(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】物品搬送車
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231011BHJP
B61B 3/02 20060101ALI20231011BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B61B3/02 B
B65G1/04 551A
(21)【出願番号】P 2020135184
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 健史
(72)【発明者】
【氏名】稲積 響太
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/065146(WO,A1)
【文献】特開2016-094263(JP,A)
【文献】特開2013-047150(JP,A)
【文献】特開2014-005865(JP,A)
【文献】特開2007-048880(JP,A)
【文献】特開平09-110113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118845(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133488(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B61B 3/02
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
物品を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に一対の前記レールに沿って走行する走行部と、
前記走行部に対して前記幅方向に移動自在に支持された一対の接触体と、
一対の前記接触体を駆動する接触体駆動機構と、を備え、
一対の前記接触体のそれぞれは、一対の前記レールのうち対応する前記レールに対して前記幅方向に接触するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
正方向及び逆方向に回転自在であって、前記幅方向に沿って延在する雄ねじ部材と、
前記雄ねじ部材に対して前記正方向及び前記逆方向の回転力を付与する駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記雄ねじ部材に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、を備え、
前記雌ねじ部は、前記接触体と一体的に設けられていると共に、前記雄ねじ部材の回転により当該雄ねじ部材の延在方向に沿って移動するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
前記雄ねじ部材を前記正方向に回転させて、前記接触体を前記レールから離間した基準位置から前記レールに接触する接触位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体により前記レールを前記幅方向に押圧する押圧動作と、
前記雄ねじ部材を前記逆方向に回転させて、前記接触体を前記接触位置から前記基準位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体を前記レールから離間させる離間動作と、を行うように構成され、
前記制御部は、前記押圧動作のための前記雄ねじ部材の前記正方向の回転速度の平均である押圧方向平均速度が、前記離間動作のための前記雄ねじ部材の前記逆方向の回転速度の平均である離間方向平均速度よりも低くなるように前記駆動源を制御する、物品搬送車。
【請求項2】
前記接触体駆動機構は、一対の前記雌ねじ部に共通の前記雄ねじ部材、前記駆動源、及び前記制御部を備え、一対の前記接触体を同期させて前記幅方向に移動させる、請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項3】
一対の前記接触体が、一対の前記レールに対して前記幅方向の内側に配置され、
一対の前記接触体のそれぞれが、前記接触位置において前記レールに対して前記幅方向の内側から接触する接触面を有し、
前記接触面は、前記幅方向の外側へ向かうに従って下方へ向かうように傾斜している、請求項1又は2に記載の物品搬送車。
【請求項4】
一対の前記接触体のそれぞれが、前記接触位置において前記レールに対して接触する接触面と、前記接触面に設けられた緩衝材と、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項5】
前記押圧方向平均速度は、前記離間方向平均速度よりも2割以上低い、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項6】
前記押圧動作のために前記駆動源が発生する駆動トルクが、前記離間動作のために前記駆動源が発生する駆動トルクよりも低い、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項7】
前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部とが、ボールねじ機構を構成し、
前記雄ねじ部が、多条ねじとされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅方向に離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送車の一例が、国際公開第2011/065146号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された物品搬送車は、一対のレール(7)を走行する走行部(16)と、走行部(16)に支持されて物品(W)を保持する保持部(21)と、走行部(16)に対して横幅方向に移動して一対のレール(7)のそれぞれに接触するように構成された一対の接触体(41)と、を備えている。物品搬送車がステーション(1)との間で物品(W)を移載する際には、一対の接触体(41)のそれぞれが一対のレール(7)のうち対応するレール(7)に対して横幅方向に接触してこれを押圧することで、一対のレール(7)に対する走行部(16)の移動を規制した状態となる。これにより、走行部(16)のがたつきを抑え、安定した移載が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、接触体をレールに対して接近又は離間させる際の当該接触体の移動速度の設定については記載が無い。
【0006】
ここで、接触体の移動速度を速くすれば、その分だけ接触体の動作時間の短縮を図ることができる。しかし、接触体の移動速度を速くするに従って、接触体がレールに接触する瞬間の運動エネルギも大きくなるため、接触体とレールとが接触した状態での各部に作用する圧力が高くなり易い。それにより、接触体をレールから離間させる離間動作を行う場合に、接触体がレールから離間する方向に動き難くなり、当該離間動作を適切に行うことができず、或いは、当該離間動作を適切に行うために接触体を駆動するモータ等の駆動源の駆動力を大きく確保する必要があるといった問題が生じ得る。一方、接触体の移動速度を遅くすれば、そのような問題は生じない。しかし、接触体の移動速度を遅くするに従って、接触体の動作時間が長くなり、延いては物品の移載動作に要する時間が長くなるという問題が生じ得る。
