(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】通信端末及び救護システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20231011BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G08B25/04 K
H04M1/00 R
(21)【出願番号】P 2020121217
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 将弘
(72)【発明者】
【氏名】塚岸 健司
(72)【発明者】
【氏名】兼子 貴久
(72)【発明者】
【氏名】木越 絵理奈
(72)【発明者】
【氏名】宮本 愛子
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173755(JP,A)
【文献】特開2009-157485(JP,A)
【文献】特開2017-034361(JP,A)
【文献】特開2017-033108(JP,A)
【文献】特開2016-176903(JP,A)
【文献】特開2017-085349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00-31/00
H04M 1/00
1/24- 3/00
3/16- 3/20
3/38- 3/58
7/00- 7/16
11/00-11/10
99/00
G01C21/00-21/36
23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被救護者を救護する要請の表示と、前記被救護者のもとへ向かう複数の交通手段及びそれぞれの移動時間の表示と、を行う表示装置と、
前記複数の交通手段のいずれかを選択して、前記被救護者のもとへ向かう旨の回答を入力する入力装置と、
を備えることを特徴とする通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末において、
前記表示装置は、さらに、被救護者の位置を示す地図を表示することを特徴とする通信端末。
【請求項3】
請求項1に記載の通信端末において、
前記表示装置は、さらに、被救護者の症状の情報を表示することを特徴とする通信端末。
【請求項4】
請求項1に記載の通信端末において、
前記表示装置は、前記複数の交通手段の中で最も早く到着可能なものを強調する表示を行う、ことを特徴とする通信端末。
【請求項5】
通信端末に、
被救護者を救護する要請の表示と、
前記被救護者のもとへ向かう複数の交通手段及びそれぞれの移動時間の表示と、
前記複数の交通手段のいずれかを選択して、前記被救護者のもとへ向かう旨の回答を入力する入力部の表示と、
を行わせることを特徴とする救護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被救護者への救護にかかる通信端末及び救護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
急病、事故などを起こして救護を必要とする被救護者のもとへ救急隊員が到着するまでの間、近くにいる人に救護の要請を行うシステムが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、被救護者の現在位置に、医療従事者等を迅速に向かわせる装置について記載されている。具体的には、被救護者が携帯端末から救護の要請を送信した場合、送信を受け付けたサーバは、被救護者の近くにいる登録ユーザを救護者として選定し、救護の要請を送信する。登録ユーザの携帯端末には、救護を要請するメッセージと、地図情報と、被救護者の現在位置が表示される。登録ユーザは、救護に向かう意思があるか否かを携帯端末のボタンによりサーバに送信する。
【0004】
なお、下記特許文献2には、消防車、救急車、救急医療機関等を呼び出す方式について記載されている。ここでは、被救護者が携帯端末から緊急発信をした場合、まず、位置情報センタに接続される。位置情報センタは、携帯端末のGPS情報に基づいて被救護者の所在位置を検出した後、地図情報データを参照して最も近い緊急通知先を選定する。そして、位置情報センタは、当該緊急通知先に発信を行い、応答があった場合に所在位置を転送するとともに、被救護者と緊急通知先との通話の接続を行う。緊急通知先が救急医療機関である場合において、応答がないときは、順次近い救急医療機関を呼び出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-34361号公報
【文献】特開2001-339536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
