(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
B60J 10/75 20160101AFI20231011BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231011BHJP
B60J 10/16 20160101ALI20231011BHJP
B60J 10/23 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J5/04 R
B60J10/16
B60J10/23
(21)【出願番号】P 2020143399
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 大
(72)【発明者】
【氏名】積田 祥
(72)【発明者】
【氏名】龍野 功幸
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118386(JP,A)
【文献】特開昭59-129624(JP,A)
【文献】実開昭59-167022(JP,U)
【文献】実開平06-071320(JP,U)
【文献】実開昭59-129624(JP,U)
【文献】特開2014-189235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0235569(US,A1)
【文献】特開2015-193275(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176324(WO,A1)
【文献】特開2007-030706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/75
B60J 5/04
B60J 10/16
B60J 10/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓を有している車両用ドアであって、
前記窓の開口を閉塞する窓ガラスと、
前記窓ガラスの車両外側に配置されており、前記開口の周縁の少なくとも一部において前記窓ガラスと対向する樹脂製のアウターパネルと、
前記窓ガラスに対向する前記アウターパネルの内面に固定されており、前記窓ガラスと前記アウターパネルとの間の隙間をシールするベルトモールと、を備えており、
前記窓ガラスは、前記開口を開放する開放方向と前記開口を閉鎖する閉鎖方向とに移動可能に構成されており、
前記ベルトモールは、
前記開口に対して前記開放方向側に位置しており、
前記アウターパネルの内面に接着されており、
その全体が前記窓ガラスと前記アウターパネルとの間の前記隙間に位置するとともに、前記窓ガラスに対向している取付面を有しているベース部材と、
前記ベース部材の取付面に取り付けられており、前記窓ガラスの外面と
摺動可能に接触しているベルトモール本体と、を備えており、
前記ベルトモール本体は、前記ベース部材の取付面に対して、互いに離散した複数の固定点で支持されている、
車両用ドア。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記アウターパネルの前記内面に対して両面テープで接着されている、請求項
1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記複数の固定点に対応する位置に、前記取付面から車両内側に延びている複数のボスを有しており、
前記ベルトモール本体は、前記複数のボスがそれぞれ通過している複数の孔を有している、請求項1
または2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記固定点では、前記ボスが前記孔に対して嵌合している、請求項
3に記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記複数のボスの各々は、前記孔より径の大きい拡径部を、その先端に有している、請求項
3又は
4に記載の車両用ドア。
【請求項6】
前記複数の固定点の各々では、前記ベルトモール本体と前記ベース部材とが互いに溶着されている、請求項1から
5のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記ベルトモール本体の車両上方または車両下方の端と当接しているリムを備えている、請求項1から
6のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項8】