【0007】
上記実状に鑑みて、接触体の動作時間が長くなることを抑制しつつ、接触体がレールに接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることが可能な物品搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幅方向に離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
物品を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に一対の前記レールに沿って走行する走行部と、
前記走行部に対して前記幅方向に移動自在に支持された一対の接触体と、
一対の前記接触体を駆動する接触体駆動機構と、を備え、
一対の前記接触体のそれぞれは、一対の前記レールのうち対応する前記レールであるレールに対して前記幅方向に接触するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
正方向及び逆方向に回転自在であって、前記幅方向に沿って延在する雄ねじ部材と、
前記雄ねじ部材に対して前記正方向及び前記逆方向の回転力を付与する駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記雄ねじ部材に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、を備え、
前記雌ねじ部は、前記接触体と一体的に設けられていると共に、前記雄ねじ部材の回転により当該雄ねじ部材の延在方向に沿って移動するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
前記雄ねじ部材を前記正方向に回転させて、前記接触体を前記レールから離間した基準位置から前記レールに接触する接触位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体により前記レールを前記幅方向に押圧する押圧動作と、
前記雄ねじ部材を前記逆方向に回転させて、前記接触体を前記接触位置から前記基準位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体を前記レールから離間させる離間動作と、を行うように構成され、
前記制御部は、前記押圧動作のための前記雄ねじ部材の前記正方向の回転速度の平均である押圧方向平均速度が、前記離間動作のための前記雄ねじ部材の前記逆方向の回転速度の平均である離間方向平均速度よりも低くなるように前記駆動源を制御する。
【0009】
本構成によれば、押圧動作を行う場合に接触体がレールに接近する移動速度を、離間動作を行う場合に接触体がレールから離間する移動速度よりも遅くするため、接触体がレールに接触する瞬間の運動エネルギを小さく抑えることができ、接触体とレールとが接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることができる。これにより、駆動源の駆動力を必要以上に大きくすることなく、接触体をレールから離間させる離間動作を適切に行うことが可能となる。一方、離間動作を行う場合に接触体がレールから離間する移動速度を相対的に速くすることにより、接触体を接触位置から基準位置に戻すのに要する時間をその分だけ短くすることができる。従って、接触体の動作時間が長くなることを抑制しつつ、接触体がレールに接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることが可能となる。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】押圧動作により接触体が接触位置に位置している状態を示す図
【
図6】離間動作により接触体が基準位置に位置している状態を示す図
【
図7】押圧動作を行う場合における、雄ねじ部材の回転速度を示すタイムチャート
【
図8】離間動作を行う場合における、雄ねじ部材の回転速度を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
物品搬送車の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、物品搬送車が、物品の搬送が行われる物品搬送設備に適用される場合を例示して、本実施形態に係る物品搬送車について説明する。
【0013】
図1に示すように、物品搬送設備は、物品8を搬送する物品搬送車Vと、設備の天井近くに設置され、物品搬送車Vの移動経路Rを構成する一対のレールRaと、物品搬送車Vとの間で物品8の移載が行われる移載対象箇所9と、を備えている。
【0014】
移載対象箇所9には、物品8に対する処理を行う処理装置91と、処理装置91に隣接して配置され、物品8を支持する支持台92と、が設けられている。本実施形態では、物品搬送車Vは、処理装置91による処理が行われる前の物品8を、図外の搬送元から支持台92に搬送すると共に、処理装置91による処理が行われた後の物品8を、支持台92から図外の搬送先に搬送する。本実施形態では、物品8は、処理装置91による処理の対象となる処理対象物を収納する容器であり、上述の「物品8に対する処理」とは、物品8に収納された処理対象物に対する処理を意味する。例えば、物品8としては、ウェハを収納するウェハ収納容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)であっても良いし、レチクルを収容するレチクル収納容器(いわゆるレチクルポッド)であっても良い。物品8がFOUPである場合、処理対象物はウェハとされる。物品8がレチクルポッドである場合、処理対象物はレチクルとされる。ここでは、物品8がFOUPである場合を例示している。
【0015】
以下、
図1~
図3を参照して、物品搬送車Vの構成について詳細に説明する。なお、以下では、物品搬送車Vが移動経路Rに沿って物品8を搬送する方向を「搬送方向X」とする。そして、搬送方向Xに対して上下方向に沿う上下方向視で直交する方向を「幅方向Y」とする。なお、搬送方向Xを第1方向、幅方向Yを第2方向とそれぞれ言い換えても良い。第1方向と第2方向とは上下方向視で互いに直交する方向である。
【0016】
物品搬送車Vは、幅方向Yに離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールRaに沿って走行して、搬送方向Xに沿って物品8を搬送する。物品搬送車Vは、物品8を保持する保持部41と、保持部41を支持すると共に一対のレールRaに沿って走行する走行部1と、を備えている。本実施形態では、物品搬送車Vは、保持部41を収容する収容部2と、収容部2を覆うカバー3と、収容部2の外部に位置する移載対象箇所9との間で物品8の移載動作を行う移載機構4と、を更に備えている。収容部2は、保持部41及び当該保持部41に保持された物品8を収容するように構成されている。カバー3は、保持部41及び当該保持部41に保持された物品8を囲むように形成されている。
