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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】内燃機関のカバー
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20231011BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F02F7/00 F
F02B67/06 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020126503
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023511
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土井 健介
(72)【発明者】
【氏名】堀内 洋志
(72)【発明者】
【氏名】森下 豪人
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-031666(JP,A)
【文献】特開平06-146915(JP,A)
【文献】特開平01-247719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00ー 1/42
F02F 5/00
F02F 7/00
F02F 11/00
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関本体に取り付けられるとともにタイミングチェーンまたはタイミングベルトを覆うように構成された内燃機関のカバーであって、
硬質樹脂材料により形成された第1部材と、
前記硬質樹脂材料とは異なる材料により形成された第2部材と、を含み、
前記第1部材は、前記第2部材をインサートして成形されており、
前記第2部材の縁部には、前記第1部材と接合される接合面が形成されており、
前記接合面は、格子状の凹部を有する第1接合部と、前記縁部の延在方向に沿って延びる複数の溝部を有する第2接合部と、を含み、
前記第2接合部は、前記第1接合部よりも前記縁部と隣り合う空間側に設けられており
複数の前記溝部は、前記延在方向に交差する交差方向のうち、前記第1接合部と前記第2接合部との並び方向に並んで設けられている、
内燃機関のカバー。
【請求項2】
前記接合面は、前記縁部の全周にわたって設けられており、
前記第1接合部と前記第2接合部とが前記縁部の全周にわたって設けられている、
請求項1に記載の内燃機関のカバー。
【請求項3】
前記第1部材及び第2部材は、機関バルブの駆動態様を可変する機構が挿通される挿通孔を有しており、
前記第2部材は、前記挿通孔の周縁部に設けられ、前記機構が取り付けられる取付部を有しており、前記硬質樹脂材料よりも線膨張係数の小さいこと及び前記硬質樹脂材料よりも吸水性の低いことの少なくとも一方の条件を満たす材料によって形成されている、
請求項1または請求項2に記載の内燃機関のカバー。
【請求項4】
前記縁部は、前記挿通孔の縁部である、
請求項3に記載の内燃機関のカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関本体に取り付けられるとともにタイミングチェーンまたはタイミングベルトを覆うように構成された内燃機関のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の樹脂製のタイミングベルトカバーが開示されている。このタイミングベルトカバーは、樹脂製のアウトサイドカバーと、アウトサイドカバーと機関本体との間に位置する樹脂製のインサイドカバーとを有している。インサイドカバーとアウトサイドカバーとの間に、タイミングベルトが収容される。
【0003】
タイミングベルトカバーには、熱可塑性エラストマなどの弾性部材からなる防音部が設けられている。
防音部は、タイミングベルトカバー内においてクランクタイミングプーリと、カムタイミングプーリとの間に配設されたテンショナプーリの近傍部分に設けられている。
【0004】
防音部は、アウトサイドカバーの製造時に射出成形によってアウトサイドカバーと連続的に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-146915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のタイミングベルトカバーにおいては、樹脂製のアウトサイドカバーと、熱可塑性エラストマなどの弾性部材からなる防音部とが接合される部分が生じる。そのため、上記部分においては、部材同士の接合強度の向上及びシール性の向上が望まれている。
【0007】
なお、こうした問題は、アウトサイドカバーと防音部との接合部分に限定されるものではなく、互いに異なる材料からなる部材同士の接合部分においては同様にして生じる。また、こうした問題は、内燃機関のタイミングベルトカバーに限定されるものではなく、タイミングチェーンカバーでも同様に生じる。