前記ベース部材は、前記ベルトモール本体を構成する材料よりも、剛性の高い材料で構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項9】
前記ベース部材は、樹脂材料で構成されており、前記ベルトモール本体は、ゴム材料で構成されている、請求項
8に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、一人乗りの小型な車両が開示されている。この車両では、ドアのアウターパネルが合成樹脂で構成されており、それによって車両の軽量化が図られている。
【0003】
特許文献2には、窓ガラスと、板金製のアウターパネルと、ベルトモールと、を備えている車両用ドアが開示されている。ベルトモールは、板金製のアウターパネルの上端に対して上方から差し込まれ、窓ガラスとアウターパネルとの間の隙間をシールする。ベルトモールの端部がアウターパネルの板金の端に対して引っ掛かることで、ベルトモールが板金製のアウターパネルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-30706号公報
【文献】特開2015-193275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような樹脂製のアウターパネルは、板金製のアウターパネルに比して剛性が低い。そのため、特許文献2の車両用ドアのように、樹脂製のアウターパネルの端に対してベルトモールの端部を引っ掛けると、樹脂製のアウターパネルの端が変形して、ベルトモールがアウターパネルから外れるおそれがある。そのため、樹脂製のアウターパネルに対しては、その内面にベルトモールを接着して固定することが考えられる。しかしながら、ベルトモールは、窓ガラスとアウターパネルとの間の隙間をシールする部材であり、材質的に劣化しやすいとともに、劣化に伴う機能面の低下も比較的に大きい。そのため、車両(または車両用ドア)の寿命よりも早期に交換が必要となることも多い。ベルトモールを交換するためには、劣化した既存のベルトモールを、アウターパネルから取り外す必要がある。このとき、アウターパネルの内面にベルトモールが直接接着されていると、ベルトモールをアウターパネルから引き剥がす際に、樹脂製のアウターパネルを変形させてしまうおそれがある。本明細書では、樹脂製のアウターパネルを採用した車両用ドアにおいて、アウターパネルを変形させることなく、ベルトモールの交換を可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、窓を有する車両用ドアに具現化される。この車両用ドアは、窓ガラスと、樹脂製のアウターパネルと、ベルトモールと、を備えている。窓ガラスは、前記窓の開口を閉塞する。アウターパネルは、前記窓ガラスの車両外側に配置されており、前記開口の周縁の少なくとも一部において前記窓ガラスと対向する。ベルトモールは、前記窓ガラスに対向する前記アウターパネルの内面に固定されており、前記窓ガラスと前記アウターパネルとの間の隙間をシールする。さらに、前記ベルトモールは、ベース部材と、ベルトモール本体と、を備えている。ベース部材は、前記アウターパネルの内面に接着されており、前記窓ガラスに対向する取付面を有している。ベルトモール本体は、前記ベース部材の取付面に取り付けられており、前記窓ガラスの外面と接触している。前記ベルトモール本体は、前記ベース部材の取付面に対して、互いに離散した複数の固定点で支持されている。ここで、「互いに離散した複数の固定点で支持される」とは、ベルトモール本体が取付面に対して支持される部位と、支持されない部位が明確に分離しており、前者の部位では、比較的小さい面積でベルトモール本体が取付面に対して固定されている構造を示す。各々の固定点において、両部材が実際に固定された範囲の形状は特に限定されず、点状であるか、線状であるか、面状であるかは問わない。
【0007】
上述した車両用ドアでは、ベルトモールが、ベース部材とベルトモール本体とによって構成されている。ベース部材は、樹脂製のアウターパネルに接着されている。ベルトモール本体は、ベース部材の取付面に対して、互いに離散した複数の固定点で固定されている。このような構成によると、車両を製造する段階では、ベルトモール本体が組み付けられたベース部材を、例えば両面テープを用いることで、アウターパネルへ容易に接着することができる。そして、ベルトモール本体が劣化した場合、互いに離散した複数の固定点でベルトモール本体とベース部材とを分断することで、アウターパネルを変形させることなく、劣化したベルトモール本体を簡単に取り外すことができる。新しいベルトモール本体については、例えば両面テープを用いて、ベース部材の取付面に接着されてもよい。ベルトモール本体の再度の交換が、車両(または車両用ドア)の寿命よりも早期に必要となることは、通常想定されないためである。このように、本明細書が開示する技術によると、樹脂製のアウターパネルを採用した車両用ドアにおいて、樹脂製のアウターパネルの変形させることなく、ベルトモールの交換を可能とすることができる。