【0017】
走行部1は、レールRa上を転動する走行車輪10と、走行車輪10を駆動する走行用モータM1と、を備えている。図示の例では、複数の走行車輪10が、物品搬送車Vに備えられている。走行用モータM1は、複数の走行車輪10のうち少なくとも1つを駆動して、物品搬送車Vが搬送方向Xに沿って走行するための推進力を付与する。
【0018】
カバー3は、走行部1によって吊下げ支持されている。ここでは、レールRaに対して上側に走行部1が配置され、レールRaに対して下側にカバー3が配置されている。本実施形態では、カバー3は、収容部2の上側及び搬送方向Xの両側を覆っている。本例では、カバー3は、収容部2の上側を覆う上側カバー部30と、収容部2における搬送方向Xの一方側を覆う第1カバー部31と、収容部2における搬送方向Xの他方側を覆う第2カバー部32と、を備えている。第1カバー部31及び第2カバー部32のそれぞれは、収容部2に収容された物品8における搬送方向Xを向く面に対向するように配置される。図示の例では、収容部2に対して幅方向Yの両側は、カバー3が配置されておらず、開放されている。
【0019】
移載機構4は、上述の保持部41と、保持部41を昇降させる昇降部42と、収容部2の内部と外部との間で保持部41を幅方向Yに沿って移動(スライド)させるスライド部43と、を備えている。
【0020】
保持部41は、走行部1によって吊下げ支持されている。レールRaに対して上側に走行部1が配置され、レールRaに対して下側に保持部41が配置されている。保持部41は、一対の把持爪411と、一対の把持爪411を互いに接近離間させる把持用モータM41と、を備えている。そして、保持部41は、把持用モータM41の駆動により一対の把持爪411を互いに接近又は離間させることで、一対の把持爪411が物品8を把持する把持状態(保持状態)と、当該把持状態を解除する把持解除状態(保持解除状態)と、を切り換えるように構成されている。本実施形態では、物品8は、物品本体部8bと、物品本体部8bよりも上側に設けられた被保持部8gと、を備えている。本例では、被保持部8gは、フランジ状に形成されている。保持部41は、物品8における被保持部8gを保持するように構成されている。より詳細には、保持部41は、被保持部8gを一対の把持爪411によって把持するように構成されている。
【0021】
スライド部43は、収容部2に対して幅方向Yに沿って移動するスライド体431と、スライド用モータ(不図示)により駆動されるスライド用プーリ432と、スライド用プーリ432に巻回されると共にスライド体431に連結された無端状のスライド用ベルト433と、を備えている。スライド体431は、スライド用プーリ432がスライド用モータによって駆動されることで、幅方向Yに沿って移動するように構成されている。スライド部43は、スライド用モータの駆動によりスライド体431を幅方向Yに沿って移動させることで、昇降部42並びに保持部41及び保持部41に保持された物品8を幅方向Yに沿って移動、すなわちスライドさせるように構成されている。
図1に示すように、移載対象箇所9における支持台92が移動経路Rに対して幅方向Yにずれた位置に配置されている場合には、スライド部43は、保持部41に保持された物品8を幅方向Yに沿ってスライドさせることで、物品8を支持台92に対して上下方向視で重複する位置に配置することができる。これにより、昇降部42による、支持台92への物品8の移載を適切に行うことができるようになる。
【0022】
昇降部42は、保持部41を収容部2に対応する高さと支持台92(移載対象箇所9)に対応する高さとの間で昇降させるように構成されている。昇降部42は、昇降用モータM42により駆動される昇降用ドラム421と、昇降用ドラム421に巻回されて先端部に保持部41が連結された昇降用ベルト422と、を備えている。昇降部42は、昇降用モータM42の駆動により昇降用ドラム421を正転方向に回転させて、昇降用ベルト422を巻き取ることで、保持部41及び保持部41に保持された物品8を上昇させる。また、昇降部42は、昇降用モータM42の駆動により昇降用ドラム421を逆転方向に回転させて、昇降用ベルト422を繰り出すことで、保持部41及び保持部41に保持された物品8を下降させる。昇降部42が保持部41に保持された物品8を昇降させることで、収容部2よりも下側に配置された支持台92(移載対象箇所9)との間で物品8を移載することが可能となっている。
【0023】
ここで、
図3及び
図4に示すように、物品搬送車Vは、走行部1に対して幅方向Yに移動自在に支持された一対の接触体5と、一対の接触体5のそれぞれを駆動する接触体駆動機構6と、を備えている。なお、
図4では、接触体5及び接触体駆動機構6を説明するために不要な構成は省略しており、例えば走行部1は図示されていない。
【0024】
一対の接触体5のそれぞれは、一対のレールRaのうち対応するレールRaに対して幅方向Yに接触するように構成されている。一対の接触体5のうち一方は、一対のレールRaのうち一方のみに接触するように構成され、一対の接触体5のうち他方は、一対のレールRaのうち他方のみに接触するように構成されている。
【0025】
一対の接触体5及び接触体駆動機構6は、走行部1に連結されている。一対の接触体5のそれぞれは、接触体駆動機構6に駆動されることで、レールRaに対して幅方向Yに接触して当該レールRaを押圧する。これにより、一対の接触体5によって、一対のレールRaに対する走行部1の移動が規制される。本実施形態では、接触体駆動機構6は、移載機構4によって物品8の移載が行われる場合に、一対の接触体5を駆動して一対のレールRaを押圧した状態とし、一対のレールRaに対する走行部1の移動を規制する。これにより、物品8の移載時において走行部1のがたつきを抑えることができ、安定した移載が可能となっている。
【0026】
本実施形態では、一対の接触体5が、一対のレールRaに対して幅方向Yの内側に配置されている。換言すれば、一対の接触体5は、幅方向Yにおける一対のレールRaの間に配置されている。本例では、一対の接触体5のそれぞれは、レールRaに対して接触した状態で、当該レールRaを幅方向Yの内側から外側に向けて押圧する。
【0027】
接触体駆動機構6は、正方向及び逆方向に回転自在であって、幅方向Yに沿って延在する雄ねじ部材61と、雄ねじ部材61に対して正方向及び逆方向の回転力を付与する駆動源M6と、駆動源M6を制御する制御部C6と、雄ねじ部材61に形成された雄ねじ部610に螺合する雌ねじ部620と、を備えている。更に、本例では、接触体駆動機構6は、接触体5に連結された連結部材62を備えている。雌ねじ部620は、接触体5と一体的に設けられていると共に、雄ねじ部材61の回転により当該雄ねじ部材61の延在方向に沿って移動するように構成されている。本例では、雌ねじ部620は、連結部材62に備えられている。すなわち本例では、雌ねじ部620は、接触体5に連結された連結部材62に設けられていることで、当該連結部材62を介して接触体5と一体的に設けられている。このような構成により、連結部材62は、雄ねじ部材61の回転により当該雄ねじ部材61の延在方向に沿って移動する。連結部材62が雄ねじ部材61の延在方向に沿って移動することで、当該連結部材62に連結された接触体5が幅方向Yに沿って移動する。
【0028】
