(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両における骨格部材の補強構造
(51)【国際特許分類】
B29C 70/10 20060101AFI20231011BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20231011BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20231011BHJP
B62D 25/06 20060101ALN20231011BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20231011BHJP
B29L 31/30 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B29C70/10
B62D29/04 A
B29C70/42
B62D25/06 A
B29K105:08
B29L31:30
(21)【出願番号】P 2020127709
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 博幸
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-32601(JP,A)
【文献】特開2006-46481(JP,A)
【文献】特開2007-30793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/10
B62D 29/04
B29C 70/42
B62D 25/06
B29K 105/08
B29L 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視及び正面視で長手方向両端部から長手方向中央部に向かって徐々に幅狭になる閉断面形状に形成され、車両の骨格を構成する樹脂製の骨格部材と、
前記骨格部材の表面にシート状に一体成形された繊維強化樹脂製の補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
前記骨格部材の長手方向に沿った一方の表面
全体を含んで断面略「U」字状に配置され
るとともに正面視及び背面視で前記長手方向の中央部が略円弧状に張り出した第1補強部と、
前記骨格部材の長手方向に沿った他方の表面
全体を含んで断面略「U」字状に配置され
るとともに正面視及び背面視で前記長手方向の中央部が略円弧状に張り出した第2補強部と、
を有し、
前記骨格部材の
長手方向中央部において、前記第1補強部の
前記略円弧状に張り出した部分と前記第2補強部の
前記略円弧状に張り出した部分とが互いにオーバーラップして重ねられ
ることで正面視及び背面視で略紡錘形状のラップ部が形成されている車両における骨格部材の補強構造。
【請求項2】
前記第1補強部及び前記第2補強部に含まれる繊維は、前記骨格部材の長手方向に沿って配向されている請求項1に記載の車両における骨格部材の補強構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記
骨格部材の長手方向中央部を含んで断面略環状に配置された第3補強部を有する請求項1又は請求項2に記載の車両における骨格部材の補強構造。
【請求項4】
前記第3補強部に含まれる繊維は、前記骨格部材の長手方向と直交する方向に沿って配向されている請求項3に記載の車両における骨格部材の補強構造。
【請求項5】
前記
第1補強部と前記第2補強部とが、前記骨格部材の長手方向両端部において、互いに離間している請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両における骨格部材の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における骨格部材の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の骨格を構成する樹脂製の骨格部材に、その長手方向に沿った繊維を配向することにより、その骨格部材を繊維強化した構造は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、繊維強化された樹脂製の骨格部材の断面形状の大きさが一定とされていない場合には、その断面形状の大きさが最も小さい最小部における強度及び剛性が充分に確保されないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、断面形状の大きさが一定とされていない樹脂製の骨格部材において、その断面形状の大きさが最も小さい最小部の強度及び剛性を確保できる車両における骨格部材の補強構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の車両における骨格部材の補強構造は、長手方向と直交する断面形状の大きさが一定でない閉断面形状に形成され、車両の骨格を構成する樹脂製の骨格部材と、前記骨格部材の表面にシート状に一体成形された繊維強化樹脂製の補強部材と、を備え、前記補強部材は、前記骨格部材の長手方向に沿った一方の表面を含んで断面略「U」字状に配置された第1補強部と、前記骨格部材の長手方向に沿った他方の表面を含んで断面略「U」字状に配置された第2補強部と、を有し、前記骨格部材の断面形状の大きさが最も小さい最小部において、前記第1補強部の一部と前記第2補強部の一部とが互いにオーバーラップして重ねられている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、車両の骨格を構成する樹脂製の骨格部材が、長手方向と直交する断面形状の大きさが一定でない閉断面形状に形成されており、その断面形状の大きさが最も小さい最小部において、繊維強化樹脂製の補強部材を構成する第1補強部及び第2補強部のそれぞれの一部が互いにオーバーラップして重ねられている。したがって、その最小部が繊維強化樹脂製の補強部材によって補強される。これにより、その最小部の強度及び剛性が確保される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の車両における骨格部材の補強構造は、第1の態様の車両における骨格部材の補強構造であって、前記第1補強部及び前記第2補強部に含まれる繊維は、前記骨格部材の長手方向に沿って配向されている。
