(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】足漕ぎ運動機器
(51)【国際特許分類】
A63B 23/04 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
A63B23/04 C
(21)【出願番号】P 2020173882
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 英祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 富夫
(72)【発明者】
【氏名】小田島 正
(72)【発明者】
【氏名】竹田 貴博
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0223678(US,A1)
【文献】登録実用新案第3165317(JP,U)
【文献】米国特許第5997445(US,A)
【文献】登録実用新案第3210988(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309086(US,A1)
【文献】米国特許第5562574(US,A)
【文献】特開2008-104869(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101618261(CN,A)
【文献】中国実用新案第201519426(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクと、
前記クランクが連結された第1回転軸を備え、前記第1回転軸周りに前記クランクを回転可能に保持する本体部と、
着座中のユーザが足を載せるペダルを有し、前記クランクに
第2回転軸周りに回転可能に連結されたリンクと、
前記リンクに設けられ、
前記クランクの回転に応じて前後方向に往復移動する滑走部材と、
前記滑走部材の高さを変えるために設けられ、前記滑走部材が滑走する傾斜面を有する傾斜台と、を備え
、
前記傾斜台における前記滑走部材の高さに応じて前記リンクの前記第2回転軸周りの角度が変化し、
前記第1回転軸及び第2回転軸に対する前記傾斜台の前端の前後方向距離が変化するように、前記傾斜台が前後方向に移動可能に設けられており、
前記傾斜台が前後方向に移動することで、前記滑走部材の前後方向位置と高さとの関係が変わり、
前記クランクの回転に応じて、前ユーザの足首関節の角度が変化し、
前記傾斜台の前後方向の位置が設定されることで、前記足首関節の可動範囲が調整される足漕ぎ運動機器。
【請求項2】
前記傾斜台が交換可能に設けられており、
前記傾斜面の傾斜角度及び形状が異なる傾斜台が取り付けられている請求項1に記載の足漕ぎ運動機器。
【請求項3】
前記クランク、前記リンク、及び前記滑走部材が前記ユーザの左右の足に対してそれぞれ設けられており、
左右の前記傾斜台の前後方向位置、傾斜角度、及び形状の少なくとも一つが異なっている請求項1、又は2に記載の足漕ぎ運動機器。
【請求項4】
前記滑走部材が前記傾斜面を滑走する滑走車輪を有している請求項
1~3のいずれか1項に記載の足漕ぎ運動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、足漕ぎ運動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、ユーザが座ったまま、上下肢連動運動を行うことができる運動機器が開示されている。非特許文献1の運動機器では、ユーザがペダルを踏み込むことで、楕円軌道による運動を行うことができる。特許文献1には、ユーザが立った状態で足踏み動作を行うための運動機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.sakaimed.co.jp/rehabilitation/exercise-therapy/care_prevention/pre-step/[令和2年9月15日検索]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザは、筋力維持や筋力強化を目的として、足漕ぎ運動を行う。このような運動機器では、ユーザがより効果的に運動をできるようにすることが望まれている。例えば、ユーザに応じて、関節を適切な可動範囲にしたいという要望がある。非特許文献1の運動機器では、足関節(足首関節ともいう)の可動範囲を適切に設定して足漕ぎ運動を行わせることが困難である。
【0006】
