(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/00 20060101AFI20231011BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20231011BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231011BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231011BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231011BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20231011BHJP
B60K 6/442 20071001ALN20231011BHJP
【FI】
B60W10/00 900
B60W20/12 ZHV
B60W20/13
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
B60K6/442
(21)【出願番号】P 2020103721
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 真典
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-298278(JP,A)
【文献】特開2019-133511(JP,A)
【文献】特開2007-282177(JP,A)
【文献】特開2009-292287(JP,A)
【文献】特開2010-241396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0390970(US,A1)
【文献】特許第6312913(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御システムであって、
前記ハイブリッド車両に設けられ、学習作用を行うように構成されているオンボード学習部と、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別するように構成されている位置判別部と、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止するように構成されている学習制御部と、
を備え
、
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両のバッテリの充電率があらかじめ定められたしきい値よりも低いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止し、前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも高いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を停止しないように構成されており、
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されかつ前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも低いと判別されたときにおいて、前記バッテリの充電率が低くなるにつれて前記オンボード学習部による学習作用の停止割合を高くするように構成されている、
制御システム。
【請求項2】
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときにおいて、前記オンボード学習部による学習作用を全体的に停止するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記ハイブリッド車両外のサーバに設置され、学習作用を行うように構成されているサーバ学習部を更に備え、
前記サーバ学習部は、
前記オンボード学習部による学習作用が停止されたときに、前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信されたデータを用いて、前記オンボード学習部が行うべき学習作用を行い、
前記サーバ学習部の学習結果を前記ハイブリッド車両に送信する、
ように構成されている、請求項1
又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信するように構成されている、請求項
3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の非隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信せず、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信するように構成されている、請求項
4に記載の制御システム。
【請求項6】
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御システムであって、
前記ハイブリッド車両に設けられ、学習作用を行うように構成されているオンボード学習部と、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別するように構成されている位置判別部と、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止するように構成されている学習制御部と、
前記ハイブリッド車両外のサーバに設置され、学習作用を行うように構成されているサーバ学習部と、
を備え
、
前記サーバ学習部は、
前記オンボード学習部による学習作用が停止されたときに、前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信されたデータを用いて、前記オンボード学習部が行うべき学習作用を行い、
前記サーバ学習部の学習結果を前記ハイブリッド車両に送信する、
ように構成されており、
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の非隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信せず、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信するように構成されている、
