(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ワーク供給装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/00 20060101AFI20231011BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20231011BHJP
B65G 59/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B23P19/00 301B
H02K15/02 A
B65G59/06 103
(21)【出願番号】P 2020125545
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 一樹
(72)【発明者】
【氏名】上木 周平
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023087(JP,A)
【文献】実開平03-102526(JP,U)
【文献】特開2010-001040(JP,A)
【文献】米国特許第05975839(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00
H02K 15/02
B65G 59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面にフランジが設けられている円盤状のワークを1枚ずつ供給するワーク供給装置であり、
鉛直方向に積層された複数の前記ワークを保持するガイドであって底が開放されているガイドと、
前記ガイドに保持されている最下位置の下位ワークの下面に接する保持ピンと、
前記ガイドに保持されている下から2番目の中位ワークの側面であって当該中位ワークの前記フランジよりも上方の前記側面に接して前記中位ワークを把持する把持ブロックと、
を備えており、
前記保持ピンは、前記下位ワークの下に位置するワーク保持位置と、前記下位ワークの下方の空間から外れるピン退避位置との間で移動可能であり、
前記把持ブロックは、前記中位ワークを把持しているとともに下から3番目の上位ワークの前記フランジの下に位置する把持位置と、前記中位ワークの前記側面から離間しているとともに前記上位ワークの前記フランジの下に位置する中間位置と、前記上位ワークの下方の空間から外れるブロック退避位置の間で移動可能である、ワーク供給装置。
【請求項2】
前記保持ピンと前記把持ブロックは、
前記保持ピンが前記ワーク保持位置に位置するとともに前記把持ブロックが前記ブロック退避位置に位置する第1配置と、
前記保持ピンが前記ワーク保持位置を保ちつつ前記把持ブロックが前記把持位置へ移動する第2配置と、
前記把持ブロックが前記把持位置を保ちつつ前記保持ピンが前記ピン退避位置へ移動する第3配置と、
前記保持ピンが前記ワーク保持位置に戻り、次いで前記把持ブロックが前記中間位置へ移動する第4配置と、
を経て前記第1配置に戻るように動く、請求項1に記載のワーク供給装置。
【請求項3】
前記ガイドの下方に位置しており、前記ワークが載置されるターゲットピースを昇降させる昇降台と、
前記昇降台の昇降に連動して前記保持ピンを前記ワーク保持位置と前記ピン退避位置の間で移動させる第1カムと、
前記昇降台の昇降に連動して前記把持ブロックを、前記中間位置を経由しつつ前記ブロック退避位置と前記把持位置の間で移動させる第2カムと、
を備えており、
前記昇降台が最下位置にあるときに前記第1カムは前記保持ピンを前記ワーク保持位置に位置させ、前記第2カムは前記把持ブロックを前記ブロック退避位置に位置させ、
前記昇降台の上昇に伴い、前記第2カムが揺動して前記把持ブロックを前記把持位置へ移動させ、次いで前記第1カムが揺動して前記保持ピンを前記ピン退避位置へ移動させ、
前記昇降台の降下に伴い、前記第1カムが前記保持ピンを前記ワーク保持位置に戻し、次いで前記第2カムが前記把持ブロックを前記把持位置から前記中間位置を経て前記ブロック退避位置へ戻す、