本開示は、以上の背景に鑑みなされたものであり、ユーザが効果的に足漕ぎ運動することができる足漕ぎ運動機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施態様に係る足漕ぎ運動機器は、クランクと、前記クランクを回転可能に保持する本体部と、着座中のユーザが足を載せるペダルを有し、前記クランクに回転可能に連結されたリンクと、前記リンクに設けられた滑走部材と、前記滑走部材が滑走する傾斜面を有する傾斜台と、を備えたている。
【0008】
上記の足漕ぎ運動機器において、前記傾斜台が前後方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0009】
上記の足漕ぎ運動機器において、前記傾斜台が交換可能に設けられており、前記傾斜面の傾斜角度及び形状が異なる傾斜台が取り付けられていてもよい。
【0010】
上記の足漕ぎ運動機器において、前記クランク、前記リンク、及び前記滑走部材が前記ユーザの左右の足に対してそれぞれ設けられており、左右の前記傾斜台の前後方向位置、傾斜角度、及び形状の少なくとも一つが異なっていてもよい。
【0011】
上記の足漕ぎ運動機器において、前記滑走部材が前記傾斜面を滑走する滑走車輪を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ユーザが効果的に足漕ぎ運動することができる足漕ぎ運動機器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】運動機器の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】運動機器の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】運動機器の構成を模式的に示す側面図である。
【
図4】運動機器の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】傾斜台と滑走車輪の位置関係を説明するための側面図である。
【
図6】傾斜台無しの場合の関節角度を示すグラフである。
【
図7】傾斜台無しの場合の代表点の軌跡を示す図である。
【
図8】一部の回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の関節角度を示すグラフである。
【
図9】一部の回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の代表点の軌跡を示す図である。
【
図10】全ての回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の関節角度を示すグラフである。
【
図11】全ての回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の代表点の軌跡を示す図である。
【
図12】実施の形態2にかかる運動機器の構成を示す模式図である。
【
図13】傾斜台無しの場合の関節角度を示すグラフである。
【
図14】傾斜台無しの場合の代表点の軌跡を示す図である。
【
図15】一部の回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の関節角度を示すグラフである。
【
図16】一部の回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の代表点の軌跡を示す図である。
【
図17】全ての回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の関節角度を示すグラフである。
【
図18】全ての回転角度で滑走車輪が傾斜台を滑走する場合の代表点の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
実施の形態1.
本実施の形態にかかる運動機器は、ユーザが足漕ぎ運動を行うための足漕ぎ運動機器である。本実施の形態にかかる運動機器100について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1,及び
図2は、運動機器100を側方から見た図である。なお、以下の説明では、説明の明確化のため、XYZ3次元直交座標系を用いて説明を行う。具体的には、+X方向が前方向、-X方向が後ろ方向、+Y方向が上方向、-Y方向が下方向、+Z方向は左方向、-Z方向が右方向となる。前後方向、左右方向、上下方向は、ユーザUの方向を基準とする方向である。
【0016】