救護者が被救護者のもとへ向かう場合、徒歩、車両などの交通手段の違いによって、移動時間が変わる。上記特許文献1では、交通手段に応じた移動時間が考慮されておらず、適切な救護者を選定できるとは限らない。
【0007】
本発明の目的は、被救護者のもとへ向かう救護者の選定を改善し、救護者の到着を迅速化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる通信端末は、被救護者を救護する要請の表示と、前記被救護者のもとへ向かう複数の交通手段及びそれぞれの移動時間の表示と、を行う表示装置と、前記複数の交通手段のいずれかを選択して、前記被救護者のもとへ向かう旨の回答を入力する入力装置と、を備える。
【0009】
本発明の一態様においては、前記表示装置は、さらに、被救護者の位置を示す地図を表示する。
【0010】
本発明の一態様においては、前記表示装置は、さらに、被救護者の症状の情報を表示する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記表示装置は、前記複数の交通手段の中で最も早く到着可能なものを強調する表示を行う。
【0012】
本発明にかかる救護システムは、通信端末に、被救護者を救護する要請の表示と、前記被救護者のもとへ向かう複数の交通手段及びそれぞれの移動時間の表示と、前記複数の交通手段のいずれかを選択して、前記被救護者のもとへ向かう旨の回答を入力する入力部の表示と、を行わせる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、救護者の交通手段に応じた移動時間を考慮するため、救護者の選定が適切化され、被救護者のもとへ到着する到着時間を早めることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】救護システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】救護サーバのハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図3】救護サーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】救護サーバ等における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】候補者の通信端末に救護依頼の画面表示を行う例を示す図である。
【
図9】救護者の通信端末に救護指示の画面表示を行う例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、実施形態について説明する。説明においては、理解を容易にするため、具体的な態様について示すが、これらは実施形態を例示するものであり、他にも様々な実施形態をとることが可能である。
【0016】
(1)救護システムの構成
図1は、実施形態にかかる救護システム10の全体的な構成を示す概略図である。救護システム10は、怪我、病気などのために緊急の救護が必要となった被救護者12のもとへ、救護を行う救護者を迅速に向かわせるシステムである。
図1では、被救護者12として、交通事故で怪我をした小学生くらいの女の子を想定している。
【0017】
被救護者12の傍には、通報者14が自己の通信端末であるスマートフォン16を持って、緊急通報たる通話を行っている。通話は、公的または私的に設立された緊急通報センタ18の救護サーバ20に繋がっている。
【0018】
緊急通報センタ18には、救護サーバ20が設置されている。救護サーバ20は、救護システム10の中核となる装置であり、緊急通報を受信する他、後述する各種の処理を行っている。緊急通報センタ18に勤務するオペレータ22は、通話によって得られた情報を、緊急通報の救護サーバ20にデータ入力する。また、オペレータ22は、救急車24に乗車する救急隊員に被救護者12の下へ向かうように指示する。救急車24には、通信端末である車載通信装置26が設置されている。車載通信装置26は救護サーバ20と通信可能であり、救急隊員はオペレータ22等との通話、被救護者12に関するデータの閲覧などを行うことができる。なお、通信端末とは、有線または無線による通信が可能な装置をいう。通信端末は、携帯可能な携帯端末であってもよいが、携帯されない端末であってもよい。通信端末には、車載通信装置26の他に、例えば、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、タブレット型コンピュータなどが含まれる。
【0019】
救護システム10では、救急隊員が被救護者12の下へ到着するまでに比較的長い時間を要する場合に、被救護者12の近くにいる医療従事者等を探し、救急隊員よりも先に被救護者12の下へ向かわせることを目指している。
図1の例では、看護師たる医療従事者30が、被救護者12からの距離が比較的近い場所を歩いている。医療従事者30は、通信端末たるスマートフォン32を所持している。
