(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車輪位置調整装置
(51)【国際特許分類】
B61B 3/02 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B61B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2020203541
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】荻須 基成
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊人
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 翼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】西川 直
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-62241(JP,A)
【文献】特開2018-118809(JP,A)
【文献】特開2012-131268(JP,A)
【文献】特開2018-75936(JP,A)
【文献】特開2012-66933(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1982175(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0000527(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 3/02,
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、幅方向に離間して配置された一対の走行レールの一方の上面を転動する第1走行車輪と、一対の前記走行レールの他方の上面を転動する第2走行車輪と、一対の前記走行レールとは上下方向の異なる位置に配置された案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、前記第1走行車輪と前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置であって、
前記車両本体に、
前記第1走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するためにシムが挿入される第1シム挿入部と、
前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するために前記シムが挿入される第2シム挿入部と、
前記第1シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第1締結部と、
前記第2シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第2締結部と、が設けられ、
互いに前記幅方向に離間して配置された第1支持レール及び第2支持レールと、
前記第1支持レール及び前記第2支持レールとは前記上下方向の異なる位置に配置された第3支持レールと、
前記第1支持レールを第1基準位置と当該第1基準位置よりも下方の第1下降位置とに昇降させる第1昇降機構と、
前記第2支持レールを第2基準位置と当該第2基準位置よりも下方の第2下降位置とに昇降させる第2昇降機構と、
前記第1基準位置にある前記第1支持レールと前記第2基準位置にある前記第2支持レールと前記第3支持レールとの位置関係が、一対の前記走行レールと前記案内レールとの位置関係と同じになるように、前記第1支持レールと前記第2支持レールと前記第3支持レールとを支持するレール支持部と、
前記第1シム挿入部への前記シムの挿入、及び、前記第2シム挿入部への前記シムの挿入を行うシム挿入ロボットと、
前記第1締結部及び前記第2締結部のそれぞれの締結及び締結解除を行う締結ロボットと、
前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出部と、
前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出部と、
前記第1昇降機構、前記第2昇降機構、前記シム挿入ロボット、及び前記締結ロボットを制御する制御部と、を備え、
前記第1支持レールと前記第2支持レールとの前記幅方向の中間を前記第1支持レール及び前記第2支持レールの延在方向に沿って延びる仮想線を基準軸とし、前記基準軸周りに前記車両が回転する方向を揺動方向とし、前記第1走行車輪が前記第2走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第1側とし、前記第2走行車輪が前記第1走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第2側として、
前記第1支持レールが前記第1下降位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2基準位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールから離間すると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールに載置され、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第2側を向く側面に当接する第1車輪離間状態となり、
前記第1支持レールが前記第1基準位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2下降位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールに載置されると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールから離間し、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第1側を向く側面に当接する第2車輪離間状態となり、
前記制御部は、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出動作を前記第1検出部に実行させ、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出動作を前記第2検出部に実行させ、
更に、前記制御部は、前記締結ロボットにより前記第1締結部を締結解除した状態で、前記第1検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第1シム挿入部に挿入する第1シム挿入動作と、前記締結ロボットにより前記第2締結部を締結解除した状態で、前記第2検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第2シム挿入部に挿入する第2シム挿入動作とを、前記シム挿入ロボットに実行させる、車輪位置調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シム挿入ロボットによる前記第1シム挿入動作の後に、前記第1締結部の締結を前記締結ロボットに実行させ、また、前記シム挿入ロボットによる前記第2シム挿入動作の後に、前記第2締結部の締結を前記締結ロボットに実行させ、
前記制御部は、前記第1シム挿入動作の実行後であって前記第1締結部の締結後に、前記第1走行車輪の位置を検出する第1確認検出動作を前記第1検出部に実行させ、また、前記第2シム挿入動作の実行後であって前記第2締結部の締結後に、前記第2走行車輪の位置を検出する第2確認検出動作を前記第2検出部に実行させる、請求項1に記載の車輪位置調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1シム挿入動作の実行後であって前記第1確認検出動作の実行前に、前記レール支持部に対して前記車両を前記延在方向に走行させる第1走行制御を実行し、また、前記第2シム挿入動作の実行後であって前記第2確認検出動作の実行前に、前記レール支持部に対して前記車両を前記延在方向に走行させる第2走行制御を実行する、請求項2に記載の車輪位置調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記締結ロボットにより前記第1締結部を締結解除した状態で、前記第1シム挿入部に予め設定された基準厚さに形成された基準シムを挿入する第1基準シム挿入動作と、前記締結ロボットにより前記第2締結部を締結解除した状態で、前記第2シム挿入部に前記基準シムを挿入する第2基準シム挿入動作とを、前記シム挿入ロボットに実行させ、
前記制御部は、前記第1検出動作として、前記第1シム挿入部に前記基準シムが挿入された状態で、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪の位置の検出を前記第1検出部に実行させ、前記第2検出動作として、前記第2シム挿入部に前記基準シムが挿入された状態で、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪の位置の検出を前記第2検出部に実行させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪と前記第1支持レールとの距離または当該距離に応じて変化する部分の変化量を検出し、
前記第2検出部は、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪と前記第2支持レールとの距離または当該距離に応じて変化する部分の変化量を検出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【請求項6】
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の駆動力源に電力を供給する電力供給部を備え、
前記車両は、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第2側を向く側面に当接する第1案内位置と、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第1側を向く側面に当接する第2案内位置とに、前記案内車輪の前記幅方向の位置を切り替える切替機構を備え、
前記第3支持レールにおける前記延在方向の一部の領域に、前記案内車輪が前記幅方向に通過可能な切欠き部が形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【請求項7】
前記第1支持レールは、一対の前記走行レールの一方の延長線上に配置され、
前記第2支持レールは、一対の前記走行レールの他方の延長線上に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【請求項8】
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の駆動力源に電力を供給する電力供給部を備え、
前記電力供給部が、前記車両に非接触で電力を供給する給電線であり、
前記給電線は、前記走行レールに沿って配置されると共に、前記第1支持レール及び前記第2支持レールの少なくとも一方にも配置されている、請求項7に記載の車輪位置調整装置。
【請求項9】
前記第1支持レール、前記第2支持レール、前記第3支持レール、前記第1昇降機構、前記第2昇降機構、前記シム挿入ロボット、及び、前記締結ロボットを囲む包囲壁と、
前記包囲壁の内部と外部とを連通する開口部と、
前記開口部を自動で開閉する自動ドアと、を備え、
一対の前記走行レールと、前記第1支持レール及び前記第2支持レールと、により構成される前記車両の走行経路が、前記開口部を通るように設けられ、
前記自動ドアは、前記車両が前記開口部を通過する前に自動で前記開口部を開き、前記車両が前記開口部を通過した後に前記開口部を自動で閉じる、請求項7又は8に記載の車輪位置調整装置。
【請求項10】
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪を前記車両本体に対して着脱する車輪着脱ロボットを備え、
前記制御部は、前記第1車輪離間状態で、前記第1走行車輪の着脱を前記車輪着脱ロボットに行わせ、前記第2車輪離間状態で、前記第2走行車輪の着脱を前記車輪着脱ロボットに行わせ、
前記シム挿入ロボットが、前記車輪着脱ロボットを兼ねている、請求項1から9のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【請求項11】
前記シム挿入ロボットは、前記第1支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第2シム挿入部に前記シムを挿入する第2挿入ユニットと、前記第2支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第1シム挿入部に前記シムを挿入する第1挿入ユニットと、を備え、
前記締結ロボットは、前記第1支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第2締結部の締結及び締結解除を行う第2締結ユニットと、前記第2支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第1締結部の締結及び締結解除を行う第1締結ユニットと、を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の車輪位置調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体と、幅方向に離間して配置された一対の走行レールの一方の上面を転動する第1走行車輪と、一対の前記走行レールの他方の上面を転動する第2走行車輪と、一対の前記走行レールとは上下方向の異なる位置に配置された案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、前記第1走行車輪と前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許第6337528号公報(特許文献1)には、クリーンルーム等の天井スペースを走行する天井走行車が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された天井走行車(2)は、レール(4)を転動する走行車輪(12,20)と、天井走行車が走行経路の分岐点を走行する際にレール(4)に対して側方から接触する案内車輪(22,24)と、を備えている。案内車輪(22,24)は、天井走行車の進行方向を変更する際に用いられている。
【0004】