【0008】
本発明の目的は、異材同士の接合部分における接合強度及びシール性を向上させることのできる内燃機関のカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための内燃機関のカバーは、機関本体に取り付けられるとともにタイミングチェーンまたはタイミングベルトを覆うように構成されている。カバーは、硬質樹脂材料により形成された第1部材と、前記硬質樹脂材料とは異なる材料により形成された第2部材と、を含んでいる。前記第1部材は、前記第2部材をインサートして成形されており、前記第2部材の縁部には、前記第1部材と接合される接合面が形成されている。前記接合面は、格子状の凹部を有する第1接合部と、前記縁部の延在方向に沿って延びる複数の溝部を有する第2接合部と、を含んでいる。前記第2接合部は、前記第1接合部よりも前記縁部と隣り合う空間側に設けられている。複数の前記溝部は、前記延在方向に交差する交差方向のうち、前記第1接合部と前記第2接合部との並び方向に並んで設けられている。
【0010】
同構成によれば、第2部材をインサートして第1部材を成形する際、溶融樹脂が第2部材の接合面に形成された第1接合部の凹部及び第2接合部の各溝部に充填される。ここで、凹部は格子状であるため、第1接合部と第1部材との接触面積が大きくなり、第1部材と第2部材との接合強度が増大する。
【0011】
ところで、タイミングチェーンまたはタイミングベルトを覆うカバーにおいては、第2部材の接合面と第1部材との間の僅かな隙間を通じて、内燃機関のブローバイガスや機関本体から飛散するオイルなどが浸入しやすい。
【0012】
この点、上記構成によれば、第2接合部は、第1接合部よりも縁部と隣り合う空間側に設けられている。しかも、第2接合部においては、複数の溝部が、第2部材の縁部の延在方向に交差する交差方向のうち、第1接合部と第2接合部との並び方向に並んで設けられている。このため、内燃機関のブローバイガスやオイルが、第2部材の接合面と第1部材との間の僅かな隙間から浸入することが抑制される。これにより、第1部材と第2部材との間のシール性が向上する。そして、このように第2接合部においてシール性が向上することから、内燃機関のブローバイガスやオイルが第1接合部に浸入することが抑制される。これにより、第1接合部における接合強度の低下を抑制できる。したがって、異材同士の接合部分における接合強度及びシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】内燃機関のチェーンカバーの一実施形態について、機関本体に取り付けられたチェーンカバーを示す正面図。
図2】同実施形態について、チェーンカバーを示す正面図。
図3】同実施形態について、チェーンカバーの第2部材を示す背面図。
図4】第2部材の挿通孔を拡大して示す背面図。
図5図4のAを拡大して示す斜視図。
図6図4の6-6線に沿った断面図。
図7】第2部材の第2接合部と第1部材との接合状態を示す断面図。
図8】第2部材の第1接合部と第1部材との接合状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図8を参照して、内燃機関のカバーの一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される往復動式(ピストン式)の内燃機関に取り付けられるタイミングチェーンカバー(以下、チェーンカバー)として本発明を具体化している。
【0015】
図1に示すように、内燃機関は、機関本体10と、機関本体10の側面に取り付けられるチェーンカバー21とを有している。
(機関本体10)
図1に示すように、機関本体10は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、及びクランクケース13を備えている。シリンダブロック12は、シリンダヘッド11とクランクケース13との間に配設されている。
【0016】
シリンダヘッド11には、吸気用カムシャフト14及び排気用カムシャフト15が回転可能に支持されている。
吸気用カムシャフト14及び排気用カムシャフト15は、機関バルブとしての吸気バルブ及び排気バルブ(いずれも図示略)をそれぞれ開閉駆動する。
【0017】
カムシャフト14,15の延在方向の一端14a,15aは、シリンダヘッド11から突出している。
カムシャフト14,15の上記一端14a,15aには、モータ駆動式の可変バルブタイミング機構91,92がそれぞれ連結されている。
【0018】
可変バルブタイミング機構91,92は、減速機構やリンク機構などから構成されるアクチュエータ(いずれも図示略)と、モータ93,94とを備えている。
可変バルブタイミング機構91,92のアクチュエータには、従動側スプロケット16,17がそれぞれ設けられている。
【0019】
クランクケース13には、クランクシャフト18が回転可能に支持されている。クランクシャフト18の延在方向の一端18aは、クランクケース13から突出している。上記一端18aは、カムシャフト14,15の一端14a,15aと同一の向きに突出している。