本実施形態では、接触体駆動機構6は、連結部材62を、それぞれが接触体5に連結された状態で一対備えている。そして、接触体駆動機構6は、一対の雌ねじ部620(一対の連結部材62)に共通の雄ねじ部材61、駆動源M6、及び制御部C6を備えており、一対の接触体5を同期させて幅方向Yに移動させるように構成されている。換言すれば、接触体駆動機構6は、一対の連結部材62と、1つの雄ねじ部材61と、1つの駆動源M6と、1つの制御部C6と、を備えている。そして、この接触体駆動機構6に、一対の接触体5が加えられて、1つの接触体ユニットUが構成される。
図2に示すように、本実施形態では、走行部1には、2つの接触体ユニットUが設けられている。図示の例では、2つの接触体ユニットUは、走行部1における搬送方向Xに離間して配置されている。より具体的には、2つの接触体ユニットUのうち一方は、走行部1における走行車輪10よりも搬送方向Xの前側に配置され、2つの接触体ユニットUのうち他方は、走行部1における走行車輪10よりも搬送方向Xの後側に配置されている。
【0029】
ここで、駆動源M6としては、モータを用いている。このモータとしては、交流モータや直流モータを用いることができる。また、駆動源M6として用いるモータの制御方式等についても特に制約はなく、公知の様々な種類のモータを用いることができる。本例では、駆動源M6として交流モータを用いる。
【0030】
制御部C6は、駆動源M6を制御する。制御部C6は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、駆動源M6の回転速度制御やトルク制御を行うように構成されている。なお、駆動源M6の制御方式はこれには限定されず、公知の様々な方式を用いることができる。詳細な説明は省略するが、本実施形態では、制御部C6は、移載機構4の動作を制御する移載制御部(不図示)と連携して、物品8の移載が行われるタイミングで駆動源M6を制御する。これにより、物品8の移載を行う移載動作中に、一対の接触体5にレールRaを押圧させて、一対のレールRaに対する走行部1の移動を規制することができる。従って、物品8の安定した移載が可能となる。なお、制御部C6は、上記移載制御部の一部として構成されていても良い。
【0031】
図5及び
図6に示すように、接触体駆動機構6は、接触体5によりレールRaを幅方向Yに押圧する押圧動作Aoと、接触体5をレールRaから幅方向Yに離間させる離間動作Aiと、を行うように構成されている。
図5が押圧動作Aoを示しており、
図6が離間動作Aiを示している。
【0032】
接触体駆動機構6は、押圧動作Aoでは、雄ねじ部材61を正方向に回転させて、接触体5をレールRaから離間した基準位置PiからレールRaに接触する接触位置Poへ幅方向Yに移動させ、接触体5によりレールRaを幅方向Yに押圧する(
図5参照)。接触体駆動機構6は、離間動作Aiでは、雄ねじ部材61を逆方向に回転させて、接触体5を接触位置Poから基準位置Piへ幅方向Yに移動させ、接触体5をレールRaから離間させる(
図6参照)。すなわち、接触体駆動機構6は、基準位置Piと接触位置Poとの間で接触体5を移動させるように構成されている。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、雄ねじ部材61と雌ねじ部620(連結部材62)とが、ボールねじ機構を構成している。すなわち、雄ねじ部材61と雌ねじ部620とが、複数のボールを介して螺合しており、雄ねじ部材61の回転によって、雌ねじ部620に保持された複数のボールが雄ねじ部610のねじ溝を転がることに伴って、雌ねじ部620と共に連結部材62及び接触体5が幅方向Yに移動するように構成されている。
【0034】
本実施形態では、一対の雌ねじ部620(連結部材62)は、雄ねじ部材61の回転によって、幅方向Yに沿って互いに接近及び離間するように構成されている。本実施形態では、雄ねじ部材61は、第1雄ねじ部611と第2雄ねじ部612とを有している。第1雄ねじ部611には、一対の雌ねじ部620のうち一方が螺合しており、第2雄ねじ部612には、一対の雌ねじ部620のうち他方が螺合している。
【0035】
第1雄ねじ部611のねじ山は、雄ねじ部材61が正方向に回転することによって当該第1雄ねじ部611に螺合している雌ねじ部620を幅方向Yの外側に移動させる向きに傾斜している。第2雄ねじ部612のねじ山は、雄ねじ部材61が正方向に回転することによって当該第2雄ねじ部612に螺合している雌ねじ部620を幅方向Yの外側に移動させる向きに傾斜している。すなわち、雄ねじ部材61が正方向に回転することによって、一対の雌ねじ部620のそれぞれは、互いに離間するように幅方向Yの外側に向かって移動する。
【0036】
また、第1雄ねじ部611のねじ山は、雄ねじ部材61が逆方向に回転することによって当該第1雄ねじ部611に螺合している雌ねじ部620を幅方向Yの内側に移動させる向きに傾斜している。第2雄ねじ部612のねじ山は、雄ねじ部材61が逆方向に回転することによって当該第2雄ねじ部612に螺合している雌ねじ部620を幅方向Yの内側に移動させる向きに傾斜している。すなわち、雄ねじ部材61が逆方向に回転することによって、一対の雌ねじ部620のそれぞれは、互いに接近するように幅方向Yの内側に向かって移動する。
【0037】
そして、上述のように、一対の雌ねじ部620のそれぞれには、連結部材62を介して接触体5が連結されており、互いに連結された雌ねじ部620と接触体5とは、幅方向Yに沿って一体的に移動するように構成されている。すなわち本実施形態では、一対の接触体5のそれぞれは、雄ねじ部材61が正方向に回転することによって、互いに離間するように幅方向Yの外側に向かって移動する。そして、一対の接触体5のそれぞれは、雄ねじ部材61が逆方向に回転することによって、互いに接近するように幅方向Yの内側に向かって移動する。
【0038】
本実施形態では、雄ねじ部610は、多条ねじとされている。より詳細には、雄ねじ部610は、二条ねじとされている。これにより、雄ねじ部610が一条ねじとされている場合に比べて、雄ねじ部610のピッチを大きくすることができるため、雄ねじ部材61の回転数あたりの接触体5の移動距離(リード)を大きく確保してその移動速度を速くできると共に、雄ねじ部610と雌ねじ部620との間に作用する圧力も低く抑えることが可能となる。
【0039】
本実施形態では、一対の接触体5のそれぞれは、幅方向Yに沿って配置されたガイドレール71を移動する移動体72に連結されている。ガイドレール71と移動体72とは、いわゆるリニアガイドを構成しており、移動体72に保持された複数のボールがガイドレール71に形成された溝を転がることに伴って、移動体72がガイドレール71に沿って移動するようになっている。接触体5は、移動体72によって幅方向Yに案内される。本例では、1つのガイドレール71に対して、2つの移動体72が設けられている。2つの移動体72のそれぞれに、接触体5が連結されている。図示の例では、一対の接触体5のそれぞれは、その上部において連結部材62に連結され、その下部において移動体72に連結されている。
【0040】
上述のように本実施形態では、一対の接触体5のそれぞれは、同期して互いに接近及び離間するように構成されている。そして、本例では、一対の接触体5が互いに最も接近した状態で、一対の接触体5が互いに接触するように構成されている。