【0009】
第2の態様の発明によれば、第1補強部及び第2補強部に含まれる繊維が骨格部材の長手方向に沿って配向されている。したがって、第1補強部及び第2補強部に含まれる繊維が骨格部材の長手方向と直交する方向に沿って配向されている場合に比べて、骨格部材の長手方向における強度及び剛性が向上される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の車両における骨格部材の補強構造は、第1又は第2の態様の車両における骨格部材の補強構造であって、前記補強部材は、前記最小部を含んで断面略環状に配置された第3補強部を有している。
【0011】
第3の態様の発明によれば、補強部材が、最小部を含んで断面略環状に配置された第3補強部を有している。したがって、補強部材が、その第3補強部を有していない場合に比べて、骨格部材の最小部が、より効果的に補強される。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の車両における骨格部材の補強構造は、第3の態様の車両における骨格部材の補強構造であって、前記第3補強部に含まれる繊維は、前記骨格部材の長手方向と直交する方向に沿って配向されている。
【0013】
第4の態様の発明によれば、第3補強部に含まれる繊維が、骨格部材の長手方向と直交する方向に沿って配向されている。したがって、第3補強部に含まれる繊維が骨格部材の長手方向に沿って配向されている場合に比べて、第3補強部の周方向における強度及び剛性が向上される。
【0014】
また、本発明に係る第5の態様の車両における骨格部材の補強構造は、第1~第4の何れか1つの態様の車両における骨格部材の補強構造であって、前記最小部は、前記骨格部材の長手方向中央部である。
【0015】
第5の態様の発明によれば、骨格部材の長手方向中央部が最小部とされている。つまり、骨格部材の長手方向中央部が補強されている。したがって、骨格部材に長手方向に沿って荷重が入力されても、その骨格部材の最小部の座屈変形が抑制される。
【0016】
また、本発明に係る第6の態様の車両における骨格部材の補強構造は、第5の態様の車両における骨格部材の補強構造であって、前記骨格部材の断面形状の大きさが最も大きい最大部は、前記骨格部材の長手方向両端部であり、前記第1補強部と前記第2補強部とが、前記最大部において、互いに離間している。
【0017】
第6の態様の発明によれば、第1補強部と第2補強部とが、最大部において互いに離間している。ここで、最大部は、最小部に比べて強度及び剛性が高い部位である。したがって、その最大部を繊維強化樹脂製の補強部材で補強する必要が無く、骨格部材の長手方向から見て、第1補強部及び第2補強部の長さを互いに短くすることが可能となる。よって、最大部においても第1補強部及び第2補強部のそれぞれの一部が互いにオーバーラップして重ねられる構成に比べて、補強部材が一体成形される骨格部材の製造コストの増加が抑制される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、断面形状の大きさが一定とされていない樹脂製の骨格部材において、その断面形状の大きさが最も小さい最小部の強度及び剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るルーフリインフォースメントの補強構造を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るルーフリインフォースメントの補強構造を示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る補強構造を構成する補強部材の形状を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るルーフリインフォースメントの補強構造の製造方法を示す底面図である。
【
図7】本実施形態に係るルーフリインフォースメントの補強構造の製造方法を示す側面図である。
【
図8】本実施形態に係るルーフリインフォースメントの補強構造の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両上方向、矢印FRを車両前方向、矢印RHを車両右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両上下方向の上下、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0021】
また、本実施形態では、車両の骨格を構成する樹脂製の骨格部材として、車幅方向に延在するルーフリインフォースメント20を例に採って説明するが、図示の寸法割合は実際のものとは異なっている。すなわち、後述する左右一対のブラケット30の大きさを基準にして見た場合、実際のルーフリインフォースメント20は、図示のものよりも長い。
【0022】
図1、
図2に示されるように、ルーフリインフォースメント20は、例えば安価なランダム繊維樹脂材をベース材として、長手方向と直交する断面形状の大きさが一定でない矩形閉断面形状に形成されている。具体的には、このルーフリインフォースメント20は、平面視及び
