿入された状態を示す断面図(図9のX-X線矢視図)
図11】突出部が第1孔部から第2孔部へ変位する過程を示す断面図
図12】突出部が第2孔部に挿入された状態を示す断面図(図8のXII-XII線矢視図)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
ここに開示される乗物用収納構造の一実施形態を、図を参照しつつ説明する。図1および図2は、一実施形態に係る乗物用収納構造1を採用した車両10(乗物)の荷室13の斜視図である。図3から図7は、乗物用収納部品50の構成を説明する図であり、図8から図12は、乗物用収納部品50の取付ボード20への取付構造について示す図である。なお、各図に示した符号F,Rr、U,D、IN,OUTはそれぞれ、車両進行方向の前方,後方、鉛直方向(上下方向)の上方,下方、車両進行方向に直交する車幅方向の室内側,室外側を示す。また、以下の説明において、乗物用収納部品50についての長手方向の右方,左方、高さ方向の上方,下方、厚み方向の手前,奥は、それぞれ、符号F,Rr、U,D、IN,OUTに一致しているものとする。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0019】
本実施形態の車両10は、図1に示すように、車室11の後部に後部座席12が配されるとともに、後部座席12より後方の空間として荷室13が設けられている。車両10の最後部には図示しないバックドアが備えられており、荷室13へは、一般的には車両10の外からバックドアを介してアクセス可能とされている。また、荷室13には、荷室13の床面14Aをなすデッキボード14と、荷室13の側壁をなす一対のデッキサイドトリム15,15と、デッキサイドトリム15,15の上方に配されたリアクォーターウインドウ16,16(荷室13の側窓)とが備えられている。荷室13において、一対のデッキサイドトリム15,15は左右の側壁で概ね対称に構成されている。以下の説明においては、図2に示すように、車両10の進行方向左側に位置するデッキサイドトリム15に基づいて乗物用収納構造1の説明をするとともに、車両10の進行方向右側に配される乗物用収納構造1の説明は省略するものとする。
【0020】
デッキサイドトリム15は、荷室13から、乗員が後部座席12に着座するために使用するための図示しないリアドアの後方にまで連なっている。このデッキサイドトリム15のうち、リアクォーターウインドウ16(荷室13の側窓)よりも下方の部分には、デッキサイドトリム15が車幅方向の室外側に向けて後退することで凹部17が形成されている。そして、この凹部17の底面17A(図11等参照)には、底面17Aに対して室内側から重畳する形で、乗物用収納部品50を取り付けるための取付ボード20が備えられている。
【0021】
本実施形態の乗物用収納構造1は、例えば図2に示すように、取付ボード20と、この取付ボード20に対して乗物室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品50と、を備えることで構成されている。取付ボード20は、本発明における乗物の室内意匠面を構成する板状部の一例である。取付ボード20は、その室内意匠面が起立するように略鉛直方向に沿って設けられている。
【0022】
まずは、乗物用収納部品50について説明する。本実施形態の乗物用収納部品50は、図6および図7に示すように、折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体52と、この収納部本体52を折り畳んだ状態で収容するケース60と、を備えている。ケース60は、図2に示すように、扁平な略直方体形状の箱型をなしており、幅広な一対の長側面が取付ボード20に沿うような姿勢で取付ボード20に取付ることができる。上述の通り、本実施形態においてケース60が取付ボード20に取付られたとき、ケース60の長手方向は車両前後方向に対応し、ケース60の高さ方向は鉛直方向に対応し、ケース60の厚み方向は車幅方向に対応している。また、ケース60は、取付ボード20と後部座席12との間に納めることができるように厚み方向の寸法が小さく(薄く)形成されている。
【0023】