【0020】
クランクシャフト18の上記一端18aには、駆動側スプロケット19が連結されている。
従動側スプロケット16,17と、駆動側スプロケット19とには、タイミングチェーン20が掛け渡される。駆動側スプロケット19の回転に伴ってタイミングチェーン20を介して2つの従動側スプロケット16,17が連動して回転するように構成されている。これにより、クランクシャフト18の回転力がカムシャフト14,15に伝達される。
【0021】
吸気用の可変バルブタイミング機構91は、モータ93の回転速度を制御することで、従動側スプロケット16に対する吸気用カムシャフト14の回転位相を変更する。
排気用の可変バルブタイミング機構92は、モータ94の回転速度を制御することで、従動側スプロケット17に対する排気用カムシャフト15の回転位相を変更する。
【0022】
なお、モータ93,94には、図示しない制御装置が一体に設けられている。
(チェーンカバー21)
図1に示すように、チェーンカバー21は、機関本体10に取り付けられるとともにタイミングチェーン20を覆うように構成されている。
【0023】
硬質樹脂材料により形成された第1部材30と、硬質樹脂材料とは異なる材料により形成された第2部材40とを含んでいる。
本実施形態のチェーンカバー21は、正面視長方形状である。
【0024】
なお、以降において、チェーンカバー21の長辺方向(同図の上下方向)を長手方向Lとし、短辺方向(同図の幅方向)を幅方向Wとして説明する。
チェーンカバー21は、機関本体10に取り付けるボルト(図示略)が挿通される複数の筒状のカラー70を備えている。
【0025】
図1及び図2に示すように、チェーンカバー21は、チェーンカバー21の外周縁を構成する正面視長方形状の第1部材30と、長手方向Lにおいて第1部材30の表面31の一部(同図の上部)に接合された第2部材40とを有している。なお、第2部材40は、幅方向Wに長い正面視長方形状である。
【0026】
まず、第1部材30について説明する。
図1及び図2に示すように、第1部材30において第2部材40によって覆われている部分(同図の上部)には、モータ93,94が挿通される2つの挿通孔32が幅方向Wにおいて互いに間隔をおいて設けられている。
【0027】
第1部材30において第2部材40によって覆われていない部分(同図の下部)には、クランクシャフト18が貫通する貫通孔33が形成されている。
第1部材30において第2部材40によって覆われていない部分には、金属製のカラー80が挿通された複数の締結孔34が設けられている。
【0028】
本実施形態では、締結孔34は、チェーンカバー21の幅方向Wの両側に、長手方向Lにおいて互いに間隔をおいて4つずつ設けられている。また、締結孔34は、貫通孔33の外周に4つ設けられている。なお、図1では、締結孔34に挿通されるボルトの図示を省略している。
【0029】
第1部材30は、硬質樹脂材料により形成されている。本実施形態では、第1部材30はポリアミド(PA-6GF)を主成分とする合成樹脂材料により形成されている。
次に、第2部材40について説明する。
【0030】
図1図3に示すように、第2部材40は、第1部材30の表面31に接合される裏面41と、裏面41とは反対側に位置する表面42とを有している。
図1及び図2に示すように、第2部材40には、モータ93,94が挿通される2つの挿通孔43が、幅方向Wにおいて互いに間隔をおいて設けられている。各挿通孔43は、第1部材30の各挿通孔32と互いに連通している。
【0031】
第2部材40の表面42に、制御装置が一体に設けられたモータ93,94が取り付けられる。
図1図3に示すように、第2部材40の各挿通孔43の周縁部45には、モータ93,94を取り付けるボルト(図示略)が螺入される複数の取付穴44が凹設されている。なお、これら取付穴44が、本発明に係る取付部に相当する。
【0032】
図3に示すように、第2部材40の裏面41には、複数のカラー70を囲む複数の筒部46が突設されている。なお、図3に示すように、本実施形態では、筒部46は、幅方向Wの両側に、長手方向Lにおいて互いに間隔をおいて2つずつ設けられている。
【0033】
第2部材40は、第1部材30を形成する硬質樹脂材料よりも線膨張係数が小さく、且つ吸水性の低い硬質樹脂材料により形成されている。本実施形態では、第2部材40はポリフェニレンサルファイド(PPS-GF)により形成されている。
【0034】
第2部材40は、複数のカラー70をインサートして成形されている。
第1部材30は、第2部材40、複数のカラー80をインサートして成形されている。
図3に示すように、第2部材40の裏面41には、第1部材30と接合される第1接合面50及び第2接合面60が形成されている。
【0035】
第1接合面50は、各挿通孔43の周縁部45に形成されている。本実施形態では、第1接合面50は、周縁部45の全周に亘って形成されている。なお、第1接合面50が本発明に係る接合面に相当する。また、挿通孔43の周縁部45が、本発明に係る第2部材40の縁部に相当する。