特許文献1には詳細に記載されていないが、このような技術分野では、車両が、幅方向に離間して配置された一対の走行レール上を走行するように構成されているのが一般的である。そして、走行経路が分岐する分岐区間や走行経路が合流する合流区間では、案内車輪が側方から接触可能な案内レールが設けられており、また、一対の走行レールのうち一方が欠落している。これらの分岐・合流区間では、一対の走行レールのうち当該区間に存在しない走行レールに対応する走行車輪は、浮いた状態となる。そして、当該区間に存在する走行レールの上面を転動する走行車輪と、案内レールの側面を転動する案内車輪とによって、車両が支持される。すなわち、浮いている走行車輪が下降しようとする方向の回転モーメントが案内車輪によって支持される。このように、車両が一対の走行レールによって支持される区間である通常区間と、車両が一方の走行レールと案内レールとによって支持される分岐・合流区間とでは、車両を支持するレールの組み合わせが異なるため、それらのレールによって支持される車両の姿勢も変化することになる。しかし、このような通常区間と分岐・合流区間との移行時に車両の姿勢が大きく変化すると、振動や車輪の摩耗等の原因となるため好ましくない。
【0005】
そこで、通常区間と分岐・合流区間との移行時に車両の姿勢の変化が大きくならないように、一対の走行車輪と案内車輪との位置関係の調整が行われる。従来は、車両本体に対する案内車輪の位置をシムにより調整することで、一対の走行車輪と案内車輪との位置関係を調整していた。そして、このシムによる調整は、人手により行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実状に鑑みて、一対の走行レールのそれぞれを転動する走行車輪と、案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、一対の走行車輪と案内車輪との位置関係の調整を自動で行うことが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両本体と、幅方向に離間して配置された一対の走行レールの一方の上面を転動する第1走行車輪と、一対の前記走行レールの他方の上面を転動する第2走行車輪と、一対の前記走行レールとは上下方向の異なる位置に配置された案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、前記第1走行車輪と前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置であって、
前記車両本体に、
前記第1走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するためにシムが挿入される第1シム挿入部と、
前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するために前記シムが挿入される第2シム挿入部と、
前記第1シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第1締結部と、
前記第2シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第2締結部と、が設けられ、
互いに前記幅方向に離間して配置された第1支持レール及び第2支持レールと、
前記第1支持レール及び前記第2支持レールとは前記上下方向の異なる位置に配置された第3支持レールと、
前記第1支持レールを第1基準位置と当該第1基準位置よりも下方の第1下降位置とに昇降させる第1昇降機構と、
前記第2支持レールを第2基準位置と当該第2基準位置よりも下方の第2下降位置とに昇降させる第2昇降機構と、
前記第1基準位置にある前記第1支持レールと前記第2基準位置にある前記第2支持レールと前記第3支持レールとの位置関係が、一対の前記走行レールと前記案内レールとの位置関係と同じになるように、前記第1支持レールと前記第2支持レールと前記第3支持レールとを支持するレール支持部と、
前記第1シム挿入部への前記シムの挿入、及び、前記第2シム挿入部への前記シムの挿入を行うシム挿入ロボットと、
前記第1締結部及び前記第2締結部のそれぞれの締結及び締結解除を行う締結ロボットと、
前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出部と、
前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出部と、
前記第1昇降機構、前記第2昇降機構、前記シム挿入ロボット、及び前記締結ロボットを制御する制御部と、を備え、
前記第1支持レールと前記第2支持レールとの前記幅方向の中間を前記第1支持レール及び前記第2支持レールの延在方向に沿って延びる仮想線を基準軸とし、前記基準軸周りに前記車両が回転する方向を揺動方向とし、前記第1走行車輪が前記第2走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第1側とし、前記第2走行車輪が前記第1走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第2側として、
前記第1支持レールが前記第1下降位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2基準位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールから離間すると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールに載置され、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第2側を向く側面に当接する第1車輪離間状態となり、
前記第1支持レールが前記第1基準位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2下降位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールに載置されると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールから離間し、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第1側を向く側面に当接する第2車輪離間状態となり、
前記制御部は、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出動作を前記第1検出部に実行させ、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出動作を前記第2検出部に実行させ、
更に、前記制御部は、前記締結ロボットにより前記第1締結部を締結解除した状態で、前記第1検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第1シム挿入部に挿入する第1シム挿入動作と、前記締結ロボットにより前記第2締結部を締結解除した状態で、前記第2検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第2シム挿入部に挿入する第2シム挿入動作とを、前記シム挿入ロボットに実行させる。
【0009】
本構成によれば、第1走行車輪が転動可能なように第1支持レールが構成され、第2走行車輪が転動可能なように第2支持レールが構成され、案内車輪が転動可能なように第3支持レールが構成されている。そのため、車両を、第1支持レール、第2支持レール、及び第3支持レールに沿って走行させて締結ロボット及びシム挿入ロボットによる作業箇所に配置することができる。また、本構成によれば、第1基準位置にある第1支持レールと第2基準位置にある第2支持レールと第3支持レールとの位置関係が、一対の走行レールと案内レールとの位置関係と同じになるように、第1支持レールと第2支持レールと第3支持レールとが支持されている。そして、第1車輪離間状態で第1走行車輪の位置を検出し、第2車輪離間状態で第2走行車輪の位置を検出する。そのため本構成よれば、車両が一対の走行レールの一方と案内レールとによって支持されて走行中の状態と同じ条件で、第1検出部及び第2検出部による走行車輪の位置の検出することができる。そして、制御部がシム挿入ロボット及び締結ロボットを制御して、第1検出部及び第2検出部による検出結果に応じた枚数および厚さのシムを、第1シム挿入部及び第2シム挿入部に挿入して車両本体に対して締結固定する。このように、本構成によれば、人手によらず、シムによる案内車輪の位置の調整を行うことができ、一対の走行車輪と案内車輪との位置関係の調整を自動で行うことが可能となる。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】車両が分岐・合流区間を走行している様子を示す平面図
【
図3】車両が分岐・合流区間を走行している様子を示す走行方向視図
【
図4】車両がリフタを介して保守装置に向かう様子を示す図
【
図12】保持アームが車輪を保持している様子を示す図
【
図13】保持アームがシムを保持している様子を示す図
【
図17】保守装置における処理手順を示すフローチャート
【
図18】車輪交換の処理の工程を示すフローチャート
【
図19】第1走行車輪の交換の処理工程を示すフローチャート
【
図20】第1走行車輪の交換の工程の一部を示す模式図
【
図21】第1走行車輪の交換の工程の一部を示す模式図
【
図22】第1走行車輪の交換の工程の一部を示す模式図
【
図23】第1走行車輪の交換の工程の一部を示す模式図
【
図24】第1走行車輪の交換の工程の一部を示す模式図
【
図25】車輪位置調整の処理工程を示すフローチャート
【
図26】第1走行車輪の位置調整の処理工程を示すフローチャート
【
図27】シム枚数/シム厚さ決定処理の工程を示すフローチャート
【
図28】車輪位置調整処理の工程を示すフローチャート
【
図29】第1走行車輪の位置調整の工程の一部を示す模式図
【
図30】第1走行車輪の位置調整の工程の一部を示す模式図
【
図31】第1走行車輪の位置調整の工程の一部を示す模式図
【
図32】第1走行車輪の位置調整の工程の一部を示す模式図
【
図33】第1走行車輪の位置調整の工程の一部を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車輪交換装置及び車輪位置調整装置としての保守装置が、物品を搬送する車両を備えた物品搬送設備に適用される場合を例示して説明する。
【0013】
図1に示すように、車両8は、物品Gを搬送する物品搬送車として構成されている。物品搬送設備Fには、物品Gの搬送先または搬送元となる搬送対象場所98が複数設けられている。車両8は、搬送対象場所98を搬送先または搬送元として、物品Gを搬送する。ここでは、物品搬送設備Fが半導体製造工場に設けられている場合を例示している。この場合には、車両8は、半導体基板を収容するためのFOUP(Front Opening Unified Pod)を、物品Gとして搬送する。例えば、搬送対象場所98は、物品Gを載置するための載置台98aと、載置台98aに隣接して配置された処理装置98bと、を含む。処理装置98bは、載置台98aに載置された物品G(FOUP)から半導体基板を取り出して、当該半導体基板に対する各種処理を行う。
【0014】
車両8は、物品Gを収容する収容部85と、収容部85と載置台98a(搬送対象場所98)との間で物品Gを移載する移載部86と、を備えている。移載部86は、物品Gを保持可能に構成されている。本例では、移載部86は、物品Gを昇降させるように構成されている。移載部86は、収容部85が載置台98aの上方に位置した状態で、収容部85と載置台98aとの間で物品Gを昇降させることにより当該物品Gの移載を行う。
【0015】
図2に示すように、車両8の走行経路99は、幅方向Yに離間して配置された一対の走行レール96により構成されている。走行経路99には、経路が分岐する分岐区間や経路が合流する合流区間(以下、分岐・合流区間BSとする)が存在する。この分岐・合流区間BSには、一対の走行レール96とは上下方向の異なる位置に配置された案内レール95が設けられている(
図3も参照)。また、分岐・合流区間BSでは、一対の走行レール96のうち一方が欠落している。本例では、一対の走行レール96及び案内レール95は、設備の天井付近に設けられている。車両8は、設備の天井付近を走行して物品Gを搬送する、いわゆる天井搬送車として構成されている。なお、
図2に示す走行レール96の構造が、分岐区間である場合には、車両8は図における下から上に走行し、合流区間である場合には、車両は図における上から下に向かって走行する。
【0016】
図2及び
図3に示すように、車両8は、車両本体80と、一対の走行レール96の一方の上面96Fを転動する第1走行車輪81と、一対の走行レール96の他方の上面96Fを転動する第2走行車輪82と、案内レール95の側面95Fを転動する案内車輪83と、を備えている。第1走行車輪81及び第2走行車輪82のそれぞれは、幅方向Yに沿う軸心まわりに回転するように構成されている。案内車輪83は、上下方向に沿う軸心まわりに回転するように構成されている。また、車両8は、案内車輪83の幅方向Yの位置を切り替える切替機構84を備えている。案内車輪83は、切替機構84によって幅方向Yの位置を切り替えることで、案内レール95における幅方向第1側Y1を向く側面95F及び幅方向第2側Y2を向く側面95Fに対して選択的に当接することが可能に構成されている。なお、「幅方向Y」は、一対の走行レール96が並ぶ方向であり、走行経路99のレイアウトによって変化し得る。また、「幅方向第1側Y1」は、幅方向Yにおける一方側を意味し、「幅方向第2側Y2」は、幅方向Yにおける他方側を意味する。
【0017】
本実施形態では、第1走行車輪81は、幅方向Yの同じ位置において一対の走行レール96の延在方向Xに離間して配置された複数の車輪を含んでいる。また、第2走行車輪82は、幅方向Yの同じ位置において延在方向Xに離間して配置された複数の車輪を含んでいる。換言すれば、車両本体80に対して幅方向第1側Y1に、複数の車輪を含む第1走行車輪81が設けられ、車両本体80に対して幅方向第2側Y2に、複数の車輪を含む第2走行車輪82が設けられている。本実施形態では、案内車輪83についても、幅方向Yの同じ位置において延在方向Xに並ぶ複数の車輪を含んでいる。
【0018】
物品搬送設備Fは、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の駆動力源である走行駆動部M8(図示の例ではモータ)に電力を供給する電力供給部7を備えている。本実施形態では、電力供給部7は、車両8に非接触で電力を供給する給電線70であり、一対の走行レール96に沿って配置されている。これにより車両8は、走行経路99(走行レール96)に沿って走行しながら電力の供給を受けることが可能となっている。
【0019】