運動機器100は、足関節の可動範囲を調整可能なものである。以下の説明において、足関節のZ軸周りの回転方向を底背屈方向とし、その角度を底背屈角度とする。より具体的には、足FTのつま先が下方に向かう方向を底屈方向とし、つま先が上方に向かう方向を背屈方向とする。
【0017】
図1に示すように、運動機器100は、本体部20、リンク30、クランク40、及び傾斜台50を有している。運動機器100の後方には椅子10が設けられている。ユーザUは、椅子10に着座した状態で足漕ぎ運動を行う。従って、椅子10は、ユーザUが着座する着座部となる。なお、椅子10は、運動機器100と一体的に設けられていてもよく、別体として設けられていても良い。例えば、椅子10は、ユーザUがいる施設や自宅などにある椅子であってもよい。つまり、ユーザUや補助者が椅子10を運動機器100の後方に設置しても良い。
【0018】
なお、運動機器100において、本体部20に取り付けられた構成要素は、左右対称となっている。
図2では、左右の構成要素を区別するため、本体部20の左側の構成要素に対してLを付しており、右側の構成要素に対してRを付している。例えば、
図2において、左の傾斜台50が傾斜台50Lとして示され、右側の傾斜台50が傾斜台50Rとして示されている。同様に、左のリンク30、ペダル31がリンク30L、ペダル31Lとなり、右のリンク30、ペダル31がリンク30R,ペダル31Rとなっている。同様に、左の足FTを左足FTLとし、右の足FTを右足FTRとする。尚、以下の説明において、左右の構成要素を区別しない場合、LとRを省略する。
【0019】
本体部20は、クランク40を回転可能に保持している。例えば、本体部20には、回転軸21が設けられている。回転軸21にクランク40が連結されている。クランク40は回転軸21周りに回転する。本体部20はクランク40の回転運動に対して負荷を与える負荷抵抗体を有していてもよい。なお。本体部20は、負荷を可変とするためのギアなどを有していてもよい。本体部20は床面に対して固定されていてもよい。
【0020】
リンク30は、ペダル31、及び滑走車輪35を有している。リンク30の前端にはクランク40が連結され、後端には滑走車輪35が連結されている。クランク40とリンク30とは回転可能に連結されている。例えば、リンク30は、軸受けなどを介して、クランク40に取り付けられている。ペダル31は、リンク30の途中に取り付けられている。ペダル31は、ユーザUが足FTを載せるステップ(足置き台)となる。着座中のユーザUは、ペダル31の上に足FTを載せる。
【0021】
滑走車輪35は、回転軸(車軸)を介して、リンク30に取り付けられている。つまり、リンク30は、滑走車輪35を回転可能に保持している。滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面51を滑走する滑走部材となる。
【0022】
ユーザUは足FTをペダル31に載せて、足漕ぎ運動を行う。つまり、ユーザUが足FTを踏み込むように、膝関節や股関節を動かす。これにより、クランク40が回転軸21周りに回転する。さらに、クランク40の回転に応じて、リンク30とクランク40との間の角度が変化する。つまり、クランク40の回転角度(クランク角度ともいう)に応じて、クランク40に対するリンク30の相対角度が変化する。また、滑走車輪35は傾斜面51に接触した状態で、前後方向に移動する。これにより、足漕ぎ運動に応じて、ペダル31が楕円軌道を描くように、クランク40及びリンク30が回転動作する。
【0023】
なお、ペダル31、滑走車輪35、リンク30、クランク40、傾斜台50は、ユーザUの左右の足FTに対してそれぞれ設けられている。つまり、本体部20の左右それぞれに、ペダル31、滑走車輪35、リンク30、クランク40、傾斜台50が設けられている。本体部20の右側に設けられたペダル31R、滑走車輪35R、リンク30R、傾斜台50R等がユーザUの右足FTRに対応している。本体部20の左側に設けられたペダル31L、リンク30L、傾斜台50LがユーザUの左足FTLに対応している。
【0024】
クランク40は、左右の足FTに対して逆位相となるように、本体部20の回転軸21に取り付けられている。つまり、左足用のクランク40と右足用のクランク40は回転角度が180°ずれている。ユーザUが左脚及び右脚を交互に伸縮させて、足漕ぎ運動を行う。
【0025】
リンク30の下端には、滑走車輪35が取り付けられている。滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面を滑走する車輪を有している。傾斜台50は後方に行くほど高くなっていくような傾斜面を有している。滑走車輪35は、リンク30の回転運動に応じて、X方向(前後方向)に往復移動する。