図1の例では、別の医療従事者34が4輪自動車である車両36に乗って、被救護者12からの距離がやや遠い場所を走行している。車両36には、通信端末である車載通信装置38が搭載されている。また、医療従事者34は、通信端末であるスマートフォン40を所持している。車載通信装置38とスマートフォン40は、相互に通信可能に設定されており、同様の表示が行われる。
【0020】
緊急通報センタ18では、救護サーバ20が、登録されたユーザである医療従事者30、34の位置情報を取得する。さらに、救護サーバ20は、交通手段を考慮した上で、医療従事者30、34が被救護者12のもとに到着する時刻を計算する。そして、救急隊員よりも早く到着できると見込まれる場合には、救護サーバ20は、医療従事者30、34に、被救護者12のもとへ向かうことを要請する。医療従事者30、34は、スマートフォン32、40、車載通信装置38を通じて要請への回答を行い、要請を受けた場合には、被救護者12のもとへ向かう。
【0021】
なお、以上に示したシステム構成は様々に変更可能である。例えば、救護サーバ20の一部を通信ネットワークで接続された遠隔地に設けることも可能である。
【0022】
図2は、救護サーバ20のハードウエア構成を説明する簡略的なブロック図である。救護サーバ20には、プロセッサ50、メモリ52、通信回路54、タッチパネル56、マイク58、スピーカ60などが設けられている。
【0023】
プロセッサ50は、中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)などの演算処理を行う装置である。プロセッサ50は、救護サーバ20に複数設けられる場合もあるが、
図2では、象徴的に一つのみを図示している。
【0024】
メモリ52は、データを記憶する装置であり、半導体メモリ、ハードディスクなどによって構成される。メモリ52は、救護サーバ20に複数設けられることも多いが、
図2では、象徴的に一つのみを図示している。
【0025】
通信回路54は、外部と有線または無線を通じて、所定のプロトコルに従った通信を行うための回路である。タッチパネル56は、画像を表示する表示装置であるディスプレイと、ディスプレイの表面への操作を感知する入力装置とを備えた装置である。このうち、ディスプレイは候補者表示手段の例であり、救護に向かう候補者のリストを表示も行う。入力装置としては、例えば、キーボード、マウスなどが設けられてもよい。マイク58は、オペレータ22の音声を検知し電気信号に変換する装置である。スピーカ60は、電気信号を音声に変換する装置である。
【0026】
救護サーバ20では、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラムなどのソフトウエアがインストールされて、メモリ52に記憶される。これらのソフトウエアは、プロセッサ50、メモリ52、通信回路54、タッチパネル56を含むコンピュータハードウエアの動作を制御する。また、マイク58、スピーカ60を通じた音声の入出力も、これらのコンピュータハードウエア及びソフトウエアの制御の下で実施される。この結果、次に
図3を参照して説明する各種の機能が、救護サーバ20に構築される。
【0027】
救護サーバ20は、1台のコンピュータハードウエアによって形成可能である。また、救護サーバ20は、複数のコンピュータハードウエアを通信可能に接続することで形成されてもよい。
【0028】
なお、
図1に示したスマートフォン16、32、40及び車載通信装置26、38も、
図2に示した救護サーバ20と同様のハードウエアを備えており、インストールされたソフトウエアによって動作を制御されている。
【0029】
図3は、救護サーバ20の機能構成を示すブロック図である。救護サーバ20には、緊急通報通信部70、救急隊員通信部72、ユーザインタフェース74、救護依頼制御部76、登録ユーザリスト90及び地図データベース92が構築されている。
【0030】
緊急通報通信部70は、受信手段の例であり、緊急通報についての受信及び応答を含む通信を行う。具体的には、緊急通報通信部70では、スマートフォン16などから通話回線を通じて緊急通報を受信し、オペレータ22が通話の対応を行う。また、緊急通報通信部70は、例えば、スマートフォン16などに設定された緊急通報ボタンを押された場合に、設定された救急通報のデータを受信することもできる。緊急通報では、例えば、被救護者の人数、年齢、性別、症状などの被救護者の情報とともに、被救護者の位置情報が緊急通報センタ18に伝えられる。位置情報は、通報者14から通話によって伝える他、スマートフォン16等から自動送信される。自動送信される位置情報としては、例えば、スマートフォン16のGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)によって取得された情報、または、無線基地局の電波状態から推定された情報などが用いられる。また、固定電話の電話番号に紐づけされた設置場所の位置情報が自動送信されてもよい。自動的に取得された位置情報は、救護依頼制御部76における候補者情報取得部78に送られる。