車両8が走行経路99における分岐・合流区間BSを走行する場合には、案内車輪83が案内レール95の側面95Fに幅方向Yから当接すると共に、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のうち一方が走行レール96の上面96Fに接触する。第1走行車輪81及び第2走行車輪82のうち他方は、浮いた状態となる。すなわち、車両8が走行経路99における分岐・合流区間BSを走行する場合には、一対の走行レール96のうち一方と案内レール95とで、車両8が支持された状態となる。車両8が走行経路99における分岐・合流区間BS以外の区間(通常区間NS)を走行する場合には、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のそれぞれが、一対の走行レール96のうち対応する走行レール96に接触する。すなわちこの場合には、一対の走行レール96によって車両8が支持された状態となる。なお、本例では、車両8は、上下方向に沿う軸心まわりに回転すると共に一対の走行レール96のそれぞれに対して幅方向Yの内側から当接する補助車輪87を備えている。これにより、車両8を走行経路99に沿って適切に走行させることが可能となっている。
【0020】
ここで
図3に示すように、車両8が走行経路99における分岐・合流区間BSを走行している状態、すなわち、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のうち何れかが浮いている状態では、浮いている走行車輪(浮遊車輪と称する。)が下降しようとする方向の回転モーメントが案内車輪83によって支持される。このときの車両8の姿勢は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のうち走行レール96に接触している方の走行車輪(接触車輪と称する。)と案内車輪83との位置関係によって定まる。詳細には、上記の車両8の姿勢は、案内車輪83の幅方向Yの位置によって定まり、案内車輪83と接触車輪との幅方向Yの距離が近すぎると、車両8は浮遊車輪が低くなる側に傾斜する。従って、案内車輪83の幅方向Yの位置は、案内車輪83と接触車輪との幅方向Yの距離が適切になるように設定されることが好ましい。
【0021】
案内車輪83の幅方向Yの位置調整は、シム9を用いて行われる。詳細には、車両本体80に、第1走行車輪81と案内車輪83との位置関係を調整するためにシム9が挿入される第1シム挿入部91と、第2走行車輪82と案内車輪83との位置関係を調整するためにシム9が挿入される第2シム挿入部92と、が設けられている。第1シム挿入部91は、幅方向Yにおいて、案内車輪83を挟んで第1走行車輪81とは反対側に配置されている。第1シム挿入部91に、適切な枚数および厚さのシム9を挿入することで、案内車輪83の幅方向Yの位置、及び、車両8が案内車輪83によって支持されている状態での第1走行車輪81の上下方向の位置を調整することができ、ひいては、当該状態での車両8の傾きを調整することが可能となる。第2シム挿入部92は、幅方向Yにおいて、案内車輪83を挟んで第2走行車輪82とは反対側に配置されている。第2シム挿入部92に、適切な枚数および厚さのシム9を挿入することで、第2走行車輪82の幅方向Yの位置、及び、車両8が案内車輪83によって支持されている状態での上下方向の位置を調整することができ、ひいては、当該状態での車両8の傾きを調整することが可能となる。なお、本実施形態において「車両8の傾き」とは、一対の走行レール96それぞれの上面96Fを含む仮想面に対する車両8の傾きを意味する。
【0022】
上述のように、車両8は、案内車輪83の幅方向Yの位置を切り替える切替機構84を備えている。本実施形態では、切替機構84は、幅方向Yに沿って移動すると共に案内車輪83を支持する移動支持体84aと、移動支持体84aを駆動する駆動部84m(
図2参照)と、移動支持体84aに対して幅方向Yの両側に配置されて移動支持体84aの移動を規制する一対の規制体84bと、を備えている。例えば案内車輪83が案内レール95における幅方向第1側Y1を向く側面95Fに当接している状態(
図3に示す状態)では、一対の規制体84bのうち幅方向第1側Y1に配置された規制体84bが、案内車輪83を支持する移動支持体84aに対して幅方向第1側Y1(幅方向Yの外側)から当接する。本実施形態では、規制体84bの幅方向Yの位置を調整可能となっており、規制体84bに対して幅方向Yの外側に上述のシム挿入部(第1シム挿入部91又は第2シム挿入部92)が設けられている。本例では、移動支持体84a(案内車輪83)に対して幅方向第1側Y1に設けられた規制体84bに対して幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に隣接して、第2シム挿入部92が配置されている。第2シム挿入部92に適切な枚数および厚さのシム9を挿入することで、規制体84bの幅方向Yの位置を微調整することができ、ひいては、幅方向第1側Y1にある状態の案内車輪83の幅方向Yの位置及び第2走行車輪82の上下方向の位置を調整することができる。そして、案内車輪83に対して幅方向第2側Y2に設けられた規制体84bに対して幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に隣接して、第1シム挿入部91が配置されている。第1シム挿入部91に適切な枚数および厚さのシム9を挿入することで、規制体84bの幅方向Yの位置を微調整することができ、ひいては、幅方向第2側Y2にある状態の案内車輪83の幅方向Yの位置及び第1走行車輪81の上下方向の位置を調整することができる。
【0023】
本実施形態では、車両8には、第1シム挿入部91に挿入されたシム9を車両本体80に対して締結固定する第1締結部910と、第2シム挿入部92に挿入されたシム9を車両本体80に対して締結固定する第2締結部920と、が設けられている。第1締結部910は、複数のボルト孔(不図示)と、それらに挿入される複数のボルト91Bと、を含む。同様に、第2締結部920は、複数のボルト孔(不図示)と、それらに挿入される複数のボルト92Bと、を含む。
【0024】
図4に示すように、物品搬送設備Fは、車両8の保守を行うための保守装置100を備えている。図示の例では、保守装置100は、設備の床面上に設置されている。本例では、物品搬送設備Fは、車両8を昇降させるリフタ97を備えている。車両8は、リフタ97によって天井付近から床面付近へ下降することで、床面上に設置された保守装置100へ向かうことが可能となっている。また、保守が完了した車両8は、リフタ97によって床面付近から天井付近へ上昇することで、保守装置100から物品Gを搬送するための走行経路99へ向かうことが可能となっている。
【0025】
本実施形態では、保守装置100は、車両8の第1走行車輪81及び第2走行車輪82の交換を行う車輪交換装置として構成されていると共に、車両8の第1走行車輪81と第2走行車輪82と案内車輪83との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置として構成されている。すなわち本実施形態では、保守装置100が、「車輪交換装置」及び「車輪位置調整装置」に相当する。
【0026】
図5~
図7に示すように、保守装置100は、互いに幅方向Yに離間して配置された第1支持レール10及び第2支持レール20と、第1支持レール10及び第2支持レール20とは上下方向の異なる位置に配置された第3支持レール30と、を備えている。本実施形態では、第1支持レール10は、第2支持レール20に対して幅方向第1側Y1に配置されている。第2支持レール20は、第1支持レール10に対して幅方向第2側Y2に配置されている。第3支持レール30は、幅方向Yにおける、第1支持レール10と第2支持レール20との間に配置されている。第1支持レール10の上面10Fは、第1走行車輪81が上方から接触することが可能に構成されている。第2支持レール20の上面20Fは、第2走行車輪82が上方から接触することが可能に構成されている。第3支持レール30は、幅方向第1側Y1を向く側面31Fと、幅方向第2側Y2を向く側面32Fと、を備えている。第3支持レール30における幅方向第1側Y1を向く側面31Fは、案内車輪83が幅方向第1側Y1から接触することが可能に構成されている。第3支持レール30における幅方向第2側Y2を向く側面32Fは、案内車輪83が幅方向第2側Y2から接触することが可能に構成されている。
【0027】
保守装置100は、第1支持レール10を第1基準位置Pu1と当該第1基準位置Pu1よりも下方の第1下降位置Pd1とに昇降させる第1昇降機構L1(
図16参照)と、第2支持レール20を第2基準位置Pu2と当該第2基準位置Pu2よりも下方の第2下降位置Pd2とに昇降させる第2昇降機構L2と(
図16参照)、第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30を一体的に支持するレール支持部1と、を備えている。レール支持部1に支持された第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30は、同じ方向に沿って延在している。より詳しくは、第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30は、互いに平行に配置されている。
【0028】
レール支持部1は、第1基準位置Pu1にある第1支持レール10と第2基準位置Pu2にある第2支持レール20と第3支持レール30との位置関係が、一対の走行レール96と案内レール95との位置関係と同じになるように(
図3参照)、第1支持レール10と第2支持レール20と第3支持レール30とを支持するように構成されている。第1支持レール10は、第1基準位置Pu1にある状態で、一対の走行レール96のうち一方に対応した位置に配置されている。第2支持レール20は、第2基準位置Pu2にある状態で、一対の走行レール96のうち他方に対応した位置に配置されている。第3支持レール30は、案内レール95に対応した位置に配置されている。本実施形態では、第1支持レール10は、一対の走行レール96の一方の延長線上に配置され、第2支持レール20は、一対の走行レール96の他方の延長線上に配置されている(
図5参照)。第1支持レール10及び第2支持レール20が延在する方向は、一対の走行レール96の延在方向Xに等しい。すなわち、本明細書における「延在方向X」は、第1支持レール10及び第2支持レール20が延在する方向を意味すると共に、一対の走行レール96が延在する方向を意味する。なお、本実施形態では、第1支持レール10及び第2支持レール20は、リフタ97と保守装置100とをつなぐ部分の走行経路99における一対の走行レール96の延長線上に配置されている。
【0029】
保守装置100は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の駆動力源である走行駆動部M8に電力を供給する電力供給部7を備えている。電力供給部7は、車両8に非接触で電力を供給する給電線70である。この給電線70は、上述の、保守装置100の外部に配置された一対の走行レール96に沿って配置されたものと同じである。すなわち本例では、給電線70は、一対の走行レール96に沿って配置されると共に、第1支持レール10及び第2支持レール20にも配置されている。但し、給電線70は、第1支持レール10及び第2支持レール20の双方に配置されていなくても良く、第1支持レール10及び第2支持レール20の何れか一方のみに配置されていても良い。
【0030】
本実施形態では、保守装置100は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82を車両本体80に対して着脱すると共に、第1シム挿入部91へのシム9の挿入、及び、第2シム挿入部92へのシム9の挿入を行う保持アーム5を備えている。本実施形態では、保持アーム5が、「車輪着脱ロボット」及び「シム挿入ロボット」に相当する。すなわち本実施形態では、車輪着脱ロボットがシム挿入ロボットを兼ね、シム挿入ロボットが車輪着脱ロボットを兼ねている。
【0031】
本実施形態では、保持アーム5は、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に配置された第1側ユニット51と、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に配置された第2側ユニット52と、を備えている。本例では、第1側ユニット51は、第1走行車輪81を車両本体80に対して着脱すると共に、第2シム挿入部92へのシム9の挿入を行うように構成されている。また、第2側ユニット52は、第2走行車輪82を車両本体80に対して着脱すると共に、第1シム挿入部91へのシム9の挿入を行うように構成されている。図示の例では、第1側ユニット51と第2側ユニット52とは、延在方向Xにおいても異なる位置に配置されている。本例では、第1側ユニット51と第2側ユニット52とは、平面視で対角となる位置関係で配置されている。但し、これに限らず、第1側ユニット51と第2側ユニット52との配置は、適宜設定することができる。
【0032】
本実施形態では、第1側ユニット51が、「第1着脱ユニット」及び「第2シム挿入ユニット」に相当する。また、第2側ユニット52が、「第2着脱ユニット」及び「第1シム挿入ユニット」に相当する。すなわち、車輪着脱ロボットとしての保持アーム5は、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に配置されると共に第1走行車輪81の着脱を行う第1着脱ユニット(第1側ユニット51)と、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に配置されると共に第2走行車輪82の着脱を行う第2着脱ユニット(第2側ユニット52)と、を備えている。また、シム挿入ロボットとしての保持アーム5は、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に配置されると共に第2シム挿入部92にシム9を挿入する第2挿入ユニット(第1側ユニット51)と、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に配置されると共に第1シム挿入部91にシム9を挿入する第1挿入ユニット(第2側ユニット52)と、を備えている。
【0033】