正面視で、長手方向両端部から長手方向中央部に向かって徐々に幅狭になる矩形閉断面形状に形成されており、
正面視で、上方側へ湾曲されている。
【0023】
したがって、このルーフリインフォースメント20は、その長手方向中央部が、断面形状の大きさが最も小さい最小部32となっており、その長手方向両端部が、断面形状の大きさが最も大きい最大部34となっている。
【0024】
また、
図3、
図4に示されるように、このルーフリインフォースメント20は、断面視で前後方向の幅が上下方向の高さ(厚み)よりも長く形成されている。すなわち、このルーフリインフォースメント20は、上壁22及び下壁24の幅(前後方向の長さ)が、立壁としての前壁26及び後壁28の高さ(上下方向の長さであり、厚み)よりも長く形成されている。
【0025】
そして、ルーフリインフォースメント20の内部における前後方向中央部には、前後方向を向く(前壁26及び後壁28と平行に配置される)平板状の仕切板21が一体に、かつ長手方向全体に亘って形成されている。つまり、このルーフリインフォースメント20は、断面略「8」字状に形成されている。
【0026】
そして、このルーフリインフォースメント20の上下方向(高さ方向)における断面中立軸N(
図4参照)から遠い部位(少なくとも上壁22及び下壁24)の表面には、補強構造10を構成する炭素繊維又はガラス繊維等の連続繊維を含んだ繊維強化樹脂製の補強部材12が、シート状に一体成形されて配置されている。
【0027】
具体的に説明すると、この補強部材12は、ルーフリインフォースメント20の長手方向に沿った一方の表面、即ち上壁22と前壁26の上側部分と後壁28の上側部分とを含んで断面略「U」字状に配置された第1補強部14と、ルーフリインフォースメント20の長手方向に沿った他方の表面、即ち下壁24と前壁26の下側部分と後壁28の下側部分とを含んで断面略「U」字状に配置された第2補強部16と、を有している。
【0028】
図1、
図2に示されるように、第1補強部14及び第2補強部16は、ルーフリインフォースメント20の長手方向に延在しており、ルーフリインフォースメント20の全長に亘って配置されている。そして、図示は省略するが、第1補強部14及び第2補強部16に含まれている連続繊維は、ルーフリインフォースメント20の長手方向に沿って配向されている。
【0029】
すなわち、第1補強部14及び第2補強部16に含まれている連続繊維は、ルーフリインフォースメント20の下壁24の長手方向両端部にそれぞれ設けられている右側(一方)の結合部24Rを含む一端部(最大部34)から左側(他方)の結合部24Lを含む他端部(最大部34)まで連続的に繋がっている。なお、この結合部24R、24Lにより、ルーフリインフォースメント20の長手方向両端部が、それぞれ左右一対のルーフサイドレール(図示省略)にブラケット30を介して結合される構成になっている。
【0030】
また、
図2、
図3に示されるように、ルーフリインフォースメント20の最小部32における前壁26及び後壁28の上下方向中央部(断面中立軸N付近)に配置されている補強部材12は、その前後方向に沿った厚みが厚く形成されている。
【0031】
具体的に説明すると、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含む長手方向中央部における所定の領域Eでは、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部14Aが円弧状に下方側へ張り出しており、第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部16Aが円弧状に上方側へ張り出している。そして、その円弧状に張り出している第1補強部14の一部14Aと第2補強部16の一部16Aとが互いにオーバーラップして重ねられている。
【0032】
これにより、そのルーフリインフォースメント20の最小部32を含む長手方向中央部における所定の領域Eに、正面視及び背面視で長手方向に長く、かつ厚みの厚い略紡錘形状のラップ部36が前後に形成されるようになっている。なお、図示のラップ部36は、第2補強部16の一部16Aの上に第1補強部14の一部14Aが重ね合わされているが、第1補強部14の一部14Aの上に第2補強部16の一部16Aが重ね合わされていてもよい。
【0033】
一方、
図2、
図4に示されるように、ルーフリインフォースメント20の最大部34における前壁26及び後壁28の上下方向中央部には、補強部材12で覆われない露出部38が形成されている。換言すれば、ルーフリインフォースメント20の最大部34を含む長手方向両端部における所定の領域(領域Eを除く)では、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分と、第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分と、が互いに離間しており、前壁26の一部及び後壁28の一部が露出されている。
【0034】
次に、本実施形態に係るルーフリインフォースメント20の成形方法について説明する。
【0035】
図6、
図7に示されるように、ルーフリインフォースメント20を成形する金型40は、上金型42と下金型44とで構成されており、上金型42の内部には、上金型42の長手方向中央部で2つに分離可能な2本の中子46が設けられている。中子46が2本であるのは、ルーフリインフォースメント20の断面形状が略「8」字状に形成されるためである。
【0036】
また、各中子46が、上金型42の長手方向中央部で2つに分離可能とされているのは、このルーフリインフォースメント20が、平面視及び正面視で、長手方向両端部から長手方向中央部に向かって徐々に幅狭になる矩形閉断面形状に形成されており、正面視で、上方側へ湾曲されているためである。