【0041】
本実施形態では、物品搬送車Vは、接触体5の幅方向Yの内側への移動を規制する移動規制部53を備えている。移動規制部53は、離間動作Aiにより幅方向Yの内側に移動する接触体5の移動を基準位置Piまでに規制する。本例では、接触体5が、移動規制部53を備えている。
図4に示すように、移動規制部53は、後述する接触体5の本体部50における幅方向Yの内側の端部から幅方向Yの内側に突出するように設けられている。ここでは、一対の接触体5が、移動規制部53を備えている。一対の接触体5のそれぞれに設けられた移動規制部53は、一対の接触体5が基準位置Piにある状態において、互いに幅方向Yに当接する(
図6参照)。これにより、一対の接触体5が基準位置Piから更に幅方向Yの内側に移動することが規制される。本実施形態では、一対の接触体5のそれぞれに設けられた移動規制部53は、一対の接触体5が基準位置Piにある状態において、点接触、或いは、鉛直面で接触するように構成されている。
【0042】
また、一対の接触体5のそれぞれは、互いに離間するように幅方向Yに沿って移動することで、レールRaに接触する。
【0043】
図4に示すように、一対の接触体5のそれぞれは、連結部材62に連結される本体部50と、本体部50から幅方向Yの外側に突出する突出部51と、を備えている。本実施形態では、本体部50は、その上部において連結部材62に連結されており、その下部において移動体72に連結されている。突出部51は、接触体5が接触位置Poにある状態において、レールRaに接触する。本実施形態では、突出部51は、本体部50における移動体72に連結された部分に対して、上下方向の位置が重複するように配置されている。換言すれば、突出部51と本体部50における移動体72に連結された部分(或いは移動体72)とは、搬送方向Xに沿う搬送方向X視において、幅方向Yに沿って並ぶように配置されている。これにより、押圧動作Aoにより突出部51がレールRaに接触した場合に、レールRaから受ける反力を移動体72によっても支持し易い構成を実現でき、レールRaへの接触の衝撃で接触体5の姿勢が傾くことを抑制できる。
【0044】
本実施形態では、突出部51には、接触体5が接触位置Poにある状態において、レールRaに対して幅方向Yの内側から接触する接触面5Fが形成されている。すなわち、一対の接触体5のそれぞれが、接触位置PoにおいてレールRaに対して幅方向Yの内側から接触する接触面5Fを有している。本実施形態では、接触面5Fは、幅方向Yの外側へ向かうに従って下方へ向かうように傾斜している。そして、接触面5Fは、接触体5が接触位置Poにある状態において、レールRaに対して斜め下方から接触するように構成されている。本例では、レールRaは、その幅方向Yの内側の部分に、幅方向Yの外側に向かって凹む凹部Rsを有している。凹部Rsの上部には、幅方向Yの外側へ向かうに従って下方へ向かうように傾斜する傾斜面Rfが形成されている。接触面5Fは、接触体5が接触位置Poにある状態において、この傾斜面Rfに接触する。このような接触面5Fの構成は、本実施形態のように、スライド部43によって、保持部41又は保持部41に保持された物品8を幅方向Yに沿って収容部2の外側にスライドさせる場合(
図1及び
図3参照)に好適である。すなわち、保持部41又は保持部41に保持された物品8を幅方向Yに沿って収容部2の外側にスライドさせた状態では、搬送方向Xに沿う軸心まわりのモーメントが走行部1に作用する。これにより、走行部1がレールRaに対して搬送方向Xに沿う軸心まわりに傾斜しようとするが、上記のように、接触面5Fが、レールRaに対して下方からも接触することで、走行部1が傾斜しないように適切に支持することができる。
【0045】
本実施形態では、一対の接触面5Fのそれぞれには、緩衝材52が設けられており、一対の接触面5Fのそれぞれは、緩衝材52を介してレールRaに接触するようになっている。すなわち、一対の接触体5のそれぞれが、接触面5Fに設けられた緩衝材52を備えている。これにより、接触体5がレールRaに接触する瞬間の衝撃や音を緩和することができる。なお、緩衝材52としては、例えば、硬質樹脂製の部材を用いると好適である。これにより、緩衝材52がレールRaに接触した際における緩衝材52の変形を抑制できるとともに、緩衝材52の適度の弾性によって、レールRaに接触した際に摩擦によるパーティクルの発生を抑制できる。
【0046】
以上説明した構成において、接触体駆動機構6は、制御部C6により駆動源M6を制御して、接触体5を基準位置PiからレールRaに接触するまで幅方向Yに沿って移動させる押圧動作Ao(
図5)と、接触体5をレールRaから離間させるように幅方向Yに沿って移動させて基準位置Piに戻す離間動作Ai(
図6)と、を行う。
【0047】
制御部C6は、雄ねじ部材61を正方向又は逆方向に回転させるように駆動源M6を制御する。また、制御部C6は、雄ねじ部材61の回転速度を目標回転速度に合わせるように駆動源M6を制御する。制御部C6は、雄ねじ部材61の回転速度を制御することにより、接触体5が幅方向Yに沿って移動する移動速度を制御する。ここで、雄ねじ部材61の回転速度と接触体5の移動速度とは比例関係にある。
【0048】
上述のように、本実施形態では、雄ねじ部材61が正方向に回転することで、接触体5は、幅方向Yの外側に向けて移動する。また、雄ねじ部材61が逆方向に回転することで、接触体5は、幅方向Yの内側に向けて移動する。すなわち、制御部C6は、駆動源M6を制御して雄ねじ部材61を正方向に回転させることで、接触体5を幅方向Yの外側に向けて移動させる。また、制御部C6は、駆動源M6を制御して雄ねじ部材61を逆方向に回転させることで、接触体5を幅方向Yの内側に移動させる。
【0049】
図7は、接触体駆動機構6が押圧動作Aoを行う場合の、正方向に回転する雄ねじ部材61の回転速度と時間との関係を表したタイムチャートである。縦軸が雄ねじ部材61の回転速度を示し、横軸が時間を示している。
図7における時刻T
10では、接触体5が基準位置Piにあり、時刻T
12では、接触体5が接触位置Poにある。
【0050】
また、
図8は、接触体駆動機構6が離間動作Aiを行う場合の、逆方向に回転する雄ねじ部材61の回転速度と時間との関係を表したタイムチャートである。縦軸が雄ねじ部材61の回転速度を示し、横軸が時間を示している。
図8における時刻T
20では、接触体5が接触位置Poにあり、時刻T
22では、接触体5が基準位置Piにある。
【0051】
制御部C6は、押圧動作Aoのための雄ねじ部材61の正方向の回転速度の平均である押圧方向平均速度が、離間動作Aiのための雄ねじ部材61の逆方向の回転速度の平均である離間方向平均速度よりも低くなるように駆動源M6を制御する。換言すれば、制御部C6は、押圧動作Aoにより基準位置Piから接触位置Poまで移動する接触体5の移動速度の平均が、離間動作Aiにより接触位置Poから基準位置Piまで移動する接触体5の移動速度の平均よりも低くなるように、駆動源M6を制御する。なお、押圧動作Aoにおいて接触体5が移動する距離(基準位置Piから接触位置Poまでの距離)と、離間動作Aiにおいて接触体5が移動する距離(接触位置Poから基準位置Piまでの距離)とは、互いに同じである。そのため、