制御システム。
【請求項7】
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両に設けられたオンボード学習部により学習作用を行うことと、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別することと、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止することと、
を含
み、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両のバッテリの充電率があらかじめ定められたしきい値よりも低いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止し、前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも高いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を停止せず、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されかつ前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも低いと判別されたときにおいて、前記バッテリの充電率が低くなるにつれて前記オンボード学習部による学習作用の停止割合を高くする、
制御方法。
【請求項8】
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両に設けられたオンボード学習部により学習作用を行うことと、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別することと、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止することと、
を含み、
前記オンボード学習部による学習作用が停止されたときに、前記ハイブリッド車両外のサーバに設置されたサーバ学習部により、前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信されたデータを用いて、前記オンボード学習部が行うべき学習作用を行い、前記サーバ学習部の学習結果を前記ハイブリッド車両に送信し、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の非隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信せず、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はハイブリッド車両の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、内燃機関の運転が停止されつつ電気モータが運転されるEVモードと、内燃機関及び電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両が公知である。
【0003】
ところで、排気エミッションや騒音のことを考えると、住宅地のような特定領域内では、運転モードをEVモードにするのが好ましい。ところが、そのためには、特定領域内でEVモードを継続するのに必要な電力が必要となる。そこで、ハイブリッド車両が特定領域内に入る前に、減速運転時に回生制御による発電を行い、バッテリの充電率をできるだけ高くしておく、ハイブリッド車両が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリの容量や回生制御の頻度のことを考えると、バッテリの充電率を高くするにも限界がある。したがって、特定領域内でバッテリの充電率が過度に低くなるおそれがあり、EVモードを継続できないおそれがある。この場合、特定領域内で車両走行を継続するために内燃機関を運転せざるを得ない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、以下が提供される。
[構成1]
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御システムであって、
前記ハイブリッド車両に設けられ、学習作用を行うように構成されているオンボード学習部と、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別するように構成されている位置判別部と、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止するように構成されている学習制御部と、
を備える、制御システム。
[構成2]
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときにおいて、前記オンボード学習部による学習作用を全体的に停止するように構成されている、構成1に記載の制御システム。
[構成3]
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両のバッテリの充電率があらかじめ定められたしきい値よりも低いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止し、前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも高いと判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を停止しないように構成されている、構成1又は2に記載の制御システム。
[構成4]
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されかつ前記バッテリの充電率が前記しきい値よりも低いと判別されたときにおいて、前記バッテリの充電率が低くなるにつれて前記オンボード学習部による学習作用の停止割合を高くするように構成されている、構成3に記載の制御システム。
[構成5]
前記ハイブリッド車両外のサーバに設置され、学習作用を行うように構成されているサーバ学習部を更に備え、
前記サーバ学習部は、
前記オンボード学習部による学習作用が停止されたときに、前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信されたデータを用いて、前記オンボード学習部が行うべき学習作用を行い、