ケース60は、ケース本体61と、蓋部材65と、磁力固定部70と、突出部30と、を備えている。図2に示すように、ケース本体61と蓋部材65とは、ケース60の外形をなす部材であるとともに、ケース60は、厚み方向でケース本体61と蓋部材65とに二分されている。ケース本体61は、ケース60の一対の長側面のうち、ケース60が取付ボード20に取付られたときに取付ボード20に面する側(室外側)に配される背面部61Bを含み、一方の蓋部材65は、ケース本体61よりも相対的に取付ボード20から遠い側(室内側)に配される前面部65Bを含む。背面部61Bには、図3に示すように、ケース60の外側に向かって突出するように突出部30が備えられており、ケース60はこの突出部30を介して取付ボード20に取り付けられる。
【0024】
ケース本体61は、収納部本体52を収容する主体となる要素であり、収納部本体52は折り畳まれた状態でほぼ全体がこのケース本体61に収容され得る。例えば図6に示されるように、ケース本体61は、開口61Aを有する扁平な略直方体形状の有底箱状をなし、室内側に向けて開口するように取付ボード20に取り付けられる。ケース本体61の上面61Cには、長手方向に沿って離間する2か所の取付位置X1,X2において磁力固定部70が固定されている。また、ケース本体61には、図4および図5に示すように、背面部61Bの上方部分であって、取付位置X1,X2の下方にあたる位置にそれぞれ、本体部磁石62,62が埋め込まれている。本体部磁石62,62は、本発明における第2の磁石の一例である。さらに、ケース本体61の上面61Cの中央部分には、乗物用収納部品50を持ち運ぶ際にユーザが把持するための取っ手63が備えられている。
【0025】
蓋部材65は、ケース本体61の開口61Aを塞ぐ要素である。本実施形態における蓋部材65は、ケース本体61と同様に開口65Aを有する扁平な略直方体形状であって、ケース本体61よりも厚みの薄い(深さの浅い)有底箱状をなしている。ケース本体61と蓋部材65とは、互いの開口61Aと開口65Aとを突き合わせて閉じたときに、互いの下端の開口61A,65Aの縁に沿って延びる回動軸M(例えば図6参照)を中心にして、回動自在に一体化されている。また、蓋部材65には、図4に示すように、ケース本体61の開口61Aを閉じた状態において、前面部65Bの上方部分であって、ケース本体61の取付位置X1,X2の下方にあたる位置にそれぞれ、蓋部磁石66,66が埋め込まれている。蓋部磁石66,66は、本発明における第1の磁石の一例である。
【0026】
磁力固定部70は、板状をなす平面視でU字型の固定部本体72と、帯状をなし、一端が固定部本体72の2つの端部にそれぞれ接続されている一対の帯状部76,76と、を備えている。固定部本体72は、二つの端部から延びる一対の平行部分73,73と、これらの平行部分73,73に両端において接続する板状の架橋部分75と、を含んでいる。一対の平行部分73,73のそれぞれには、磁石73,73が埋め込まれている。また、帯状部76,76は、例えばアクリル繊維が織られてなるテープ等の柔軟性を備える素材によって構成されており、この帯状部76,76の他端は鋲等の留め具によってケース本体61の上面61Cに対して取付位置X1,X2において固定されている。このような構成によって、固定部本体72は、平行部分73,73を高さ方向に沿って配しつつ、架橋部分75を長手方向に沿って配した状態で、ケース本体61の上面から開口61Aの側に垂下され得るようになっている。なお、固定部本体72は、本発明における付着部の一例である。
【0027】
なお磁力固定部70は、蓋部材65がケース本体61の開口61Aを塞いだ状態においては、例えば図4に示されるように、帯状部76,76が、蓋部材65の上面65Cから蓋部材65の前面部65Bに亘ってケース60の室内側の表面に沿うように配されるとともに、固定部本体72が蓋部材65の前面部65Bに沿って配される。このとき、磁力固定部70の磁石74,74と、蓋部材65の蓋部磁石66,66とが厚み方向で重なり合うように、ケース本体61および蓋部材65の厚みや帯状部76,76の長さ、磁力固定部70および蓋部材65における磁石74,74および蓋部磁石66,66の配置等が設計されている。そのため、磁力固定部70は、例えば図4に示されるように、ケース本体61の開口61Aを塞いだ状態にある蓋部材65に対して磁力によって付着し、ケース本体61に対して蓋部材65を固定することができるようになっている。なおこのとき、固定部本体72は、下端部が蓋部材65の表面から離間するように屈折されている。ユーザは、この屈折部分に指をかけて固定部本体72を手前に持ち上げることで、帯状部76と接続された上端部を支点とし、磁力に抗してスムーズに固定部本体72を蓋部材65から脱着させることができる。
【0028】