保守装置100は、第1締結部910及び第2締結部920のそれぞれの締結及び締結解除を行う締結ロボット6を備えている。本実施形態では、締結ロボット6は、アームにより構成されている。また、締結ロボット6は、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に配置されると共に、第2締結部920の締結及び締結解除を行う第2締結ユニット62と、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に配置されると共に、第1締結部910の締結及び締結解除を行う第1締結ユニット61と、を備えている。図示の例では、第1締結ユニット61と第2締結ユニット62とは、延在方向Xにおいても異なる位置に配置されている。本例では、第1締結ユニット61と第2締結ユニット62とは、平面視で対角となる位置関係で配置されている。但し、これに限らず、第1締結ユニット61と第2締結ユニット62との配置は、適宜設定することができる。
【0034】
本実施形態では、保守装置100は、第1支持レール10、第2支持レール20、第3支持レール30、第1昇降機構L1、第2昇降機構L2、保持アーム5、及び、締結ロボット6を囲む包囲壁Wを備えている。すなわち、包囲壁Wは、レール支持部1、第1昇降機構L1、第2昇降機構L2、車輪着脱ロボット、シム挿入ロボット、及び、締結ロボット6を囲むように構成されている。
図5では、包囲壁Wの内部を平面視で示しているが、包囲壁Wは、上記の各種装置や各種機構等を上方からも囲んでいる。車両8の車輪交換および車輪の位置調整のための作業は、包囲壁Wの内部で行われる。
【0035】
また本実施形態では、保守装置100は、包囲壁Wの内部と外部とを連通する開口部Whと、開口部Whを自動で開閉する自動ドアWdと、を備えている。そして、一対の走行レール96と、第1支持レール10及び第2支持レール20と、により構成される車両8の走行経路99が、開口部Whを通るように設けられている。自動ドアWdは、車両8が開口部Whを通過する前に自動で開口部Whを開き、車両8が開口部Whを通過した後に開口部Whを自動で閉じるように構成されている。このような構成により、車両8が開口部Whを通過する場合には、開口部Whを開いて車両8を包囲壁Wの外部から内部へ、又は、内部から外部へ案内することができる。そして、それ以外の場合には、開口部Whを閉じた状態とすることができるため、包囲壁Wの内部を密閉することができ、包囲壁Wの内部と外部とに亘って粉塵等が往来することを抑制できる。
【0036】
図5に示すように、本実施形態では、保守装置100は、車輪置場Swとシム置場Ssとを備えている。車輪置場Swには、車輪交換の際に用いる車輪が複数配置されている。保持アーム5は、車両8から第1走行車輪81又は第2走行車輪82を取り外した後に、車輪置場Swから新たな車輪を取り出して車両8に装着する。シム置場Ssには、第1シム挿入部91及び第2シム挿入部92に挿入するためのシム9が複数配置されている。本例では、シム置場Ssには、後述する予め設定された基準厚さに形成された基準シム9Sも配置されている。保持アーム5は、車両8における第1シム挿入部91又は第2シム挿入部92からシム9を抜き出した後に、シム置場Ssから新たなシム9を取り出して第1シム挿入部91又は第2シム挿入部92に挿入する。車輪置場Sw及びシム置場Ssは、包囲壁Wの内部に設けられている。
【0037】
上述のように、第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30は、レール支持部1によって一体的に支持されている。
図6及び
図7に示すように、本実施形態では、レール支持部1は、互いに幅方向Yに離間して配置された第1支持台11及び第2支持台12を備えている。
【0038】
第1支持台11は、第2支持台12に対して幅方向第1側Y1に配置されている。また、第1支持台11は、幅方向Yの内側(幅方向第2側Y2)において第1支持レール10を昇降自在に支持している。上述のように、第1支持レール10は、第1昇降機構L1によって昇降するように構成されている。第1昇降機構L1は、例えば、空気圧により動作するエアシリンダを用いて構成し、或いは、モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構やカム機構等を用いて構成することができる。
【0039】
第2支持台12は、第1支持台11に対して幅方向第2側Y2に配置されている。また、第2支持台12は、幅方向Yの内側(幅方向第1側Y1)において第2支持レール20を昇降自在に支持している。上述のように、第2支持レール20は、第2昇降機構L2によって昇降するように構成されている。第2昇降機構L2は、例えば、空気圧により動作するエアシリンダを用いて構成し、或いは、モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構やカム機構等を用いて構成することができる。
【0040】
第1支持レール10と第2支持レール20とは、互いに独立して昇降することが可能に構成されている。第1基準位置Pu1にある第1支持レール10と第2基準位置Pu2にある第2支持レール20とは、同じ高さに配置される。但し、第1下降位置Pd1にある第1支持レール10と第2下降位置Pd2にある第2支持レール20とは、同じ高さに配置されても良いし、異なる高さに配置されても良い。すなわち、第1支持レール10の昇降量と第2支持レール20の昇降量とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0041】
レール支持部1は、第1支持台11と第2支持台12とを連結するフレーム13を備えている。フレーム13は、第1支持レール10と第2支持レール20との幅方向Yの間、より詳細には幅方向Yの中間位置であって、第1支持レール10及び第2支持レール20とは上下方向の異なる位置において、第3支持レール30を支持している。本実施形態では、フレーム13は、第1支持レール10と第2支持レール20との幅方向Yの中間位置であって、第1支持レール10及び第2支持レール20よりも上方において、第3支持レール30を支持している。すなわち本例では、第3支持レール30は、第1支持レール10及び第2支持レール20に対して上方に配置されている。
【0042】
保守装置100は、レール支持部1を保持アーム5に対して延在方向Xに相対移動させる移動機構Mを備えている。移動機構Mは、レール支持部1を延在方向Xに沿って移動させることで、第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30を延在方向Xに沿って移動させる。これにより、移動機構Mは、第1支持レール10、第2支持レール20、及び第3支持レール30の少なくとも2つによって支持された車両8を、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動によらずに延在方向Xに沿って移動させることができる。
【0043】
本実施形態では、移動機構Mは、第1支持台11及び第2支持台12のそれぞれを延在方向Xに沿って案内する直動レールMRと、第1支持台11及び第2支持台12を直動レールMRに沿って一体的に移動させる直動駆動部MMと、を備えている。直動駆動部MMは、例えば、モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構やリニアガイド等を用いて構成される。
【0044】
本実施形態では、保守装置100は、第1支持レール10上における第1走行車輪81の転動、及び第2支持レール20上における第2走行車輪82の転動を規制する規制部4を備えている。規制部4は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を規制する規制姿勢Arと、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を許容する許容姿勢Aaと、に姿勢変更する。
【0045】
例えば
図15は、規制部4が、第1走行車輪81の転動を規制する規制姿勢Arとなっている状態を示している。詳細な図示は省略するが、規制部4は、
図15に示す例と同じようにして、規制姿勢Arになることで第2走行車輪82の転動を規制する。本実施形態では、規制部4は、規制姿勢Arにおいて、第1走行車輪81及び第2走行車輪82に対して延在方向Xに隣接して配置され、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を規制する。また、
図6に示すように、規制部4は、許容姿勢Aaにおいて、第1走行車輪81及び第2走行車輪82に対して延在方向X視で重複しない位置に配置され、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を許容する。本例では、規制部4は、第1支持台11及び第2支持台12の双方に配置され、規制駆動部M4(
図16も参照)によって幅方向Yに出退するように構成されている。これにより、規制部4は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の双方の転動を規制する規制姿勢Arと、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の双方の転動を許容する許容姿勢Aaとに、姿勢変更する。
【0046】
上述のように、車両8は、案内車輪83の幅方向Yの位置を切り替える切替機構84を備えている。
図6に示すように、切替機構84は、案内車輪83が第3支持レール30における幅方向第2側Y2を向く側面32Fに当接する第1案内位置Pg1と、案内車輪83が第3支持レール30における幅方向第1側Y1を向く側面31Fに当接する第2案内位置Pg2とに、案内車輪83の幅方向Yの位置を切り替えるように構成されている。
【0047】
図7に示すように、本実施形態では、第3支持レール30における延在方向Xの一部の領域に、案内車輪83が幅方向Yに通過可能な切欠き部33が形成されている。これにより、切欠き部33を利用して、案内車輪83を第3支持レール30に対して幅方向第1側Y1と幅方向第2側Y2とに亘って移動させることができ、第3支持レール30に対する案内車輪83の幅方向Yの位置の切り替えを適切に行うことができる。
【0048】
ここで、
図8に示すように、第1支持レール10と第2支持レール20との幅方向Yの中間を第1支持レール10及び第2支持レール20の延在方向Xに沿って延びる仮想線を基準軸Axとし、基準軸Ax周りに車両8が回転する方向を揺動方向Rとする。そして、第1走行車輪81が第2走行車輪82に対して下降する場合に車両8が揺動する側を揺動方向第1側R1とし、第2走行車輪82が第1走行車輪81に対して下降する場合に車両8が揺動する側を揺動方向第2側R2とする。上述のように、本実施形態では、第3支持レール30は、第1支持レール10及び第2支持レール20の上方に配置されている。従って本実施形態では、第3支持レール30に対して、幅方向第1側Y1は揺動方向第1側R1に対応しており、幅方向第2側Y2は揺動方向第2側R2に対応している。すなわち、第3支持レール30は、揺動方向第2側R2(幅方向第2側Y2)を向く側面32Fと、揺動方向第1側R1(幅方向第1側Y1)を向く側面31Fと、を有している。上述の案内車輪83は、第1案内位置Pg1にある状態で、第3支持レール30における揺動方向第2側R2を向く側面32Fに当接し(
図9及び
図10参照)、第2案内位置Pg2にある状態で、第3支持レール30における揺動方向第1側R1を向く側面31Fに当接する(
図8参照)。
【0049】
図8に示すように、車両8は、第1支持レール10が第1基準位置Pu1にあると共に第2支持レール20が第2基準位置Pu2にある状態で、第1走行車輪81が第1支持レール10に載置されると共に第2走行車輪82が第2支持レール20に載置される両輪載置状態となる。両輪載置状態では、車両8は、第1支持レール10及び第2支持レール20によって支持される。
【0050】
図9に示すように、車両8は、第1支持レール10が第1下降位置Pd1にあると共に第2支持レール20が第2基準位置Pu2にある状態で、第1走行車輪81が第1支持レール10から離間すると共に第2走行車輪82が第2支持レール20に載置され、案内車輪83が第3支持レール30における揺動方向第2側R2を向く側面32Fに当接する第1車輪離間状態となる。第1車輪離間状態では、車両8は、第2支持レール20及び第3支持レール30によって支持される。
【0051】
本実施形態では、保守装置100は、第1走行車輪81の位置を検出する第1検出部Se1を備えている。
図9に示すように、第1検出部Se1は、車両8が第1車輪離間状態での第1走行車輪81の位置を検出する第1検出動作を実行可能に構成されている。第1検出部Se1は、車両8が第1車輪離間状態での第1走行車輪81と第1支持レール10との距離を検出するように構成されている。これにより、第1検出部Se1は、第1基準位置Pu1に位置した状態での第1支持レール10の上面10Fと、第2基準位置Pu2に位置した状態での第2支持レール20の上面20Fと、を含む仮想面に対する車両8の傾きを検出する。本実施形態では、第1検出部Se1は、第1支持レール10から上方に突出して第1走行車輪81に接触する接触式のセンサにより構成されている。第1検出部Se1は、第1走行車輪81に接触した際の突出量に基づいて、第1走行車輪81と第1支持レール10との距離を検出する。第1支持レール10には、第1検出部Se1が上下方向に通過可能な孔部や切欠き部が形成されていると良い。なお、上記のような構成に限定されることなく、第1検出部Se1は、車両8が第1車輪離間状態での第1走行車輪81と第1支持レール10との距離に代えて、当該距離に応じて変化する車両8の部分の変化量を検出するように構成されていても良い。
【0052】
図10に示すように、車両8は、第1支持レール10が第1基準位置Pu1にあると共に第2支持レール20が第2下降位置Pd2にある状態で、第1走行車輪81が第1支持レール10に載置されると共に第2走行車輪82が第2支持レール20から離間し、案内車輪83が第3支持レール30における揺動方向第1側R1を向く側面31Fに当接する第2車輪離間状態となる。第2車輪離間状態では、車両8は、第1支持レール10及び第3支持レール30によって支持される。
【0053】
本実施形態では、保守装置100は、第2走行車輪82の位置を検出する第2検出部Se2を備えている。
図10に示すように、第2検出部Se2は、車両8が第2車輪離間状態での第2走行車輪82の位置を検出する第2検出動作を実行可能に構成されている。第2検出部Se2は、車両8が第2車輪離間状態での第2走行車輪82と第2支持レール20との距離を検出するように構成されている。これにより、第2検出部Se2は、第1基準位置Pu1に位置した状態での第1支持レール10の上面10Fと、第2基準位置Pu2に位置した状態での第2支持レール20の上面20Fと、を含む仮想面に対する車両8の傾きを検出する。本実施形態では、第2検出部Se2は、第2支持レール20から上方に突出して第2走行車輪82に接触する接触式のセンサにより構成されている。第2検出部Se2は、第2走行車輪82に接触した際の突出量に基づいて、第2走行車輪82と第2支持レール20との距離を検出する。第2支持レール20には、第2検出部Se2が上下方向に通過可能な孔部や切欠き部が形成されていると良い。なお、上記のような構成に限定されることなく、第2検出部Se2は、車両8が第2車輪離間状態での第2走行車輪82と第2支持レール20との距離に代えて、当該距離に応じて変化する車両8の部分の変化量を検出するように構成されていても良い。