前記サーバ学習部の学習結果を前記ハイブリッド車両に送信する、
ように構成されている、構成1から4までのいずれか1に記載の制御システム。
[構成6]
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信するように構成されている、構成5に記載の制御システム。
[構成7]
前記学習制御部は、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域外にあると判別されたときにおいて、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の非隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信せず、前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域の隣接領域内にあると判別されたときに、前記データを前記ハイブリッド車両から前記サーバに送信するように構成されている、構成6に記載の制御システム。
[構成8]
内燃機関及び電気モータを備え、運転モードが、前記内燃機関の運転が停止されつつ前記電気モータが運転されるEVモードと、前記内燃機関及び前記電気モータが運転されるHVモードとの間で切り換えられるハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両に設けられたオンボード学習部により学習作用を行うことと、
前記内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内に前記ハイブリッド車両があるか否かを判別することと、
前記ハイブリッド車両が前記低エミッション領域内にあると判別されたときに、前記オンボード学習部による学習作用を少なくとも部分的に停止することと、
を含む、制御方法。
【発明の効果】
【0007】
内燃機関の運転を制限すべき低エミッション領域内においてEVモードを確実に継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示による第1実施例の制御システムの概略全体図である。
【
図2】本開示による第1実施例の低エミッション領域の概略図である。
【
図3】本開示による第1実施例における車両の機能ブロック図である。
【
図4】本開示による第1実施例におけるサーバの機能ブロック図である。
【
図5】本開示による第1実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図6】本開示による第1実施例の車両制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【
図7】本開示による第1実施例のサーバ制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【
図8】本開示による第2実施例における車両の機能ブロック図である。
【
図9】本開示による第2実施例における停止割合の一例を示す線図である。
【
図10】本開示による第2実施例における停止割合の別の例を示す線図である。
【
図11】本開示による第2実施例の車両制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【
図12】本開示による第3実施例におけるサーバの機能ブロック図である。
【
図13】本開示による第3実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図14】本開示による第3実施例の車両制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【
図15】本開示による第3実施例のサーバ制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【
図16】本開示による第4実施例の低エミッション領域及び隣接領域の概略図である。
【
図17】本開示による第4実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図18】本開示による第4実施例のサーバ制御ルーチンを実行するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図7を参照して、本開示による第1実施例を説明する。
図1を参照すると、本開示による第1実施例のハイブリッド車両の制御システム1は、ハイブリッド車両10と、ハイブリッド車両10の外部のサーバ30とを備える。
【0010】
本開示による第1実施例のハイブリッド車両10は、内燃機関11及びモータジェネレータ(M/G)12、バッテリ13、少なくとも1つのセンサ14、GPSレシーバ15、記憶装置16、通信装置17、及び電子制御ユニット20を備える。内燃機関11は、例えば火花点火機関又は圧縮着火機関から構成される。内燃機関11(例えば、燃料噴射弁、点火栓、スロットル弁、など)は電子制御ユニット20からの信号に基づいて制御される。また、モータジェネレータ12は電気モータ又は発電機として作動する。モータジェネレータ12は電子制御ユニット20からの信号に基づいて制御される。
【0011】
本開示による第1実施例では、ハイブリッド車両10の運転モードをEVモードとHVモードとの間で切り換えることができる。本開示による第1実施例のEVモードでは、内燃機関11が停止されつつモータジェネレータ12が電気モータとして運転される。この場合、モータジェネレータ12の出力が車軸に伝達される。一方、本開示による第1実施例のHVモードでは、内燃機関11が運転されるとともにモータジェネレータ12が電気モータとして運転される。この場合、一例では、内燃機関11の出力及びモータジェネレータ12の出力が車軸に伝達される。別の例では、モータジェネレータ12の出力が車軸に伝達され、内燃機関11の出力は発電機(図示しない)に伝達され、発電機が作動される。発電機で発生された電力はモータジェネレータ12又はバッテリ13に送られる。更に別の例では、内燃機関11の出力の一部とモータジェネレータ12の出力が車軸に伝達され、内燃機関11の出力の残りが発電機に伝達される。発電機で発生された電力はモータジェネレータ12又はバッテリ13に送られる。また、本開示による第1実施例では、EVモード及びHVモードにおいて、例えば減速運転時にモータジェネレータ12を発電機として用いる回生制御が行われる。回生制御で発生された電力はバッテリ13に送られる。