【0031】
救急隊員通信部72は、オペレータ22の指示の下、救急隊員に出動の指示を行う他、出動した救急隊員との連絡を行う。また、後述するように、救急隊員と救護者とが通話等をするための通信も行う。
【0032】
ユーザインタフェース74は、タッチパネル56などを用いて構築されており、オペレータ22が救護サーバ20を操作等するために使用される。ユーザインタフェース74は、候補者表示手段の例であり、救護に向かう候補者のリストの表示も行う。
【0033】
救護依頼制御部76は、登録されたユーザに救護の依頼を行う。救護依頼制御部76には、候補者情報取得部78、移動時間計算部80、移動時間判定部82、候補者リスト作成部84、救護要請作成部86及び救護者通信部88を含む。
【0034】
候補者情報取得部78は、取得手段の例であり、緊急通報があった場合に、まず、緊急通報通信部70から緊急通報の発信者の位置情報を取得する。次に、位置情報の場所へ向かわせることが可能な登録ユーザの情報を、登録ユーザリスト90から取得する。そして、取得した登録ユーザの情報に基づいて、登録ユーザが所持する通信端末に通信を行い、通信端末の位置情報を取得する。なお、緊急通報の発信者が、被救護者12とは異なる位置にいることも考えられる。この場合には、緊急通報の発信者が、オペレータ22に被救護者12の位置を知らせることになる。そして、オペレータ22がユーザインタフェース74に入力する位置情報をもとに、改めて、救護者の候補となる登録ユーザの選択が行われる。
【0035】
移動時間計算部80は、救急隊員到着時刻推定手段及びユーザ到着時刻推定手段の例であり、候補者となる登録ユーザが被救護者12のもとへ移動する移動時間の計算と、救急隊員が被救護者12のもとへ移動する移動時間を計算する。登録ユーザの移動時間は、登録ユーザリスト90に記載された複数の交通手段について計算される。
【0036】
移動時間判定部82は、判定手段の例であり、救急隊員の移動時間と登録ユーザの移動時間を比較する。これにより、救急隊員よりも早く被救護者12のもとへ到着可能な登録ユーザとその交通手段が得られる。
【0037】
候補者リスト作成部84は、被救護者12の救護者となる候補者のリストを作成する。候補者リストは、救急隊員よりも早く被救護者12のもとへ到着可能な登録ユーザの中から、移動時間の速さを考慮して作成される。候補者リストの作成にあたっては、候補者リストが登録したスケジュールの情報、専門性、過去の救護実績などを加味して行われる。
【0038】
候補者リスト作成部84が作成した候補者に依頼を行う方式は、2通り用意されている。一つは、オペレータ22が、候補者リストを参照して、候補者を選定する方式である。もう一つは、救護依頼制御部76が、候補者リストの中から、優先順位の高さに従って自動的に候補者を選定する方式である。
【0039】
救護要請作成部86は、候補者へ救護要請を行うデータを作成する。データには、地図情報、被救護者の状況に関する情報、回答のための情報などが含まれる。
【0040】
救護者通信部88は、送信手段の例であり、候補者の所持する通信端末への通信を行う。具体的には、救護者通信部88は、救護者依頼のための送信、回答の受信、回答後の救護指示の送信を行う。また、救護者通信部88は、救急隊員と救護者が通話等を行う際の橋渡しとなる通信も行う。
【0041】
登録ユーザリスト90は、救護システム10において、救護の技能を備えた医療従事者等が登録されたリストである。救護の技能を備えた医療従事者の例としては、例えば、医師、看護師、助産師、救急救命士などの国家資格を有する者を挙げることができる。なお救護システム10は、医療従事者等が無償で参加するシステムとして運用することも可能であるが、医療従事者等が有償で(すなわち対価を受けて)参加するシステムとして運用することも可能である。医療従事者等は、事前に参加の意思を表明して、必要事項を登録するともに、自己のもつ通信端末に必要なアプリケーションプログラムをインストールして、救護の要請に備える。
【0042】
地図データベース92には、交通手段毎の移動ルートの設定と移動時間の計算ができる程度の精度をもつ地図が格納されている。また、地図データベース92の地図は、救護者が被救護者12のもとへ向かう場合のナビゲーションにも使用される。
【0043】
(2)救護システムの具体例
図4~
図9を参照して、救護システム10の具体例について説明する。
図4は、救護システム10の動作の例を示すフローチャートである。
図5は、通報記録の例を示す図である。
図6は、登録ユーザリスト90の例を示す図である。