請求項1に記載のワーク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、側面にフランジが設けられている円盤状のワークを1枚ずつ供給するワーク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数の円盤状のワークが積層された積層体からワークを1枚ずつ所定の目的位置へ移送するワーク供給装置(ワーク切り出し装置)が開示されている。特許文献1のワーク供給装置は、油によりワークが密着した積層体から安定してワークを1枚ずつ供給することができる。特許文献1の装置は、待機位置から目的位置までワークをスライド移動させるワーク移送台と、ワーク移送台の待機位置上に設けられワークを積層して収容するマガジンと、ワーク移送台上に設けられマガジンをワーク移送台から浮かせて支持すると共にワーク1枚分の切出し口が形成されたワーク切出し部材と、ワーク移送台にワークの移送方向に延びて設けられると共に、ワークの幅より小さく形成されたガイド溝と、ガイド溝に遊嵌するスライダと、スライダ上に設けられると共にワーク移送台上に摺動自在に設けられワークを押し出しながら移送する切出しブレードを備える。特許文献1の技術は、例えばワッシャを1個ずつ供給する装置に適用される。
【0003】
電気モータの円筒状のステータコアの端に取り付けられるインシュレータ(特許文献2)も、円盤状であり、インシュレータの積層体から1枚ずつインシュレータを供給する装置にも特許文献1の技術は適用し得る。電気モータのインシュレータはカフサと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-196706号公報
【文献】特開2017-22822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のワーク供給装置は複雑であり、コストが嵩む。一方、電気モータ用のインシュレータは、側面にフランジが設けられている。本明細書が開示する技術は、ワーク側面のフランジを有効に利用し、円盤状のワークを安定して1枚ずつ供給することのできるワーク供給装置をシンプルな構造で実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するワーク供給装置は、ガイド、保持ピン、把持ブロックを備える。ガイドは、鉛直方向に積層された複数のワークを保持する。説明の便宜上、以下では、ワークの積層体において最下位置のワークを下位ワークと表記し、下から2番目のワークを中位ワークと表記し、下から3番目のワークを上位ワークと表記する。
【0007】
ガイドは底が開放されている。保持ピンは、ガイドに保持されている下位ワークの下面に接する。把持ブロックは、ガイドに保持されている中位ワークの少なくとも2か所の側面に接して中位ワークを把持する。把持ブロックは、中位ワークのフランジよりも上方の側面に接する。
【0008】
保持ピンは、下位ワークの下面に接するワーク保持位置と、下位ワークの下方の空間から外れるピン退避位置との間で移動可能である。把持ブロックは、中位ワークを把持しているとともに上位ワークのフランジの下に位置する把持位置と、中位ワークの側面から離間しているとともに上位ワークのフランジの下に位置する中間位置と、上位ワークの下方の空間から外れるブロック退避位置の間で移動可能である。
【0009】
保持ピンと把持ブロックは次の順で動く。保持ピンがワーク保持位置に位置するとともに把持ブロックがブロック退避位置に位置する(第1配置)。保持ピンはワーク保持位置を保ちつつ把持ブロックが把持位置へ移動する(第2配置)。把持ブロックは把持位置を保ちつつ保持ピンがピン退避位置へ移動する(第3配置)。保持ピンがワーク保持位置へ戻り、次いで把持ブロックが中間位置へ移動する(第4配置)。そして、把持ブロックがブロック退避位置へ戻る(第1配置)。
【0010】
第3配置にて、中位ワークが把持ブロックに把持されつつ、下位ワークが落下する。すなわち、下位ワークが下方へ供給される。第4配置にて、上位ワークは把持ブロックに支持されつつ、中位ワークが保持ピンまで落下する。第4配置から第1配置に移行すると、中位ワークが保持ピンに下から支持されたまま、上位ワークとその上のワークが中位ワークの上に落下する。中位ワークとその上の全ワークが積層された状態となる。第1配置から第4配置を繰り返すたびに、最下位置のワークが1枚ずつガイドの下方へ供給される。
【0011】