【0054】
図11に示すように、本実施形態では、保持アーム5は、複数種類のハンドを付け替え可能に構成されている。保持アーム5は、複数種類のハンドを付け替えることで、用途に応じた機能を果たす。保守装置100は、保持アーム5に取り付けられる複数種類のハンドが配置されたハンド置場Shを備えている(
図5も参照)。
【0055】
本実施形態では、保持アーム5は、車輪を保持する場合とシム9を保持する場合とで、異なる種類のハンドを自動で付け替えるように構成されている。本例では、保持アーム5は、車輪を保持するための車輪ハンドHwと、シム9(及び基準シム9S)を保持するためのシムハンドHsとに、ハンドを付け替え可能に構成されている。そして、車輪ハンドHwとシムハンドHsとが、ハンド置場Shに配置されている。
【0056】
図12に示すように、保持アーム5は、第1走行車輪81、第2走行車輪82、又は車輪置場Swに配置された車輪を保持する場合には、自らに車輪ハンドHwを取り付け、これらの車輪を保持する。このように、車輪ハンドHwは、保持アーム5が第1走行車輪81、第2走行車輪82、又は車輪置場Swに配置された車輪を保持するために用いられる。なお、
図12には、保持アーム5が第1走行車輪81又は第2走行車輪82を保持している例が示されている。
【0057】
図13に示すように、保持アーム5は、第1シム挿入部91に挿入されたシム9又は基準シム9S、第2シム挿入部92に挿入されたシム9又は基準シム9S、シム置場Ssに配置されたシム9又は基準シム9Sを保持する場合には、自らにシムハンドHsを取り付け、これらを保持する。このように、シムハンドHsは、保持アーム5が、シム9又は基準シム9Sを保持するために用いられる。なお、
図13には、保持アーム5がシム9を保持している例が示されている。
【0058】
図14に示すように、本実施形態では、締結ロボット6は、複数種類の締結ハンドHcを付け替え可能に構成されている。締結ロボット6は、複数種類の締結ハンドHcを付け替えることで、形状や大きさの異なる締結部の締結及び締結解除を行うことが可能に構成されている。保守装置100は、締結ロボット6に取り付けられる複数種類の締結ハンドHcが配置された締結ハンド置場Scを備えている(
図5も参照)。
【0059】
本実施形態では、シム9を車両本体80に締結固定するための第1締結部910又は第2締結部920の締結及び締結解除を行う場合と、車両本体80に対して第1走行車輪81を固定するための固定部810及び車両8に対して第2走行車輪82を固定するための固定部820の締結及び締結解除を行う場合とで、異なる種類の締結ハンドHcを自動で付け替えるように構成されている。本例では、締結ハンドHcは、第1締結部910のボルト91B及び第2締結部920のボルト92Bの形状等に対応したナットランナーと、固定部810,820のボルト81B,82Bの形状等に対応したナットランナーとの、少なくとも2種類を含む。そして、複数種類の締結ハンドHc、本例では少なくとも2種類のナットランナーが、締結ハンド置場Scに配置されている。
【0060】
図15は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の固定部810,820を示している。本実施形態では、固定部810,820は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82それぞれの回転軸を基準とした周方向に複数配置されたボルト孔(不図示)と、それらに挿入されるボルト81B,82Bと、を含む。締結ロボット6は、固定部810,820の締結及び締結解除を行う場合には、当該固定部810,820に対応した締結ハンドHcを自らに取り付け、複数のボルト81B,82Bのそれぞれの締結又は締結解除を行う。
【0061】
また、詳細な図示は省略するが、締結ロボット6は、第1締結部910の締結及び締結解除を行う場合には、当該第1締結部910のボルト91Bに対応した締結ハンドHcを自らに取り付け、車両本体80に複数配置されたボルト91Bのそれぞれの締結又は締結解除を行う。なお、締結ロボット6が第2締結部920の締結及び締結解除を行う場合も同様である。
【0062】
ここで、
図5に示すように、本実施形態では、保守装置100は、保持アーム5に対して延在方向Xの異なる位置に配置され、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の車両本体80への固定部810,820を撮影する撮影部Cを備えている。本例では、撮影部Cは、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側(幅方向第1側Y1)に配置され、第1走行車輪81の固定部810を撮影する第1カメラC1と、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側(幅方向第2側Y2)に配置され、第2走行車輪82の固定部820を撮影する第2カメラC2と、を備えている。図示の例では、第1カメラC1は、第1支持レール10よりも幅方向Yの外側において、延在方向Xにおける第1側ユニット51と第2締結ユニット62との間に配置されている。第2カメラC2は、第2支持レール20よりも幅方向Yの外側において、延在方向Xにおける第2側ユニット52と第1締結ユニット61との間に配置されている。
【0063】
本実施形態では、第1走行車輪81及び第2走行車輪82それぞれの固定部810,820の状態は、それぞれの車輪が転動することで変化する。詳細には、上述のように本例では、固定部810,820は、周方向に複数配置されたボルト孔(不図示)及びそれらに挿入されるボルト81B,82Bを含んでいる。そのため、第1走行車輪81及び第2走行車輪82が転動することで、ボルト孔及びボルト81B,82Bの周方向位置が変化する。
【0064】
本実施形態では、第1走行車輪81の転動を規制部4により規制した状態で、第1走行車輪81の固定部810を撮影部Cにより撮影し、その後、レール支持部1を延在方向Xに移動させることで第1走行車輪81の固定部810を締結ロボット6による作業位置まで移動させる。このレール支持部1の移動中には第1走行車輪81は転動していないため、第1走行車輪81の固定部810、すなわち複数のボルト孔及びボルト81Bの周方向位置は、撮影部Cにより撮影された際の状態を維持している。締結ロボット6は、撮影部Cにより撮影された画像に基づいて、複数のボルト孔及びボルト81Bの周方向位置を把握可能となっている。これにより、締結ロボット6による固定部810の締結及び締結解除を適切に行うことができる。第2走行車輪82の固定部820の締結及び締結解除についても、上記同様に、規制部4による第2走行車輪82の転動の規制、撮影部Cによる固定部820の撮影、及びレール支持部1による第2走行車輪82の移動を利用して行われる。
【0065】
次に、物品搬送設備F及び保守装置100の制御構成について説明する。
【0066】
図16に示すように、車両8は、当該車両8の各部を制御する車両制御装置8Cを備えている。本実施形態では、車両制御装置8Cは、走行駆動部M8、切替機構84、及び移載部86を制御する。保守装置100は、当該保守装置100の各部を制御する保守制御装置100Cを備えている。保守制御装置100Cは、第1昇降機構L1、第2昇降機構L2、保持アーム5、及び締結ロボットを制御する。本実施形態では、保守制御装置100Cは、上記に加えて、規制駆動部M4、移動機構M、自動ドアWd、第1検出部Se1、及び第2検出部Se2を制御する。本実施形態では、保守制御装置100Cが、「制御部」に相当する。
【0067】
車両制御装置8Cと保守制御装置100Cとは、互いに通信可能に構成されている。車両制御装置8C及び保守制御装置100Cは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0068】
保守制御装置100Cは、車両8の第1車輪離間状態(
図9参照)で、第1走行車輪81の着脱を保持アーム5に行わせ、車両8の第2車輪離間状態(
図10参照)で、第2走行車輪82の着脱を保持アーム5に行わせる。これにより、車輪交換装置としての保守装置100は、第1走行車輪81の車輪交換および第2走行車輪82の車輪交換を自動で行う。
【0069】
また、保守制御装置100Cは、車両8の第1車輪離間状態での第1走行車輪81の位置を検出する第1検出動作を第1検出部Se1に実行させ、車両8の第2車輪離間状態での第2走行車輪82の位置を検出する第2検出動作を第2検出部Se2に実行させる。そして、保守制御装置100Cは、締結ロボット6により第1締結部910を締結解除した状態で、第1検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さのシム9を第1シム挿入部91に挿入する第1シム挿入動作と、締結ロボット6により第2締結部920を締結解除した状態で、第2検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さのシム9を第2シム挿入部92に挿入する第2シム挿入動作とを、保持アーム5に実行させる。これにより、車輪位置調整装置としての保守装置100は、シム9による案内車輪83の幅方向Yの位置を調整することで、第1走行車輪81の上下方向の位置および第2走行車輪82の上下方向の位置を調整し、案内車輪83と第1走行車輪81の位置関係、及び、案内車輪83と第2走行車輪82との位置関係の調整を自動で行う。
【0070】
次に、保守装置100が行う各工程について説明する。
【0071】
図17に示すように、保守対象となる車両8が保守装置100の前に移動してきた場合に、自動ドアWdを開放する(#1)。車両8は、包囲壁Wの開口部Whから包囲壁Wの内部に進入し(#2)、第1支持レール10及び第2支持レール20上で停止する。車両8の進入後、自動ドアWdを閉鎖する(#3)。規制部4が規制姿勢Arとなって第1支持レール10上での第1走行車輪81の転動及び第2支持レール20上での第2走行車輪82の転動を規制する(#4)。その後、保守装置100は、車両8の車輪交換を行い(#5)、車両8の車輪位置調整を行う(#6)。
【0072】
図18は、
図17に示すステップ#5における車輪交換の工程を示している。本実施形態では、保守装置100は、交換対象である全ての第1走行車輪81を交換し(#51)、その後に、交換対象である全ての第2走行車輪82を交換する(#52)。これにより、車両本体80に設けられた全ての第1走行車輪81及び第2走行車輪82を交換する場合に、切替機構84によって案内車輪83の位置を切り替える回数を少なくすることができる。
【0073】
以下、
図19を主に参照して、上記ステップ#51における第1走行車輪81の交換を行う場合の各工程について説明する。第2走行車輪82の交換を行う場合の各工程については、第1走行車輪81の交換を行う場合の各工程と共通又は対応しているため、詳細な説明を省略する。
【0074】
第1走行車輪81の交換を行う場合、まず、切替機構84によって案内車輪83を第1案内位置Pg1に配置する(#51-1)。これにより、案内車輪83を、第3支持レール30に対して幅方向第2側Y2に配置する。
図20に示すように、第1案内位置Pg1の案内車輪83は、幅方向Yにおいて、第3支持レール30を挟んで第1走行車輪81とは反対側に配置される。
【0075】
その後、第1走行車輪81の転動を規制部4により規制した状態で、移動機構Mによってレール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる(#51-2)。詳細には、
図21に示すように、第1走行車輪81が第1カメラC1に対して対向する位置まで、レール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる。そして、第1カメラC1によって第1走行車輪81の固定部810を撮影する(#51-3)。その後、第1走行車輪81の転動を規制部4により規制した状態で、移動機構Mによってレール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる(#51-4)。詳細には、
図22に示すように、第1走行車輪81が第1側ユニット51に対向する位置まで、レール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる。そして、第1側ユニット51によって第1走行車輪81を保持すると共に、当該第1走行車輪81に対して幅方向Yの反対側に配置された第2走行車輪82を第2側ユニット52によって保持する(#51-5)。ここで本例では、幅方向Yに並ぶ第1走行車輪81と第2走行車輪82とは、一体回転するように構成されている。上記のように、作業の対象となる第1走行車輪81に対して幅方向Yの反対側に配置された第2走行車輪82を保持することで、作業中に第1走行車輪81が回転することを抑制でき、作業が行い易くなる。
【0076】
次に、第1走行車輪81及び第2走行車輪82を保持した状態で、第2締結ユニット62によって第1走行車輪81の固定部810の締結解除を行う(#51-6)。
図22に示すように、本例では、第1側ユニット51により第1走行車輪81を保持すると共に第2側ユニット52により第2走行車輪82を保持した状態で、第2締結ユニット62により第1走行車輪81の固定部810の締結解除を行う。
【0077】
次に、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を下降させる(#51-7)。詳細には、
図23に示すように、第1支持レール10を下降させることで第1下降位置Pd1に配置する。これにより、車両8を第1車輪離間状態とする。
【0078】
次に、第1走行車輪81を車両本体80から取り外し(#51-8)、その後、新たな第1走行車輪81を車両本体80に取り付ける(#51-9)。すなわち、車両8の第1車輪離間状態で、第1走行車輪81の交換を行う。詳細には、
図24に示すように、第1側ユニット51によって第1走行車輪81を車両本体80から取り外し、その後、車輪置場Swにある新たな第1走行車輪81を第1側ユニット51によって車両本体80に取り付ける。本例では、交換対象となる第1走行車輪81に対して幅方向Yの反対側に配置された第2走行車輪82を第2側ユニット52により保持した状態で、第1走行車輪81の交換を行う。
【0079】
新たな第1走行車輪81を車両本体80に取り付けた後、移動機構Mによってレール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる(#51-10)。詳細には、