また、例えば図5に示されるように、蓋部材65は回動することによって、ケース本体61を室内に向けて開口させた状態で、ケース本体61に対して約90度となるように開くことができる。このとき帯状部76,76は、ケース本体61の表面に沿ってケース本体61の外側から開口61Aを通じて内側に配されるとともに、固定部本体72は背面部61Bの内側(室内側)の表面に沿うように配されるようになっている。またこのとき、磁力固定部70の磁石74,74と、ケース本体61の本体部磁石62,62とが厚み方向で重なり合うように、ケース本体61の厚みや帯状部76,76の長さ、磁力固定部70およびケース本体61における磁石74,74および本体部磁石62,62の配置等が設計されている。そのため、磁力固定部70は、ケース60が開放された状態においては、ケース本体61の開口61Aに架かるように垂下することなく、ケース本体61に収容されるように構成されている。
【0029】
次に、収納部本体52について説明する。収納部本体52は、図7に示すように、展開された状態においては、上方に開口52Aを有する有底箱状をなしている。収納部本体52を構成する素材は特に制限されないものの、本実施形態の収納部本体52は、例えば、適度な柔軟性と保形性とを同時に有するポリクロロプレン製発泡ゴム等からなる生地によって構成されており、自在に折り畳むことができる。収納部本体52は、前面部65Bよりも一回り小さい大きさの底面部52Bと、底面部52Bの厚み方向で奥側の端部から立ち上がる背面部52Cと、底面部52Bの手前側の端部から立ち上がる前面部52Dと、底面部52B、背面部52Cおよび前面部52Dのそれぞれに接続される一対の側面部52E,52Eを備えている。底面部52Bは、蓋部材65の前面部65Bの内側の表面に固定されているとともに、背面部52Cは、ケース本体61の背面部61Bの内側(室内側)の表面に固定されている。これら底面部52Bおよび背面部52Cは、ケース本体61の内張も兼ねている。前面部52Dは、2枚の生地の間に芯材が挿入されていることで柔軟性が抑えられ、板状をなしている。
【0030】
一対の側面部52E,52Eには、図6,7に示されるように、折り畳みの際の折り目となる位置にミシン目(縫い目)が設けられている。具体的には、側面部52E,52Eには、背面部52Cの側の上端部と前面部52Dの側の下端部とを繋ぐ第1の線と、前面部52Dの側の上端部と背面部52Cの側の下端部とを繋ぐ第2の線と、からなる折り目が設けられており、第1の線は山折り線となり、第2の線は、第1の線よりも上方で山折りに、第1の線よりも下方で谷折りになるように折り畳まれる。図6は、第1の線に沿って側面部52E,52Eを折り畳んだ状態であり、この状態において、前面部52Dは奥側に倒れて底面部52Bに重ねられる。また、蓋部材65が回動軸Mを中心に回動してケース本体61の開口61Aを閉じた状態では、側面部52E,52Eは第2の線に沿って折り畳まれ、前面部52Dおよび底面部52Bは、折り畳まれた状態の側面部52E,52Eを間にして背面部52Cと重なり合うよう。このようにして、収納部本体52はコンパクトに折り畳むことができるとともに、折り畳まれた状態でケース60に収納可能とされている。
【0031】
次に、乗物用収納部品50の取付ボード20への取付態様について説明する。突出部30は、例えば図6および図11に示すように、ケース本体61の背面部61Bの外側の面から、略垂直方向に延びるように設けられている。本実施形態において、突出部30は、ケース本体61の背面部61Bの上方において長手方向の両端部に一つずつ、計2つが備えられている。これら2つの突出部30が一組となって、乗物用収納部品50を安定して支持できるように構成されている。突出部30はそれぞれ、図11に示すように、基端側(背面部61B側)から順に基端部32と、中間部34と、先端部36とを備える。これらは円柱状をなしており、基端部32の直径D1は中間部34の直径D2よりも大きく、先端部36の直径D3は基端部32の直径D1よりも大きい。
【0032】