本明細書が開示するワーク供給装置は、中位ワークを支持しつつ下位ワークのみを落下させることができる。また、ワーク供給装置は、下位ワークを落下させた後、把持ブロックが上位ワークを保持しつつ、中位ワークのみを保持ピンの位置まで落下させる。中位ワークは上位ワークから一旦離れて保持ピンに支えられる。その後に上位ワーク(さらにその上のワーク)が落下し、再び中位ワークの上に積層される。中位ワークから上のワークをすべて一度に保持ピンまで落下させると積層状態が乱れ、中位ワークあるいは上位ワークが傾くおそれがある。しかしながら、本明細書が開示するワーク供給装置では、上位ワークを保持したまま中位ワークだけを保持ピンまで落下させるので、中位ワークは水平を保ったまま保持ピンに保持される。その後に上位ワーク(さらにその上のワーク)を中位ワークに向けて落下させるので、ワークが傾くおそれがない。さらに、中位ワークを一旦上位ワークから分離することによって、保持ピンをピン退避位置へ移動した際に中位ワークのみがスムーズに上位ワークから離反して落下する。本明細書が開示するワーク供給装置は、ワークに対してそれぞれが進退する保持ピンと把持ブロックというシンプルな構造で、円盤状のワークを安定して1枚ずつ供給することができる。
【0012】
アクチュエータが保持ピンと把持ブロックを揺動し、アクチュエータを制御するコントローラが上記した第1配置から第4配置を実現してもよい。一方、ガイドの下方に位置しておりワークが載置されるターゲットピースを昇降させる昇降台と、昇降台の昇降に連動して保持ピンと把持ブロックを移動させる第1カムと第2カムによって、上記した第1配置から第4配置までが実現されてもよい。第1カムは、昇降台の昇降に連動して保持ピンをワーク保持位置とピン退避位置の間で移動させる。第2カムは、昇降台の昇降に連動して把持ブロックを、中間位置を経由しつつブロック退避位置と把持位置の間で移動させる。
【0013】
昇降台が最下位置にあるときに第1カムは保持ピンをワーク保持位置に位置させ、第2カムは把持ブロックをブロック退避位置に位置させる(第1配置)。昇降台の上昇に伴い、第2カムが揺動して把持ブロックを把持位置へ移動させ、次いで第1カムが揺動して保持ピンをピン退避位置へ移動させる(第2、第3配置)。第3配置への移行により下位ワークがターゲットピースの上に落下する。昇降台の降下に伴い、第1カムが保持ピンをワーク保持位置に戻し、次いで第2カムが把持ブロックを把持位置から中間位置へ移動させる(第4配置)。最後に、把持ブロックがブロック退避位置へ戻る(第1配置)。第4配置にて中位ワークのみが保持ピンまで落下し、第4配置から第1配置へ戻るときに上位ワーク(およびさらにその上のワーク)が中位ワークの上に落下する。
【0014】
昇降台と連動する第1カムと第2カムを備えることで、昇降台のアクチュエータだけでワークを順に下へ送ることができる(ワークを1枚ずつ供給することができる)。
【0015】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1の矢印IIの方向からみたワーク供給装置の側面図である。
【
図3】
図1の矢印IIIの方向からみたワーク供給装置の側面図である。
【
図4】ワーク供給装置の側面図である(第1配置)。
【
図5】ワーク供給装置の側面図である(第2配置)。
【
図6】ワーク供給装置の側面図である(第3配置)。
【
図7】ワーク供給装置の側面図である(第4配置)。
【
図8】ワーク供給装置の側面図である(再び第1配置)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して実施例のワーク供給装置2を説明する。ワーク供給装置2は、電気モータのステータコアに円盤状のインシュレータを取り付ける装置に組み込まれている。インシュレータはフランジを有する円盤状をなしている。以下では説明の便宜上、インシュレータをワークWと称する。また、ワークW(インシュレータ)を取り付けるステータコアをターゲットピースTPと称する。
【0018】
図1に、ワーク供給装置2の平面図を示す。
図2に、
図1の矢印IIから見たワーク供給装置2の側面図を示し、
図3に、
図1の矢印IIIから見たワーク供給装置2の側面図を示す。
【0019】