図21に示すように、第1走行車輪81が第1カメラC1に対して対向する位置まで、レール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる。そして、ステップ#51-9によって取り付けられた新たな第1走行車輪81の固定部810を、第1カメラC1によって撮影する(#51-11)。その後、第1走行車輪81の転動を規制部4により規制した状態で、移動機構Mによってレール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる(#51-12)。詳細には、
図22に示すように、第1走行車輪81が第1側ユニット51に対向する位置まで、レール支持部1を延在方向Xに沿って移動させる。そして、第1側ユニット51によって新たな第1走行車輪81を保持すると共に、当該第1走行車輪81に対して幅方向Yの反対側に配置された第2走行車輪82を第2側ユニット52によって保持する(#51-13)。
【0080】
新たな第1走行車輪81、及び第2走行車輪82を保持した後は、第2締結ユニット62によって当該第1走行車輪81の固定部810の締結を行う(#51-14)。
図22に示すように、本例では、第1側ユニット51により新たな第1走行車輪81を保持すると共に第2側ユニット52により第2走行車輪82を保持した状態で、第2締結ユニット62により当該第1走行車輪81の固定部810の締結を行う。
【0081】
第1走行車輪81の固定部810を締結した後は、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を上昇させる(#51-15)。詳細には、
図20に示すように、第1支持レール10を上昇させることで第1基準位置Pu1に配置する。これにより、車両8を両輪載置状態とする。
【0082】
以上のようにして、保守装置100は、第1走行車輪81の交換を行う。保守装置100は、第2走行車輪82の交換を行う場合には、車両8を第2車輪離間状態とする工程を行い、第2側ユニット52によって第2走行車輪82を車両本体80から取り外すと共に新たな第2走行車輪82を車両本体80に取り付ける。第2走行車輪82の交換を行う場合には、切替機構84によって案内車輪83を第1案内位置Pg1から第2案内位置Pg2に移動させる。本実施形態では、案内車輪83が第3支持レール30の切欠き部33に対応する位置に配置されるように、車両8を延在方向Xに移動させ、当該位置において案内車輪83を第3支持レール30に対して幅方向第2側Y2から幅方向第1側Y1に移動させる。その後、案内車輪83が第3支持レール30の切欠き部33が存在しない位置に配置されるように、車両8を延在方向Xに再び移動させる。これにより、車両8を第2車輪離間状態とすることが可能となる。
【0083】
図25は、
図17に示すステップ#6における車輪位置調整の工程を示している。本実施形態では、保守装置100は、第1走行車輪81の位置調整を行い(#61)、その後、第2走行車輪82の位置調整を行う(#62)。
【0084】
第1走行車輪81の位置調整を行う場合、保守制御装置100Cは、第1シム挿入部91からシム9を抜去する第1シム抜去動作、第1シム挿入部91にシム9を挿入する第1シム挿入動作、予め設定された基準厚さに形成された基準シム9Sを第1シム挿入部91に挿入する第1基準シム挿入動作、及び、基準シム9Sを第1シム挿入部91から抜去する第1基準シム抜去動作を、第2側ユニット52(シム挿入ロボット)に実行させる。また、第1走行車輪81の位置調整を行う場合、保守制御装置100Cは、車両8が第1車輪離間状態での第1走行車輪81の位置を検出する第1検出動作を、第1検出部Se1に実行させる。
【0085】
また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合、保守制御装置100Cは、第2シム挿入部92からシム9を抜去する第2シム抜去動作、第2シム挿入部92にシム9を挿入する第2シム挿入動作、基準シム9Sを第2シム挿入部92に挿入する第2基準シム挿入動作、及び、基準シム9Sを第2シム挿入部92から抜去する第2基準シム抜去動作を、第1側ユニット51(シム挿入ロボット)に実行させる。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合、保守制御装置100Cは、車両8が第2車輪離間状態での第2走行車輪82の位置を検出する第2検出動作を、第2検出部Se2に実行させる。
【0086】
図26は、
図25に示すステップ#61における第1走行車輪81の位置調整の工程を示している。本実施形態では、保守装置100は、第1シム挿入部91に挿入するシム9の枚数及び厚さを決定するシム枚数/シム厚さ決定処理を実行し(#611)、その後、第1走行車輪81の位置を調整する車輪位置調整処理を実行する(#612)。なお、図示は省略するが、保守装置100は、第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、第2シム挿入部92に挿入するシム9の枚数及び厚さを決定するシム枚数/シム厚さ決定処理を実行し、その後、第2走行車輪82の位置を調整する車輪位置調整処理を実行する。
【0087】
以下、
図27を主に参照して、
図26に示すステップ#611におけるシム枚数/シム厚さ決定処理を実行する場合の各工程について説明する。以下に説明するシム枚数/シム厚さ決定処理は、第1走行車輪81の位置調整を行う場合の処理である。第2走行車輪82の位置調整を行う場合のシム枚数/シム厚さ決定処理については、第1走行車輪81の位置調整を行う場合の処理と共通又は対応しているため、詳細な説明を省略し、第1走行車輪81に関する説明の中で要点のみを適宜説明する。
【0088】
なお、上述のように、第1走行車輪81と案内車輪83との位置関係を調整するためにシム9が挿入される第1シム挿入部91、第1シム挿入部91に挿入されたシム9を車両本体80に対して締結固定する第1締結部910、及び、第1締結部910の締結/締結解除を行う第1締結ユニット61は、幅方向Yにおいて、第3支持レール30を挟んで第1走行車輪81とは反対側に配置されている(
図29、
図31参照)。換言すれば、第1走行車輪81は、第3支持レール30に対して幅方向第1側Y1に配置されており、第1シム挿入部91、第1締結部910、及び第1締結ユニット61は、第3支持レール30に対して幅方向第2側Y2に配置されている。
【0089】
シム枚数/シム厚さ決定処理では、まず、切替機構84によって案内車輪83を第2案内位置Pg2に配置する(#611-1)。これにより、案内車輪83を、第3支持レール30に対して幅方向第1側Y1に配置する。すなわち
図29(b)に示すように、案内車輪83を、幅方向Yにおいて、第3支持レール30を挟んで第1シム挿入部91とは反対側に配置する。案内車輪83が第3支持レール30を挟んで第1シム挿入部91とは反対側に配置されている状態では、第1シム挿入部91の内部においてシム9又は基準シム9Sが圧迫されないため、第1シム挿入部91に対するシム9及び基準シム9Sの抜去/挿入を円滑に行うことが可能となる。
【0090】
次に、第1締結ユニット61によって第1締結部910の締結解除を行う(#611-2)。そして、第2側ユニット52によって第1シム挿入部91から既存のシム9を抜去する(#611-3:第1シム抜去動作)。その後、
図29(a)(b)にも示すように、第2側ユニット52によって、予め設定された基準厚さに形成された基準シム9Sを第1シム挿入部91に挿入する(#611-4:第1基準シム挿入動作)。このように、保守制御装置100Cは、第1締結ユニット61(締結ロボット6)により第1締結部910を締結解除した状態で、第1基準シム挿入動作を第2側ユニット52(シム挿入ロボット)に実行させる。第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、保守制御装置100Cは、第2締結ユニット62(締結ロボット6)により第2締結部920を締結解除した状態で、第2基準シム挿入動作を第1側ユニット51(シム挿入ロボット)に実行させる。また、本実施形態では、上記のように、保守制御装置100Cは、幅方向Yにおいて第3支持レール30を挟んで第1シム挿入部91とは反対側に案内車輪83を配置した状態で、第1シム挿入部91に対するシム9及び基準シム9Sの抜去/挿入を第2側ユニット52(シム挿入ロボット)に実行させる。第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、保守制御装置100Cは、幅方向Yにおいて第3支持レール30を挟んで第2シム挿入部92とは反対側に案内車輪83を配置した状態で、第2シム挿入部92に対するシム9及び基準シム9Sの抜去/挿入を第1側ユニット51(シム挿入ロボット)に実行させる。
【0091】
第1基準シム挿入動作の実行後は(#611-4)、切替機構84によって案内車輪83を第1案内位置Pg1に配置する(#611-5)。これにより、案内車輪83を、第3支持レール30に対して幅方向第2側Y2に配置する。すなわち、案内車輪83を、幅方向Yにおいて、第3支持レール30に対して第1シム挿入部91と同じ側であって、第3支持レール30を挟んで第1走行車輪81とは反対側に配置する。本実施形態では、案内車輪83が第3支持レール30の切欠き部33に対応する位置に配置されるように、車両8を延在方向Xに移動させ、当該位置において案内車輪83を第3支持レール30に対して幅方向第1側Y1の第2案内位置Pg2から幅方向第2側Y2の第1案内位置Pg1に移動させる。その後、案内車輪83が第3支持レール30の切欠き部33が存在しない位置に配置されるように、車両8を延在方向Xに再び移動させる。以下、切替機構84による案内車輪83の移動は同様に行う。
【0092】
次に、走行駆動部M8によって、レール支持部1上にて車両8を走行させる(#611-6)。これにより、車両8の走行による振動や荷重を利用して、第1シム挿入部91に挿入された基準シム9Sのたわみや隙間を縮小させることができる。なお、車両8を走行させる前には、規制部4を許容姿勢Aaとして第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を許容した状態とする。車両8を走行させた後は、規制部4を規制姿勢Arとして第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を規制した状態とする。
【0093】
次に、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を下降させる(#611-7)。詳細には、第1支持レール10を下降させることで第1下降位置Pd1に配置する。これにより、車両8を第1車輪離間状態とする。そして
図30にも示すように、車両8を第1車輪離間状態とした後、第1検出部Se1に第1検出動作を実行させる(#611-8)。これにより、第1走行車輪81と第1支持レール10との距離を検出する。すなわち、本実施形態では、保守制御装置100Cは、第1検出動作として、第1シム挿入部91に基準シム9Sが挿入された状態で、車両8が第1車輪離間状態での第1走行車輪81の位置の検出を第1検出部Se1に実行させる。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合には、保守制御装置100Cは、第2検出動作として、第2シム挿入部92に基準シム9Sが挿入された状態で、車両8が第2車輪離間状態での第2走行車輪82の位置の検出を第2検出部Se2に実行させる。
【0094】
そして第1検出動作の実行後は(#611-8)、第1検出部Se1による検出結果に基づいて、第1シム挿入部91にシム9を挿入した場合に車両8が第1車輪離間状態で適正姿勢となるようなシム9の枚数及び厚さを算出する(#611-9)。本例では、車両8の第1車輪離間状態において、第1走行車輪81が、第2支持レール20に支持されている第2走行車輪82よりも僅かに上方に位置するようなシム9の枚数及び厚さを算出する。これにより、車輪の位置調整を終えた車両8が、実際に走行経路99を走行して分岐・合流区間BSから通常区間NSに移行する場合に、すなわち第1走行車輪81が走行レール96に支持されない状態から支持される状態に移行する場合に、第1走行車輪81が適切に走行レール96に支持されるようにできると共に移行時の車両8の振動も少なく抑えることができる。
【0095】
第1シム挿入部91に挿入すべきシム9の枚数及び厚さを算出した後は(#611-9)、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を上昇させる(#611-10)。詳細には、第1支持レール10を上昇させることで第1基準位置Pu1に配置して、車両8を両輪載置状態とする。
【0096】
次に、
図28を主に参照して、
図26に示すステップ#612における車輪位置調整処理を実行する場合の各工程について説明する。以下に説明する車輪位置調整処理は、第1走行車輪81の位置調整を行う場合の処理である。第2走行車輪82の位置調整を行う場合の車輪位置調整処理については、第1走行車輪81の位置調整を行う場合の処理と共通又は対応しているため、詳細な説明を省略し、第1走行車輪81に関する説明の中で要点のみを適宜説明する。
【0097】
車輪位置調整処理では、まず、切替機構84によって案内車輪83を第2案内位置Pg2に配置する(#612-1)。これにより、
図29(b)にも示すように、案内車輪83を、幅方向Yにおいて、第3支持レール30を挟んで第1シム挿入部91とは反対側に配置する。そして、
図31(a)(b)にも示すように、第2側ユニット52によって、第1シム挿入部91から既存のシム9を抜去する(#612-2:既存シム抜去動作)。本実施形態では、上記のとおり、事前に第1シム挿入部91に基準シム9Sが挿入されているため、本動作は、基準シム9Sを抜去する第1基準シム抜去動作となる。その後、第2側ユニット52によって、シム枚数/シム厚さ決定処理によって算出した枚数及び厚さのシム9を第1シム挿入部91に挿入する(#612-3:第1シム挿入動作)。
【0098】
次に、切替機構84によって案内車輪83を第1案内位置Pg1に配置する(#612-4)。これにより、案内車輪83を、幅方向Yにおいて、第3支持レール30を挟んで第1走行車輪81とは反対側に配置する。その後、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を下降させ(#612-5)、車両8を第1車輪離間状態とする。そして
図32にも示すように、車両8を第1車輪離間状態とした後、第1検出部Se1に第1検出動作を実行させる(#612-6)。これにより、シム枚数/シム厚さ決定処理によって算出した枚数及び厚さのシム9を第1シム挿入部91に挿入した状態での、第1走行車輪81と第1支持レール10との距離(ここでは誤差の有無)を検出する。第1検出動作の実行後は、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を上昇させ(#612-7)、車両8を両輪載置状態とする。