【0037】
つまり、各中子46が、上金型42の長手方向中央部で2つに分離可能とされていないと、ルーフリインフォースメント20を成形した後に、そのルーフリインフォースメント20の内部から各中子46を長手方向外側へ抜き取れないからである。なお、各中子46の上壁、下壁、前壁、後壁は、それぞれルーフリインフォースメント20の内部から抜き取り易くするために、ルーフリインフォースメント20の内部の形状に沿ったテーパー形状に形成されている。
【0038】
ルーフリインフォースメント20を成形する際には、まず、金型40内に、シート状の補強部材12をセットする。金型40内にセットする前の補強部材12、即ち第1補強部14及び第2補強部16は、それぞれ長手方向において高さが一定の断面略「U」字状に形成されており、長手方向において高さが一定でない断面略「U」字状に予め形成されていない。
【0039】
つまり、第1補強部14及び第2補強部16は、それぞれ金型40内にセットされることによって、長手方向において高さが一定でない断面略「U」字状に成形される。
図5に、その成形後の第1補強部14及び第2補強部16(補強部材12)の形状を示す。このような成形方法であると、第1補強部14及び第2補強部16(補強部材12)を製作するときに、無駄に破棄する部位が発生しない。
【0040】
次いで、その補強部材12(第1補強部14及び第2補強部16)がセットされた状態の金型40でルーフリインフォースメント20を成形する。すなわち、金型40内に、シート状のランダム繊維樹脂材が巻き付けられた中子46を配置して、そのランダム繊維樹脂材を硬化させ、ルーフリインフォースメント20を成形する。これにより、ルーフリインフォースメント20の表面に補強部材12がシート状に一体成形される。
【0041】
より具体的には、補強部材12を構成する第1補強部14が、ルーフリインフォースメント20の上壁22、前壁26の上側部分、後壁28の上側部分を含んで断面略「U」字状に配置され、補強部材12を構成する第2補強部16が、ルーフリインフォースメント20の下壁24、前壁26の下側部分、後壁28の下側部分を含んで断面略「U」字状に配置される。
【0042】
そして、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部14Aと第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部16Aとが、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含む所定の領域E(
図2参照)において、互いにオーバーラップして重ねられ、ラップ部36が形成される。
【0043】
また、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分と第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分とが、ルーフリインフォースメント20の最大部34を含む所定の領域(領域Eを除く)において互いに離間され、露出部38が形成される。
【0044】
こうして、ルーフリインフォースメント20が、金型40内において成形されたら、各中子46の長手方向中央部を分離させ、各中子46をルーフリインフォースメント20の長手方向両端部側から、それぞれ抜き取る。このとき、各中子46の上壁、下壁、前壁、後壁は、それぞれルーフリインフォースメント20の内部の形状に沿ったテーパー形状に形成されているため、各中子46は、金型40内からスムーズに脱型される。
【0045】
そして、上金型42内から各中子46を長手方向外側へ抜き取ったら、上金型42を上昇させ、下金型44から離間させる。これにより、補強部材12が表面に一体成形された断面略「8」字状のルーフリインフォースメント20が完成し、その後、下金型44上から取り出される。
【0046】
以上のような本実施形態に係るルーフリインフォースメント20の補強構造10において、次にその作用について説明する。
【0047】
上記したように、ルーフリインフォースメント20は、補強部材12によって補強されている。特に、ルーフリインフォースメント20の最小部32においては、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部14Aと、第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部16Aと、が互いにオーバーラップして重ねられ、厚みが増したラップ部36が形成されている。
【0048】
したがって、そのラップ部36によりルーフリインフォースメント20の最小部32を補強することができ、その最小部32における強度及び剛性を確保することができる。換言すれば、長手方向と直交する断面形状の大きさが一定でない閉断面形状のルーフリインフォースメント20であっても、その長手方向において、強度及び剛性が偏るのを抑制することができる。
【0049】
よって、ルーフリインフォースメント20に、その長手方向に沿って荷重が入力され、その最小部32における曲げモーメントが最大になって、その最小部32に弾性的な断面変形が生じたとしても、その最小部32に塑性的な座屈変形が最終的に生じることを抑制することができる。
【0050】
また、そのラップ部36によりルーフリインフォースメント20の最小部32を補強することができるため、例えばルーフリインフォースメント20の最小部32の板厚を厚く形成して補強する構成に比べて、ルーフリインフォースメント20の軽量化を図ることができる。
【0051】