【0008】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施例の車両の全体を模式的に示す右側面図を示す。
【
図2】第1実施例の車両のドアを車両内側から見たドアの正面図であって、窓ガラスが窓開口を閉鎖した状態を示す。
【
図3】第1実施例の車両のドアを車両内側から見たドアの正面図であって、窓ガラスが窓開口を開放した状態を示す。
【
図7】第2実施例における
図6と同様の断面図を示す。
【
図8】第3実施例における
図6と同様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態では、窓ガラスは、開口を開放する開放方向と開口を閉鎖する閉鎖方向とに移動可能に構成されていてもよい。その場合、ベルトモールは、開口に対して開放方向側に位置しており、窓ガラスの外面と摺動可能に接触していてもよい。このような構成では、窓ガラスとの摺動によってベルトモールが劣化しやすいので、ベルトモールの交換を容易とする本技術を、好適に採用することができる。なお、他の実施形態では、ベルトモールは、固定された窓ガラスの外面と接触してもよい。
【0011】
本技術の一実施形態では、ベース部材は、アウターパネルの内面に対して両面テープで接着されていてもよい。これにより、車両を製造する段階において、ベルトモールをアウターパネルの内面に対して比較的簡易に接着することができる。
【0012】
本技術の一実施形態では、ベース部材は、複数の固定点に対応する位置に、取付面から車両内側に延びている複数のボスを有していてもよい。その場合、ベルトモール本体は、複数のボスがそれぞれ通過している複数の孔を有していてもよい。このような構成によると、ベース部材の複数のボスとベルトモール本体の複数の孔とを用いて、比較的簡易にベルトモール本体をベース部材に固定することができる。
【0013】
上記した実施形態において、固定点では、ボスが孔に対して嵌合していてもよい。これにより、ベルトモール本体がベース部材から外れ難いとともに、ベース部材に対してベルトモール本体が安定して固定される。
【0014】
上記した実施形態において、複数のボスの各々は、孔より径の大きい拡径部を、その先端に有していてもよい。このような構成によると、拡径部によって、複数のボスの各々が孔から抜けることを防止することができる。すなわち、ベルトモール本体がベース部材に対して強固に固定される。
【0015】
本技術の一実施形態では、複数の固定点の各々では、ベルトモール本体とベース部材とが互いに溶着されていてもよい。これにより、ベルトモール本体がベース部材から外れにくくなる。
【0016】
本技術の一実施形態では、ベース部材は、ベルトモール本体の車両上方または車両下方の端と当接しているリムを備えていてもよい。これにより、新しいベルトモール本体をベース部材に取り付ける際に、ベルトモール本体の位置がベース部材に対してずれにくい。
【0017】
本技術の一実施形態では、ベース部材は、ベルトモール本体を構成する材料よりも、剛性の高い材料で構成されていてもよい。これにより、劣化したベルトモール本体をベース部材から取り外す際、アウターパネルの外面が、より変形しにくくなる。
【0018】
上記した実施形態において、ベース部材は、樹脂材料で構成されており、ベルトモール本体は、ゴム材料で構成されていてもよい。ゴム材料は、窓ガラスとアウターパネルとの間の隙間をシールする上で、適度な弾性を有する材料の一つである。ゴム材料は、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。なお、ここでいうゴム材料には、エラストマと称されるものも含む。
【実施例】
【0019】
図面を参照して、第1実施例の車両用ドアについて説明する。まず