図9および図10は、取付ボード20を裏面20B側(室外側)から視た図である。例えば図9に示すように、取付ボード20には、突出部30を取付ボード20に取り付けるための複数の取付孔21が貫通形成されている。取付孔21は、本発明における被取付部の一例である。複数の取付孔21は、車両前後方向において等間隔に並ぶ取付孔21の列が、上下方向では一段ごとに車両前後方向に半ピッチずつずれた形で複数段並ぶ、千鳥状に配列されている。一組の突出部30は、それぞれが、複数の取付孔21のうちいずれか一つの取付孔21に対して選択的に挿入できるように配置されている。そして一組の突出部30を複数の取付孔21のいずれか2つに挿抜することで、ケース本体61を取付ボード20の任意の位置に対して着脱することができる。なお、複数の取付孔21のうちデッキボード14の床面14Aからの高さが、突出部30を取付孔21の第2孔部23の下端に変位させてケース60を取付ボード20に取り付け、蓋部材65をケース本体61に対して約90度に開いたときに、蓋部材65がデッキボード14の床面14Aに沿って配される状態となるような取付孔21の列については、乗物用収納部品50の取付孔21として適していることを示す印(図示せず)が付されていてもよい。
【0033】
取付孔21は、取付ボード20を貫通するように形成されており、図10に示すように、突出部30の先端部36を挿入することが可能な第1孔部22と、第1孔部22と連通すると共に突出部30の中間部34が挿入される第2孔部23と、により形成されている。第1孔部22は円形状をなしており、第2孔部23は、第1孔部22の中心を中心にして120度間隔で放射状に3つ配されている。第2孔部23は、第1孔部22の半径方向に沿って延びる細長い長孔である。
【0034】
図10に示すように、第1孔部22の直径B1は、先端部36の直径D3よりもやや大きく設定されており、先端部36は第1孔部22に挿通することが可能となっている。また、第2孔部23の幅B2は、中間部34の直径D2とほぼ同じであるか、または直径D2よりもわずかに大きく、中間部34は、第2孔部23に挿通することが可能であるとともに、第2孔部23の長手方向に沿って変位可能とされている。また、第2孔部23の幅B2は、先端部36の直径D3よりも小さい。そのため、先端部36が第2孔部23に変位された状態において、突出部30は取付孔21からの抜け止めがなされた状態となる。
【0035】
本実施形態では、図11に示すように、ケース本体61の突出部30を取付ボード20の第1孔部22に挿入した後、図12に示すように、第1孔部22の周囲にある3つの第2孔部23のうちいずれかの第2孔部23側にスライド変位させることで、中間部34が第2孔部23に嵌合されると共に、突出部30の先端部36が取付ボード20における第2孔部23の孔縁部に対して裏面20B側(室外側)から係止する構成となっている(図9および図12参照)。
【0036】
また、例えば図9に示すように、取付ボード20の裏面20Bには、それぞれの第2孔部23の先端(孔の最奥)付近の孔縁部において、第2孔部23を挟むように半球状の突起部24,24が対となって設けられている。また一方で、図10から図12に示すように、突出部30の基端部32には、基端部32よりも軟らかい軟質材料(例えば、シリコンゴム等の合成ゴム)によって構成された、円環状の軟質材38(ワッシャ)が装着されている。軟質材38は、基端部32と取付ボード20との間に介在されており、図11に示すように、突出部30が第1孔部22に挿入されている状態においては、基端部32と取付ボード20との間に自然状態で介在することができる。その一方で、軟質材38は、図12に示すように、突出部30の先端部36が第2孔部23の端部で孔縁部に係止した状態においては、その厚み方向(車幅方向)について自然状態よりもわずかに縮んだ状態で、基端部32と取付ボード20との間に介在する厚みとされている。
【0037】
すなわち、突出部30が第1孔部22に挿通されて、第1孔部22から第2孔部23に変位されると、突出部30の先端部36は、第2孔部23の孔縁部の表面を摺動したのち、突起部24に突き当たる。このとき、突起部24が半球状であることと、軟質材38が厚み方向で縮み得ることから、先端部36は軟質材38を厚み方向で押し潰しながら突起部24に乗り上げる。そのため、ユーザがケース本体61を手に持ち、突出部30が第1孔部22から第2孔部23に変位するようにケース本体61をスライド変位させると、先端部36と突起部24との接触による節度感を得ることができる。これにより、ユーザは、室内側から突出部30を目視できない状態にあっても、突出部30が第2孔部23に変位して係止されたことを容易に知覚することができる。また、一対の突起部24,24と先端部36とは、軟質材38の弾性力により互いに押し当てられた状態とされており、突起部24と先端部36との間に生じる摩擦によって、先端部36が容易に第1孔部22の側に向けて変位する事態が規制されている。
【0038】