【0036】
図4図6に示すように、第1接合面50は、格子状の凹部53を有する第1接合部51と、周縁部45の延在方向、すなわち挿通孔43の周方向に沿って延びるとともに同延在方向に交差する交差方向、すなわち挿通孔43の径方向に並んで設けられた複数の溝部54を有する第2接合部52とを有している。なお、凹部53及び溝部54は、例えばレーザ装置によって形成されている。
【0037】
図4に示すように、第1接合部51及び第2接合部52は、共に周縁部45の全周に亘って設けられている。
第2接合部52は、第1接合部51よりも挿通孔43側に設けられている。すなわち、第2接合部52は、第1接合部51よりも周縁部45と隣り合う空間側に設けられている。
【0038】
図5に示すように、第1接合部51を構成する凹部53は、互いに平行に延びる複数の第1溝53aと、各第1溝53aに対して直交して延びる複数の第2溝53bとから構成されている。
【0039】
図3に示すように、第2接合面60は、第2部材40の周縁部及び筒部46の端面に形成されている。本実施形態では、第2接合面60は、第2部材40の周縁部の全周に亘って形成されている。また、第2接合面60は、筒部46の端面全体に形成されている。
【0040】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図7及び図8に示すように、第2部材40をインサートして第1部材30を成形する際、溶融樹脂が第2部材40の第1接合面50に形成された第1接合部51の凹部53及び第2接合部52の各溝部54に充填される。ここで、凹部53は格子状であるため、第1接合部51と第1部材30との接触面積が大きくなり、第1部材30と第2部材40との接合強度が増大する。
【0041】
ところで、チェーンカバー21においては、溶融樹脂が第1接合部51の凹部53及び第2接合部52の各溝部54に充填される際、第1接合部51及び第2接合部52と第1部材30との間に僅かな第1隙間S1及び第2隙間S2がそれぞれ生じる。なお、これら隙間S1,S2は、説明の便宜上、構成の一部を誇張、且つ簡略化して図示している。
【0042】
図8に示すように、第1隙間S1は、格子状の凹部53の底部(同図の下側部分)において第1溝53aと第2溝53bとの交差点を介して第1溝53aと第2溝53bとが連通している。このため、例えば第1接合部51を第2接合部52よりも挿通孔43の内周側、すなわち周縁部45と隣り合う空間側に設けると、内燃機関のブローバイガスや機関本体10から飛散するオイルが、第1隙間S1の上記交差部分を通じて挿通孔43の内周側から外周側へと浸入しやすい。その結果、ブローバイガスやオイルの浸入によって、第1接合部51における接合強度が低下するおそれがある。
【0043】
この点、本実施形態のチェーンカバー21によれば、第2接合部52は、第1接合部51よりも挿通孔43の内周側に設けられている。しかも、複数の溝部54が、挿通孔43の周縁部45の延在方向に交差する交差方向に並んで設けられている。このため、ブローバイガスやオイルが、第2接合部52と第1部材30との間の僅かな第2隙間S2を通じて浸入しようとすることが抑制される。これは、第2接合部52の複数の溝部54の山谷に沿って形成される第2隙間S2を通じてブローバイガスやオイルなどが移動しにくいためである。これにより、第1部材30と第2部材40との間のシール性が向上する。そして、このように第2接合部52においてシール性が向上することから、ブローバイガスやオイルが第1接合部51に浸入することが抑制される。これにより、第1接合部51における接合強度の低下が抑制される。
【0044】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)第2部材40の縁部としての挿通孔43の周縁部45には、第1部材30と接合される第1接合面50が形成されている。第1接合面50は、格子状の凹部53を有する第1接合部51と、縁部としての周縁部45の延在方向に沿って延びるとともに同延在方向に交差する交差方向に並んで設けられた複数の溝部54を有する第2接合部52と、を含んでいる。第2接合部52は、第1接合部51よりも縁部としての周縁部45と隣り合う空間側に設けられている。
【0045】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、異材同士の接合部分における接合強度及びシール性を向上させることができる。
(2)第1接合面50は、縁部としての周縁部45の全周にわたって設けられており、第1接合部51と第2接合部52とが縁部としての周縁部45の全周にわたって設けられている。
【0046】
こうした構成によれば、異材同士の接合部分における接合強度及びシール性をより好適に向上させることができる。