図1のように、ユーザUが右脚を伸ばして、かつ左脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、右側の滑走車輪35が前方に移動し、左側の滑走車輪35が後方に移動する。
図2のように、ユーザUが左脚を伸ばして、かつ右脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、左側の滑走車輪35が前方に移動し、右側の滑走車輪35が後方に移動する。
【0026】
滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面に沿って高さが変化する。傾斜台50は、後方に行くほど傾斜面の高さが高くなっている。つまり、傾斜台50は、後方に移動する滑走車輪35に対して上り坂となっている。よって、滑走車輪35が後方に進んでいる間、滑走車輪35が徐々に高くなっていく。反対に、滑走車輪35が前方に進んでいる間、滑走車輪35が徐々に低くなっていく。滑走車輪35の高さに応じて、リンク30の角度が規定される。
【0027】
ここで、滑走車輪35の高さに応じて、リンク30に設けられたペダル31の角度が制限される。つまり、滑走車輪35が高くなると、ペダル31が底屈方向に回転する。滑走車輪35が低くなると、ペダル31が背屈方向に回転する。したがって、傾斜台50の傾斜角度に応じて、足関節の底背屈角度の可動範囲を調整することができる。クランク40の回転角度に応じて、足関節の底背屈角度の可動範囲を調整することができる。
【0028】
この点について、
図3、及び
図4を用いて説明する。
図3,及び
図4は、運動機器100の構成を模式的に示す側面図である。
図3は、傾斜台50がある構成を示し、
図4は、傾斜台50がない構成を示している。
【0029】
図3では、傾斜台50の傾斜面51に沿って、滑走車輪35の高さが変化する。滑走車輪35の高さに応じて、リンク30の角度が変化する。リンク30に設けられたペダル31に足FTが乗っているため、リンク30の角度に応じて足FTの関節角度が変化する。滑走車輪35が後方に移動すると、滑走車輪35が高くなり、足関節が底屈方向に回転する。また、滑走車輪35が前方に移動すると、滑走車輪35が低くなり、足関節が背屈方向に回転する。本実施の形態により、傾斜台50の傾斜角度に応じて、足関節の底背屈方向における可動範囲を調整することができる。つまり、各ユーザUに適した足関節角度で、ユーザUが足漕ぎ運動を行うことができる。
【0030】
これに対して、
図4では、傾斜台50がないため、滑走車輪35の高さが一定となっている。つまり、滑走車輪35が後方に移動したとしても、滑走車輪35の高さが変化しない。よって、
図4の構成では、ユーザU毎に足関節の底背屈方向における可動範囲を調整することが困難になる。
【0031】
本実施の形態では、滑走車輪35が滑走する傾斜台50を設けているため、底背屈方向の可動範囲を容易に調整することができる。つまり、ユーザUに応じて、最適な可動範囲を設定することが可能になる。具体的には、傾斜台50を前後方向に移動可能にすることで、X方向における滑走車輪35の位置と、滑走車輪35の高さの関係を変更することができる。これにより、可動範囲の変更、調整を容易に行うことができる。
【0032】
例えば、傾斜台50を前方に移動することで、足関節角度を底屈方向に調整することができる。また、傾斜台50を後方に移動することで足関節角度が背屈方向に調整する。例えば、高齢のユーザの場合、足関節の可動範囲が小さくなるように、傾斜台50を設定すれば良い。
【0033】
歩行時の運動に近い足首の底背屈の挙動を再現できるため、リハビリにおいて、歩行に近い動きを実現することができる。歩行遊脚で膝伸展する際では足首は背屈になり、立脚後期では足首は底屈になる。また、遊脚切り替え時にすぐに足首が背屈になる。傾斜台を利用することで、歩行時の足首動作を運動機器100で再現することができる。
【0034】
さらに、足首の底屈領域,背屈領域のどの領域を重点的に動かすかを決定することができる。例えば、足首背屈は痛みがあり、底屈動作に痛みがない患者がユーザUである場合について考える。このユーザUにとって、背屈動作が困難であるが、底屈動作を容易に行うことができる。よって、ユーザUは、痛みのない範囲内で足首関節を動かすことができる。よって、ユーザUが安心してリハビリを行うことができる。
【0035】
以下、傾斜台50を前後方向に移動した場合の足関節角度の可動範囲について、
図5を用いて詳細に説明する。
図5は、運動機器100の主要部を模式的に示す側面図である。