図1を参照して、第1実施例のドア20を搭載している車両10について説明する。車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向(長手方向)における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向(高さ方向)における上方を示し、方向DNは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、左右方向及び上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向及び上下方向と称することがある。
【0020】
図1に示すように、車両10は、車体12と、複数の車輪14f、14rとを含む。車体12は、特に限定されないが、金属材料及び樹脂材料を用いて構成されている。複数の車輪14f、14rは、車体12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、一対の前車輪14fと、一対の後車輪14rとが含まれる。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。本実施例における車両10は、一人乗りの小型なサイズを有するが、車両10のサイズや搭乗人数についても特に限定されない。
【0021】
車両10は、走行用モータ16と、バッテリユニット18とをさらに備える。走行用モータ16は、一対の後車輪14rに接続されており、一対の後車輪14rを駆動することができる。なお、走行用モータ16は、一対の後車輪14rに限られず、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つを駆動するように構成されていればよい。バッテリユニット18は、電力供給回路(図示省略)を介して走行用モータ16に接続されており、走行用モータ16へ電力を供給する。バッテリユニット18は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。なお、車両10は、バッテリユニット18に加えて、又は代えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。また、車両10は、走行用モータ16に加えて、又は代えて、エンジンといった他の原動機を備えてもよい。
【0022】
車両10は、ドア20をさらに備える。ドア20は、車体12の右側に位置しており、車体12に対して開閉可能に設けられている。ドア20は、ユーザが車両10に乗り降りするための車両用ドアである。ドア20は、ヒンジ(図示省略)を介して車体12に取り付けられており、水平方向に揺動可能に構成されている。ドア20の車両外側(すなわち、
図1の紙面手前側)は、アウターパネル21で覆われており、アウターパネル21の上方には窓枠22が設けられている。特に限定されないが、アウターパネル21は、合成樹脂で構成されている。アウターパネル21を合成樹脂で構成することで、車両10の軽量化を図ることができる。
【0023】
窓枠22の内側には、二つの桟24、26が設けられている。二つの桟24、26は、互いに平行である。二つの桟24、26は、上方ほど後方に向かって傾斜するように延びている。窓枠22及び二つの桟24、26は、三つの窓開口28a、28b、28cを画定している。なお、ドア20の位置は、車体12の左側に設けられてもよい。ドア20の位置は、国又は地域の法令等に応じて設計されることができる。
【0024】
三つの窓開口28a、28b、28cは、第1の窓開口28aと、第2の窓開口28bと、第3の窓開口28cとを含んでいる。第1の窓開口28aは、最も前方に位置しており、窓枠22と、一方の桟24と、アウターパネル21と、によって取り囲まれている。第1の窓開口28aには、第1の窓ガラス23fが設けられている。すなわち、第1の窓開口28aの周縁において、第1の窓ガラス23fは、窓枠22と、一方の桟24と、アウターパネル21と、に対向している。第1の窓ガラス23fは、開閉不能な窓ガラスであって、窓枠22と一方の桟24に対して固定されている。第1の窓ガラス23fは、第1の窓開口28aを閉塞している。
【0025】
第2の窓開口28bは、中間に位置しており、窓枠22と、二つの桟24、26と、アウターパネル21とによって取り囲まれている。第2の窓開口28bには、第2の窓ガラス25が設けられている。すなわち、第2の窓開口28bの周縁において、第2の窓ガラス25は、窓枠22と、二つの桟24、26と、アウターパネル21と、に対向している。第2の窓ガラス25は、開閉可能な窓ガラスであって、二つの桟24、26に沿って移動可能に取り付けられている。第2の窓ガラス25は、第2の窓開口28bを閉塞している。
【0026】