図7において雄ねじ部材61の回転速度を示す線と横軸とによって囲まれた領域の面積Sоと、
図8において雄ねじ部材61の回転速度を示す線と横軸とによって囲まれた領域の面積Siとは、互いに等しくなる。
【0052】
このような構成によれば、押圧動作Aoを行う場合に接触体5がレールRaに接近する移動速度を、離間動作Aiを行う場合に接触体5がレールRaから離間する移動速度よりも遅くすることができる。そのため、接触体5がレールRaに接触する瞬間の接触体5の運動エネルギを小さく抑えることができる。これにより、接触体5とレールRaとが接触(衝突)により各部に作用する荷重を小さく抑えることができ、延いては、接触体5とレールRaとが接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることができる。接触体5とレールRaとが接触した状態で各部に作用する圧力が大きい場合、例えば、雄ねじ部材61と連結部材62との間の複数のボールを介して螺合する部分の圧力や接触体5とレールRaとの接触部分の圧力が大きい場合には、これらの接触部分の摩擦力が大きくなることにより、接触体5をレールRaから離間させるために大きな力が必要になる場合がある。しかし、上記のように、接触体5とレールRaとが接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることで、、駆動源M6の駆動力を必要以上に大きくすることなく、接触体5をレールRaから離間させる離間動作Aiを適切に行うことが可能となる。
【0053】
また、離間方向平均速度を押圧方向平均速度よりも高くしていることにより、離間動作Aiを行う場合に接触体5がレールRaから離間する移動速度を相対的に速くすることができている。これにより、接触体5を接触位置Poから基準位置Piに戻すのに要する時間をその分だけ短くすることができている。
【0054】
本実施形態では、押圧方向平均速度は、離間方向平均速度よりも2割以上低い。速度の設定をこのようにすることで、接触体5の動作時間の短縮と、接触体5がレールRaに接触した状態での各部に作用する圧力の低減とを、適切に両立させることができる。
【0055】
本実施形態では、制御部C6は、押圧動作Aoのための雄ねじ部材61の正方向の最高回転速度である押圧方向最高速度Vоmaxが、離間動作Aiのための雄ねじ部材61の逆方向の最高回転速度である離間方向最高速度Vimaxよりも低くなるように駆動源M6を制御する。これにより、雄ねじ部材61の正方向の回転速度の平均である押圧方向平均速度が、雄ねじ部材61の逆方向の回転速度の平均である離間方向平均速度よりも低くなるように制御し易い。
【0056】
より具体的には、本例では、制御部C6は、駆動源M6を制御し、雄ねじ部材61の正方向の回転速度を、押圧動作Aoの開始(T
10)から押圧方向最高速度Vоmaxに到達するまで一定の第1加速度で加速させ、押圧方向最高速度Vоmaxに到達した後は接触位置Poに到達するまで一定速度で雄ねじ部材61を回転させる制御を行う。また、制御部C6は、駆動源M6を制御し、雄ねじ部材61の逆方向の回転速度を、離間動作Aiの開始(T
20)から離間方向最高速度Vimaxに到達するまで一定の第2加速度で加速させ、離間方向最高速度Vimaxに到達した後は基準位置Piに到達するまで一定速度で雄ねじ部材61を回転させる制御を行う。また本例では、制御部C6は、第1加速度と第2加速度とが等しくなるように、駆動源M6を制御する。従って、
図7及び
図8に示すように、押圧動作Aoの開始(T
10)から押圧方向最高速度Vоmaxに到達するまでの間における雄ねじ部材61の正方向の回転速度を示す線の傾きと、離間動作Aiの開始(T
20)から離間方向最高速度Vimaxに到達するまでの間における雄ねじ部材61の逆方向の回転速度を示す線の傾きとが、互いに等しくなっている。本実施形態では、上記の第1加速度と第2加速度とが等しい構成において、制御部C6は、押圧動作Aoの開始から第1加速度で雄ねじ部材61の正方向の回転速度を加速させる時間(T
10-T
11)が、離間動作Aiの開始から第2加速度で雄ねじ部材61の逆方向の回転速度を加速させる時間(T
20-T
21)よりも短くなるように、駆動源M6を制御する。その結果、上記のように、押圧方向最高速度Vоmaxが離間方向最高速度Vimaxよりも低くなっている。
【0057】
上記のような接触体駆動機構6の機械的構成では、各接触体5の幅方向Yの移動距離が限られているため、当該接触体の移動中に複雑な加減速の制御を行うことは現実的ではない。また、そのような複雑な加減速を行う構成とすると、駆動源M6としてのモータや制御部C6の構造の複雑化や高コスト化の要因となり易い。そこで、本実施形態では、制御部C6は、押圧動作Aoにおいて接触体5が加速中又は一定速で移動中に接触位置Poに到達するように駆動源M6を制御する。本例では、制御部C6は、押圧動作Aoにおいて接触体5が一定速で移動中に接触位置Poに到達するように駆動源M6を制御する。理論的には、一定速で移動中に接触位置Poに到達した接触体5は、レールRaに接触してその速度がゼロになる(
図5参照)。すなわち、
図7に示すように、接触体5が接触位置Poに到達した時刻T
12において、雄ねじ部材61の回転速度もゼロとなる。よって、本例では、雄ねじ部材61の回転速度が押圧方向最高速度Vоmaxに維持された状態で、接触体5が接触位置Poに到達する。
【0058】
上記のように、本実施形態では、制御部C6は、押圧動作Aoにおいて接触体5が加速中又は一定速で移動中に接触位置Poに到達するように駆動源M6を制御する。つまり、接触体5の移動速度を接触位置Poの手前で減速制御するものではないため、接触体5がレールRaに接触する瞬間の運動エネルギが、接触位置Poの手前で接触体5の移動速度を減速する場合に比べて大きくなり易い。更に、上述のように、レールRaの傾斜面Rfに対して接触体5が接触する構成においては、接触体5とレールRaとが接触した状態で、接触体5の接触面5FとレールRaの傾斜面Rfとの間に上下方向の応力が作用することになり易く、雄ねじ部材61、連結部材62、又は接触体5などに、幅方向Yの圧力だけでなく上下方向のたわみに起因する圧力も作用し易い。しかし、本実施形態の構成によれば、上述のように、制御部C6は、押圧動作Aoを行う場合の押圧方向平均速度が、離間動作Aiを行う場合の離間方向平均速度よりも低くなるように駆動源M6を制御するため、押圧動作Aoの際の接触体5の移動速度を比較的低く抑えることができる。そのため、接触体5がレールRaに接触する瞬間の運動エネルギを小さく抑えることが可能となっている。すなわち、本構成によれば、駆動源M6としてのモータや制御部C6の構造を簡素化しつつ、接触体5とレールRaとが接触した状態で各部に作用する圧力を比較的小さく抑えることができる。
【0059】
上述のとおり、各接触体5の幅方向Yの移動距離が限られているため、離間動作Aiにおいても、接触体の移動中に複雑な加減速の制御を行うことが現実的ではなく、また複雑な加減速を行う構成とすることで駆動源M6や制御部C6の構造の複雑化や高コスト化の要因となる点は、押圧動作Aoと同様である。そこで、本実施形態では、制御部C6は、離間動作Aiにおいても、接触体5が加速中又は一定速で移動中に基準位置Piに到達するように駆動源M6を制御する。本例では、制御部C6は、離間動作Aiにおいて接触体5が一定速で移動中に基準位置Piに到達するように駆動源M6を制御する。理論的には、一定速で移動中に基準位置Piに到達した接触体5は、移動規制部53に接触してその速度がゼロになる(