図7は、候補者リストの例を示す図である。
図8は、救護要請が行われた端末装置の表示例を示す図である。
図9は、救護をするとの回答があった後における端末装置の表示例を示す図である。
【0044】
図4に示した例では、まず、救護サーバ20の緊急通報通信部70が、緊急通報を受信する(S10)。緊急通報では、通報に用いられた通信端末の位置情報が自動取得される。また、緊急通報では、オペレータ22の案内に従って、通報者から被救護者の位置情報、状態などが伝えられ、救護の要請が行われる。オペレータ22は、情報を把握し、ユーザインタフェース74を通じて、救護サーバ20に入力する(S12)。
【0045】
図5には、オペレータ22によって入力された通報記録の例を示している。この例では、2020年5月18日の15時20分35秒に、緊急通報が受信されている。被救護者12がいる位置は、E市1-1の住所付近であり、この住所はS通りとT通りの交差点に相当する。座標(x1,y1)は、被救護者12がいる位置を示す情報であり、地図データベース92の地図と照合可能な値が用いられる。例えば、座標として、緯度及び軽度が使われる。被救護者12は、小学生くらいの女性である。被救護者12の症状は怪我である。また、詳細情報として、交通事故であること、外傷があること、出血量が多いこと、意識がないことなど、救護の種類と症状の情報が記録されている。
【0046】
オペレータ22は、通報記録を記録する一方で、救急隊員通信部72を通じて、救急隊員に出動指示を行う(S14)。出動指示が行われると、救護サーバ20では、救護依頼制御部76の移動時間計算部80によって、救急隊員が被救護者のもとに到着する時刻が計算される(S16)。
【0047】
並行して、救護サーバ20では、救護依頼制御部76の候補者情報取得部78に、自動取得された通信端末の位置情報が入力される。候補者情報取得部78は、この位置情報が示す場所での救護が可能な登録ユーザの位置情報の取得が行われる(S18)。登録ユーザの位置情報は、登録ユーザリストを参照して取得される。
【0048】
図6には、登録ユーザリストの例を示している。リストには、ID,氏名、資格、専門分野、対応分野、対応エリア、対応可能時間、使用交通手段、過去の実績、及び連絡先の項目が設けられている。IDは登録ユーザを一意に識別する番号であり、氏名は登録ユーザの氏名である。資格は、医療従事者等としての公的な資格が登録されている。専門分野は医療従事者等として専門的に従事している分野を示す。対応分野は、登録ユーザが対応可能であると申請した分野を示す。対応エリアは、登録ユーザが被救護者の救護に向かうことが可能であると申請したエリアを示す。対応可能時間は、登録ユーザが救護活動を行うことを承諾した時間帯などを示している。使用交通手段には、登録ユーザが救護に向かう場合に使用する可能性がある交通手段が登録される。過去の実績は、救護システム10において、登録ユーザが救援要請に対応した回数、及び、救援要請を断り対応しなかった回数を示している。連絡先には、登録ユーザが所持する通信端末にアクセスするための情報等が登録される。
【0049】
図6の例において、ID501のAAAAさんは、医師であり、日常的には眼科を専門として診療を行っている。しかし、救護を行う場合には、例えば、外科から内科までの全般的な分野での対応が可能であると申請している。対応可能エリアは、E市、及びF市である。対応可能時間は、スケジュールシステムを参照すべき旨が登録されている。ここでは、AAAAさんが、自己のスケジュールをクラウドのスケジュールシステムに登録していることを想定している。そして、AAAAさんは、救護システム10に対し、このスケジュールを参照して対応可能時間を把握するように要望していることを意味している。
【0050】
使用する可能性がある交通手段は、徒歩、自転車及び車(4輪の自動車)である。また、Aさんが救護の要請に対応した回数は2回であること、救護の要請を断った回数は0回であることが記録されている。
【0051】
同様にして、BBBBさん、CCCCさんらの登録も行われている。医師であるBBBBさんの場合、対応分野は内科に限定されており、交通事故には対応せず、急病に対応することが登録されている。BBBBさんの対応エリアはE市であり、対応可能時間は、平時の19時から24時である。看護師であるCCCCさんは、E市とG市を対応エリアとしており、月曜8時から23時までと日曜8時から23時までを対応可能時間としている。
【0052】
図4のフローチャートに戻って説明を続ける。ステップS18では、救護サーバ20が、まず、位置情報である座標(x1,y1)を自動取得する。この座標はE市を表しており、救護サーバ20はE市を対応エリアとする登録ユーザの通信端末に通信を行い、現在の位置情報を取得する。E市を対応エリアとする登録ユーザには、AAAAさん、BBBBさん、CCCCさんが含まれている。
【0053】