最も後方に位置している第3の窓開口28cは、窓枠22と、一方の桟26と、アウターパネル21と、によって取り囲まれている。第3の窓開口28cには、第3の窓ガラス23rが設けられている。すなわち、第3の窓開口28cの周縁において、第3の窓ガラス23rは、窓枠22と、一方の桟26と、アウターパネル21と、に対向している。第3の窓ガラス23rは、開閉不能な窓ガラスであって、窓枠22と他方の桟26に対して固定されている。第3の窓ガラス23rは、第3の窓開口28cを閉塞している。ここで、窓ガラス23f、25、23rの各々は、ガラスに限定されず、例えばアクリル樹脂といった、透明又は半透明な他の材料で構成されてもよい。
【0027】
図2、
図3は、ドア20の正面図である。すなわち、
図2、
図3は、車両10の左右方向に沿って車室内から見たときのドア20の形状を示している。
図2、
図3に示されるように、窓ガラス25は、窓開口28bを閉鎖する上限位置と、窓開口28bを開放する下限位置との間で、ユーザによって上下方向へ直接的に操作される。
図2に示されるように、窓ガラス25の上限位置から窓ガラス25が開放方向Odに移動することで、窓開口28bが開放される。
図3に示されるように、窓ガラス25の下限位置から窓ガラス25が閉鎖方向Cdに移動することで、窓開口28bが閉鎖される。窓ガラス25の車両前後方向の両端は、二つの桟24、26によって摺動可能に支持されている。窓ガラス25は、二つの桟24、26に沿って車両上下方向に移動する。
【0028】
窓ガラス25には、ユーザが把持するノブ60が設けられている。ノブ60は、窓ガラス25の内面(すなわち、
図2の紙面手前側の面)に取り付けられており、窓ガラス25の内面から突出している。ユーザは、車室内からノブ60を用いて窓ガラス25を容易に操作することができる。すなわち、ユーザは、ノブ60を把持して窓ガラス25を持ち上げたり、ノブ60を把持して窓ガラス25を下ろしたりすることができる。すなわち、窓ガラス25は、例えば従来の昇降装置といった機構が介在することなく、ユーザによって、上下方向へ直接操作される。なお、窓ガラス25は、従来の昇降装置によって上下方向に移動してもよい。
【0029】
ノブ60には、ユーザによって操作される可動式のフック62が設けられている。一方、窓枠22には、フック62に対応するフックレシーバ64が設けられている。フックレシーバ64は、窓ガラス25が上限位置にあるときに、フック62と係合する。これにより、上限位置にある窓ガラス25が、例えば自重によって下降しないようにロックされる。ここで、ノブ60、フック62及びフックレシーバ64の位置は特に限定されない。例えば、ノブ60とフック62とが、互いに異なる位置に設けられていてもよい。あるいは、フック62が窓枠22に設けられるとともに、フックレシーバ64が窓ガラス25に設けられてもよい。
【0030】
図2、
図3に示されるように、三つの窓開口28a、28b、28cの下方には、ドアトリム29が配置されている。ドアトリム29は、インサイドハンドル29hと、スピーカグリル29sとを備えている。ドアトリム29は、ドア20の内面を装飾する部品である。ドアトリム29は、ドア20の内部を覆うことで、ドア20を車室内から見た意匠性(すなわち、見栄え)を向上させる。ドアトリム29は、主に樹脂で構成されている。インサイドハンドル29hは、ユーザが車両内側からドア20を開けるために操作するハンドルである。スピーカグリル29sには、表面に複数の貫通孔が形成されている。ドア20の内部に収容されているスピーカ(図示省略)から出される音は、スピーカグリル29sを介して車室内のユーザに到達する。
【0031】
窓ガラス25が開放方向Odに移動して、窓ガラス25が下限位置に配置されると、
図3に示されるように、ノブ60とドアトリム29との間のスペースが小さくなる。ドアトリム29の上部には、窪み29lが設けられている。下限位置にあるノブ60は、窪み29lと対向している。
【0032】
図4を参照して、アウターパネル21の上端部の構造について説明する。
図4は、
図3の線IV-IVに沿った断面図である。すなわち、窓開口28bの下側の周縁における断面図である。
図2を参照して説明したように、窓ガラス25は、開放方向Odに移動することで窓開口28bを開放する。すなわち、
図4は、窓開口28bの開放方向Od側の周縁における断面である。
【0033】