円盤状の複数のワークWは鉛直方向に積層され、ガイド3に収容されている。ガイド3は、複数の縦棒を円周上に並べた構造を有しており、複数の縦棒の内側にワークWが収容される。ワーク供給装置2は、作業台4を有しており、ガイド3は作業台4に固定されている。ガイド3の下方にて作業台4には開口4aが設けられており、ガイド3の底は解放されている。ガイド3に収容されたワークWの下には保持ピン11が位置しており、ワークWは保持ピン11により下側から支持される(
図2参照)。
【0020】
作業台4には複数の保持機構10と把持機構20が備えられている。作業台4の下にはターゲットピースTPを昇降する昇降台30が備えられている。ターゲットピースTPは、ガイド3に収容されているワークWの下方に位置する。
【0021】
図1に示すように、作業台4には、2個の保持機構10と2個の把持機構20が備えらえている。2個の保持機構10は、水平面内においてワークWを挟むように配置されており、2個の把持機構20も、水平面内においてワークWを挟むように配置されている。
【0022】
保持機構10は、保持ピン11と第1カム15を備えている。保持ピン11は水平方向で直線的に移動可能に作業台4に支持されており、第1カム15は揺動可能に作業台4に支持されている。保持ピン11はピン支持軸12を介して第1カム15に係合しており、第1カム15の揺動に連動する。第1カム15が揺動すると、保持ピン11は、ワークWの下に位置するワーク保持位置と、ワークWの下方から外れるピン退避位置との間で直線的に動く。
図1では保持機構10を簡略化して描いてあり、
図2では保持機構10をさらに簡略化して描いてある。
図2では把持機構20も簡略化して描いてある。第1カム15と保持ピン11が連動する様子は後に詳しく説明する。
【0023】
把持機構20は、把持ブロック21と第2カム25を備えている。把持ブロック21は水平方向で直線的に移動可能に作業台4に支持されており、第2カム25は揺動可能に作業台4に支持されている。把持ブロック21はブロック支持軸22を介して第2カム25に係合しており、第2カム25の揺動に連動する。第2カム25が揺動すると、把持ブロック21は、ワークWの側面に接する把持位置と、ワークWの下方の空間から離間するブロック退避位置との間で直線的に動く。
図1では把持機構20を簡略化して描いてあり、
図3では把持機構20をさらに簡略化して描いてある。
図3では、保持機構10も簡略化して描いてある。第2カム25と把持ブロック21が連動する様子は後に詳しく説明する。
【0024】
ワークWは側面にフランジFを有している(
図3参照)。把持ブロック21は、把持位置とブロック退避位置の間で中間位置に位置する場合がある。中間位置では、把持ブロック21は、ワークWの側面から離間するとともに一段上のワークWのフランジFの下に位置する。把持位置では、把持ブロック21の先端21aがワークWの側面に当接し、上面21bが一段上のワークWのフランジFの下に位置する。中間位置では、把持ブロック21の先端21aはワークWの側面から離間し、上面21bは一段上のワークWのフランジFの下に位置する。ブロック退避位置では、把持ブロック21は一段上のワークWの下方の空間(フランジFを含むワークWの下方の空間)から外れる。
【0025】
図4-
図8を参照して保持ピン11と把持ブロック21の動きを説明する。
図4-
図8は、ワーク供給装置2の側面を示している。一点鎖線CLは、円盤状の複数のワークWが積層された円筒状の積層体の中心線を表している。
【0026】
図4-
図8において、中心線CLの右側は、保持機構10の側面を示しており、中心線CLの左側は把持機構20の側面を示している。
図4-
図8は、保持ピン11と第1カム15の連動、および、把持ブロック21と第2カム25の連動の様子を示す模式図であり、作業台4(作業台4が保持ピン11と第1カム15と把持ブロック21と第2カム25を支持する構造を含む)は図示を省略してある。
【0027】
複数のワークWは、鉛直方向に積層されてガイド3に収容されている。先に述べたように、ガイド3の底は開放されている。説明の都合上、複数のワークWの積層体において最下位置のワークを下位ワークW1と称し、下から2番目のワークを中位ワークW2と称し、下から3番目のワークを上位ワークW3と称する。上位ワークW3の上にも複数のワークが積層され得るが、それらのワークの図示は省略した。