【0012】
本開示による第1実施例のバッテリ13は、発電機として作動するモータジェネレータ12又は発電機(図示しない)からの電力でもって充電される。別の実施例(図示しない)では、バッテリ13は外部電源によっても充電可能である。一方、本開示による第1実施例では、電力がバッテリ13から、電気モータとして作動するモータジェネレータ12、電子制御ユニット20、その他の車載機器に供給される。
【0013】
本開示による第1実施例のセンサ14は種々の生データを検出する。本開示による第1実施例のセンサ14には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量により表される要求車両負荷を検出するための負荷センサ、内燃機関11のスロットル開度を検出するためのスロットル開度センサ、内燃機関11の排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ、内燃機関11の回転数を検出するための回転数センサ、バッテリ13の電圧及び電流を検出するための電圧計及び電流計、などが含まれる。これらセンサ14の出力信号は電子制御ユニット20に入力される。
【0014】
本開示による第1実施例のGPSレシーバ15は、GPS衛星からの信号を受信し、それにより車両10の絶対位置(例えば、経度及び緯度)を表す情報を検出する。車両10の位置情報は電子制御ユニット20に入力される。
【0015】
本開示による第1実施例の記憶装置16には、種々のデータがあらかじめ記憶されている。本開示による第1実施例の通信装置17は例えばインターネットのような通信網Nに接続可能である。
【0016】
本開示による第1実施例の車両10の電子制御ユニット20は、双方向性バスによって互いに通信可能に接続された1又は複数のプロセッサ21、1又は複数のメモリ22、及び、入出力(I/O)ポート23を備える。メモリ22は例えばROM、RAMなどを備える。メモリ22には種々のプログラムが記憶されており、これらプログラムがプロセッサ21で実行されることにより種々の機能が実現される。本開示による第1実施例の入出力ポート23には、上述の内燃機関11、モータジェネレータ12、センサ14、GPSレシーバ15、記憶装置16、及び通信装置17が通信可能に接続される。また、本開示による第1実施例のプロセッサ21では、バッテリ13のSOCないし充電率が、例えばバッテリ13の電圧及び電流に基づいて算出される。
【0017】
更に
図1を参照すると、本開示による第1実施例のサーバ30は、記憶装置31、通信装置32、及び電子制御ユニット40を備える。
【0018】
本開示による第1実施例の記憶装置31には、内燃機関11の運転を制限すべき低エミッション領域の位置情報(例えば、緯度及び経度)が記憶されている。
図2には、本開示による第1実施例の低エミッション領域LEZの一例が模式的に示される。本開示による第1実施例の低エミッション領域LEZは閉じた境界又はジオフェンスGFによって囲まれている。低エミッション領域LEZは例えば都市部に設定される。
【0019】
本開示による第1実施例の通信装置32は通信網Nに接続可能である。したがって、車両10とサーバ20とは通信網Nを介して互いに接続可能になっている。
【0020】
本開示による第1実施例のサーバ30の電子制御ユニット40は、車両10の電子制御ユニット20と同様に、双方向性バスによって互いに通信可能に接続された1又は複数のプロセッサ41、1又は複数のメモリ42、及び、入出力ポート43を備える。本開示による第1実施例の入出力ポート43には、上述の記憶装置31、及び通信装置32が通信可能に接続される。
【0021】
図3は、本開示による第1実施例の車両10の機能ブロック図を示している。
図3を参照すると、車両10の電子制御ユニット20は、位置情報取得部20a、オンボード学習部20b、学習結果利用部20c、運転モード制御部20d、及び、学習制御部20eを含む。
【0022】
本開示による第1実施例の位置情報取得部20aは、GPSレシーバ15から車両10の位置情報を取得する。また、位置情報取得部20aは、この位置情報をサーバ30に送信する。
【0023】
本開示による第1実施例のオンボード学習部20bは、学習作用を行う。オンボード学習部20bは、生データ取得部20b1、データ前処理部20b2、及び学習演算部20b3を含む。
【0024】
本開示による第1実施例の生データ取得部20b1は、学習に必要な生データを取得する。この生データには、例えば、センサ14の出力、プロセッサ21での演算結果、などが含まれる。
【0025】
本開示による第1実施例のデータ前処理部20b2は、生データ取得部20b1が取得した生データに前処理を施して、学習に適したデータセットを生成する。この前処理には、フィルタリング、クレンジング、正規化、標準化、などが含まれる。データセットの例には、教師あり学習に適したデータセット、教師なし学習に適したデータセット、及び、強化学習に適したデータセット、などが含まれる。
【0026】
本開示による第1実施例の学習演算部20b3は、データ前処理部20b2によって生成されたデータセットを用いて学習を行う。一例では、ニューラルネットワークを用いた教師あり学習が行われる。すなわち、或る値を入力したときのニューラルネットワークの出力と、当該或る値に対応する教師データとの差が収束値よりも小さくなるまで、ニューラルネットワークの重みが繰り返し演算される。別の例では、ランダムフォレストを用いた学習、サポートベクトルマシンを用いた学習、又は、複数の計算モデルが並列的又は直列的に用いられるアンサンブル学習、などが行われる。
【0027】
学習演算部20b3又はオンボード学習部20bの学習結果は、一例では計算モデルを表している。言い換えると、学習演算部20b3又はオンボード学習部20bによる学習作用によって、計算モデルが作成又は更新される。計算モデルの一例には、スロットル開度、機関回転数、及び点火時期から、内燃機関11のNOx排出量を出力する計算モデルが含まれる。この例では、生データ取得部20b1は、学習を行うのに必要な生データ、例えばスロットル開度、機関回転数、点火時期、などを取得する。計算モデルの別の例には、気温、バッテリ13の温度、バッテリ13の放電時間、及びバッテリ13の単位時間当たりの放電エネルギから、バッテリ13の劣化度を出力する計算モデルが含まれる。
【0028】
更に