続いて、移動時間計算部80によって。登録ユーザが、被救護者のもとへ到着するまでの移動時間が計算される(S20)。移動時間は、登録ユーザリストにおいて登録された全ての使用交通手段について計算される。
【0054】
さらに、オペレータ22が救護サーバ20に入力した詳細が取得されると、救護に必要な専門性等をもつ登録ユーザの絞り込みが行われる(S22)。
図5に示した例では、被救護者12の症状は怪我であり、外科分野である。このため、対応可能分野に外科分野を含まないBBBBさんは除外され、外科分野を含むAAAAさんとCCCCさんは候補者として残る。AAAAさんとCCCCさんは、対応可能時間にも一致しており、候補者として残される。
【0055】
続いて、移動時間判定部82によって、救急隊員の移動時間と候補者の移動時間が比較される(S24)。これにより、救急隊員よりも遅く到着する登録ユーザは候補者から除外される。
図4に示した例では、救急隊員よりも時間α以上速く到着することを条件として、救急隊員とほぼ同時刻に到着する登録ユーザを除外している。時間αとしては、例えば、1分、3分あるいは5分などが選ばれる。候補者リスト作成部84は、ステップS24の条件を満たす登録ユーザを、候補者リストに掲載する(S28)。
【0056】
図7には、候補者リストの例を示した。候補者リストには、優先順位、資格、専門分野、対応分野、移動時間、過去の実績、及び依頼の欄が設けられている。優先順位は、救護依頼を行う優先度の高さを示している。
図7の例では、最速の交通手段における移動時間に基づいて、優先順位が決定されている。氏名、資格、専門分野、対応分野、過去の実績の欄は、登録ユーザリストと同様である。移動時間には、移動時間計算部80によって計算された移動時間が交通手段別に掲載される。また、依頼の欄には、受付手段お例である「依頼する」ボタンが設けられている。オペレータ22が「依頼する」のボタンを操作した場合、救護依頼制御部76によって登録ユーザに救護の要請を行うことが受け付けられる。
【0057】
図7の例において、優先順位1位は、AAAAさんである。AAAAさんは、徒歩で20分、自転車で8分、車で4分の位置にいる。このうち、徒歩は、救急隊員よりも到着が遅くなるため除外されているが、自転車と車は救急隊員よりも早く到着可能であり、候補として残されている。特に、記号「★★★」で強調された車による4分での到着は、全ての登録ユーザの中で最速であることを示している。また、記号「★」で強調された自転車による8分での到着は、全ての登録ユーザの中で3番目に速いことを示している。
【0058】
優先順位2位のCCCCさんは、徒歩で13分、車で6分の位置にいる。このうち、記号「★★」で強調された車による6分での到着は、全ての登録ユーザの中で2番目に早いことを示している。
【0059】
なお、
図7の例では、AAAAさんが、最も早い(一番目に早い)移動と、3番目に早い移動が可能であり、CCCCさんが、2番目に早い移動が可能である。このため、AAAAさんに、最も早い車での移動を打診し、断られた場合に、CCCCさんに、2番目に早い車での移動を依頼することが考えられる。他方、AAAAさんに断られた後にCCCCさんに依頼するまでの所要時間を考慮して、AAAAさんに車と自転車の両方の移動可能性を問い合わせることも考えられる。
【0060】
図4のフローチャートに示すように、候補者リストは、救護サーバ20のユーザインタフェース74であるタッチパネル56に表示される。これにより、オペレータ22は、救護者の候補の情報を把握することが可能となる。オペレータ22は、候補者の中から自ら判断して、「依頼する」ボタンを押し、救護の依頼を行うことができる(S30)。あるいは、救護サーバ20が、優先順位に従い自動的に救護の依頼を行うようにしてもよい。救護依頼がなされる場合、救護要請作成部86が、救護要請を行うためのデータを作成する。そして、救護者通信部88によって、救護要請が行われる(S32)。
【0061】
図8は、候補者たる登録ユーザの通信端末に表示される救護要請の画面の例を示している。ここでは、「救護できますか(要回答)」と大きく表示され、登録ユーザに救護を求めること、及び、回答を欲しいことを伝えている。なお、画面表示とともに、音声出力を行って、登録ユーザの注意を喚起することも可能である。
【0062】
画面には、さらに、地図が表示されている。地図上には、登録ユーザの位置が「あなた」の位置として示され、被救護者の位置が「目的地」の位置として示され、矢印によって移動ルートが示されている。
【0063】
また、状況の項目が設けられ、場所がS通りとT通りの交差点であることが記載されている。地図にS通りとT通りが記載されてよいが、
図8の例では省略している。また、通報時刻が2分前であること、被救護者が1名であることが記載される。状態の欄には、交通事故、外傷あり、出血量多い、意識なしとの症状等に関する情報が記載されており、救急隊員の欄には到着まで15分であることが記載されている。