【0028】
それぞれのワークは、側面にフランジを備えている。符号F2は中位ワークW2のフランジを示しており、符号F3は上位ワークW3のフランジを示している。符号S2は中位ワークW2の側面を示している。それぞれのワークのフランジは、ワークの側面の下側に設けられている。
【0029】
ガイド3の下方には、ワークWを取り付けるターゲットピースTPが配置される。先に述べたように、ターゲットピースTPは電気モータのステータコアであり、ワークWはステータコアの端に取り付けられるインシュレータである。
【0030】
ターゲットピースTPは昇降台30の上に載置されている。昇降台30は、アクチュエータ39により上下に動く。
【0031】
ワーク供給装置2は、昇降台30が1サイクル上下すると、第1カム15と第2カム25の動きにより、中位ワークW2とその上のワークはガイド3に収容されたまま、下位ワークW1がターゲットピースTPの上に落下する。
【0032】
図4は、昇降台30が最下位置に位置する状態であり、このときの保持ピン11と把持ブロック21の配置を第1配置と称する。
【0033】
第1配置では、保持ピン11は、下位ワークW1の下方に位置しており、ワークWの積層体の落下を防いでいる。
図4における保持ピン11の位置をワーク保持位置と称する。なお、
図1、2を参照して説明したように、水平方向でワークWを挟むように2個の保持機構10が配置されており、2個の保持ピン11がワークWを支える。
図4-
図8では2個の保持機構10のうちの1個を示している。2個の保持機構10は同じように動作する。
【0034】
保持ピン11は、水平方向に移動可能に不図示の作業台4に支持されている。保持ピン11は、ワーク保持位置と、ワークWの下方の空間から外れるピン退避位置との間で進退することができる。第1カム15は、水平方向に延びる揺動軸15aで不図示の作業台に揺動可能に支持されている。
【0035】
第1カム15はL字形状をなしており、L字の上側の腕(上腕)には長孔15bが設けられている。長孔15bに、保持ピン11のピン支持軸12が嵌合している。保持ピン11はピン支持軸12に固定されている。第1カム15のL字の下側の腕(下腕)の先端は、昇降台30に設けられている第1柱31の上方に位置している。昇降台30が最下位置に位置するとき、第1カム15はストッパ19に当接し、保持ピン11をワーク保持位置に保持する。
【0036】
昇降台30が上昇すると、第1柱31が第1カム15の下腕を押し上げ、第1カム15が揺動する。第1カム15が揺動すると、長孔15bに係合している保持ピン11がワーク支持位置からピン退避位置へと移動する。
【0037】
第1配置では、把持ブロック21は、上位ワークW3の下方の空間から外れている。
図4における把持ブロック21の位置をブロック退避位置と称する。
図1、3を参照して説明したように、水平方向でワークWを挟むように2個の把持機構20が配置されている。詳しくは後述するが、昇降台30が上昇すると、2個の把持ブロック21が中位ワークW2を両側から挟み込んで中位ワークW2を把持する。
図4-
図8では2個の把持機構20のうちの1個を示している。2個の把持機構20は同じように動作する。
【0038】
把持ブロック21は、水平方向に移動可能に不図示の作業台4に支持されている。把持ブロック21は、上位ワークW3の下方の空間から外れるブロック解放位置と、中位ワークW2を把持する把持位置との間で進退することができる。第2カム25は、水平方向に延びる揺動軸25aで不図示の作業台に揺動可能に支持されている。
【0039】
第2カム25はL字形状をなしており、L字の上側の腕(上腕)には長孔25bが設けられている。長孔25bに、把持ブロック21のブロック支持軸22が嵌合している。把持ブロック21はブロック支持軸22に固定されている。第2カム25のL字の下側の腕(下腕)の先端は、昇降台30に設けられている第2柱32の上方に位置している。昇降台30が最下位置に位置するとき、第2カム25はストッパ29に当接し、把持ブロック21をブロック退避位置に保持する。
【0040】
昇降台30が上昇すると、第2柱32が第2カム25の下腕を押し上げ、第2カム25が揺動する。第2カム25が揺動すると、長孔25bに係合している把持ブロック21がブロック退避位置から把持位置へと移動する。