図3を参照すると、本開示による第1実施例の学習結果利用部20cは、学習演算部20b3又はオンボード学習部20bによる学習結果を利用して、あらかじめ定められた処理を行う。一例では、オンボード学習部20bにより作成又は更新された計算モデルを用いて、車両10の制御、例えば、内燃機関11、モータジェネレータ12、車載インフォテインメントシステム(図示しない)、などが制御される。
【0029】
なお、本開示による第1実施例のオンボード学習部20bによる学習作用には、オンボード学習部20bの機能、すなわち、生データ取得部20b1による生データの取得、データ前処理部20b2によるデータの前処理、及び、学習演算部20b3による学習のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0030】
更に
図3を参照すると、本開示による第1実施例の運転モード制御部20dは、運転モードを、EVモードとHVモードとの間で変更する。一例では、要求車両負荷があらかじめ定められた設定負荷よりも低いときにEVモードが行われ、要求車両負荷が設定負荷よりも高くなると運転モードがHVモードに切り換えられる。また、バッテリ13のSOCがあらかじめ定められた設定SOCよりも高いときにEVモードが行われ、バッテリ13のSOCが設定SOCよりも低くなると運転モードがHVモードに切り換えられる。
【0031】
本開示による第1実施例の学習制御部20eは、オンボード学習部20bによる学習作用の実行又は停止を制御する。
【0032】
一方、
図4は、本開示による第1実施例のサーバ30の機能ブロック図を示している。
図4を参照すると、サーバ30の電子制御ユニット40は、位置判別部40aを含む。
【0033】
本開示による第1実施例の位置判別部40aは、車両10からサーバ30に送信された車両10の位置情報と、記憶装置31内に記憶されている低エミッション領域LEZの位置情報とから、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるか否かを判別する。また、位置判別部40aは、判別結果に応じた指示データを作成し、指示データを車両10に送信する。
【0034】
さて、本開示による第1実施例では、車両10が車両10の位置情報を取得すると、車両10の位置情報がサーバ30に送信される。サーバ30の位置判別部40aは、車両10の位置情報を受信すると、受信した車両10の位置情報と、記憶装置31に記憶されている低エミッション領域LEZの位置情報とから、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるかを判別する。車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されたときには、位置判別部40aは、学習許容指示を含む指示データを作成し、車両10に送信する。これに対し、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されたときには、サーバ30の位置判別部40aは、学習停止指示を含む指示データを作成し、車両10に送信する。
【0035】
車両10がサーバ30から指示データを受信すると、車両10の学習制御部20eは受信した指示データが学習停止指示を含むかを判別する。指示データが学習許容データを含むと判別されると、学習制御部20eはオンボード学習部20b又は車両10による学習作用を許容する。その結果、例えば計算モデルが正確に作成又は更新され、良好な制御が維持される。これに対し、指示データが学習停止指示を含むと判別されると、学習制御部20eはオンボード学習部20b又は車両10による学習作用を停止する。その結果、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるときに、車両10における電力消費が制限される。したがって、バッテリ13のSOCが上述の設定SOCを下回りにくくなる。これにより、低エミッション領域LEZ内において、EVモードを確実に継続することができる。
【0036】
すなわち、
図5に示される例では、時間ta1までは車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別され、このとき車両10又はオンボード学習部20bでの学習作用が許容される。次いで、時間ta1において車両10が低エミッション領域LEZ内に入ったと判別されると、車両10での学習作用が停止される。次いで、時間ta2において車両10が低エミッション領域LEZから出たと判別されると、車両10での学習作用が再び許容される。
【0037】
オンボード学習部20bによる学習作用を停止すべきときに、一例では、オンボード学習部20bによる学習作用が全体的に停止される。その結果、車両10での電力消費が大幅に低減される。別の例では、オンボード学習部20bによる学習作用が部分的に停止される。その結果、車両10での電力消費が制限されつつ、オンボード学習部20bによる学習作用が部分的に継続される。オンボード学習部20bによる学習作用を部分的に停止するために、例えば、オンボード学習部20bの上述した機能、すなわち、生データ取得部20b1による生データの取得、データ前処理部20b2によるデータの前処理、及び、学習演算部20b3による学習のうちの少なくとも1つが停止される。あるいは、オンボード学習部20bによる学習作用の実行頻度が正規の頻度よりも低くされる。あるいは、学習にニューラルネットワークが用いられる場合には、上述の収束値が正規の値よりも大きくされる。学習にランダムフォレストが用いられる場合には、決定木の数が正規の数よりも少なくされる。学習にアンサンブル学習が用いられる場合には、アンサンブル学習に用いられる学習器の数が正規の数よりも少なくされる。あるいは、学習作用に用いられる生データの数又は前処理されたデータの数が正規の数よりも少なくされる。
【0038】
なお、停止されるオンボード学習部20bの機能の数が大きくなるにつれて、オンボード学習部20bによる学習作用の停止割合が高くなる。あるいは、オンボード学習部20bによる学習作用の実行頻度が低くなるにつれて、収束値が大きくなるにつれて、決定木の数が少なくなるにつれて、学習器の数が少なくなるにつれて、又は、学習作用に用いられるデータ数が少なくなるにつれて、学習作用の停止割合が高くなる。学習作用の停止割合は、例えばゼロから1までの間の数値の形で表される。停止割合がゼロであると、学習作用は停止されず、停止割合が1であると学習作用が全体的に停止される。
【0039】