ドアトリム29の上部には、窪み29lが設けられている。窪み29lは、窪み29lとノブ60との間に、ノブ60を操作するユーザの手を受け入れるためのスペースを形成する。また、ドアトリム29の内部には、インナーパネル27と、インナーリンフォース27rと、インナーウェザーストリップ27wとが配置されている。インナーパネル27は、ドア20(
図2参照)の車両内側に設けられている板金部品であり、インナーパネル27に対してドアトリム29が固定される。インナーリンフォース27rは、インナーパネル27を部分的に補強する板金部品である。インナーウェザーストリップ27wは、インナーパネル27とインナーリンフォース27rとの上端に差し込まれて固定されている。インナーウェザーストリップ27wは、インナーパネル27と、窓ガラス25の内面との間をシールする。
【0034】
窓ガラス25の右方(すなわち、車両外側)には、アウターパネル21が配置されている。先に述べたように、
図4は、窓開口28bの開放方向Od側の周縁における断面である。アウターパネル21は、窓開口28bの開放方向Od側の周縁において、窓ガラス25と対向している。アウターパネル21の内面21iの上端部には、ベルトモール30が配置されている。ベルトモール30は、両面テープ32によって、アウターパネル21の内面21iに固定されている。ベルトモール30は、ベース部材34と、ベルトモール本体30bと、を備えている。ベース部材34は、樹脂材料で構成されている。ベース部材34は、上下方向に延びる扁平な形状を有しており、その下端が左側(すなわち、車両内側)に屈曲している。ベース部材34の右側(すなわち、車両外側)の面は、両面テープ32によって、アウターパネル21の内面21iに固定されている。ベース部材34の左側(すなわち、車両内側)の面には、窓ガラス25の外面と対向している取付面34pが設けられている。ベルトモール本体30bは、ベース部材34の取付面34pに固定されている。ベルトモール本体30bと、ベース部材34とを固定する詳細構造については、後述する。なお、ベルトモール30は、アウターパネル21の上端部に沿って、一定の断面形状で前後方向に延びている。ベルトモール30は、窓開口28aの下側の周縁において、窓ガラス23fの外面と、アウターパネル21との間の隙間をシールする。ベルトモール30は、窓開口28cの下側の周縁において、窓ガラス23rの外面と、アウターパネル21との間の隙間をシールする。ベルトモール30は、開閉可能な窓ガラス25とアウターパネル21との間の隙間と同様に、開閉不能な窓ガラス23f、23rとアウターパネル21との間の隙間もシールする。
【0035】
ベルトモール本体30bは、典型的にはゴム材料で構成されている。先に述べたように、ベース部材34は、樹脂材料で構成されている。すなわち、ベース部材34は、ベルトモール本体30bを構成するゴム材料よりも、剛性の高い樹脂材料で構成されている。ベルトモール本体30bは、窓ガラス25の外面に向かって延びている2個のリップを備えている。ベルトモール本体30bの2個のリップは、窓ガラス25の外面と当接することで弾性変形して、窓ガラス25とアウターパネル21との間の隙間をシールする。ゴム材料は、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。なお、ここでいうゴム材料には、エラストマと称されるものも含む。ベルトモール本体30bのリップのそれぞれの表面には、植毛(図示省略)が施されている。ベルトモール本体30bの植毛は、窓ガラス25の外面と当接している。ベルトモール本体30bの植毛が窓ガラス25の外面と当接することで、窓ガラス25の外面とベルトモール本体30bとの間で生じる摩擦力が減少する。その結果、窓ガラス25は、ベルトモール本体30bのリップの表面を滑るように移動する。このように、ベルトモール本体30bは、窓ガラス25の外面と摺動可能に接触する。
【0036】
図5、
図6を参照して、ベルトモール本体30bと、ベース部材34とを固定する詳細の構造について説明する。
図5は、ベルトモール本体30bと、ベース部材34と、両面テープ32とを分解した斜視図を示している。
図5に示されるように、ベース部材34は、取付面34pから左側(すなわち、車両内側)に延びている互いに離散した複数のボス34bを備えている。ベース部材34は、下方の端部に、前後方向に延びているリム34rを備えている。また、ベルトモール本体30bには、ベース部材34のボス34bと対向する位置に、互いに離散した複数の孔30hが設けられている。
図5に示されるように、ベース部材34のボス34bのそれぞれは、対応するベルトモール本体30bの孔30hに挿入される。その結果、ボス34bのそれぞれは、対応する孔30hを通過する。なお、