また、例えば図10に示すように、取付ボード20の裏面20B(室外側の面)には、デッキサイドトリム15の凹部17の底面17Aに対して室内側から当接する当接面25Aを有するスペーサ25が設けられている。このスペーサ25の当接面25Aは、突起部24に乗り上げた状態の先端部36における室外側の先端面36Aよりも、さらに室外側(底面17A側)に配されている。スペーサ25は、図8に示すように、120度間隔で放射状に配された3つのリブによって構成されており、1つのスペーサ25は、3つの取付孔21に囲まれている。これにより、乗物用収納部品50を取付ボード20に取り付ける際に、突出部30がデッキサイドトリム15の凹部17と干渉することが規制されている。
【0039】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の乗物用収納構造1は、車両10の車室11内の室内意匠面を構成し、その室内意匠面が起立してなる構成とされた取付ボード20と、取付ボード20に対して、室内側から着脱可能に取り付けられる乗物用収納部品50と、を備え、乗物用収納部品50は、折り畳み可能で展開した状態において物品を収納することが可能な収納部本体52と、収納部本体52を折り畳んだ状態で収容するケース60と、を備える。ケース60は、取付ボード20に取り付けられて室内側に開口し、折り畳まれた状態の収納部本体52を収容するケース本体61と、ケース本体61に対してケース本体61の下端に位置する回動軸Mを中心に回動可能に設けられ、ケース本体61の開口61Aを塞ぐ蓋部材65と、蓋部材65をケース本体61に磁力によって固定して収納部本体52を収容した状態でケース本体61の開口61Aが蓋部材65で塞がれた状態とする磁力固定部70と、を有している。ケース本体61は、取付ボード20に向けて延びる突出部30を有し、取付ボード20は、突出部30を取り付け可能な取付孔21を有している。突出部30を取付孔21に取り付けて乗物用収納部品50を取付ボード20に取り付けた状態で、磁力固定部70によるケース本体61と蓋部材65との固定が解除されると、ケース本体61に対して蓋部材65が回動して開かれる構成を備えている。
【0040】
上記構成によると、乗物用収納部品50は、収納部本体52を折り畳んでケース60に収容した状態で、取付ボード20に取り付けておくことができる。したがって、車両10が移動する際に、振動や急制動等により乗物用収納部品50が車室内で移動することが規制される。また、乗物用収納部品50は、不使用時には、取付ボード20に沿って保管することができ、車両10の室内を広く利用することができる。さらに、ケース60は、蓋部材65がケース本体61の下端に位置する回動軸Mを中心に回動するため、取付ボード20に取り付けた状態で磁力固定部70による固定を解除することで、蓋部材65がいったん回動を開始すると自重によって開かれる構成とされている。これにより、ユーザは片手で磁力固定部70による固定の解除を行ってケース60を簡便に開くことができる。また、ユーザは、ケース60を開く工程を踏むことなくスムーズに、折り畳まれた収納部本体52の展開を行うことができる。
【0041】
また、上記実施形態において、蓋部材65は、回動軸Mとは反対側の端部に蓋部磁石66を備えており、磁力固定部70は、磁力を発生し蓋部磁石66と引きあうことができる固定部本体72と、一端が固定部本体72に接続されるとともに他端がケース本体61の上面61Cに固定されている帯状部76と、を含んで構成されている。乗物用収納部品50は、蓋部材65がケース本体61の開口61Aを塞いだ状態において、固定部本体72が蓋部材65の外側から蓋部材65の蓋部磁石66に対応する位置に付着することで蓋部材65をケース本体61に固定することができるとともに、固定部本体72が蓋部材65から脱着されることで、蓋部材65のケース本体61への固定が解除される構成を備えている。このような構成によると、乗物用収納部品50は、蓋部材65の蓋部材65に対応する位置に対して固定部本体72を付着させたり脱着させたりするという簡単な操作によって、蓋部材65をケース本体61に固定したり、その固定を解除したりすることができる。
【0042】
また、ケース本体61は、取付ボード20に取り付けられたときの上方の端部に本体部磁石62を備えており、乗物用収納部品50は、蓋部材65がケース本体61に対して開かれた状態においては、固定部本体72をケース本体61の内側からケース本体61の本体部磁石62と対応する位置に付着させる構成を備えている。上記構成によると、乗物用収納部品50は、磁力固定部70を使用しないときには、固定部本体72をケース本体61の内側に固定しておくことができ、ユーザが収納物を収納部本体52へ収納する際に磁力固定部72が収納の妨げになることを防ぐことができる。