【0099】
次に、
図33にも示すように、第1締結ユニット61によって第1締結部910の締結を行う(#612-8)。これにより、第1シム挿入部91に挿入されたシム9を車両本体80に対して締結固定する。このように、本実施形態では、保守制御装置100Cは、第2側ユニット52(シム挿入ロボット)による第1シム挿入動作の後に、第1締結部910の締結を第1締結ユニット61(締結ロボット)に実行させる。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合には、保守制御装置100Cは、第1側ユニット51(シム挿入ロボット)による第2シム挿入動作の後に、第2締結部920の締結を第2締結ユニット62(締結ロボット)に実行させる。
【0100】
第1締結部910を締結した後は(#612-8)、走行駆動部M8によって、レール支持部1上にて車両8を走行させる(#612-9)。これにより、車両8の走行による振動や荷重を利用して、第1シム挿入部91に挿入されたシム9のたわみや隙間を縮小させることができる。すなわち、保守制御装置100Cは、第1シム挿入動作の実行後に、レール支持部1に対して車両8を延在方向Xに走行させる第1走行制御を実行する。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、保守制御装置100Cは、第2シム挿入動作の実行後に、レール支持部1に対して車両8を延在方向Xに走行させる第2走行制御を実行する。なお、車両8を走行させる前には、規制部4を許容姿勢Aaとして第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を許容した状態とする。車両8を走行させた後は、規制部4を規制姿勢Arとして第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を規制した状態とする。
【0101】
次に、第1昇降機構L1によって第1支持レール10を下降させ(#612-10)、車両8を第1車輪離間状態とする。そして、車両8を第1車輪離間状態とした後、
図32にも示すように、第1検出部Se1に第1検出動作を実行させる(#612-11:第1確認検出動作)。すなわち、保守制御装置100Cは、第1シム挿入動作の実行後であって第1締結部910の締結後に、第1走行車輪81の位置を検出する第1確認検出動作を第1検出部Se1に実行させる。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、保守制御装置100Cは、第2シム挿入動作の実行後であって第2締結部920の締結後に、第2走行車輪82の位置を検出する第2確認検出動作を第2検出部Se2に実行させる。これにより、車輪位置調整後において、第1走行車輪81又は第2走行車輪82の位置が適正になっているか否かを確認することができる。なお、上記で説明したように、レール支持部1上にて車両8を走行させる第1走行制御は、第1確認検出動作の実行前に行われる。すなわち本実施形態では、保守制御装置100Cは、第1シム挿入動作の実行後であって第1確認検出動作の実行前に、第1走行制御を実行する。また、第2走行車輪82の位置調整を行う場合についても同様に、保守制御装置100Cは、第2シム挿入動作の実行後であって第2確認検出動作の実行前に、第2走行制御を実行する。
【0102】
第1確認検出動作の実行後は(#612-11)、第1走行車輪81の位置が規定範囲内であるか否かを判断する(#612-12)。ここでは、第1走行車輪81の上下方向の位置が規定範囲内であるか否かを検出し、規定範囲内である場合には、第1車輪離間状態での車両8の傾きが許容範囲であると判断でき、規定範囲外である場合には、第1車輪離間状態での車両8の傾きが許容範囲外であると判断する。
【0103】
第1走行車輪81の位置が規定範囲内であると判断した場合には(#612-12:Yes)、車輪位置調整処理を終了する。一方、第1走行車輪81の位置が規定範囲外であると判断した場合には(#612-12:No)、第1確認検出動作による検出結果に基づいて、第1走行車輪81の位置が規定範囲内に収まるようなシム9の枚数及び厚さを再算出する(#612-13)。その後、第1昇降機構L1により第1支持レール10を上昇させ(#612-14)、車両8を両輪載置状態とする。そして、切替機構84により案内車輪83を第2案内位置Pg2に配置する(#612-15)。その後は、ステップ#612-3の工程に戻る。なお、第1シム挿入部91に挿入したシム9の枚数が適正枚数よりも多い場合やシム9の厚みが適正厚さよりも厚い場合などには、シム9の枚数及び厚さを再算出した後のステップ#612-3では、上記のような不適正のシム9を抜去する動作も行う。
【0104】
〔その他の実施形態〕
次に、車輪位置調整装置のその他の実施形態について説明する。
【0105】
(1)上記の実施形態では、保守装置100が、交換対象である全ての第1走行車輪81を交換した後に、交換対象である全ての第2走行車輪82を交換する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、交換の順番は上記とは逆であっても良い。すなわち、保守装置100は、交換対象である全ての第2走行車輪82を交換した後に交換対象である全ての第1走行車輪81を交換しても良い。また、第1走行車輪81及び第2走行車輪82がそれぞれ複数ある場合には、第1走行車輪81と第2走行車輪82とを交互に交換しても良い。
【0106】
(2)上記の実施形態では、保守装置100は、第1走行車輪81の位置調整を行った後に第2走行車輪82の位置調整を行う例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、位置調整の順番は上記とは逆であっても良い。すなわち、保守装置100は、第2走行車輪82の位置調整を行った後に第1走行車輪81の位置調整を行っても良い。また、第1走行車輪81及び第2走行車輪82がそれぞれ複数ある場合には、第1走行車輪81と第2走行車輪82とを交互に位置調整しても良い。
【0107】
(3)上記の実施形態では、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のそれぞれが、複数の車輪を含んでいる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、車両8は、第1走行車輪81及び第2走行車輪82のそれぞれを1つずつ備えた構成であっても良い。
【0108】
(4)上記の実施形態では、電力供給部7が、車両8に非接触で電力を供給する給電線70である例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、電力供給部7は、例えば、車両8に搭載されるバッテリなどであっても良い。
【0109】
(5)上記の実施形態では、保守装置100が、第1支持レール10、第2支持レール20、第3支持レール30、第1昇降機構L1、第2昇降機構L2、保持アーム5、及び、締結ロボット6を囲む包囲壁Wを備えている例について説明した。しかし、保守装置100は、このような包囲壁Wを備えていなくても良い。
【0110】
(6)上記の実施形態では、第3支持レール30が、第1支持レール10及び第2支持レール20に対して上方に配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第3支持レール30は、例えば第1支持レール10及び第2支持レール20に対して下方に配置されていても良い。この場合、第3支持レール30に対して、揺動方向第1側R1が幅方向第2側Y2に対応し、揺動方向第2側R2が幅方向第1側Y1に対応することになる。
【0111】
(7)上記の実施形態では、第1検出部Se1及び第2検出部Se2の双方が、接触式のセンサにより構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1検出部Se1及び第2検出部Se2は、例えば光センサなどの、接触式センサとは異なる構造のセンサにより構成されていても良い。
【0112】
(8)上記の実施形態では、保守装置100が、第1走行車輪81の転動、及び第2走行車輪82の転動を規制する規制部4を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、保守装置100は、上記のような規制部4を備えていなくても良い。この場合には、例えば、車両8が備えるブレーキ機構等により第1走行車輪81及び第2走行車輪82の転動を規制する構成としても良い。
【0113】
(9)上記の実施形態では、第3支持レール30における延在方向Xの一部の領域に、案内車輪83が幅方向Yに通過可能な切欠き部33が形成されている例について説明した。しかし、第3支持レール30には、上記のような切欠き部33は形成されていなくても良く、第3支持レール30は延在方向Xに沿って連続的に形成されていても良い。第3支持レール30がこのように構成されている場合、切替機構84によって案内車輪83の幅方向Yの位置を切り替える場合には、案内車輪83が第3支持レール30の端部よりも延在方向Xの外側に配置されるように、車両8を延在方向Xに移動させ、当該位置において案内車輪83を第3支持レール30に対して幅方向Yに移動させる制御を行うと良い。
【0114】
(10)上記の実施形態では、保守装置100が、保持アーム5及び締結ロボット6に対して延在方向Xの異なる位置に配置され、第1走行車輪81及び第2走行車輪82の車両本体80への固定部810,820を撮影する撮影部Cを備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、撮影部Cは、固定部810,820ではなく、第1走行車輪81及び第2走行車輪82を撮影するように構成されていても良い。この場合、例えば、第1走行車輪81の固定部810に対応した位置に、記号、図形、文字、色彩、又はそれらの組み合わせから成る目印を設け、撮影部Cは、当該目印を撮影するように構成されていても良い。これにより、目印を介して固定部810の位置を把握することが可能となる。第2走行車輪82の固定部820についても同様に構成することができる。また、撮影部Cの配置位置は、上記の例に限定されることなく適宜設定することができる。例えば、撮影部Cは、保持アーム5に対して延在方向Xの同じ位置に配置されていても良い。或いは、撮影部Cは、締結ロボット6に取り付けられていても良い。このようにすれば、撮影部Cにより撮影された画像を参照しながら、締結ロボット6による締結及び締結解除を行うことができる。なお、保守装置100は、撮影部C自体を備えていなくても良い。
【0115】
(11)上記の実施形態では、基準シム9Sを用いて、車両8が第1車輪離間状態又は第2車輪離間状態において適正姿勢となるようなシム9の枚数及び厚さを算出する例について説明した。しかし、基準シム9Sは用いなくても良い。この場合、上記において説明した基準シム9Sに関する各動作は省略することができる。
【0116】
(12)上記の実施形態では、第1走行制御、第2走行制御、第1確認検出動作、及び第2確認検出動作を実行する例について説明したが、これらの各動作は必須の動作ではない。従って、これらの動作の一部又は全部を実行しなくても良い。
【0117】
(13)上記の実施形態では、保守装置100が、車両8の第1走行車輪81及び第2走行車輪82の交換を行う車輪交換装置として構成されていると共に、車両8の第1走行車輪81と第2走行車輪82と案内車輪83との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置として構成されている例について説明した。しかし、保守装置100は、車輪位置調整装置として構成されていれば良く、車輪交換装置としては構成されていてなくても良い。この場合、保守装置100は、第1走行車輪81の車輪交換及び第2走行車輪82の車輪交換を行うための各種装置及び各種機能は備えていなくても良い。
【0118】
(14)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0119】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車輪位置調整装置について説明する。
【0120】
車両本体と、幅方向に離間して配置された一対の走行レールの一方の上面を転動する第1走行車輪と、一対の前記走行レールの他方の上面を転動する第2走行車輪と、一対の前記走行レールとは上下方向の異なる位置に配置された案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、前記第1走行車輪と前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置であって、
前記車両本体に、
前記第1走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するためにシムが挿入される第1シム挿入部と、
前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係を調整するために前記シムが挿入される第2シム挿入部と、
前記第1シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第1締結部と、
前記第2シム挿入部に挿入された前記シムを前記車両本体に対して締結固定する第2締結部と、が設けられ、
互いに前記幅方向に離間して配置された第1支持レール及び第2支持レールと、
前記第1支持レール及び前記第2支持レールとは前記上下方向の異なる位置に配置された第3支持レールと、
前記第1支持レールを第1基準位置と当該第1基準位置よりも下方の第1下降位置とに昇降させる第1昇降機構と、
前記第2支持レールを第2基準位置と当該第2基準位置よりも下方の第2下降位置とに昇降させる第2昇降機構と、
前記第1基準位置にある前記第1支持レールと前記第2基準位置にある前記第2支持レールと前記第3支持レールとの位置関係が、一対の前記走行レールと前記案内レールとの位置関係と同じになるように、前記第1支持レールと前記第2支持レールと前記第3支持レールとを支持するレール支持部と、
前記第1シム挿入部への前記シムの挿入、及び、前記第2シム挿入部への前記シムの挿入を行うシム挿入ロボットと、
前記第1締結部及び前記第2締結部のそれぞれの締結及び締結解除を行う締結ロボットと、
前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出部と、
前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出部と、
前記第1昇降機構、前記第2昇降機構、前記シム挿入ロボット、及び前記締結ロボットを制御する制御部と、を備え、