図6は、本開示による第1実施例における、車両10での制御を実行するためのルーチンを示している。このルーチンは例えばあらかじめ定められた設定時間ごとに繰り返される。
図6を参照すると、ステップ100では、車両10の位置情報が取得される。続くステップ101では、車両10の位置情報がサーバ30に送信される。続くステップ102では、サーバ30から指示データを受信したか否かが判別される。サーバ30から指示データを受信したと判別されるまでステップ102が繰り返される。サーバ30から指示データを受信した判別されると、次いでステップ103に進み、指示データに学習許容指示が含まれているか学習停止指示が含まれているかが判別される。指示データに学習許容指示が含まれていると判別されたときには、次いでステップ104に進み、車両10での学習作用が許容される。次いでステップ106に進む。これに対し、指示データに学習停止指示が含まれていると判別されたときには、次いでステップ105に進み、車両10での学習作用が停止される。次いでステップ106に進む。
【0040】
ステップ106では、学習結果を利用して、例えば車両10の制御が行われる。なお、ステップ105からステップ106に進んだときには、学習作用が停止される前に得られた学習結果が利用される。
【0041】
図7は、本開示による第1実施例における、サーバ30での制御を実行するためのルーチンを示している。このルーチンは例えばあらかじめ定められた設定時間ごとに繰り返される。
図7を参照すると、ステップ200では、車両10から車両10の位置情報を受信したか否かが判別される。車両10の位置情報を受信していないと判別されたときには処理サイクルを終了する。車両10の位置情報を受信したと判別されると、ステップ201に進み、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるか否かが判別される。車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されたときには、次いでステップ202に進み、学習許容指示を含む指示データが作成される。次いでステップ204に進む。これに対し、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されたときには、次いでステップ203に進み、学習停止指示を含む指示データが作成される。次いでステップ204に進む。ステップ204では、指示データが車両10に送信される。
【0042】
なお、本開示による第1実施例では、上述したように、要求車両負荷及びバッテリ13のSOCに基づいて、運転モードがEVモード又はHVモードに制御される。したがって、低エミッション領域LEZ内で運転モードがEVモードに維持されるように又はHVモードに切り換えられないようにするために、車両10のドライバには、要求車両負荷(例えば、アクセルペダルの踏み込み量)の調節、バッテリ13のSOCの管理、などが求められる。別の実施例(図示しない)では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されると、運転モード制御部20dにより、運転モードが自動的にEVモードに切り換えられ、維持される。
【0043】
次に、
図8から
図11を参照して、本開示による第2実施例を説明する。本開示による第2実施例は次の点で本開示による第1実施例と相違する。すなわち、
図8に示されるように、本開示による第2実施例の車両10の電子制御ユニット20はSOC取得部20fを備える。SOC取得部20fは、バッテリ13のSOCを、例えばプロセッサ21から取得する。
【0044】
上述の本開示による第1実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されると、車両10での学習作用が少なくとも部分的に停止される。その結果、車両10での電力消費が制限され、バッテリ13のSOCの低下が制限される。しかしながら、バッテリ13のSOCが高いときには、車両10での電力消費を制限する必要性は低い。
【0045】
そこで本開示による第2実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されたときにおいて、バッテリ13のSOCがあらかじめ定められたしきい値SOCxよりも高いときには、車両10での学習作用が停止されず、許容される。これに対し、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いときには、車両10での学習作用が停止される。
【0046】
一例では、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いときには、バッテリ13のSOCに関わらず、車両10での学習作用が全体的に停止される。すなわち、上述した車両10での学習作用の停止割合Rを用いて表現すると、
図9に示されるように、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも高いときには、停止割合Rがゼロとされ、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いときに、停止割合Rが1とされる。
【0047】
別の例では、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いときには、バッテリ13のSOCが低くなるにつれて、車両10での学習作用の停止割合Rが高くされる。すなわち、
図10に示されるように、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも高いときには、車両10の学習作用の停止割合Rがゼロとされ、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いときに、バッテリ13のSOCが低くなるにつれて停止割合Rが大きくされる。
図10に示される例では、バッテリ13のSOCが別のしきい値SOCyよりも低いと、停止割合Rが1に維持され、学習作用が全体的に停止される。停止割合Rが大きくなると、車両10での電力消費がより大きく制限される。
【0048】
図11は、本開示による第2の実施例における、車両10での制御を実行するためのルーチンを示している。
図6に示されるルーチンとの相違点について説明すると、