図6参照)。すなわち、
図8に示すように、接触体5が基準位置Piに到達した時刻T
22において、雄ねじ部材61の回転速度もゼロとなる。よって、本例では、雄ねじ部材61の回転速度が離間方向最高速度Vimaxに維持された状態で、接触体5が基準位置Piに到達する。これにより、接触体5の動作時間の短縮を図ることができている。
【0060】
なお、本実施形態では、離間動作Aiにおいて基準位置Piで互いに当接する一対の移動規制部53は、上述のように、互いに点接触、或いは、鉛直面で接触するように構成されている。そのため、押圧動作Aoにおいて接触体5の接触面5FとレールRaの傾斜面Rfとが接触した状態で、これらの間に上下方向の応力が作用し、各部に幅方向Yの圧力だけでなく上下方向のたわみに起因する圧力も作用し易いというような問題は、離間動作Aiにおいて一対の移動規制部53が当接する場合には生じ難い。
【0061】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送車のその他の実施形態について説明する。
【0062】
(1)上記の実施形態では、接触体駆動機構6が、接触体5を幅方向Yに沿って移動させる例、すなわち、接触体5を幅方向Yに直線的に移動させる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、接触体駆動機構6は、直線的でなくても、接触体5を幅方向Yに移動(変位)させるように構成されていれば良い。例えば、接触体駆動機構6は、特定の方向に沿う軸心まわりに接触体5を旋回運動させることで当該接触体5を幅方向Yに移動(変位)させるように構成されていても良い。
【0063】
(2)上記の実施形態では、一対の接触体5が、一対のレールRaに対して幅方向Yの内側に配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、一対の接触体5のそれぞれは、レールRaに対して幅方向Yの外側に配置されていても良い。この場合、一対の接触体5のそれぞれは、レールRaに対して幅方向Yの外側から接触した状態で、当該レールRaを幅方向Yの外側から内側に向けて押圧する。すなわち、一対のレールRaが、一対の接触体5によって幅方向Yの外側から挟まれる状態となる。
【0064】
(3)上記の実施形態では、一対の接触体5のそれぞれが、幅方向Yの外側へ向かうに従って下方へ向かうように傾斜した接触面5Fを有し、レールRaに対して斜め下方から接触するように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、一対の接触体5のそれぞれは、例えば鉛直面に沿う接触面5Fを備え、レールRaに対して水平方向に沿って幅方向Yの内側又は外側から接触するように構成されていても良い。或いは、一対の接触体5のそれぞれが、レールRaに対して斜め上方から接触するように構成されていても良い。
【0065】
(4)上記の実施形態では、接触体駆動機構6が、一対の接触体5を同期させて幅方向Yに移動させるように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、接触体駆動機構6は、一対の接触体5をそれぞれ独立させて幅方向Yに移動させるように構成されていても良い。この場合、1つの接触体5に対して1つの接触体駆動機構6が設けられていても良い。
【0066】
(5)上記の実施形態では、制御部C6が、押圧動作Aoにおいて接触体5が加速中又は一定速で移動中に接触位置Poに到達するように駆動源M6を制御する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部C6は、押圧動作Aoにおいて接触体5が減速中に接触位置Poに到達するように駆動源M6を制御しても良い。
【0067】
(6)上記の実施形態では、制御部C6は、離間動作Aiにおいて接触体5が加速中又は一定速で移動中に基準位置Piに到達するように駆動源M6を制御する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部C6は、離間動作Aiにおいて接触体5が減速中に基準位置Piに到達するように駆動源M6を制御しても良い。
【0068】
(7)上記の実施形態では、制御部C6が、駆動源M6を制御することで、雄ねじ部材61の回転速度を制御する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御部C6は、駆動源M6が発生する駆動トルクを制御するようにしても良い。この場合、制御部C6は、押圧動作Aoのために駆動源M6が発生する駆動トルクが、離間動作Aiのために駆動源M6が発生する駆動トルクよりも低くなるように、駆動源M6を制御すると良い。この構成によれば、駆動源M6が発生する駆動トルクを制御することで、押圧動作Aoを行う場合に接触体5がレールRaに接近する移動速度を適切に低減できると共に、接触体5がレールRaに接触する瞬間の運動エネルギも小さく抑えることができる。
【0069】
(8)上記の実施形態では、一対の接触体5が、離間動作中の接触体5の移動を基準位置Piまでに規制する移動規制部53を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、一対の接触体5のうち一方のみが移動規制部53を備え、他方は移動規制部53を備えていなくても良い。或いは、一対の接触体5の双方が、移動規制部53を備えていなくても良い。この場合、例えば、移動規制部53は、接触体駆動機構6が備えていても良い。すなわち、一対の接触体5と移動規制部53とが別体とされ、移動規制部53は、一対の接触体5の間に固定配置されていても良い。この場合、移動規制部53は、一対の接触体5が基準位置Piにある状態において当該一対の接触体5の双方に接触する位置に配置される。
【0070】
(9)上記の実施形態では、走行部1に、2つの接触体ユニットUが設けられている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、走行部1には、1つの接触体ユニットU、或いは、3つ以上の接触体ユニットUが設けられていても良い。
【0071】
(10)上記の実施形態では、雄ねじ部材61と連結部材62とが、ボールねじ機構を構成している例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、雄ねじ部材61が通常の雄ねじを構成する雄ねじ部610を備え、連結部材62が備える雌ねじ部620と直接的に螺合した構成としても良い。
【0072】
(11)上記の実施形態では、接触体駆動機構6が、一対の接触体5のそれぞれに連結された一対の連結部材62を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、接触体駆動機構6は、上記のような連結部材62を備えていなくても良い。この場合において、雄ねじ部材61の雄ねじ部610に螺合する雌ねじ部620は、接触体5自体に設けられていても良い。このような構成であっても、雌ねじ部620は、接触体5と一体的に設けられ、雄ねじ部材61の回転により当該雄ねじ部材61の延在方向に沿って、雌ねじ部620及び接触体5が移動するように構成される。