図5では、複数のボス34bのうち、
図5の最も右側(すなわち車両後側)に位置するボス34bにのみ符号を付し、それ以外のボス34bについての符号を省略している。同様に、
図5では、最も後側に位置する孔30hにのみ符号を付し、それ以外の孔30hについての符号を省略している。
【0037】
ベース部材34のボス34bがベルトモール本体30bの孔30hを通過した後、ボス34bの先端が、左側から超音波治具(不図示)により融解される。これにより、
図6に示されるように、ボス34bの高さが低くなるとともにその径が拡大する。その結果、ボス34bの先端には、拡径部34mが形成される。拡径部34mの径は、ベルトモール本体30bの孔30hの径よりも大きい。このため、ベルトモール本体30bは、ベース部材34から外れない。なお、ボス34bの先端を融解する際、ベルトモール本体30bの左側の面は、ボス34bの先端とともに融解されることで拡径部30mと溶着してもよいし、しなくてもよい。
図6に示されるように、ベルトモール本体30bは、ベース部材34の取付面34pに、ボス34bの拡径部34mが孔30hの周縁部に当接(または溶着)することで固定されている。それ以外の部位では、ベルトモール本体30bは、取付面34pに固定されていない。すなわち、ベルトモール本体30bは、ボス34bの拡径部34mと孔30hの周縁部との当接部分という比較的小さい面積で、取付面34pに対して固定されている。すなわち、ベルトモール本体30bは、ベース部材34の取付面34pに対して、固定点30pで支持される。
図6では、ボス34bの拡径部34mと孔30hの周縁部との当接部位の中心を、固定点30pとして表現している。
図5を参照して説明したように、ベース部材34は、互いに離散した複数のボス34bを備えており、ベルトモール本体30bは、互いに離散した複数のボス34bのそれぞれに対応する孔30hを備えている。各々のボス34bと、それに対応する孔30hとにおいて、ベルトモール本体30bは、同様に固定点30pで支持される。すなわち、ベルトモール本体30bは、取付面34pに対して、互いに離散した複数の固定点30pで支持される。
【0038】
複数のボス34bの先端を全て融解し、ベルトモール本体30bがベース部材34に固定されると、ベルトモール30が完成する。
図5、
図6に示されるように、完成したベルトモール30は、両面テープ32によって、アウターパネル21の内面21iに接着される。これにより、ベルトモール30が樹脂製のアウターパネル21の内面21iに固定される。なお、ベルトモール30は、内面21iに対して接着剤によって接着されてもよい。
【0039】
図4を参照して説明したように、ベルトモール30は、窓ガラス25の外面とアウターパネル21との間の隙間をシールする。ベルトモール30のシール性は、ベルトモール30の劣化に伴って低下する。特にベルトモール本体30bは、材質的に劣化しやすいとともに、劣化に伴ってベルトモール30のシール性を顕著に低下させる。ベルトモール本体30bは、車両外部に露出しているため、ベルトモール本体30bには、窓ガラス25の外面に付着した雨水、埃等の異物が付着しやすく、それらの異物がベルトモール本体30bの劣化を進行させる。さらに、ベルトモール本体30bには、窓ガラス25の摺動に起因する摩耗といった劣化も生じる。このため、ベルトモール本体30bは、劣化しやすい部材であり、車両10(またはドア20)の寿命よりも早期に交換が必要となることも想定される。
【0040】
先に述べたように、ベルトモール本体30bは、ベース部材34に対して、互いに離間した固定点30pで支持されている。このため、劣化したベルトモール本体30bを取り外す際、各固定点30pの拡径部30mを切り離すことで、ベルトモール本体30bを簡単に取り外すことができる。その後、各ボス34bを根本から切断し、取付面34pの表面を滑らかにする。ボス34bを切断した取付面34pに対し、新しいベルトモール本体30bを両面テープで固定する。これにより、アウターパネル21の外面を変形させることなく、簡易にベルトモール本体30bを取り換えることができる。なお、新しいベルトモール本体30bの再度の交換は、通常、車両10(またはドア20)の寿命後になると考えられる。このため、新しいベルトモール30bの固定に、両面テープを採用してもよい。また、