【0043】
上記実施形態において、収納部本体52は、展開した状態で上方に開口52Aを有する有底箱状であって、90度に開かれたケース本体61と蓋部材65との上方に展開された状態において、ケース本体61に固定される背面部52Cと、蓋部材65に固定され、背面部52Cの下端と接続される底面部52Bと、底面部52Bに対し背面部52Cとは反対側において接続され、背面部52Cの側を向くように立設される板状の前面部52Dと、これら前面部52D、底面部52B、および背面部52Cに対し、回動軸Mに沿う方向の両方の端部においてそれぞれ接続される一対の側面部52E,52Eと、を備え、収納部本体52は、前面部52Dを底面部52Bに重ね、一対の側面部52E,52Eを折り曲げることで折り畳まれてケースに収容される。そしてケース60が取付ボード20に取り付けられた状態で磁力固定部70によるケース本体61と蓋部材65との固定が解除されると、ケース本体61に対して蓋部材65が開かれることで、収納部本体52の底面部52Bが背面部52Cに対して展開される構成を備えている。
【0044】
上記構成によると、収納部本体52は有底の箱状であるため、小さい収納物であっても隙間から零れることなく収納することができる。また、収納部本体52は、ケース60の開閉を利用して、展開または折り畳みの一部を行うことができる。さらに、収納部本体52の前面部52Dは板状であるため、ユーザは、ケース60の開閉時に前面部52Dを蓋部材65に対して立ち上げたり倒したりすることで、収納部本体52を完全に展開したり、ケース60の閉塞を利用して収納部本体52が完全に折畳まれる段階にまで収納部本体52を畳む(変形させる)ことができる。これにより、収納部本体の折り畳みと展開とを簡便に行える乗物用収納構造が提供される。
【0045】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、一つの取付ボード20に対して、一つの乗物用収納部品50を取り付ける態様に基づいて、ここに開示される乗物用収納構造1について説明した。しかしながら、乗物用収納構造1および乗物用収納部品50においては、一つの取付ボードに対して、同一の、あるいは互いに異なる、二つ以上の乗物用収納部品50を取り付け可能に構成してもよい。
(2)上記実施形態では、乗物用収納部品50には二つの突出部30が備えられていたが、乗物用収納部品50に設けられる突出部30の数および配置はこれに限定されず、例えば、乗物用収納部品50の重さや、取付孔21への突出部30の取り付けやすさを勘案して決定することができる。
(3)上記実施形態では、乗物用収納部品50の外形が略直方体形状であったが、乗物用収納部品50の外形はこれに限定されず、平面視が円形や半円形等であってもよい。また、収納部本体52の展開時の形状や折り畳み方法については、実施形態の開示に限定されない。収納部本体52は、例えば、背面部61Bと前面部65Bとに対し、少なくとも前面部52Dと一対の側面部52E,52Eに対応する部分とが備えられていればよい。
(4)上記実施形態では、取付ボード20をデッキサイドトリム15に設けていたが、取付ボード20はその室内意匠面が起立しているものであればデッキサイドトリム15に限定されない。取付ボード20は、例えば、乗物シートのシートバックボードや、ドアトリムの室内意匠面の一部を構成する板状部等であってよい。
(5)上記実施形態では、乗物用収納部品50の突出部30(取付部)はケース60に固着されていたが、例えば突出部30(取付部)はケース60から着脱自在に構成されていてもよい。この場合、乗物用収納部品50から突出部30が突出することで突出部30が邪魔になることを避けることができ、また、突出部30が破損した場合等には突出部30のみを交換することができる。また、上記実施形態では、取付部が棒状であって被取付部が孔状である構成を示したが、被取付部は孔状に限らず、例えばフック状や溝状等としてもよい。また、孔状である場合でも、上記実施形態の取付孔21に限るものではない。
【符号の説明】
【0047】
1…乗物用収納構造、15…デッキサイドトリム、20…取付ボード(板状部)、21…取付孔(被取付部)、22…第1孔部、23…第2孔部、30…突出部(取付部)、50…乗物用収納部品、52…収納部本体、60…ケース、61…ケース本体、65…蓋部材、70…磁力固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12