図11に示されるルーチンでは、まずステップ100aにおいて、バッテリ13のSOCがしきい値SOCxよりも低いか否かが判別される。SOC<SOCxのときには次いでステップ100に進む。したがって、SOC<SOCxでありかつ車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されると、車両10での学習作用が停止されることになる。これに対し、SOC≧SOCxのときにはステップ100aからステップ105に進む。したがって、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるか否かに関わらず、車両10での学習作用が許容される。
【0049】
上述の本開示による第2実施例では、バッテリ13のSOCが高いときに、車両10での学習作用の停止が制限される。別の実施例(図示しない)では、車両10の要求負荷が低いとき、又は、車両10の回生制御による発電量が多いときに、車両10での学習作用の停止が制限される。この場合には、バッテリ13のSOCが過度に低くなるおそれがない。
【0050】
次に、
図12から
図15を参照して、本開示による第3実施例を説明する。本開示による第3実施例は次の点で本開示による第1実施例と相違する。すなわち、
図12に示されるように、本開示による第3実施例のサーバ30の電子制御ユニット40は、サーバ学習部40bを備える。サーバ学習部40bは学習作用を行う。サーバ学習部40bは、データ前処理部40b2、学習演算部40b3、及び学習結果利用部40b4を含む。
【0051】
本開示による第3実施例のデータ前処理部40b2、学習演算部40b3、及び学習結果利用部40b4はそれぞれ、オンボード学習部20bのデータ前処理部20b2、学習演算部20b3、及び学習結果利用部20b4と同様に構成される。
【0052】
上述の本開示による第1実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されると、車両10での学習作用が少なくとも部分的に停止される。ところが、車両10での学習作用が停止されている間は、例えば計算モデルの作成又は更新が行われず、良好な制御を行えないおそれがある。
【0053】
そこで本開示による第3実施例では、車両10での学習作用が停止されたときに、車両10が行うべき学習作用がサーバ30で行われ、サーバ30での学習結果が車両10に送信される。車両10では、受信した学習結果を利用して例えば内燃機関11の制御が行われる。
【0054】
すなわち、本開示による第3実施例では、サーバ30の位置判別部40aは、車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されると、学習許容指示及びデータ送信指示を含む指示データを作成し、車両10に送信する。車両10の学習制御部20eは、データ送信指示を受信すると、学習作用に必要なデータを車両10からサーバ30に送信する。この場合、サーバ30に送信されるデータは、例えば生データ取得部20b1が取得した生データである。
【0055】
サーバ学習部40bのデータ前処理部40b2は、生データを受信すると、生データから学習に適したデータセットを生成する。次いで、サーバ学習部40bの学習演算部40b3は、データ前処理部40b2によって生成されたデータセットを用いて学習を行う。次いで、学習演算部40b3は、学習結果を車両10に送信する。
【0056】
車両10の学習結果利用部20cは、学習結果を受信すると、学習結果を利用して、あらかじめ定められた処理、例えば内燃機関11の制御、を行う。したがって、車両10の電力消費が制限されつつ、車両10において良好な制御が継続される。
【0057】
別の実施例(図示しない)では、車両10からサーバ30に送信されるデータは、車両10のデータ前処理部20b2が生成したデータセットである。この場合、サーバ30はデータ前処理部40b2を備える必要はない。
【0058】
すなわち、
図13に示される例では、時間tb1までは車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別され、このとき車両10からサーバ30に、学習に必要なデータが送信される。次いで、時間tb1において車両10が低エミッション領域LEZ内に入ったと判別されると、車両10での学習作用が停止され、サーバ30での学習作用が開始される。次いで、時間tb2において、サーバ30での学習作用が完了すると、学習結果がサーバ30から車両10に送信される。次いで、時間tb3において車両10が低エミッション領域LEZから出たと判別されると、車両10での学習作用が再び許容される。また、車両10からサーバへのデータの送信が再開される。
【0059】
なお、本開示による第3実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されたときに、車両10からサーバ30へのデータ送信が繰り返し行われる。サーバ30では、受信したデータのうち最新のデータを用いて学習作用が行われる。
【0060】
別の実施例(図示しない)では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されたときに、学習作用に必要なデータが車両10からサーバ30に送信される。しかしながら、データの送信に電力が消費される。そこで本開示による第3実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されたときに、車両10からサーバにデータが送信される。
【0061】
図14は、本開示による第3実施例における、車両10での制御を実行するためのルーチンを示している。
図6に示されるルーチンとの相違点について説明すると、
図14に示されるルーチンでは、ステップ104に続いてステップ104aに進み、受信した指示データに送信指示が含まれているか否かが判別される。送信指示が含まれていないときには処理サイクルを終了する。送信指示が含まれているときには次いでステップ104bに進み、学習作用に必要なデータが車両10からサーバ30に送信される。
【0062】
また、
図14に示されるルーチンでは、ステップ105に続いてステップ105aに進み、サーバ30から学習結果を受信したか否かが判別される。学習結果を受信したと判別されるまでステップ105aが繰り返される。学習結果を受信した判別されると、次いでステップ106に進む。なお、ステップ105aからステップ106に進んだときには、サーバ30からの学習結果が利用される。
【0063】
図15は、本開示による第3実施例における、サーバ30での制御を実行するためのルーチンを示している。