【0073】
(12)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0074】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送車について説明する。
【0075】
幅方向に離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
物品を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に一対の前記レールに沿って走行する走行部と、
前記走行部に対して前記幅方向に移動自在に支持された一対の接触体と、
一対の前記接触体を駆動する接触体駆動機構と、を備え、
一対の前記接触体のそれぞれは、一対の前記レールのうち対応する前記レールであるレールに対して前記幅方向に接触するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
正方向及び逆方向に回転自在であって、前記幅方向に沿って延在する雄ねじ部材と、
前記雄ねじ部材に対して前記正方向及び前記逆方向の回転力を付与する駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記雄ねじ部材に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、を備え、
前記雌ねじ部は、前記接触体と一体的に設けられていると共に、前記雄ねじ部材の回転により当該雄ねじ部材の延在方向に沿って移動するように構成され、
前記接触体駆動機構は、
前記雄ねじ部材を前記正方向に回転させて、前記接触体を前記レールから離間した基準位置から前記レールに接触する接触位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体により前記レールを前記幅方向に押圧する押圧動作と、
前記雄ねじ部材を前記逆方向に回転させて、前記接触体を前記接触位置から前記基準位置へ前記幅方向に移動させ、前記接触体を前記レールから離間させる離間動作と、を行うように構成され、
前記雄ねじ部材が前記正方向に回転する速度を正方向回転速度とし、前記雄ねじ部が前記逆方向に回転する速度を逆方向回転速度として、
前記制御部は、前記押圧動作のための前記雄ねじ部材の前記正方向の回転速度の平均である押圧方向平均速度が、前記離間動作のための前記雄ねじ部材の前記逆方向の回転速度の平均である離間方向平均速度よりも低くなるように前記駆動源を制御する。
【0076】
本構成によれば、押圧動作を行う場合に接触体がレールに接近する移動速度を、離間動作を行う場合に接触体がレールから離間する移動速度よりも遅くするため、接触体がレールに接触する瞬間の運動エネルギを小さく抑えることができ、接触体とレールとが接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることができる。これにより、駆動源の駆動力を必要以上に大きくすることなく、接触体をレールから離間させる離間動作を適切に行うことが可能となる。一方、離間動作を行う場合に接触体がレールから離間する移動速度を相対的に速くすることにより、接触体を接触位置から基準位置に戻すのに要する時間をその分だけ短くすることができる。従って、接触体の動作時間が長くなることを抑制しつつ、接触体がレールに接触した状態での各部に作用する圧力を低く抑えることが可能となる。
【0077】
ここで、
前記接触体駆動機構は、一対の前記雌ねじ部に共通の前記雄ねじ部材、前記駆動源、及び前記制御部を備え、一対の前記接触体を同期させて前記幅方向に移動させる、と好適である。
【0078】
本構成によれば、接触体駆動機構の部品点数を削減でき、全体として小型化を図ることができる。
【0079】
また、
一対の前記接触体が、一対の前記レールに対して前記幅方向の内側に配置され、
一対の前記接触体のそれぞれが、前記接触位置において前記レールに対して前記幅方向の内側から接触する接触面を有し、
前記接触面は、前記幅方向の外側へ向かうに従って下方へ向かうように傾斜している、と好適である。
【0080】
本構成によれば、接触体の接触面を、レールに対して幅方向の内側かつ下方から接触させることができる。これにより、一対の接触面のそれぞれがレールに接触した状態において、一対のレールの延在方向、すなわち物品搬送車の走行方向に沿う軸心まわりに走行部が揺動することを適切に規制することができる。また、このような構成では、接触体がレールに接触する瞬間の運動エネルギが大きい場合に、接触体がレールの下方に入り込む状態となって接触体とレールとの接触圧が高くなり易い。従って、このような接触体の構成を備える場合には、上記のような制御部を備えた構成が特に適している。
【0081】
また、上記の構成は、
一対の前記接触体のそれぞれが、前記接触位置において前記レールに対して接触する接触面と、前記接触面に設けられた緩衝材と、を備える、と好適である。
【0082】
本構成によれば、接触面に緩衝材が設けられていることにより、接触体がレールに接触する瞬間の衝撃や音を緩和することができる。
【0083】
また、
前記押圧方向平均速度は、前記離間方向平均速度よりも2割以上低い、と好適である。
【0084】
本構成によれば、接触体の動作時間の短縮と、接触体がレールに接触した状態での各部に作用する圧力の低減とを、適切に両立させることができる。
【0085】
また、
前記押圧動作のために前記駆動源が発生する駆動トルクが、前記離間動作のために前記駆動源が発生する駆動トルクよりも低い、と好適である。
【0086】
本構成によれば、駆動源が発生する駆動トルクを制御することで、押圧動作を行う場合に接触体がレールに接近する移動速度を適切に低減できると共に、接触体がレールに接触する瞬間の運動エネルギも小さく抑えることができる。
【0087】
また、
前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部とが、ボールねじ機構を構成し、
前記雄ねじ部が、多条ねじとされている、と好適である。
【0088】
本構成によれば、雄ねじ部が一条ねじとされている場合に比べて、雄ねじ部のピッチを大きくすることができるため、雄ねじ部材の回転数あたりの接触体の移動速度を速くできると共に、雄ねじ部と雌ねじ部との間に作用する圧力も低く抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係る技術は、幅方向に離間すると共に互いに平行に配置された一対のレールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
V :物品搬送車
1 :走行部
5 :接触体
5F :接触面
6 :接触体駆動機構
8 :物品
41 :保持部
52 :緩衝材
53 :移動規制部
61 :雄ねじ部材
610 :雄ねじ部
620 :雌ねじ部
Ai :離間動作
Ao :押圧動作
C6 :制御部
M6 :駆動源
Pi :基準位置
Po :接触位置
Ra :レール
Y :幅方向