【0064】
画面には、さらに、交通手段、移動時間と回答欄を含む表が設けられている。
図8の例では、車での移動時間が4分であることを記した上で、車で行くと回答するボタンと車で行かないと回答するボタンが表示されている。車で行くボタンが押された場合には、車で行く意思表示がなされたとして、救護サーバ20に連絡が行われ回答が完了する。また、車で行かないボタンが押された場合には、救護に意思がないとして、救護サーバ20に連絡が行われ、回答が完了する。ただし、車で行かないボタンが押された場合に、自転車で行くか行かないかを留保しているとして、引き続き回答を待つように設定してもよい。同様にして、画面には、自転車での移動時間が8分であることを記した上で、自転車で行くと回答するボタンと自転車で行かないと回答するボタンが設けられている。
【0065】
図4のステップS34において、救護に行かないとの回答があった場合には、次の優先順位の候補者が選定され(S36)、連絡が行われる。ただし、候補者からの回答を待つ間に、救急隊員は被救護者のもとに近づくため、次の候補者を選定しないこともありえる。他方、救護に向かう連絡があった場合には、救護サーバ20が、その登録ユーザを救護者として設定し、救護の指示を行う(S38)。また、救護サーバ20は、救急隊員に対して、救護者が救護に向かう旨の情報を連絡する(S40)。
【0066】
図9は、
図8の画面から切り替えられる画面の例を示している。ここでは、「救護に向かってください」との指示が出されている。地図は、
図8と同様にして表示され、最新の「あなた」の位置が示される。状況の欄は、随時最新状態に切り替えられる。
図9の例では、通報時刻と救急隊員の欄が更新されている。例えば、救急隊員の移動が予想よりも迅速に行われ、救護者よりも早く被救護者のもとへ到着できるようになった場合には、救護者は移動をキャンセルすることも可能となる。
【0067】
画面には、「あなたの移動」の項目も設けられている。ここでは、車で向かうと回答したことを想定しており、車で3分後に到着する旨が表示されている。また、その横には、「救護をキャンセル」というボタンが設けられている。このボタンは、急遽、被救護者のもとへ向かえない事情が生じた場合、あるいは、移動に予想以上に時間を要す場合などに押される。ボタンが押された場合には、向かえなくなった旨が、救護サーバ20に送信され、さらには、救急隊員にも連絡される。
【0068】
また、画面には、その他の項目が設けられ、他に向かっている救護者がないことが記されている。例えば、被救護者が複数人いる場合、あるいは、被救護者に確実に救護者を向かわせたい場合には、複数人の登録ユーザを救護者として設定することがある。複数の救護者が被救護者のもとへ向かう場合には、他の救護者の位置情報を地図に表示するようにしてもよい。あるいは、他の救護者のプライバシを尊重し、位置情報を表示しないことも考えられる。
【0069】
画面の下部には、「救急隊員と通話」のボタンと、「写真撮影し救急隊員に送信」のボタンが設けられている。これらは、被救護者のもとに到着した場合などにおいて、救急隊員と連携して救護にあたるために設けられている。
【0070】
図4のステップS42に示すように、「救急隊員と通話」のボタンを押した場合、救護サーバ20は、救急隊員と救護者とが通話可能となるように通信を繋ぐ。この通話には、オペレータ22も加わることができる。
【0071】
また、「写真撮影し救急隊員に送信」のボタンを押した場合には、通信端末のカメラが起動し、撮影した写真がただちに救急隊員に送信される。この写真は、オペレータ22も閲覧することができる。
【0072】
なお、
図8、
図9に示した例の他にも、さまざまに画面表示を設定することが可能である。
図8、
図9の例では、一画面に全ての情報を表示して、スクロールあるいは改ページを不要とした。しかし、スクロールあるは改ページを行うこととして、文字等を大きく表示することが考えられる。あるいは、重要情報をトップページに設け、詳細情報を次ページ以降に設けることも考えられる。
【符号の説明】
【0073】
10 救護システム、12 被救護者、14 通報者、16 スマートフォン、18 緊急通報センタ、20 救護サーバ、22 オペレータ、24 救急車、26 車載通信装置、30 医療従事者、32 スマートフォン、34 医療従事者、36 車両、38 車載通信装置、40 スマートフォン、50 プロセッサ、52 メモリ、54 通信回路、56 タッチパネル、58 マイク、60 スピーカ、70 緊急通報通信部、72 救急隊員通信部、74 ユーザインタフェース、76 救護依頼制御部、78 候補者情報取得部、80 移動時間計算部、82 移動時間判定部、84 候補者リスト作成部、86 救護要請作成部、88 救護者通信部、90 登録ユーザリスト、92 地図データベース。