図5では、本体部20に対するクランク40の回転軸21を回転軸Aとし、クランク40とリンク30の連結箇所における回転軸を回転軸Bとしている。さらに、滑走車輪35の車軸を回転軸Cとしている。また、X方向において、回転軸Aから傾斜台50の前端までの距離をLとする。傾斜面51の前方には水平な床面52が設けられているとする。
【0036】
LがLminよりも小さい場合、全てのクランク角度で滑走車輪35が傾斜面51を動くとする。LがLmaxよりも大きい場合、全てのクランク角度で滑走車輪35が水平な床面52を動く。つまり、LがLmaxよりも大きい場合、傾斜台50がない構成(
図4の構成)と同じとなり、滑走車輪35の高さが常時一定となる。LがLmin以上、Lmax以下の場合、クランク角度の一部で滑走車輪35が傾斜面51を動き、残りの一部で水平な床面を動く。
【0037】
なお、Lmin、及びLmaxはクランク40及びリンク30の長さによって決まる。XY平面視において、回転軸A、回転軸B、及び回転軸Cが一直線上にあり、ACが最小(AC=BC-AB)となったとき(
図5のB’、及びC’の位置)、かつ、滑走車輪35が傾斜台50の前端と接するときのLがLminとなる。XY平面視において、回転軸A、回転軸B、及び回転軸Cが一直線上にあり、ACが最大(AC=BC+AB)となったとき、かつ、滑走車輪35が傾斜台50の前端と接するときのLがLmaxとなる。
【0038】
以下、傾斜台50の傾斜角度を24.5°した時のシミュレーション結果を
図6~
図11に示す。
図6,
図7は、滑走車輪35が水平な床面を動く場合、つまり、LがLmaxよりも大きい場合を示している。
図8,
図9は、クランク角度の一部で滑走車輪35が傾斜台50を動く場合、つまり、LがLmin以上かつLmax以下の場合を示している。
図10、
図11は、滑走車輪35が常時、傾斜台50を動く場合、つまりLがLminよりも小さい場合を示している。
【0039】
図6、
図8、
図10は、股関節角度、膝関節角度、足関節角度、及びペダル31の角度の変化を示すグラフである。
図6、
図8、
図10において、横軸がクランク角度を示している。
図7、
図9、
図11は、XY平面内における、ステップ(ペダル31)の代表点の軌道を示している。
【0040】
ここでは、Lmax=425.5mmとし、Lmin=259.8mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図6、
図7では、L=450mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図8、
図9では、L=350mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図10、
図11では、L=250mmとしたシミュレーション結果が示されている。
【0041】
図6~
図11に示すように、傾斜台50を前後に移動することで、足関節の可動範囲を変化させることができる。換言すると、ユーザUの足関節の状態に応じて、傾斜台50の前後方向に位置を変えることができる。ユーザUが効果的に足漕ぎ運動を行うことができる。例えば、リハビリ患者や高齢者の場合、足関節の可動範囲が健常者よりも小さくなることがある。このようなユーザに対しては、可動範囲を小さくなるように傾斜台50の前後位置を決定する。さらに、同じユーザUであっても、ユーザUの状態などに応じて、可動範囲を調整することができる。例えば、リハビリ患者の回復度に応じて、可動範囲の調整が可能となる。
【0042】
なお、上記の説明では、傾斜台50を前後に移動することで、足関節の可動範囲を調整したが、調整する方法は、これに限られるものではない。例えば、傾斜角度の異なる複数の傾斜台50を用意してもよい。交換可能な複数の傾斜台50により傾斜角度を調整することができる。ユーザUや補助者などが適切な傾斜角度の傾斜台50に交換することで可動範囲を調整することができる。傾斜台50をより傾斜角度が大きい傾斜台50に交換することで、足関節角度を底屈方向に調整することができる。傾斜台50を傾斜角度がより小さい傾斜台50に交換することで、足関節角度を背屈方向に調整することができる。
【0043】
あるいは、傾斜台50を複数のブロックに分けて、ブロックの数や大きさにより可動範囲を調整しても良い。例えば、複数のブロックを積み上げて行くことで、可動範囲を調整することができる。もちろん、上記の調整方法の2以上を組み合わせて、可動範囲を調整してもよい。
【0044】