前記第1支持レールと前記第2支持レールとの前記幅方向の中間を前記第1支持レール及び前記第2支持レールの延在方向に沿って延びる仮想線を基準軸とし、前記基準軸周りに前記車両が回転する方向を揺動方向とし、前記第1走行車輪が前記第2走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第1側とし、前記第2走行車輪が前記第1走行車輪に対して下降する場合に前記車両が揺動する側を揺動方向第2側として、
前記第1支持レールが前記第1下降位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2基準位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールから離間すると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールに載置され、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第2側を向く側面に当接する第1車輪離間状態となり、
前記第1支持レールが前記第1基準位置にあると共に前記第2支持レールが前記第2下降位置にある状態で、前記第1走行車輪が前記第1支持レールに載置されると共に前記第2走行車輪が前記第2支持レールから離間し、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第1側を向く側面に当接する第2車輪離間状態となり、
前記制御部は、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪の位置を検出する第1検出動作を前記第1検出部に実行させ、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪の位置を検出する第2検出動作を前記第2検出部に実行させ、
更に、前記制御部は、前記締結ロボットにより前記第1締結部を締結解除した状態で、前記第1検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第1シム挿入部に挿入する第1シム挿入動作と、前記締結ロボットにより前記第2締結部を締結解除した状態で、前記第2検出動作による検出結果に応じた枚数および厚さの前記シムを前記第2シム挿入部に挿入する第2シム挿入動作とを、前記シム挿入ロボットに実行させる。
【0121】
本構成によれば、第1走行車輪が転動可能なように第1支持レールが構成され、第2走行車輪が転動可能なように第2支持レールが構成され、案内車輪が転動可能なように第3支持レールが構成されている。そのため、車両を、第1支持レール、第2支持レール、及び第3支持レールに沿って走行させて締結ロボット及びシム挿入ロボットによる作業箇所に配置することができる。また、本構成によれば、第1基準位置にある第1支持レールと第2基準位置にある第2支持レールと第3支持レールとの位置関係が、一対の走行レールと案内レールとの位置関係と同じになるように、第1支持レールと第2支持レールと第3支持レールとが支持されている。そして、第1車輪離間状態で第1走行車輪の位置を検出し、第2車輪離間状態で第2走行車輪の位置を検出する。そのため本構成よれば、車両が一対の走行レールの一方と案内レールとによって支持されて走行中の状態と同じ条件で、第1検出部及び第2検出部による走行車輪の位置の検出することができる。そして、制御部がシム挿入ロボット及び締結ロボットを制御して、第1検出部及び第2検出部による検出結果に応じた枚数および厚さのシムを、第1シム挿入部及び第2シム挿入部に挿入して車両本体に対して締結固定する。このように、本構成によれば、人手によらず、シムによる案内車輪の位置の調整を行うことができ、一対の走行車輪と案内車輪との位置関係の調整を自動で行うことが可能となる。
【0122】
ここで、
前記制御部は、前記シム挿入ロボットによる前記第1シム挿入動作の後に、前記第1締結部の締結を前記締結ロボットに実行させ、また、前記シム挿入ロボットによる前記第2シム挿入動作の後に、前記第2締結部の締結を前記締結ロボットに実行させ、
前記制御部は、前記第1シム挿入動作の実行後であって前記第1締結部の締結後に、前記第1走行車輪の位置を検出する第1確認検出動作を前記第1検出部に実行させ、また、前記第2シム挿入動作の実行後であって前記第2締結部の締結後に、前記第2走行車輪の位置を検出する第2確認検出動作を前記第2検出部に実行させる、と好適である。
【0123】
本構成によれば、第1シム挿入部及び第2シム挿入部のそれぞれにシムを挿入した後の第1走行車輪及び第2走行車輪の位置を確認することができる。これにより、車輪位置調整後において、第1走行車輪及び第2走行車輪の位置が適正になっているか否かを確認することができる。
【0124】
また、上記構成において、
前記制御部は、前記第1シム挿入動作の実行後であって前記第1確認検出動作の実行前に、前記レール支持部に対して前記車両を前記延在方向に走行させる第1走行制御を実行し、また、前記第2シム挿入動作の実行後であって前記第2確認検出動作の実行前に、前記レール支持部に対して前記車両を前記延在方向に走行させる第2走行制御を実行する、と好適である。
【0125】
本構成によれば、車両の走行による振動や荷重を用いて、第1シム挿入部及び第2シム挿入部に挿入されたシムのたわみや隙間を縮小させることができる。従って、第1確認検出動作及び第2確認検出動作において、実際に車両が走行を開始した後の状態に近い状態で、第1走行車輪及び第2走行車輪の位置を検出することができる。
【0126】
また、
前記制御部は、前記締結ロボットにより前記第1締結部を締結解除した状態で、前記第1シム挿入部に予め設定された基準厚さに形成された基準シムを挿入する第1基準シム挿入動作と、前記締結ロボットにより前記第2締結部を締結解除した状態で、前記第2シム挿入部に前記基準シムを挿入する第2基準シム挿入動作とを、前記シム挿入ロボットに実行させ、
前記制御部は、前記第1検出動作として、前記第1シム挿入部に前記基準シムが挿入された状態で、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪の位置の検出を前記第1検出部に実行させ、前記第2検出動作として、前記第2シム挿入部に前記基準シムが挿入された状態で、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪の位置の検出を前記第2検出部に実行させる、と好適である。
【0127】
本構成によれば、調整前のシムが挿入された状態又はシムが挿入されていない状態で第1検出動作を行う場合に比べて、第1走行車輪の位置の調整必要量を高精度に判定することができる。従って、第1シム挿入部に挿入すべきシムの枚数及び厚さを決定する処理の効率化を図ることができる。同様に、第2走行車輪の位置の調整必要量も高精度に判定することができるため、第2シム挿入部に挿入すべきシムの枚数及び厚さを決定する処理の効率化を図ることができる。
【0128】
また、
前記第1検出部は、前記第1車輪離間状態での前記第1走行車輪と前記第1支持レールとの距離または当該距離に応じて変化する部分の変化量を検出し、
前記第2検出部は、前記第2車輪離間状態での前記第2走行車輪と前記第2支持レールとの距離または当該距離に応じて変化する部分の変化量を検出する、と好適である。
【0129】
本構成によれば、第1支持レールを基準とした第1走行車輪の位置を検出することができる。また、第2支持レールを基準とした第2走行車輪の位置を検出することができる。そのため、第1支持レールに対する第1走行車輪の位置を適切に調整し易く、第2支持レールに対する第2走行車輪の位置を適切に調整し易い。
【0130】
また、
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の駆動力源に電力を供給する電力供給部を備え、
前記車両は、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第2側を向く側面に当接する第1案内位置と、前記案内車輪が前記第3支持レールにおける前記揺動方向第1側を向く側面に当接する第2案内位置とに、前記案内車輪の前記幅方向の位置を切り替える切替機構を備え、
前記第3支持レールにおける前記延在方向の一部の領域に、前記案内車輪が前記幅方向に通過可能な切欠き部が形成されている、と好適である。
【0131】
本構成によれば、切替機構により案内車輪の幅方向の位置を切り替えることによって、案内車輪の姿勢を第1車輪離間状態に適した姿勢と第2車輪離間状態に適した姿勢とに容易に切り替えることが可能となる。また、案内車輪の幅方向の位置の切り替えは、第3支持レールの延在方向における切欠き部が形成された領域に案内車輪が配置されるように車両を配置した状態で、切欠き部を幅方向に通過させるように案内車輪を移動させることで行うことができる。従って、第3支持レールに対する案内車輪の幅方向の位置の切り替えを適切に行うことができる。
【0132】
また、
前記第1支持レールは、一対の前記走行レールの一方の延長線上に配置され、
前記第2支持レールは、一対の前記走行レールの他方の延長線上に配置されている、と好適である。
【0133】
本構成によれば、車両を、一対の走行レールに沿って走行させつつ第1支持レール及び第2支持レールに案内することができる。従って、一対の走行レールを走行する車両を、人手によらず、自動で締結ロボット及びシム挿入ロボットによる作業箇所まで移動させることができる。
【0134】
また、上記構成において、
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪の駆動力源に電力を供給する電力供給部を備え、
前記電力供給部が、前記車両に非接触で電力を供給する給電線であり、
前記給電線は、前記走行レールに沿って配置されると共に、前記第1支持レール及び前記第2支持レールの少なくとも一方にも配置されている、と好適である。
【0135】
本構成によれば、車両が一対の走行レールに沿って走行する場合と第1支持レール及び第2支持レールに沿って走行する場合との双方で、給電線から電力を供給することができる。従って、一対の走行レールと、第1支持レール及び第2支持レールと、に亘って自動走行する車両を実現し易い。
【0136】
また、上記構成において、
前記第1支持レール、前記第2支持レール、前記第3支持レール、前記第1昇降機構、前記第2昇降機構、前記シム挿入ロボット、及び、前記締結ロボットを囲む包囲壁と、
前記包囲壁の内部と外部とを連通する開口部と、
前記開口部を自動で開閉する自動ドアと、を備え、
一対の前記走行レールと、前記第1支持レール及び前記第2支持レールと、により構成される前記車両の走行経路が、前記開口部を通るように設けられ、
前記自動ドアは、前記車両が前記開口部を通過する前に自動で前記開口部を開き、前記車両が前記開口部を通過した後に前記開口部を自動で閉じる、と好適である。
【0137】
本構成によれば、一対の走行車輪と案内車輪との位置の調整が行われる箇所を包囲壁及び自動ドアにより囲むことができ、上記の位置調整の際に発生する粉塵等が包囲壁の外部に出ることを抑制することができる。本構成は、例えば、車両がクリーンルーム等で利用される場合に特に適している。
【0138】
また、
前記第1走行車輪及び前記第2走行車輪を前記車両本体に対して着脱する車輪着脱ロボットを備え、
前記制御部は、前記第1車輪離間状態で、前記第1走行車輪の着脱を前記車輪着脱ロボットに行わせ、前記第2車輪離間状態で、前記第2走行車輪の着脱を前記車輪着脱ロボットに行わせ、
前記シム挿入ロボットが、前記車輪着脱ロボットを兼ねている、と好適である。
【0139】
本構成によれば、車輪着脱ロボットによって、第1走行車輪の交換及び第2走行車輪の交換を行うことができる。また、このような車輪着脱ロボットを、シム挿入ロボットが兼ねているため、装置全体の小型化を図ることができる。
【0140】
また、
前記シム挿入ロボットは、前記第1支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第2シム挿入部に前記シムを挿入する第2挿入ユニットと、前記第2支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第1シム挿入部に前記シムを挿入する第1挿入ユニットと、を備え、
前記締結ロボットは、前記第1支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第2締結部の締結及び締結解除を行う第2締結ユニットと、前記第2支持レールよりも前記幅方向の外側に配置されると共に前記第1締結部の締結及び締結解除を行う第1締結ユニットと、を備える、と好適である。
【0141】
本構成によれば、第1シム挿入部に対するシムの挿入、締結、及び締結解除と、第2シム挿入部に対するシムの挿入、締結、及び締結解除とを、車両の向きを変更することなく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示に係る技術は、車両本体と、幅方向に離間して配置された一対の走行レールの一方の上面を転動する第1走行車輪と、一対の前記走行レールの他方の上面を転動する第2走行車輪と、一対の前記走行レールとは上下方向の異なる位置に配置された案内レールの側面を転動する案内車輪と、を備えた車両における、前記第1走行車輪と前記第2走行車輪と前記案内車輪との位置関係の調整を行う車輪位置調整装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
100 :保守装置(車輪位置調整装置)
100C :保守制御装置(制御部)
1 :レール支持部
5 :保持アーム(シム挿入ロボット)
6 :締結ロボット
7 :電力供給部
8 :車両
9 :シム
9S :基準シム
10 :第1支持レール
10F :上面
20 :第2支持レール
20F :上面
30 :第3支持レール
31F :側面
32F :側面
33 :切欠き部
51 :第1側ユニット(第2挿入ユニット)
52 :第2側ユニット(第1挿入ユニット)
61 :第1締結ユニット
62 :第2締結ユニット
70 :給電線
80 :車両本体
81 :第1走行車輪
82 :第2走行車輪
83 :案内車輪
84 :切替機構
91 :第1シム挿入部
92 :第2シム挿入部
95 :案内レール
95F :側面
96 :走行レール
96F :上面
99 :走行経路
910 :第1締結部
920 :第2締結部
Ax :基準軸
L1 :第1昇降機構
L2 :第2昇降機構
Pd1 :第1下降位置
Pd2 :第2下降位置
Pg1 :第1案内位置
Pg2 :第2案内位置
Pu1 :第1基準位置
Pu2 :第2基準位置
R :揺動方向
R1 :揺動方向第1側
R2 :揺動方向第2側
Se1 :第1検出部
Se2 :第2検出部
W :包囲壁
Wd :自動ドア
Wh :開口部
X :延在方向
Y :幅方向