図7に示されるルーチンとの相違点について説明すると、
図15に示されるルーチンでは、ステップ202に続いてステップ202aに進み、データ送信指示を作成する。続くステップ202bでは、学習許容指示及びデータ送信指示を含む指示データが車両10に送信される。続くステップ202cでは、学習作用に必要なデータを車両10から受信したか否かが判別される。データを受信したと判別されるまでステップ202cが繰り返される。データを受信したと判別されると、次いでステップ202dに進み、データが例えば記憶装置31に記憶される。一例では、最新のデータのみが記憶される。
【0064】
また、
図15に示されるルーチンでは、ステップ203に続いてステップ203aに進み、学習停止指示を含む指示データが車両10に送信される。続くステップ203bでは、サーバ30での学習作用が未実行か否かが判別される。サーバ30での学習作用が未実行と判別されたときには次いでステップ203cに進み、学習作用が実行される。続くステップ203dでは、サーバ30での学習結果が車両10に送信される。これに対し、サーバ30での学習作用が実行又は完了されているときには処理サイクルを終了する。このようにしているのは、学習作用を行うためのデータを新たに受信していないからである。
【0065】
次に、
図16から
図18を参照して、本開示による第4実施例を説明する。本開示による第4実施例は次の点で本開示による第3実施例と相違する。すなわち、本開示による第4実施例では、
図16に示されるように、低エミッション領域LEZの外側に、低エミッション領域LEZに隣接する隣接領域ADZと、隣接領域ADZよりも外側の非隣接領域NADZとが画定される。隣接領域ADZは例えば、低エミッション領域LEZの境界GFからの距離があらかじめ定められた値Dよりも短い領域である。隣接領域ADZの位置情報は例えばサーバ30の記憶装置31内に記憶されている。
【0066】
上述の本開示による第3実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ外にあると判別されたときに、学習作用に必要なデータが車両10からサーバ30に繰り返し送信される。しかしながら、サーバ30での学習作用に用いられるデータは最新のもののみである。また、車両10が低エミッション領域LEZ内に入らなければ、サーバ30で学習作用は行われない。
【0067】
そこで本開示による第4実施例では、車両10が非隣接領域NADZ内にあると判別されたときには、学習作用に必要なデータの車両10からサーバ30への送信が行われず、車両10が隣接領域ADZ内にあると判別されたときに、データが送信される。その結果、データ送受信の回数が制限され、データの送受信に必要な電力消費が制限される。
【0068】
特に、車両10が非隣接領域NADZから隣接領域ADZ内に入ったと判別されたときには、車両10がその後に低エミッション領域LEZ内に入ると予想される。そこで本開示による第4実施例では、車両10が非隣接領域NADZから隣接領域ADZ内に入ったと判別されたときに、車両10からサーバ30へのデータ送信が行われる。この場合、車両10が低エミッション領域LEZ内に入ると予想されたときに、車両10からサーバ30へのデータ送信が行われる、ということになる。
【0069】
すなわち、
図17に示される例では、時間tc1までは車両10が非隣接領域NADZ内にあると判別され、このとき車両10からサーバ30への、学習作用に必要なデータの送信は行われない。次いで、時間tc1において車両10が隣接領域ADZ内に入ったと判別されると、車両10からサーバ30へデータが送信される。次いで、時間tc2において車両10が低エミッション領域LEZ内に入ったと判別されると、車両10での学習作用が停止され、サーバ30での学習作用が開始される。次いで、時間tc3において、サーバ30での学習作用が完了すると、学習結果がサーバ30から車両10に送信される。次いで、時間tc4において車両10が低エミッション領域LEZから出たと判別されると、車両10での学習作用が再び許容される。
【0070】
図18は、本開示による第4実施例における、サーバ30での制御を実行するためのルーチンを示している。
図15に示されるルーチンとの相違点について説明すると、
図18に示されるルーチンでは、ステップ202からステップ202xに進み、車両10が非隣接領域NADZから隣接領域ADZ内に入ったか否かが判別される。車両10が非隣接領域NADZから隣接領域ADZ内に入ったと判別されないときには次いでステップ202bに進み、指示データが車両10に送信される。この場合の指示データにはデータ送信指示が含まれない。これに対し、車両10が非隣接領域NADZから隣接領域ADZ内に入ったと判別されたときには、ステップ202xからステップ202aに進み、データ送信指示が作成される。続くステップ202bでは、データ送信指示を含む指示データが車両10に送信される。
【0071】
上述の本開示による第3実施例および第4実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあると判別されたときに、サーバ30での学習結果が車両10に送信される。別の実施例(図示しない)では、車両10が低エミッション領域LEZ外に出た後に、サーバ30での学習結果が車両10に送信される。このようにすると、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるときの電力消費が更に制限される。
【0072】
また、上述の本開示による種々の実施例では、車両10が低エミッション領域LEZ内にあるか否かの判別がサーバ30で行われる。別の実施例(図示しない)では、車両10の電子制御ユニット20が位置判別部を備え、当該判断が車両10で行われる。この場合、一例では、低エミッション領域LEZの位置情報は車両10内に記憶される。別の例では、低エミッション領域LEZの位置情報はサーバ30内に記憶されており、車両10はサーバ30から低エミッション領域LEZの位置情報を受信して、当該判断を行う。
【0073】
更に別の実施例(図示しない)では、上述の本開示による種々の実施例のうちの少なくとも2つが組み合わされる。
【符号の説明】
【0074】
1 制御システム
10 ハイブリッド車両
11 内燃機関
12 モータジェネレータ
20 車両の電子制御ユニット
20b オンボード学習部
20e 学習制御部
30 サーバ
40 サーバの電子制御ユニット
40a 位置判別部