なお、図では、傾斜台50の傾斜角度が一定になっていたが、傾斜台50の角度は適宜変化しても良い。例えば、傾斜面51が凹面や凸面などの曲面になっていても良い。つまり、XZ平面視において、傾斜面51が直線になっておらず、二次関数などの曲線になっていてもよい。このようにすることで、足関節角度の可動範囲をより細かく設定することができる。
【0045】
さらに、左右の傾斜台50で前後方向位置、傾斜角度、及び形状の少なくとも一つが異なっていても良い。例えば、左脚のけがをした患者の場合、患脚である左脚は健脚である右脚に比べて、足関節の動作が困難になることがある。この場合、患脚は健脚よりも可動範囲を小さくしてリハビリすることができる。あるいは、患脚は健脚よりも可動範囲を大きくしてリハビリすることができる。
【0046】
なお、上記の説明では、傾斜台50を滑走する滑走部材として滑走車輪35が設けられていたが、滑走車輪35以外の滑走部材を用いても良い。例えば、傾斜台50をスライドするスライド部材を滑走部材として用いても良い。つまり、滑走部材が傾斜台50の上を摺動してもよい。
【0047】
また、傾斜面51や滑走部材の少なくとも一方に摩擦係数の高い材料を用いてもよい。つまり、傾斜面51や滑走部材との間に摩擦による抵抗力を持たせてもよい。これにより、足漕ぎ運動に対する負荷を大きくすることができるため、効果的な運動が可能となる。また、摩擦による抵抗力は方向性を有していてもよい。例えば、滑走部材の前方への移動と、後方への移動とで、抵抗力が異なっていても良い。これにより、足漕ぎ運動に対する負荷をより細かく調整することができる。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態にかかる運動機器100について、
図12を用いて説明する。
図12は、運動機器100の主要部の構成を模式的に示すXY平面図である。本実施の形態では、調整部材38が追加されている。調整部材38以外の構成は、実施の形態1と同様であるため適宜説明を省略する。
【0049】
調整部材38は、ペダル31とリンク30との間に配置されている。調整部材38は、くさび状の部材である。例えば、調整部材38のくさび角度aは25°となっている。ペダル31とリンク30の間に調整部材38を挿入することで、ペダル31を背屈方向に傾けることができる。ペダル31の設置角度に応じて足関節角度が変わるため、実施の形態1よりも足関節を背屈方向に傾けることができる。
【0050】
さらに、角度の異なる複数の調整部材38を用意することで、足関節角度を調整することが可能になる。ユーザUに応じて、補助者等が調整部材38を交換すればよい。例えば、補助者が調整部材38をより大きいくさび角度aの調整部材38に交換することで、足関節をより背屈方向に傾けることができる。もちろん、調整部材38は、足関節角度を底屈方向に傾けるように、設置されていてもよい。例えば、くさび状の調整部材38の挿入方向を反対にすればよい。さらに、調整部材38の形状は、くさび状に限らずに種々の形状とすることができる。
【0051】
以下、傾斜台50の傾斜角度を24.5°とし、くさび角度aを25°した時のシミュレーション結果を
図13~
図18に示す。
図13,
図14は、滑走車輪35が水平な床面を動く場合、つまり、LがLmaxよりも大きい場合を示している。
図14,
図16は、クランク角度の一部で滑走車輪35が傾斜台50を動く場合、つまり、LがLmin以上かつLmax以下の場合を示している。
図17、
図18は、滑走車輪35が常時、傾斜台50を動く場合、つまりLがLminよりも小さい場合を示している。
【0052】
【0053】
ここでは、Lmax=425.5mmとし、Lmin=259.8mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図13、
図14では、L=450mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図15、
図16では、L=350mmとしたシミュレーション結果が示されている。
図17、
図18では、L=250mmとしたシミュレーション結果が示されている。
【0054】
図14、
図16,
図18に示すように、実施の形態1と比して、ペダル31の代表点の位置が変わる。したがって、実施の形態1よりも足関節角度を背屈方向に傾けることができる。このように、調整部材38を設けることで、適切な足関節角度での運動が可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 運動機器
U ユーザ
FT 足
10 椅子
20 本体部
21 回転軸
30 リンク
31 ペダル
35 滑走車輪
38 調整部材
40 クランク
50 傾斜台
51 傾斜面
52 床面