また、第1補強部14及び第2補強部16に含まれる連続繊維が、ルーフリインフォースメント20の全長に亘って長手方向に沿って配向されている。したがって、第1補強部14及び第2補強部16に含まれる連続繊維が、ルーフリインフォースメント20の長手方向と直交する方向に沿って配向されている場合に比べて、ルーフリインフォースメント20の長手方向における強度及び剛性を向上させることができる。
【0052】
また、ルーフリインフォースメント20の最大部34においては、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分と、第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分と、が互いに離間している。すなわち、最大部34における前壁26及び後壁28の上下方向中央部には、前壁26の一部及び後壁28の一部を露出させる露出部38が形成されている。
【0053】
ここで、最大部34は、最小部32に比べて強度及び剛性が高い部位となっている。したがって、その最大部34を補強部材12で補強する必要が無く、ルーフリインフォースメント20の長手方向から見て、第1補強部14の前壁26側部分の長さ及び後壁28側部分の長さと、第2補強部16の前壁26側部分の長さ及び後壁28側部分の長さと、を互いに短くすることができる。
【0054】
よって、最大部34においても、第1補強部14の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部と、第2補強部16の前壁26側部分及び後壁28側部分の各一部と、が互いにオーバーラップして重ねられる構成に比べて、補強部材12が一体成形されるルーフリインフォースメント20において、その製造コストの増加を抑制することができる。
【0055】
本実施形態に係るルーフリインフォースメント20の補強構造10の作用は、以上の通りであるが、本実施形態に係るルーフリインフォースメント20の補強構造10は、次のような構成になっていてもよい。
【0056】
すなわち、
図8に示されるように、補強部材12が、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含んで断面略環状に配置された第3補強部18を有する構成になっていてもよい。具体的には、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含む長手方向中央部における所定の領域E内に、その長手方向に所定の幅を有する筒状の第3補強部18が巻回された状態で設けられていてもよい。
【0057】
この第3補強部18に含まれる連続繊維は、ルーフリインフォースメント20の長手方向と直交する方向に沿って配向されている。つまり、第3補強部18に含まれる連続繊維は、その周方向に沿って配向されている。なお、第3補強部18を設ける部位は、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含む長手方向中央部における所定の領域E内のみでよい。
【0058】
また、第3補強部18は、図示のようにラップ部36の外側に巻回されていてもよいし、ラップ部36の内側に巻回されていてもよい。また、第3補強部18は、
図8では隙間を有して巻回されているように示されているが、実際には、ラップ部36又はルーフリインフォースメント20の長手方向中央部に密着した状態で巻回されている。また、第3補強部18は、完全な環状ではなく、若干の隙間を有する断面略「C」字状に形成されていてもよい。
【0059】
補強部材12が、このような第3補強部18を有していると、ルーフリインフォースメント20の最小部32を含む所定の領域E(前壁26及び後壁28の上下方向中央部)に配置される補強部材12の厚みをより一層厚くすることができる。したがって、補強部材12が第3補強部18を有していない場合に比べて、ルーフリインフォースメント20の最小部32をより効果的に補強することができる。
【0060】
また、上記したように、第3補強部18に含まれる連続繊維は、ルーフリインフォースメント20の長手方向と直交する方向(周方向)に沿って配向されている。したがって、第3補強部18に含まれる連続繊維がルーフリインフォースメント20の長手方向に沿って配向されている場合に比べて、第3補強部18の周方向における強度及び剛性を向上させることができる。
【0061】
以上、本実施形態に係るルーフリインフォースメント20(車両における骨格部材)の補強構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る補強構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、骨格部材は、ルーフリインフォースメント20に限定されるものではなく、図示は省略するが、ルーフサイドレール、ロッカ、フロントピラー等であってもよい。
【0062】
また、骨格部材は、ルーフリインフォースメント20のような断面矩形状に限定されるものではなく、例えば断面略楕円形状等に形成されていてもよい。更に、ルーフリインフォースメント20の閉断面形状は、図示の略「8」字状に限定されるものではなく、例えば仕切板21が1枚も形成されていない閉断面形状又は仕切板21が前後方向に間隔を空けて2枚以上形成された閉断面形状であってもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る補強構造10とは異なる補強構造になるが、骨格部材を構成するベース材は、ランダム繊維樹脂材ではなく、アルミニウム等の金属材とされていてもよい。この場合、補強部材12は、接着剤等により、その金属製の骨格部材に貼り付けられる構成にすればよい。
【符号の説明】
【0064】
10 補強構造
12 補強部材
14 第1補強部
14A 一部
16 第2補強部
16A 一部
18 第3補強部
20 ルーフリインフォースメント(骨格部材)
32 最小部
34 最大部