図6に示されるように、ベルトモール本体30bの下方の端は、ベース部材34のリム34rの上面と当接している。このため、新たなベルトモール本体30bを、ボス34bを取り除いた取付面34pに固定する際に、ベルトモール本体30bの位置がずれにくい。なお、リム34rは、ベース部材34の上方の端部に形成されていてもよいし、ベルトモール本体30bを介して互いに対向するようにベース部材34の両方の端部に形成されていてもよい。
【0041】
図7を参照して第2実施例のベルトモール40のベルトモール本体40bがベース部材44の取付面44pに対して支持される構造について説明する。第2実施例のベルトモール40のベース部材44は、取付面44pにボスを備えていない。ベルトモール本体40bには、孔が形成されていない。第2実施例では、取付面44pとベルトモール本体40bの右側(すなわち、車両外側)の面とが直接溶着される。第2実施例では、取付面44pとベルトモール本体40bとを当接させた状態で、その中央部を両側から超音波で溶着する。その結果、混在部40mが形成される。混在部40mでは、取付面44pの樹脂材料と、ベルトモール本体40bのゴム材料とが混ざり合った状態で凝固している。混在部40mは、ベルトモール本体40bをベース部材44の取付面44pに固定する。すなわち、ベルトモール本体40bは、混在部44mという比較的小さい面積で、取付面44pに対して固定されている。すなわち、ベルトモール本体40bは、取付面44pに固定点40pで支持される。
図7では、混在部40mの中心を固定点40pとして表現している。第2実施例のベルトモール40では、その前後方向に沿って所定のピッチで混在部40mが形成される。すなわち、ベルトモール本体40bは、ベース部材44の取付面44pに対して、互いに離散した複数の固定点40pで支持されている。このような構成とすることで、ベルトモール本体40bが劣化した場合に、複数の混在部40mを切断することで、劣化したベルトモール本体40bを簡単に取り外すことができる。
【0042】
図8を参照して第3実施例のベルトモール50のベルトモール本体50bがベース部材54の取付面54pに対して支持される構造について説明する。ベース部材54は、取付面54pから左側(すなわち、車両内側)に延びているボス54bを備えている。ベルトモール本体50bは、ボス54bが通過する孔50hを備えている。
図6を参照して説明した第1実施例とは異なり、第3実施例のボス54bの径は、孔50hの径よりも大きく作られている。このため、ボス54bが孔50hに圧入されると、ボス54bが孔50hに対して嵌合する。その結果、ベルトモール本体50bは、ベース部材54の取付面54pに固定される。すなわち、ベルトモール本体50bは、ボス54bの側面と孔50hの内周面の当接部分という比較的小さい面積で取付面54pに対して固定される。すなわち、ベルトモール本体50bは、ベース部材54の取付面54pに対して固定点50pで支持される。
図8では、ボス54bと孔50hとが嵌合している部位の中心を固定点50pとして表現している。第3実施例のベルトモール50も、
図5を参照して説明した第1実施例のベルトモール30と同様に、互いに離間した複数のボス54bが、それに対応する孔50hを通過している。すなわち、ベルトモール本体50bは、取付面54pに対して、互いに離間した複数の固定点50pで支持されている。このような構成とすることで、ベルトモール本体50bが劣化した場合に、複数のボス54bを切断することで、劣化したベルトモール本体50bを簡単に取り外すことができる。なお、ボス54bの先端には、ツメが設けられており、ツメが孔50hと嵌合することで、ベルトモール本体50bが取付面54pに支持されてもよい。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10 :車両
12 :車体
14f、14r :車輪
16 :走行用モータ
18 :バッテリユニット
20 :ドア
21 :アウターパネル
21i :内面
22 :窓枠
23f、23r、25 :窓ガラス
24、26 :桟
27 :インナーパネル
27r :インナーリンフォース
27w :インナーウェザーストリップ
28a、28b、28c :窓開口
29 :ドアトリム
29h :インサイドハンドル
29l :窪み
29s :スピーカグリル
30、40、50 :ベルトモール
30b、40b、50b :ベルトモール本体
30h、50h :孔
30m :拡径部
30p、40p、50p :固定点
32 :両面テープ
34、44、54 :ベース部材
34b、54b :ボス
34m :拡径部
34p、44p、54p :取付面
34r :リム
40m :混在部
60 :ノブ
62 :フック
64 :フックレシーバ
Cd :閉鎖方向
Od :開放方向