【0041】
把持ブロック21はバネユニット23を備えている。バネユニット23は、把持ブロック21の先端21aに所定の荷重が加わると圧縮される。詳しくは後述するが、昇降台30が上昇すると、把持ブロック21の先端21aが中位ワークW2の側面S2に当接する。昇降台30がさらに上昇すると、バネユニット23が圧縮され、把持ブロック21の先端21aが中位ワークW2に加える荷重が一定に保たれる。
【0042】
昇降台30が最下位置に位置するとき、下位ワークW1とその上のワークは、保持ピン11に支えられ、ガイド3に留まっている。
【0043】
図5は、昇降台30が上昇し、保持ピン11と把持ブロック21が第2配置となった状態を示している。昇降台30が上昇すると、第2柱32が第2カム25の下腕を押し上げる(
図5の矢印A1参照)。第2カム25の上腕はワークWに近づく方向に揺動し、把持ブロック21を中位ワークW2へ近づける(
図5の矢印A2参照)。把持ブロック21が中位ワークW2の側面S2に当接した状態が第2配置である。第2配置では、保持ピン11はワーク保持位置から動いておらず、ワーク全体を支えている。第1配置から第2配置への移行にて、保持ピン11が下位ワークW1を保持したまま、第2カム25が揺動し、把持ブロック21が把持ブロック退避位置から把持位置へ移動する。先に述べたように、2個の把持機構20がワークを挟むように配置されているため、2個の把持機構20(2個の把持ブロック21)が中位ワークW2を把持する。
【0044】
先に述べたように、ワークWのフランジはワークWの側面の下方に設けられている。把持ブロック21の先端21aは、中位ワークW2の側面S2に当接する。このとき、中位ワークW2のフランジF2は把持ブロック21の下に位置し、上位ワークW3のフランジF3は把持ブロック21の上面21bに当接する。すなわち、上位ワークW3のフランジF3は把持ブロック21の上に位置し、上位ワークW3は把持ブロック21に下から支持される。
【0045】
図6は、昇降台30がさらに上昇し、保持ピン11と把持ブロック21が第3配置となった状態を示している。昇降台30がさらに上昇すると、上腕がワークWに近づく方向に第2カム25がさらに揺動する。把持ブロック21の先端21aは中位ワークW2の側面S2に当接したままであり、第2カム25が揺動すると、バネユニット23が圧縮され、把持ブロック21は一定の荷重で中位ワークW2の側面S2に当接する。2個の把持機構20(2個の把持ブロック21)が中位ワークW2を把持し続ける。
【0046】
昇降台30の上昇に伴い、第1柱31が第1カム15の下腕を押し上げる(
図6の矢印A3参照)。第1カム15の上腕はワークWから離れる方向に揺動し、保持ピン11を下位ワークW1から遠ざけ、保持ピン11をピン退避位置へ移動させる(
図5の矢印A4参照)。昇降台30の上昇に伴い、第2カム25が揺動して把持ブロック21を把持位置へ移動させ、次いで第1カム15が揺動して保持ピン11をピン退避位置へ移動させた状態が第3配置である。第2配置から第3配置への移行にて、把持ブロック21が中位ワークW2を把持した状態で保持ピン11がピン退避位置へと移動し、下位ワークW1がターゲットピースTPの上へ落下する(
図6の矢印A5参照)。
図6が、昇降台30の最高位置を示している。
【0047】
図7は、
図6の状態から昇降台30が下降し、保持ピン11と把持ブロック21が第4配置となった状態を示している。昇降台30が下降すると、第1カム15が逆に揺動し、保持ピン11が中位ワークW2の下へ進む(
図7の矢印A6、A7参照)。保持ピン11はワーク保持位置まで戻る。次いで第2カム25が逆方向に揺動し、把持ブロック21の先端21aが後退する(
図7、矢印A8参照)。把持ブロック21の先端21aが中位ワークW2の側面S2から離れると、中位ワークW2は支えを失って落下する(
図7、矢印A9参照)。このとき、把持ブロック21の上面21bの上には、まだ上位ワークW3のフランジF3が位置する。このときの把持ブロック21(および保持ピン11)の位置が中間位置である。中位ワークW2は落下するが、上位ワークW3はそのフランジF3が把持ブロック21の上面21bに当接しているので落下しない。結局、中位ワークW2が上位ワークW3から離れて落下する。落下した中位ワークW2は、保持ピン11に当接して止まる。