(3)第1部材30及び第2部材40は、可変バルブタイミング機構91,92が挿通される挿通孔32,43を有している。第2部材40は、第2部材40の縁部としての挿通孔43の周縁部45に設けられ、可変バルブタイミング機構91,92が取り付けられる取付穴44を有している。第2部材40は、PA6-GFよりも線膨張係数の小さいこと及びPA6-GFよりも吸水性の低いことの双方の条件を満たすPPS-GFによって形成されている。
【0047】
チェーンカバー21には、可変バルブタイミング機構91,92が挿通される挿通孔32,43が設けられている。また、上記機構は、第2部材40の縁部としての挿通孔43の周縁部45に設けられた取付穴44に取り付けられる。こうした機構の位置精度を確保するために、上記取付穴44には、機関本体10からの受熱や着水によって変形しにくい材料特性が求められる。
【0048】
上記構成によれば、こうした取付穴44を有する第2部材40が第1部材30を形成する硬質樹脂材料よりも線膨張係数の小さいこと及び同硬質樹脂材料よりも吸水性の低いことの双方の条件を満たす材料によって形成されている。このため、機関本体10からの受熱や着水によって取付穴44が変形することを抑制でき、ひいては当該取付穴44に取り付けられる機構の位置精度が悪化することを抑制できる。
【0049】
(4)第2部材40の縁部は、挿通孔43の周縁部45である。
挿通孔43は、内燃機関の内外を連通するため、挿通孔43の周縁部45は常に内燃機関のブローバイガスやオイルに曝される。
【0050】
上記構成によれば、挿通孔43の周縁部45において、第2部材40の第1接合面50と第1部材30との間の僅かな隙間S1,S2から内燃機関のブローバイガスやオイルが侵入することを抑制できる。
【0051】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・第1接合面50は、挿通孔43の周縁部45の全周に亘って設けられていなくてもよい。
・本発明に係る接合面は、挿通孔43の周縁部45に形成された第1接合面50に限定されない。他に例えば、図3に示すように、第2部材40の裏面41の周縁部50Aに設けられた第2接合面60あるいは筒部46の周縁部に形成される第2接合面60に対して本発明を適用することもできる。
【0053】
・締結孔34の数や位置は、本実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
・第2部材40の筒部46の数や位置は、本実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0054】
・第2部材40の筒部46は、省略することができる。
・チェーンカバー21は、第1部材30にのみ貫通孔33が形成されるものに限定されない。例えば、第2部材40にもクランクシャフト18が貫通する孔が形成されており、上記孔と貫通孔33とによって、チェーンカバー21におけるクランクシャフト18が貫通する貫通孔が構成されていてもよい。
【0055】
・第2部材40は、本実施形態で例示したようなポリフェニレンサルファイド(PPS-GF)により形成されるものに限定されず、例えば、PPSの代わりにアルミニウムなどの金属を用いることもできる。また、PPSの代わりに、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)などの硬質樹脂材料から適宜選択して用いることもできる。
【0056】
・第1部材30は、本実施形態で例示したようなポリアミド6(PA6-GF)により形成されるものに限定されず、ポリアミド6の代わりに、ポリアミドを主成分とする合成樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
【0057】
・チェーンカバー21、第1部材30、及び第2部材40の形状は、本実施形態で例示した正面視長方形状に限定されず、機関本体10への搭載要件に合わせて適宜形状を変更してもよい。
【0058】
・本発明に係るカバーは、チェーンカバー21に限定されず、タイミングベルトカバーに対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
L…長手方向
W…幅方向
S1…第1隙間
S2…第2隙間
10…機関本体
11…シリンダヘッド
12…シリンダブロック
13…クランクケース
14…吸気用カムシャフト
14a…一端
15…排気用カムシャフト
15a…一端
16…従動側スプロケット
17…従動側スプロケット
18…クランクシャフト
18a…一端
19…駆動側スプロケット
20…タイミングチェーン
21…チェーンカバー
30…第1部材
31…表面
32…挿通孔
33…貫通孔
34…締結孔
40…第2部材
41…裏面
42…表面
43…挿通孔
44…取付穴
45…周縁部
46…筒部
50…第1接合面
50A…周縁部
51…第1接合部
52…第2接合部
53…凹部
53a…第1溝
53b…第2溝
54…溝部
60…第2接合面
70…カラー
80…カラー
91…可変バルブタイミング機構
92…可変バルブタイミング機構
93…モータ
94…モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8