【0048】
図8は、
図7の状態から昇降台30がさらに下降し、
図4の初期位置(第1配置)に戻った状態を示している。昇降台30が下降すると(
図8、矢印A10参照)、第2カム25がさらに逆方向に揺動し、把持ブロック21が上位ワークW3から離れる(
図8、矢印A11参照)。把持ブロック21が上位ワークW3の下方の空間から外れてブロック退避位置まで戻ると、上位ワークW3は支えを失い、中位ワークW2の上へ落下する。
図4-
図8には図示していないが、上位ワークW3から上のワークも同時に落下する。結局、
図4の状態から
図8の状態まで進むと、下位ワークW1のみがターゲットピースTPの上に落下し、下位ワークW1以外のワークが保持ピン11に保持された状態となる。
【0049】
下位ワークW1が載置されたターゲットピースTPを昇降台30から外し、次のターゲットピースをセットしてから第1配置から第4配置を繰り返す。第1配置から第4配置を順に繰り返すことで、最下位置のワークWが1個ずつ下方へ落下する(供給される)。
【0050】
実施例のワーク供給装置2は、ワークWがフランジFを有していることを活用し、シンプルな構造でワークWを安定して1個ずつ供給することができる。
【0051】
実施例のワーク供給装置2では、中位ワークW2を保持した状態で下位ワークW1のみを落下させることができる。誤って2個のワークが同時に落下することがない。また、ワーク供給装置2では、最下位置のワークを落下させたのち、上位ワークW3(当初の下から3番目のワーク)を保持した状態で中位ワークW2(当初の下から2番目のワーク)を保持ピン11の上まで落下させる。中位ワークW2を保持ピン11の上まで落下させた後に、上位ワークW3を落下させる。複数のワークが重なったまま保持ピン11の上へ落下させるとワークが傾くおそれがある。実施例のワーク供給装置2では、次のワークを供給するのに先立って、1個のワーク(中位ワークW2)を保持ピン11の上に落下させ、次いで残りのワークを中位ワークの上へ落下させる。そのような手順を経ることで、積層されているワークWが傾いてしまうことを防止する。
【0052】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例のワーク供給装置2は、第1カム15、第2カム25を用いて保持ピン11と把持ブロック21を昇降台30の動きに連動させ、ワークを1個ずつ落下させることができる(ワークを1個ずつ供給することができる)。実施例のワーク供給装置2では、第1カム15、第2カム25はL字形状であるが、カムはL字形状に限られず、昇降台30の上下の動きを保持ピン11(第2カム25の場合は把持ブロック21)の進退の動きに連動させる構造であればよい。第1カムの形状が第2カムの形状とは相違していてもよい。カムを用いるかわりに保持ピン11と把持ブロック21をそれぞれアクチュエータで動かしてもよい。
【0053】
ワーク保持位置では、保持ピンは最下位置のワークのフランジの下を支えるように位置してもよい。
【0054】
把持ブロック21は途中にバネユニット23を備えている。バネユニット23は、把持ブロック21がワークWの側面に加える荷重を一定値に抑える機能を果たす。把持ブロック21にバネユニットを備える代わりに、第2柱32にバネユニットを備えてもよい。
【0055】
昇降台30が第1柱31(第2柱32)を備えており、昇降台30の上下に連動して第1柱31(第2柱32)が第1カム15(第2カム25)を揺動させる。昇降台30に載置されたターゲットピースが直接に(あるいは別の部材を介して)第1カム15(第2カム25)を揺動させるようにしてもよい。
【0056】
本明細書が開示する技術は、フランジを有する円板状のワークの供給装置に適用することが可能であり、電気モータのインシュレータを供給する装置に限られるものではない。
【0057】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0058】
2:ワーク供給装置、 3:ガイド、 4:作業台、 10:保持機構、 11:保持ピン、 12:ピン支持軸、 15:第1カム、 20:把持機構、 21:把持ブロック、 25:第2カム、 30:昇降台